有機発光素子
【課題】発光ドーパントをドープする領域の構造、ドープ領域およびドープ濃度分布を制御することにより、寿命特性を改善することができ、さらに電圧上昇や発光効率低下等の悪影響を排除することができる有機発光素子を提供する。
【解決手段】対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に関する。発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成される。また第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5の成分が多い傾斜した組成を有する。
【解決手段】対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に関する。発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成される。また第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5の成分が多い傾斜した組成を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイなどとして用いられる発光体は、高効率照明器具の実現、照明器具形状の自由化、液晶表示機を備える電子機器の小型化、長時間駆動化、フラットパネルディスプレイの薄型化等のために、高効率であり、かつ薄く軽量であるものが近年強く要求されている。
【0003】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、以前より、上記の要求を満たす可能性を有する発光体として注目を集めており、盛んに研究開発が行なわれている。特に近年、電流−光変換効率100%を原理的に有するリン光発光材料の登場に伴ない、有機発光素子の効率は飛躍的に増大し、有機発光素子の実用化可能領域は大きく広がってきた。既に、緑、赤などの単色発光素子に関しては、実デバイスとして電流−光変換効率100%に相当すると考えられる高効率発光素子が実際に実現されている。また青色発光素子に関しては、青色発光のエネルギーが大きいためにそれに適した発光材料、周辺材料の開発が進まず、他の発光色を有する有機発光素子に対して開発が遅れていたが、最近になって青色発光素子に適した発光材料や周辺材料が開発され、青色発光素子の効率も他色と同等以上に向上している。また、白色発光素子においても、60lm/W、外部量子効率30%といった高性能のものが報告されている。
【0004】
上記のように、有機発光素子において、効率はいわゆる理論値に近づきつつあるため、最近はむしろ、素子の長寿命化の観点での研究が盛んになっている。例えば新規材料を用いることによる長寿命化は、材料の熱安定性の向上、電気的安定性の向上などによって実現されていると考えられるが、初期輝度1000cd/m2の場合に半減寿命10万時間、といった値も報告されるようになっている。
【0005】
また、デバイス構造の観点から長寿命化を達成するものとして、例えば特許文献1には、キャリア輸送層にキャリア輸送用のドーパントをドープしたものが提案されており、また特許文献2には、隣接する層を混合させ、その混合比率が徐々に変化する構造を持った素子が提案されている。
【特許文献1】特開2000−164362号公報
【特許文献2】特開2004−241188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば有機発光素子を照明に応用する場合、現状の蛍光灯の輝度、すなわち数千〜一万cd/m2で使用することが必要となり、その際の寿命は上記の寿命より短くなり、例えば数千時間程度にまで低下する。また、有機発光素子をディスプレイに応用する場合には、焼き付きの発生、すなわち5%程度の輝度劣化が寿命であると考えられるが、この場合にも寿命は数千時間程度に留まることになる。
【0007】
従って、材料の改良は勿論のこと、さらにデバイス構造の観点からも、有機発光素子の長寿命化をさらに検討する必要があるのが現状である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、発光ドーパントをドープする領域の構造、ドープ領域およびドープ濃度分布を制御することにより、寿命特性を改善することができ、さらに電圧上昇や発光効率低下等の悪影響を排除することができる有機発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成され、第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、第2発光部42と第1発光部41の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第2発光部42中のホール輸送層3を構成する成分の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第1発光部41のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第1発光部41のこのホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0011】
また請求項2の発明は、請求項1において、第2発光部42にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、第2発光部42への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第3発光部43を、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、第3発光部43と第1発光部41の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第3発光部43中の電子輸送層5を構成する成分の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第1発光部41のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第1発光部41のこのホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0015】
また請求項4の発明は、請求項3において、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、第1発光部41とホール輸送層3の間に備えることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、ホール輸送層3の電子による劣化を抑制することができ、長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【0017】
また請求項5の発明は、請求項3又は4において、第3発光部43にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、第3発光部43への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0019】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、第1発光部の中央部分にドープされている発光ドーパント材料の濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、第1発光部41の中央部分の主として発光に寄与する部分の発光効率を高く保つことができるとともに、発光への寄与割合が小さい第1発光部41の周辺部へのドープ量を長寿命化に効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【0021】
本発明の請求項7に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部44と、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部45と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成され、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45と第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分および第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第5発光部45のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第5発光部45のこのホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0023】
本発明の請求項8に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部54と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部57と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第8発光部58を、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第7発光部57は、ホール輸送層3側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0024】
この発明によれば、隣接する各発光部54,57,58の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第7発光部57及び第8発光部58中の電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第7発光部47のキャリア輸送性を第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第7発光部47のキャリア輸送性を第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0025】
また請求項9の発明は、請求項8において、上記第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントを含む第5発光部45と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46を、第4発光部44とホール輸送層3の間にこの順に備え、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0026】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45及び第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第5発光部45のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0027】
また請求項10の発明は、請求項9において、第4発光部44に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも含むことを特徴とするものである。
【0028】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第4発光部44、第5発光部45、第6発光部46中のホール輸送層を構成する成分や第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48中の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47のキャリア輸送性を制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0029】
本発明の請求項11に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層3は、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46と、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部45と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部47と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第8発光部48とを、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有し、第7発光部47は、ホール輸送層3側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層5側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0030】
この発明によれば、隣接する各発光部45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45及び第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第7発光部47及び第8発光部48中の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第5発光部45及び第7発光部47のキャリア輸送性をホール輸送層3の成分や電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上させることが可能になるものである。さらに、第5発光部45及び第7発光部47のホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0031】
また請求項12の発明は、請求項7、9、10のいずれかにおいて、第5発光部45にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部44にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0032】
この発明によれば、第5発光部45への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0033】
また請求項13の発明は、請求項8乃至10のいずれかにおいて、第7発光部47にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0034】
この発明によれば、第7発光部47への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0035】
また請求項14の発明は、請求項7乃至10のいずれかにおいて、第4発光部44の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【0036】
この発明によれば、第4発光部44の中央部分の主として発光に寄与する部分の発光効率を高く保つことができるとともに、発光への寄与割合が小さい第4発光部44の周辺部へのドープ量を長寿命化に効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、発光層4を、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層4を構成する成分等の混合物からなるホスト材料中に発光ドーパントをドープさせた複数層の発光部で形成することにより、長寿命かつ高効率を呈し、さらに電圧上昇や発光効率低下等の悪影響を排除した有機発光素子を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0039】
本発明に係る有機発光素子は、2つの電極1,2、すなわち陽極(アノード)と陰極(カソード)の間に有機発光層4を備えて形成されるものである。図9はこのような有機発光素子の構造の一例を示すものであり、陽極となる電極1と陰極となる電極2の間に形成される発光層4と、発光層4と電極1との間に形成されるホール輸送層3と、発光層4と電極2との間に形成される電子輸送層5とを備え、これらを基板6の表面に積層したものである。図9の有機発光素子では、電極1は光透過性の電極として透明な基板6の表面に形成してあり、電極2は光反射性の電極として形成してある。また、ホール輸送層3や電子輸送層5の電極1,2側には、ホール注入層や電子注入層などを設けるようにしてもよいが、図9ではこれらの図示は省略してある。
【0040】
図1は請求項1の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、電子輸送層5の側の第1発光部41と、ホール輸送層3の側の第2発光部42との2層で形成してある。
【0041】
第1発光部41は、ホール輸送層3を構成する成分であるホール輸送材料と、電子輸送層5を構成する成分である電子輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものである。また第2発光部42は、ホール輸送層3を構成する成分であるホール輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、電子輸送層5を構成する成分は含まないものである。ここで、電子輸送層5を構成する成分を含まないとは、全く含まない場合は勿論、第2発光部42の特性が電子輸送層5を構成する成分で影響を受けない程度の微量であれば許容されるものであり、電子輸送層5を構成する成分を実質的に含まないということを意味するものである。また、発光ドーパントとして用いる材料は1種類でも良いし、2種類以上を混合したり、順次種類を変更しながら用いても構わない。
【0042】
第2発光部42の厚みは、1nm〜ホール輸送層3の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第2発光部42において、ホール輸送層3との界面から5nmの範囲には発光ドーパントがドープされていないことが好ましい。第2発光部42に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第1発光部41の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第2発光部42の発光ドーパントの量を第1発光部41の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第2発光部42からの発光量が減少し、第1発光部41からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が可能である。
【0043】
第1発光部41の厚みは、1〜50nmの範囲が好ましい。また第1発光部41のホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の混合比率は、10:90〜90:10(合計100)の質量比の範囲が好ましい。さらに第1発光部41に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする濃度である、0.5質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0044】
