有機電界発光用基板及び有機電界発光装置
【課題】基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置の提供。
【解決手段】厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層とを少なくとも有する有機電界発光用基板である。該バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する態様、前記微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである態様などが好ましい。
【解決手段】厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層とを少なくとも有する有機電界発光用基板である。該バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する態様、前記微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである態様などが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光用基板、及び該有機電界発光用基板を用いた有機電界発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光装置は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイ、照明の用途に期待されている。例えば、有機電界発光ディスプレイは、従来のCRT、LCDと比較して視認性が高く、視野角依存性がない等の表示性能上の利点を有している。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できる利点もある。その一方、有機電界発光照明は、軽量化、薄層化が可能であるとの利点に加え、フレキシブルな基板を用いることでこれまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を有している。
【0003】
このような有機電界発光装置において、光取り出し効率を向上させるため、光取り出し層を設けることが数多く提案されている。
例えば特許文献1には、基材の一の面にバリア層と、基材の他の面に高屈折率凹凸層とを有する発光装置が提案されている。この提案の段落〔0008〕には、高屈折率凹凸層が微粒子層であってもよいと記載されている。
しかし、この提案の高屈折率凹凸層は、色度変化の角度依存性が小さく、スペクトルの変調、角度依存性を十分に抑制することができない。また、光取り出しにおいても単純な凹凸層では効果が小さく、凹凸層の形成され方にバラツキがあり、光取り出し効率及び色度変化の角度依存性についてもバラツキが生じるおそれがある。更に、この提案では、光取り出し側の最表面が平坦でないため、異物が付き易く、前記異物による遮蔽等により光取り出し効率が低下してしまうという問題がある。
【0004】
したがって、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−20746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板、及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光用基板である。
<2> バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する前記<1>に記載の有機電界発光用基板である。
<3> 有機層と無機層との合計積層数が2層以上である前記<2>に記載の有機電界発光用基板である。
<4> 微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子用基板である。
<5> 微粒子層における微粒子の分布密度が30%〜80%である前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<6> 微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は微粒子層の光出射面に平坦化層を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<7> 更に基材を有してなり、該基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機電界発光用基板を有することを特徴とする有機電界発光装置である。
<9> 有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05大きくなるように設定する前記<8>に記載の有機電界発光装置である。
【0008】
基材上に設けたバリア層の干渉効果(特にバリア層と基材の屈折率が異なる場合)によって、バリア層上に設けた有機電界発光層からの発光スペクトルに変調が生じ、特に多層化されたバリア層では、その変調が強く、色度が変化するおそれがある。このようなバリア層の厚みむらがバッチ間で生じるとバッチによって色度にずれが生じる。また、バリア層の厚みむら(位置依存性)がある場合には、発光場所によって色度が変化する状況となる。
一方、角度依存性による干渉長の変化により色度の変化が大きくなることがある。特に白色発光の場合には、色バランスが変わることで、白色が大きく変化し角度によって見え方が変化して、違和感が生じる。このような角度依存性についてもバリア層の影響が加わった場合、更に色度の変化が大きくなる可能性がある。
そこで、本発明の有機電界発光装置においては、厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有する有機電界発光用基板を用いることにより、基材の一の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ基材の他の面に設けた光取り出し効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例3の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例4の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図5】図5は、比較例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図6】図6は、比較例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図7】図7は、比較例3の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