説明

有機金属錯体、発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置

【課題】緑色〜青色の波長域に発光領域を示す信頼性が高い新規な有機金属錯体を提供する。該有機金属錯体を用いた発光素子、該発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供する。
【解決手段】一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体を提供する。一般式(G1)で表される有機金属錯体は、緑色〜青色の波長域に発光領域を示す信頼性が高い新規な有機金属錯体である。さらに、該有機金属錯体を含む発光素子、該発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機金属錯体に関する。特に、三重項励起状態にあるエネルギーを発光に用いるエネルギーに変換できる有機金属錯体に関する。また、該有機金属錯体を用いた発光素子、発光装置、電子機器、及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光性の有機化合物や無機化合物を発光材料として用いた発光素子の開発が盛んである。特に、EL(Electro Luminescence)素子と呼ばれる発光素子の構成は、電極間に発光材料を含む発光層を設けただけの単純な構造であり、薄型軽量化できる・入力信号に高速に応答できる・直流低電圧駆動が可能であるなどの特性から、次世代のフラットパネルディスプレイ素子として注目されている。また、このような発光素子を用いたディスプレイは、コントラストや画質に優れ、視野角が広いという特徴も有している。さらに、これらの発光素子は面状光源であるため、液晶ディスプレイのバックライトや照明等の光源としての応用も考えられている。
【0003】
発光物質が発光性の有機化合物である場合、発光素子の発光機構は、キャリア注入型である。すなわち、電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、電極から注入された電子およびホールが再結合して発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。そして、励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)がある。また、発光素子におけるその統計的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0004】
発光性の有機化合物は通常、基底状態が一重項状態である。したがって、一重項励起状態(S)からの発光は、同じ多重度間の電子遷移であるため蛍光と呼ばれる。一方、三重項励起状態(T)からの発光は、異なる多重度間の電子遷移であるため燐光と呼ばれる。ここで、蛍光を発する化合物(以下、蛍光性化合物と称す)は室温において、通常、燐光は観測されず蛍光のみが観測される。したがって、蛍光性化合物を用いた発光素子における内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、S:T=1:3であることを根拠に25%とされている。
【0005】
一方、燐光性化合物を用いれば、内部量子効率は100%にまで理論上は可能となる。つまり、蛍光性化合物に比べて4倍の発光効率が可能となる。このような理由から、高効率な発光素子を実現するために、燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。
【0006】
特に、燐光性化合物としては、その燐光量子収率の高さゆえに、イリジウム等を中心金属とする有機金属錯体が注目されており、緑色〜青色を示す代表的な燐光材料として、イリジウム(Ir)を中心金属とする金属錯体(以下、「Ir錯体」という)がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1では、トリアゾール誘導体を配位子とするIr錯体が開示されている。
【0007】
また、トリアゾール誘電体を配位子とするIr錯体として、3位にプロピル基を有する燐光材料が開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−137872号公報
【特許文献2】特開2008−069221号公報
【特許文献3】国際公開第2008−035664号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「Chemistry of Materials(2006)、 18(21)、p.5119−5129」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至特許文献3、非特許文献1において報告されているように、緑色や青色を示す燐光材料の開発も進んできてはいるものの、発光効率、信頼性、発光特性、合成収率、またはコストといった面で改善の余地が残されており、より優れた燐光材料の開発が望まれている。
【0011】
また、非特許文献1に報告されている材料においては、青色の発光を示す燐光材料であるが、素子の信頼性に問題がある。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明の一態様は、緑色〜青色の波長域に燐光を発光することのできる新規物質を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、緑色〜青色の波長域に燐光発光を示し、かつ高い発光効率を示す新規物質を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、緑色〜青色の波長域に燐光発光を示し、かつ信頼性が高い新規物質を提供することを課題とする。
【0013】
また、そのような新規物質を用いることで、緑色〜青色の波長域の発光を示す発光素子を提供することを課題とする。また、該発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、1H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とする、第9族元素、または第10族元素を中心金属とする有機金属錯体である。具体的な、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(G1)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0017】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表される有機金属錯体である。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(G2)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0020】
ここで、Arの具体例としては、フェニレン基、単数または複数のアルキル基で置換されたフェニレン基、単数または複数のアルコキシ基で置換されたフェニレン基、単数または複数のアルキルチオ基で置換されたフェニレン基、単数または複数のハロアルキル基で置換されたフェニレン基、単数または複数のハロゲン基で置換されたフェニレン基、単数または複数のフェニル基で置換されたフェニレン基、ビフェニル−ジイル基、ナフタレン−ジイル基、フルオレン−ジイル基、9,9−ジアルキルフルオレン−ジイル基、9,9−ジアリールフルオレン−ジイル基が挙げられる。
【0021】
また、Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。なお、Rは直鎖が2以下となるアルキル基、つまりメチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。直鎖が2以下となるアルキル基は錯体の立体障害が緩和され発光素子の信頼性を向上できることを、本発明者等は見出した。
【0022】
また、Rが炭素数1〜3のアルキル基である有機金属錯体は、Rが水素である有機金属錯体に比較して、合成の収率が飛躍的に向上するため、好ましい。
【0023】
また、R〜Rにおける炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。また、R〜Rにおける置換フェニル基の具体例としては、単数または複数のアルキル基で置換されたフェニル基、単数または複数のアルコキシ基で置換されたフェニル基、単数または複数のアルキルチオ基で置換されたフェニル基、単数または複数のハロアルキル基で置換されたフェニル基、単数または複数のハロゲン基で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0024】
また、R以外の少なくとも一つに置換基を有することで、中心金属MがRまたはRにオルトメタル化した有機金属錯体の生成を抑制することができ、合成の収率が飛躍的に向上するため、好ましい。
【0025】
また、第9族元素としてはイリジウムが好ましく、第10族元素としては白金が好ましい。これは、より効率よく燐光発光させるためには、重原子効果の観点から、有機金属錯体の中心金属として重い金属の方が好ましいためである。
【0026】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0027】
【化3】

【0028】
一般式(G3)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0029】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
【0030】
【化4】

【0031】
一般式(G4)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0032】
ここで、R及びR〜Rの具体例としては、一般式(G1)及び(G2)と同様のものを用いることができる。
【0033】
また、R〜R10の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、フルオロ基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロ基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピル基などが挙げられる。
【0034】
上述の一般式(G3)で表される構造を含む有機金属錯体において、R〜Rが水素である場合、R〜Rに置換基を有する場合に比べ、原料のコスト、合成の収率、合成の容易さにおいて有利であり好ましい。例えば、RとRの双方に置換基を有するものに比べ、Rのみに置換基を有する方が、収率が大きく向上する。しかも、Rにさえ置換基を有していれば、R側で中心金属がオルトメタル化することが無いことを、本発明者らは見出した。すなわち、本発明の一態様は、一般式(G5)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0035】
本発明の一態様は、一般式(G5)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0036】
【化5】

【0037】
一般式(G5)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0038】
本発明の一態様は、一般式(G6)で表される有機金属錯体である。
【0039】
【化6】

【0040】
一般式(G6)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0041】
また、本発明の一態様は、一対の電極間に上記の有機金属錯体を有する発光素子である。特に、上記の有機金属錯体を発光層に含むことが好ましい。
【0042】
上記発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置も本発明の範疇に含めるものとする。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、光源を含む。また、パネルにコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0043】
本発明の一態様は、緑色〜青色の波長域に発光領域を示し、高い発光効率を有する新規な有機金属錯体を提供することができる。
【0044】
また、本発明の一態様は、緑色〜青色の波長域に発光領域を示し、信頼性が高い新規な有機金属錯体を提供することができる。
【0045】
また、本発明の一態様は、上記有機金属錯体を用いた発光素子、該発光素子を用いた発光装置、電子機器、及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一態様の発光素子について説明する図。
【図2】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図3】パッシブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図4】アクティブマトリクス型の発光装置を示す図。
【図5】電子機器について説明する図。
【図6】照明装置について説明する図。
【図7】構造式(100)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図8】構造式(100)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図9】構造式(102)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図10】構造式(102)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図11】構造式(103)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図12】構造式(103)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図13】構造式(101)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図14】構造式(101)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図15】構造式(112)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図16】構造式(112)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図17】構造式(128)に示す有機金属錯体のH NMRチャート。
【図18】構造式(128)に示す有機金属錯体のジクロロメタン溶液における紫外・可視吸収スペクトル及び発光スペクトル。
【図19】実施例の発光素子について説明する図。
【図20】本発明の一態様である発光素子1の電流密度−輝度特性。
【図21】本発明の一態様である発光素子1の電圧−輝度特性。
【図22】本発明の一態様である発光素子1の輝度−電流効率特性。
【図23】本発明の一態様である発光素子1の発光スペクトル。
【図24】本発明の一態様である発光素子2の電流密度−輝度特性。
【図25】本発明の一態様である発光素子2の電圧−輝度特性。
【図26】本発明の一態様である発光素子2の輝度−電流効率特性。
【図27】本発明の一態様である発光素子2の発光スペクトル。
【図28】本発明の一態様である発光素子3の電流密度−輝度特性。
【図29】本発明の一態様である発光素子3の電圧−輝度特性。
【図30】本発明の一態様である発光素子3の輝度−電流効率特性。
【図31】本発明の一態様である発光素子3の発光スペクトル。
【図32】本発明の一態様である発光素子1乃至発光素子3の時間−規格化輝度特性。
【図33】本発明の一態様である発光素子1乃至発光素子3の時間−電圧特性。
【図34】本発明の一態様である発光素子4の電流密度−輝度特性。
【図35】本発明の一態様である発光素子4の電圧−輝度特性。
【図36】本発明の一態様である発光素子4の輝度−電流効率特性。
【図37】本発明の一態様である発光素子4の発光スペクトル。
【図38】本発明との比較用である発光素子5の電流密度−輝度特性。
【図39】本発明との比較用である発光素子5の電圧−輝度特性。
【図40】本発明との比較用である発光素子5の輝度−電流効率特性。
【図41】本発明との比較用である発光素子5の発光スペクトル。
【図42】本発明の一態様である発光素子4と比較用発光素子5の時間−規格化輝度特性。
【図43】本発明の一態様である発光素子4と比較用発光素子5の時間−電圧特性。
【図44】本発明の一態様である発光素子6の電流密度−輝度特性。
【図45】本発明の一態様である発光素子6の電圧−輝度特性。
【図46】本発明の一態様である発光素子6の輝度−電流効率特性。
【図47】本発明の一態様である発光素子6の発光スペクトル。
【図48】本発明の一態様である発光素子7の電流密度−輝度特性。
【図49】本発明の一態様である発光素子7の電圧−輝度特性。
【図50】本発明の一態様である発光素子7の輝度−電流効率特性。
【図51】本発明の一態様である発光素子7の発光スペクトル。
【図52】本発明の一態様である発光素子8の電流密度−輝度特性。
【図53】本発明の一態様である発光素子8の電圧−輝度特性。
【図54】本発明の一態様である発光素子8の輝度−電流効率特性。
【図55】本発明の一態様である発光素子8の発光スペクトル。
【図56】本発明の一態様である発光素子6乃至発光素子8の時間−規格化輝度特性。
【図57】本発明の一態様である発光素子6乃至発光素子8の時間−電圧特性。
【図58】本発明の一態様である発光素子9の電流密度−輝度特性。
【図59】本発明の一態様である発光素子9の電圧−輝度特性。
【図60】本発明の一態様である発光素子9の輝度−電流効率特性。
【図61】本発明の一態様である発光素子9の発光スペクトル。
【図62】本発明の一態様である発光素子9の時間−規格化輝度特性。
【図63】本発明の一態様である発光素子9の時間−電圧特性。
【図64】本発明の一態様である発光素子10の電流密度−輝度特性。
【図65】本発明の一態様である発光素子10の電圧−輝度特性。
【図66】本発明の一態様である発光素子10の輝度−電流効率特性。
【図67】本発明の一態様である発光素子10の発光スペクトル。
【図68】本発明の一態様である発光素子11の電流密度−輝度特性。
【図69】本発明の一態様である発光素子11の電圧−輝度特性。
【図70】本発明の一態様である発光素子11の輝度−電流効率特性。
【図71】本発明の一態様である発光素子11の発光スペクトル。
【図72】本発明の一態様である発光素子11の時間−規格化輝度特性。
【図73】本発明の一態様である発光素子11の時間−電圧特性。
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0048】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機金属錯体について説明する。
【0049】
本発明の一態様は、1H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とする、第9族元素、または第10族元素を中心金属とする有機金属錯体である。具体的な、本発明の一態様は、一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0050】
【化7】

