説明

有機発光表示装置及び有機発光表示装置の製造方法

【課題】簡便な方法で製造でき、特定の波長の強度が増大された、良好な発光特性を有する有機発光表示装置及びこの有機発光表示装置の製造方法の提供。
【解決手段】有機発光表示装置は、基板と、光反射電極と、有機EL層と、光透過電極と、凹部を有する光透過層と、をこの順に有する有機発光表示装置であって、前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、光学共振器が形成され、前記光学共振器を経て前記光透過層から透過される光が、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置及び有機発光表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光を用いて、フルカラーで表示する技術が種々開示されている。例えば、特許文献1では、OLEDデバイスにおけるマルチカラーフィルターの応答とより効果的に整合する白色光を生じさせるためのOLEDデバイスが開示されている。このOLEDデバイスでは、有機EL素子に含まれる2種以上のドーパントによって、白色光のスペクトルを変化させ、白色光がカラーフィルタの応答とより効果的に整合するように選択されている。即ち、このOLEDデバイスでは、カラーフィルタの応答性を調整することで、白色光を効率的に発光している。しかしながら、このような構成であると、制御の点で複雑となるという問題がある。また、特定の波長の強度を増大させるなどして光学特性をさらに向上させるには、最適な構成となっていないという問題もある。
【0003】
このような問題を解決するため、各色の光路長を調整したり、光反射と干渉とを繰り返して特定の波長の強度を増加させる共振構造を採用した技術が種々開示されている。
【0004】
特許文献2では、有機薄膜を保護する部分反射機能を有する透明封止板を透過して直接上部に出る直接出力光と、この透明封止板の反射により一度素子側に戻る光を有機薄膜の下部にある基板側に設けられた金属電極兼全反射鏡等の反射膜で反射させ、上記の直接出力光とは別光路で透明封止板の上部に光を出射する構造を有する有機発光表示装置が開示されている。この文献では、有機発光層を有する絶縁基板側の各色の画素毎に段差を設けたり、スペーサーを挿入することで、光学距離を調整する旨が開示されている。このような構成であると、光学距離を調整するのに精度が要求されるという問題がある。また、有機発光層を有する絶縁基板を製造し、さらに段差やスペーサー等を設けるため、工数が増加するという問題がある。
【0005】
また、特許文献3では、発光層を有する表示素子であって、発光層を挟んだ第1端部と第2端部との間で共振器構造を有し、この第1端部と発光層との距離、及び上記の第2端部と発光層との距離が所定の数式を満たすように規定された表示素子が開示されている。しかしながら、具体的な構造についての開示がなされていないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−520060号公報
【特許文献2】特許第3898163号公報
【特許文献3】特許第3703028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、簡便な方法で製造でき、特定の波長の強度が増大された、良好な発光特性を有する有機発光表示装置及びこの有機発光表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、所定の形状の凹部を有する光透過層と有機EL層を積層した光反射電極との間で光学共振器を形成するように構成することにより前記課題を解決し得ることを見出し、本発明の完成に至った。即ち、
<1> 基板と、光反射電極と、有機EL層と、光透過電極と、凹部を有する光透過層と、をこの順に有する有機発光表示装置であって、
前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、光学共振器が形成され、
前記光学共振器を経て前記光透過層から透過される光が、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光である有機発光表示装置である。
<2> 光透過層が一部材で形成されている前記<1>に記載の有機発光表示装置である。
<3> 一部材の材料が、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂である前記<2>に記載の有機発光表示装置である。
<4> 光透過層の凹部形成面に、光半透過反射層を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<5> 光透過層の凹部の屈折率が、光透過電極の屈折率と等しい前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<6> 光透過層の凹部に接着剤を充填してなる前記<5>に記載の有機発光表示装置である。
<7> 光透過層の複数の凹部の深さが、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの光を出射するように、異なっている前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<8> 光反射電極が、同一平面上に存在する前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<9> 有機EL層が、白色発光する前記<1>から<8>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<10> 光透過層の光出射側にカラーフィルタ層をさらに有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<11> 基板上に光反射電極、有機EL層及び光透過電極を順次積層する工程と、
前記基板とは異なる光透過性基板上に、凹部を有する光透過層を形成する工程と、
前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光を出射する光学共振器が形成されるように、前記光透過層と前記光透過電極とを対向して固定する工程と、
を含む有機発光表示装置の製造方法である。
<12> 前記光透過層の凹部を形成する工程は、型転写により行われる前記<11>に記載の有機発光表示装置の製造方法である。
<13> 前記の光透過層と光透過電極とを対向して固定する工程は、カップリング剤を用いて行われる前記<11>から<12>のいずれかに記載の有機発光表示装置の製造方法である。
<14> 前記の光透過層と光透過電極とを対向して固定する工程は、光透過層の凹部に接着剤を充填して行われる前記<11>から<13>のいずれかに記載の有機発光表示装置の製造方法である。
<15> 光透過層の凹部の屈折率が、光透過電極の屈折率よりも小さい前記<1>から<10>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<16> 光透過層の凹部が、空隙である前記<15>に記載の有機発光表示装置である。
<17> 光透過層と光透過電極との間に、接着部が形成されてなる前記<1>から<10>及び<15>から<16>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<18> 光学共振器の光学共振長Lが、出射光のピーク波長λの半波長の倍数((λ/2)×m;mは、自然数)である前記<1>から<10>及び<15>から<17>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<19> 有機EL層の発光層が、光反射電極から光学長L’=(λ/4)×(2n−1)(λは、出射光のピーク波長;nは、自然数)の距離に配置されている前記<1>から<10>及び<15>から<18>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<20> 光反射電極が、複数あり、
前記各光反射電極に電流を供給するスイッチング駆動回路が、基板と光反射電極との間に配置されている前記<1>から<10>及び<15>から<19>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<21> 有機EL層が、燐光材料を含有する前記<1>から<10>及び<15>から<20>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<22> 複数の画素からなり、
1つの画素が、3原色の赤、青、緑に対応して点灯制御される副画素を含む前記<1>から<10>及び<15>から<21>のいずれかに記載の有機発光表示装置である。
<23> 1つの画素が、3原色の赤、青、緑に対応する副画素と、白色に対応して点灯制御される副画素とを含む前記<22>に記載の有機発光表示装置である。
<24> 基板及び光透過層の少なくとも一方が、可撓性を有する前記<1>に記載の有機発光表示装置である。
<25> 接着剤が、塗布、印刷又はインクジェット法により凹部に配置される前記<14>に記載の有機発光表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、簡便な方法で製造でき、特定の波長の強度が増大された、良好な発光特性を有する有機発光表示装置及びこの有機発光表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による有機発光表示装置の一例を示す断面概略図である。
【図2】図2は、本発明による有機発光表示装置の一例を示す断面概略図である。
【図3】図3は、本発明による有機発光表示装置の一例を示す断面概略図である。
【図4】図4は、本発明による有機発光表示装置の一例を示す断面概略図である。
【図5】図5は、本発明による有機発光表示装置の実施例1の発光出力特性図である。
【図6】図6は、本発明による有機発光表示装置の実施例2の発光出力特性図である。
【図7】図7は、比較例における有機発光表示装置の発光出力特性図である。
【図8】図8は、本発明の実施例及び比較例に用いたカラーフィルターの光学特性図である。
【図9】図9は、本発明の実施例及び比較例に用いたOLED基板の発光出力特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(有機発光表示装置)
本発明による有機発光表示装置は、基板と、光反射電極と、有機EL層と、光透過電極と、凹部を有する光透過層とを有し、必要に応じてその他の部材を有する。