図8】図8は、比較例4の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図9】図9は、比較例5の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図10】図10は、応用例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図11】図11は、応用例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図12】図12は、バリア層無し(比較例1)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図13】図13は、バリア層有り(比較例4)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図14】図14は、バリア層と凹凸層を有するもの(比較例5)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図15】図15は、バリア層と微粒子層を有するもの(実施例4)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図16】図16は、比較例4と同構成でかつ同時に作製されたバリア層有りの有機電界発光装置である比較例4−1及び比較例4−2における発光スペクトルの差異を示すグラフである。
【図17】図17は、実施例において、バリア層付きの基板をカットし、サンプル作製する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(有機電界発光用基板)
本発明の有機電界発光用基板は、バリア層と、微粒子層とを少なくとも有し、基材、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0012】
前記有機電界発光用基板としては、例えば、基材と、該基材の一の面にバリア層と、前記基材の他の面に微粒子層とを有する態様、即ち、バリア層が、基材の有機電界発光層側の面に設けられ、微粒子層が、基材の光出射側の面に設けられることが好ましい。
【0013】
<バリア層>
前記バリア層は、厚みむらが10nm以上1,000nm以下であり、10nm〜800nmが好ましい。前記厚みむらが、10nm未満であると、前記厚みむらによる前記有機電界発光装置の色度の変化が殆ど目立たなくなり、前記微粒子層による色度の平均化効果が現れにくいことがある。一方、前記厚みむらが、1,000nmを超えると、有機電界発光層から発する可視光の波長を上回り、干渉効果による色度変化が起き難くなり、前記厚みむらが、10nm未満の場合と同様、前記微粒子層による色度の平均化効果が現れにくいことがある。
ここで、前記バリア層の厚みむらとは、1枚の基板上での前記バリア層の厚み方向の最大高低差を意味する。
前記バリア層が有機材料を塗布することにより形成される有機層である場合には厚みむらは60nm程度であり、前記バリア層が無機材料を蒸着法、スパッタ法により形成される無機層である場合には、厚みむらは15nm程度である。
前記バリア層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機層であれば300nm〜2,000nmが好ましく、800nm〜1,500nmがより好ましい。前記無機層であれば10nm〜200nmが好ましく、30nm〜150nmがより好ましい。
前記バリア層の厚みむらは、例えば、作製した前記バリア層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)などにより厚みを測定することにより求めることができる。
【0014】
前記バリア層としては、有機材料からなる有機層単独、又は無機材料からなる無機層単独であってもよいが、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有することが、前記無機層の応力緩和による剥離防止、前記無機層に発生したピンホールを埋め、水分透過率及び酸素透過率の上昇を防ぐ点で好ましい。
前記有機層と前記無機層との合計積層数は、2層以上が好ましく、4層〜11層がより好ましい。前記合計積層数が、2層未満であると、前記バリア層がピンホールにより水分透過率及び酸素透過率が上昇し、前記有機電界発光装置に影響を及ぼし、ダークスポットの発生、最悪の場合には点灯できなくなることがある。
【0015】
−無機層−
前記無機層の少なくとも1層は、2種以上の金属酸化物より構成されることが好ましい。
このような無機層は、2種以上の金属酸化物を同時にフィルム上に堆積させることにより形成することができる。
前記金属酸化物としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。コスト及び膜を形成した際の光線透過性の観点から、好ましくは、酸化珪素と酸化アルミニウムである。
【0016】
これらの酸化物薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の公知の方法を用いることができるが、2種の酸化物を割合を制御しながら同時に堆積させる点で、反応性スパッタ法、電子線加熱蒸着法及びそれらの組み合わせた方法が特に好ましい。
反応性スパッタ方式は、例えば、2つの電極上にそれぞれSiとAlの金属ターゲットを設置し、高真空中でアルゴン等の希ガスと酸素ガスを導入しながら、DCプラズマ、高周波プラズマによって金属原子を叩き出し、フィルム表面上で金属原子と酸素を反応させつつ共堆積させる方法である。
また、電子線加熱蒸着法は、Si又はSiOxの入った坩堝とAl又はAl2Oxの入った坩堝を真空チャンバー中に設置し、それぞれ電子線によって加熱蒸発させ、フィルム面上に共堆積させるものである。この場合、坩堝に入れた材料の酸化度と目標とする膜の酸化度に応じて酸素ガスを流してもよいし流さなくてもよい。
【0017】
共堆積された酸化物薄膜中の2種の金属の比率は任意に設定することができるが、1/9〜9/1の範囲が好ましい。酸化珪素と酸化アルミニウムの場合、Si/Alの比率は7/3〜2/8の範囲が好ましい。
また、各々の金属原子と酸素原子の比率も任意であるが、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少ない場合は、膜の透明度が低下したり、着色が起こったりして好ましくない。逆に酸素原子が多すぎる場合にも、膜の緻密性が低下してバリア性が低下するため好ましくない。SiOxの場合にはxの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、Al2Oxの場合、xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
