説明

有機酸の製造方法

【課題】より実用性の高い有機酸の製造技術を提供する。
【解決手段】有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて炭化物材料に非解離型の有機酸を吸着させるようにする。これにより、さらに非解離型の有機酸を炭化物材料から回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸及びその重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性ブラスチックの原料となる乳酸は発酵法により生産できるが、生産コストが高く、ポリ乳酸を原料とした生分解性プラスチックの汎用化にはまだ至っていない。発酵による乳酸生産コストを削減するためには、短時間で大量の乳酸を製造するとともに、発酵液から乳酸を低エネルギーコストで回収することが重要である。
【0003】
乳酸など有機酸発酵においては、発酵液から乳酸を回収する方法としては、電気透析法、イオン交換法及び抽出法等がある。一般的な電気透析法は、有機酸を塩の形態で回収するため、その後に脱塩工程が必要となる。バイポーラ電気透析膜を用いる場合、非解離の有機酸として回収できるが、膜コストが高く工業的な乳酸生産には適用できない。イオン交換法では、アニオン樹脂に吸着させた乳酸は塩の形態を採るため、さらにカチオン樹脂で脱塩する工程が必要である。また、抽出法では、水と混和しない有機溶媒である抽出溶媒中にアミン系化合物など所定の捕捉剤を用いることで非解離の有機酸を回収することができる。
【0004】
以上の各種回収方法のうち、一般的な電気透析法やイオン交換法など解離状態の乳酸を回収する方法にあっては、アルカリ等で発酵液を中和し、有機酸を塩の形態として含有する中和発酵に適用が可能である。このような回収方法は、有機酸発酵中の発酵液にも発酵後の発酵液の双方に適用できる。また、非解離の有機酸を回収する方法にあっては、発酵液を中和しないで有機酸を非解離状態で発酵液中に含有させる非中和発酵に適用が可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−164295号公報
【特許文献2】特開2006−238877号公報
【非特許文献1】Izawa et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. Vol.75(2007), p533-537
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機酸発酵では、生産物たる有機酸による発酵阻害があることがわかっている。中和発酵によれば、有機酸を塩の形態とすることで発酵阻害を抑制又は回避することができる。しかしながら、中和発酵によれば、上記のとおり、有機酸を塩の形態で回収するため脱塩工程を避けることができない。脱塩工程は、有機酸の製造において工程を煩雑化させるとともに多大なコストを要する。
【0007】
一方、非中和発酵により、非解離型有機酸を回収すれば、有機酸製造プロセスを簡略化できる。しかしながら、非中和発酵は発酵条件が厳しいため、グルコースなどの炭素源の消費率が著しく低下してしまい収率の観点から現実的ではなかった。さらに、発酵液中の非解離型の有機酸を回収しつつ発酵するとしても、上記のとおり、非解離状態の有機酸を回収する電気透析法は汎用性がなく、また、抽出発酵では発酵阻害のおそれがあった。さらに、有機溶媒相に非解離型有機酸を回収した場合、非解離型有機酸を精製する場合には、アルカリ性水溶液で逆抽出すれば脱塩工程を要し、酸で逆抽出すれば有機酸は非解離型となるが回収率が低くなってしまうという問題もあった。
【0008】
以上のように、従来の有機酸製造方法において用いうる各種の有機酸発酵形態及び有機酸回収形態は、いずれも効率的な有機酸製造に寄与することができなかった。また、有機酸の重合体原料としての有機酸の提供に適したものではなった。すなわち、発酵阻害を克服しつつ非解離型有機酸を効率的に回収して有機酸ひいては有機酸重合体を生産性よく製造できる方法は未だ提供されていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、より実用的な有機酸及びその重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、炭化物材料に着目し、種々検討したところ、炭化物材料を用いることで発酵液中に非解離型有機酸を効率的に吸着でき、しかも、脱塩工程を要することなく非解離型有機酸として回収できることがわかった。また、炭化物材料を発酵液中の発酵液に接触させることで、非中和発酵でも有機酸による発酵阻害を予想を超えて抑制し、炭素源の消費率を向上させることがわかった。さらに、この結果、こうして得られた非解離型有機酸を原料として有機酸の重合体を高純度で合成できることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0011】
本発明によれば、有機酸の製造方法であって、有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて前記炭化物材料に前記非解離型の有機酸を吸着させる工程、を備える、製造方法が提供される。本発明の有機酸の製造方法において、前記有機酸は好ましくは乳酸である。
【0012】
本発明の有機酸の製造方法において、前記吸着工程は、前記有機酸発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含むことができる。また、前記吸着工程は、前記非解離型の有機酸をその解離型よりも優位に含有する発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含むことができる。さらに、前記吸着工程は、非中和発酵工程を含むことができる。
【0013】
本発明の有機酸の製造方法において、前記炭化物材料は活性炭とすることができ、前記炭化物材料は、前記発酵液100mlに対して30g以上50g以下添加されていることが好ましい。
【0014】
本発明の有機酸の製造方法において、さらに、前記炭化物材料から前記非解離型の有機酸を回収する工程、を備えることができる。前記回収工程は、前記炭化物材料を前記非解離型の有機酸が溶解可能な有機溶媒と接触させ、該有機溶媒中に前記非解離型の有機酸を回収する工程とすることができ、前記有機溶媒はケトン類とすることができる。
【0015】
前記有機酸生産微生物は有機酸生産酵母とすることができる。
【0016】
本発明によれば、有機酸の重合体の製造方法であって、有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて前記炭化物材料に前記非解離型の有機酸を吸着させる工程と、前記炭化物材料に吸着された前記非解離型の有機酸を原料として有機酸の重合体を製造する工程と、を備える、製造方法が提供される。前記有機酸は好ましくは乳酸である。
【0017】
本発明の有機酸の重合体の製造方法において、前記吸着工程は、前記有機酸発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含むことができる。また、前記吸着工程は、前記非解離型の有機酸をその解離型よりも優位に含有する発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含むことができる。さらに、前記吸着工程は、非中和発酵工程を含むことができる。
【0018】
本発明の有機酸の重合体の製造方法において、前記炭化物材料は活性炭とすることができ、前記炭化物材料は、前記発酵液100mlに対して30g以上50g以下添加されていることが好ましい。
