説明

有機発光半導体とマトリックス材料との混合物、それらの使用および前記材料を含む電子部品。

本発明は、少なくとも2種の材料、一方はマトリックス材料として働くものであり、他方は発光が可能で20以上の原子番号の少なくとも1つの元素を含む、から構成される新しいタイプの材料混合物に関し、かつ電界発光素子およびディスプレイのような有機電子部品でのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子のような有機電子デバイスにおける新規の材料および材料混合物の使用に関し、かつそれをベースにしたディスプレイでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最も広い意味でエレクトロニクス産業に分類することのできる様々なタイプの一連の用途において、活性成分(=機能性材料)としての有機半導体の使用が近年実現しており、もしくは近い将来期待されている。例えば、感光有機材料(例えば、フタロシアニン)および有機電荷輸送材料(通常、トリアリールアミン系の正孔輸送体)は、既にここ数年でコピー機において用途がある。
【0003】
可視スペクトル領域での発光が可能なものもある特定の半導体有機化合物の使用は、市場、例えば有機電界発光デバイスにおいてまさに導入され始めている。それらの特有の部品、すなわち有機発光ダイオード(OLED)は非常に広い範囲の用途を持つ。例えば:
1.単色またはマルチカラーのディスプレイ素子(例えば、小型電卓、携帯電話ならびに他の携帯用途用)の、白色または有彩色のバックライト、
2.大表面積のディスプレイ(例えば、信号機、掲示板および他の用途)、
3.全ての色および形態での照明素子、
4.携帯用途(例えば、携帯電話、PDA、カムコーダーおよび他の用途)用の、単色またはフルカラーのパッシブマトリックス型ディスプレイ、
5.広く多様な用途(例えば、携帯電話、PDA、ラップトップ、テレビおよび他の用途)用の、フルカラー、大表面積、高解像度のアクティブマトリックス型ディスプレイ
が挙げられる。
【0004】
これらの用途のいくつかの開発は既に大いに進んでいる;しかしながら、技術的な改良の必要性が依然として大いに存在する。
【0005】
比較的単純なOLEDを含むデバイスは、有機ディスプレイを有するPioneer製のカーラジオ、もしくはKodak製のデジタルカメラにより示されるように、既に市場に導入されている。しかし、急を要する改良が必要な、かなりの問題が依然として存在する:
1.例えば、特にOLEDの作動寿命は依然として低く、それゆえに現在のところ単純な用途を商業的に実現できているだけである。
【0006】
2.OLEDの効率は許容範囲内であるものの、特に携帯用途のために、ここでも依然として更なる改良が望まれる。
【0007】
3.通常、エージングプロセスは電圧の上昇を伴う。この影響により電圧駆動の有機電界発光デバイス(例えばディスプレイもしくはディスプレイ素子)は困難または不可能となる。しかし、まさにこの場合に電圧駆動アドレッシングはより複雑で費用が嵩む。
【0008】
4.必要な作動電圧は、効率のよい燐光性のOLEDの場合には特にとても高く、それゆえに電力効率を改善するために低減させる必要がある。これは特に携帯用途にとっては非常に重要である。
【0009】
5.必要な作動電流も同様にここ数年で低減されてきたが、電力効率を改善するために依然としてさらに低減させる必要がある。これは特に携帯用途にとっては特に重要なことである。
【0010】
6.多数の層がOLEDの構成を複雑にし、そして技術的に非常に複雑にする。それゆえに、より少ない層だけを必要とするが、良好な、またはさらには改良した特性を依然として有する、より単純な層構成を持つOLEDを実現できることが望ましいであろう。
【0011】
上述の1から6に挙げた理由によりOLEDの製造の改良が必要となる。
【0012】
近年出てきたこの方向での進展は、蛍光の代わりに燐光を呈する有機金属錯体の使用である[M.A. Baldo, S. Lamansky, P.E. Burrows, M.E. Thompson, S.R. Forrest, Applied Physics Letters, 1999, 75, 4-6]。量子力学的な理由により、有機金属化合物を使用して、4倍に至る量子効率、エネルギー効率および電力効率が可能である。この新しい進展が確立するか否かは、OLEDにおいてこれらの利点(一重項発光=蛍光と比較しての三重項発光=燐光)も利用できるという、対応するデバイス構成を見つけられるか否かに強く左右される。ここで実用の際に必須な条件としては特に、携帯用途を可能とするための、高い作動寿命、熱ストレスに対する高い安定性ならびに低い使用電圧および低い作動電圧が挙げられる。
【0013】
有機電界発光デバイスの一般的な構造は、例えばUS 4,539,507およびUS 5,151,629、さらにEP 01202358で説明されている。
【0014】
典型的に、有機電界発光デバイスは、真空法または様々な印刷法を用いて互いに塗布される多数の層からなる。これらの層は特に:
1.キャリアプレート=基板(典型的にガラスまたはプラスチックのフィルム)。
【0015】
2.透明陽極(典型的にインジウム-スズ-オキサイド、ITO)。
【0016】
3.正孔注入層(Hole Injection Layer = HIL):例えば、銅-フタロシアニン系(CuPc)、またはポリアニリン(PANI)もしくはポリチオフェン誘導体(PEDOTのような)のような導電性ポリマー系。
【0017】
4.1層またはそれ以上の正孔輸送層(Hole Transport Layer = HTL):典型的にトリアリールアミン誘導体系、例えば、第1層として4,4’,4’’-トリス(N-1-ナフチル-N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(NaphDATA)、および第2正孔輸送層としてN,N’-ジ(ナフサ-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)。
【0018】