ここで第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の構成成分の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5の構成成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5の側ほど、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、などが挙げられる。また、第1発光部41の第2発光部42との界面付近における電子輸送層5を構成する成分の量を0〜10質量%程度と少なくし、第2発光部42との界面で急激に電子輸送層5を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。また、第1発光部41の電子輸送層5との界面付近におけるホール輸送層3を構成する成分の量は0〜10質量%程度と少なくし、電子輸送層5との界面で急激にホール輸送層3を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。
【0045】
図2は請求項3の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、ホール輸送層3の側の既述の第1発光部41と、電子輸送層5の側の第3発光部43との2層で形成してある。
【0046】
第3発光部43は、電子輸送層5を構成する成分である電子輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、ホール輸送層3を構成する成分は実質的に含まないものである。また、発光ドーパントとして用いる材料は1種類でも良いし、2種類以上を混合したり、順次変更しながら用いても構わない。
【0047】
第3発光部43の厚みは、1nm〜電子輸送層5の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第3発光部43において、電子輸送層5との界面から5nmの範囲には発光ドーパントがドープされていないことが好ましい。第3発光部43に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第1発光部41の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第3発光部43の発光ドーパントの量を第1発光部41の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第3発光部43からの発光量が減少し、第1発光部41からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が可能である。
【0048】
第1発光部41の厚み、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の混合比率、発光ドーパントのドープ量は既述の通りである。また第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の構成成分の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5の構成成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5の側ほど、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第1発光部41の第3発光部43との界面付近におけるホール輸送層3を構成する成分の量を0〜10質量%程度と少なくし、第3発光部43との界面で急激にホール輸送層3を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。また、第1発光部41のホール輸送層3との界面付近における電子輸送層5を構成する成分の量は0〜10質量%程度と少なくし、ホール輸送層3との界面で急激に電子輸送層5を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。
【0049】
図3は請求項4の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、第1発光部41、第2発光部42、第3発光部43の3層で形成するようにしたものであり、第1発光部41のホール輸送層3側に第2発光部42を、電子輸送層5側に第3発光部43を設けるようにしてある。この構成により、第1発光部41と第2発光部42中のホール輸送層3を構成するホール輸送材料、および、第1発光部41と第3発光部43中の電子輸送層5を構成する電子輸送材料の、電気化学的劣化を抑制することが可能となるものである。
【0050】
図3の有機発光素子では、第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分が含まれず、第3発光部43にホール輸送層3を構成する成分が含まれないものとなっている。このような構成にすることにより、これらの発光部42,43では、発光ドーパントが発光部42,43の電気化学的劣化を抑制する成分として機能するものである。第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分を導入し、第3発光部43にホール輸送層3を構成する成分を導入すると、発光効率が低下することがあり、好ましくない。ただし、第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分が、あるいは第3発光部43にホール輸送層を構成する成分が、ごく微量含まれているだけの場合は、さほど大きな素子特性への影響はない。
【0051】
上記の図1及び図3の実施の形態において、第2発光部42にドープされる発光ドーパントの濃度は、第1発光部41にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。また上記の図2及び図3の実施の形態において、第3発光部43にドープされる発光ドーパントの濃度は、第1発光部41にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第1発光部41における発光ドーパントの濃度は、ドーパント材料によって異なるが、既述のように有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする0.5〜20質量%の範囲が好ましいが、第2発光部42や第3発光部43における発光ドーパントのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4〜10質量%でかつ第1発光部41における濃度以下とするものであり、このようにすることによって、有機発光素子の駆動電圧を低減することが可能になるものである。
【0052】
上記の各実施の形態において、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度は、厚み方向に均一であっても良いが、第1発光部41の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度をその周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高くすることも好ましい。ここで第1発光部41の中央部分とは、必ずしも厚みの中心を意味するものではなく、隣接する発光部42,43やホール輸送層3との界面をのぞいた範囲を意味するものである。第1発光部41の中央部分の主として発光に寄与する部分に対しては、この部分の発光効率を高く保つことの可能なドープ濃度を選定し、一方、発光への寄与割合が小さい第1発光部41の周辺部へのドープ量は、発光効率を重視するよりもむしろ長寿命化に効果のある濃度とすることが好ましく、このことにより、長寿命素子を得ることが可能である。適したドープ濃度は発光ドーパント材料によって異なるが、第1発光部41の中央部では一般に0.5質量%〜20質量%の範囲が適宜選定されるものであり、周辺部へのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4質量%〜10質量%で、かつ中央部の濃度以下とするのが好ましい。またドープ濃度の分布は、段階的に変化するものであっても良いし、連続的な傾斜を有して変化するものであってもよく、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が大きくなる傾斜、中央部から一定に濃度減少する傾斜、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が小さくなる傾斜が挙げられる。また、本発明の有機発光素子に用いられる発光ドーパントは、1種類でも良いし、2種類以上でもよい。2種類以上発光ドーパントを用いる場合、上記の濃度分布の条件に反しない限り、発光ドーパントの特性に応じて、任意の方法で使用することができ、例えば厚み方向の場所によって種類を分けて用いる方法、混合して用いる方法、順次種類を変更しながら用いる方法など、種々の方法で用いることができる。
【0053】
図4は請求項7の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、第4発光部44、第5発光部45、第6発光部46の3層で形成するようにしてある。そして第5発光部45の電子輸送層5側に第4発光部44を、ホール輸送層3側に第6発光部46を積層するようにしてある。
【0054】
第4発光部44は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、また第5発光部45は、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、第6発光部46は、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成され、電子輸送層を構成する成分を実質的に含まないものである。
【0055】
また図5は請求項8の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48の3層で形成するようにしてある。そして第7発光部47のホール輸送層3側に第4発光部44を、電子輸送層5側に第8発光部48を積層するようにしてある。
【0056】
第7発光部47は、上記の第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、第8発光部48は、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成され、ホール輸送層3を構成する成分を実質的に含まないものである。
【0057】
また図6は請求項9の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の、第4発光部44、第5発光層45、第6発光層46、第7発光部47、第8発光部48の5層で形成するようにしてある。そしてホール輸送層3の側から電子輸送層5の側へ、第6発光部46、第5発光部45、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48の順に積層するようにしてある。
【0058】
図7は請求項10の発明の実施の形態の一例を示すものであり、図6の層構成の発光層4において、第4発光部44に、上記第3の電荷輸送材料と発光ドーパントの他に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも混合するようにしたものである。
【0059】
また図8は請求項11の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の、第5発光層45、第6発光層46、第7発光部47、第8発光部48の4層で形成するようにしたものである。そしてホール輸送層3の側から電子輸送層5の側へ、第6発光部46、第5発光部45、第7発光部47、第8発光部48の順に積層するようにしてある。
【0060】
上記の図4〜図8の実施の形態において、第6発光部46の厚みは、1nm〜ホール輸送層3の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第6発光部46に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第6発光部46の発光ドーパントの量を第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第6発光部46からの発光量が減少し、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が期待できる。
【0061】
また第8発光部48の厚みは、1nm〜電子輸送層5の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第8発光部48に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第8発光部48の発光ドーパントの量を第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第8発光部48からの発光量が減少し、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が期待できる。
【0062】
ここで、第6発光部46には電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料が含まれず、第8発光部48にはホール輸送層3を構成する成分や第3の電荷輸送材料が含まれないものとなっている。このような構成にすることにより、これらの発光部46,48では、発光ドーパントが発光部46,48の電気化学的劣化を抑制する成分として機能するものである。第6発光部46に電子輸送層5を構成する成分を導入し、第8発光部48にホール輸送層3を構成する成分を導入すると、素子特性の低下や寿命低下がみられることがあり、好ましくない。ただし、第6発光部46に電子輸送層5を構成する成分が、あるいは第8発光部48にホール輸送層を構成する成分が、ごく微量含まれているだけの場合は、さほど大きな素子特性への影響はない。
【0063】
第4発光部44の厚みは、1〜50nmの範囲が好ましい。また第4発光部44に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする濃度である、0.5質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0064】
図7の実施の形態では、第4発光部44に、第3の電荷輸送材料や発光ドーパントの他に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも含有させてある。第4発光部44をこのような構成に形成することにより、第4発光部44に含まれる第3の電荷輸送材料の劣化を抑制することができるとともに、第4発光部44のキャリア輸送性をコントロールして、発光効率や寿命を向上させることが可能となる。第4発光部44にこれらの成分を含有させる場合、第4発光部44中における第3の電荷輸送材料の分率は特に限定しないが、第3電荷輸送材料:ホール輸送層を構成する成分:電子輸送層を構成する成分=98〜40:1〜40:1〜40(合計100)の質量比率となるように混合比率を設定するのが好ましい。また第4発光部44中のホール輸送層を構成する成分、電子輸送層を構成する成分の混合濃度分布は、ホール輸送層3を構成する成分の量が第4発光部44のホール輸送層3側で最も高くなり、電子輸送層3を構成する成分の量が第4発光部44の電子輸送層5側で最も高くなり、かつ成分量が傾斜的に変化するよう設定するのが好ましい。
【0065】
第5発光部45の厚みは、1〜20nmの範囲が好ましい。また第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の混合比率は、99:1〜40:60(合計100)の質量比の範囲が好ましい。
【0066】
また第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分の比率が大きく、電子輸送層5側では第3の電荷輸送材料の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、ホール輸送層3を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第5発光部45の第6発光部46との界面付近における第3の電荷輸送材料の量をごく少なくし、第6発光部46との界面で急激に第3の電荷輸送材料の量が変化しないことが好ましい。また第5発光部45と第4発光部44の間でホール輸送層3を構成する成分の量が急激に変化しないようにすることが好ましい。
【0067】
第7発光部47の厚みは、1〜20nmの範囲が好ましい。また第7発光部47の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の混合比率は、99:1〜40:60(合計100)の質量比の範囲が好ましい。
【0068】
また第7発光部47は、ホール輸送層3側では第3の電荷輸送材料の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の比率が厚み方向で単調に変化するもの、電子輸送層5を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第7発光部47の第8発光部48との界面付近における第3の電荷輸送材料の量をごく少なくし、第8発光部48との界面で急激に第3の電荷輸送材料の量が変化しないことが好ましい。また第7発光部47と第4発光部44の間で電子輸送層5を構成する成分の量が急激に変化しないようにすることが好ましい。
【0069】
上記の図4乃至図7の実施の形態において、第5発光部45や第7発光部47にドープされる発光ドーパントの濃度は、第4発光部44にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第4発光部44における発光ドーパントの濃度は、ドーパント材料によって異なるが、既述のように有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする0.5〜20質量%の範囲が好ましいが、第5発光部45や第7発光部47における発光ドーパントのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4〜10質量%でかつ第4発光部44における濃度以下とするものであり、このようにすることによって、有機発光素子の駆動電圧を低減することが可能になるものである。また第5発光部45や第7発光部47において、発光ドーパントのドーパント濃度の分布は、層内で段階的に変化するものであっても良いし、第4発光部44の側の濃度が高く反対側の濃度が低い傾斜を有するものであってもよく、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が大きくなる傾斜、第4発光部44側から一定に濃度が減少する傾斜、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が小さくなる傾斜など、任意である。
【0070】