【0019】
本発明の有機酸の重合体の製造方法において、前記有機酸の重合体の製造工程に先立って、前記炭化物材料から前記非解離型の有機酸を回収する工程、を備えることができる。前記回収工程は、前記炭化物材料を前記非解離型の有機酸が溶解可能な有機溶媒と接触させ、該有機溶媒中に前記非解離型の有機酸を回収する工程とすることができ、前記有機溶媒はケトン類とすることができる。
【0020】
前記有機酸生産微生物は有機酸生産酵母とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、有機酸の製造方法及び有機酸の重合体の製造方法に関する。本発明によれば、非解離型の有機酸を含有する有機酸発酵液を炭化物材料に接触させることで、非解離型の有機酸を吸着して発酵液から分離でき、その後非解離型有機酸に親和性のある有機溶媒で非解離型の有機酸を回収できる。したがって、本発明によれば、効率的に非解離型有機酸を発酵液から分離でき、さらには、脱塩工程を回避して熱エネルギーコストも抑制して非解離型有機酸を回収できる。さらに、有機酸発酵中の発酵液の少なくとも一部を炭化物材料に接触させつつ発酵させることで発酵阻害を抑制して炭素源の利用率を向上させることができる。したがって、本発明によれば、炭化物材料による有機酸吸着発酵を行うとき、非解離型の有機酸の吸着、発酵阻害の抑制又は回避及び炭素源の利用率の向上を同時に実現できる。さらに、こうして得られる有機酸は、回収率に優れているとともに、有機酸の重合反応を阻害し又は不純物となる成分が減少又は排除されているため、純度の高い有機酸重合体を容易に得ることができる。
【0022】
以下、本発明の各種実施形態につき適宜図面を参照しながら説明する。図1は、有機酸の製造工程の例を示し、図2は、有機酸の重合体の製造工程の例を示す。
【0023】
(有機酸の製造方法)
本発明の有機酸の製造方法は、有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて前記炭化物材料に前記非解離の有機酸を吸着させる工程、を備えている。
【0024】
本明細書において「有機酸」とは、酸性基を有する有機化合物であって、遊離の酸である非解離型又はその塩を形成可能な解離型の双方を含んでいる。また、本明細書において、「非解離型の有機酸」とは、有機酸における酸性基が非解離の状態をいうものとする。また、解離型の有機酸とは、有機酸における酸性基が解離状態のものをいうものとする。「有機酸」が備える酸性基としては、特に限定しないが、カルボン酸基であることが好ましい。このような「有機酸」としては、乳酸、酪酸、酢酸、ピルビン酸、コハク酸、ギ酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、アジピン酸などが挙げられる。これらの「有機酸」は、D体、L体のほか、DL体であってもよい。本発明の有機酸製造方法において回収しようとする有機酸は、単一の有機酸であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、ここで2種類以上という場合には、異なる有機酸であってもよいし、同一構造であるがD体及びL体の双方を含んでいてもよい。有機酸としては、各種分野における有用性等から乳酸であることが好ましい。
【0025】
本発明の有機酸の製造方法は、炭化物材料による有機酸発酵液中の非解離型の有機酸の吸着工程を備えるものであればよい。非解離型の有機酸は、炭化物材料に選択的に吸着されて発酵液から除去される。非解離型の有機酸は炭化物材料から各種方法により容易に分離される。本発明の有機酸の製造方法においては、有機酸の吸着工程に供される有機酸発酵液に対して吸着工程を実施する。なお、本明細書において「発酵液」とは、有機酸発酵液に由来して、有機酸を含有する液体であればよく、発酵中の発酵液及び発酵終了後において菌体などを分離した発酵上清液など、吸着工程に供するのに適した処理を施したものを包含するものである。本発明においては、有機酸発酵液が準備されていればよく、必ずしも有機酸発酵を実施する工程を備えることを要するものでもないが、以下、有機酸発酵液及び有機酸発酵工程について説明する。
【0026】
(有機酸発酵液)
吸着工程に供される有機酸発酵液は、有機酸生産微生物の有機酸発酵によって準備される。有機酸生産微生物とは、有機酸を生産する微生物であればよく、特に限定されない。好ましくは、特定有機酸の生産に好適な天然の微生物又は特定有機酸の生産に特化して遺伝的に改変された遺伝子組換え微生物である。このような遺伝子組換え微生物の場合を用いた場合、特定有機酸以外の有機酸の生産が抑制される傾向があるため、特定有機酸の吸着及び回収に都合がよい。微生物の種類は特に限定されないで、大腸菌や乳酸菌などの細菌類や酵母、カビなどの真菌類であってもよい。例えば、乳酸を生産する天然の微生物としては、ラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属、ビヒドバクテリウム属などの乳酸菌、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、バチルス属、スクロトリヂウム属、スポロラクトバチルス属などの細菌、リゾプス属などのカビが挙げられる。また、乳酸を生産する遺伝子組換え微生物としては、特に限定しないが、好ましくは、遺伝子組換え乳酸生産酵母である。遺伝子組換え酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ等のサッカロマイセス属を宿主とする遺伝子組換え体、カンジダ・ソノレンシス等のカンジダ属.の遺伝子組換え体、クリュイベロマイセス・ラクチス、クリュイベロミセス・サーモトレランス及びクリュイベロマイセス・マルシアヌス等のクリュイベロミセス属の遺伝子組換え体が挙げられる。なかでも、工業的な発酵生産に都合のよい酵母に高い乳酸生産能を付与した遺伝子組換え酵母を好ましく用いることができる。高い乳酸生産能を有する遺伝子組換え酵母としては、ピルビン酸脱炭酸酵素(PDC)遺伝子(好ましくはPDC1遺伝子)プロモーターの制御下にウシ等の外来性の乳酸脱水酵素(LDH)遺伝子を備える遺伝子組換え酵母が好ましい。これらの遺伝子組換え酵母に、酸性下で高い乳酸生産能を付与することにより、一層効率的な乳酸生産が可能になるからである。
【0027】
このように遺伝子組換えにより乳酸を生産する乳酸生産微生物は、特開2001−204468、特開2003−93060、特開2003−334092、特開2003−259878、特開2003−093060、特開2003−259878、特開2005−137306、特開2006−42719、特開2006−20602、特開2006−288318、特開2006−296377、特表2005−528106、特表2006−525025等において既に開示されている。また、D−乳酸又はL−乳酸を優勢的に産生する遺伝子組換え体である乳酸生産微生物としては、特表2005−528112、再表2004−104202、特開2005−187643、特開2007−074939において既に開示されている。
【0028】
有機酸発酵に用いる培地組成は、特に限定されない。製造しようとする有機酸及び有機酸生産微生物に応じた培地組成を採用することができる。本発明における有機酸発酵においては、通常、各種発酵に用いられるうる炭素源、窒素源、ミネラル類、ビタミン類等から適宜選択して用いることができる。
【0029】