【0012】
有機発光表示装置の形状、構造、大きさは、上記の構成であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。有機発光表示装置の態様の一例について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1〜4は、本発明による有機発光表示装置の一例を示す断面概略図である。有機発光表示装置100は、光源であるOLED基板20と、凸部14と凹部15とからなる凹凸部を表面に有する光学部材10とを有する。
【0014】
光学部材10は、後述のOLED基板20の基板22とは異なる、光透過性を有する光透過性基板19と、光透過性基板19上に積層された光透過層12とを有し、光透過層12の上面に凸部14と凹部15とからなる凹凸部を有する。
【0015】
OLED基板20は、ガラス等からなる基板22と、基板22上に積層された光反射性を有する光反射電極24と、光反射電極24上に積層された光を発生する有機EL層26と、有機EL層26上に積層された光透過性を有する光透過電極28とを有する。
【0016】
なお、図1〜4において、符号32は、電極の通電等を制御する画素回路を、符号34は、コンタクトホールを、符号36は、隣り合う電極を電気的に分離して1画素又は1副画素を確定する絶縁層をそれぞれ示す。また、R、G、B及びWで示した矢印は、有機発光表示装置からの光の出射方向を示す。また、光学部材10とOLED基板20とが離れているように記載しているが、これは、有機発光表示装置の構成を説明するために便宜的に記載したものである。
【0017】
<接着部>
有機発光表示装置100において、光学部材10とOLED基板20とは、光透過電極28と光透過層12との間で、接着部30を介して対向して固定される。対向の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜すればよく、例えば、光学部材10の光透過層12の凸部14とOLED基板20の光透過電極28とを対向させてもよい。対向して固定する方法としては、図1及び図3のように、接着部30を介して、光透過層12の凸部14とOLED基板20の光透過電極28とを対向して固定してもよい。また、図2及び図4のように、光学部材10の凹部15に充填された接着部30の材料を介して、光透過層12の凸部14と、OLED基板20の光透過電極28とを対向して固定してもよい。このように構成することで、光学部材10とOLED基板20とで有機発光表示装置100を形成する。
【0018】
図1及び図3の構成において、接着部30を介して光透過層12の凸部14とOLED基板20の光透過電極28とを対向して固定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、OLED基板から発光された光の有機発光表示装置における光路長などの光学的距離を調節しやすい点で、分子レベルで結合させる手段であることが好ましく、例えば、シランカップリング剤などを用いた結合が挙げられる。
【0019】
図2及び図4の構成において、光学部材10の凹部15に充填された接着部30の材料を介して、光透過層12の凸部14と、OLED基板20の光透過電極28とを対向して固定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、光学部材10の凹部15にアクリル系、エポキシ系、ポリビニルアルコールなどの接着剤を充填し、これを介して光学部材10とOLED基板20とを接着する方法であってもよい。接着剤を充填する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、塗布、印刷又はインクジェット法が挙げられる。なかでも、所望の量を所定の箇所に簡便な方法で充填し得る点で、インクジェット法であることが好ましい。
【0020】
インクジェット法に従って凹部に接着剤を充填する量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、形成された凹部の容積に応じて、接着剤が凹部から漏出しないように接着剤の充填量を調節してもよい。充填量の調節の例としては、下記の通りである。即ち、画素サイズが200μm×50μmであって、R、G、B各色の凹部深さが、R部=33〜60nm、G部=17〜30nm、B部=6〜10nmであるとき、R、G、B各色の凹部の容積はR部=0.33〜0.6pl、G部=0.17〜0.3pl、B部=0.06〜0.1plである。したがって、この量が各凹部に充填されるように、調節すればよい。
【0021】
インクジェット法に従って凹部に接着剤を充填する態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、形成された各色画素に対応する凹部が同列に隣接して配置されているときは、連続する同色の画素に対応する凹部間で同じ量の接着剤を充填すればよい。この際、例えば100画素分の凹部を連通させると、上記の例で言えば、各凹部の容積はR部=33〜60pl、G部=17〜30pl、B部=6〜10plである。この量の接着剤を、インクジェットの塗出量に応じて、適当な回数吐出させればよい。単位吐出当たり1plのインクジェットの場合、各凹部にてR部=33〜60回、G部=17〜30回、B部=6〜10回の吐出を行うことで、各凹部の容積に適合した接着剤を充填することができる。このように、各画素凹部容積が接着剤液滴の最小単位の倍数になるように、各画素凹部を同色列でその倍数分だけ凹部を連通させればよい。
【0022】
−光学共振器−
有機発光表示装置100には、光学部材10において光透過層12に形成された凹部15において光透過電極28と対向する表面と、OLED基板20の光透過電極28との間で、OLED基板20からの発光の反射/干渉により生じる、いわゆる光学共振器構造(マイクロキャビティー構造)が形成される。光学共振器としては、OLED基板からの光を反射/干渉し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、OLED基板20の基板22上に積層された光反射電極24と、光学部材10の光透過層12上の凹部15に形成された後述の光半透過反射層16との間で、形成されてもよい。なかでも、特定の波長の発光強度をより増加させ得る点で、光学共振器の光学共振長Lが、出射光のピーク波長λの半波長の倍数((λ/2)×m;mは、自然数)であることが好ましい。これにより、多重干渉による色強度が増大し、より高い光強度を出射し得る有機発光表示装置が得られる。このように光学共振器が形成されることで、赤色、緑色及び青色などの特定の色の少なくとも1つの色の光が、光学共振器を経て光透過層から透過され、有機発光表示装置の光出射方向に出射されることとなる。
【0023】
<光学部材>
光学部材は、本発明による有機発光表示装置における光出射側に配置される部材であって、上述のOLED基板20の基板22とは異なる光透過性基板と、この光透過性基板上に形成された凹部15を有する光透過層12とを有し、必要に応じてその他の部材を有する。
【0024】
光学部材の構造、形状、大きさ等については、上述の有機発光表示装置に用い得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。光学部材について、光学部材の用途の一態様である有機発光表示装置を記載した図1及び2を参照して、説明する。光学部材10において、光透過層上には、図1及び2の符号14及び15で示すように、凸部及び凹部とで構成される凹凸部を有する。
【0025】
凹部の形状としては、各画素に対応するように設けられれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光学部材の幅方向及び/又は長さ方向に沿って一列に形成されたものであってもよく、光学部材の幅方向及び/又は長さ方向に対してジグザグに形成されたものであってもよい。凸部14の高さ又は凹部15の深さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、上述のOLED基板からの光の強度を最適化し、特定の波長の発光強度をより増強させる点で、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの光を出射するように、異なっていることが好ましい。
【0026】
有機発光表示装置において、光学部材の光透過層の凹部の構成としては、有機発光表示装置の有機EL層からの発光の光学特性に与えないものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、光学共振長Lを形成する凹部深さの加工精度を緩和する点で、光透過層の凹部の屈折率が、光透過電極の屈折率よりも小さいことが好ましく、後述の光学共振器を安定に形成することができる点で、屈折率段差がなくなるように、光透過層の凹部の屈折率が、光透過電極の屈折率と等しいことが好ましい。有機発光表示装置において、光学部材の光透過層の凹部の構成としては、光学共振長Lを形成する凹部深さの加工精度を緩和し、光学部材を通過する出射光の屈折反射損を低減する点で、光透過層の凹部が出射側の空気の屈折率1と同等の空隙であることが好ましい。この空気の屈折率1と同等の範囲としては、特に制限はなく、適宜選択すればよいが、光学部材表裏の屈折率差を抑える点で、1.0〜1.1であることが好ましい。なお、前記屈折率は、エリプソメトリ法により、例えば、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製)などを用いて測定される。
【0027】
凹部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、モールド(型、版)を用いた出射成型法、型転写法、インプリント法が挙げられる。なかでも、精度が高く加工性が良好である点で、モールドを用いたインプリント法が好ましい。凹部を形成する態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、上記のモールドを用いたインプリント法により行う場合には、後述の光透過性基板又はカラーフィルタ層上に形成された光透過層又は光半透過反射層上に、後述の凹凸部形成用モールドを押圧して、所望の凹凸形状を形成するものであってもよく、また、このようにして形成された凹凸形状を有する光透過層を適当な条件(例えば、UV照射、加熱)で硬化させてもよい。特に、光学部材の光透過性基板は光透過性を有することから、この光透過性基板を介してUV照射を行うことで、硬化してもよい。光学部材がカラーフィルタ層を有する場合には、カラーフィルタ層18を構成する赤色フィルタ部、緑色フィルタ部、青色フィルタ部及び白色フィルタ部に対応するように位置決めを行って、所定の凹部が形成されるようにしてもよい。
