説明

有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法

【課題】非常に開繊しにくい有機繊維を平易な方法にて開繊し、ポリオレフィン系樹脂中に均一に混合する方法を提供すること。
【解決手段】有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを、回転羽根を有するミキサーで混合する有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(B)の重量に対する有機繊維(A)の重量の比が90/10より小さく、ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物(但しポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)のポリオレフィン樹脂(B)に対する重量割合が50重量%以上である)、もしくは該ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)単独であることを特徴とする、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に関するものである。さらに詳細には、絡まりやすく開繊しにくい有機繊維とポリオレフィン樹脂を均一に混合する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリオレフィン樹脂の機械的強度を改良する手段として、ガラス繊維を含有するポリオレフィン樹脂組成物が知られている。近年、産業廃棄物処分場の残余容量が不足しているため、有機繊維を含有する複合樹脂が注目されてきている。更には、二酸化炭素による地球温暖化の観点より、焼却処理されても二酸化炭素総量を増やさない、いわゆるカーボンニュートラルな植物系有機繊維で強化された複合樹脂も検討されている。
【0003】
有機繊維は絡まりやすく非常に開繊しにくいため、有機繊維を樹脂中に均一に混合させるための検討がなされている。
例えば、特開平8−11131には、2種以上の有機繊維と熱可塑性樹脂粉末が均一に混合された繊維強化型熱可塑性樹脂用原料組成物が記載されている。
【0004】
また、特開2006−96836には、有機繊維を引き揃え、バインダー樹脂で固めてペレット化し、嵩高さを解消し、複合化に際して取り扱いを容易にする方法が記載されている。
【0005】
特開平2007−84713には、回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより、セルロース繊維集合体を開繊する工程と、続いて熱可塑性樹脂をミキサーに入れて攪拌し摩擦熱によって熱可塑性樹脂を溶融させ、開繊されたセルロース繊維に熱可塑性樹脂が付着した混合物を得る工程、その混合物を冷却しながら低速攪拌する工程を有するセルロース繊維含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−11131号公報
【特許文献2】特開2006−96836号公報
【特許文献3】特開2007−84713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の公報等に記載されている樹脂組成物や製造方法では、2種の繊維が必須であったり、バインダー樹脂で固める工程が必要であったり、開繊工程と混合工程の2段階であったりと、多くの制約があった。絡まりやすく非常に開繊しにくい有機繊維の取り扱いを容易にするという観点から、十分な効果があるとは言いがたい。工程が多くなれば製造に伴うエネルギー消費量が増え、植物由来有機繊維を用いる場合の主たる理由の一つである「カーボンニュートラル」の観点からも好ましくない。
かかる状況の下、本発明の目的は、非常に開繊しにくい有機繊維を平易な方法にて開繊し、ポリオレフィン系樹脂中に均一に混合する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる実状に鑑み、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを、回転羽根を有するミキサーで混合する有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(B)の重量に対する有機繊維(A)の重量の比が90/10より小さく、ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物(但しポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)のポリオレフィン樹脂(B)に対する重量割合が50重量%以上である)、もしくは該ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)単独であることを特徴とする、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絡まりやすく開繊しにくい有機繊維を平易な方法にて開繊し、ポリオレフィン樹脂と均一に混合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いられる有機繊維(A)には、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ケナフ繊維、クワラ繊維、ラミー繊維、さとうきび繊維、竹繊維、麻繊維などの植物系繊維が好適に用いられる。
【0011】
有機繊維(A)には、収束剤を塗布しても良い。本発明で用いられる収束剤としては、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、澱粉、植物油等が挙げられる。さらに、収束剤に、酸変性ポリオレフィン樹脂、表面処理剤、パラフィンワックス等の潤滑剤を配合しても良い。
【0012】
有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)との濡れ性や接着性等を改良するために、収束剤に表面処理剤を配合しても良い。表面処理剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、クロム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、ボラン系カップリング剤等が挙げられ、好ましくはシラン系カップリング剤またはチタネート系カップリング剤であり、より好ましくはシラン系カップリング剤である。
【0013】
前記のシラン系カップリング剤としては、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、好ましくはγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類である。
【0014】
有機繊維(A)を前記の収束剤で処理する方法としては、従来から慣用されている方法が挙げられ、例えば、水溶液法、有機溶媒法、スプレー法等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で変性された変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂(B)として好ましくは、ポリプロピレン樹脂である。これらのポリオレフィン樹脂を単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0016】
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィンランダム共重合体,プロピレンを単独重合した後にエチレンとプロピレンを共重合して得られるプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0017】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられる。
【0018】
炭素数4以上のα−オレフィンを主な成分とするα−オレフィン樹脂としては、例えば、α−オレフィン−プロピレンランダム共重合体、α−オレフィン−エチレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂(B)に用いられる炭素数4以上のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。好ましくは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0020】
不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物で変性された変性ポリオレフィン樹脂としては、次の(B−a)〜(B−d)の変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。これらの変性ポリオレフィン樹脂を単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
