説明

有機発光装置の製造方法

【課題】有機発光素子に対する水分の浸入を防止することにより、発光特性の劣化が発生することがなく、信頼性の高い有機発光装置を作製する。
【解決手段】基板101と、基板101上に設けられた有機発光素子と、有機発光素子を覆う樹脂保護膜109と、樹脂保護膜109を覆う無機保護膜110と、から構成される有機発光装置の製造方法において、樹脂保護膜109をスクリーン印刷法で形成する工程を含む。スクリーン印刷工程は、基板101上の印刷領域の周囲に、スクリーン印刷版が接触しないようにして樹脂保護膜109を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイとして、自発光型デバイスである有機発光素子を用いた有機発光装置が注目されている。しかし、有機発光素子は水分や酸素に極めて弱く、例えば、有機発光素子中に水分が浸入することにより、ダークスポットと呼ばれる非発光領域が発生し、発光が維持できなくなるといった問題が生じることが知られている。
【0003】
有機発光素子への水分浸入を防ぐ方法の一つとして、特許文献1には、有機発光素子上に樹脂保護膜と無機保護膜とからなる保護膜を形成するという方法が開示されている。ここで、樹脂保護膜は有機発光素子、及びその周囲の基板の表面を覆い、それらの凹凸を平坦化する。無機保護膜は平坦な樹脂膜とその縁部、及びその周囲の基板表面(有機発光素子への水分の浸入が可能な透湿性の膜を下層に持たない表面)を覆う。このような構成とすることで、無機保護膜だけで凹凸を有する有機発光素子への水分浸入を防ぐ場合よりも、はるかに薄い膜厚で防湿を実現し、有機発光素子の劣化を防ぐことができる。
【0004】
また、このような構成における樹脂保護膜の形成方法として、特許文献2には、膜厚の安定性、形成膜の平坦性、パターニング性などの観点から、スクリーン印刷法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003―282240公報
【特許文献2】特開2006−147528公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した樹脂保護膜と無機保護膜とからなる封止構成において、無機保護膜の大部分の領域は、平坦な樹脂保護膜上に形成される。このため、一般的な手法である気相成長法(化学的気相成長法、スパッタリング法、真空蒸着法等)により均質で欠陥のない良好な防湿性を有する膜が形成可能である。ところが、樹脂保護膜の周囲の基板表面に形成される無機保護膜は必ずしも同じ状況ではない。
【0007】
すなわち、無機保護膜形成前に、この領域に異物や、表面欠陥等による凹凸が生じた場合、無機保護膜はこれらを完全に被覆できないか、被覆できても凹凸の側面部に形成される膜の密度が低下し、良好な防湿性を発現できないという問題が発生する。
【0008】
スクリーン印刷法による樹脂保護層形成は、基板上にスクリーン印刷版を、距離を隔てて配置する。そして、スキージと呼ばれるゴム製のブレードを、圧力をかけながら移動させることによりスクリーン印刷版と基板とを接触させて、スクリーン印刷版の開口から、樹脂を基板表面に転写させるプロセスである。スクリーン印刷版の開口の外周部では、樹脂の回り込みや、それらが硬化した異物の堆積が起る。そして、それらの堆積物やスクリーン印刷版自体が基板表面に擦り付けられる際に、基板表面に異物の付着や傷等の表面欠陥(凹凸)を発生させる。
【0009】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたもので、有機発光素子に対する水分の浸入を防止することにより、発光特性の劣化が発生することがなく、信頼性の高い有機発光装置を作製することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の有機発光装置の製造方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の有機発光装置の製造方法により製造される有機発光装置は、基板と、該基板上に設けられた有機発光素子と、該有機発光素子を覆う樹脂保護膜と、該樹脂保護膜を覆う無機保護膜と、から構成される。本発明の有機発光装置の製造方法は、樹脂保護膜をスクリーン印刷法で形成するスクリーン印刷工程を含む。そして、このスクリーン印刷工程は、基板上の印刷領域の周囲に、スクリーン印刷版が接触しないようにして樹脂保護膜を形成する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機発光装置の製造方法によれば、樹脂保護膜を形成する際に、樹脂保護膜の周囲に存在する基板の表面に対してスクリーン印刷版が接触しない。このため、スクリーン印刷版からの異物の付着や、異物やスクリーン印刷版自体が基板に擦り付けられることによる傷等の表面欠陥(凹凸)の発生がなく、無機保護膜は平坦な樹脂保護膜とその縁部、及びその周囲の基板表面を良好に覆うことができる。したがって、無機保護膜の不完全な形成箇所や膜質の低下した箇所から浸入した水分が、樹脂保護膜を通って表示部に至ることはない。このため、水分の浸入による発光特性の劣化が発生することがない有機発光素子とすることができるので、信頼性の高い有機発光装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図。