5.1層またはそれ以上の発光層(Emission Layer = EML):この層(またはこれらの層)は層4から8と部分的に一致していてもよいが、典型的には、蛍光色素(例えば、N,N’-ジフェニルキナクドリン(QA))、または燐光色素(例えば、トリス(2-フェニルピリジル)イリジウム(Ir(PPy))またはトリス(2-ベンゾチオフェニルピリジル)イリジウム(Ir(BTP)))でドープされた、マトリックス材料(例えば、4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP))からなる。しかし、発光層は、ポリマー、ポリマーの混合物、ポリマーと低分子量化合物との混合物、または異種の低分子量化合物の混合物からなっていてもよい。
【0019】
6.正孔障壁層(Hole-Blocking Layer = HBL):この層は層7および8と部分的に一致していてもよい。典型的にはBCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン)またはビス(2-メチル-8-キノリノラート)(4-フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)からなる。
【0020】
7.電子輸送層(Electron Transport Layer = ETL):通常アルミニウムトリス-8-ヒドロキシキノリネート(AlQ)系である。
【0021】
8.電子注入層(Electron Injection Layer = EIL):この層は層4、5、6および7と部分的に一致してもよく、または陰極のごく一部を特別に処理したもの、もしくは特別に蒸着を施したものである。
【0022】
9.別の電子注入層(Electron Injection Layer = EIL):高い誘電率を有する材料(例えば、LiF、LiO、BaF、MgO、NaF)からなる薄層である。
【0023】
10.陰極:ここでは、通常、低い仕事関数を有する、金属、金属の組合せもしくは金属合金(例えば、Ca、Ba、Cs、Mg、Al、In、Mg/Ag)を使用する。
【0024】
である。
【0025】
このデバイス全体を適切に(用途に応じて)構成し、接続し、かつ最終的には気密封止も行う。これは、このようなデバイスの寿命が水および/または空気の存在下では劇的に短いためである。同じことは、陰極から光が発せられる、逆構造として知られているものにも適用される。これらの反転したOLEDでは、陽極は、5eV以上のHOMOを有する、例えばAl/Ni/NiOまたはAl/Pt/PtO、またはその他の金属/金属酸化物の組合せからなる。陰極は、金属(例えば、Ca、Ba、Mg、Al、Inなど)が非常に薄く、それに伴って透明である点が異なるが、項目9および10で説明したものと同様の材料からなる。層厚さは50nm以下、より良好には30nm以下、さらに良好には10nm以下である。他の透明材料(例えば、ITO(インジウム-スズ-オキサイド)、IZO(インジウム-亜鉛-オキサイド)等)もこの透明陰極に適用できる。
【0026】
発光層(EML)が1種以上の材料で構成される有機電界発光デバイスは既に以前から知られている。
【0027】
上述の構造において、発光層(EML)のマトリックス材料は特別な役割を果たす。マトリックス材料は正孔および/または電子の電荷輸送を可能にするかもしくは改善し、かつ/または電荷キャリア再結合を可能にするかもしくは改善し、かつ、適切な場合には、再結合で発生したエネルギーを発光体に輸送する必要がある。
【0028】
燐光発光体系の電界発光デバイスでは、今まではこの課題をカルバゾール単位を含むマトリックス材料が主に担ってきた。
【0029】
しかし、カルバゾール単位を含むマトリックス材料(例えばしばしば使用されるCBP)は実用においていくつか不都合な点を有する。これらは、とりわけ、これらを用いて製造される素子の短い乃至非常に短い寿命と、低い電力効率をもたらす、しばしば高い作動電圧とに見られる。さらに、エネルギー的な理由で、非常に低い効率をもたらすCBPは青色発光電界発光デバイスには不向きであることがわかっている。さらに、CBPをマトリックス材料として用いる場合には、正孔障壁層および電子輸送層をさらに使用しなくてはならないために、デバイスの構成は非常に複雑となる。これら追加の層を使用しない場合には、例えばAdachiらが説明しているように(Organic Electronics 2001, 2, 37)、良好な効率が観察されるがきわめて低い輝度においてのみであり、その一方で応用に必要とされるような高い輝度での効率は大きさが一桁以上低い。従って、高電圧が高輝度達成のために必要とされ、この点で電力効率が非常に低いものとなり、それはパッシブマトリックスの用途に特に不向きである。
【発明の開示】
【0030】
驚くべきことに、あるマトリックス材料をある発光体と組合せて使用することにより、特に効率に関して、およびそれと非常に向上した寿命との組合せにおいて、従来技術を上まわる著しい進歩をもたらすことが見出された。さらに、別の正孔障壁層も別の電子輸送および/または電子注入層もどれも使用する必要がないので、OLEDの層構成を著しく単純化することがこれらのマトリックス材料を用いることにより可能となる。
【0031】
以下で説明するマトリックス材料を燐光性発光体と組合せてOLEDで使用することは新規である。
【0032】
従って本発明は、
Q=Xの形の少なくとも1つの構造単位(ここでX基は少なくとも1つの非結合電子対を有し、Q基はP、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeである)を含む少なくとも1種のマトリックス材料A(ガラス状の層であってもそうでなくても良い)と、
発光可能であり、かつ適切な励起時に発光し、原子番号が20以上の少なくとも1種の元素を含む化合物である、少なくとも1種の発光材料Bと
を含む混合物を提供する。
【0033】
本発明の混合物は好ましくは、ガラス転移温度Tg(純物質として測定)が70℃以上である少なくとも1種のマトリックス材料Aを含むものである。
【0034】
明確にするために、上および下で使用する記号“=”はLewis表示の意味で二重結合を表すことを述べる。
【0035】
マトリックス材料Aは好ましくは化学式(1)から(4)の少なくとも1種の化合物である。
【化14】