また、第4発光部44にドープされている発光ドーパントの濃度は、厚み方向に均一であっても良いが、第4発光部44の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度をその周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高くすることも好ましい。ここで第4発光部44の中央部分とは、必ずしも厚みの中心を意味するものではなく、隣接する発光部45,47、ホール輸送層3、電子輸送層5との界面をのぞいた範囲を意味するものである。第4発光部44の中央部分の主として発光に寄与する部分に対しては、この部分の発光効率を高く保つことの可能なドープ濃度を選定し、一方、発光への寄与割合が小さい第4発光部44の周辺部へのドープ量は、発光効率を重視するよりもむしろ長寿命化に効果のある濃度とすることが好ましく、このことにより、長寿命素子を得ることが可能である。適したドープ濃度は発光ドーパント材料によって異なるが、第4発光部44の中央部では一般に0.5質量%〜20質量%の範囲が適宜選定されるものであり、周辺部へのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4質量%〜10質量%で、かつ中央部の濃度以下とするのが好ましい。またドープ濃度の分布は、段階的に変化するものであっても良いし、連続的な傾斜を有して変化するものであってもよく、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が大きくなる傾斜、中央部から一定に濃度減少する傾斜、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が小さくなる傾斜が挙げられる。
【0071】
また第6発光部46や第8発光部48にドープされる発光ドーパントの濃度は、第5発光部45や第7発光層47にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第6発光部46や第8発光部48において、発光ドーパントのドーパント濃度の分布は、層内で段階的に変化するものであっても良いし、第4発光部44の側の濃度が高く反対側の濃度が低い傾斜を有するものであってもよく、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が大きくなる傾斜、第4発光部44側から一定に濃度が減少する傾斜、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が小さくなる傾斜など、任意である。
【0072】
上記のように層内で傾斜的に濃度が変化するように複数の材料を混合して、各発光部を形成する場合、この傾斜構造は任意の成膜方法で形成することができるが、複数の材料の混合比率を変えながら蒸着することによって行なうのが好ましい。例えば、有機発光素子を構成する各材料からなる蒸発源を並置し、被蒸着基板6を複数の蒸発源の上を順に移動させることによって、基板6の位置に応じて規定される混合比で各材料を基板6の表面に蒸着させて成膜することによって、濃度が厚み方向で傾斜的に変化する層を形成することができるものである。発光ドーパントを蒸発させる蒸発源は、基板6の移動方向に並置されるようにしても良いし、ホール輸送層3を構成する成分や、電子輸送層5を構成する成分、あるいは前記の第3の電荷輸送材料を蒸発させる各蒸発源を、基板6の移動方向に対して一列にならない位置に配置することも場合によっては必要である。各材料の混合比、及び混合場所は、蒸発源からの蒸発レートを蒸発源の温度あるいは蒸発源の開口度を調整したり、蒸発源間の距離を変えたり、シャッターやファン等により蒸発流の一部を面積的にあるいは時間的にカットしてコントロールすることも可能であるが、蒸発源間や、蒸発源と基板6の間に、蒸発流を制御するための部材を設け、この部材によって混合比が制御されるようにすることが好ましい。あるいは、蒸発源を傾斜させたり、蒸発パターンを傾けたりすることによって制御をすることも好ましい。
【0073】
このように蒸発源を配置した成膜装置を用いて成膜することによって、本発明の構造を備える有機発光素子を簡便に作製することが可能である。例えば、ホール輸送層3を構成する成分を蒸発させる蒸発源、前記第3の電荷輸送材料を蒸発させる蒸発源と発光ドーパントを蒸発させる蒸発源(この2つの蒸発源は基板6の流れ方向に対して直交する方向に並べる)、電子輸送層5を構成する成分を蒸発させる蒸発源をこの順に並べ、基板6をホール輸送層3を構成する成分を蒸発させる蒸発源の側から移動させることにより、第6発光部46、第5発光部45、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48が形成された図6のような有機発光素子を得ることができる。
【0074】
ここで、蒸発源からの蒸発流の広がりは、蒸発源によって異なるが、例えば一般的にはボート等の点蒸発源では(cosθ)3(θは蒸発源から鉛直方向を0とし、基板6の移動前後方向に増大する値)、るつぼ等の面蒸発源では(cosθ)4などのパターンを持つといわれているが、実際に用いる蒸発源および蒸発材料の組み合わせ毎に蒸発パターンを認識しておくことが必要である。このパターンを考慮することで、基板6の移動方向の各位置における各材料の成膜速度および材料間の混合比、及びどの位置まで各材料が成膜されるかなどの情報を得ることができ、結果として、基板6上に成膜される電荷輸送層および発光層の膜厚、組成分布を知ることが可能である。また、前情報に基づき、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして蒸発流の広がりを制限することで、各材料が成膜される基板6の位置を制限することが可能である。例えば前記第3の電荷輸送材料の蒸発流の広がりは、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして一部制限すると、前記第3の電荷輸送材料が第6発光部46、第8発光部48に含まれない素子構造を形成することができるものである。このとき、この蒸発源の横に設けられている発光ドーパントを蒸発させる蒸発源に対しては遮蔽板を設けないようにすることによって、発光ドーパントは第6発光部46、第8発光部48にも導入することが可能である。また、上下の位置関係を変えたり、蒸発源の間隔(基板6の移動方向およびそれに直交する方向)を変更したり、一つの材料に対して複数の蒸発源を連続して、もしくは他の材料を蒸発させる蒸発源を置いて配置することによっても、基板6上に成膜される材料の構成を調整することが可能である。
【0075】
本発明の有機発光素子は、発光層4が上記の構造からなるものであればよく、他の部分の構造は特に規定するものではない。以下図9に示した、基板6、陽極(電極1)、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5、陰極(電極2)からなる構造の有機発光素子について、その材料の例を説明する。
【0076】
まず上記のホール輸送層3を構成する材料としては、ホールを輸送する能力を有し、陽極からのホール注入効果を有するとともに、有機発光層4に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層3への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB(α−NPDのフェニル基がナフチル基であるもの)、TPBD(α−NPDのフェニル基、ナフチル基がビフェニル基であるものであり、置換結合位置は問わない)などを代表例とするトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、発光層4のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層4のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましく、このような化合物としては、例えばテトラフェニルシラン骨格を持つトリアリールアミン誘導体、シクロヘキサン環等共役環を持たない部位をトリアリールアミン残基間に備えるトリアリールアミン誘導体、メチル置換ビフェニル骨格、クオーターフェニレン骨格や、ヘキサフェニルベンゼン骨格など広いエネルギーギャップを有する骨格を持つトリアリールアミン誘導体などを挙げることができる。あるいは、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物なども前述の特性に応じて適宜使用される。
【0077】
また、上記の電子輸送層5を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層4に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層5への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、バソフェナントロリン、バソクプロイン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピリジン、フラン、フェナントロリンなど、複素環を有する化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、発光層4のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層4のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、1,3,5-Tris[3,5-bis(3-pyridinyl)phenyl]benzene、1,3,5-tri(4-pyrid-3-yl-phenyl) benzeneなどピリジン環を含有する誘導体、トリメシチルボラン骨格を含有するピリジン誘導体などを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0078】
また、ホール輸送層3と陽極の間にはホール注入層を、電子輸送層5と陰極との間には電子注入層を設けてもよい。これらのホール注入層や電子注入層は、上記のホール輸送層3や電子輸送層5を構成する物質やその他の材料で電極からのキャリア注入に優れる材料を単独で用いて構成してもよく、あるいは、有機材料と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、アクセプタガス等、ルイス酸やルイス塩基としてあるいはブレンステッド酸やブレンステッド塩基として機能する材料を混合または積層して構成してもよい。例えば、ホール注入層は、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、スターバーストアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを、単独で、あるいは、例えば酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、臭素、塩化鉄、塩化チタン、F4TCNQ、DDQ、酸無水物などと混合または積層して形成することができる。また電子注入層は例えば、上記の電子輸送層を構成する材料やフタロシアニン類、ポルフィリン類その他の電子受容が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを単独で、あるいはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、あるいは[化1]のような有機ドナー類を混合もしくは積層した状態で用いて形成することができる。また、金属化合物を成膜時もしくは成膜後に分解や還元することによって、金属成分を遊離させることで混合もしくは積層膜を形成するような構造でもかまわない。例えば、BCP(バソクプロイン)にCsを混合する場合、AlqにLiq([化2])を積層した後にAlを蒸着することによってその還元によるLi金属を界面に発生させる場合、BCPにCs2CO3を積層または混合する場合、などがその例である。
【0079】
【化1】
【0080】
【化2】
【0081】
本発明の有機発光素子に使用できる発光ドーパントとしては、有機発光素子用発光材料として知られる任意の材料が挙げられる。例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール、スチリルアミン誘導体、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素等をはじめとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、たとえば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。
【0082】
また本発明の有機発光材料に使用できる上記の第3の電荷輸送材料としては、発光層4に用いられるホスト材料などを例として挙げることができる。例えば、アントラセン誘導体、アルミニウム有機錯体、有機−金属錯体、スチリルアリーレン誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、チアントレン誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレン誘導体など任意のものが使用可能である。
【0083】
さらに、有機発光素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板6、陽極、陰極等には、従来から使用されているものをそのまま用いることができる。
【0084】
基板6は、発光層4で発光した光が基板6を通して出射される場合には、光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ、フッ素系樹脂等の樹脂、有機無機ハイブリッド材料などから任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板6内に基板6の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。表面形状を付与することによって光の取り出し効果を高くしたものも好ましい。また、基板6を通さずに光を射出させる場合、基板6は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわないものであり、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板6を使用することができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板6を使うことが好ましい。
【0085】
上記陽極は、素子中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極は、例えば、これらの電極材料を、基板の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、発光層4における発光を陽極を透過させて外部に照射するためには、陽極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極の膜厚は、陽極の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。尚、前記好適条件は、ホール注入層の使用や、補助電極の使用によって適宜変化してもよい。すなわち、補助電極を適切に用いることにより、補助電極と組み合わせてのシート抵抗を実用に問題のない低い値に抑えることができ、結果として陽極として用いられる導電性光透過性材料単体としてはさほど低くない抵抗値を有するものでも使用可能となる。
【0086】
また上記陰極は、発光層4中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。また、Alと他の電極材料を組み合わせて積層構造などとして構成するものであっても良い。このような陰極の電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とAlとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlとの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金などが挙げられ、具体的には、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、などとAlとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiF/Al混合物/積層体、Al/Al2O3混合物などを例として挙げることができる。また、前記のごとくアルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極の下地として用い、さらに上記の仕事関数が5eV以下である材料(あるいはこれらを含有する合金)を1層以上積層するようにしてもよい。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極側から光を取り出す構成にしても良い。この場合にも、透明電極の下地には、仕事関数が5eV以下の金属を用いることが好ましい。
【0087】
陰極は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。発光層における発光を陽極側に照射するためには、陰極の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、陰極を透明電極として形成して、陰極側から発光を取り出す場合、あるいは、透明電極とした後に何らかの手段で光を反射させ、陽極側に光を取り出す場合には、陰極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極の膜厚は、陰極の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。これらについても陽極と同様、電子注入層や補助電極の使用によって、好適な条件が適宜変化してもよい。
【0088】
さらに、陰極上にAl等の金属をスパッタで積層したり、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子等を蒸着、スパッタ、CVD、プラズマ重合、塗布した後の紫外線硬化、熱硬化その他の方法で薄膜として形成し、保護膜としての機能をもたせるようにすることも可能である。
【0089】
また、本発明の有機発光素子は、複数の発光部が中間層である等電位面を形成する層もしくは電荷発生層を介して積層された、いわゆるマルチフォトン型、マルチユニット型、積層型、タンデム型構造を有するものであってもよい。等電位面形成層もしくは電荷発生層の材料としては、例えばAg、Au、Al等の金属薄膜、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO2等の透明導電膜、いわゆるn型半導体とp型半導体の積層体、金属薄膜もしくは透明導電膜とn型半導体及び/又はp型半導体との積層体、n型半導体とp型半導体の混合物、n型半導体及び/又はp型半導体と金属との混合物、などを挙げることができる。n型半導体やp型半導体としては、無機材料であっても、有機材料であってもよく、あるいは有機材料と金属との混合物や、有機材料と金属酸化物や、有機材料と有機系アクセプタ/ドナー材料や、無機系アクセプタ/ドナー材料等の組合わせによって得られるものであってもよく、特に制限されることなく必要に応じて選定して使用することができる。
【0090】