【図2】本発明の第1の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図。
【図3】本発明の第1の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図。
【図4】本発明の第2の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図。
【図5】比較例により作製される有機発光装置を示す断面模式図。
【図6】本発明の実施例1のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図。
【図7】本発明の実施例2のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図。
【図8】本発明の実施例3のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図。
【図9】本発明の実施形態の大判基板を示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法で製造される有機発光装置は、基板と、この基板上に設けられた有機発光素子と、この有機発光素子を覆う樹脂保護膜と、この樹脂保護膜を覆う無機保護膜と、から構成されるものである。
【0014】
また、本発明の有機発光装置の製造方法は、樹脂保護膜をスクリーン印刷法で形成するスクリーン印刷工程を含み、該スクリーン印刷工程は、基板上の印刷領域の周囲に、スクリーン印刷版が接触しないようにして樹脂保護膜を形成するものである。
【0015】
また、このような製造方法において、スクリーン印刷工程おいて使用されるスクリーン印刷版は、樹脂保護膜を形成する際の基板の対向面である裏面に、基板とスクリーン印刷版との接触を防ぐ凸部を有することが可能である。また、基板は、樹脂保護膜を形成する際のスクリーン印刷版の対向面である表面に、基板とスクリーン版との接触を防ぐ凸部を有することが可能である。さらに、スクリーン印刷工程おいて、基板又はスクリーン印刷版の非印刷領域に、基板とスクリーン印刷版との接触を防ぐ凸部を有することが可能である。
【0016】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明に係る有機発光装置の第1の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る有機発光装置の製造方法により作製される有機発光装置を示す断面模式図である。また、図2及び図3は、本発明の第1の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図である。ここで、図1中、101は基板、102TFT回路、104は平坦化層、105は下部電極、106はバンク、107は有機化合物層、108は上部電極、109は樹脂保護膜、110は無機保護膜を示す。また、図2及び図3中、201は基板、202はTFT回路、204は平坦化層、205は下部電極、206はバンク、207は有機化合物層、208は上部電極、209は樹脂保護膜、210はブレード、211はスクリーン印刷版、212は凸部を示す。
【0018】
まず、有機発光装置の構成部材である有機発光素子について説明する。
【0019】
第1の実施形態で製造される有機発光装置は、図1に示すように、基板101上にTFT回路102が形成されている。ここで、有機発光装置に使用される基板101として、ガラス基板、合成樹脂等からなる絶縁性基板、表面に酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁層を形成した導電性基板若しくは半導体基板等を挙げることができる。また、基板101は、透明であっても不透明であってもよい。
【0020】
TFT回路102を含んだ基板101上には、アクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる平坦化層104が、フォトリソグラフィー法等によって所望のパターンにて形成されている。ここで、平坦化層104は、TFT回路102を設けることで生じる凹凸を平坦化するための層である。なお、平坦化層104は、TFT回路102を設けることで生じる凹凸を平坦化できるものであれば、材料、製法は特に限定されるものではない。また、平坦化層104とTFT回路102との間に、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等の無機材料からなる絶縁層(不図示)を形成してもよい。
【0021】
平坦化層104上に設けられTFT回路102の一部と電気的に接続する下部電極(第1電極)105は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。下部電極105が透明電極である場合、その構成材料として、ITO、In23等を挙げることができる。下部電極105が反射電極である場合、その構成材料として、Au、Ag、Al、Pt、Cr、Pd、Se、Ir等の金属単体、これら金属単体を複数組み合わせた合金、ヨウ化銅等の金属化合物等を挙げることができる。下部電極105の膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1μmである。