【0036】
ここで、記号および添字を以下のように定義する;
Lは各例で同一または異なるものであり、P、As、SbまたはBiである;
Mは各例で同一または異なるものであり、S、SeまたはTeである;
Xは各例で同一または異なるものであり、O、S、SeまたはN-Rである;
、Rは各例で同一または異なるものであり、各々、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖の、または単環式、オリゴ環式もしくは多環式の、アルキル基、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、NR、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、NRまたは-CONR10-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよい)、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香環構造もしくは芳香族複素環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよく、さらに1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rおよび/またはRは共に別の単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
は各例で同一または異なるものであり、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖の、または単環式、オリゴ環式もしくは多環式の、アルキル基、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、NR、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-NR-または-CONR10-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよい)、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香環構造もしくは芳香族複素環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよく、さらに1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rは共に別の単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、RとRおよび/またはRとが単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
、R、R、R、R、R、R10は各例で同一または異なるものであり、各々H、または1個から20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基である。
【0037】
本発明の文脈では、芳香環構造または複素芳香環構造は、必ずしも芳香族基もしくは複素芳香族基だけしか含まないわけではなく、複数の芳香族基もしくは複素芳香族基が、例えばsp-混成のC、O、N等の、短い非芳香族単位(原子の10%未満、好ましくは原子の5%未満)で中断されている場合もある構造を意味すると理解されるであろう。従って、例えば、芳香族系は9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジフェニルエーテル等のような構造も意味すると理解されるべきである。
【0038】
同様に、マトリックス材料Aとして、化学式(5)から(37)の少なくとも1種の化合物を含む有機電界発光デバイスが好ましい。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【0039】
ここで記号および添字は以下のように定義される:
lは1、2または3である;
mは1、2、3、4、5または6である;
nは各例で同一または異なるものであり、0、1、2、3、4、5または6である;
Tは各例で同一または異なるものであり、B、Al、CR、N、P=O、As=O、Sb=O、Bi=Oである;
Zは各例で同一または異なるものであり、CRまたはNである;
ここで記号L、M、X、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、各々、化学式(1)から(4)の下で定義したとおりである。
【0040】
同様に、化学式(38)または(39)の少なくとも1種の化合物を含むマトリックス材料Aが好ましい。
【化22】

【0041】
ここでoは5から5000000であり、ここで記号m、RおよびRは、各々、化学式(1)から(4)の下で定義したとおりである。
【0042】
さらに、無機物の酸化燐および硫化燐、例えば、P10が好ましい。
【0043】
さらに、少なくとも1つの9,9’-スピロビフルオレン単位を含むマトリックス材料Aが好ましい。
【0044】
同様に、化学式(40)から(48)の少なくとも1種の化合物を含むマトリックス材料Aが好ましい。
【化23】

【0045】
ここで、記号L、M、R、RおよびZは、各々、化学式(1)から(37)の下で定義したとおりであり、かつその他の記号および添字は:
Arは各例で同一または異なるものであり、2個から40個の炭素原子、好ましくは4個から30個の炭素原子を有する、1価または2価の、芳香環構造または複素芳香環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、また1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてよい)である(ここで、同一の環または異なる環にある複数の置換基Rが共に別の、単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造をさらに形成していてもよい);
pは各例で同一または異なるものであり、0または1である。
【0046】
化学式(40)から(48)の材料が好ましい理由は、特にその高いガラス転移温度にある。置換パターンに応じて、これらは典型的に70℃以上、さらに通常100℃以上である。
【0047】
特に、化学式(1)から(48)によって上で説明したマトリックス材料Aの1種またはそれ以上を含み、
Lは各例でPである;
Mは各例でSである;
Xは各例でOである;
Tは各例で同一または異なるものであり、B、CRまたはP=Oである;
Zは各例で同一または異なるものであり、CRまたはNである;
、R、Rは各例で同一または異なるものであり、各々CH、CF、-HC=CH-、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香族環構造もしくは複素芳香環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、また1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rが共に別の、単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、RとRおよび/またはRとが共に単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
mは1、2または3である;
nは各例で同一または異なるものであり、0、1、2または3である;
ここで記号および添字l、o、R、R、R、R、R、RおよびR10は、各々、上で定義したとおりである
ことを特徴とする混合物が好ましい。
【0048】
特に、化学式(1)から(48)によって上で説明したマトリックス材料の1種またはそれ以上を含み、それらがキラルであることを特徴とする混合物が好ましい。
【0049】
化学式(40)、(41a)、(42)、(43)、(44a)、(45)、(46)、(47a)および(48)の化合物は新規であり、従って本発明の主題の一部を同様に形成する。
【化24】