【0051】
一般式(G1)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0052】
本発明の一態様は、一般式(G2)で表される有機金属錯体である。
【0053】
【化8】

【0054】
一般式(G2)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0055】
本発明の一態様は、一般式(G3)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0056】
【化9】

【0057】
一般式(G3)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0058】
本発明の一態様は、一般式(G4)で表される有機金属錯体である。
【0059】
【化10】

【0060】
一般式(G4)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表しR、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0061】
本発明の一態様は、一般式(G5)で表される構造を含む有機金属錯体である。
【0062】
【化11】

【0063】
一般式(G5)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0064】
本発明の一態様は、一般式(G6)で表される有機金属錯体である。
【0065】
【化12】

【0066】
一般式(G6)中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。
【0067】
≪一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体の合成方法≫
下記一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体の合成方法の一例について説明する。
【0068】
【化13】

【0069】
一般式(G1)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。
【0070】
<ステップ1;1H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成法>
まず、下記一般式(G0)で表される1H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成法の一例について説明する。
【0071】
【化14】

【0072】
一般式(G0)中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。
【0073】
下記スキーム(a)に示すように、アシルアミジン化合物(A1)と、ヒドラジン化合物(A2)とを反応させることにより、1H−1,2,4−トリアゾール誘導体を得ることができる。なお、式中Zは閉環反応によって脱離する基(脱離基)を表し、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、シアノ基などが挙げられる。
【0074】
【化15】

【0075】
スキーム(a)において、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。
【0076】
ただし、1H−1,2,4−トリアゾール誘導体の合成法は、スキーム(a)のみに限定されるものではない。たとえば、1,3,4−オキサジアゾール誘導体とアリールアミンを加熱する方法もある。
【0077】
以上のように、一般式(G0)で表される1H−1,2,4−トリアゾール誘導体は、ごく簡便な合成スキームにより合成することができる。
【0078】
なお、上述の化合物(A1)、(A2)は、様々な種類が市販されているか、または合成可能である。たとえばアシルアミジン化合物(A1)は、塩化アロイルとアルキルイミノエーテルを反応させることにより合成することができ、このときの脱離基Zはアルコキシル基である。このように、一般式(G0)で表される1H−1,2,4−トリアゾール誘導体は数多くの種類を合成することができる。したがって、一般式(G1)で表される本発明の一態様の有機金属錯体は、その配位子のバリエーションが豊富であるという特徴を有する。そして、このように配位子のバリエーションが豊富な有機金属錯体を発光素子の作製の際に用いることにより、発光素子に求められる素子特性の微調整を容易に行うことができる。
【0079】
<ステップ2;1H−1,2,4−トリアゾール誘導体を配位子とするオルトメタル錯体の合成法>
下記合成スキーム(b)に示すように、ステップ1で得られる1H−1,2,4−トリアゾール誘導体(G0)と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物(塩化ロジウム水和物、塩化パラジウム、塩化イリジウム水和物、ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム、テトラクロロ白金酸カリウム等)、第9族または第10族の有機金属錯体化合物(アセチルアセトナト錯体、ジエチルスルフィド錯体等)とを混合した後、加熱することにより、一般式(G1)で表される構造を有する有機金属錯体を得ることができる。
【0080】
加熱手段としては特に限定はないが、オイルバス、サンドバス、又はアルミブロックを加熱手段として用いてもよい。また、マイクロ波を加熱手段として用いることも可能である。また、この加熱プロセスは、ステップ1で得られる1H−1,2,4−トリアゾール誘導体(G0)と、ハロゲンを含む第9族または第10族の金属化合物、第9族または第10族の有機金属錯体化合物とをアルコール系溶媒(グリセロール、エチレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール等)に溶解した後に行ってもよい。
【0081】
【化16】

【0082】
スキーム(b)において、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素を表す。
【0083】
以上、合成方法の一例について説明したが、開示する本発明の一態様である有機金属錯体は、他のどのような合成方法によって合成されても良い。
【0084】
下記構造式(100)〜(131)に、本発明の一態様の有機金属錯体の具体的な構造式を列挙する。ただし、本発明はこれらに限定されることはない。
【0085】
【化17】