本発明の有機発光素子の作製には、例えば、複数の材料用の蒸発源を基板6の移動方向と同一方向に並べて設置したインライン型蒸着装置を用いることができる。インライン型蒸着装置の一例を図10に示す。図10において、20は真空蒸着装置のチャンバーであり、蒸着源V1〜5がチャンバー20内に基板6の移動方向に沿って配置してある。各蒸発源V1〜5は適宜傾斜させて配置することができる。これらの蒸発源V1〜5間には仕切り21等を設け、その高さを適宜変更することにより、材料の蒸着領域、複数の材料の混合領域などを所望に設定できるようにしてある。また有機材料用の蒸発源V1〜3と、電極用材料(例えば電子注入層用材料や電極金属材料のLiFやAl)用の蒸発源V4〜5は、蒸発流が混合しないように、蒸発源V1〜3よりも基板6の移動側の後方位置に蒸発源V4〜5を配置してある。さらに、有機材料蒸着領域である蒸発源V1〜3と、電極材料蒸着領域である蒸発源V4〜5の間に、マスク交換機構部22を設けてある。各蒸発源V1〜5はシャッターを備え、シャッターの開閉によって蒸発流を制御することができるようにしてある。そして、基板6を蒸発源V1〜5の順に移動させることによって、材料が混合した層を作製することが可能であり、また基板6を移動させずに停止させ、シャッターを開閉することによって、通常の積層構造の素子を作製したり、特定の材料を蒸着させないようにしたりすることができるものである。尚、図10はあくまでも一例を示すものであり、蒸発源の数を増やしたり、複数の蒸発源を並置したり、一列から外れた位置に蒸発源を設けたり、スパッタプロセスその他のプロセスと組み合わせたりしても、もちろん構わない。また、基板6の移動は、スタート位置からエンド位置まで、一定の速度で動かすようにしても良いし、必要に応じて移動速度を変化させたり、停止させたり、逆方向に動かしたりしても構わない。さらに適宜シャッターを使用して蒸発流を制御することも可能である。また、途中で蒸着パターンを変えることが必要な場合には、マスクの変更などを行なっても構わない。
【0091】
また、有機発光素子内の各層での材料の厚み方向の分布は、事前に評価した材料の蒸発分布を用いて算出することができる。具体的な手順は以下の通りである。まず基板6をスタート位置からエンド位置の各位置に置き、シャッターを一定時間開けた時の膜厚分布を基板6の搬送領域全体に対して測定し、基板1の位置に対して関数でその膜厚分布を近似する。例えば、蒸発源を鉛直にし、成膜された材料の分布を評価すると、蒸発源と基板6を結ぶ鉛直線からの角度をθとしたとき、ある材料の蒸発源ではcosθの5乗に比例する膜厚分布を有することがその一例である。各材料についても、同様に膜厚分布を求める。そしてこれらの膜厚分布から、基板6の搬送方向の各位置における各材料のレートを算出し、各位置における材料の混合比を見積もり、厚み方向にどのように各材料が分布しているかを見積もることができる。また、蒸発源の傾斜、仕切り等によって膜厚分布が変化する場合には、その都度新たな膜厚分布を取得するものである。
【実施例】
【0092】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0093】
(比較例1)
図10の真空蒸着装置において、蒸発源V1として、ホール輸送材料である4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、蒸発源V2として、発光ドーパントであるルブレン、蒸発源V3として、電子輸送材料であるAlq3を用い、また蒸発源V4としてフッ化リチウム(LiF)、蒸発源V5としてAlを用いた。
【0094】
まず、厚み110nmのITOが陽極として図11のパターンのように成膜された0.7mm厚のガラス基板6を用意した。陽極を形成するITOのシート抵抗は、約12Ω/□である。そしてこれを洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄をした後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O3処理した。次に、株式会社三菱化学科学技術研究センターのバッファ材料「MCC−PC1020」を20nm厚にスピンコートし、真空雰囲気下230℃で30分間焼成し、真空を保ったまま常温まで冷却してバッファ層を形成した。
【0095】
次にこの基板6を1×10−4Pa以下の減圧雰囲気に設定された図10の真空蒸着装置にセットした。そして、基板6をルブレン蒸発源V2の直上位置にまで移動させ、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉して、ホール輸送層3としてα−NPDを膜厚20nmに蒸着し、次いで発光層4として、Alq3にルブレンを7質量%ドープした厚み40nmの層を蒸着し、次いで電子輸送層5として、Alq3を単独で20nmの膜厚で成膜した。
【0096】
次にマスク交換機構部22でマスクを交換した後、さらに基板6を蒸発源V4,V5の上を通過させることによって、LiFを膜厚0.5nm、Alを膜厚80nmで成膜してAl陰極を図11のパターンで形成することによって、有機発光素子を得た。
【0097】
尚、有機発光素子の形状は図11に示す通りである(図11において有機膜はバッファ層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層からなる)。また、有機発光素子の有機膜(バッファ層を除く、以下も同じ)における膜厚と材料の混合比との関係を図12に示す。
【0098】
(比較例2)
ホール輸送層3兼発光層4兼電子輸送層5として、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.07の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、基板6はルブレン蒸発源V2の直上に配置し、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉することによって、この混合比・膜厚に成膜した。
【0099】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図13に示す。
【0100】
(実施例1)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図14になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図1参照)。尚、図14のように膜厚約62nmの位置において、膜内に占めるα−NPDおよびルブレンの量はともに0である。
【0101】
(実施例2)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図15になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図2参照)。
【0102】
(実施例3)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図16になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図3参照)。
【0103】
(比較例3)
図10の真空蒸着装置において、蒸発源V3とマスク交換機構部22の間に、電子輸送材料であるフェナントロリン誘導体のDPB([化3])の蒸着源V6(図示は省略)を設けた。またAlq3は第3の電荷輸送材料となる。すなわち、基板6の移動方向に沿って、ホール輸送材料であるα−NPD、発光ドーパントであるルブレン、第3の電荷輸送材料であるAlq3、電子輸送材料であるDPB、マスク交換機構部22を介して、LiF、Alの順に蒸発源の材料が配列されている。
【0104】
【化3】
【0105】
そして、DPBで電子輸送層5を20nm厚に形成するようにしたこと以外は、比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係は図17の通りである。
【0106】
(比較例4)
ホール輸送層3兼発光層4として、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:2:0.14の質量比率で厚み60nmに成膜した。このとき、基板6はルブレン蒸発源V2の直上に配置し、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉することによって、この混合比・膜厚に成膜した。この後、DPBを20nmの膜厚で成膜して電子輸送層5を形成した。
【0107】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図18に示す。
【0108】
(比較例5)
ホール輸送層3として、α−NPDを厚み20nmに成膜し、発光層4兼電子輸送層5として、Alq3とルブレンとDPBとを2:0.14:1の質量比率で厚み60nmに成膜した。このとき、基板6はAlq3の蒸発源V3の直上に配置し、シャッターを開閉することでこの膜厚や混合比の層を作製した。
【0109】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図19に示す。
【0110】
(実施例4)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:1.7:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図20になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図4参照)。
【0111】
(実施例5)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2.5:0.1:1.3の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図21になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図5参照)。
【0112】
(実施例6)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上近傍ではα−NPDおよびDPBが基板6に付着しないようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図22になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図6)参照。
【0113】
(実施例7)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上近傍でα−NPDおよびDPBが基板6に付着するようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図23になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図7参照)。
【0114】
(実施例8)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上より、基板6の移動方向と反対側ではα−NPDが付着すると共にDPBが付着せず、基板6の移動方向側ではα−NPDが付着しないと共にDPBが付着するようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図24になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図8参照)。
【0115】
上記のように実施例1〜8及び比較例1〜5で得た有機発光素子に、30mA/cm2の定電流を通電し、輝度が80%にまで低下するのに要した時間と、評価初期の駆動電圧とを測定した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1にみられるように、各実施例の有機発光素子は、輝度が80%にまで低下するのに要する時間が長く、また駆動電圧を比較的低く抑えることができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の有機発光素子の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図9】有機発光素子の層構成を示す概略断面図である。
【図10】真空蒸着装置を示すものであり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【図11】実施例及び比較例の有機発光素子の素子形状を示す平面図である。
【図12】比較例1の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図13】比較例2の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図14】実施例1の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図15】実施例2の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図16】実施例3の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図17】比較例3の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図18】比較例4の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図19】比較例5の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図20】実施例4の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図21】実施例5の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図22】実施例6の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図23】実施例7の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図24】実施例8の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0119】
1 電極
2 電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 基板
41 第1発光部
42 第2発光部
43 第3発光部
44 第4発光部
45 第5発光部
46 第6発光部
47 第7発光部
48 第8発光部
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明光源、バックライト、フラットパネルディスプレイなどとして用いられる発光体は、高効率照明器具の実現、照明器具形状の自由化、液晶表示機を備える電子機器の小型化、長時間駆動化、フラットパネルディスプレイの薄型化等のために、高効率であり、かつ薄く軽量であるものが近年強く要求されている。
【0003】
有機発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、以前より、上記の要求を満たす可能性を有する発光体として注目を集めており、盛んに研究開発が行なわれている。特に近年、電流−光変換効率100%を原理的に有するリン光発光材料の登場に伴ない、有機発光素子の効率は飛躍的に増大し、有機発光素子の実用化可能領域は大きく広がってきた。既に、緑、赤などの単色発光素子に関しては、実デバイスとして電流−光変換効率100%に相当すると考えられる高効率発光素子が実際に実現されている。また青色発光素子に関しては、青色発光のエネルギーが大きいためにそれに適した発光材料、周辺材料の開発が進まず、他の発光色を有する有機発光素子に対して開発が遅れていたが、最近になって青色発光素子に適した発光材料や周辺材料が開発され、青色発光素子の効率も他色と同等以上に向上している。また、白色発光素子においても、60lm/W、外部量子効率30%といった高性能のものが報告されている。
【0004】
上記のように、有機発光素子において、効率はいわゆる理論値に近づきつつあるため、最近はむしろ、素子の長寿命化の観点での研究が盛んになっている。例えば新規材料を用いることによる長寿命化は、材料の熱安定性の向上、電気的安定性の向上などによって実現されていると考えられるが、初期輝度1000cd/m2の場合に半減寿命10万時間、といった値も報告されるようになっている。
【0005】
また、デバイス構造の観点から長寿命化を達成するものとして、例えば特許文献1には、キャリア輸送層にキャリア輸送用のドーパントをドープしたものが提案されており、また特許文献2には、隣接する層を混合させ、その混合比率が徐々に変化する構造を持った素子が提案されている。
【特許文献1】特開2000−164362号公報
【特許文献2】特開2004−241188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えば有機発光素子を照明に応用する場合、現状の蛍光灯の輝度、すなわち数千〜一万cd/m2で使用することが必要となり、その際の寿命は上記の寿命より短くなり、例えば数千時間程度にまで低下する。また、有機発光素子をディスプレイに応用する場合には、焼き付きの発生、すなわち5%程度の輝度劣化が寿命であると考えられるが、この場合にも寿命は数千時間程度に留まることになる。
【0007】
従って、材料の改良は勿論のこと、さらにデバイス構造の観点からも、有機発光素子の長寿命化をさらに検討する必要があるのが現状である。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、発光ドーパントをドープする領域の構造、ドープ領域およびドープ濃度分布を制御することにより、寿命特性を改善することができ、さらに電圧上昇や発光効率低下等の悪影響を排除することができる有機発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成され、第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、第2発光部42と第1発光部41の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第2発光部42中のホール輸送層3を構成する成分の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第1発光部41のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第1発光部41のこのホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0011】
また請求項2の発明は、請求項1において、第2発光部42にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、第2発光部42への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部41と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第3発光部43を、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、第3発光部43と第1発光部41の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第3発光部43中の電子輸送層5を構成する成分の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第1発光部41のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第1発光部41のこのホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層4を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0015】
また請求項4の発明は、請求項3において、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第2発光部42を、第1発光部41とホール輸送層3の間に備えることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、ホール輸送層3の電子による劣化を抑制することができ、長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【0017】