【0028】
−凹凸部用モールド−
光学部材における凹部の形成に用いる凹凸部形成用モールドの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子ビーム(EB)リソグラフィ及びエッチング、レーザー描画、などが挙げられる。なかでも、光透過性基板のUV透過特性に依らずモールド側からのUV照射を得る点で、石英基板へのリソグラフィ法及びドライエッチング法であることが好ましい。これらの方法は、1種単独又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
凹凸部形成用モールドを形成する方法の一例としては、例えば、石英基板に感光性レジストを用いたフォトリソ工程によって、所定位置の石英基板面を開口させ、ドライエッチングによって、所定深さまでエッチングする方法であってもよい。2つ以上の深さを有するように光学部材に凹部を形成する場合、上記のようにフォトリソ工程によって石英基板面を開口させた後、ドライエッチングの条件を調節することにより、エッチング深さを調節してもよい。例えば、図1及び2に記載の光学部材のように多段の凹凸部を形成する場合、凹凸部形成用モールドにおいて、緑色位置の凹部に相当する部位については、石英基板表面から16〜30nmエッチングし、青色位置の凹部に相当する部位については、石英基板表面から27〜50nmエッチングし、画素間を仕切る凸部に相当する部位については、石英基板表面から33〜60nmエッチングし、赤色位置の凹部に相当する部位については、石英基板表面をエッチングせずに残存させてもよい。また、白色位置の凹部に相当する部分については、赤色位置の凹部よりも深い凹部とするか、凹部を設けないものであってもよい。赤色位置の凹部よりも深い場合には、石英基板表面がそのまま残ることとなる。また、凹部がない場合には、画素間を仕切る凸部に相当する部位に同様に加工処理してもよい。このようにして、凹凸部形成用モールドが得られる。なお、この凹凸部形成用モールドを用いて光学部材をインプリントした後に凹部及び凸部を形成する部分は、凹凸部形成用モールドでは、それぞれ、石英基板面に形成された凸部及び凹部にそれぞれ対応する。
【0030】
<<光透過層>>
光学部材において、光透過層としては、後述のOLED基板から出射された光を透過するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。光透過層は、ひとつの部材で形成されていることが好ましい。このように構成することで、凸部と凹部とが一体で形成されることとなり、凹凸部各々の配置及び段差寸法を制御し易くなるという製造の容易性の点で、好ましい。光透過層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、1μm〜数μmであってもよい。特に、後述の凹凸部を形成するためのモールドの凹凸の最大段差よりも厚いものであればよい。
【0031】
光透過層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、各種光硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂、各種熱硬化性樹脂、などが挙げられる。光硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネートが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、シリコーン系樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。光透過層の材料としては、その他、重合開始剤を有する材料を用いてもよい。
【0032】
光学部材において、光透過層の製造方法としては、上記の要件を満たすものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、後述の光透過性基板上又は後述のカラーフィルタ層上に後述の光透過層を、スピンコート、エクストルージョン塗布、バー塗布、グラビア塗布、ロール塗布により積層し、この光透過層上に、凹凸部を形成する方法であってもよい。
【0033】
<<光透過性基板>>
光学部材において、光透過性基板としては、後述のOLED基板から出射された光を透過するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。光透過性基板としては、この目的を満たす限り、特に制限はなく、その形状、構造、大きさ等を適宜選択すればよい。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、OLED基板から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。また、利便性の点で、可撓性を有するものであることが好ましい。
【0034】
光透過性基板の配置位置としては、光透過層を支持し、同層上面に凹凸を構成する限りは、特に制限はない。なかでも、OLED基板と光透過層の凹部とからなる光学共振器の光路の外部であって、発光層からの光の特性に影響を及ぼさない点で、光学部材の光透過層からみて、有機発光表示装置からの光の出射方向に配置されることが好ましい。
【0035】
光透過性基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その具体例としては、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、及びポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
【0036】
例えば、光透過性基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性に優れていることが好ましい。
【0037】
熱可塑性基板を用いる場合には、さらに必要に応じて、バリアフィルム基板などの、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0038】
<<その他の部材>>
<<<光半透過反射層>>>
光学部材において、後述のOLED基板からみて上述の有機発光表示装置の光出射方向に向かう光のうち、一部を透過し、他の一部を反射する光半透過反射層を、光学部材の光透過層の表面に設けてもよい。即ち、図1及び2の符号16で示すように、光半透過反射層は、凸部14及び凹部15からなる凹凸部を有する光透過層12の表面に設けられてもよい。光半透過反射層の構造、形状、大きさ等は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、光半透過反射層の材料としては、上記の態様を満たすものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、薄膜のAg、Alが挙げられる。光半透過反射層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、透過率と反射率のバランスの点で、10nm〜30nmであることが好ましい。光半透過反射層を設ける方法としては、本技術分野公知の方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、及びスプレー法等が挙げられる。なかでも、均一な膜厚制御をする点で、乾式製膜法であることが好ましく、光透過層へのダメージレスの点で、蒸着法であることがより好ましい。
【0039】
<<カラーフィルタ層>>
光学部材において、後述のOLED基板からみて上述の有機発光表示装置の光出射方向に向かう光のうち、特定波長を有する光を透過させるカラーフィルタ層を設けてもよい。カラーフィルタ層の形状、構造、大きさ等としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば、図1〜4の符号18で示すように層状のものが挙げられる。カラーフィルタ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、色濃度調節の点で、10nm〜10μmであることが好ましい。カラーフィルタ層を設ける位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、カラーフィルタ層の保護構造及び製造性の点で、光学部材の光透過性基板と光透過層との間に設けることが好ましい。カラーフィルタ層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、上記の光学部材の光透過性基板上に、感光性組成物を露光、現像することにより微細パターンを形成するフォトリソグラフィー法、インクジェット法が挙げられる。
【0040】
有機発光表示装置の構成としては、フルカラーで表示し得る点で、複数の画素からなるのが好ましい。この複数の画素のうちの1つの画素の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、3原色である赤色、青色及び緑色に対応する副画素を含んでもよく、また3原色である赤色、青色及び緑色に対応する副画素と、白色に対応する副画素とを含んでもよい。カラーフィルタ層の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、上記の画素の構成に対応するように、構成してもよく、例えば、図1〜4に示すように、赤色フィルタ部18r、緑色フィルタ部18g、青色フィルタ部18b及び白色フィルタ部18wを有する構成であってもよい。
【0041】
<OLED基板>
OLED基板は、基板上に光反射電極、有機EL層及び光透過電極を順次積層してなり、必要に応じて、その他の部材を有する。なお、本発明において、「OLED基板」とは、光反射電極と有機EL層とを少なくとも有する、有機発光表示装置において発光を行う層を有する基板を総称する用語であって、上述の光学部材とは異なる部材をいう。
【0042】
<<有機EL層>>
有機EL層としては、電界を印加して発光するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。特に、ホワイトバランスを調整する必要がなく、製造が容易な点で、白色光を発光する有機EL層であることが好ましい。
【0043】
有機EL層は、有機発光材料からなるものであっても、無機発光材料からなるものであってもよいが、なかでも、発光効率、装置の大型化が可能、低電圧駆動、低温製造プロセスの点で、有機発光材料が好ましい。以下、有機発光材料を用いた発光層を有する有機化合物層について、説明する。