前記無機層の厚みは、薄すぎるとバリア性が不十分となり、逆に厚すぎると曲げた際にクラックが入ったり、割れたりしてバリア性を著しく損なう。そこで、前記無機層の適正な厚みとしては、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜1000nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
【0018】
−有機層−
前記有機層は、いずれのポリマーでも使用することができる。以下に好ましい有機層の例とその成膜方法について示す。
【0019】
(1)ポリシロキサン
RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを加熱蒸発させた蒸気を導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、フィルム基材上にポリシロキサン薄膜として堆積させる。成膜速度が速いこと、重合開始剤が不要なこと、酸素プラズマ等で容易に親水化できるのでその後に付ける無機層との密着性が良好であること、積層バリア膜とした時の曲げ耐性に優れることなどの特徴があり、特に好ましいものである。
【0020】
(2)ポリパラキシリレン
高真空中で原料のジパラキシリレンを加熱蒸発させ、この蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。このラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導くと、フィルム基材への吸着と同時にラジカル重合反応が進行し、ポリパラキシリレンとして堆積する。この膜の特徴は、機械的、熱的、化学的な強度に優れた膜が形成されることであり、この方法も本発明には好ましい方法である。
【0021】
(3)重付加ポリマー
真空中で蒸発させたA,B二種のモノマーがA,B交互に繰り返し付加重合することでできるポリマーである。例えば、重縮合のように水、アルコールなどの低分子が脱離することはなく、本発明のような真空中でバリア膜を成膜する方法として基本的に優れている。
前記重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)、ポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。これらの中でも、透明性、材料コスト等を考慮すると、ポリ尿素が特に好ましい。
【0022】
(4)アクリル系ポリマー
アクリル系ポリマーは、硬化速度が速いこと、室温での硬化が容易であること、透明性が高いなどの特徴があり、前記有機層として好ましく用いられる。
アクリレートモノマーとしては、単官能、2官能、多官能があり、いずれも用いることができるが、これらの中から適当な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るためにブレンドすることが好ましい。単官能アクリレートしては、脂肪族、脂環式、エーテル系、環状エーテル系、芳香族系、水酸基含有、カルボキシ基含有等があり、いずれも用いることができる。
【0023】
(5)光カチオン硬化ポリマー
カチオン重合系は同じ光硬化型であるアクリレートと比べ低刺激性であるという特徴を有する。特に、エポキシ系、オキセタン系のような開環重合タイプは、硬化時の体積収縮が少ないため内部応力が小さく密着性に優れるため、本発明では特に好ましい。
前記エポキシ系としては、脂環式エポキシ系が特に好ましく、2官能性モノマー、多官能性オリゴマー、それらの混合物を好ましく用いることができる。
前記オキセタン系としては、単官能オキセタン、2官能オキセタン、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が好ましいが、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を加えた混合物、更にはエポキシ化合物との混合物も好ましい。
光カチオン硬化ポリマーの場合、光をトリガーとして硬化反応を開始させる光硬化型潜在性硬化剤を含むことができる。エポキシ系、オキセタン系の場合、通常、光酸発生剤が好ましい。前記光酸発生剤としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などが知られているが、トリアリールスルホニウム塩が最も一般的である。
また、増感剤として光ラジカル生成する化合物の併用が好ましい。増感剤としては、例えば、芳香族ケトン、フェノチアジン、ジフェニルアントラセン、ルブレン、キサントン、チオキサントン誘導体、クロロチオキサントンなどが挙げられる。これらの中でも、チオキサントン誘導体が好ましい。
【0024】
<微粒子層>
前記微粒子層は、ポリマーと、微粒子とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0025】
<<微粒子>>
前記微粒子としては、屈折率が微粒子層のポリマーの屈折率と異なり、光を散乱可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよく、2種以上の微粒子を含有することが好ましい。以下、散乱用微粒子と称することもある。
【0026】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ、などが挙げられる。
前記無機微粒子としては、例えば、ZrO2、TiO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、などが挙げられる。これらの中でも、TiO2、ZrO2、ZnO、SnO2が特に好ましい。
【0027】
前記微粒子の屈折率は、前記微粒子層のポリマーの屈折率と異なるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.55〜2.6が好ましく、1.58〜2.1がより好ましい。
前記微粒子の屈折率は、例えば、自動屈折率測定器(KPR−2000、株式会社島津製作所製)を用い、屈折液の屈折率を測定してから、精密分光計(GMR−1DA、株式会社島津製作所製)で、シュリブスキー法により測定することができる。
【0028】
前記微粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜6μmがより好ましい。前記微粒子の平均粒径が、10μmを超えると、光の殆どが前方散乱になり、散乱用微粒子による光の角度を変換する能力が低下してしまうことがある。一方、前記微粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレーリー散乱の領域に変化し、微粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、発光素子の色度が大きく変わってしまったり、光取り出し効率が低下することが予想される。