【0086】
【化18】

【0087】
【化19】

【0088】
【化20】

【0089】
【化21】

【0090】
なお、上記構造式(100)〜(131)で表される有機金属錯体には、配位子の種類によっては立体異性体が存在しうるが、本発明の一態様の有機金属錯体にはこれらの異性体も全て含まれる。
【0091】
上述した本発明の一態様である有機金属錯体は、信頼性が優れており、緑色〜青色に発光領域を示すため、発光材料や発光素子の発光物質として利用できる。
【0092】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様として、実施の形態1で説明した有機金属錯体を発光層に用いた発光素子について図1(A)を用いて説明する。
【0093】
図1(A)は、第1の電極101と第2の電極103との間にEL層102を有する発光素子を示した図である。EL層102は、発光層113を含む。発光層113は、実施の形態1で説明した本発明の一態様の有機金属錯体を含む。
【0094】
このような発光素子に対して、電圧を印加することにより、第1の電極101側から注入された正孔と、第2の電極103側から注入された電子とが、発光層113において、再結合し、有機金属錯体を励起状態にする。そして、励起状態の有機金属錯体が基底状態に戻る際に発光する。このように、本発明の一態様である有機金属錯体は、発光素子における発光物質として機能する。なお、本実施の形態に示す発光素子において、第1の電極101は陽極として機能し、第2の電極103は陰極として機能する。
【0095】
陽極として機能する、第1の電極101は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。この他、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン等を用いることができる。
【0096】
但し、EL層102のうち、第1の電極101に接して形成される層が、後述する有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いて形成される場合には、第1の電極101に用いる物質は、仕事関数の大小に関わらず、様々な金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。例えば、アルミニウム、銀、アルミニウムを含む合金(例えば、Al−Si)等も用いることもできる。
【0097】
第1の電極101は、例えばスパッタリング法や蒸着法(真空蒸着法を含む)等により形成することができる。
【0098】
第1の電極101上に形成されるEL層102は、少なくとも発光層113を有しており、また、本発明の一態様である有機金属錯体を含んで形成される。EL層102の一部には公知の物質を用いることもでき、低分子系化合物および高分子系化合物のいずれを用いることもできる。なお、EL層102を形成する物質には、有機化合物のみからなるものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0099】
EL層102は、発光層113の他、図1(A)に示すように正孔注入性の高い物質を含んでなる正孔注入層111、正孔輸送性の高い物質を含んでなる正孔輸送層112、電子輸送性の高い物質を含んでなる電子輸送層114、電子注入性の高い物質を含んでなる電子注入層115などを適宜組み合わせて積層することにより形成される。
【0100】
正孔注入層111は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0101】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0102】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0103】
また、正孔注入層111として、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子受容体によって有機化合物に正孔が発生するため、正孔注入性および正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した正孔の輸送に優れた材料(正孔輸送性の高い物質)であることが好ましい。
【0104】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0105】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0106】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0107】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0108】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0109】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層111に用いてもよい。
【0110】
正孔輸送層112は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0111】
また、正孔輸送層112には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0112】
また、正孔輸送層112には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0113】
発光層113は、本発明の一態様である有機金属錯体を含む層である。本発明の一態様の有機金属錯体からなる薄膜で発光層113が形成されていてもよいし、本発明の一態様である有機金属錯体よりも大きい三重項励起エネルギーを有する物質をホストとして用い、本発明の一態様である有機金属錯体がゲストとして分散された薄膜で発光層113を形成しても良い。例えば、ホストとしては、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)などを用いることができる。これによって、有機金属錯体からの発光が、濃度に起因して消光してしまうことを防ぐことができる。なお、三重項励起エネルギーとは、基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差である。
【0114】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送層114には、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、BAlq、Zn(BOX)、ビス[2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体が挙げられる。また、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、4,4’−ビス(5−メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(略称:BzOs)などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5−ピリジン−ジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いてもよい。
【0115】
また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0116】
電子注入層115は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層115には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層114を構成する物質を用いることもできる。
【0117】
あるいは、電子注入層115に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層114を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0118】
なお、上述した正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0119】
陰極として機能する、第2の電極103は、仕事関数の小さい(好ましくは3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウムやセシウム等のアルカリ金属、およびマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(例えば、Mg−Ag、Al−Li)、ユーロピウム、イッテルビウム等の希土類金属およびこれらを含む合金の他、アルミニウムや銀などを用いることができる。
【0120】
但し、EL層102のうち、第2の電極103に接して形成される層が、上述する有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合材料を用いる場合には、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を用いることができる。
【0121】
なお、第2の電極103を形成する場合には、真空蒸着法やスパッタリング法を用いることができる。また、銀ペーストなどを用いる場合には、塗布法やインクジェット法などを用いることができる。
【0122】
上述した発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に生じた電位差により電流が流れ、EL層102において正孔と電子とが再結合することにより発光する。そして、この発光は、第1の電極101または第2の電極103のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極103のいずれか一方、または両方が可視光に対する透光性を有する電極となる。
【0123】
本実施の形態で示した発光素子を用いて、パッシブマトリクス型の発光装置や、薄膜トランジスタ(TFT)によって発光素子の駆動が制御されたアクティブマトリクス型の発光装置を作製することができる。
【0124】
なお、アクティブマトリクス型の発光装置を作製する場合におけるTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型や逆スタガ型のTFTを適宜用いることができる。また、TFT基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFTからなるものでもよいし、N型のTFTまたはP型のTFTのいずれか一方のみからなるものであってもよい。さらに、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜、その他、酸化物半導体膜等を用いることができる。
【0125】
なお、本実施の形態において、発光層113で用いた本発明の一態様である有機金属錯体は、信頼性が高く、緑色〜青色の波長領域に発光を示している。従って、信頼性の高い発光素子を実現することができる。
【0126】
本実施の形態においては、実施の形態1に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0127】
(実施の形態3)
本発明の一態様の発光素子は、複数の発光層を有するものであってもよい。複数の発光層を設け、それぞれの発光層から発光させることで、複数の発光が混合された発光を得ることができる。したがって、例えば白色光を得ることができる。本実施の形態では、複数の発光層を有する発光素子の態様について図1(B)を用いて説明する。
【0128】
図1(B)は、第1の電極101と第2の電極103との間に、EL層102を有する発光素子を示した図である。EL層102は、第1の発光層213と第2の発光層215を含むため、図1(B)に示す発光素子は、第1の発光層213における発光と第2の発光層215における発光が混合された発光を得ることができる。第1の発光層213と第2の発光層215との間には、分離層214を有することが好ましい。
【0129】
本実施の形態では、第1の発光層213に、本発明の一態様の有機金属錯体を含み、第2の発光層215に黄色〜赤色の発光を示す有機化合物を含んだ、白色光の発光素子を説明するが、本発明はこれに限らない。
【0130】
第2の発光層215に本発明の一態様である有機金属錯体を用い、第1の発光層213に他の発光物質を適用してもよい。
【0131】
EL層102は、発光層を3層以上有していても良い。
【0132】
第1の電極101の電位が第2の電極103の電位よりも高くなるように電圧を印加すると、第1の電極101と第2の電極103との間に電流が流れ、第1の発光層213、第2の発光層215、又は分離層214において正孔と電子とが再結合する。生じた励起エネルギーは、第1の発光層213と第2の発光層215の両方に分配され、第1の発光層213に含まれた第1の発光物質と第2の発光層215に含まれた第2の発光物質を励起状態にする。そして、励起状態になった第1の発光物質と第2の発光物質とは、それぞれ基底状態に戻るときに発光する。
【0133】
第1の発光層213は、本発明の一態様である有機金属錯体を含んでおり、信頼性が高い青色の発光が得られる。第1の発光層213の構成は、実施の形態2で説明した発光層113と同様の構成とすればよい。
【0134】
第2の発光層215には、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などの蛍光性化合物や、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナート](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))などの燐光性化合物に代表される発光物質が含まれており、560〜700nmに発光スペクトルのピークを有する発光(すなわち、黄色から赤色の発光)が得られる。
【0135】
また、第2の発光層215の構成は、第2の発光物質が蛍光性化合物の場合、第2の発光物質よりも大きい一重項励起エネルギーを有する物質を第1のホストとして用い、第2の発光物質をゲストとして分散してなる層であることが好ましい。また、第2の発光物質が燐光性化合物の場合、第2の発光物質よりも大きい三重項励起エネルギーを有する物質をホスト材料として用い、第2の発光物質をゲストとして分散してなる層であることが好ましい。ホスト材料としては、先に述べたNPB、CBP等の他、DNA、t−BuDNA等を用いることができる。なお、一重項励起エネルギーとは、基底状態と一重項励起状態とのエネルギー差である。また、三重項励起エネルギーとは、基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差である。
【0136】
また、分離層214は、具体的には、上述したTPAQn、NPB、CBP、TCTA、Znpp、ZnBOX等を用いて形成することができる。このように、分離層214を設けることで、第1の発光層213と第2の発光層215のいずれか一方のみの発光強度が強くなってしまうという不具合を防ぐことができる。ただし、分離層214は必ずしも必要ではなく、第1の発光層213の発光強度と第2の発光層215の発光強度との割合を調節するため、適宜設ければよい。
【0137】
また、EL層102は、発光層の他に正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送層114、電子注入層115を設けているが、これらの層の構成に関しても、実施の形態2で述べた各層の構成を適用すればよい。ただし、これらの層は必ずしも必要ではなく、素子の特性に応じて適宜設ければよい。
【0138】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1または実施の形態2に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0139】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様として、発光素子においてEL層を複数有する構造(以下、積層型素子という)について、図1(C)を用いて説明する。この発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に、複数のEL層(第1のEL層700、第2のEL層701)を有する積層型発光素子である。なお、本実施の形態では、EL層が2層の場合について示すが、3層以上としても良い。
【0140】
本実施の形態において、第1の電極101及び第2の電極103は実施の形態2に示した構成を適用すれば良い。
【0141】
本実施の形態において、複数のEL層(第1のEL層700、第2のEL層701)が実施の形態2で示したEL層と同様な構成であっても良いが、いずれかが同様の構成であっても良い。すなわち、第1のEL層700と第2のEL層701は、同じ構成であっても異なる構成であってもよく、その構成は実施の形態2と同様なものを適用することができる。
【0142】
また、複数のEL層(第1のEL層700、第2のEL層701)の間には、電荷発生層305が設けられている。電荷発生層305は、第1の電極101と第2の電極103に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。本実施の形態の場合には、第1の電極101に第2の電極103よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層305から第1のEL層700に電子が注入され、第2のEL層701に正孔が注入される。
【0143】
なお、電荷発生層305は、光の取り出し効率の点から、可視光に対する透光性を有することが好ましい。また、電荷発生層305は、第1の電極101や第2の電極103よりも低い導電率であっても機能する。
【0144】
電荷発生層305は、正孔輸送性の高い有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを含む構成であっても、電子輸送性の高い有機化合物と電子供与体(ドナー)とを含む構成であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0145】
正孔輸送性の高い有機化合物に電子受容体が添加された構成とする場合において、正孔輸送性の高い有機化合物としては、例えば、NPBやTPD、TDATA、MTDATA、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0146】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0147】
一方、電子輸送性の高い有機化合物に電子供与体が添加された構成とする場合において、電子輸送性の高い有機化合物としては、例えば、Alq、Almq、BeBq、BAlqなど、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を用いることができる。また、この他、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、PBDやOXD−7、TAZ、BPhen、BCPなども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い有機化合物であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0148】
また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、インジウム、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0149】
なお、上述した材料を用いて電荷発生層305を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0150】
本実施の形態では、2つのEL層を有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上のEL層を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。本実施の形態に係る発光素子のように、一対の電極間に複数のEL層を電荷発生層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能である。電流密度を低く保てるため、長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、低電圧駆動が可能で消費電力が低い発光装置を実現することができる。
【0151】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。
【0152】
また、3つのEL層を有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0153】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態3に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0154】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様として、発光素子を用いて作製される発光装置であるパッシブマトリクス型の発光装置、およびアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。
【0155】
図2、及び図3にパッシブマトリクス型の発光装置の例を示す。
【0156】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0157】
図2(A)乃至図2(C)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図2(A)乃至図2(C)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図2(D)である。
【0158】
基板401上には、下地絶縁層として絶縁層402を形成する。なお、下地絶縁層が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層402上には、ストライプ状に複数の第1の電極403が等間隔で配置されている(図2(A))。
【0159】
また、第1の電極403上には、各画素に対応する開口部を有する隔壁404が設けられ、開口部を有する隔壁404は絶縁材料(感光性または非感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジストまたはベンゾシクロブテン)、またはSOG膜(例えば、アルキル基を含むSiOx膜))で構成されている。なお、各画素に対応する開口部405が発光領域となる(図2(B))。
【0160】
開口部を有する隔壁404上に、第1の電極403と交差する互いに平行な複数の逆テーパ状の隔壁406が設けられる(図2(C))。逆テーパ状の隔壁406はフォトリソグラフィ法に従い、未露光部分がパターンとして残るポジ型感光性樹脂を用い、パターンの下部がより多くエッチングされるように露光量または現像時間を調節することによって形成する。
【0161】
図2(C)、及び図2(D)に示すように逆テーパ状の隔壁406を形成した後、図2(D)に示すようにEL層407および第2の電極408を順次形成する。開口部を有する隔壁404及び逆テーパ状の隔壁406を合わせた高さは、EL層407及び第2の電極408の膜厚より大きくなるように設定されているため、図2(D)に示すように複数の領域に分離されたEL層407と、第2の電極408とが形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0162】
第2の電極408は、第1の電極403と交差する方向に伸長する互いに平行なストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁406上にもEL層407及び第2の電極408を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層407、及び第2の電極408とは分断されている。
【0163】
なお、本実施の形態における第1の電極403および第2の電極408は、一方が陽極であり、他方が陰極であればどちらであっても良い。なお、EL層407を構成する積層構造については、電極の極性に応じて適宜調整すればよい。
【0164】
また、必要であれば、基板401に封止缶やガラス基板などの封止材をシール材などの接着剤で貼り合わせて封止し、発光素子が密閉された空間に配置されるようにしても良い。これにより、発光素子の劣化を防止することができる。なお、密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填しても良い。さらに、水分などによる発光素子の劣化を防ぐために基板と封止材との間に乾燥剤などを封入してもよい。乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。なお、乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのようなアルカリ土類金属の酸化物のような化学吸着によって水分を吸収する物質を用いることが可能である。その他の乾燥剤として、ゼオライトやシリカゲル等の物理吸着によって水分を吸着する物質を用いてもよい。
【0165】
次に、図2(A)乃至図2(D)に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPCなどを実装した場合の上面図を図3に示す。
【0166】
図3において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0167】
ここで、図2における第1の電極403が、図3の走査線503に相当し、図2における第2の電極408が、図3のデータ線508に相当し、逆テーパ状の隔壁406が隔壁506に相当する。データ線508と走査線503の間には、図2のEL層407が挟まれており、領域505で示される交差部が画素1つ分となる。
【0168】
なお、走査線503は配線端で接続配線509と電気的に接続され、接続配線509が入力端子510を介してFPC511bに接続される。また、データ線は入力端子512を介してFPC511aに接続される。
【0169】
また、必要であれば、射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0170】
なお、図3では、駆動回路を基板501上に設けない例を示したが、基板501上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0171】
また、ICチップを実装させる場合には、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをCOG方式によりそれぞれ実装する。COG方式以外の実装技術としてTCPやワイヤボンディング方式を用いて実装してもよい。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC、および走査線側ICは、シリコン基板を用いたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板もしくはプラスチック基板上にTFTで駆動回路を形成したものであってもよい。
【0172】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図4を用いて説明する。なお、図4(A)は発光装置を示す上面図であり、図4(B)は図4(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板601上に設けられた画素部602と、駆動回路部(ソース側駆動回路)603と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)604と、を有する。画素部602、駆動回路部603、及び駆動回路部604は、シール材605によって、素子基板601と封止基板606との間に封止されている。
【0173】
また、素子基板601上には、駆動回路部603、及び駆動回路部604に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、又はリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線607が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC(フレキシブルプリントサーキット)608を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0174】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板601上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、ソース側駆動回路である駆動回路部603と、画素部602が示されている。
【0175】
駆動回路部603はnチャネル型TFT609とpチャネル型TFT610とを組み合わせたCMOS回路が形成される例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、基板上ではなく外部に駆動回路を形成することもできる。
【0176】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612と電流制御用TFT612の配線(ソース電極又はドレイン電極)に電気的に接続された陽極613とを含む複数の画素により形成される。なお、陽極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。
【0177】
また、上層に積層形成される膜の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、感光性の光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができ、有機化合物に限らず無機化合物、例えば、酸化シリコン、酸窒化シリコン等、の両者を使用することができる。
【0178】
陽極613上には、EL層615及び陰極616が積層形成されている。なお、陽極613をITO膜とし、陽極613と接続する電流制御用TFT612の配線として窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層膜、或いは窒化チタン膜、アルミニウムを主成分とする膜、窒化チタン膜との積層膜を適用すると、配線としての抵抗も低く、ITO膜との良好なオーミックコンタクトがとれる。なお、ここでは図示しないが、陰極616は外部入力端子であるFPC608に電気的に接続されている。
【0179】
なお、EL層615は、少なくとも発光層が設けられており、発光層の他に正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層又は電子注入層を適宜設ける構成とする。陽極613、EL層615及び陰極616との積層構造で、発光素子617が形成されている。
【0180】
また、図4(B)に示す断面図では発光素子617を1つのみ図示しているが、画素部602において、複数の発光素子がマトリクス状に配置されているものとする。画素部602には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0181】
さらにシール材605で封止基板606を素子基板601と貼り合わせることにより、素子基板601、封止基板606、およびシール材605で囲まれた空間618に発光素子617が備えられた構造になっている。なお、空間618には、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される構成も含むものとする。
【0182】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板606に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0183】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0184】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態4に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0185】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明を適用した一態様である発光装置を用いて完成させた様々な電子機器および照明器具の一例について、図5、及び図6を用いて説明する。
【0186】
発光装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器および照明器具の具体例を図5に示す。
【0187】
図5(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、発光装置を表示部7103に用いることができる。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。
【0188】
テレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0189】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0190】
図5(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、コンピュータは、発光装置をその表示部7203に用いることにより作製される。
【0191】
図5(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図5(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に発光装置を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図5(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図5(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0192】
図5(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、発光装置を表示部7402に用いることにより作製される。
【0193】
図5(D)に示す携帯電話機7400は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる。また、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0194】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0195】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0196】
また、携帯電話機7400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機7400の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0197】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0198】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0199】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0200】
図5(E)は卓上照明器具であり、照明部7501、傘7502、可変アーム7503、支柱7504、台7505、電源7506を含む。なお、卓上照明器具は、発光装置を照明部7501に用いることにより作製される。なお、照明器具には天井固定型の照明器具または壁掛け型の照明器具なども含まれる。
【0201】
図6は、発光装置を、室内の照明装置801として用いた例である。発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。その他、ロール型の照明装置802として用いることもできる。なお、図8に示すように、室内の照明装置801を備えた部屋で、図5(E)で説明した卓上照明器具803を併用してもよい。
【0202】
以上のようにして、発光装置を適用して電子機器や照明器具を得ることができる。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0203】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1乃至実施の形態5に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0204】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(Mptz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0205】
【化22】