【化25】

【0050】
ここで記号および添字は、各々、上で定義したとおりである(ただし、化学式(43)では、Z=CHおよびM=Sの場合で、かつRが置換型または非置換型のフェニル基である場合には、全てのpが1であるというわけではない)。
【0051】
本発明を、マトリックス材料Aの以下の例によって詳細に説明するが、それによって限定することを意図しない。当業者は別段の発明力なしに提示された記載および例から別の本発明のマトリックス材料を調製することができる。
【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【0052】
上記の本発明のマトリックス材料、例えば例50から53に記載のもの、は例えば対応する共役系、部分共役系または非共役系のポリマーを得るためのコモノマーとして、または例えば例54および例55記載のデンドリマーの核としても用途があるであろう。対応する別の機能化(重合またはデンドリマーへの変換)はハロゲン官能基を介して行うことが好ましい。
【0053】
従って、上述の化合物を重合して、特に、溶解性のポリフルオレン(例えば、EP 842208またはWO 00/22026記載)、ポリスピロビフルオレン(例えば、EP 707020またはWO 00/894107記載)、ポリパラフェニレン(例えば、WO 92/18552記載)、ポリカルバゾ−ル、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)またはポリチオフェン(例えば、EP 1028136記載)にすることができる。
【0054】
化学式(1)から(48)の1つまたはそれ以上の構造単位を含む、上記の、共役系、部分共役系または非共役系の、ポリマーまたはデンドリマーを、マトリックス材料として、有機電界発光デバイスで使用してもよい。
【0055】
さらに、本発明のマトリックス材料Aを、例えば上述の反応型によってさらに機能化し、それによって拡張したマトリックス材料Aに変換してもよい。ここで、一例はSUZUKIによるアリールボロン酸を用いる機能化またはHARTWIG−BUCHWALDによるアミンを用いる機能化である。
【0056】
機能性材料としての用途を見出すために、本発明のマトリックス材料A、またはマトリックス材料Aを含むそれらの混合物もしくはポリマーもしくはデンドリマーを、任意に発光体Bと共に、当業者に周知である一般的に知られている方法、例えば真空蒸着、もしくはキャリアガス流での蒸着、もしくはスピンコートによって溶液から、または様々な印刷操作(例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、LITI印刷等)によってフィルムの形で基板に塗布する。
【0057】
この文脈では、印刷法の使用は製造のスケーラビリティに関して、また使用するブレンド層での混合比の調節に関しても利点を有することができる。
【0058】
上記のマトリックス材料は燐光性発光体と組合せて用いられる。このようにして製造した電界発光デバイスは、発光体Bとして、少なくとも1種の化合物を含むという特徴を有し、その化合物は適切な励起時に、好ましくは可視領域で発光し、さらに20以上、好ましくは38以上84以下、より好ましくは56以上80以下の原子番号の原子を少なくとも1つ含むことを特徴とする。
【0059】
上記の有機電界発光デバイスで使用する燐光性発光体は、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウムを含む化合物であることが好ましい。
【0060】
特に好ましい混合物は、発光体Bとして、化学式(49)から(52)の少なくとも1種の化合物を含む。
【化30】