有機酸発酵におけるpHは、特に限定されない。用いる有機酸生産微生物による有機酸発酵が可能な範囲で選択される。例えば、アルカリによる中和を伴う中和発酵では、pH4.0〜8.0程度に設定することができる。また、アルカリによる中和を伴わない非中和発酵では、pH1.0以上4.5以下の範囲で適宜設定することもできる。なお、有機酸発酵におけるpHは、後段で説明するように、吸着工程の実施態様や用いる微生物の耐酸性によっても異なるため、後段にて説明する。
【0030】
有機酸発酵における温度及び通気などその他の条件は、用いる有機酸生産微生物などに応じて適宜選択される。有機酸発酵のための培養方法としては、特に限定しないで、従来公知の培養方法を利用できる。例えば、回分培養、半回分培養、連続培養等のいずれかあるいはこれらを組み合わせて実施することができる。また、酸素供給方式や攪拌方式も、用いる有機酸生産微生物の種類に応じて選択することができる。サッカロマイセス・セレビシエなどの酵母の場合には、通常、振とう培養または通気攪拌培養等の好気条件下、25〜35℃程度とし、12〜80時間程度行うことができる。また、培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
【0031】
(吸着工程)
吸着工程は、非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて炭化物材料に非解離の有機酸を吸着させる工程である。
【0032】
吸着工程で用いる炭化物材料は、炭、活性炭等が挙げられるが、好ましくは活性炭である。活性炭は、炭に比べてより非解離型有機酸の吸着効果及び炭素源利用率の向上効果が高いからである。炭化物材料の形態は、特に問わないで、粒子状、ハニカム状、円柱状、破砕状、粉状、繊維状、シート状等、任意の形態のものを用いることができる。吸着能力の観点からは、平均粒径の小さい粉末状が好ましく、後処理等を考慮すると粒子状であることが好ましい。活性炭の活性化法は特に限定しないで、高温で炭化する物理法のほか、リン酸や塩化亜鉛による化学法のいずれであってもよい。
【0033】
発酵液中の非解離型有機酸は、解離型有機酸よりも炭化物材料に吸着されやすい。非解離型の有機酸が炭化物材料に吸着されると発酵液からは分離される。このような炭化物材料の吸着特性を利用することで、炭化物材料は、より酸性側での有機酸吸着剤、すなわち、非解離型有機酸の吸着剤として利用できる。
【0034】
炭化物材料は非解離型の有機酸の吸着に有利であることから、吸着工程に供され炭化物材料と接触させられる発酵液は、非解離型の有機酸を含んでいることが好ましく、非解離型を優位に(その解離型よりも多く)含んでいることがより好ましい。さらに好ましくは、実質的にほとんどの(好ましくは、90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の)有機酸が非解離状態で存在するpHであることが好ましい。
【0035】
非解離型有機酸を優位に含む発酵液のpHは、製造しようとする有機酸の解離曲線を考慮してpHを設定すればよい。例えば、発酵液に非解離型の有機酸を優位に(その解離型よりも多く)含有させる場合には、当該酸のpKa(酸解離定数)よりも小さい(酸性側の)pHに調整すればよく、非解離型と解離型と同程度とするには、pKaのpH近傍に調整すればよく、解離型の有機酸を優位にするには、pKaよりも大きい(アルカリ側の)pHに調整すればよい。有機酸は一般的には弱酸であることから、典型的には、pH4以下、より好ましくは、pH3.5以下、さらに好ましくはpH3以下、最も好ましくはpH2.5以下とする。例えば、乳酸については、例えば、pHを3.5以下とすることが好ましく、より好ましくは3.0以下であり、さらに2.5以下とすることが好ましい。
【0036】
吸着工程では、発酵液を炭化物材料に接触させることにより、炭化物材料に非解離型の有機酸を吸着させる。発酵液と炭化物材料とを接触させる形態は特に限定しない。発酵液に対して炭化物材料を投入してもよいし、炭化物材料を充填したカラム分離システムに発酵液を供給してもよい。さらには、炭化物材料の膜を利用した膜分離システムに供給してもよい。例えば、発酵液中に炭化物材料を共存させる場合には、発酵液100ml(炭化物材料を含まない体積として)に対して10g以上の炭化物材料を供給することが好ましく、より好ましくは20g以上であり、さらに好ましくは30g以上である。発酵液に接触される炭化物材料の量が多いと、より多くの非解離型有機酸が吸着される傾向がある。また、上限は特に限定しないが、発酵液の流動性等を考慮すると50g以下程度であることが好ましい。
【0037】
吸着工程は、種々の態様で実施できるが、例えば、吸着工程に供する有機酸発酵液の態様によっても異なる態様で実施される。例えば、図1Aに示すように、発酵終了後の発酵液に対して吸着工程を実施することができる。この場合の有機酸発酵液の上記した好ましいpH条件は、吸着工程において有機酸発酵液の適宜pHが調整されることによって実現されていればよい。したがって、有機酸発酵液を得るための発酵工程は、吸着工程におけるpHに制限されることなく発酵に適したpHであればよい。一般に、非解離型の有機酸のほうが、解離型に比べてより発酵阻害効果が大きい傾向がある。したがって、非解離型の有機酸が優位にならないpH、具体的には解離型の有機酸が非解離型の有機酸と同定度あるいは優位になるようなpH、典型的には、有機酸のpKaよりも大きい(アルカリ側の)pHとすることが好ましい。一般に、有機酸は弱酸であるため、例えば、pH4以上、より好ましくはpH4.5以上、さらに好ましくはpH5以上において解離型の有機酸が優位になることが多い。
【0038】
こうした吸着工程の前段の発酵工程は、有機酸の中和のためのアルカリの存在下で行う中和発酵工程として実施できる。中和発酵工程は、発酵中の発酵液をアルカリで適宜中和しつつ実施してもよいし、予めアルカリを加えて発酵してもよいし、これらを組み合わせて実施してもよい。なお、図1Aに示す態様においても、有機酸発酵工程において、非解離型の有機酸を優位に含有するpHでの発酵工程(典型的には非中和発酵工程)を排除するものではない。耐酸性を有する有機酸生産微生物を用いる場合には、非解離型有機酸が優位なpHで発酵工程を実施することができる。
【0039】
また、吸着工程は、図1Bに示すように、発酵中の有機酸発酵液を用いて実施することもできる。すなわち、吸着工程を、非解離型有機酸を含む有機酸発酵液の少なくとも一部を炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程とすることができる。このような吸着工程を実施することで、非解離型の有機酸を発酵中の発酵液から除去するとともに、発酵阻害を抑制して炭素源の消費率を向上させることができる。すなわち、この態様によれば、非中和発酵条件下で発酵液から非解離型有機酸の回収と、炭素源の消費率の向上とが一挙に実現できる。炭素源の消費率の向上は、活性炭などの炭化物材料がグルコースなどの炭素源を吸着して発酵中の炭素源濃度を低く維持できたことも寄与しているものと推論される。また、図1Bに示す態様では、炭化物材料に吸着させた非解離型有機酸を後段にて回収するとき、有機酸の重合に有利な状態(グルコースなどの炭素源などの重合反応阻害成分を同時に含まない)で回収できるため、有機酸の重合体の製造を効率的なものとすることができる。
【0040】
炭化物材料による非解離型有機酸の吸着を有機酸発酵と同時に実現するには、有機酸発酵におけるpHを、吸着工程に供する有機酸発酵液に適したpH、すなわち、非解離型有機酸が優位に存在するpH条件とすることが好ましい。こうすることで、発酵阻害効果の大きい非解離型有機酸を炭化物材料により速やかに発酵液から除去できる。
【0041】