【0022】
下部電極105の周縁部には、バンク(分離膜)106が設けられている。バンク106の構成材料として、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁層やアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等を挙げることができる。バンク106の膜厚は、好ましくは、1μm〜5μmである。
【0023】
下部電極105上に設けられる有機化合物層107は、一層で構成されてもよいし、複数の層で構成されてもよく、有機発光素子の発光機能を考慮して適宜選ぶことができる。また、有機化合物層107を構成する層として、具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等を挙げることができる。これらの層の構成材料として、公知の化合物を使用することができる。なお、有機化合物層107は、発光する領域が特定の層内であってもよいし、隣接する層同士の界面であってもよい。有機化合物層107は、真空蒸着法、インクジェット法等により形成される。蒸着法等の場合は、高精細マスク、インクジェット法等の場合は、高精度吐出を用いて発光エリアに有機化合物層を形成する。
【0024】
有機化合物層107上には、上部電極(第2電極)108が形成される。上部電極108は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。上部電極108の構成材料は、下部電極105と同様の材料を使用することができる。
【0025】
上部電極108を形成することにより、基板101上に有機発光素子が形成される。ここで、大判の基板で有機発光素子を形成する際には、図9に示すように、大判基板601上に複数の有機発光素子602がマトリックス状に配列される。
【0026】
次に、樹脂保護膜の形成工程について説明する。本実施形態においては、まず低露点雰囲気の印刷室内に、有機発光素子を形成した基板を移動させる。次に、図2に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子上に樹脂保護膜209となる接着剤を印刷するスクリーン印刷工程を実施する。なお、図2では、スクリーン印刷版211及びブレード210のみを図示している。また、スクリーン印刷版211の細線部は印刷領域を表し、太線部は非印刷領域を表す。この際使用するスクリーン印刷版は、図6に示すように、基板303の対向面の印刷開口外側周囲(開口端より0.5mmから1mm程度の領域)に数μmから十数μmの高さの凸部302が形成されている。これにより、樹脂保護膜の周囲に位置する基板303の表面にスクリーン印刷版301が接触しない。
【0027】
あるいは、図3に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子上に樹脂保護膜209となる接着剤を印刷するスクリーン印刷工程を実施する。この際使用するスクリーン印刷版401は、図7に示すように、基板403の対向面の印刷開口内側周囲(開口端より0.3mmから0.8mm程度の領域)に十数μmから二十数μmの高さの凸部402が形成されている。これにより、樹脂保護膜209の周囲に位置する基板403の表面にスクリーン印刷版401が接触しない。この場合、印刷領域に凸部402が形成されているため、印刷直後にはこの部分に接着剤は印刷されないが、一般的にスクリーン印刷に用いられる程度の粘度の接着剤であれば、接着剤自身の流動性で埋まり、非印刷領域ができることはない。このように、スクリーン印刷版211が接触しない清浄かつ無欠陥な領域が、樹脂保護膜209の端部から概ね0.5mm幅程度存在することにより、基板201の表面と無機保護膜が十分な防湿性を発現することができる。
【0028】
印刷に使用される樹脂保護膜209となる接着剤は、有機発光素子に悪影響を及ぼす成分を含んでいなければ、具体的には、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤等を使用することができる。
【0029】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様のものについては、説明を省略することがある。図4は、本発明の第2の実施形態により作製される有機発光装置を示す断面模式図である。ここで、図4中、201は基板、202はTFT回路、204は平坦化層、205は下部電極、206はバンク、207は有機化合物層、208は上部電極、209は樹脂保護膜、210はブレード、211はスクリーン印刷版、213は凸部を示す。
【0030】
本実施形態において、基板上に形成される有機発光素子は、第1の実施形態と同様の方法で形成される。
【0031】