【0061】
ここで、使用する記号は:
DCyは各例で同一または異なるものであり、環状基(少なくとも1つのドナー原子、好ましくは窒素または燐[それを介して環状基が金属原子と結合する]を含み、さらに1つまたはそれ以上の置換基R11を有してもよい)であり;DCy基とCCy基は共有結合を介して互いに結合している;
CCyは各例で同一または異なるものであり、環状基(炭素原子[それを介して環状基が金属と結合する]を含み、1つまたはそれ以上の置換基R11をさらに有してもよい)である;
11は各例で同一または異なるものであり、H、F、Cl、Br、I、NO、CN、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖、もしくは環式の、アルキル基もしくはアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基がC=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-NR-または-CONR-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がFで置き換わっていてもよい)、または4個から40個の炭素原子を有し、1つまたはそれ以上の非芳香族のR11基で置換されていてもよい、芳香族系もしくは複素芳香族系(同一の環もしくは異なる2つの環のいずれかにある複数のR11がともに結合し、別の、単環式もしくは多環式の環構造をさらに形成してもよい)である;
Aは各例で同一または異なるものであり、二座キレート配位子、好ましくはジケトナート配位子である;
、R、Rは各例で同一または異なるものであり、H、または1個から20個の炭素原子を有する脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である。
【0062】
上記の発光体の例を、例えば、特許出願WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/02714、WO 02/15645、EP 1191613、EP 1191612およびEP 1191614から選択することができる;この結果、これらは参照により本出願の一部とみなされる。
【0063】
本発明の混合物は、発光体Bとマトリックス材料Aとの混合物全体に対して、発光体Bを1から99重量%の間、好ましくは3から95重量%の間、より好ましくは5から50重量%の間、特に7から20重量%の間で含む。
【0064】
本発明はさらに、マトリックス材料Aと発光材料Bとの本発明の混合物を含む電子部品、特に有機電界発光デバイス(OLED)、有機太陽電池(O-SC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機光学検出器、電子写真における有機フォトレセプターまたは有機レーザーダイオード(O-レーザー)を提供する。
【0065】
特に、少なくとも1種のマトリックス材料Aと発光可能な少なくとも1種の発光材料Bとの混合物を含む少なくとも1層の発光層(EML)を有する有機電界発光デバイスが好ましい。ここで、
AはQ=Xの形の少なくとも1つの構造単位を含み、Xは少なくとも1つの非結合電子対を有し、かつガラス状の層を形成してもしなくてもよいことを特徴とする化合物(ここでQはP、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeである)であり、
また、Bは、適切な励起時に発光し、かつ20以上の原子番号を有する少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする化合物である。
【0066】
少なくとも1種のマトリックス材料Aと発光可能な少なくとも1種の発光材料Bとの混合物を含む少なくとも1層の発光層(EML)を含む有機電界発光デバイスが好ましい。ここで、
AはQ=Xの形の少なくとも1つの構造単位を含み、Xは少なくとも1つの非結合性電子対を有し、それはガラス状の層を形成してもしなくてもよいことを特徴とする化合物であり、材料Aのガラス転移温度Tは70℃以上であり、
Bは、適切な励起時に発光し、かつ20以上の原子番号を有する少なくとも1つの元素を含むことを特徴とする化合物であり、
Qは上で定義したとおりである。
【0067】
陰極、陽極および発光層以外に、この有機電界発光デバイスは他の層(例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層および/または電子注入層)を含んでいてもよい。しかし、これらの層の各々が必ずしも存在する必要があるわけではないということがここで指摘されるべきである。例えば、別の正孔障壁層も別の電子輸送層も含まないOLEDは電界発光において非常に良好な結果、特にさらに高い電力効率をもたらすことがわかっている。カルバゾール含有マトリックス材料を有するが、正孔障壁層および電子輸送層は持たない対応するOLEDは、特に高輝度では非常に低い電力効率を示すにすぎないため(Adachiら、Organic Electronics 2001, 2, 37を参照のこと)、これは特に驚くべきことである。
【0068】
従って、本発明は、正孔障壁層を使用せずに電子輸送層に直接隣接する、または正孔障壁層および電子輸送層を使用せずに電子注入層または陰極に直接隣接する本発明の混合物を含む有機電界発光デバイスをさらに提供する。
【0069】
本発明の有機電界発光デバイスは、マトリックス材料としてCBPを含む従来技術のOLEDよりも、より高い効率、著しくより長い寿命を示し、かつ、特に正孔障壁層も電子輸送層も使用せずとも、著しくより低い作動電圧およびより高い電力効率を示す。正孔障壁および電子輸送層を省略することはOLEDの構造をさらに著しく簡略化し、かなりの技術的効果を構成する。
【0070】
マトリックス材料Aと発光材料Bとで構成される本発明の混合物の好ましい実施形態も、本発明の電子部品、特に有機電界発光デバイス(OLED)、有機太陽電池(O-SC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)有機光学検出器、電子写真における有機フォトレセプターまたは有機レーザーダイオード(O-レーザー)についても存在する。不必要な繰り返しを避けるために、ここではその他の列挙を省略する。
【0071】
本願の本文および以下の実施例では、目的は単に有機発光ダイオード、およびそれに対応するディスプレイだけである。記載の制限に関わらず、当業者は何ら別段の発明力を駆使せずとも、特にOLED類似または関連する用途における対応する本発明の層を本発明の混合物から製造して使用することができる。
【0072】
下で説明する例は、本発明のマトリックス材料が、それを用いて製造される電界発光デバイスの効率と寿命の点で著しい改良をもたらすということを明確に示す。
【0073】
さらに、マトリックス材料Aを使用して青色発光電界発光デバイスを製造することができる。
【0074】
(実施例)
ガラス転移温度を測定するための一般的な試験方法:
昇華させた試薬を、最初に10K/分の加熱速度で25℃から材料の融点+50Kまで加熱させた。続いて、それらをこの温度から80K/分の加熱速度で25℃まで冷却した。ガラス転移温度Tgは、10K/分の加熱速度で材料の融点の50K上の温度まで再加熱して、Netzsch DCS 204装置(TASC 414/4 Controller およびCC200 C Controller)を用いて測定した。
【0075】
1.マトリックス材料の合成
以下の合成は、別段に述べた場合を除き、保護ガス雰囲気下、乾燥溶媒中で行った。反応物[ジクロロフェニルホスフィン]をALDRICHから購入した。2-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレンを文献の方法で調製した(Pei, Jianら、J. Org. Chem. 2002, 67(14), 4924-4936)。
【0076】
実施例1:ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシド(マトリックス材料M1)
2-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン98.8g(250ml)と1,2-ジクロロエタン6mlとのTHF1000ml溶液と、マグネシウム7.1g(290mmol)から、対応するGrignard試薬を沸騰した状態で調製した。100ml中のジクロロフェニルホスフィンの16.3ml(120mmol)の溶液を0−5℃でこのGrignard試薬に15分かけて滴下した。次に、混合物を還流しながら1時間加熱した。冷却後、混合物を水10mlと混合させ、乾燥するまで濃縮した。無色の残留物をジクロロメタン1000mlに溶解させた。その懸濁液を水300mlで3回洗浄した。有機相を取り出し、硫化ナトリウムで乾燥させ、その後濃縮させた。無色の残留物を酢酸エチル1000mlに溶かし、十分に攪拌させながら過酸化水素10.3ml(水中に35重量%)と水100mlとの混合物に滴下させて混合した。18時間攪拌した後、析出した無色の固体を吸引濾過し、エタノールで洗浄し、乾燥させた。固体をクロロベンゼン(20ml/g)から3回再結晶させ、続いて高真空下で昇華させた(T=385℃、p=5×10−5mbar)。HPLCによる99.9以上の純度での収量は40.1g(53mmol)であった。これは理論値の42.4%に相当する。
【0077】
融点:T=334℃、ガラス転移温度:T=161℃。
【0078】
31P NMR (CDCl3): δ [ppm] = 30.4 (s).
1H NMR (CDCl3): δ [ppm] = 7.83-7.81 (m, 2H), 7.76-7.75 (m, 6H), 7.38-7.22 (m, 15H), 7.15-7.12 (m, 2H), 7.06-7.03 (m, 4H), 6.72-6.71 (m, 2H), 6.64-6.60 (m, 4H)。
【0079】
実施例2:ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)スルホキシド(マトリックス材料M2)
n−ブチルリチウム溶液(2.5Mへキサン溶液)110ml(275mmol)を、−78℃に冷却した、2-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン98.8g(250mmol)のTHF1500ml懸濁液に、温度が−65℃以上に上昇しないような速度で添加した。反応混合物を−78℃で3時間攪拌し、それから塩化チオニル7.2ml(125mmol)とTHF300mlとの混合物に滴下して混合し、続けて−78℃でさらに3時間攪拌した。反応混合物を室温まで温めた後、反応混合物を水25mlと混合し、減圧下で乾燥するまで濃縮した。残留物をジオキサン1000mlと水500mlに溶解し、有機相を取り出し、水500mlで1回洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥させた。続いて、有機相の濃縮後に残留した固体をジオキサン(1g/ml)から5回再結晶し、それから高真空下で昇華させた(T=370℃、p=5×10−5mbar)。HPLCによる99.9以上の純度での収量は114.0g(168mmol)であった。これは理論値の67.2%に相当する。
【0080】
融点:T=365℃、ガラス転移温度:T=178℃。
【0081】
1H NMR (CDCl3): δ [ppm] = 7.83 (m, 4H), 7.75 (m, 2H), 7.73 (m, 2H), 7.37-7.29 (br. m, 8H), 7.09-7.03 (br. m, 6H), 6.86 (m, 2H), 6.70 (m, 4H), 6.65 (m, 2H)。
【0082】
実施例3:1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィンオキシド)(マトリックス材料M3)
ラセミ1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィン)(Aldrichから得られた)を過酸化水素を用いて実施例1と同じように酸化することで合成を行った。
【0083】
明確にすることを目的として、マトリックス材料M1からM3をもう一度以下に提示する:
【化31】