なお、このようなpH条件の吸着(発酵)工程は、有機酸生産微生物が産生する有機酸を特にアルカリで中和をしないで行う非中和発酵工程として実施することができる。非中和発酵では、一般に、有機酸を中和するアルカリを添加しないため、発酵液のpHは有機酸が発酵液中に蓄積されるにつれて低下する。しかしながら、本発明においては、非解離型の有機酸が炭化物材料に吸着されて発酵液から分離される結果、非中和発酵条件下でも、炭化物材料と接触させない場合と比較してpHの低下が抑制される。
【0042】
図1Bに示す態様では、非解離型有機酸による発酵阻害を効果的に抑制するには、発酵中の発酵液全体が均一に炭化物材料に接触されることが好ましい。すなわち、発酵液の一部を炭化物材料を充填してカラムや炭化物材料を担持させるなどした膜に供給して返流させるようなシステムよりもむしろ、発酵槽中に炭化物材料を共存させるような形態で発酵液と炭化物材料とを接触させることが好ましい。この場合の好ましい炭化物材料の供給量は、上記した吸着工程におけるのと同様である。
【0043】
また、吸着工程は、図1Cに示すように、図1Aの態様と図1Bの態様とを組み合わせて実施してもよい。すなわち、発酵中の有機酸発酵液に対して炭化物材料による吸着を実施する有機酸発酵工程を実施後、さらに得られた発酵液に対して炭化物材料による吸着工程を実施してもよい。吸着を伴う発酵工程後に、発酵終了後の吸着工程を実施することで、産生した有機酸を確実に回収できる。吸着工程に供される発酵液は、発酵工程で用いられ非解離型の有機酸を吸着した炭化物材料を含んだものであってもよく、固液分離により炭化物材料を除去した後の発酵液であってもよい。また、吸着工程では、発酵工程よりも低いpH条件下で、非解離型の有機酸を吸着することもできる。
【0044】
有機酸の製造方法は、以上説明した有機酸の吸着工程を実施することで実現される。非解離型の有機酸を吸着させた炭化物材料を、用途によってはそのまま用いることができるし、また、後段で説明するように炭化物材料から有機酸を回収後に利用してもよい。
【0045】
本発明の有機酸の重合体の製造方法によれば、従来に比して簡易に、換言すれば、工程数を低減しかつコストも低減して、非解離型有機酸を有機酸発酵液から分離できる。したがって、従来にない実用的な有機酸の製造方法が提供される。また、本発明の有機酸の製造方法において、非中和発酵条件下で有機酸発酵しつつ非解離型有機酸を炭化物材料で吸着する吸着(発酵)工程を実施することで、簡易に非解離型有機酸を吸着分離しつつ、同時に発酵阻害を抑制又は回避して十分な炭素源の利用率を得ることができる。すなわち、こうした態様によれば、簡易にかつ高収率で非解離型有機酸を得ることができる。さらに、こうした態様によれば、グルコースなどの炭素源が炭化物材料に吸着されるのも抑制されているため、炭化物材料に吸着された非解離型有機酸を有機酸の重合体の重合原料として用いた場合には、重合反応の阻害や副生物の生成を抑制又は回避でき、効率的な重合工程を実施できる。以上説明した有機酸の製造方法は、有機酸重合体原料としての有機酸を製造するのに好ましく用いることができる。
【0046】
(回収工程)
回収工程は、非解離型有機酸を吸着した炭化物材料から有機酸を回収する工程である。発酵液と接触させられた炭化物材料から有機酸を回収するには、まず、非解離型有機酸を吸着した炭化物材料を必要に応じて固液分離手段を利用して発酵液から分離する。その後、炭化物材料に吸着された非解離型の有機酸を解離型として炭化物材料から分離することにより回収することもできるし、炭化物材料に吸着された非解離型の有機酸をそのまま非解離型で溶媒で抽出し回収することもできる。あるいは、有機酸の種類によっては、加熱により回収することも可能である。
【0047】
有機酸を非解離型から解離型として炭化物材料から分離回収するには、非解離型有機酸を吸着した炭化物材料を適当なアルカリを用いてよりアルカリ条件下におき、解離型有機酸を優位させればよい。こうすることで簡易に有機酸を回収できる。この分離回収方法は、解離型有機酸として利用する場合には好ましい。反対に、非解離型有機酸として利用することを意図する場合には、回収工程後に脱塩工程を実施する。脱塩工程を実施するのはコスト負荷が大きいため、非解離型有機酸として用いる場合には後述の溶媒抽出法等を用いるのが好ましい。
【0048】
有機酸を非解離型として炭化物材料から回収するには、非解離型の有機酸に親和性のある有機溶媒で抽出分離することができる。このような溶媒としては、有機酸の種類に応じて適宜決定することができるほか、回収した有機酸の用途の妨げのならない範囲で決定することが好ましい。例えば、非解離型乳酸をポリ乳酸等の重合原料として用いる場合には、乳酸の直接重合、ラクチド(環状エステル)の合成を阻害しないこと等を考慮して、適切な有機溶媒を選択することができる。例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン、アニソール、ケトン類及びイソプロピルエーテルなどのエーテル類から選択される。ケトン類としては、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。なお、有機酸の重合工程を考慮すると、アルコール、有機酸、エステルなどでないことが好ましい場合もある。なかでも、乳酸などの有機酸の溶解性や沸点からメチルエチルケトン(沸点約80℃)、メチルイソブチルケトン(沸点約102℃)などの、ジアルキルアセトンであって、沸点が55℃以上110℃以下程度のケトン類が好ましい。より好ましくは、沸点が80℃以下程度のケトン類が好ましい。なかでも、コストの観点からアセトンを好ましく用いることができる。
【0049】
炭化物材料に対する有機溶媒による有機酸の回収は、同一炭化物材料に対して2回以上繰り返して行うこともできる。2回以上繰り返して溶媒抽出操作を行うことで、高率で有機酸を回収できる。なお、2回目以降の回収操作においては、後述するように、既に回収工程で利用し回収済みの有機溶媒を再利用することもできる。こうすることで、大量の抽出溶媒を用いることなく、効果的に有機酸を炭化物材料から回収することができる。
【0050】
回収工程により、炭化物材料から有機酸を分離した回収後の炭化物材料は、非解離型有機酸の吸着能を有する限り再利用が可能である。好ましくは、本発明の製造方法における吸着工程において再利用する。例えば、活性炭の場合には、複数回、10回程度でも当初の吸着能をおおよそ維持できることがわかっている。再利用することで、非解離型有機酸の回収コストを低減することができる。なお、活性炭の場合には、適宜再活性化を行うことでも再利用率を高めることもできる。
【0051】
非解離型有機酸を含有する有機溶媒を、必要に応じて、当該有機溶媒を蒸発させて乾固させることで、固形分として非解離型の有機酸を得ることができる。得られた有機酸は、必要に応じて、水などの媒体に溶解させることができる。なお、既に説明したように、回収に使用し蒸発させた抽出溶媒を回収することで、再び回収工程における抽出溶媒として利用することができる。抽出溶媒を再利用することで、回収のための溶媒コストを効果的に低減し、有機酸の製造ひいては有機酸の重合体の製造コストは一層低減される。
【0052】
(有機酸の重合体の製造方法)
本発明の有機酸の重合体の製造方法は、以上において説明した本発明の有機酸製造方法における吸着工程と、前記炭化物材料に吸着された非解離型有機酸を原料として重合体を製造する工程と、を備えることができる。本発明の重合体の製造方法によれば、重合原料である非解離型有機酸を効率的に得ることができるため、有機酸重合体の生産コストを効果的に低減して実用的な有機酸重合体の製法が提供される。
【0053】
本発明の有機酸重合体の製造方法における吸着工程は、有機酸製造方法における各種形態の吸着工程を包含し、有機酸製造方法において好ましい吸着工程をそのまま本発明の実施形態においても好ましいものとして利用できる。また、本発明の有機酸製造方法が備えていてもよい有機酸発酵工程や回収工程を備えることができる。