【0044】
−有機化合物層−
有機発光材料を用いた有機発光層を有する有機化合物層としては、有機化合物層の積層の形態として、陽極側から、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を、及び/又は有機発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層を、有してもよい。また、有機発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けてもよい。各層は複数の二次層に分かれていてもよい。なお、陽極と陰極、及び有機発光層以外の各層は前記その他の層/部材に、それぞれ対応する。
【0045】
有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、及びスプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。なかでも、素子寿命及びスループット性の点で、蒸着法であることが好ましい。
【0046】
蒸着法による有機発光層の製造としては、上記の通りの構成を達成し得るものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。蒸着の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、蒸着速度が8nm/秒以上であることが好ましく、10nm/秒以上であることがより好ましく、15nm/秒以上であることが特に好ましい。8nm/秒未満であると、有機発光層におけるキャリアのトラップ量が少なくなり、外部量子効率及び半減寿命が低下してしまう。
【0047】
有機発光表示装置は、有機発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、等の各層が挙げられる。
【0048】
有機発光表示装置において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等いずれによっても好適に形成することができる。
【0049】
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0050】
有機発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料とドーパント材料の混合層とした構成でもよい。ドーパント材料としては、発光性ドーパントであってもよく、発光性ドーパントは蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種単独であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、有機発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0051】
また、有機発光層は、1層単独であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。なかでも、有機EL層の発光層を構成する各層は、良好な発光効率を達成し得る点で、OLED基板の光反射電極からの光学長L’が、下記の式を満たす距離に配置されていることが好ましい。
L’=(λ/4)×(2n−1)
(λは、出射光のピーク波長;nは、自然数)
【0052】
光学長L’が上記の関係を満たすように構成するには、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、OLED基板を構成する有機EL層の厚みを適宜調整すればよく、例えば、正孔注入層の膜厚や各発光層の膜厚を調整してもよい。
【0053】
前記発光性ドーパントとしては、燐光性発光材料、蛍光性発光材料等いずれもドーパント(燐光発光性ドーパント、蛍光発光性ドーパント)として用いることができる。
【0054】
有機発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することもできる。前記発光性ドーパントは、さらに前記ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが駆動耐久性の観点で好ましい。
【0055】
前記燐光発光性ドーパントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
【0056】
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が好ましく、レニウム、イリジウム、及び白金がより好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
【0057】
ランタノイド原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテシウムが挙げられる。なかでも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0058】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0059】
配位子としては、ハロゲン配位子(塩素配位子が好ましい)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、ナフチルアニオンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20がさらにより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなどが挙げられ、炭素数5〜30が好ましく、炭素数6〜30がより好ましく、炭素数6〜20がさらにより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子などが挙げられ、炭素数2〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数2〜16が特に好ましい)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20がさらに好ましい)、シリルオキシ配位子(例えば、トリメチルシリルオキシ配位子、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ配位子、トリフェニルシリルオキシ配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20が特に好ましい)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子、リン配位子(例えば、トリフェニルフォスフィン配位子などが挙げられ、炭素数3〜40が好ましく、炭素数3〜30がより好ましく、炭素数3〜20がさらにより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい)、チオラト配位子(例えば、フェニルチオラト配位子などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい)、フォスフィンオキシド配位子(例えば、トリフェニルフォスフィンオキシド配位子などが挙げられ、炭素数3〜30が好ましく、炭素数8〜30がより好ましく、炭素数18〜30が特に好ましくい)が好ましく、含窒素ヘテロ環配位子がより好ましい。
【0060】
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0061】
これらのなかでも、発光性ドーパントとしては、例えば、US6,303,238B1、US6,097,147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。なかでも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体がより好ましい。なかでも、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が、さらにより好ましい。さらに、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が特に好ましい。
【0062】
前記蛍光発光性ドーパントとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、及びこれらの誘導体などが挙げられる。
【0063】
発光性ドーパントとしては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0064】
【化1】

【0065】
【化2】

【0066】
【化3】

【0067】
【化4】

【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

【0070】
有機発光層中の発光性ドーパントは、有機発光層中に一般的に有機発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜40質量%含有されることがより好ましい。
【0071】
有機発光層の厚さは、特に制限されるものではないが、通常、2nm〜500nmであるのが好ましく、なかでも、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが特に好ましい。
【0072】
前記ホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0073】
有機発光層内の正孔輸送性ホストとしては、例えば、以下の材料が挙げられる。即ち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
【0074】
なかでも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体であることが好ましく、分子内にカルバゾール基を有するものがより好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物が特に好ましい。
【0075】
有機発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.4eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.3eV以下であることが特に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが特に好ましい。