【0206】
<ステップ1;N−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドの合成>
まず、アセトイミド酸エチル塩酸塩15.5g、トルエン150mL、トリエチルアミン(EtN)31.9gを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物にベンゾイルクロリド17.7gとトルエン30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で24時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物を吸引ろ過し、固体をトルエンで洗浄した。得られたろ液を、濃縮してN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドを得た(赤色油状物、収率82%)。ステップ1の合成スキームを下記(a−1)に示す。
【0207】
【化23】

【0208】
<ステップ2;3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−mp)の合成>
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩8.68g、四塩化炭素100mL、トリエチルアミン(EtN)35mLを300mLナスフラスコに入れ、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に上記ステップ1で得られたN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミド8.72gを加えて室温で24時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。この有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−mp)を得た(橙色油状物、収率84%)。ステップ2の合成スキームを下記(a−2)に示す。
【0209】
【化24】

【0210】
<ステップ3;トリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)])の合成>
次に、上記ステップ2で得られた配位子HMptz1−mp(略称)2.71g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)1.06gを、三方コックを付けた反応容器に入れた。この反応容器をアルゴン置換し、250℃にて48時間加熱し、反応させた。この反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まず、ジクロロメタン用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=10:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体を酢酸エチルで洗浄し、次いで、ジクロロメタンと酢酸エチルの混合溶媒にて再結晶し、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−mp)](略称)を得た(黄色粉末、収率35%)。ステップ3の合成スキームを下記(a−3)に示す。
【0211】
【化25】

【0212】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、H NMRチャートを図7に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−mp)](略称)が得られたことがわかった。
【0213】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR.δ(CDCl):1.94−2.21(m,18H),6.47−6.76(m,12H),7.29−7.52(m,12H).
【0214】
次に、[Ir(Mptz1−mp)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図8に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図8において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図8に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0215】
図8に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−mp)](略称)は、493nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは水色の発光が観測された。
【実施例2】
【0216】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz1−mp)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(iPrptz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0217】
【化26】

【0218】
<ステップ1;N−(1−メトキシイソブチリデン)ベンズアミドの合成>
まず、メチル イソブチルイミダート塩酸塩10.0g、トルエン150mL、トリエチルアミン(EtN)18.4gを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物にベンゾイルクロリド10.2gとトルエン30mLの混合溶液を滴下し、室温で27時間撹拌した。撹拌後、この反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を得た。得られたろ液を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、得られた混合物を自然濾過して、ろ液を得た。得られたろ液を濃縮してN−(1−メトキシイソブチリデン)ベンズアミドを得た(褐色油状物、収率91%)。ステップ1の合成スキームを下記(b−1)に示す。
【0219】
【化27】

【0220】
<ステップ2;3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成(略称:HiPrptz1−mp)の合成>
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩4.64g、四塩化炭素50mL、トリエチルアミン(EtN)20mLを300mL三ツ口フラスコに入れ、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に上記ステップ1で得られたN−(1−メトキシイソブチリデン)ベンズアミド6.0gを加えて室温で17時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。有機層と得られた抽出溶液を合わせて飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはヘキサン:酢酸エチル=10:1(v/v)を用いた。得られたフラクションを濃縮して3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HiPrptz1−mp)を得た(橙色油状物、収率78%)。ステップ2の合成スキームを下記(b−2)に示す。
【0221】
【化28】

【0222】
<ステップ3;トリス[3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz1−mp)])の合成>
次に、上記ステップ2で得られた配位子HiPrptz1−mp(略称)2.0g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.706gを、三方コックを付けた反応容器に入れ、220℃にて33時間加熱した後、250℃で47時間加熱し、反応させた。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(iPrptz1−mp)](略称)を得た(黄色粉末、収率5%)。ステップ3の合成スキームを下記(b−3)に示す。
【0223】
【化29】

【0224】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、H NMRチャートを図9に示す。この結果から、本合成例2において、上述の構造式(102)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(iPrptz1−mp)](略称)が得られたことがわかった。
【0225】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR.δ(CDCl):0.80−0.87(m,9H),1.36(d,9H),1.85−2.28(m,9H),2.80(sep,3H),6.44−6.76(m,12H),7.36−7.48(m,12H).
【0226】
次に、[Ir(iPrptz1−mp)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.077mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.077mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図10に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図10において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図10に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.077mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0227】
図10に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(iPrptz1−mp)](略称)は、493nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは水色の発光が観測された。
【実施例3】
【0228】
≪合成例3≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(103)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(Prptz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0229】
【化30】

【0230】
<ステップ1;N−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミドの合成>
まず、エチル ブチルイミダート塩酸塩10g、トルエン40mL、トリエチルアミン(EtN)17gを200mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物にベンゾイルクロリド9.3gとトルエン30mLの混合溶液を滴下し、室温で20時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物を吸引ろ過し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。洗浄後、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミドを得た(黄色油状物、収率87%)。ステップ1の合成スキームを下記(c−1)に示す。
【0231】
【化31】

【0232】
<ステップ2;1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPrptz1−mp)の合成>
o−トリルヒドラジン塩酸塩4.3g、四塩化炭素50mLを200mL三ツ口フラスコに入れ、この混合物にトリエチルアミン(EtN)20mLを少量ずつ滴下した。滴下後、室温で1時間撹拌した。この混合物にN−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミド5.0gを加え、室温で18時間撹拌した。得られた反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。この有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を得た。このろ液を濃縮して1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPrptz1−mp)を得た(赤色油状物、収率74%)。ステップ2の合成スキームを下記(c−2)に示す。
【0233】
【化32】

【0234】
<ステップ3;トリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])の合成>
さらに、上記ステップ2で得た配位子HPrptz1−mp(略称)1.57g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.55gを、三方コックを付けた反応容器に入れ、反応容器内をアルゴン置換した。その後、250℃にて47時間加熱し、反応させた。反応物をジクロロメタンに溶解し、この溶液をろ過した。得られたろ液の溶媒を留去し、ジクロロメタンを展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した。さらに、ジクロロメタン溶媒にて再結晶し、本発明の一様態である有機金属錯体[Ir(Prptz1−mp)](略称)を得た(黄色粉末、収率65%)。ステップ3の合成スキームを下記(c−3)に示す。
【0235】
【化33】

【0236】
なお、上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。また、H NMRチャートを図11に示す。このことから、本合成例3において、上述の構造式(103)で表される本発明の一様態である有機金属錯体[Ir(Prptz1−mp)](略称)が得られたことがわかった。
【0237】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR.δ(CDCl):0.86(m,9H),1.50(m,3H),1.69(m,3H),1.92(d,6H),2.25(d,3H),2.32(m,3H),2.45(m,3H),6.46−6.75(m,12H),7.29(m,3H),7.35−7.52(m,9H).
【0238】
次に、[Ir(Prptz1−mp)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.086mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.52mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図12に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図12において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図12に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.086mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0239】
図12に示す通り、本発明の一様態である有機金属錯体[Ir(Prptz1−mp)](略称)は、491nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは水色の発光が観測された。
【実施例4】
【0240】
≪合成例4≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(101)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[3−エチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Eptz1−mp)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(Eptz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0241】
【化34】