【0054】
(重合工程)
重合工程の原料となる非解離型有機酸は、炭化物材料に吸着された状態であってもよいし、既述した回収工程によって炭化物材料から分離され回収されたものでもよい。重合工程を考慮すると、溶媒抽出法により炭化物材料から分離された非解離型有機酸を用いることが好ましく、より好ましくは、重合工程における重合反応を阻害しない溶媒で分離回収されたものである。このような溶媒としては、既に述べた各種溶媒を利用できる。
【0055】
なお、炭化物材料に吸着された状態の非解離型有機酸を用いるときには、重合反応を阻害する可能性ある成分を適当な溶媒により炭化物材料から洗浄により除去しておいてもよい。
【0056】
非解離型有機酸を原料として有機酸重合体を製造するには、各種方法が知られている。有機酸の種類にもよるが、例えば、乳酸については、加熱脱水重合法(直接重合法)、ラクチドを金属塩の触媒存在下に重合するラクチド法、溶融・固相重合法(特開2000-297143号、S.-I. Moon, C-W. Lee, M. Miyamoto, Y. Kimura: Melt Polycondensation of L-Lactic Acid with Sn(II) Catalysts Activated by Various Proton Acids: A Direct Manufacturing Route to High Molecular Weight Poly(L-lactic acid); J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 38, 1673-1679 (2000)、Moon, S.-I.; Lee, C.-W.; Taniguchi, I.; Miyamoto, M.; Kimura, Y. Melt/solid polycondensation. of l-lactic acid: an alternative route to poly( L. -lactic acid) with high molecular weight. Polymer , 42, 5059-5062 (2001)、S.-I. Moon, I Taniguchi et al.: Synthesis and Properties of High-Molecular-Weight Poly(L-Lactic Acid) by Melt/Solid Polycondensation under Different Reaction Conditions ;High Performance Polymers, 13(2), S189-S196 (2001)等が挙げられる。
【0057】
上記した加熱脱水重合は、低分子量のオリゴマーを得るのに好適であり、原料としては、乳酸にあっては、L−乳酸 、D−乳酸、DL−乳酸及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、L−乳酸又はD−乳酸である。ラクチド法は、ラクチドを開環させて重合させる方法である。ラクチドとしては、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、meso−ラクチド及びこれらの混合物などが挙げられる。ラクチドは、直接重合によって得られるオリゴマーを分解して得ることもできる。ラクチド法においては、金属塩を触媒として用いることができる。重合用触媒は、スズ、亜鉛、アンチモン等の各種金属塩から適宜選択して用いることができる。また、溶融重合法や固相重合法は、加熱脱水重合により得られたオリゴマーをより分子量の大きい高分子量有機酸重合体とすることができる。
【0058】
本発明の重合体の製造方法においては、得ようとする有機酸重合体の分子量や物性等に応じて重合方法を適宜選択することができる。高分子量のポリ乳酸などの有機酸重合体を得るには、直接重合により有機酸オリゴマーを合成し、その後、当該オリゴマーを用いてラクチド法、溶融重合法、固相重合法を実施することが好ましい。
【0059】
なお、本発明の重合体の製造方法において得ようとする重合体は、有機酸をモノマー単位とする重合体であればよく、1種又は2種以上の有機酸の重合体(共重合体)であってもよいし、有機酸以外のモノマー単位を有する共重合体であってもよい。典型的には、L−乳酸又はD−乳酸を原料とするポリL−(またD−)乳酸であり、これらの乳酸のいずれかあるいは双方をモノマー単位として他のモノマー単位を有する共重合体である。他のモノマーとしては、たとえば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸、芳香族多価アルコール、脂肪族多価アルコール、エーテルグリコール等の多価アルコール、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0060】
本発明の有機酸重合体の製造方法によれば、非解離型有機酸が吸着される炭化物材料を得て、発酵液から分離した炭化物材料上のあるいは当該炭化物から回収した非解離型有機酸を直接、重合原料とできるため、重合体の製造工程全体を簡略すること、換言すれば、工程数を低減し、低コストでポリ乳酸等の有機酸重合体を得ることができる。また、本発明によれば、特に、炭化物材料においてグルコースなどの炭素源の吸着が抑制されているため、重合反応の阻害や副産物の生成を抑制して効率的に重合反応を実施でき、光学純度の高い乳酸の製造にも寄与できる。
【0061】
特に、非中和発酵条件下で有機酸発酵しつつ非解離型有機酸を炭化物材料で吸着する吸着(発酵)工程を実施することで、簡易に非解離型有機酸を吸着分離しつつ、発酵阻害を抑制又は回避して十分な炭素源の利用率を得ることができる。すなわち、こうした態様によれば、低コストでしかも炭素源に対して高収率でポリ乳酸を得ることができる。
【0062】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0063】
(乳酸の活性炭への吸着とpHとの関係)
本実施例では、活性炭が乳酸を吸着できるかどうかを確認するために、モデル乳酸水溶液を(乳酸100g/l)を調製し、この100mlに、10gの活性炭を添加した上、水酸化ナトリウムでpHを調整して、乳酸吸着に及ぼすpHの影響を調べた。活性炭を添加したモデル乳酸溶液を30℃で一晩放置して、モデル乳酸溶液中の乳酸濃度を測定し、活性炭に対する吸着率を求めた。なお、乳酸濃度の測定は酵素センサ(王子計測機器社製)を用いた。結果を図3に示す。
【0064】
図3に示すように、乳酸はアルカリ側では活性炭に吸着されず、酸性側において活性炭に吸着されることがわかった。乳酸のpKaが3.86であることを考慮すると、活性炭は、非解離型の乳酸に代表される有機酸の吸着剤として適していることがわかった。したがって、非中和条件下での発酵(非中和発酵)における有機酸の吸着剤として利用できることがわかった。
【実施例2】
【0065】
(乳酸の活性炭への吸着と活性炭濃度との関係)
本実施例では、乳酸の活性炭への吸着と活性炭濃度との関係について確認した。すなわち、乳酸の活性炭への吸着に対する活性炭濃度の影響を調べるために、したがって、実施例1のモデル乳酸水溶液(100g/l)100mlに対して活性炭を、10g、20g、30g、40g及び50gを添加して、実施例1と同様にして吸着試験を行った。結果を図4に示す。
【0066】
図4に示すように、活性炭濃度の増加に伴って乳酸の吸着率も増大した。活性炭の添加量が30g以上であると、80%以上の乳酸が吸着されることがわかった。非中和発酵における非解離型の乳酸の発酵阻害効果は大きいため、非中和発酵において活性炭を吸着剤として用いることで、乳酸による発酵阻害を効果的に抑制できることがわかった。