また請求項5の発明は、請求項3又は4において、第3発光部43にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、第3発光部43への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0019】
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、第1発光部の中央部分にドープされている発光ドーパント材料の濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、第1発光部41の中央部分の主として発光に寄与する部分の発光効率を高く保つことができるとともに、発光への寄与割合が小さい第1発光部41の周辺部へのドープ量を長寿命化に効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【0021】
本発明の請求項7に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部44と、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部45と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46を、電子輸送層5とホール輸送層3の間にこの順に備えて形成され、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45と第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分および第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第5発光部45のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第5発光部45のこのホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0023】
本発明の請求項8に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層4は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部54と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部57と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第8発光部58を、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第7発光部57は、ホール輸送層3側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0024】
この発明によれば、隣接する各発光部54,57,58の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第7発光部57及び第8発光部58中の電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また第7発光部47のキャリア輸送性を第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能となるものである。さらに、第7発光部47のキャリア輸送性を第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0025】
また請求項9の発明は、請求項8において、上記第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントを含む第5発光部45と、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46を、第4発光部44とホール輸送層3の間にこの順に備え、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0026】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45及び第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第5発光部45のキャリア輸送性をホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0027】
また請求項10の発明は、請求項9において、第4発光部44に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも含むことを特徴とするものである。
【0028】
この発明によれば、隣接する各発光部44,45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第4発光部44、第5発光部45、第6発光部46中のホール輸送層を構成する成分や第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48中の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47のキャリア輸送性を制御することによって、寿命特性を向上することが可能になるものである。さらに、第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0029】
本発明の請求項11に係る有機発光素子は、対向する2つの電極1,2間に、ホール輸送層3と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層4と、電子輸送層5とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層3は、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層5を構成する成分を含まない第6発光部46と、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部45と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部47と、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層3を構成する成分を含まない第8発光部48とを、ホール輸送層3と電子輸送層5の間にこの順に備えて形成され、第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分が多く電子輸送層5側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有し、第7発光部47は、ホール輸送層3側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層5側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とするものである。
【0030】
この発明によれば、隣接する各発光部45,46,47,48の間のキャリア注入障壁を低減することによって、界面のキャリア蓄積による劣化を抑制することができ、かつ、第5発光部45及び第6発光部46中のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第7発光部47及び第8発光部48中の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の電気化学的劣化を発光ドーパントによって低減することによって、また、第5発光部45及び第7発光部47のキャリア輸送性をホール輸送層3の成分や電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の濃度傾斜で制御することによって、寿命特性を向上させることが可能になるものである。さらに、第5発光部45及び第7発光部47のホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料の濃度傾斜構造により、これらの材料の混合による電圧上昇や発光効率の低下などの悪影響を抑制することが可能になるものである。
【0031】
また請求項12の発明は、請求項7、9、10のいずれかにおいて、第5発光部45にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部44にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0032】
この発明によれば、第5発光部45への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0033】
また請求項13の発明は、請求項8乃至10のいずれかにおいて、第7発光部47にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とするものである。
【0034】
この発明によれば、第7発光部47への発光ドーパントのドープ量を長寿命化により効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能となるものである。
【0035】
また請求項14の発明は、請求項7乃至10のいずれかにおいて、第4発光部44の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とするものである。
【0036】
この発明によれば、第4発光部44の中央部分の主として発光に寄与する部分の発光効率を高く保つことができるとともに、発光への寄与割合が小さい第4発光部44の周辺部へのドープ量を長寿命化に効果のある濃度にすることができ、その部分の抵抗値を低下させて駆動電圧の低減を実現することができるものであり、低電圧駆動かつ長寿命の有機発光素子を得ることが可能になるものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、発光層4を、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層4を構成する成分等の混合物からなるホスト材料中に発光ドーパントをドープさせた複数層の発光部で形成することにより、長寿命かつ高効率を呈し、さらに電圧上昇や発光効率低下等の悪影響を排除した有機発光素子を得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0039】
本発明に係る有機発光素子は、2つの電極1,2、すなわち陽極(アノード)と陰極(カソード)の間に有機発光層4を備えて形成されるものである。図9はこのような有機発光素子の構造の一例を示すものであり、陽極となる電極1と陰極となる電極2の間に形成される発光層4と、発光層4と電極1との間に形成されるホール輸送層3と、発光層4と電極2との間に形成される電子輸送層5とを備え、これらを基板6の表面に積層したものである。図9の有機発光素子では、電極1は光透過性の電極として透明な基板6の表面に形成してあり、電極2は光反射性の電極として形成してある。また、ホール輸送層3や電子輸送層5の電極1,2側には、ホール注入層や電子注入層などを設けるようにしてもよいが、図9ではこれらの図示は省略してある。
【0040】
図1は請求項1の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、電子輸送層5の側の第1発光部41と、ホール輸送層3の側の第2発光部42との2層で形成してある。
【0041】
第1発光部41は、ホール輸送層3を構成する成分であるホール輸送材料と、電子輸送層5を構成する成分である電子輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものである。また第2発光部42は、ホール輸送層3を構成する成分であるホール輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、電子輸送層5を構成する成分は含まないものである。ここで、電子輸送層5を構成する成分を含まないとは、全く含まない場合は勿論、第2発光部42の特性が電子輸送層5を構成する成分で影響を受けない程度の微量であれば許容されるものであり、電子輸送層5を構成する成分を実質的に含まないということを意味するものである。また、発光ドーパントとして用いる材料は1種類でも良いし、2種類以上を混合したり、順次種類を変更しながら用いても構わない。
【0042】
第2発光部42の厚みは、1nm〜ホール輸送層3の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第2発光部42において、ホール輸送層3との界面から5nmの範囲には発光ドーパントがドープされていないことが好ましい。第2発光部42に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第1発光部41の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第2発光部42の発光ドーパントの量を第1発光部41の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第2発光部42からの発光量が減少し、第1発光部41からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が可能である。
【0043】
第1発光部41の厚みは、1〜50nmの範囲が好ましい。また第1発光部41のホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の混合比率は、10:90〜90:10(合計100)の質量比の範囲が好ましい。さらに第1発光部41に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする濃度である、0.5質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0044】
ここで第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の構成成分の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5の構成成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5の側ほど、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、などが挙げられる。また、第1発光部41の第2発光部42との界面付近における電子輸送層5を構成する成分の量を0〜10質量%程度と少なくし、第2発光部42との界面で急激に電子輸送層5を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。また、第1発光部41の電子輸送層5との界面付近におけるホール輸送層3を構成する成分の量は0〜10質量%程度と少なくし、電子輸送層5との界面で急激にホール輸送層3を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。
【0045】
図2は請求項3の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、ホール輸送層3の側の既述の第1発光部41と、電子輸送層5の側の第3発光部43との2層で形成してある。
【0046】
第3発光部43は、電子輸送層5を構成する成分である電子輸送材料と、発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、ホール輸送層3を構成する成分は実質的に含まないものである。また、発光ドーパントとして用いる材料は1種類でも良いし、2種類以上を混合したり、順次変更しながら用いても構わない。
【0047】
第3発光部43の厚みは、1nm〜電子輸送層5の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第3発光部43において、電子輸送層5との界面から5nmの範囲には発光ドーパントがドープされていないことが好ましい。第3発光部43に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第1発光部41の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第3発光部43の発光ドーパントの量を第1発光部41の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第3発光部43からの発光量が減少し、第1発光部41からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が可能である。
【0048】
第1発光部41の厚み、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の混合比率、発光ドーパントのドープ量は既述の通りである。また第1発光部41は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3の構成成分の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5の構成成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5の側ほど、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3の構成成分の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第1発光部41の第3発光部43との界面付近におけるホール輸送層3を構成する成分の量を0〜10質量%程度と少なくし、第3発光部43との界面で急激にホール輸送層3を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。また、第1発光部41のホール輸送層3との界面付近における電子輸送層5を構成する成分の量は0〜10質量%程度と少なくし、ホール輸送層3との界面で急激に電子輸送層5を構成する成分の量が変化しないことが好ましい。
【0049】
図3は請求項4の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、第1発光部41、第2発光部42、第3発光部43の3層で形成するようにしたものであり、第1発光部41のホール輸送層3側に第2発光部42を、電子輸送層5側に第3発光部43を設けるようにしてある。この構成により、第1発光部41と第2発光部42中のホール輸送層3を構成するホール輸送材料、および、第1発光部41と第3発光部43中の電子輸送層5を構成する電子輸送材料の、電気化学的劣化を抑制することが可能となるものである。
【0050】
図3の有機発光素子では、第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分が含まれず、第3発光部43にホール輸送層3を構成する成分が含まれないものとなっている。このような構成にすることにより、これらの発光部42,43では、発光ドーパントが発光部42,43の電気化学的劣化を抑制する成分として機能するものである。第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分を導入し、第3発光部43にホール輸送層3を構成する成分を導入すると、発光効率が低下することがあり、好ましくない。ただし、第2発光部42に電子輸送層5を構成する成分が、あるいは第3発光部43にホール輸送層を構成する成分が、ごく微量含まれているだけの場合は、さほど大きな素子特性への影響はない。