【0242】
<ステップ1;N−(1−メトキシプロピリデン)ベンズアミドの合成>
まず、エチル プロピオンイミダート塩酸塩5.0g、トルエン100mL、トリエチルアミン(EtN)8.5gを300mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。所定時間経過後、この混合物にベンゾイルクロリド5.6gとトルエン30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で20時間撹拌した。得られた反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−メトキシプロピリデン)ベンズアミドを得た(黄色油状物、収率82%)。ステップ1の合成スキームを下記(g−1)に示す。
【0243】
【化35】

【0244】
<ステップ2;3−エチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HEptz1−mp)の合成>
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩5.8g、四塩化炭素100mL、トリエチルアミン(EtN)11mLを300mL三ツ口フラスコに入れ、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に上記ステップ1で得たN−(1−メトキシプロピリデン)ベンズアミド6.3gを加えて室温で65時間撹拌した。得られた反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。有機層と得られた抽出溶液を合わせて飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して3−エチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HEptz1−mp)を得た(褐色油状物、収率55%)。ステップ2の合成スキームを下記(g−2)に示す。
【0245】
【化36】

【0246】
<ステップ3;トリス[3−エチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Eptz1−mp)])の合成>
次に、上記ステップ2で得られた配位子HEptz1−mp(略称)2.0g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.73gを、三方コックを付けた反応容器に入れた。この反応容器をアルゴン置換し、250℃にて39時間加熱し反応させた。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まず、ジクロロメタン用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=50:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体を酢酸エチルで洗浄し、次いで、メタノールで洗浄した。得られた固体をジクロロメタンとヘキサンの混合溶媒にて再結晶し、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Eptz1−mp)](略称)を得た(黄色粉末、収率35%)。ステップ3の合成スキームを下記(g−3)に示す。
【0247】
【化37】

【0248】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図13に示す。この結果から、本合成例4において、上述の構造式(101)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Eptz1−mp)](略称)が得られたことがわかった。
【0249】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H−NMR.δ(CDCl):1.08−1.25(m,9H),1.91−2.61(m,15H),6.45−6.73(m,3H),6.55−6.74(m,9H),7.32−7.52(m,12H).
【0250】
次に、[Ir(Eptz1−mp)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図14に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図14において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図14に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.085mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0251】
図14に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Eptz1−mp)](略称)は、492nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは水色の発光が観測された。
【実施例5】
【0252】
≪合成例5≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[1−(5−ビフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−3b)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(Mptz1−3b)](略称)の構造を以下に示す。
【0253】
【化38】

【0254】
<ステップ1; 1−(3−ブロモフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成>
まず、3−ブロモフェニルヒドラジン塩酸塩18g、四塩化炭素150mLを300mLの三ツ口フラスコに入れ、この混合物にトリエチルアミン(EtN)9.8gを少量ずつ滴下し、室温で1時間撹拌した。所定時間経過後、合成例1ステップ1で得たN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミド17gを加え、室温で24時間撹拌した。反応終了後、反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=50:1(v/v)を用いた。得られたフラクションを濃縮して1−(3−ブロモフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾールを得た(黄色固体、収率50%)。ステップ1の合成スキームを下記(h−1)に示す。
【0255】
【化39】

【0256】
<ステップ2;1−(3−ビフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾールの合成(略称:HMptz1−3b)の合成>
次に、上記ステップ1で得た1−(3−ブロモフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール12g、フェニルボロン酸5.3g、トリ(オルト−トリル)ホスフィン0.36g、トルエン100mL、エタノール12mL、2M炭酸カリウム水溶液43mLを200mLの三ツ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に酢酸パラジウム(II)0.088gを加え、80℃で13時間加熱撹拌した。反応終了後、得られた反応溶液の水層をトルエンで抽出し、有機層を得た。得られた抽出溶液と有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはトルエン:酢酸エチル=4:1(v/v)を用いた。得られたフラクションを濃縮して1−(3−ビフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−3b)を得た(黄褐色油状物、収率94%)。ステップ2の合成スキームを下記(h−2)に示す。
【0257】
【化40】

【0258】
<ステップ3;トリス[1−(5−ビフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−3b)])の合成>
次に、上記ステップ2で得た配位子HMptz1−3b(略称)2.35g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.739gを三方コックを取り付けた反応容器に入れ、容器内をアルゴン置換し、250℃で43時間加熱撹拌した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=20:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体をメタノールにて洗浄し、得られた残渣をジクロロメタンとメタノールの混合溶媒にて再結晶して、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−3b)](略称)を得た(黄色粉末、収率12%)。次に、ステップ3の合成スキームを下記(h−3)に示す。
【0259】
【化41】

【0260】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図15に示す。この結果から、本合成例5において、上述の構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−3b)](略称)が得られたことがわかった。
【0261】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H−NMR.δ(CDCl):2.06(s,9H),6.67(t,3H),6.74−6.83(m,6H),6.94(d,3H),7.36−7.50(m,12H),7.61−7.67(m,9H),7.73(t,3H),7.80(d,3H).
【0262】
次に、[Ir(Mptz1−3b)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図16に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図16において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図16に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.080mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0263】
図16に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mptz1−3b)](略称)は、516nmに発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは青緑の発光が観測された。
【実施例6】
【0264】
≪合成例6≫
本実施例では、実施の形態1の構造式(128)で表される本発明の一態様である有機金属錯体、トリス[1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mntz1−mp)])の合成例を具体的に例示する。なお、[Ir(Mntz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0265】
【化42】

【0266】
<ステップ1; N−(1−エトキシエチリデン)−2−ナフトアミドの合成>
まず、アセトイミド酸エチル塩酸塩10g、トルエン150mL、トリエチルアミン(EtN)16gを300mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物に2−ナフトイルクロリド15gとトルエン30mLの混合溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で42時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシエチリデン)−2−ナフトアミドを得た(黄色油状物、収率86%)。ステップ1の合成スキームを下記(j−1)に示す。
【0267】
【化43】

【0268】
<ステップ2;1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMntz1−mp)の合成>
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩6.4g、四塩化炭素150mLを300mLの三ツ口フラスコに入れ、この混合物に上記ステップ1で得たN−(1−エトキシエチリデン)−2−ナフトアミド8.8gと四塩化炭素20mLの混合溶液を滴下し、室温で20時間撹拌した。反応終了後、この反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。得られた抽出溶液と有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:ヘキサン=1:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して、油状物を得た。この油状物をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMntz1−mp)を得た(褐色固体、収率59%)。ステップ2の合成スキームを下記(j−2)に示す。
【0269】
【化44】

【0270】
<ステップ3;トリス[1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mntz1−mp)])の合成>
次に、上記ステップ2で得た配位子HMntz1−mp(略称)2.35g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.739gを三方コックを取り付けた反応容器に入れ、容器内をアルゴン置換し、250℃で57時間加熱撹拌した。得られた反応混合物をジクロロメタンに溶解し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=20:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体を酢酸エチルにて洗浄し、得られた残渣をさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体をジクロロメタンと酢酸エチルの混合溶媒にて再結晶して、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mntz1−mp)](略称)を得た(黄色粉末、収率8.3%)。次に、ステップ3の合成スキームを下記(j−3)に示す。
【0271】
【化45】

【0272】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H−NMR)による分析結果を下記に示す。また、H−NMRチャートを図17に示す。この結果から、本合成例6において、上述の構造式(128)で表される本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mntz1−mp)](略称)が得られたことがわかった。
【0273】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H−NMR.δ(CDCl):1.84−2.25(m,18H),7.01−7.18(m,15H),7.21−7.32(m,3H),7.42−7.61(m,12H).
【0274】
次に、[Ir(Mntz1−mp)](略称)のジクロロメタン溶液の紫外可視吸収スペクトル(以下、単に「吸収スペクトル」という)及び発光スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定には、紫外可視分光光度計((株)日本分光製 V550型)を用い、ジクロロメタン溶液(0.095mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。また、発光スペクトルの測定には、蛍光光度計((株)浜松ホトニクス製 FS920)を用い、脱気したジクロロメタン溶液(0.095mmol/L)を石英セルに入れ、室温で測定を行った。得られた吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結果を図18に示す。横軸は波長、縦軸は吸収強度および発光強度を表す。また、図18において2本の実線が示されているが、細い実線は吸収スペクトルを示し、太い実線は発光スペクトルを示している。なお、図18に示す吸収スペクトルは、ジクロロメタン溶液(0.095mmol/L)を石英セルに入れて測定した吸収スペクトルから、ジクロロメタンのみを石英セルに入れて測定した吸収スペクトルを差し引いた結果を示している。
【0275】
図18に示すとおり、本発明の一態様である有機金属錯体[Ir(Mntz1−mp)](略称)は、539nm、及び584nm付近に2つの発光ピークを有しており、ジクロロメタン溶液からは黄色の発光が観測された。
【実施例7】
【0276】
本実施例では、実施例1で合成した[Ir(Mptz1−mp)](略称)を発光物質として用いた発光素子1、実施例2で合成した[Ir(iPrptz1−mp)](略称)を発光物質として用いた発光素子2、及び実施例3で合成した[Ir(Prptz1−mp)](略称)を発光物質として用いた発光素子3について評価を行った。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0277】
【化46】

【0278】
発光素子1乃至発光素子3について図19(A)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子1の作製方法を示す。
【0279】
(発光素子1)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0280】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0281】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0282】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0283】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0284】
さらに、mCP(略称)と、実施例1にて合成したトリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Mptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Mptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0285】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、実施例1にて合成したトリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)])を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Mptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0286】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0287】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0288】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子1を作製した。
【0289】
以下に、本実施例の発光素子2の作製方法を示す。
【0290】
(発光素子2)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0291】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0292】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0293】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0294】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0295】
さらに、mCP(略称)と、実施例2にて合成したトリス[3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(iPrptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(iPrptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0296】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、実施例2にて合成したトリス[3−イソプロピル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz1−mp)])を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(iPrptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(iPrptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0297】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0298】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0299】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子2を作製した。
【0300】
以下に、本実施例の発光素子3の作製方法を示す。
【0301】
(発光素子3)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0302】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0303】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0304】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0305】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0306】
さらに、mCP(略称)と、実施例3にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Prptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Prptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0307】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、実施例3にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Prptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Prptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0308】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0309】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0310】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子3を作製した。
【0311】
なお、上述した蒸着過程において、発光素子1乃至発光素子3の蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0312】
以上により得られた発光素子1乃至発光素子3の素子構造を表1に示す。
【0313】
【表1】