【実施例3】
【0067】
(活性炭の繰り返し利用についての検討)
本実施例では、乳酸の吸着剤としての活性炭の繰り返し利用性について検討した。すなわち、モデル乳酸水溶液(50g/l)100mlに対して50gの活性炭を添加して実施例1と同様の吸着実験を行った後、アセトンで活性炭を洗浄後、活性炭を200℃で1時間で乾燥滅菌し、乾燥後の活性炭を最後、新規なモデル乳酸溶液に対して用いて吸着実験を行った。50gの活性炭につき、合計10回の吸着実験を行った。また、モデル乳酸溶液に無機塩((NH42SO4 2.0g/l、K2HPO4 1.5g/l、MgSO41.0g/l、いずれも最終濃度)と酵母エキス(最終濃度2g/l)を添加して調製した模擬発酵液についても同様に活性炭の繰り返し利用実験(10回)を行った。結果を、図5に示す。
【0068】
図5Aに示すように、モデル乳酸水溶液に対しては、10回目の吸着実験で約90%の乳酸吸着率を維持していた。10回目の吸着率は、1回目の吸着率の96%であることから、活性炭は、少なくとも10回利用しても吸着能を維持できると考えられた。また、図5Bに示すように、模擬発酵液に対しても、10回目の吸着試験で約90%の乳酸吸着率を維持していた。モデル乳酸水溶液に対する吸着率よりも全体として低いものの、全体としてモデル乳酸水溶液における吸着率とほぼ同等であるとともに、吸着実験の回数に応じて顕著に吸着率が減少する傾向も見られなかった。なお、吸着率がモデル乳酸水溶液に比較してやや低いのは、模擬発酵液中には、タンパク質やペプチドなどの有機酸よりも疎水性の高い物質が多量に存在するためであると考えられる。実際の発酵液においては、こうした発酵原料が微生物によって利用されることを考慮すれば、模擬発酵液における吸着率の低さはほとんど問題にならないと考えられた。
【0069】
以上のことから、活性炭を有機酸の吸着剤として大量に利用したとしても、有機酸の吸着剤としての繰り返し利用性に優れるため、吸着コストの増大を抑制しつつ、有機酸を吸着分離し、有機酸による発酵阻害を抑制できることがわかった。
【実施例4】
【0070】
(アセトンによる乳酸の脱着)
本実施例では、活性炭に吸着させた乳酸のアセトンによる回収について検討した。モデル乳酸水溶液(50g/l)100mlに対して、活性炭を50g添加したものを4種類準備し、これらのモデル乳酸水溶液につき、30℃で6時間吸着実験を行った。吸着後、ろ過により水溶液部分を除去し、分離した活性炭に対して、アセトンを50ml、100ml、150ml及び200mlをそれぞれ添加(活性炭重量とアセトン体積の比として、それぞれ1:1、1:2、1:3及び1:4)して、80rpmで振とうすることによりアセトンへの乳酸回収実験を行った。乳酸回収後のアセトンを減圧下で蒸発し、残ったアセトン水溶液を中の乳酸を測定し、回収率を求めた。なお、対照として、アセトンに代えて水(100ml)を用いた回収実験を行い、乳酸の回収率を同様にして求めた。なお、乳酸は実施例1と同様の方法により測定した。結果を、図6に示す。
【0071】
図6に示すように、アセトン添加量が増加するのに伴い、乳酸の回収率も増加した。すなわち、4種の回収実験において、それぞれ60%、69%、75%及び81%であった。これに対して、対照例では、15%であった。以上の結果から、アセトンは、活性炭に吸着させた乳酸の好ましい回収(抽出)溶媒であることがわかった。
【0072】
また、アセトン添加量100mlとした場合において、回収実験後に、蒸発により回収したアセトンを再度添加して吸着実験を行ったところ、当初の乳酸に対して25%の回収率が得られた。すなわち、最初の回収実験における回収率(69%)と合計すると、総回収率は94%になることがわかった。すなわち、アセトンを大量に用いなくても、複数回の乳酸回収(抽出)とすることで、高率でアセトンを回収できることがわかった。その際、乳酸を抽出後に回収したアセトンを有効に利用できることがわかった。
【0073】
以上のことから、アセトン(沸点約56℃)を用いることにより、活性炭から効果的に有機酸を回収できるとともに、揮発性が良好であることから、アセトンから有機酸を分離するにも、さらには溶媒の再利用にも好都合であることがわかった。
【実施例5】
【0074】
(非中和発酵と活性炭濃度との関係)
本実施例では、フラスコレベルでの非中和発酵に対する活性炭濃度の影響を調べた。すなわち、発酵液に対する活性炭濃度を種々異ならせて、非中和発酵を実施し、発酵液中の乳酸濃度、グルコース濃度及び総乳酸生産量を求めた。
【0075】
非中和発酵は以下の条件で行った。乳酸生産微生物としては、L−乳酸発酵菌株であるSaccharomyces cerevisiae OC2-2T T165R株(Saitoh Sら、Appl. Environ. Microbiol., 2005, 71: 2789-2792)を用いた。前培養培地は、酵母エキス10g/l、ポリペプトン20g/l及びグルコース20g/lとして、上記株を植菌して、30℃で24時間培養した後、遠心分離により集菌した。この菌液を、OD値が5となるよう発酵培地(グルコース100g/l、酵母エキス 2g/l、(NH42SO4 2.0g/l、K2HPO4 1.5g/l、MgSO41.0g/l、いずれも最終濃度)に接種した。この発酵液につき、発酵液100mlに対して活性炭0g、10g、20g、30g、40g及び50gをそれぞれ添加して、発酵を行った。発酵は、30℃で80rpmで攪拌しつつ行った。
【0076】
発酵液中の乳酸濃度は、発酵開始後所定時間経過したとき、発酵液の一部を採取して実施例1と同様の方法により測定した。また、発酵液中のグルコース濃度は、同様にして発酵液を採取して、酵素センサ(王子計測機器社製)によりグルコース濃度を測定した。さらに、総乳酸生産量は、発酵終了後に、発酵液にアルカリを加えてアルカリ性として、活性炭から乳酸を分離させた上で、発酵液中の乳酸濃度を実施例1と同様の方法により測定した。これらの結果を図7A、図7B及び図7Cにそれぞれ示す。
【0077】
図7A〜図7Cに示すように、活性炭未添加の場合には、発酵液における乳酸濃度は最も高いが(図7A)、発酵開始から70時間経過後においてグルコースが20g/lの濃度で残存し(図7B)、総乳酸生産量は、最も低かった(図7C)。これに対して、発酵液に活性炭を添加した場合、添加量の増加に応じて、発酵液中の乳酸濃度は低く(図7A)、グルコース濃度はより早く低下し(図7B)、総乳酸生産量は増大した(図7C)。これらの結果は、活性炭の添加により発酵を阻害する乳酸が活性炭に吸着されて発酵液から除外されたためであると考えられる。特に、本実施例では非中和発酵であり、乳酸は非解離型となっているため発酵阻害効果が大きいと考えられるが、こうした乳酸が発酵液から除去されることにより、発酵が促進されたものと考えられた。
【0078】
なお、本実施例において、発酵終了後の発酵液のpHを測定したところ、活性炭を発酵液100mlに対して50g添加した系で3.3〜3.5程度であり、活性炭を添加しない場合の同pH(2.2〜2.5)よりも高かった。これは、非解離型乳酸が活性炭に吸着され発酵系外に除去されたためであると考えられた。
【0079】
以上のことから、活性炭を発酵液に添加して非中和発酵を行うことにより、コントロール発酵(活性炭量0)に比べて、生産性(最大乳酸濃度/それまでに要した発酵時間))は2倍以上、回収率は1.5倍程度となり、従来の非中和発酵の問題点である発酵阻害による低い生産性と収率を解決できることがわかった。なお、中和発酵(グルコース100g/l、62時間、60g/l)と比べると収率はやや劣るもののより高い生産性を得ることができる。