【0051】
上記の図1及び図3の実施の形態において、第2発光部42にドープされる発光ドーパントの濃度は、第1発光部41にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。また上記の図2及び図3の実施の形態において、第3発光部43にドープされる発光ドーパントの濃度は、第1発光部41にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第1発光部41における発光ドーパントの濃度は、ドーパント材料によって異なるが、既述のように有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする0.5〜20質量%の範囲が好ましいが、第2発光部42や第3発光部43における発光ドーパントのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4〜10質量%でかつ第1発光部41における濃度以下とするものであり、このようにすることによって、有機発光素子の駆動電圧を低減することが可能になるものである。
【0052】
上記の各実施の形態において、第1発光部41にドープされている発光ドーパントの濃度は、厚み方向に均一であっても良いが、第1発光部41の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度をその周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高くすることも好ましい。ここで第1発光部41の中央部分とは、必ずしも厚みの中心を意味するものではなく、隣接する発光部42,43やホール輸送層3との界面をのぞいた範囲を意味するものである。第1発光部41の中央部分の主として発光に寄与する部分に対しては、この部分の発光効率を高く保つことの可能なドープ濃度を選定し、一方、発光への寄与割合が小さい第1発光部41の周辺部へのドープ量は、発光効率を重視するよりもむしろ長寿命化に効果のある濃度とすることが好ましく、このことにより、長寿命素子を得ることが可能である。適したドープ濃度は発光ドーパント材料によって異なるが、第1発光部41の中央部では一般に0.5質量%〜20質量%の範囲が適宜選定されるものであり、周辺部へのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4質量%〜10質量%で、かつ中央部の濃度以下とするのが好ましい。またドープ濃度の分布は、段階的に変化するものであっても良いし、連続的な傾斜を有して変化するものであってもよく、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が大きくなる傾斜、中央部から一定に濃度減少する傾斜、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が小さくなる傾斜が挙げられる。また、本発明の有機発光素子に用いられる発光ドーパントは、1種類でも良いし、2種類以上でもよい。2種類以上発光ドーパントを用いる場合、上記の濃度分布の条件に反しない限り、発光ドーパントの特性に応じて、任意の方法で使用することができ、例えば厚み方向の場所によって種類を分けて用いる方法、混合して用いる方法、順次種類を変更しながら用いる方法など、種々の方法で用いることができる。
【0053】
図4は請求項7の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、第4発光部44、第5発光部45、第6発光部46の3層で形成するようにしてある。そして第5発光部45の電子輸送層5側に第4発光部44を、ホール輸送層3側に第6発光部46を積層するようにしてある。
【0054】
第4発光部44は、ホール輸送層3を構成する成分や電子輸送層5を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、また第5発光部45は、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、第6発光部46は、ホール輸送層3を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成され、電子輸送層を構成する成分を実質的に含まないものである。
【0055】
また図5は請求項8の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48の3層で形成するようにしてある。そして第7発光部47のホール輸送層3側に第4発光部44を、電子輸送層5側に第8発光部48を積層するようにしてある。
【0056】
第7発光部47は、上記の第3の電荷輸送材料と電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成されるものであり、第8発光部48は、電子輸送層5を構成する成分と発光ドーパントとを混合して形成され、ホール輸送層3を構成する成分を実質的に含まないものである。
【0057】
また図6は請求項9の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の、第4発光部44、第5発光層45、第6発光層46、第7発光部47、第8発光部48の5層で形成するようにしてある。そしてホール輸送層3の側から電子輸送層5の側へ、第6発光部46、第5発光部45、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48の順に積層するようにしてある。
【0058】
図7は請求項10の発明の実施の形態の一例を示すものであり、図6の層構成の発光層4において、第4発光部44に、上記第3の電荷輸送材料と発光ドーパントの他に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも混合するようにしたものである。
【0059】
また図8は請求項11の発明の実施の形態の一例を示すものであり、発光層4を、既述の、第5発光層45、第6発光層46、第7発光部47、第8発光部48の4層で形成するようにしたものである。そしてホール輸送層3の側から電子輸送層5の側へ、第6発光部46、第5発光部45、第7発光部47、第8発光部48の順に積層するようにしてある。
【0060】
上記の図4〜図8の実施の形態において、第6発光部46の厚みは、1nm〜ホール輸送層3の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第6発光部46に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第6発光部46の発光ドーパントの量を第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第6発光部46からの発光量が減少し、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が期待できる。
【0061】
また第8発光部48の厚みは、1nm〜電子輸送層5の膜厚の範囲であり、好ましくは3nm〜20nmの範囲である。また第8発光部48に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、一般に第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントのドーパント量と同等にするかそれ以下とするのが好ましい。第8発光部48の発光ドーパントの量を第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47の発光ドーパントの量と同等量以下にした場合、一般に第8発光部48からの発光量が減少し、第4発光部44、第5発光部45、第7発光部47からの発光を分率高く得ることが可能であり、また駆動電圧の低減が期待できる。
【0062】
ここで、第6発光部46には電子輸送層5を構成する成分や第3の電荷輸送材料が含まれず、第8発光部48にはホール輸送層3を構成する成分や第3の電荷輸送材料が含まれないものとなっている。このような構成にすることにより、これらの発光部46,48では、発光ドーパントが発光部46,48の電気化学的劣化を抑制する成分として機能するものである。第6発光部46に電子輸送層5を構成する成分を導入し、第8発光部48にホール輸送層3を構成する成分を導入すると、素子特性の低下や寿命低下がみられることがあり、好ましくない。ただし、第6発光部46に電子輸送層5を構成する成分が、あるいは第8発光部48にホール輸送層を構成する成分が、ごく微量含まれているだけの場合は、さほど大きな素子特性への影響はない。
【0063】
第4発光部44の厚みは、1〜50nmの範囲が好ましい。また第4発光部44に添加する発光ドーパントの量は、特に限定はしないが、有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする濃度である、0.5質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0064】
図7の実施の形態では、第4発光部44に、第3の電荷輸送材料や発光ドーパントの他に、ホール輸送層3を構成する成分と電子輸送層5を構成する成分をも含有させてある。第4発光部44をこのような構成に形成することにより、第4発光部44に含まれる第3の電荷輸送材料の劣化を抑制することができるとともに、第4発光部44のキャリア輸送性をコントロールして、発光効率や寿命を向上させることが可能となる。第4発光部44にこれらの成分を含有させる場合、第4発光部44中における第3の電荷輸送材料の分率は特に限定しないが、第3電荷輸送材料:ホール輸送層を構成する成分:電子輸送層を構成する成分=98〜40:1〜40:1〜40(合計100)の質量比率となるように混合比率を設定するのが好ましい。また第4発光部44中のホール輸送層を構成する成分、電子輸送層を構成する成分の混合濃度分布は、ホール輸送層3を構成する成分の量が第4発光部44のホール輸送層3側で最も高くなり、電子輸送層3を構成する成分の量が第4発光部44の電子輸送層5側で最も高くなり、かつ成分量が傾斜的に変化するよう設定するのが好ましい。
【0065】
第5発光部45の厚みは、1〜20nmの範囲が好ましい。また第5発光部45のホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の混合比率は、99:1〜40:60(合計100)の質量比の範囲が好ましい。
【0066】
また第5発光部45は、ホール輸送層3側ではホール輸送層3を構成する成分の比率が大きく、電子輸送層5側では第3の電荷輸送材料の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、ホール輸送層3を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、ホール輸送層3を構成する成分と第3の電荷輸送材料の比率が厚み方向で単調に変化するもの、ホール輸送層3を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第5発光部45の第6発光部46との界面付近における第3の電荷輸送材料の量をごく少なくし、第6発光部46との界面で急激に第3の電荷輸送材料の量が変化しないことが好ましい。また第5発光部45と第4発光部44の間でホール輸送層3を構成する成分の量が急激に変化しないようにすることが好ましい。
【0067】
第7発光部47の厚みは、1〜20nmの範囲が好ましい。また第7発光部47の電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の混合比率は、99:1〜40:60(合計100)の質量比の範囲が好ましい。
【0068】
また第7発光部47は、ホール輸送層3側では第3の電荷輸送材料の比率が大きく、電子輸送層5側では電子輸送層5を構成する成分の比率が大きくなるような組成に形成されるものである。これは、両成分の混合比が異なる複数の層を積層したものではなく、傾斜的に両成分の混合比が順次異なる濃度分布となるようにしたものである。傾斜の様式は、電子輸送層5を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に小さくなるもの、電子輸送層5を構成する成分と第3の電荷輸送材料の比率が厚み方向で単調に変化するもの、電子輸送層5を構成する成分もしくは第3の電荷輸送材料の比率の減少度合いが次第に大きくなるもの、などが挙げられる。また、第7発光部47の第8発光部48との界面付近における第3の電荷輸送材料の量をごく少なくし、第8発光部48との界面で急激に第3の電荷輸送材料の量が変化しないことが好ましい。また第7発光部47と第4発光部44の間で電子輸送層5を構成する成分の量が急激に変化しないようにすることが好ましい。
【0069】
上記の図4乃至図7の実施の形態において、第5発光部45や第7発光部47にドープされる発光ドーパントの濃度は、第4発光部44にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第4発光部44における発光ドーパントの濃度は、ドーパント材料によって異なるが、既述のように有機発光素子が高い発光効率を呈することを可能とする0.5〜20質量%の範囲が好ましいが、第5発光部45や第7発光部47における発光ドーパントのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4〜10質量%でかつ第4発光部44における濃度以下とするものであり、このようにすることによって、有機発光素子の駆動電圧を低減することが可能になるものである。また第5発光部45や第7発光部47において、発光ドーパントのドーパント濃度の分布は、層内で段階的に変化するものであっても良いし、第4発光部44の側の濃度が高く反対側の濃度が低い傾斜を有するものであってもよく、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が大きくなる傾斜、第4発光部44側から一定に濃度が減少する傾斜、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が小さくなる傾斜など、任意である。
【0070】
また、第4発光部44にドープされている発光ドーパントの濃度は、厚み方向に均一であっても良いが、第4発光部44の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度をその周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高くすることも好ましい。ここで第4発光部44の中央部分とは、必ずしも厚みの中心を意味するものではなく、隣接する発光部45,47、ホール輸送層3、電子輸送層5との界面をのぞいた範囲を意味するものである。第4発光部44の中央部分の主として発光に寄与する部分に対しては、この部分の発光効率を高く保つことの可能なドープ濃度を選定し、一方、発光への寄与割合が小さい第4発光部44の周辺部へのドープ量は、発光効率を重視するよりもむしろ長寿命化に効果のある濃度とすることが好ましく、このことにより、長寿命素子を得ることが可能である。適したドープ濃度は発光ドーパント材料によって異なるが、第4発光部44の中央部では一般に0.5質量%〜20質量%の範囲が適宜選定されるものであり、周辺部へのドープ濃度は、これに対して低い濃度、例えば0.4質量%〜10質量%で、かつ中央部の濃度以下とするのが好ましい。またドープ濃度の分布は、段階的に変化するものであっても良いし、連続的な傾斜を有して変化するものであってもよく、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が大きくなる傾斜、中央部から一定に濃度減少する傾斜、中央部から離れるに従って次第に濃度減少が小さくなる傾斜が挙げられる。
【0071】
また第6発光部46や第8発光部48にドープされる発光ドーパントの濃度は、第5発光部45や第7発光層47にドープされる発光ドーパントの濃度よりも低いことが好ましい。第6発光部46や第8発光部48において、発光ドーパントのドーパント濃度の分布は、層内で段階的に変化するものであっても良いし、第4発光部44の側の濃度が高く反対側の濃度が低い傾斜を有するものであってもよく、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が大きくなる傾斜、第4発光部44側から一定に濃度が減少する傾斜、第4発光部44側から離れるに従って次第に濃度の減少が小さくなる傾斜など、任意である。
【0072】
上記のように層内で傾斜的に濃度が変化するように複数の材料を混合して、各発光部を形成する場合、この傾斜構造は任意の成膜方法で形成することができるが、複数の材料の混合比率を変えながら蒸着することによって行なうのが好ましい。例えば、有機発光素子を構成する各材料からなる蒸発源を並置し、被蒸着基板6を複数の蒸発源の上を順に移動させることによって、基板6の位置に応じて規定される混合比で各材料を基板6の表面に蒸着させて成膜することによって、濃度が厚み方向で傾斜的に変化する層を形成することができるものである。発光ドーパントを蒸発させる蒸発源は、基板6の移動方向に並置されるようにしても良いし、ホール輸送層3を構成する成分や、電子輸送層5を構成する成分、あるいは前記の第3の電荷輸送材料を蒸発させる各蒸発源を、基板6の移動方向に対して一列にならない位置に配置することも場合によっては必要である。各材料の混合比、及び混合場所は、蒸発源からの蒸発レートを蒸発源の温度あるいは蒸発源の開口度を調整したり、蒸発源間の距離を変えたり、シャッターやファン等により蒸発流の一部を面積的にあるいは時間的にカットしてコントロールすることも可能であるが、蒸発源間や、蒸発源と基板6の間に、蒸発流を制御するための部材を設け、この部材によって混合比が制御されるようにすることが好ましい。あるいは、蒸発源を傾斜させたり、蒸発パターンを傾けたりすることによって制御をすることも好ましい。
【0073】
このように蒸発源を配置した成膜装置を用いて成膜することによって、本発明の構造を備える有機発光素子を簡便に作製することが可能である。例えば、ホール輸送層3を構成する成分を蒸発させる蒸発源、前記第3の電荷輸送材料を蒸発させる蒸発源と発光ドーパントを蒸発させる蒸発源(この2つの蒸発源は基板6の流れ方向に対して直交する方向に並べる)、電子輸送層5を構成する成分を蒸発させる蒸発源をこの順に並べ、基板6をホール輸送層3を構成する成分を蒸発させる蒸発源の側から移動させることにより、第6発光部46、第5発光部45、第4発光部44、第7発光部47、第8発光部48が形成された図6のような有機発光素子を得ることができる。
【0074】