樹脂保護膜形成工程について説明する。本実施形態では、低露点窒素雰囲気の印刷室に移動させた、有機発光素子を形成した基板に、図4に示すようなスクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子上に樹脂保護膜209となる接着剤を印刷するスクリーン印刷工程を実施する。このスクリーン印刷工程において、図8に示すように、基板502の表面の樹脂保護膜形領域外側周囲(樹脂保護膜端より0.5mmから1mm程度の領域)に数μmから十数μmの高さの凸部503が形成されている。これにより、樹脂保護膜の周囲の基板502の表面にスクリーン印刷版501が接触しない。このように、スクリーン印刷版501が接触しない清浄かつ無欠陥な領域が、樹脂保護膜209の端部から概ね0.5mm幅存在することにより、基板502の表面と無機保護膜110が十分な防湿性を発現することができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。図5は、比較例により作製される有機発光装置を示す断面模式図である。また、図6は、実施例1のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図、図7は、実施例2のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図、図8は、本発明の実施例3のスクリーン印刷工程で使用する装置を示す斜視図である。
【0033】
[実施例1]
実施例1では、まず、Crで形成されている下部電極を配設したTFT基板を、UV/オゾン洗浄処理した。次に、フォトリソ工程により、下部電極の周辺にバンクをパターン形成した。このとき、バンクの膜厚は、2μmであった。次に、真空蒸着法により、有機化合物層を構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を、この順で形成した。
【0034】
具体的には、まず、下部電極上にαNPDを成膜し正孔輸送層を形成した。このとき、正孔輸送層の膜厚は50nmであった。次に、正孔輸送層上に、ホストであるアルミキレート錯体(Alq3)と、ゲストであるクマリン6とを、重量比で100:6となるように共蒸着し発光層を形成した。このとき、発光層の膜厚を50nmとした。次に、発光層上に、フェナントロリン化合物(Bphen)を成膜して電子輸送層を形成した。このとき、電子輸送層の膜厚を10nmとした。次に、電子輸送層上に、フェナントロリン化合物(Bphen)と炭酸セシウム(Cs2CO3)とを、重量比で100:1となるように共蒸着して電子注入層を形成した。このとき、電子注入層の膜厚を40nmとした。次に、電子注入層上に、スパッタリング法によりITOを成膜し上部電極を形成した。このとき、上部電極の膜厚を130nmとした。以上の工程により、有機発光素子を作製した。
【0035】
次に、低露点窒素雰囲気の印刷室で、樹脂保護膜を形成した。すなわち、スクリーン印刷工程として、熱硬化性のエポキシ樹脂を、図2に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子が設けられている基板201上に印刷した。ここで使用するスクリーン印刷版には、図6に示すように、基板303の対向面の印刷開口外側周囲(開口端より0.8mmの領域)に10μmの高さの凸部302が形成されている。これにより、形成される樹脂保護膜の周囲に位置する基板303の表面にスクリーン印刷版301が接触しない。
【0036】
この後、樹脂保護膜を、真空環境下、100℃の温度で15分間過熱することで硬化させた。ここで、硬化後の樹脂保護膜の膜厚は30μmとした。
【0037】
次に、窒化珪素からなる無機保護膜を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法を用いて成膜した。ここで、無機保護膜の膜厚は1μmとした。また、無機保護膜は、樹脂保護膜全体を覆うと共に、樹脂保護膜外周の基板面に1mm程度の幅で形成した。
【0038】
以上のようにして形成した有機発光装置に対して、温度60℃、湿度90%の環境下で保存試験を行ったところ、1000時間の保存試験の結果においても、ダークスポットは発生しなかった。
【0039】
[実施例2]
実施例2では、以下に示す方法で有機発光装置を作製した。なお、有機発光素子の作製方法は、実施例1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0040】
有機発光素子を形成した基板に対して、低露点窒素雰囲気の印刷室で樹脂保護膜を形成した。すなわち、スクリーン印刷工程として、熱硬化性のエポキシ樹脂を、図3に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子が設けられている基板201上に印刷した。このとき、図7に示すように、基板403の対向面の印刷開口内側周囲(開口端より0.3mmの領域)に、20μmの高さの凸部402を形成しておくことにより、樹脂保護膜の周囲に位置する基板403の表面にスクリーン印刷版401が接触しないようにした。
【0041】
この後、樹脂保護膜を、真空環境下、100℃の温度で15分間過熱することで硬化させた。ここで、硬化後の樹脂保護膜の膜厚は30μmとした。
【0042】
次に、窒化珪素からなる無機保護膜を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法を用いて成膜した。ここで、無機保護膜の膜厚は1μmとした。また、無機保護膜は、樹脂保護膜全体を覆うと共に、樹脂保護膜外周の基板面に1mm程度の幅で形成した。
【0043】
以上のようにして形成した有機発光装置に対して、温度60℃、湿度90%の環境下で保存試験を行ったところ、1000時間の保存試験の結果においても、ダークスポットは発生しなかった。
【0044】
[実施例3]