前記微粒子の平均粒径は、例えば、日機装株式会社製ナノトラックUPA−EX150等の動的光散乱法を利用した装置、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
【0029】
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、30%〜80%が好ましく、40%〜70%がより好ましい。前記体積充填率が、30%未満であると、微粒子層に入射してきた光が微粒子に散乱される確率が小さく、微粒子層の光角度を変換する能力が小さいので、微粒子層の厚みを充分に厚くしないと光取出し効率が低下することがある。また、前記微粒子層の厚みを厚くすることはコストの増加に繋がり、前記微粒子層の厚みのバラツキが大きくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じるおそれがある。一方、前記体積充填率が、80%を超えると、前記微粒子層の表面が大きく荒れ、内部にも空洞が生じることで、前記微粒子層の物理的強度が低下することがある。
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、例えば、重量測定法により測定することができる。まず、粒子比重測定装置(MARK3、株式会社ユニオン・エンジニアリング製)で粒子の比重を測定して、電子天秤(FZ−3000i、エー・アンド・デイ社製)で微粒子の重量を測定する。次に、作製した微粒子層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で微粒子層の厚みを測定し、微粒子層における微粒子の体積充填率を求めることができる。
【0030】
−高屈折率微粒子−
前記高屈折率微粒子としては、屈折率は2.0以上が好ましく、2.4〜3.0がより好ましい。;一次粒子の平均粒径は0.5nm〜100nmが好ましく、1nm〜80nmがより好ましく、1nm〜50nmが更に好ましい。
前記高屈折率微粒子の屈折率が2.0以上であれば、層の屈折率を効果的に高めることができ、前記屈折率が3.0以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。また高屈折率微粒子の一次粒子の平均粒径が100nm以下であれば、形成される微粒子層のヘイズ値が高くなって層の透明性を損なうなどの不都合が生じないので好ましく、0.5nm以上であれば高い屈折率が保持されるので好ましい。
前記高屈折率微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による平均一次粒子径で表す。平均一次粒子径はそれぞれの微粒子の最大径の平均値で表し、長軸径と短軸径を有する場合、各微粒子の長軸径の平均値を平均一次粒子径とする。
【0031】
前記高屈折率微粒子としては、例えば、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,La、W、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。本発明でより好ましい高屈折率微粒子はTi、Zr、Ta、In、及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物もしくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0032】
前記高屈折率微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない(以下このような元素を含有元素ということがある)。
前記含有元素としては、例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの含有元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを5質量%〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0033】
前記高屈折率微粒子は、含有元素としてCo、Zr、及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。これらの中でも、Coが特に好ましい。
Co、Al、及びZrの総含有量は、Tiに対し0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.2質量%〜7質量%が更に好ましく、0.3質量%〜5質量%が特に好ましく、0.5質量%〜3質量%が最も好ましい。
前記含有元素Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部又は表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが更に好ましい。これらの含有元素のうち金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0034】
他の好ましい高屈折率微粒子としては、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、前記酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、例えば、Ta、Zr、In、Nd、Sb、Sn、Biなどが挙げられる。これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
前記特定の複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が特に好ましい。
【0035】
ドープされた金属イオンは、金属イオンとして、又は金属原子のいずれの形態で存在してもよく、前記複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することができる。複合酸化物の表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0036】
前記高屈折率微粒子は結晶構造を有することが好ましい。前記結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、前記特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率微粒子は、屈折率が1.9〜2.8を有することになり、好ましい。前記屈折率は、2.1〜2.8がより好ましく、2.2〜2.8が更に好ましい。このことにより、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、微粒子層自身並びに微粒子層と接する上/下の両層のそれぞれの耐候性を著しく改良することができる。