【実施例6】
【0080】
(活性炭によるグルコースの吸着)
本実施例では、モデルグルコース水溶液(100g/l)を用いて、活性炭によるグルコースの吸着について検討した。すなわち、モデルグルコース水溶液100mlに対して活性炭10g、20g、30g、40g及び50gを添加して、30℃で一晩放置して吸着実験を行い、水溶液中のグルコース濃度を測定することにより、吸着率を求めた。グルコース濃度は、実施例5と同様の方法で測定した。結果を図8に示す。
【0081】
図8に示すように、活性炭はグルコースを吸着することが確認された。活性炭の添加量が多いほど、グルコースの吸着率が高く、活性炭を50g添加した場合には、グルコースの吸着率は80%を超えた。以上の結果から、グルコースの活性炭への吸着は活性炭量に応じて増大することがわかった。また、実施例5において、活性炭を50g添加した場合、100g/lのグルコースから50g/lの乳酸が生産されていることから、活性炭に吸着されたグルコースはほぼ酵母に消費されたことがわかる。以上の本実施例の結果及び実施例5の結果から、活性炭はグルコースを吸着するが、それ自体発酵を阻害するものではなく、グルコースによる発酵阻害を抑制してグルコースの消費を促進するものと考えられた。
【実施例7】
【0082】
(グルコース残存の確認)
本実施例では、ジャーレベルでの非中和発酵後の発酵液中の活性炭にグルコースがどの程度吸着(残存)しているかを確認した。すなわち、発酵温度を32℃、通気速度0.4l/分で攪拌なし、とし、発酵液500mlに対して活性炭250gを添加してジャーレベルで発酵した以外は、実施例5において発酵液100mlに対して活性炭50gを添加した場合と同様に発酵を行った。その後、発酵液(活性炭を含まない)中に残存するグルコース濃度を酵素センサ(王子計測機器製)により求めた。また、発酵液から分離した活性炭に対してアセトン500mlを添加してグルコースをアセトンに抽出しアセトンを減圧除去後に得られた水溶液のグルコースを酵素センサ(同上)により求めた。結果を図9に示す。
【0083】
図9に示すように、発酵液におけるグルコース量は、対発酵液量換算で約0.1g/lであったのに対し、活性炭におけるグルコース量は、同換算で約0.2g/lであった。以上のことから、活性炭に吸着される残存グルコース量は、十分に少なく、グルコースは活性炭に吸着されるものの、アセトンによる活性炭からの乳酸抽出液において、有機酸重合を阻害することのない程度の量であることがわかった。以上のことから、活性炭に吸着させた非解離型有機酸をアセトン等の有機溶媒で抽出した液は、そのまま有機酸の重合に利用できることがわかった。
【0084】
また、発酵液及び活性炭に残存するグルコース量が極めて少ないことから、非中和発酵においてもグルコースがほぼ完全に利用されることがわかった。これは、非中和発酵において発酵液中に存在する非解離型の乳酸などの有機酸は、グルコースよりも若干疎水性が高く、活性炭に吸着されたグルコースが非解離型有機酸により置換されたとものと考えられた。また、発酵によりグルコースが消費された結果、発酵液と活性炭との間の分配平衡により一旦活性炭に吸着されたグルコースが発酵液に溶出したものとも考えられた。
【実施例8】
【0085】
(活性炭からアセトンにより回収した非解離型乳酸のオリゴマー化)
本実施例では、実施例7と同様の条件でジャーレベルで非中和発酵を行い、発酵液から分離した活性炭約250gに対して、アセトン500mlを添加して、乳酸を分離回収し、さらにアセトンを減圧下で蒸発させて、乾固させた非解離型乳酸に水を加えて溶解させて、14%〜15%程度の乳酸水溶液を得た。この乳酸水溶液中の乳酸の光学純度を測定したところ、99.5%であった。
【0086】
この乳酸水溶液に100hPaの減圧下、100℃、2時間加熱し、次いで、圧力を13hPaに調整して、130℃で2時間、150℃で2時間及び160℃で2時間で加熱して、オリゴマー化反応を行った。反応後、反応液の温度を室温まで冷却して反応液を固化させた。得られた固体20mgに、IN NaOH2mlを添加し、100℃で30分間加熱し、常温に冷却後、蒸留水6mlと0.5MH2SO42mlを添加して10秒間ほど混合し、光学純度測定用の試料とした。
【0087】
この試料を、HPLC(カラム:三菱化学、MCIゲル、CRS10W 直径4.6mm×長さ50mm、キャリアー:2mMCuSO4、流速:1ml/分、波長:254nm、温度:25℃)を用いて分析して、L体とD体のピーク面積を測定して、以下の式(1)によって乳酸オリゴマーの光学純度を測定した。なお、式(1)において、L体及びD体は、それぞれのピーク面積を表す。
【0088】
光学純度(%)={(L体−D体)/(L体+D体)}×100・・・式(1)
【0089】
本実施例で得られた乳酸オリゴマーの光学純度は、95%以上であることがわかった。以上のことから、非中和発酵下、乳酸を活性炭により吸着しつつ発酵して得られる活性炭に吸着された非解離型の乳酸などの有機酸を重合原料としても、高い光学活性の乳酸重合体が得られることがわかった。特に、活性炭に吸着された非解離型有機酸を有機溶媒で抽出回収した液をそのまま、重合工程に供してもグルコースなどの発酵残留成分の影響もないことがわかった。
【実施例9】
【0090】
(ジャーレベル発酵における活性炭の繰り返し利用による乳酸吸着能及び乳酸生産量の確認)
本実施例では、実施例7と同様にしてジャーレベル発酵実験を行った後、分離した活性炭250gに対してアセトン500mlを添加して、乳酸を抽出回収後、さらに500mlのアセトンを活性炭に加えて再度乳酸を抽出回収した。アセトンによる乳酸回収後の活性炭を200℃で1時間、乾燥滅菌して、次の新たなジャーレベル発酵実験に用いた。このようにして活性炭250gにつき、合計5回のジャーレベル発酵実験を行った。ただし、発酵開始時のグルコース濃度は、85〜100g/lの範囲であった。
【0091】
各発酵実験につき、乳酸の抽出回収に使用したアセトン(合計1000ml)を減圧下で蒸発させ、水溶液として得られた乳酸の量を酵素センサ(王子計測機器社製)により求めた。また、発酵液中の乳酸量を酵素センサ(同上)により求めた。さらに、活性炭に吸着されたグルコース量及び発酵液中のグルコース量を、アセトンで回収した上酵素センサ(同上)により求めた。なお、5回目の発酵実験においては、発酵後の発酵液(活性炭を含む)を固体のNaOHを添加してアルカリ性として、生産した総乳酸量を酵素センサ(同上)によって求めた。
【0092】
対照として、初期グルコース濃度を120g/lとし、活性炭を含まない以外は、実施例7と同様にして非中和で乳酸発酵を行い、発酵終了後の発酵液中の乳酸濃度を酵素センサ(同上)によって求めた。結果を表1及び図10に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1並びに図10A及び図10Bに示すように、全ての発酵実験において48時間以内にグルコースはほぼ完全に消費されていたとともに、活性炭に吸着して残存しているグルコースは、1Lの発酵液あたり0.2g前後であることがわかった。また、全ての発酵実験において、発酵液中の乳酸濃度は10g/l以下に維持されていた。活性炭を4回繰り返して使用しても発酵効率は低下せず、活性炭に吸着された乳酸量と発酵液中の乳酸量の比率がほぼ同じであったことから、活性炭を効率的に繰り返し利用できることがわかった。
【0095】
表1に示す5回目の発酵実験における総乳酸生産量からすると、グルコース85g/lから60g/lの乳酸を生産できたことがわかった。この生産量は、対照として実施した非中和発酵(グルコース初期濃度120g/l)における総乳酸生産量15g/lと比較して約4倍であり、中和発酵における収率とほぼ同等であった。