(B−a)オレフィンの単独重合体に、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(B−b)少なくとも二種のオレフィンを共重合して得られる共重合体に、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(B−c)オレフィンを単独重合した後に少なくとも2種のオレフィンを共重合して得られるブロック共重合体に、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をグラフト重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
(B−d)少なくとも1種のオレフィンと、不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を共重合して得られる変性ポリオレフィン樹脂。
【0021】
変性ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、溶液法、バルク法、溶融混練法等の方法が挙げられる。また、これらの少なくとも2種の方法を組み合わせた製造方法であっても良い。
【0022】
溶液法、バルク法、溶融混練法等の方法としては、例えば、“実用 ポリマーアロイ設計”(井出文雄著、工業調査会(1996年発行))、Prog.Polym.Sci.,24,81−142(1999)、特開2002−308947号公報、特開2004−292581号公報、特開2004−217753号公報、特開2004−217754号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0023】
変性ポリオレフィン樹脂としては、市販されている変性ポリオレフィン樹脂を用いても良く、例えば、商品名モディパー(日本油脂(株)製)、商品名ブレンマーCP(日本油脂(株)製)、商品名ボンドファースト(住友化学(株)製)、商品名ボンダイン(住友化学(株)製)、商品名レクスパール(日本ポリエチレン(株)製)、商品名アドマー(三井化学(株)製)、商品名モディックAP(三菱化学(株)製)、商品名ポリボンド(クロンプトン(株)製)、商品名ユーメックス(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0024】
変性ポリオレフィン樹脂に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0025】
また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記の不飽和カルボン酸の酸無水物、エステル化合物、アミド化合物、イミド化合物、金属塩等が挙げられ、その具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
また、クエン酸やリンゴ酸のように、ポリオレフィンにグラフトする工程で脱水して不飽和カルボン酸を生じるものを用いても良い。
【0026】
不飽和カルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物として、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸のグリシジルエステル、無水マレイン酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルである。
【0027】
ポリオレフィン樹脂(B)の製造方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等によって製造する方法が挙げられる。また、これらの重合法を単独で用いる方法であっても良く、少なくとも2種を組み合わせた方法であっても良い。
【0028】
ポリオレフィン樹脂(B)の製造方法としては、例えば、“新ポリマー製造プロセス”(佐伯康治編集、工業調査会(1994年発行))、特開平4−323207号公報、特開昭61−287917号公報等に記載されている重合法が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン樹脂(B)の製造に用いられる触媒としては、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒が挙げられる。マルチサイト触媒として、好ましくは、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられ、また、シングルサイト触媒として、好ましくは、メタロセン触媒が挙げられる。
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)がポリプロピレン樹脂の場合、ポリプロピレン樹脂の製造方法に用いられる好ましい触媒として、上記のチタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子を含有する固体触媒成分を用いて得られる触媒が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法において、ポリオレフィン樹脂(B)に対する有機繊維(A)重量の比は90/10より小さく、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の性能およびその性能の変動幅など総合的な品質の観点から、有機繊維をより十分に開繊させるため、好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。
【0031】
本発明におけるポリオレフィン樹脂(B)は、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物、もしくは該ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)単独である。
ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物である場合、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−2)の重量割合は50重量%以上、好ましくは60重量%以上である(但しポリオレフィン樹脂(B)を100重量%とする)。
【0032】
本発明におけるポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)は、JIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩を通過するポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)である。
ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)は、上記の触媒を用いて、オレフィンを上記の重合法により重合することで得ることができる。上記のポリオレフィン樹脂(B)の製造方法を単独で用いる方法であっても、少なくとも2種を組み合わせた方法であっても、通常、重合完了直後のポリオレフィン樹脂(B)は、大きさ1〜2mmのパウダー状である。
【0033】
本発明におけるポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)は、JIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩は通過せず且つJIS Z8801−1に規定された目開き4.75mmの篩を通過するポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)である。
ポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)は、上記の触媒を用いて、オレフィンを上記の重合法により重合することで得られるパウダーをポリオレフィン樹脂の融点以上に熱し、適宜、酸化防止剤などの添加剤を溶融混練し、ストランドカットもしくはアンダーウォーターカットなどの方法で、所望の大きさのペレット状に切断することにより得ることができる。
【0034】
有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物は、有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを、回転羽根を有するミキサーで混合することにより得ることができる。