【0084】
2.本発明の化合物を含む有機電界発光デバイスの製造および特性評価
OLEDを以下に概説する一般的な方法で製造した。もちろん、個々の場合での特別な状況に応じてこれを適応させる(例えば、最適な効率と色彩を達成させるための層厚さの変化)必要がある。
【0085】
本発明の電界発光デバイスを、例えば出願DE 10317556.3(まだ公開されていない)に記載したように調製できる。
【0086】
3.デバイス例
これらの例で様々なOLEDの結果を比較する。基本的構成、使用する材料、ドープの程度およびそれらの層厚さを、比較をより良くするために、これら例の実験では同一のものとした。発光層のホスト材料のみを変えた。第1の例は従来技術による比較用の基準であり、発光層はホスト材料CBPとゲスト材料Ir(PPy)からなる。さらに、ホスト材料ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシド(合成は実施例1を参照のこと)とゲスト材料Ir(PPy)(WO 02/060910に従って合成)とからなる発光層を有するOLEDを、別の本発明のホスト材料を有するOLEDとして説明する。以下の構成を有するOLEDを得た:
PEDOT 60nm(水からスピンコートした;H.C. Starckから購入したPEDOT;ポリ[3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン])
NaphDATA 20nm(蒸着で塗布した;SynTecから購入したNaphDATA;4,4’,4’’-トリス(N-1-ナフチル-N-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン)
S-TAD 20nm(蒸着で塗布した;WO 99/12888に従って調製したS-TAD;2,2’,7,7’-テトラキス(ビフェニルアミノ)スピロビフルオレン)
発光層:
CBP 20nm(蒸着で塗布した;ALDRICHから購入したCBPであり、さらに精製し、最終的に2回以上昇華させた;4,4’-ビス(N-カルバゾルイル)ビフェニル)(比較基準)
または:
ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシド 20nm(蒸着で塗布した;実施例1に従って合成および精製した)
または:
ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)スルホキシド 20nm(蒸着で塗布した;実施例2に従って合成および精製した)
または:
1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィンオキシド) 20nm(蒸着で塗布した;実施例3に従って合成および精製した);
各々、10%三重項発光体:Ir(PPy)(蒸着で塗布した:WO 02/060910に従って合成した)がドープされている;
BCP 10nm(蒸着で塗布した;ABCRから購入したBCP、入手したまま使用した;2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン);全ての例で使用したわけではない
AlQ 10nm(蒸着で塗布した;SynTecから購入したAlQ;トリス(キノリノラート)アルミニウム(III));全ての例で使用したわけではない
Ba-Al 陰極として、3nmのBa、その上に150nmのAl。
【0087】
最適化がまだなされていないこれらのOLEDを標準的な方法で特性評価を行った;この目的のために、電界発光スペクトル、電流-電圧-輝度特性曲線(IUL特性曲線)から計算した輝度の関数としての効率(Cd/Aで測定)、および寿命を測定した。
【0088】
電界発光スペクトル:
OLED(比較基準(CBPを有するOLED)と、ホスト材料としてビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)スルホキシドおよび1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィンオキシド)をそれぞれ有するOLEDの両方)はIr(PPy)ドーパント由来の緑色発光を呈する。
【0089】
輝度の関数としての効率:
CBPホスト材料を用いて製造したOLED(表1、例1)については、約20から25cd/Aの効率が上記の条件下で典型的に得られ、かつ100cd/mの基準輝度には、4.8Vが必要となる。対照的に、ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシドのホスト材料を用いて製造したOLEDは40cd/A以上の最大効率を呈し、同時に100cd/mの基準輝度に必要な電圧は4.0Vまで落ちる(図1および表1、例2a)。
【0090】
正孔障壁層(HBL)も電子輸送層(ETL)も使用せず、それによりドープされたマトリックス(EML)が陰極および電子注入層に隣接する場合に、図2に示すように、特に高い電力効率(lm/Wで測定)が達成される(表1、例2aも参照のこと)。従って、比較基準(正孔障壁層としてBCPを、電子輸送層としてAlQを使用する)においては、12lm/Wという最大の電力効率が達成される。同様にBCPおよびAlQを使用するビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシドは34lm/Wという最大電力効率を達成させる一方、BCPもAlQも使用しない、すなわちドープされたマトリックス(EML)が陰極に直接隣接する場合には、42lm/Wという最大電力効率が達成される(表1、例2b)。100cd/mの輝度で、電力効率は、HBLおよびETLを使用する場合は16lm/Wでしかないが、ドープされたマトリックス(EML)が直接陰極に隣接する場合は25lm/Wとなる。ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)スルホキシド(例3aおよび3b)および1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィンオキシド)(例4aおよび4b)をホスト材料として有する他のOLEDは、HBLとETLとを有するものとHBLとETLとを有さないものの両方で、ホスト材料としてCBP(例1)を有するOLEDと比べて改善した効率を示す。全ての例を表1にまとめる。
【0091】
寿命の比較:
BCPおよびビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシド(各々HBLとELTを使用した)での2本の寿命曲線をより良い比較のために同じ図に示した(図3)。この図は時間についての輝度(cd/mで測定)のプロファイルを示す。寿命とは開始輝度の50%になった後の時間のことをいう。ホスト材料としてのCBPについて示された輝度では、3500cd/mの初期輝度で約30時間という寿命が得られる。初期輝度が典型的なアクティブマトリックスディスプレイの用途で必要な輝度よりも著しく高いため、これは加速測定(accelerated measurement)に相当する。
【0092】
ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)フェニルホスフィンオキシドについては、同じ輝度で約400時間という寿命が得られた。これは500cd/mで約25000時間の寿命に相当し、マトリックス材料としてCPBを有するOLEDと比較して10倍以上寿命が増加する。HBLとETLを使用せず、それによりドープされたマトリックスが陰極に直接接触する場合の寿命も同程度である。ビス(9,9’-スピロビフルオレン-2-イル)スルホキシド(例3aおよび3b)および1,1’-ビナフチル-2,2’-ビス(ビフェニルホスフィンオキシド)(例4aおよび4b)をホスト材料として有する他のOLEDも同様に、HBLとETLとを有する場合とHBLとETLとを有さない場合の両方で、ホスト材料としてCBP(例1)を有するOLEDと比べて改善した寿命を示す。全ての例を表1に列挙する。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】記載なし。
【図2】記載なし。
【図3】記載なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Q=Xの形の少なくとも1つの構造単位(ここでX基は少なくとも1つの非結合電子対を有し、Q基はP、As、Sb、Bi、S、SeまたはTeである)を含む少なくとも1種のマトリックス材料Aと、
発光可能であり、かつ適切な励起時に発光し、原子番号が20以上の少なくとも1種の元素を含む化合物である、少なくとも1種の発光材料Bと
を含む混合物。
【請求項2】
前記マトリックス材料Aがガラス状の層を形成できることを特徴とする請求項1記載の混合物。
【請求項3】
前記マトリックス材料Aは70℃以上のガラス転移温度Tg(純物質として測定)を持つことを特徴とする請求項1または2記載の混合物。
【請求項4】
前記マトリックス材料Aは好ましくは化学式(1)から(4)の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【化1】