【0096】
以上の実施例1〜9によれば、乳酸などの有機酸を活性炭などの炭化物材料することにより、非解離型有機酸を効率的に回収するという従来の有機酸の製造及び有機酸重合体の製造における課題を解決することができる。また、特に、有機酸を炭化物材料で吸着しつつ非中和発酵を行うことにより、従来の非中和発酵の課題であった非解離型の有機酸による発酵阻害、グルコースなどの炭素源の低い消費率及びグルコース等の共存に起因する乳酸抽出液の直接重合の困難性を一挙に解決できる。また、こうしたプロセスによれば、非解離型有機酸の得るまでの工程や有機酸重合にいたるまでの工程数及びエネルギーコストが低減される。さらに、こうしたプロセスによれば、活性炭などの炭化物材料及びアセトンなどの抽出溶媒の再利用も可能である。以上のことから、本発明は、の有機酸の製造方法及び有機酸の重合体の製造方法は、より実用的な手段を提供するとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1A】有機酸の製造工程の一例を示す図である。
【図1B】有機酸の製造工程の他の一例を示す図である。
【図1C】有機酸の製造工程の他の一例を示す図である。
【図2】有機酸の重合体の製造工程の例を示す図である。
【図3】乳酸の活性炭への吸着に及ぼすpHの影響を示すグラフ図である。
【図4】乳酸の活性炭への吸着に及ぼす活性炭濃度の影響を示すグラフ図である。
【図5A】活性炭の繰り返し利用可能性(モデル乳酸溶液)についての結果を示すグラフ図である。各回における3本のバーは、左から当初乳酸濃度、最終濃度及び回収率を示す。
【図5B】活性炭の繰り返し利用可能性(模擬発酵液)についての結果を示すグラフ図である。各回における3本のバーは、左から当初乳酸濃度、最終濃度及び回収率を示す。
【図6】乳酸の抽出回収率に及ぼすアセトン量の影響を示すグラフ図である。
【図7A】非中和発酵に及ぼす活性炭濃度の影響を示す図であり、発酵中の乳酸濃度を示すグラフ図である。
【図7B】非中和発酵に及ぼす活性炭濃度の影響を示す図であり、発酵中のグルコース濃度を示すグラフ図である。
【図7C】非中和発酵に及ぼす活性炭濃度の影響を示す図であり、活性炭濃度と総乳酸生産量との関係を示すグラフ図である。
【図8】グルコース吸着に対する活性炭濃度の影響を示すグラフ図である。
【図9】非中和発酵におけるグルコース残存量を示すグラフ図である。
【図10A】非中和発酵における活性炭の再利用性を確認するための発酵実験結果を示す図であり、発酵液中の乳酸濃度を示すグラフ図である。
【図10B】非中和発酵における活性炭の再利用性を確認するための発酵実験結果を示す図であり、発酵液中のグルコース濃度を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸の製造方法であって、
有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて前記炭化物材料に前記非解離型の有機酸を吸着させる工程、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記有機酸は乳酸である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記吸着工程は、前記有機酸発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記吸着工程は、前記非解離型の有機酸をその解離型よりも優位に含有する発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記吸着工程は、非中和発酵工程を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記炭化物材料は活性炭である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記炭化物材料は、前記発酵液100mlに対して30g以上50g以下添加されている、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記炭化物材料から前記非解離型の有機酸を回収する工程、
を備える、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記回収工程は、前記炭化物材料を前記非解離型の有機酸が溶解可能な有機溶媒と接触させ、該有機溶媒中に前記非解離型の有機酸を回収する工程である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記有機溶媒はケトン類である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機酸生産微生物は有機酸生産酵母である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
有機酸の重合体の製造方法であって、
有機酸生産微生物による有機酸発酵液であって非解離型の有機酸を含む有機酸発酵液を炭化物材料に接触させて前記炭化物材料に前記非解離型の有機酸を吸着させる工程と、
前記炭化物材料に吸着された前記非解離型の有機酸を原料として有機酸の重合体を製造する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項13】
前記有機酸は乳酸である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記吸着工程は、前記有機酸発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含む、請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記吸着工程は、前記非解離型の有機酸を解離型の前記有機酸よりも優勢に含有する発酵液の少なくとも一部を前記炭化物材料に接触させつつ発酵させる工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記吸着工程は、非中和発酵工程を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記炭化物材料は活性炭である、請求項12〜16のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
前記炭化物材料は、前記発酵液100mlに対して30g以上50g以下添加されている、請求項12〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
前記有機酸重合体の製造工程に先立って、
前記非解離型の有機酸を吸着させた前記炭化物材料から前記非解離型の有機酸を回収する工程、
を備える、請求項12〜18のいずれかに記載の製造方法。
【請求項20】
前記回収工程は、前記炭化物材料を前記非解離型有機酸が溶解可能な有機溶媒と接触させ、該有機溶媒中に前記非解離型の有機酸を回収する工程である、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記有機溶媒はケトン類である、請求項20に記載の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2010−25(P2010−25A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160810(P2008−160810)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】