【0076】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料が挙げられる。即ち、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、及びそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等が挙げられる。
【0077】
電子輸送性ホストとしては、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)が好ましく、なかでも、耐久性の点から、金属錯体化合物がより好ましい。金属錯体化合物(A)は、金属に配位する窒素原子、酸素原子及び硫黄原子の少なくともいずれかを有する配位子を有する金属錯体が好ましい。
【0078】
金属錯体中の金属イオンは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンであることが好ましく、ベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、又はパラジウムイオンがより好ましく、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、又はパラジウムイオンが特に好ましい。
【0079】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては、種々の公知の配位子であればよく、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
【0080】
前記配位子としては、含窒素ヘテロ環配位子(炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜20がより好ましく、炭素数3〜15が特に好ましい)が好ましい。また、前記配位子としては、単座配位子であっても2座以上の配位子であってもよいが、2座以上6座以下の配位子であることが好ましい。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
【0081】
前記配位子としては、例えば、アジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。)、アリールオキシ配位子(例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい)などが挙げられる。
【0082】
ヘテロアリールオキシ配位子(例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アルキルチオ配位子(例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、アリールチオ配位子(例えば、フェニルチオなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜20がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。)、ヘテロアリールチオ配位子(例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数1〜20がより好ましく、炭素数1〜12が特に好ましい。)、シロキシ配位子(例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数3〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(例えば、フェニルアニオン、ナフチルアニオン、及びアントラニルアニオンなどが挙げられ、炭素数6〜30が好ましく、炭素数6〜25がより好ましく、炭素数6〜20が特に好ましい。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(例えば、ピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、及びベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられ、炭素数1〜30が好ましく、炭素数2〜25がより好ましく、炭素数2〜20が特に好ましい。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子などが好ましく、含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、芳香族ヘテロ環アニオン配位子などがさらに好ましい。
【0083】
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば、特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0084】
有機発光層において、前記ホスト材料の三重項最低励起準位(T1)が、前記燐光発光材料のT1より高いことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0085】
また、ホスト化合物の含有量は、特に制限されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して15質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0086】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔(ホール)を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0087】
具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0088】
有機電界発光素子の正孔注入層又は正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層、又は正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
【0089】
具体的には、無機化合物としては、塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、及び三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0090】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
【0091】
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることができる。
【0092】
このうち、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、又はフラーレンC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、又は2,3,5,6−テトラシアノピリジンがより好ましく、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが特に好ましい。
【0093】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0094】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが特に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.5nm〜100nmであるのがより好ましく、1nm〜100nmであるのが特に好ましい。
【0095】
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種単独又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0096】
−−電子注入層、電子輸送層−−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
【0097】
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0098】
本発明による有機電界発光素子の電子注入層又は電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層、又は電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
【0099】
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等に記載の材料を用いることができる。
【0100】
これらの電子供与性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることがさらに好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0101】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが特に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが特に好ましい。
【0102】
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種単独又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0103】
−−正孔ブロック層−−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層である。発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
【0104】
正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、ビス−(2−メチル−8−キノニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
【0105】
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが特に好ましい。
【0106】
正孔ブロック層は、上述した材料の1種単独又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0107】