ここで、記号および添字を以下のように定義する;
Xは各例で同一または異なるものであり、O、S、SeまたはN-Rである;
Lは各例で同一または異なるものであり、P、As、SbまたはBiである;
Mは各例で同一または異なるものであり、S、SeまたはTeである;
、Rは各例で同一または異なるものであり、各々、H、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖の、または単環式、オリゴ環式もしくは多環式の、アルキル基、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、NR、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、NRまたは-CONR10-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよい)、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香環構造もしくは芳香族複素環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよく、さらに1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rは共に別の単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
は各例で同一または異なるものであり、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖の、または単環式、オリゴ環式もしくは多環式の、アルキル基、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基が-RC=CR-、-C≡C-、Si(R、Ge(R、Sn(R、NR、C=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-NR-または-CONR10-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよい)、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香環構造もしくは芳香族複素環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、I、CN、NOで置換されていてもよく、さらに1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rは共に別の単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、RとRおよび/またはRとが単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
、R、R、R、R、R、R10は各例で同一または異なるものであり、各々H、または1個から20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基もしくは芳香族炭化水素基である。
【請求項5】
使用する前記マトリックス材料Aは化合物(5)から(37)の少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

ここで記号および添字は以下のように定義される:
lは1、2または3である;
mは1、2、3、4、5または6である;
nは各例で同一または異なるものであり、0、1、2、3、4、5または6である;
Tは各例で同一または異なるものであり、B、Al、CR、N、P=O、As=O、Sb=OまたはBi=Oである;
Zは各例で同一または異なるものであり、CRまたはNである;
ここで記号L、M、X、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、各々、請求項1から4で定義したとおりである。
【請求項6】
前記マトリックス材料Aとして、化学式(38)または(39)の少なくとも1種の化合物を含む請求項1から3のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【化9】

ここでoは5から5000000であり、ここで記号m、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は、各々、請求項4および5で定義したとおりである。
【請求項7】
前記マトリックス材料Aとして、化学式(40)から(48)の少なくとも1種の化合物を含む請求項1から3のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【化10】