【0314】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子1乃至発光素子3が大気に曝されないように封止する作業を行った後、当該発光素子1乃至発光素子3の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0315】
発光素子1乃至発光素子3の電流密度−輝度特性をそれぞれ図20、図24、及び図28に示す。図20、図24、及び図28において、横軸は、電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子1乃至3の電圧−輝度特性をそれぞれ、図21、図25、及び図29に示す。図21、図25、及び図29において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子1乃至3の輝度−電流効率特性をそれぞれ図22、図26、及び図30に示す。図22、図26、及び図30において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0316】
また、発光素子1乃至発光素子3における輝度600cd/mのときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表2に示す。
【0317】
【表2】

【0318】
発光素子1乃至発光素子3の2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルをそれぞれ、図23、図27、及び図31に示す。図23、図27、及び図31に示す通り、発光素子1乃至発光素子3の発光スペクトルはそれぞれ、463nm、462nm、及び464nmにピークを有している。
【0319】
また、表2に示す通り、発光素子1乃至発光素子3の600cd/mの輝度の時のCIE色度座標は、それぞれ(x,y)=(0.17,0.27)、(x,y)=(0.17,0.26)、及び(x,y)=(0.17,0.27)であった。
【0320】
以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子1乃至発光素子3は、緑色〜青色の波長領域の発光を、効率よく発光させることができると示された。
【0321】
次に、上記発光素子1乃至発光素子3について、発光素子の信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図32、及び図33に示す。
【0322】
図32には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子1乃至発光素子3をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子1乃至発光素子3の輝度の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図32から、発光素子1乃至発光素子3の規格化輝度が70%以下になる時間は、それぞれ、47(h)、25(h)、及び8(h)となった。
【0323】
次に、図33には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度を一定の条件で発光素子1乃至発光素子3をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子1乃至発光素子3の電圧の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は電圧(V)を表す。図33から、経時的な電圧の上昇が小さい順として、発光素子1、発光素子2、発光素子3であることが分かる。すなわち、発光素子1乃至発光素子3は1H−1,2,4−トリアゾール環の3位の置換基が異なるため、信頼性に差が生じている。
【0324】
以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子1乃至発光素子3は、緑色〜青色の波長領域の発光を、効率よく発光させることができる。ただし、信頼性を考慮した場合においては、1H−1,2,4−トリアゾール環の3位の置換基は、好ましくはメチル基、またはイソプロピル基、さらに好ましくはメチル基である。
【実施例8】
【0325】
本実施例では、実施例3で合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を発光物質として用いた発光素子4と、本発明と比較として非特許文献1に示されているトリス[1−メチル−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Me)])を発光物質として用いた発光素子5について評価を行った。本実施例で用いた発光素子4の材料の化学式については、実施例7と同様であり、これらの記載を参酌できる。また、本実施例で比較のため用いた発光素子5の材料の化学式を以下に示す。
【0326】
【化47】

【0327】
発光素子4および発光素子5について図19(B)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子4の作製方法を示す。
【0328】
(発光素子4)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0329】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0330】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0331】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、50nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0332】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0333】
さらに、mCP(略称)と、実施例3にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Prptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Prptz1−mp)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は30nmとした。
【0334】
次に、発光層1113上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)を10nmの膜厚となるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0335】
さらに、第1の電子輸送層1114a上に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を膜厚10nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0336】
その後、第2の電子輸送層1114b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第3の電子輸送層1114cを形成した。
【0337】
さらに、第3の電子輸送層1114c上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0338】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子4を作製した。
【0339】
次に、以下に比較用の発光素子5の作製方法を示す。
【0340】
(発光素子5)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0341】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0342】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0343】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、50nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0344】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を10nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0345】
さらに、mCP(略称)と、トリス[1−メチル−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Me)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Prptz1−Me)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Prptz1−Me)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は30nmとした。
【0346】
次に、発光層1113上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)を10nmの膜厚となるように成膜し、第1の電子輸送層1114aを形成した。
【0347】
さらに、第1の電子輸送層1114a上に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)を膜厚10nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0348】
その後、第2の電子輸送層1114b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、第3の電子輸送層1114cを形成した。
【0349】
さらに、第3の電子輸送層1114c上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0350】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、比較用の発光素子5を作製した。
【0351】
なお、上述した蒸着過程において、発光素子4、及び発光素子5ともに、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0352】
また、本実施例の発光素子4、及び発光素子5は、実施例7に記載した発光素子1乃至発光素子3と、正孔注入層、正孔輸送層、第1の電子輸送層、第2の電子輸送層、及び第3の電子輸送層の膜厚等の構成が異なる。
【0353】
以上により得られた発光素子4および発光素子5の素子構造を表3に示す。
【0354】
【表3】

【0355】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子4および発光素子5が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子4および発光素子5の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0356】
発光素子4、及び発光素子5の電流密度−輝度特性を、それぞれ図34、及び図38に示す。図34、及び図38において、横軸は、電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子4、及び発光素子5の電圧−輝度特性を、それぞれ図35、及び図39に示す。図35、及び図39において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子4、及び発光素子5の輝度−電流効率特性を、それぞれ図36、及び図40に示す。図36、及び図40において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0357】
また、発光素子4、及び発光素子5における輝度1500cd/mのときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表4に示す。
【0358】
【表4】

【0359】
発光素子4、及び発光素子5に2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、それぞれ図37、及び図41に示す。図37、及び図41から、発光素子4の発光スペクトルは、464nmにピークを有しており、発光素子5の発光スペクトルは、453nmにピークを有している。
【0360】
また、表4に示す通り、1500cd/mの輝度の時のCIE色度座標は、発光素子4は、(x,y)=(0.19,0.30)となり、比較例の発光素子5は、(x,y)=(0.17,0.21)であった。
【0361】
以上のように、発光素子4は、[Ir(Prptz1−mp)](略称)に由来する発光が得られたことがわかった。本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子は、緑色〜青色の波長領域の発光を、効率よく発光させることができると示された。
【0362】
次に、上記発光素子4及び発光素子5について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図42、及び図43に示す。
【0363】
図42には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子4及び発光素子5をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子4及び発光素子5の輝度の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図42から、発光素子4、及び発光素子5の規格化輝度が70%以下になる時間は、それぞれ、24(h)、11(h)となった。したがって、本発明の一態様である発光素子4は、比較例の発光素子5よりも信頼性が高いことが明らかとなった。
【0364】
次に、図43には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度を一定の条件で発光素子4及び発光素子5をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子4及び発光素子5の電圧の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は電圧(V)を表す。図43から、本発明の一態様である発光素子4の方が、比較例の発光素子5よりも経時的な電圧の上昇が小さい。よって、本発明の発光物質として用いた発光素子4は長寿命で、信頼性が高いことがわかる。
【0365】
以上のように、本発明の一態様のトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を発光物質として用いた発光素子を用いることにより、緑色〜青色の波長領域に発光を示し、色度が良好で発光効率の高く、信頼性が高い発光素子を提供することができる。また、実施例1〜6で例示したような1H−1,2,4−トリアゾール環の1位に置換フェニル基を有している本発明の一態様である有機金属錯体は、アルゴン雰囲気下、250℃で配位子とトリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)を合成する反応において分解反応は起こらなかった。しかし、比較例である[Ir(Prptz1−Me)](略称)は、アルゴン雰囲気下、250℃で配位子とトリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)を合成する反応を行ったところ、1H−1,2,4−トリアゾール環の1位に置換しているメチル基が分解した錯体が生成する反応が進行することを、質量分析により確認した。すなわち、本発明の一態様である有機金属錯体は、[Ir(Prptz1−Me)](略称)と比較して、熱物性に優れると言える。
【0366】
また、本比較例で説明したように、[Ir(Prptz1−Me)](略称)を発光物質として用いた発光素子は、本発明の一態様のトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を発光物質として用いた発光素子よりも信頼性が劣る結果であった。このように、1H−1,2,4−トリアゾール環の1位に置換フェニル基を持たない場合、実施例1〜6で例示したような1H−1,2,4−トリアゾール環の1位に置換フェニル基を有している本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子と比較して、信頼性が劣ることが判明した。これは1H−1,2,4−トリアゾール環の1位に置換フェニル基を有することで熱物性が向上し、蒸着に対する安定性が高められる。すなわち、本発明の一態様である有機金属錯体は、熱物性に優れるため、[Ir(Prptz1−Me)](略称)と比較して、素子の信頼性が向上する。
【0367】
次に、本発明の発光物質と比較して、比較例1、及び比較例2の発光物質について合成を行い、評価を行った。以下に詳細を示す。
【0368】
≪比較例1≫
本比較例においては、特許文献2及び特許文献3に記載されている1H−1,2,4−トリアゾール環の3位に水素が結合しているトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(ptz1−mp)])の合成方法について説明する。[Ir(ptz1−mp)](略称)の構造を以下に示す。
【0369】
【化48】

【0370】
<ステップ1;N−[(ジメチルアミノ)メチリデン]ベンズアミドの合成>
まず、ベンズアミド20.4g、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール25mL、ジオキサン85mLを、ディーンスタークの先に冷却管を取り付けた200mL三ツ口フラスコに入れ、110℃で2.5時間加熱撹拌した。得られた反応溶液を減圧下にて濃縮して、油状物を得た。この油状物を静置したところ、固体が析出した。この固体をヘキサンにて洗浄して、N−[(ジメチルアミノ)メチリデン]ベンズアミドを得た(白色固体、収率95%)。ステップ1の合成スキームを下記(d−1)に示す。
【0371】
【化49】

【0372】
<ステップ2;1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:Hptz1−mp)の合成>
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩10.8g、ジオキサン50mLを500mL三ツ口フラスコに入れ、この混合物に水酸化ナトリウム水溶液(5mol/L)14mLを滴下し、室温で15分間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に70%酢酸水溶液100mL、上記ステップ1で得られたN−[(ジメチルアミノ)メチリデン]ベンズアミド10.0gを加え、90℃で2.5時間加熱撹拌した。得られた反応溶液を、水200mLに注ぎ、室温で撹拌したところ固体が析出した。この混合物を吸引ろ過し、固体を水で洗浄した。得られた固体を、エタノールとヘキサンの混合溶媒にて再結晶して、1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:Hptz1−mp)を得た(白色固体、収率57%)。ステップ2の合成スキームを下記(d−2)に示す。
【0373】
【化50】