−−電子ブロック層−−
電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が、陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として、電子ブロック層を設けることができる。
【0108】
電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが適用できる。
【0109】
電子ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが特に好ましい。
【0110】
正孔ブロック層は、上述した材料の1種単独又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0111】
発光層は、さらに発光効率を向上させるため、複数の発光層の間に電荷発生層が設けた構成をとることができる。
【0112】
電荷発生層は、電界印加時に電荷(正孔及び電子)を発生する機能を有すると共に、発生した電荷を電荷発生層と隣接する層に注入させる機能を有する層である。
【0113】
電荷発生層を形成する材料は、上記の機能を有する材料であれば、特に制限はなく、単一化合物で形成されていても、複数の化合物で形成されていてもよい。
【0114】
具体的には、導電性を有するものであっても、ドープされた有機層のように半導電性を有するものであっても、また、電気絶縁性を有するものであってもよく、特開平11−329748や、特開2003−272860や、特開2004−39617に記載の材料が挙げられる。
【0115】
さらに、具体的には、ITO、IZO(インジウム亜鉛酸化物)などの透明導電材料、C60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等などの導電性有機物、Ca、Ag、Al、Mg:Ag合金、Al:Li合金、Mg:Li合金などの金属材料、正孔伝導性材料、電子伝導性材料、及びそれらを混合させたものが挙げられる。
【0116】
前記正孔伝導性材料は、例えば、4,4’,4’’−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(NPD)などの正孔輸送有機材料にF2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(4−TCNQ)、TCNQ、FeClなどの電子求引性を有する酸化剤をドープさせたものや、P型導電性高分子、P型半導体などが挙げられ、前記電子伝導性材料は電子輸送有機材料に4.0eV未満の仕事関数を有する金属若しくは金属化合物をドープしたものや、N型導電性高分子、N型半導体が挙げられる。N型半導体としては、N型Si、N型CdS、N型ZnSなどが挙げられ、P型半導体としては、P型Si、P型CdTe、P型CuOなどが挙げられる。
【0117】
また、前記電荷発生層として、Vなどの電気絶縁性材料を用いることもできる。
【0118】
前記電荷発生層は、単層でも複数積層させたものでもよい。複数積層させた構造としては、透明伝導材料や金属材料などの導電性を有する材料と正孔伝導性材料、又は、電子伝導性材料を積層させた構造、上記の正孔伝導性材料と電子伝導性材料を積層させた構造の層などが挙げられる。
【0119】
前記電荷発生層は、一般に、可視光の透過率が50%以上になるよう、膜厚・材料を選択することが好ましい。また膜厚は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5〜200nmが好ましく、1〜100nmがより好ましく、3〜50nmがさらに好ましく、5〜30nmが特に好ましい。
【0120】
電荷発生層の形成方法は、特に制限されるものではなく、前述した有機化合物層の形成方法を用いることができる。
【0121】
電荷発生層は前記二層以上の発光層間に形成するが、電荷発生層の陽極側及び陰極側には、隣接する層に電荷を注入する機能を有する材料を含んでいてもよい。陽極側に隣接する層への電子の注入性を上げるため、例えば、BaO、SrO、LiO、LiCl、LiF、MgF、MgO、CaFなどの電子注入性化合物を電荷発生層の陽極側に積層させてもよい。
【0122】
以上で挙げられた内容以外にも、特開2003−45676号公報、米国特許第6,337,492号、同第6,107,734号、同第6,872,472号等に記載を元にして、電荷発生層の材料を選択することができる。
【0123】
<<電極>>
本発明において、電極としては、発光層に電界を印加し得るものであれば、特に制限はない。電極の配置位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、図1及び2に記載のように、光学共振器を形成する光反射性を有する電極が、同一平面上に存在することが好ましい。電極は、有機発光表示装置への配置の形態に応じて、透明若しくは半透明又は光反射性若しくは光透過性の陽極又は陰極等、適宜選択すればよい。
【0124】
−陽極−
陽極は、通常、有機化合物層を構成する有機発光層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料のなかから適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常、透明陽極として設けられる。
【0125】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。このなかで好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0126】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などのなかから、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0127】
本発明において、陽極の配置位置としては、有機化合物層に接するように設けられれば、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、陽極は、有機化合物層における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0128】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0129】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0130】
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を出射するためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0131】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0132】
−陰極−
陰極は、通常、上述の有機化合物層を構成する有機発光層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料のなかから適宜選択することができる。
【0133】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0134】
これらのなかでも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0135】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの公報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0136】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などのなかから、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種単独又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0137】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0138】
本発明において、陰極の配置位置は、発光層に電界を印加し得るように設けられれば、特に制限はなく、発光層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0139】
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層とみることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0140】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
【0141】
また、陰極は、透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1nm〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0142】
<<基板>>
OLED基板において、基板としては、その形状、構造、大きさ及び材料等、目的に応じて適宜選択すればよく、一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。また、利便性の点で、可撓性を有するものであることが好ましい。OLED基板の材料としては、上記の光学部材の光透過性基板と同様のものであってもよい。OLED基板の配置の態様としては、OLED基板からの発光及び光の透過に影響を及ぼさない態様であれば、目的に応じて適宜選択すればよいが、OLED基板からの光の光路上に配置されないように、光反射電極からみて、有機EL層の反対側に配置されてもよい。
【0143】
<駆動>
有機発光表示装置は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0144】
有機発光表示装置の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5,828,429号、同6,023,308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0145】
(有機発光表示装置の製造方法)