ここで、記号L、M、R、RおよびZは、各々、請求項1、4および5で定義したとおりであり、かつその他の記号および添字は:
Arは各例で同一または異なるものであり、2個から40個の炭素原子、好ましくは4個から30個の炭素原子を有する、1価または2価の、芳香環構造または複素芳香環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、また1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてよい)である(ここで、同一の環または異なる環にある複数の置換基Rが共に別の、単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造をさらに形成していてもよい);
pは各例で同一または異なるものであり、0または1である。
【請求項8】
前記マトリックス材料Aとして、化学式(1)から(48)の少なくとも1種の化合物を含み、
Lは各例でPである;
Mは各例でSである;
Xは各例でOである;
Tは各例で同一または異なるものであり、B、CRまたはP=Oである;
Zは各例で同一または異なるものであり、CRまたはNである;
、R、Rは各例で同一または異なるものであり、各々CH、CF、-HC=CH-、または1個から40個の炭素原子を有する、芳香族環構造もしくは複素芳香環構造(1個またはそれ以上の水素原子がF、Cl、Br、Iで置換されていてもよく、また1つまたはそれ以上の非芳香族のR基で置換されていてもよい)である(ここで、複数の置換基Rが共に別の、単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよく、RとRおよび/またはRとが共に単環式または複環式の、脂肪族または芳香族の環構造を形成していてもよい);
mは1、2または3である;
nは各例で同一または異なるものであり、0、1、2または3である;
ここで記号および添字l、o、R、R、R、R、R、RおよびR10は、各々、請求項4、5および6で定義したとおりであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【請求項9】
前記発光体Bとして、少なくとも1種の化合物を含み、それは適切な励起時に、好ましくは可視領域で発光し、38以上84以下の原子番号の原子を少なくとも1つ含むことを特徴とする少なくとも1種の化合物を含む請求項1から8のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【請求項10】
前記発光体Bとして、少なくとも1種の化合物を含み、56以上80以下の原子番号の元素がモリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユーロピウムであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【請求項11】
前記発光体Bとして、化学式(49)から(52)の少なくとも1種の化合物を含む請求項1から10のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【化11】

ここで、使用する記号は:
DCyは各例で同一または異なるものであり、環状基(少なくとも1つのドナー原子[それを介して前記環状基が金属原子と結合する]を含み、さらに1つまたはそれ以上の置換基R11を有してもよい)であり;前記DCy基とCCy基は共有結合を介して互いに結合している;
CCyは各例で同一または異なるものであり、環状基(炭素原子[それを介して前記環状基が金属と結合する]を含み、1つまたはそれ以上の置換基R11をさらに有してもよい)である;
11は各例で同一または異なるものであり、H、F、Cl、Br、I、NO、CN、1個から40個の炭素原子を有する、直鎖、分枝鎖、もしくは環式の、アルキル基もしくはアルコキシ基(1つまたはそれ以上の非隣接CH基がC=O、C=S、C=Se、C=NR、-O-、-S-、-NR-または-CONR-で置換されていてもよく、1個またはそれ以上の水素原子がFで置き換わっていてもよい)、または4個から40個の炭素原子を有し、1つまたはそれ以上の非芳香族のR11基で置換されていてもよい、芳香族系もしくは複素芳香族系(同一の環もしくは異なる2つの環のいずれかにある複数のR11がともに結合し、別の、単環式もしくは多環式の環構造をさらに形成してもよい)である;
Aは各例で同一または異なるものであり、二座キレート配位子である;
、R、Rは各例で同一または異なるものであり、H、または1個から20個の炭素原子を有する、脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基である。
【請求項12】
前記マトリックス材料として1種またはそれ以上のポリマーまたはデンドリマーを含み、前記マトリックス材料が化学式(1)から(48)の1つまたはそれ以上の構造単位を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項またはそれ以上に記載の混合物。
【請求項13】
前記ポリマーは共役系、部分共役系または非共役系であることを特徴とする請求項12記載の混合物。
【請求項14】
前記ポリマーはポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリパラフェニレン、ポリカルバゾ−ル、ポリビニルカルバゾ−ル、ポリチオフェン、またはここで挙げた複数の単位を持つコポリマーの群から選択される請求項12および/または13記載の混合物。
【請求項15】
請求項1から7のいずれか1項またはそれ以上に記載の少なくとも1種のマトリックス材料Aと、請求項12から14のいずれか1項またはそれ以上に記載の1種またはそれ以上のポリマーまたはデンドリマーとを含む混合物。
【請求項16】
化学式(40)、(41a)、(42)、(43)、(44a)、(45)、(46)、(47a)および(48)の化合物。
【化12】

【化13】

ここで記号L、M、R、RおよびZは、各々、請求項1、4および5で定義したとおりである(ただし、化学式(43)では、Z=CHおよびM=Sの場合で、かつRが置換型または非置換型のフェニル基である場合には、全てのpが1であるわけではない)。
【請求項17】
請求項1から15のいずれか1項またはそれ以上に記載の少なくとも1種の混合物および/または請求項16記載の化合物を含む電子部品。
【請求項18】
有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(OFET)、有機薄膜トランジスタ(OTFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検出器、電子写真における有機フォトレセプター、または有機レーザーダイオード(O-レーザー)であることを特徴とする請求項17記載の電子部品。
【請求項19】
請求項1から15のいずれか1項記載の混合物が、別の正孔障壁層を使用せずに電子輸送層に直接隣接することを特徴とする請求項17および/または18記載の電子部品。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか1項記載の混合物が、別の正孔障壁層および別の電子輸送層を使用せずに電子注入層または陰極に直接隣接することを特徴とする請求項17および/または18記載の電子部品。
【請求項21】
前記電子部品は少なくとも1層の正孔障壁層および/または少なくとも1層の電子輸送層および/または少なくとも1層の電子注入層および/または他の層を含む有機発光ダイオード(OLED)であることを特徴とする請求項17および/または18記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−513737(P2009−513737A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518130(P2006−518130)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007421
【国際公開番号】WO2005/003253
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】