ここで、蒸発源からの蒸発流の広がりは、蒸発源によって異なるが、例えば一般的にはボート等の点蒸発源では(cosθ)3(θは蒸発源から鉛直方向を0とし、基板6の移動前後方向に増大する値)、るつぼ等の面蒸発源では(cosθ)4などのパターンを持つといわれているが、実際に用いる蒸発源および蒸発材料の組み合わせ毎に蒸発パターンを認識しておくことが必要である。このパターンを考慮することで、基板6の移動方向の各位置における各材料の成膜速度および材料間の混合比、及びどの位置まで各材料が成膜されるかなどの情報を得ることができ、結果として、基板6上に成膜される電荷輸送層および発光層の膜厚、組成分布を知ることが可能である。また、前情報に基づき、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして蒸発流の広がりを制限することで、各材料が成膜される基板6の位置を制限することが可能である。例えば前記第3の電荷輸送材料の蒸発流の広がりは、基板6の移動の前後方向に遮蔽板を設けるなどして一部制限すると、前記第3の電荷輸送材料が第6発光部46、第8発光部48に含まれない素子構造を形成することができるものである。このとき、この蒸発源の横に設けられている発光ドーパントを蒸発させる蒸発源に対しては遮蔽板を設けないようにすることによって、発光ドーパントは第6発光部46、第8発光部48にも導入することが可能である。また、上下の位置関係を変えたり、蒸発源の間隔(基板6の移動方向およびそれに直交する方向)を変更したり、一つの材料に対して複数の蒸発源を連続して、もしくは他の材料を蒸発させる蒸発源を置いて配置することによっても、基板6上に成膜される材料の構成を調整することが可能である。
【0075】
本発明の有機発光素子は、発光層4が上記の構造からなるものであればよく、他の部分の構造は特に規定するものではない。以下図9に示した、基板6、陽極(電極1)、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5、陰極(電極2)からなる構造の有機発光素子について、その材料の例を説明する。
【0076】
まず上記のホール輸送層3を構成する材料としては、ホールを輸送する能力を有し、陽極からのホール注入効果を有するとともに、有機発光層4に対して優れたホール注入効果を有し、また電子のホール輸送層3への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB(α−NPDのフェニル基がナフチル基であるもの)、TPBD(α−NPDのフェニル基、ナフチル基がビフェニル基であるものであり、置換結合位置は問わない)などを代表例とするトリアリールアミン系化合物を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、発光層4のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層4のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましく、このような化合物としては、例えばテトラフェニルシラン骨格を持つトリアリールアミン誘導体、シクロヘキサン環等共役環を持たない部位をトリアリールアミン残基間に備えるトリアリールアミン誘導体、メチル置換ビフェニル骨格、クオーターフェニレン骨格や、ヘキサフェニルベンゼン骨格など広いエネルギーギャップを有する骨格を持つトリアリールアミン誘導体などを挙げることができる。あるいは、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物なども前述の特性に応じて適宜使用される。
【0077】
また、上記の電子輸送層5を構成する材料としては、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果を有するとともに、有機発光層4に対して優れた電子注入効果を有し、さらにホールの電子輸送層5への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物を挙げることができる。このような化合物としては、例えば、バソフェナントロリン、バソクプロイン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ピリジン、フラン、フェナントロリンなど、複素環を有する化合物およびそれらの誘導体を挙げることができる。特にリン光発光素子の場合には、発光層4のドーパントのエネルギーギャップ及び/又はT1準位、及び発光層4のホストのエネルギーギャップ及び/又はT1準位より大きな、エネルギーギャップ及び/又はT1準位を有するワイドエネルギーギャップ材料であることが好ましい。このような化合物としては、例えば、1,3,5-Tris[3,5-bis(3-pyridinyl)phenyl]benzene、1,3,5-tri(4-pyrid-3-yl-phenyl) benzeneなどピリジン環を含有する誘導体、トリメシチルボラン骨格を含有するピリジン誘導体などを挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0078】
また、ホール輸送層3と陽極の間にはホール注入層を、電子輸送層5と陰極との間には電子注入層を設けてもよい。これらのホール注入層や電子注入層は、上記のホール輸送層3や電子輸送層5を構成する物質やその他の材料で電極からのキャリア注入に優れる材料を単独で用いて構成してもよく、あるいは、有機材料と電荷移動錯体を形成する金属、半導体、有機材料、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属窒化物、アクセプタガス等、ルイス酸やルイス塩基としてあるいはブレンステッド酸やブレンステッド塩基として機能する材料を混合または積層して構成してもよい。例えば、ホール注入層は、フタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、スターバーストアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを、単独で、あるいは、例えば酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、臭素、塩化鉄、塩化チタン、F4TCNQ、DDQ、酸無水物などと混合または積層して形成することができる。また電子注入層は例えば、上記の電子輸送層を構成する材料やフタロシアニン類、ポルフィリン類その他の電子受容が可能な低分子化合物、高分子化合物など任意のものを単独で、あるいはアルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、あるいは[化1]のような有機ドナー類を混合もしくは積層した状態で用いて形成することができる。また、金属化合物を成膜時もしくは成膜後に分解や還元することによって、金属成分を遊離させることで混合もしくは積層膜を形成するような構造でもかまわない。例えば、BCP(バソクプロイン)にCsを混合する場合、AlqにLiq([化2])を積層した後にAlを蒸着することによってその還元によるLi金属を界面に発生させる場合、BCPにCs2CO3を積層または混合する場合、などがその例である。
【0079】
【化1】
【0080】
【化2】
【0081】
本発明の有機発光素子に使用できる発光ドーパントとしては、有機発光素子用発光材料として知られる任意の材料が挙げられる。例えばアントラセン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール、スチリルアミン誘導体、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素等をはじめとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、たとえば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。
【0082】
また本発明の有機発光材料に使用できる上記の第3の電荷輸送材料としては、発光層4に用いられるホスト材料などを例として挙げることができる。例えば、アントラセン誘導体、アルミニウム有機錯体、有機−金属錯体、スチリルアリーレン誘導体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、チアントレン誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、フルオレン誘導体など任意のものが使用可能である。
【0083】
さらに、有機発光素子を構成するその他の部材である、積層された素子を保持する基板6、陽極、陰極等には、従来から使用されているものをそのまま用いることができる。
【0084】
基板6は、発光層4で発光した光が基板6を通して出射される場合には、光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ、フッ素系樹脂等の樹脂、有機無機ハイブリッド材料などから任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板6内に基板6の母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。表面形状を付与することによって光の取り出し効果を高くしたものも好ましい。また、基板6を通さずに光を射出させる場合、基板6は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわないものであり、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板6を使用することができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板6を使うことが好ましい。
【0085】
上記陽極は、素子中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極は、例えば、これらの電極材料を、基板の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、発光層4における発光を陽極を透過させて外部に照射するためには、陽極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極の膜厚は、陽極の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。尚、前記好適条件は、ホール注入層の使用や、補助電極の使用によって適宜変化してもよい。すなわち、補助電極を適切に用いることにより、補助電極と組み合わせてのシート抵抗を実用に問題のない低い値に抑えることができ、結果として陽極として用いられる導電性光透過性材料単体としてはさほど低くない抵抗値を有するものでも使用可能となる。
【0086】
また上記陰極は、発光層4中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。また、Alと他の電極材料を組み合わせて積層構造などとして構成するものであっても良い。このような陰極の電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とAlとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlとの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金などが挙げられ、具体的には、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、などとAlとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiF/Al混合物/積層体、Al/Al2O3混合物などを例として挙げることができる。また、前記のごとくアルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極の下地として用い、さらに上記の仕事関数が5eV以下である材料(あるいはこれらを含有する合金)を1層以上積層するようにしてもよい。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極側から光を取り出す構成にしても良い。この場合にも、透明電極の下地には、仕事関数が5eV以下の金属を用いることが好ましい。
【0087】
陰極は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。発光層における発光を陽極側に照射するためには、陰極の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、陰極を透明電極として形成して、陰極側から発光を取り出す場合、あるいは、透明電極とした後に何らかの手段で光を反射させ、陽極側に光を取り出す場合には、陰極の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極の膜厚は、陰極の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。これらについても陽極と同様、電子注入層や補助電極の使用によって、好適な条件が適宜変化してもよい。
【0088】
さらに、陰極上にAl等の金属をスパッタで積層したり、フッ素系化合物、フッ素系高分子、その他の有機分子、高分子等を蒸着、スパッタ、CVD、プラズマ重合、塗布した後の紫外線硬化、熱硬化その他の方法で薄膜として形成し、保護膜としての機能をもたせるようにすることも可能である。
【0089】
また、本発明の有機発光素子は、複数の発光部が中間層である等電位面を形成する層もしくは電荷発生層を介して積層された、いわゆるマルチフォトン型、マルチユニット型、積層型、タンデム型構造を有するものであってもよい。等電位面形成層もしくは電荷発生層の材料としては、例えばAg、Au、Al等の金属薄膜、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO2等の透明導電膜、いわゆるn型半導体とp型半導体の積層体、金属薄膜もしくは透明導電膜とn型半導体及び/又はp型半導体との積層体、n型半導体とp型半導体の混合物、n型半導体及び/又はp型半導体と金属との混合物、などを挙げることができる。n型半導体やp型半導体としては、無機材料であっても、有機材料であってもよく、あるいは有機材料と金属との混合物や、有機材料と金属酸化物や、有機材料と有機系アクセプタ/ドナー材料や、無機系アクセプタ/ドナー材料等の組合わせによって得られるものであってもよく、特に制限されることなく必要に応じて選定して使用することができる。
【0090】
本発明の有機発光素子の作製には、例えば、複数の材料用の蒸発源を基板6の移動方向と同一方向に並べて設置したインライン型蒸着装置を用いることができる。インライン型蒸着装置の一例を図10に示す。図10において、20は真空蒸着装置のチャンバーであり、蒸着源V1〜5がチャンバー20内に基板6の移動方向に沿って配置してある。各蒸発源V1〜5は適宜傾斜させて配置することができる。これらの蒸発源V1〜5間には仕切り21等を設け、その高さを適宜変更することにより、材料の蒸着領域、複数の材料の混合領域などを所望に設定できるようにしてある。また有機材料用の蒸発源V1〜3と、電極用材料(例えば電子注入層用材料や電極金属材料のLiFやAl)用の蒸発源V4〜5は、蒸発流が混合しないように、蒸発源V1〜3よりも基板6の移動側の後方位置に蒸発源V4〜5を配置してある。さらに、有機材料蒸着領域である蒸発源V1〜3と、電極材料蒸着領域である蒸発源V4〜5の間に、マスク交換機構部22を設けてある。各蒸発源V1〜5はシャッターを備え、シャッターの開閉によって蒸発流を制御することができるようにしてある。そして、基板6を蒸発源V1〜5の順に移動させることによって、材料が混合した層を作製することが可能であり、また基板6を移動させずに停止させ、シャッターを開閉することによって、通常の積層構造の素子を作製したり、特定の材料を蒸着させないようにしたりすることができるものである。尚、図10はあくまでも一例を示すものであり、蒸発源の数を増やしたり、複数の蒸発源を並置したり、一列から外れた位置に蒸発源を設けたり、スパッタプロセスその他のプロセスと組み合わせたりしても、もちろん構わない。また、基板6の移動は、スタート位置からエンド位置まで、一定の速度で動かすようにしても良いし、必要に応じて移動速度を変化させたり、停止させたり、逆方向に動かしたりしても構わない。さらに適宜シャッターを使用して蒸発流を制御することも可能である。また、途中で蒸着パターンを変えることが必要な場合には、マスクの変更などを行なっても構わない。
【0091】
また、有機発光素子内の各層での材料の厚み方向の分布は、事前に評価した材料の蒸発分布を用いて算出することができる。具体的な手順は以下の通りである。まず基板6をスタート位置からエンド位置の各位置に置き、シャッターを一定時間開けた時の膜厚分布を基板6の搬送領域全体に対して測定し、基板1の位置に対して関数でその膜厚分布を近似する。例えば、蒸発源を鉛直にし、成膜された材料の分布を評価すると、蒸発源と基板6を結ぶ鉛直線からの角度をθとしたとき、ある材料の蒸発源ではcosθの5乗に比例する膜厚分布を有することがその一例である。各材料についても、同様に膜厚分布を求める。そしてこれらの膜厚分布から、基板6の搬送方向の各位置における各材料のレートを算出し、各位置における材料の混合比を見積もり、厚み方向にどのように各材料が分布しているかを見積もることができる。また、蒸発源の傾斜、仕切り等によって膜厚分布が変化する場合には、その都度新たな膜厚分布を取得するものである。
【実施例】
【0092】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0093】
(比較例1)
図10の真空蒸着装置において、蒸発源V1として、ホール輸送材料である4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、蒸発源V2として、発光ドーパントであるルブレン、蒸発源V3として、電子輸送材料であるAlq3を用い、また蒸発源V4としてフッ化リチウム(LiF)、蒸発源V5としてAlを用いた。
【0094】
まず、厚み110nmのITOが陽極として図11のパターンのように成膜された0.7mm厚のガラス基板6を用意した。陽極を形成するITOのシート抵抗は、約12Ω/□である。そしてこれを洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄をした後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O3処理した。次に、株式会社三菱化学科学技術研究センターのバッファ材料「MCC−PC1020」を20nm厚にスピンコートし、真空雰囲気下230℃で30分間焼成し、真空を保ったまま常温まで冷却してバッファ層を形成した。
【0095】
次にこの基板6を1×10−4Pa以下の減圧雰囲気に設定された図10の真空蒸着装置にセットした。そして、基板6をルブレン蒸発源V2の直上位置にまで移動させ、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉して、ホール輸送層3としてα−NPDを膜厚20nmに蒸着し、次いで発光層4として、Alq3にルブレンを7質量%ドープした厚み40nmの層を蒸着し、次いで電子輸送層5として、Alq3を単独で20nmの膜厚で成膜した。
【0096】
次にマスク交換機構部22でマスクを交換した後、さらに基板6を蒸発源V4,V5の上を通過させることによって、LiFを膜厚0.5nm、Alを膜厚80nmで成膜してAl陰極を図11のパターンで形成することによって、有機発光素子を得た。
【0097】
尚、有機発光素子の形状は図11に示す通りである(図11において有機膜はバッファ層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層からなる)。また、有機発光素子の有機膜(バッファ層を除く、以下も同じ)における膜厚と材料の混合比との関係を図12に示す。
【0098】
(比較例2)
ホール輸送層3兼発光層4兼電子輸送層5として、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.07の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、基板6はルブレン蒸発源V2の直上に配置し、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉することによって、この混合比・膜厚に成膜した。