本発明による有機発光表示装置の製造方法は、基板上に光反射電極、有機EL層及び光透過電極を順次積層する工程と、前記基板とは異なる光透過性基板上に、凹部を有する光透過層を形成する工程と、前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光を出射する光学共振器が形成されるように、前記光透過層と前記光透過電極とを対向して固定する工程とを含み、その他必要に応じて他の工程を含む。
【0146】
前記の基板上に光反射電極、有機EL層及び光透過電極を順次積層する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の<OLED基板>の項で言及した方法により行えばよい。前記の光透過性基板上に凹部を有する光透過層を形成する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の<光学部材>の項で言及した方法により行えばよい。前記の光透過層と光透過電極とを対向して固定する工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記の<接着部>の項で言及した方法により行えばよい。
【実施例】
【0147】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0148】
(実施例1)
<光学部材の作成>
<<光学部材用モールドの作成>>
石英基板上に、スピンコート法により、感光性レジストを塗布し、これに、赤色、緑色、青色及び白色のいずれかの副画素からなる画素に対応するように、パターン露光し、フォトリソ工程によって、所定位置の石英基板面を開口させた。その後、ドライエッチングによって開口部をさらに所定量エッチングした。また、他の副画素、画素間に対応するようにレジストパターニングとドライエッチングとを繰り返した。緑色画素に相当する凹部を石英基板表面から98nm、青色画素に相当する凹部を石英基板表面から258nm、画素間を仕切る凸部に相当する箇所と白色画素に相当する位置を石英基板表面から278nmエッチングし、赤色画素に相当する凹部については、エッチングしなかった。このようにして、凹凸部の形成用に用いるモールドを得た。なお、得た凹凸部形成用モールドの凹部深さは、下記の通りである。
【0149】
[光学部材用モールドの凹部深さ]
赤色相当部:深さ0nm
緑色相当部:深さ98nm
青色相当部:深さ258nm
白色相当部及び画素間:深さ278nm
【0150】
<<光学部材>>
<<<カラーフィルタ層を有する光透過性基板>>>
ブラックカラーレジストCK−8400(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を カラーフィルタ作製用のガラス基板の上にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が1.0μmとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥させて黒色の均一な塗膜を形成した。
【0151】
次に、露光装置を使用して、塗膜に365nmの波長で100μmのマスクを通して300mJ/cmの露光量で照射した。照射後、10%CD−1(富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、26℃で90秒間現像した。引き続き、流水で20秒間リンスした後、エアナイフで乾燥させ、220℃で60分間熱処理を行なってブラックマトリックスのパターン像を形成した。
【0152】
次に、下記3色の硬化性組成物を、サンドミルで一昼夜分散した。なお、緑色、赤色及び青色のそれぞれで得た分散液を、それぞれ、分散液(A−1)、(A−2)及び(A−3)とも称する。
【0153】
[緑色:分散液(A−1)]
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 80質量部
(重量平均分子量30,000、酸価120)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 500質量部
銅フタロシアニン顔料 33質量部
C.I.ピグメントイエロー185 67質量部
【0154】
[赤色:分散液(A−2)]
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 80質量部
(重量平均分子量30,000、酸価120)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 500質量部
ピグメントレッド254 50質量部
ピグメントレッドPR177 50質量部
【0155】
[青色:分散液(A−3)]
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 80質量部
(重量平均分子量30,000、酸価120)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 500質量部
ピグメントブルー15:6 95質量部
ピグメントバイオレット23 5質量部
【0156】
次いで、上記の各色用の硬化性組成物(即ち、分散液(A−1)、(A−2)及び(A−3))60質量部に、下記の成分を添加して、各色用の組成物を得た。
【0157】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレ−ト(DPHA) 80質量部
4−[o−ブロモ−p−N,N−ジ(エトキシカルボニル)アミノフェニル]2、6−ジ(トリクロロメチル)−S−トリアジン 5質量部
7−[{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ]−3−フェニルクマリン 2質量部
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.01質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 500質量部
【0158】
上記の通り添加して得た各色用の組成物を均一に混合した後、孔径5μmのフィルターで濾過し、本発明の3色の硬化性組成物を得た。このうち緑色の硬化性組成物をブラックマトリックスを作成したガラス基板の上にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が1.0μmとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥させて緑色の均一な塗膜を形成した。
【0159】
次に、露光装置を使用して、塗膜に365nmの波長で100μmのマスクを通して300mJ/cmの露光量で照射した。照射後、10%CD−1(富士フイルム エレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、26℃で60秒間現像した。引き続き、流水で20秒間リンスした後、エアナイフで乾燥させ、220℃で60分間熱処理を行なって緑色のパターン像(緑色画素)を形成した。この操作を赤色の硬化性組成物と青色の硬化性組成物についても同様に、同一のガラス基板に対して行い、順次赤色のパターン像(赤色画素)及び青色のパターン像(青色画素)を形成した。このカラーフィルター基板の光学特性を図8に示す。
【0160】
<<<光透過層>>>
次に、このようにして形成したカラーフィルタ層を有する光透過性基板上に、下記の成分を、スピンコート法により塗布し、光透過層(膜厚1,000nm)を形成した。
【0161】
[光透過層]
PAK−02(東洋合成社製)を用いて作製した。
【0162】
上記の通りに得た光透過層上に、上記の通り得た凹凸部形成用モールドを用いて、転写法により、凹凸部を形成した。モールドを光透過層に押圧し、石英基板からなるモールド側からUV照射して、光透過層の材料を硬化させ、同層表面に凹部を形成した。
【0163】
このようにして得た光透過層の凹凸面上に、Agを真空蒸着法により堆積させて、光半透過反射層(膜厚10nm)を形成し、光学部材を得た。
【0164】
[光半透過反射層の形成条件]
一般的なAgの真空蒸着法で、必要範囲に成膜されるようにメタルマスクによって選択的に成膜する。特に、白色の副画素は光源のスペクトルを出射するため、光学共振器構造とならないように光半透過反射層を形成しない。また、図1及び図3のように光学部材の光透過層に形成した凸部を後述するカップリング剤で結合する構成の場合、接着面である凸部頂面に有機材料を残存させるため、当該箇所も光透過層を露出させて光半透過反射層を形成しない。
【0165】
光学部材の凸部における光透過層の表面と凹部における光半透過反射層の表面との段差が光学共振長の一部として作用する。この段差量を凹部深さ寸法として以下に示す。
【0166】
[光学部材凹部]
赤色相当部:深さ268nm
緑色相当部:深さ170nm
青色相当部:深さ 10nm
白色相当部及び画素間:深さ 0nm
【0167】
<OLED基板の作成>
Alからなる反射電極が形成された基板上に、順次、有機層の真空蒸着成膜及び透明電極のイオンプレーティング成膜を行うことによって、OLED基板を作成した。このOLED基板の発光特性を図9に示す。
【0168】
[電子注入層]
材料: LiF
蒸着速度: 0.1Å/sec
成膜時間: 100sec
膜厚: 10Å=1nm
【0169】
[電子輸送層]
材料: BAlq
蒸着速度: 1Å/sec
成膜時間: 100sec
膜厚: 100Å=10nm
【0170】
[発光層(青色)]
材料: mCP(ホスト)と発光材(上記D−24)(ゲスト)の共蒸着
蒸着速度: mCP=0.9Å/sec、発光材B=0.1Å/sec
成膜時間: 100sec
膜厚: 100Å=10nm
【0171】
[発光層(緑色)]
材料: mCP(ホスト)と発光材(上記D−22)(ゲスト)の共蒸着
蒸着速度: mCP=0.9Å/sec、発光材G=0.1Å/sec
成膜時間: 150sec
膜厚: 150Å=15nm
【0172】
[発光層(赤色)]
材料: BAlq(ホスト)と発光材(上記D−7)(ゲスト)の共蒸着
蒸着速度: BAlq=0.9Å/sec、発光材R=0.1Å/sec
成膜時間: 200sec
膜厚: 200Å=20nm
【0173】
[正孔輸送層]
材料: a−NPD
蒸着速度: 1Å/sec
成膜時間: 100sec
膜厚: 100Å=10nm
【0174】
[正孔注入層]
材料: 2−TNATA(ホスト)とF4−TCNQ(ゲスト)の共蒸着
蒸着速度: 2−TNATA=2Å/sec、F4−TCNQ=0.1Å/sec
成膜時間: 48sec
膜厚: 100Å=10nm
【0175】
[透明電極層]
材料: ITO
蒸着速度: 50Å/sec
成膜時間: 200sec