ここで、回転羽根を有するミキサーとしては、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)の投入順序は、どちらが先でも構わない。また、回転羽根の先端の周速、混合時間に特に規定はなく、実際に混合の状況を確認しながら適宜調整すればよい。製造の効率を考慮すれば、混合時間は1〜5分間が好ましく、この混合時間内に均一に混合できるように、回転羽根の先端の周速を調整する。回転羽根の先端の周速が高く、1分間より短い混合時間で均一に混合される場合には、繊維が断裂する可能性がある。
ここで「均一に混合される」とは、JIS Z8801−1に規定された目開き4.75mmの篩を、有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)の混合物の70重量%以上が通過する状態のことである。
【0035】
本発明の有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法では、有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)を混合するにあたって、ステアリン酸カルシウムなどの中和剤、チバスペシャルティケミカルズ社製 IRGANOX1010に代表されるフェノール系酸化防止剤、チバスペシャルティケミカルズ社製 IRGAFOS168に代表される燐系酸化防止剤や、造核剤、タルクなどを添加することもできる。
【0036】
本発明の有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法では、前述の方法で有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)を均一に混合して可塑化装置に供給するにあたって、同一の供給口または別の供給口から、更に、ポリオレフィン樹脂(B)とは異なるポリオレフィン樹脂やゴムなどを供給し、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物に含有させてもよい。ここで可塑化装置とは、熱可塑性樹脂をその融点以上に加熱し、溶融状態になった熱可塑性樹脂に攪拌を加える装置のことである。例えば、バンバリーミキサー、単軸押出し機、2軸同方向回転押出し機(例えば、東芝機械(株)製 TEM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 TEX[登録商標]等が挙げられる。)、2軸異方向回転押出し機(神戸製鋼所(株)製 FCM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 CMP[登録商標]等が挙げられる。)が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例または比較例で、以下に示した有機繊維および樹脂を用いた。
(1)有機繊維(A)
A−1:ケナフ靭皮、ユニパアクス社製、ケナフ靭皮、繊維長3mm
【0038】
(2)ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)
I−1:プロピレン単独重合体(メルトフローレート(MFR):20g/10分)
(商品名:住友化学株式会社製ノーブレンZ101A)
このパウダーは、JIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩を通過した。
【0039】
(3)ポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)
I−2:プロピレン単独重合体(メルトフローレート(MFR):20g/10分)
(商品名:住友化学株式会社製ノーブレンZ101A)
このペレットは、JIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩を通過せず、且つJIS Z8801−1に規定された目開き4.75mmの篩を通過した。
【0040】
実施例および比較例3〜10に用いた評価用サンプルの製造条件を示す。
有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)との混合物300gを、以下の混合方法で混合し、評価用サンプルを製造した。
混合方法(1)
川田製作所製 スーパーミキサー ST−J−20(ミキサー容量20リッター、攪拌羽根4枚、回転数550rpm、羽根先端の周速8.6m/秒)で、有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)を3分間混合した。
混合方法(2)
容量5リッターのポリ袋に有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)を入れて、手で1分間よく振って混合した。
【0041】
評価用サンプルの篩通過重量
有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)との混合物である評価用サンプル300gを、JIS Z8801−1に規定された目開き4.75mmの篩の上に静かに投入し、20秒間、手で激しく振とうさせて、篩を通過した重量を計測した。評価結果を表1に示す。
【0042】
比較例1、2はポリオレフィン樹脂(B)を用いず、有機繊維(A)のみを上記混合方法(1)と(2)で混合し、篩通過重量を測定した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
ポリオレフィン樹脂(B)を含まない比較例1、2、ポリオレフィン樹脂(B)に対する有機繊維(A)の重量比が大きい比較例3〜6、ポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)単独の比較例7、8では篩通過重量が小さい。また、ヘンシェルミキサーで混合しなかった比較例9、10でも篩通過重量が小さい。
【0046】
以上、詳述したとおり、本発明によって、絡まりやすく開繊しにくい有機繊維を平易な方法にて開繊し、ポリオレフィン樹脂と均一に混合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを、回転羽根を有するミキサーで混合する有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法であって、ポリオレフィン樹脂(B)の重量に対する有機繊維(A)の重量の比が90/10より小さく、ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物(但しポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)のポリオレフィン樹脂(B)に対する重量割合が50重量%以上である)、もしくは該ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)単独であることを特徴とする、有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
但し、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)は、JIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩を通過するポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)であり、ポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)はJIS Z8801−1に規定された目開き2mmの篩は通過せず且つJIS Z8801−1に規定された目開き4.75mmの篩を通過するポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)である。
【請求項2】
回転羽根を有するミキサーがヘンシェルミキサーである、請求項1記載の有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂(B)の重量に対する有機繊維(A)の重量の比が70/30以下である、請求項1または2記載の有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂(B)が、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)60重量%以上含有する、ポリオレフィン樹脂パウダー(B−1)とポリオレフィン樹脂ペレット(B−2)との混合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の有機繊維含有ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−59263(P2010−59263A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224471(P2008−224471)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】