実施例3では、以下に示す方法で有機発光装置を作製した。なお、有機発光素子の作製方法は、実施例1と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0045】
有機発光素子を形成した基板に対して、低露点窒素雰囲気の印刷室で樹脂保護膜を形成した。すなわち、スクリーン印刷工程として、熱硬化性のエポキシ樹脂を、図4に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、有機発光素子が設けられている基板201上に印刷した。この際、図8のように、基板502表面の樹脂保護膜の形成領域外側周囲(樹脂保護膜端より0.5mmの領域)には、バンクをパターン形成する際、2μmの高さの凸部503を形成しておいた。これにより、樹脂保護膜の周囲に位置する基板502の表面にスクリーン印刷版501が接触しないようにした。
【0046】
この後、樹脂保護膜を、真空環境下、100℃の温度で15分間過熱することで硬化させた。ここで、硬化後の樹脂保護膜の膜厚は30μmとした。
【0047】
次に、窒化珪素からなる無機保護膜を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法を用いて成膜した。ここで、無機保護膜の膜厚は1μmとした。また、無機保護膜は、樹脂保護膜全体を覆うと共に、樹脂保護膜外周の基板面に1mm程度の幅で形成した。
【0048】
以上のようにして形成した有機発光装置に対して、温度60℃、湿度90%の環境下で保存試験を行ったところ、1000時間の保存試験の結果においても、ダークスポットは発生しなかった。
【0049】
[比較例]
比較対照として、図5に示すように、スクリーン印刷機を用いたスクリーン印刷法で、基板201上に印刷を行った。この際、スクリーン印刷版211側にも、基板201側にも、スクリーン印刷版211と基板201との接触を妨げる凸部を形成していない基板201を用いて、有機発光素子を形成した。
【0050】
そして、有機発光素子を形成した基板に対して、低露点窒素雰囲気の印刷室で、樹脂保護膜を形成した。この後、樹脂保護膜を、真空環境下、100℃の温度で15分間過熱することで硬化させた。ここで、硬化後の樹脂保護膜の膜厚は30μmとした。
【0051】
次に、窒化珪素からなる無機保護膜を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法を用いて成膜した。ここで、無機保護膜の膜厚は1μmとした。また、無機保護膜は、樹脂保護膜全体を覆うと共に、樹脂保護膜外周の基板面に1mm程度の幅で形成した。
【0052】
以上のようにして形成した有機発光装置に対して、温度60℃、湿度90%の環境下で1000時間の保存試験を行ったところ、表示部外周の2点からその点を中心にして平均半径5mmの領域にダークスポットが発生した。
【符号の説明】
【0053】
101(201、303、403、502):基板、102(202)TFT回路、104(204):平坦化層、105(205):下部電極、106(206):バンク、107(207):有機化合物層、108(208):上部電極、109(209):樹脂保護膜、110:無機保護膜、210:ブレード、211:スクリーン印刷版(細線部は印刷領域、太線部は非印刷領域)、212(213、302、402、503):凸部、301(401、501):スクリーン印刷版、601:大判基板、602:有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設けられた有機発光素子と、該有機発光素子を覆う樹脂保護膜と、該樹脂保護膜を覆う無機保護膜と、から構成される有機発光装置の製造方法において、
前記樹脂保護膜をスクリーン印刷法で形成するスクリーン印刷工程を含み、
前記スクリーン印刷工程は、前記基板上の印刷領域の周囲に、スクリーン印刷版が接触しないようにして前記樹脂保護膜を形成する、
ことを特徴とする有機発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記スクリーン印刷工程において使用されるスクリーン印刷版は、樹脂保護膜を形成する際の基板の対向面である裏面に、前記基板と前記スクリーン印刷版との接触を防ぐ凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、樹脂保護膜を形成する際のスクリーン印刷版の対向面である表面に、前記基板と前記スクリーン版との接触を防ぐ凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記スクリーン印刷工程おいて、前記基板又は前記スクリーン印刷版の非印刷領域に、前記基板と前記スクリーン印刷版との接触を防ぐ凸部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の有機発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−267396(P2010−267396A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115379(P2009−115379)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】