膜厚: 1,000Å=100nm
【0176】
<光学部材とOLED基板との接着>
[化合物Aの合成]
光学部材とOLED基板とを接着するための化合物Aを、下記の通り合成した。なお、この合成は、以下の2つのステップにより行った。
【0177】
1.ステップ1(化合物aの合成)
DMAc50gとTHF50gの混合溶媒に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン24.5g(0.12モル)を溶解し、氷浴下でNaH(60% in oil) 7.2g(0.18モル)を徐々に加えた。そこに、11−ブロモ−1−ウンデセン(95%)44.2g(0.18モル)を滴下し、室温で1時間反応を行った。反応溶液を氷水中に投入し、酢酸エチルで抽出し、黄色溶液状の化合物aを含む混合物を得た。この混合物37gをアセトニトリル370mLに溶かし、水7.4gを加えた。p−トルエンスルホン酸一水和物1.85gを加え、室温で20分間撹拌した。酢酸エチルで有機相を抽出し、溶媒を留去した。カラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1/80)で化合物aを単離した。この合成スキームは、下記の通りである。
【0178】
【化7】

【0179】
H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(mb,24H),2.0(q,2H),3.2(t,J=6.6,2H),4.9−5.0(m,2H)5.8(ddt,J=24.4,J=10.5,J=6.6,1H.),7.4(t,J=7.4,2H),7.5(t,J=7.4,1H),8.3(d,1H)
【0180】
2.ステップ2(化合物aのハイドロシリル化による化合物Aの合成)
5.0gの化合物a(0.014モル)にSpeir catalyst(HPtCl・6HO/2−PrOH、0.1モル/L)を2滴加え、氷浴下でトリクロロシラン2.8g(0.021モル)を滴下して撹拌した。さらに1時間後にトリクロロシラン1.6g(0.012モル)を滴下してから室温に戻した。3時間後に反応が終了した。反応終了後、未反応のトリクロロシランを減圧留去し、化合物Aを得た。
合成スキームを以下に示す。
【0181】
【化8】

【0182】
H NMR(300MHz CDCl
δ=1.2−1.8(m,30H),3.2(t,J=6.3,2H),7.3−7.7(m,3H),8.3(d,2H)
【0183】
(OLED基板への塗布工程)
12.5質量%の化合物Aの脱水トルエン溶液をOLED基板の透明電極層表面に塗布し、室温乾燥(風乾)した。
【0184】
(光学部材との接着)
下記の1.又は2.の手法で接着するが、特に、接着部へUV照射できない(カラーフィルタで陰になる等)場合は2.の手法で接着する。カラーフィルタ層内のブラックマトリックスを構成しない場合は、1.の手法により、光学部材の光透過性基板側から同基板及び光透過層を通してUV照射し、接着する。
【0185】
1.化合物Aを塗布したOLED基板の透明電極面(無機材料面)と光学部材の光透過層の凸部頂面(有機材料面)を密着させてUV露光し、結合させる。
2.光学部材の光透過層の凸部頂面(有機材料面)に0.1%AIBN(アゾビスブチロニトリル)メタノール溶液を塗布し、化合物Aを塗布したOLED基板の透明電極面(無機材料面)を密着させ、80℃で12時間反応させて、結合させる。
【0186】
(実施例2)
実施例1において、カップリング剤を用いて光学部材とOLED基板とを接着したことに代えて、下記の条件で行ったこと以外は、実施例1と同様に行って、有機発光表示装置を得た。
【0187】
光学部材の光透過層に凹部を形成するのに、下記の寸法の凹部深さを有する光学部材用モールドを用い、下記の寸法の凹部深さを有する光学部材を得た。
【0188】
[光学部材用モールド凹部]
赤色相当部:深さ0nm
緑色相当部:深さ97nm
青色相当部:深さ293nm
白色相当部及び画素間:深さ313nm
【0189】
[光学部材の凹部深さ]
赤色相当部:深さ303nm
緑色相当部:深さ206nm
青色相当部:深さ 10nm
白色相当部及び画素間:深さ 0nm
【0190】
得た光学部材の凹部に、インクジェット法に従って、SiN粒子を分散してOLED基板の透明電極層と屈折率を同等としたエポキシ系接着剤を充填した。充填の条件としては、形成された凹部の底部と、形成された凸部で規定される光学部材の表面とで規定される容積に前記接着剤が充填されるように行った。
【0191】
(比較例)
OLED基板に、光透過層を形成しない光学部材、即ち単純なカラーフィルタ基板を重ねて一体化して有機発光表示装置を得た。OLED基板及びカラーフィルタは共に、前記と同様の構成及び特性を有する。
【0192】
<評価>
実施例1及び2並びに比較例で得た有機発光表示装置を用いて、各画素出射光の正面強度スペクトルを、下記の条件で測定した。その結果を、図5、図6及び図7に示す。ここで、白色(W)の最大強度(ピーク強度)を1として正面強度を正規化して比較する。
【0193】
比較例では、光源の白色光をカラーフィルタで波長選択しているが、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の各色の最大透過率は1以下のため、各色の正面強度は1以下であり、その波長分布はカラーフィルタの特性に従って広帯域になっている。即ち、強度が弱く、色味が悪い出力となっている。
【0194】
これに対して各実施例では、光学共振器の構造によって、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)を所定波長で強め、狭帯域化している。即ち、強度が強く、色味が良い出力となっており、本発明による光学部材を用いることによって、表示特性を高めた有機発光表示装置が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明による有機発光表示装置は、高精彩なフルカラー表示が可能であるため、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、又は一般照明を含む幅広い分野に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0196】
10 光学部材
12 光透過層
14 凸部
15 凹部
16 光半透過反射層
18 カラーフィルタ層
18r 赤色フィルタ部
18g 緑色フィルタ部
18b 青色フィルタ部
18w 白色フィルタ部
19 光透過性基板
20 OLED基板
22 基板
24 光反射電極
26 有機EL層
28 光透過電極
30 接着部
32 画素回路
34 コンタクトホール
36 絶縁層
100 有機発光表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、光反射電極と、有機EL層と、光透過電極と、凹部を有する光透過層と、をこの順に有する有機発光表示装置であって、
前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、光学共振器が形成され、
前記光学共振器を経て前記光透過層から透過される光が、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光であることを特徴とする有機発光表示装置。
【請求項2】
光透過層が一部材で形成されている請求項1に記載の有機発光表示装置。
【請求項3】
一部材の材料が、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂である請求項2に記載の有機発光表示装置。
【請求項4】
光透過層の凹部形成面に、光半透過反射層を有する請求項1から3のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項5】
光透過層の凹部の屈折率が、光透過電極の屈折率と等しい請求項1から4のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項6】
光透過層の凹部に接着剤を充填してなる請求項5に記載の有機発光表示装置。
【請求項7】
光透過層の複数の凹部の深さが、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの光を出射するように、異なっている請求項1から6のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項8】
光反射電極が、同一平面上に存在する請求項1から7のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項9】
有機EL層が、白色発光する請求項1から8のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項10】
光透過層の光出射側にカラーフィルタ層をさらに有する請求項1から9のいずれかに記載の有機発光表示装置。
【請求項11】
基板上に光反射電極、有機EL層及び光透過電極を順次積層する工程と、
前記基板とは異なる光透過性基板上に、凹部を有する光透過層を形成する工程と、
前記光反射電極と前記凹部における該光反射電極に対向する表面との間で、赤色、緑色及び青色の少なくとも1つの色の光を出射する光学共振器が形成されるように、前記光透過層と前記光透過電極とを対向して固定する工程と、
を含むことを特徴とする有機発光表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記光透過層の凹部を形成する工程は、型転写により行われる請求項11に記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記の光透過層と光透過電極とを対向して固定する工程は、カップリング剤を用いて行われる請求項11から12のいずれかに記載の有機発光表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記の光透過層と光透過電極とを対向して固定する工程は、光透過層の凹部に接着剤を充填して行われる請求項11から13のいずれかに記載の有機発光表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−71041(P2011−71041A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222898(P2009−222898)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】