【0099】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図13に示す。
【0100】
(実施例1)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図14になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図1参照)。尚、図14のように膜厚約62nmの位置において、膜内に占めるα−NPDおよびルブレンの量はともに0である。
【0101】
(実施例2)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図15になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図2参照)。
【0102】
(実施例3)
基板6を蒸発源V1〜3の上を移動させながら、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:3:0.14の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図16になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図3参照)。
【0103】
(比較例3)
図10の真空蒸着装置において、蒸発源V3とマスク交換機構部22の間に、電子輸送材料であるフェナントロリン誘導体のDPB([化3])の蒸着源V6(図示は省略)を設けた。またAlq3は第3の電荷輸送材料となる。すなわち、基板6の移動方向に沿って、ホール輸送材料であるα−NPD、発光ドーパントであるルブレン、第3の電荷輸送材料であるAlq3、電子輸送材料であるDPB、マスク交換機構部22を介して、LiF、Alの順に蒸発源の材料が配列されている。
【0104】
【化3】
【0105】
そして、DPBで電子輸送層5を20nm厚に形成するようにしたこと以外は、比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係は図17の通りである。
【0106】
(比較例4)
ホール輸送層3兼発光層4として、α−NPDとAlq3とルブレンとを1:2:0.14の質量比率で厚み60nmに成膜した。このとき、基板6はルブレン蒸発源V2の直上に配置し、蒸発源V1〜3のシャッターを開閉することによって、この混合比・膜厚に成膜した。この後、DPBを20nmの膜厚で成膜して電子輸送層5を形成した。
【0107】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図18に示す。
【0108】
(比較例5)
ホール輸送層3として、α−NPDを厚み20nmに成膜し、発光層4兼電子輸送層5として、Alq3とルブレンとDPBとを2:0.14:1の質量比率で厚み60nmに成膜した。このとき、基板6はAlq3の蒸発源V3の直上に配置し、シャッターを開閉することでこの膜厚や混合比の層を作製した。
【0109】
この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た。有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を図19に示す。
【0110】
(実施例4)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:1.7:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図20になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図4参照)。
【0111】
(実施例5)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2.5:0.1:1.3の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図21になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図5参照)。
【0112】
(実施例6)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上近傍ではα−NPDおよびDPBが基板6に付着しないようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図22になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図6)参照。
【0113】
(実施例7)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上近傍でα−NPDおよびDPBが基板6に付着するようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図23になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図7参照)。
【0114】
(実施例8)
基板6を蒸発源V1〜3、6の上を移動させながら、α−NPD、Alq3、ルブレン、DPEを1:2:0.1:1の質量比率で厚み80nmに成膜した。このとき、蒸発源V1〜3、6の間に部分的に設けた仕切り21の調整によって、またAlq3の蒸発源V3の直上より、基板6の移動方向と反対側ではα−NPDが付着すると共にDPBが付着せず、基板6の移動方向側ではα−NPDが付着しないと共にDPBが付着するようにして、有機膜における膜厚と材料の混合比との関係が図24になるようにした。この他は比較例1と同様にして、有機発光素子を得た(図8参照)。
【0115】
上記のように実施例1〜8及び比較例1〜5で得た有機発光素子に、30mA/cm2の定電流を通電し、輝度が80%にまで低下するのに要した時間と、評価初期の駆動電圧とを測定した。結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
表1にみられるように、各実施例の有機発光素子は、輝度が80%にまで低下するのに要する時間が長く、また駆動電圧を比較的低く抑えることができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の有機発光素子の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の有機発光素子の他の実施の形態の一例を示す概略断面図である。
【図9】有機発光素子の層構成を示す概略断面図である。
【図10】真空蒸着装置を示すものであり、(a)は概略正面図、(b)は概略平面図である。
【図11】実施例及び比較例の有機発光素子の素子形状を示す平面図である。
【図12】比較例1の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図13】比較例2の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図14】実施例1の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図15】実施例2の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図16】実施例3の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図17】比較例3の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図18】比較例4の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図19】比較例5の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図20】実施例4の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図21】実施例5の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図22】実施例6の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図23】実施例7の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【図24】実施例8の有機発光素子の有機膜における膜厚と材料の混合比との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0119】
1 電極
2 電極
3 ホール輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 基板
41 第1発光部
42 第2発光部
43 第3発光部
44 第4発光部
45 第5発光部
46 第6発光部
47 第7発光部
48 第8発光部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第2発光部を、電子輸送層とホール輸送層の間にこの順に備えて形成され、第1発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
第2発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第3発光部を、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第1発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第2発光部を、第1発光部とホール輸送層の間に備えることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
第3発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項3又は4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
第1発光部の中央部分にドープされている発光ドーパント材料の濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部と、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部を、電子輸送層とホール輸送層の間にこの順に備えて形成され、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項8】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第8発光部を、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第7発光部は、ホール輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項9】
上記第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントを含む第5発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部を、第4発光部とホール輸送層の間にこの順に備え、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
第4発光部に、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分をも含むことを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部と、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第8発光部とを、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有し、第7発光部は、ホール輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項12】
第5発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項7、9、10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
第7発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
第4発光部の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項1】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第2発光部を、電子輸送層とホール輸送層の間にこの順に備えて形成され、第1発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項2】
第2発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項3】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第1発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第3発光部を、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第1発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項4】
ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第2発光部を、第1発光部とホール輸送層の間に備えることを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
第3発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第1発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項3又は4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
第1発光部の中央部分にドープされている発光ドーパント材料の濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項7】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部と、この第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部を、電子輸送層とホール輸送層の間にこの順に備えて形成され、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項8】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料と発光ドーパントとを含む第4発光部と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第8発光部を、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第7発光部は、ホール輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項9】
上記第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントを含む第5発光部と、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部を、第4発光部とホール輸送層の間にこの順に備え、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有することを特徴とする請求項8に記載の有機発光素子。
【請求項10】
第4発光部に、ホール輸送層を構成する成分と電子輸送層を構成する成分をも含むことを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
対向する2つの電極間に、ホール輸送層と、電荷輸送材料中に発光ドーパントを含んでなる発光層と、電子輸送層とをこの順に備える有機発光素子に於いて、発光層は、ホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含み電子輸送層を構成する成分を含まない第6発光部と、ホール輸送層を構成する成分や電子輸送層を構成する成分とは異なる第3の電荷輸送材料とホール輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第5発光部と、この第3の電荷輸送材料と電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含む第7発光部と、電子輸送層を構成する成分と発光ドーパントとを含みホール輸送層を構成する成分を含まない第8発光部とを、ホール輸送層と電子輸送層の間にこの順に備えて形成され、第5発光部は、ホール輸送層側ではホール輸送層を構成する成分が多く電子輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多い傾斜した組成を有し、第7発光部は、ホール輸送層側では上記第3の電荷輸送材料が多く電子輸送層側では電子輸送層を構成する成分が多い傾斜した組成を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項12】
第5発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項7、9、10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項13】
第7発光部にドープされている発光ドーパントの濃度が、第4発光部にドープされている発光ドーパントの濃度よりも低いことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項14】
第4発光部の中央部分にドープされている発光ドーパントの濃度が、その周囲にドープされている発光ドーパントの濃度よりも高いことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図21】
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【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−53664(P2008−53664A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231376(P2006−231376)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(501231510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構、「高効率有機デバイスの開発事業」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(501231510)
【Fターム(参考)】
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