【0374】
<ステップ3;トリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(ptz1−mp)])の合成>
次に、上記ステップ2で得られた配位子Hptz1−mp(略称)2.0g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.835gを、三方コックを付けた反応容器に入れた。この反応容器をアルゴン置換し、250℃にて11時間加熱し、この反応混合物の薄層クロマトグラフィー(TLC)より、配位子Hptz1−mp(略称)のスポットが消失したことを確認した。しかし、反応混合物の質量スペクトルからは、目的のイリジウム錯体の分子イオンピークは観測されなかった。これより配位子Hptz1−mpが分解し、目的物が生成していない。ステップ3の合成スキームを下記(d−3)に示す。
【0375】
【化51】

【0376】
本比較例で説明したように、[Ir(ptz1−mp)](略称)は、合成が困難であった。このように、1H−1,2,4−トリアゾール環の3位に水素が結合している場合、実施例1〜6で例示したような1H−1,2,4−トリアゾール環の3位に置換基を有している本発明の一態様である有機金属錯体と比較して、著しく収率が低い、または合成できないことが判明した。これは、前述のとおり、配位子Hptz1−mp(略称)が分解しているためである。すなわち、本発明の一態様である有機金属錯体は、錯体の合成反応を行う際に該分解反応が抑制できるため、[Ir(ptz1−mp)](略称)と比較して、合成の収率が飛躍的に向上する。
【0377】
≪比較例2≫
本比較例においては、1H−1,2,4−トリアゾール環の1位のフェニル基に置換基を持たない構造であるトリス[1,5−ジフェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Ph)])の合成方法について説明する。[Ir(Prptz1−Ph)](略称)の構造を以下に示す。
【0378】
【化52】

【0379】
<ステップ1;N−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミドの合成>
まず、エチル ブチルイミダート塩酸塩10.0g、トルエン120mL、トリエチルアミン(EtN)20.0gを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物にベンゾイルクロリド9.26gとトルエン30mLの混合溶液を、50mL滴下ロートより滴下し、室温で15時間撹拌した。所定時間経過後、反応混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮してN−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミドを得た(淡黄色油状物、粗収率93%)。ステップ1の合成スキームを下記(e−1)に示す。
【0380】
【化53】

【0381】
<ステップ2;1,5−ジフェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPrptz1−Ph)の合成>
次に、フェニルヒドラジン5.00g、四塩化炭素80mLを200mLの三ツ口フラスコに入れ、この混合物に上記ステップ1で得られたN−(1−エトキシブチリデン)ベンズアミド10.1gと四塩化炭素30mLの混合溶媒を滴下し、室温で17時間撹拌した。所定時間経過後、この反応溶液に水を加え、水層をクロロホルムで抽出し、有機層を得た。得られた抽出溶液と有機層を合わせて、飽和食塩水で洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーより精製した。展開溶媒には、まずジクロロメタンを用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=1:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して1,5−ジフェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HPrptz1−Ph)を得た(赤色油状物、収率67%)。ステップ2の合成スキームを下記(e−2)に示す。
【0382】
【化54】

【0383】
<ステップ3;トリス[1,5−ジフェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−Ph)])の合成>
次に、上記ステップ2で得られた配位子HPrptz1−Ph(略称)2.00g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)0.743gを、三方コックを付けた反応容器に入れた。この反応容器をアルゴン置換し、250℃にて21時間加熱し、反応させた。この反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、ジクロロメタン:酢酸エチル=20:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体にし、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。精製した結果、目的物のイリジウム錯体の質量スペクトルが観測される3つのフラクションを得た。得られた3つのフラクションをさらに濃縮して、それぞれ微量の固体を得た。ステップ3の合成スキームを下記(e−3)に示す。
【0384】
【化55】

【0385】
上記ステップ3で得られた微量の固体を、それぞれ核磁気共鳴分光法(H NMR)により分析したところ、構造を確定することは出来なかった。これは、本比較例の配位子HPrptz1−Ph(略称)にはオルトメタルサイトが二つあるために、該配位子とイリジウムの結合が画一でないトリス型錯体が生成するからである。そのため目的物の収率も非常に悪く、目的物の合成が困難な結果であった。すなわち、下記の部分構造式に示すように、N−フェニル基側にもイリジウムがオルトメタル化するため、収率が悪く目的物の合成が困難である。
【0386】
【化56】

【0387】
本比較例で説明したように、[Ir(Prptz1−Ph)](略称)は、合成が困難であった。このように、1H−1,2,4−トリアゾール環の1位のフェニル基のパラ位を除く、いずれかの置換位置に置換基を持たない場合、実施例1乃至6で例示したような1H−1,2,4−トリアゾール環の1位のフェニル基のパラ位を除く、いずれかの置換位置に置換基を有している本発明の一態様である有機金属錯体と比較して、著しく収率が低い、または目的物の合成が困難であることが判明した。これは、前述のとおり、配位子HPrptz1−Ph(略称)にはオルトメタルサイトが二つあるために、該配位子とイリジウムの結合が画一でないトリス型錯体が生成するからである。すなわち、本発明の一態様である有機金属錯体は、錯体の合成反応を行う際に不純物の生成反応が抑制できるため、[Ir(Prptz1−Ph)](略称)と比較して、合成の収率が飛躍的に向上する。
【実施例9】
【0388】
本実施例では、実施の形態1で示した構造式(100)で表される本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子6、構造式(103)で表される本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子7、及び構造式(101)で表される本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子8について評価を行った。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0389】
【化57】

【0390】
発光素子6について、図19(A)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子6の作製方法を示す。
【0391】
(発光素子6)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0392】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0393】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0394】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0395】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0396】
さらに、mCP(略称)と、実施例1にて合成したトリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Mptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Mptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0397】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、[Ir(Mptz1−mp)](略称)を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Mptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0398】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0399】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0400】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子6を作製した。
【0401】
次に、発光素子7について図19(A)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子7の作製方法を示す。
【0402】
(発光素子7)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0403】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0404】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0405】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0406】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0407】
さらに、mCP(略称)と、実施例3にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−3−プロピル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Prptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Prptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0408】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、[Ir(Prptz1−mp)](略称)を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Prptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Prptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0409】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0410】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0411】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子7を作製した。
【0412】
次に、発光素子8について図19(A)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子8の作製方法を示す。
【0413】
(発光素子8)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0414】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0415】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0416】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0417】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0418】
さらに、mCP(略称)と、実施例4にて合成したトリス[3−エチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Eptz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Eptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Eptz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0419】
次に、第1の発光層1113a上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、[Ir(Eptz1−mp)](略称)を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Eptz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Eptz1−mp)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0420】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0421】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0422】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子8を作製した。
【0423】
以上により得られた発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の素子構造を表5に示す。
【0424】
【表5】

【0425】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8が大気に曝されないように封止する作業を行った後、当該発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0426】
発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の電流密度−輝度特性をそれぞれ図44、図48、及び図52に示す。図44、図48、及び図52において、横軸は、電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の電圧−輝度特性をそれぞれ、図45、図49、及び図53に示す。図45、図49、及び図53において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の輝度−電流効率特性をそれぞれ図46、図50、及び図54に示す。図46、図50、及び図54において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0427】
また、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表6に示す。
【0428】
【表6】

【0429】
発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の電流密度を、それぞれ2.5mA/cmとした際の発光スペクトルをそれぞれ、図47、図51、及び図55に示す。図47、図51、及び図55に示す通り、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の発光スペクトルはそれぞれ、465nm、463nm、及び463nmにピークを有している。
【0430】
また、表6に示す通り、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の輝度が、それぞれ606cd/m、570cd/m、及び589cd/mの時のCIE色度座標は、それぞれ(x,y)=(0.17,0.28)、(x,y)=(0.17,0.26)、及び(x,y)=(0.17,0.26)であった。
【0431】
以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子6、発光素子7、及び発光素子8は、緑色〜青色の波長領域の発光を、効率よく発光させることができると示された。
【0432】
次に、上記発光素子6、発光素子7、及び発光素子8について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図56、及び図57に示す。
【0433】
図56には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子6乃至発光素子8をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子6乃至発光素子8の輝度の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図56から、発光素子6、発光素子7、及び発光素子8の規格化輝度が70%以下になる時間は、それぞれ、53(h)、15(h)、及び60(h)となった。
【0434】
次に、図57には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度を一定の条件で発光素子6乃至発光素子8をそれぞれ駆動したのを測定することで得られた、発光素子6乃至発光素子8の電圧の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は電圧(V)を表す。図57から、発光素子6、発光素子8、発光素子7の順で経時的な電圧の上昇が小さい。
【実施例10】
【0435】
本実施例では、実施の形態1で示した構造式(112)で表される本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子9について評価を行った。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0436】
【化58】

【0437】
発光素子9について、図19(A)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子9の作製方法を示す。
【0438】
(発光素子9)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0439】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0440】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0441】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、60nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0442】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0443】
さらに、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と、実施例5にて合成したトリス[1−(5−ビフェニル)−3−メチル−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−3b)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Mptz1−3b)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−3b)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は30nmとした。
【0444】
次に、第1の発光層1113a上にmDBTBIm−II(略称)と、[Ir(Mptz1−3b)](略称)を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。ここで、mDBTBIm−II(略称)、及び[Ir(Mptz1−3b)](略称)の重量比は、1:0.08(=mDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−3b)])となるように調節した。また、第2の発光層1113bの膜厚は10nmとした。
【0445】
その後、第2の発光層1113b上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚15nmとなるように成膜し、電子輸送層1114を形成した。
【0446】
さらに、電子輸送層1114上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0447】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子9を作製した。
【0448】
以上により得られた発光素子9の素子構造を表7に示す。
【0449】
【表7】

【0450】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子9が大気に曝されないように封止する作業を行った後、当該発光素子9の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0451】
発光素子9の電流密度−輝度特性を図58に示す。図58において、横軸は、電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子9の電圧−輝度特性を図59に示す。図59において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子9の輝度−電流効率特性を図60に示す。図60において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0452】
また、発光素子9における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表8に示す。
【0453】
【表8】

【0454】
発光素子9の電流密度を、2.5mA/cmとした際の発光スペクトルを、図61に示す。図61に示す通り、発光素子9の発光スペクトルは、487nmにピークを有している。
【0455】
また、表8に示す通り、発光素子9の輝度が、539cd/mの時のCIE色度座標は、(x,y)=(0.24,0.48)であった。
【0456】
以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子9は、緑色〜青色の波長領域の発光を、効率よく発光させることができると示された。
【0457】
次に、上記発光素子9について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図62、及び図63に示す。
【0458】
図62には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子9を駆動したのを測定することで得られた、発光素子9の輝度の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図62から、発光素子9の規格化輝度が70%以下になる時間は、39(h)となった。
【0459】
次に、図63には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度を一定の条件で発光素子9を駆動したのを測定することで得られた、発光素子9の電圧の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は電圧(V)を表す。図63から、先の実施例9に示した発光素子6乃至発光素子8と比較し、本実施例で作製した発光素子9は、経時的な電圧の上昇が小さいことが確認された。
【実施例11】
【0460】
本実施例では、実施の形態1で示した構造式(128)で表される本発明の一態様である有機金属錯体を発光物質として用いた発光素子10、及び発光素子11について評価を行った。なお、発光素子10、及び発光素子11の違いとしては、本発明の一態様である有機金属錯体を導入したホスト材料、及び素子構造が異なる。本実施例で用いた材料の化学式を以下に示す。
【0461】
【化59】

【0462】
発光素子10について、図19(C)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子10の作製方法を示す。
【0463】
(発光素子10)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0464】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0465】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0466】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、80nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0467】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0468】
さらに、mCP(略称)と、実施例6にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mntz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に発光層1113を形成した。ここで、mCP(略称)、及び[Ir(Mntz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.08(=mCP:[Ir(Mntz1−mp)])となるように調節した。また、発光層1113の膜厚は40nmとした。
【0469】
次に、発光層1113上に2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)を蒸着し、発光層1113上に第1の電子輸送層1114aを形成した。また、第1の電子輸送層1114aの膜厚は20nmとした。
【0470】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0471】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0472】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子10を作製した。
【0473】
以上により得られた発光素子10の素子構造を表9に示す。
【0474】
【表9】

【0475】
次に、発光素子11について図19(D)を用いて説明する。以下に、本実施例の発光素子11の作製方法を示す。
【0476】
(発光素子11)
まず、基板1100上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法にて成膜し、第1の電極1101を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極面積は2mm×2mmとした。
【0477】
次に、基板1100上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。
【0478】
その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板1100を30分程度放冷した。
【0479】
次に、第1の電極1101が形成された面が下方となるように、第1の電極1101が形成された基板1100を真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定し、10−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極1101上に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)と酸化モリブデン(VI)を共蒸着することで、正孔注入層1111を形成した。その膜厚は、80nmとし、CBP(略称)と酸化モリブデンの比率は、重量比で4:2(=CBP:酸化モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で、複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0480】
次に、正孔注入層1111上に、1,3−ビス(N−カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)を20nmの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層1112を形成した。
【0481】
さらに、2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq−II)と、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)と、実施例6にて合成したトリス[1−(2−メチルフェニル)−3−メチル−5−(2−ナフチル)−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mntz1−mp)])を共蒸着し、正孔輸送層1112上に第1の発光層1113aを形成した。ここで、2mDBTPDBq−II(略称)、PCBA1BP(略称)、及び[Ir(Mntz1−mp)](略称)の重量比は、1:0.3:0.08(=2mDBTPDBq−II:PCBA1BP:[Ir(Mntz1−mp)])となるように調節した。また、第1の発光層1113aの膜厚は20nmとした。
【0482】
次に、第1の発光層1113a上に、2mDBTPDBq−II(略称)と、[Ir(Mntz1−mp)](略称)を共蒸着し、第1の発光層1113a上に第2の発光層1113bを形成した。また、第2の発光層1113bの膜厚は20nmとした。
【0483】
次に、第2の発光層1113b上に、2mDBTPDBq−II(略称)を蒸着し、第2の発光層1113b上に第1の電子輸送層1114aを形成した。また、第1の電子輸送層1114aの膜厚は20nmとした。
【0484】
その後、第1の電子輸送層1114a上にバソフェナントロリン(略称:BPhen)を膜厚20nmとなるように成膜し、第2の電子輸送層1114bを形成した。
【0485】
さらに、第2の電子輸送層1114b上に、フッ化リチウム(LiF)を1nmの膜厚で蒸着し、電子注入層1115を形成した。
【0486】
最後に、陰極として機能する第2の電極1103として、アルミニウムを200nmの膜厚となるように蒸着することで、本実施例の発光素子11を作製した。
【0487】
以上により得られた発光素子11の素子構造を表10に示す。
【0488】
【表10】

【0489】
窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子10、及び発光素子11が大気に曝されないように封止する作業を行った後、当該発光素子10、及び発光素子11の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0490】
発光素子10、及び発光素子11の電流密度−輝度特性をそれぞれ図64、及び図68に示す。図64、及び図68において、横軸は、電流密度(mA/cm)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子10、及び発光素子11の電圧−輝度特性をそれぞれ、図65、及び図69に示す。図65、及び図69において、横軸は電圧(V)を、縦軸は輝度(cd/m)を表す。また、発光素子10、及び発光素子11の輝度−電流効率特性をそれぞれ図66、及び図70に示す。図66、及び図70において、横軸は輝度(cd/m)を、縦軸は電流効率(cd/A)を表す。
【0491】
また、発光素子10、及び発光素子11における輝度1000cd/m付近のときの電圧(V)、電流密度(mA/cm)、CIE色度座標(x、y)、輝度(cd/m)、電流効率(cd/A)、外部量子効率(%)を表11に示す。
【0492】
【表11】

【0493】
発光素子10、及び発光素子11の電流密度を、それぞれ2.5mA/cmとした際の発光スペクトルをそれぞれ、図67、及び図71に示す。図67、及び図71に示す通り、発光素子10、及び発光素子11の発光スペクトルはそれぞれ、536nm、及び539nmにピークを有している。
【0494】
また、表11に示す通り、発光素子10、及び発光素子11の輝度が、それぞれ954cd/m、704cd/mの時のCIE色度座標は、それぞれ(x,y)=(0.41,0.58)、及び(x,y)=(0.42,0.57)であった。
【0495】
以上のように、本発明の一態様の有機金属錯体を用いた発光素子10、及び発光素子11は、高い発光効率が得られた。
【0496】
次に、上記発光素子11について、信頼性試験の評価を行った。信頼性試験の結果を図72、及び図73に示す。
【0497】
図72には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度一定の条件で発光素子11を駆動したのを測定することで得られた、発光素子11の輝度の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を表す。図72から、発光素子11の規格化輝度が70%以下になる時間は、103(h)となった。
【0498】
次に、図73には、初期輝度を300cd/mに設定し、電流密度を一定の条件で発光素子11を駆動したのを測定することで得られた、発光素子11の電圧の時間変化が示されている。横軸は素子の駆動時間(h)を、縦軸は電圧(V)を表す。図73から、先の実施例9に示した発光素子6乃至発光素子8と比較し、本実施例で作製した発光素子11は、経時的な電圧の上昇が小さいことが確認された。
【0499】
(参考例1)
上記実施例で用いた2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成方法について具体的に説明する。mDBTBIm−IIの構造を以下に示す。
【0500】
【化60】

【0501】
<2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成>
2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)の合成スキームを(f−1)に示す。
【0502】
【化61】

【0503】
2−(3−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール1.2g(3.3mmol)と、ジベンゾチオフェン−4−ボロン酸0.8g(3.3mmol)と、トリ(オルト−トリル)ホスフィン50mg(0.2mmol)を50mLの三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に2.0mmol/L炭酸カリウム水溶液3.3mLと、トルエン12mLと、エタノール4mLを加え、減圧下で攪拌することにより脱気した。この混合物に酢酸パラジウム(II)7.4mg(33μmol)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌した。
【0504】
所定時間経過後、得られた混合物の水層をトルエンで抽出し、有機層を得た。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、トルエンを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物を高速液体カラムクロマトグラフィーにより精製した。高速液体カラムクロマトグラフィーはクロロホルムを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒で再結晶したところ、目的物である淡黄色粉末を収量0.8g、収率51%で得た。
【0505】
得られた淡黄色粉末0.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、淡黄色粉末を215℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量0.6g、収率82%で得た。
【0506】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)が得られたことがわかった。
【0507】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ=7.23−7.60(m,13H)、7.71−7.82(m,3H)、7.90−7.92(m,2H)、8.10−8.17(m,2H)。
【符号の説明】
【0508】
101 第1の電極
102 EL層
103 第2の電極
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
213 第1の発光層
214 分離層
215 第2の発光層
305 電荷発生層
401 基板
402 絶縁層
403 第1の電極
404 隔壁
405 開口部
406 隔壁
407 EL層
408 第2の電極
501 基板
503 走査線
505 領域
506 隔壁
508 データ線
509 接続配線
510 入力端子
511a FPC
511b FPC
512 入力端子
601 素子基板
602 画素部
603 駆動回路部
604 駆動回路部
605 シール材
606 封止基板
607 配線
608 FPC
609 nチャネル型TFT
610 pチャネル型TFT
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 陽極
614 絶縁物
615 EL層
616 陰極
617 発光素子
618 空間
700 第1のEL層
701 第2のEL層
801 照明装置
802 照明装置
803 卓上照明器具
1100 基板
1101 第1の電極
1103 第2の電極
1111 正孔注入層
1112 正孔輸送層
1113 発光層
1113a 第1の発光層
1113b 第2の発光層
1114 電子輸送層
1114a 第1の電子輸送層
1114b 第2の電子輸送層
1114c 第3の電子輸送層
1115 電子注入層
7100 テレビジョン装置
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7501 照明部
7502 傘
7503 可変アーム
7504 支柱
7505 台
7506 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(G1)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化1】

(式中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【請求項2】
一般式(G2)で表される有機金属錯体。
【化2】

(式中、Arは、炭素数6〜13のアリーレン基を表す。また、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、前記中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。)
【請求項3】
一般式(G3)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化3】

(式中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【請求項4】
一般式(G4)で表される有機金属錯体。
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R〜Rは、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表し、R、R、R、Rの少なくとも一つに炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基を表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、前記中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。)
【請求項5】
一般式(G5)で表される構造を含む有機金属錯体。
【化5】

(式中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。)
【請求項6】
一般式(G6)で表される有機金属錯体。
【化6】

(式中、Rは、炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、または置換もしくは無置換フェニル基のいずれかを表す。また、R〜R10は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、炭素数1〜4のハロアルキル基、ハロゲン基、またはフェニル基のいずれかを表す。また、Mは中心金属であり、第9族元素、または第10族元素のいずれかを表す。また、前記中心金属Mが第9族元素の時はn=3であり、第10族元素の時はn=2である。)
【請求項7】
一対の電極間に、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の有機金属錯体を有する発光素子。
【請求項8】
一対の電極間に発光層を有し、
前記発光層は請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の有機金属錯体を有する発光素子。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項10】
請求項7又は請求項8に記載の発光素子を有する電子機器。
【請求項11】
請求項7又は請求項8に記載の発光素子を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図66】
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【図67】
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【図68】
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【図69】
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【図70】
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【図71】
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【図72】
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【図73】
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【公開番号】特開2013−40159(P2013−40159A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255768(P2011−255768)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】