【0037】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法;イオン注入法〔例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」株式会社シ−エムシー、1989年刊行、青木康、「表面科学」18巻(5)、262頁、1998、安保正一等、「表面科学」20巻(2)、60頁、1999等記載〕などに従って製造できる。
【0038】
前記高屈折率微粒子は表面処理してもよい。前記表面処理とは、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施するもので、これにより高屈折率微粒子表面の濡れ性が調整され有機溶媒中での微粒子化、微粒子層用組成物中での分散性及び分散安定性が向上する。粒子表面に物理化学的に吸着させる無機化合物としては、例えば、ケイ素を含有する無機化合物(SiO2等)、アルミニウムを含有する無機化合物[Al2O3、Al(OH)3等]、コバルトを含有する無機化合物(CoO2、Co2O3,Co3O4等)、ジルコニウムを含有する無機化合物[ZrO2、Zr(OH)4等]、鉄を含有する無機化合物(Fe2O3等)、などが挙げられる。
【0039】
前記表面処理に用いる有機化合物としては、従来公知の金属酸化物、無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0040】
具体的には、高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物が挙げられる。前記高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基としては、例えば、カルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、これらを分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えば、EO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げられる。
【0041】
前記カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば、特開2002−9908号公報、特開2001−310423号公報の段落番号〔0011〕〜〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの表面処理に用いる化合物は、2種類以上を併用することもできる。
【0042】
前記高屈折率微粒子は、これをコアとして他の無機化合物からなるシェルを形成したコア/シェル構造の微粒子であることも好ましい。前記シェルとしては、Al、Si、及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
【0043】
前記高屈折率微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状又は不定形状が好ましい。前記高屈折率微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
前記高屈折率微粒子の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、ポリマーの屈折率を1.55〜1.95とすることができる範囲が好ましい。
【0044】
<<ポリマー>>
前記ポリマーとしては、(A)有機バインダー、並びに(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物、の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0045】
−(A)有機バインダー−
前記(A)の有機バインダーとしては、(1)従来公知の熱可塑性樹脂、
(2)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(3)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、から形成されるバインダーが挙げられる。
【0046】
前記(1)、(2)又は(3)の有機バインダーと、前記微粒子と、前記高屈折微粒子とを含有する微粒子層用組成物が調製されることが好ましい。この微粒子層用組成物は、支持体上に塗布され、塗膜が形成された後、バインダー成分に応じた方法で硬化されて微粒子層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば、加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起させる方法が挙げられる。なかでも、前記(3)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0047】
更に、微粒子層用組成物を塗布と同時又は塗布後に、微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0048】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が高屈折率微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0049】
{熱可塑性樹脂(A−1)}
前記(1)の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂、などが挙げられる。
【0050】
{反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ(A−2)}
前記(2)の反応性硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。
前記熱硬化型樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
前記電離放射線硬化型樹脂には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0051】
これらの反応性硬化性樹脂に必要に応じて、架橋剤(例えば、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(例えば、アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
【0052】
{バインダー前駆体と重合開始剤との組み合わせ(A−3)}
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である前記(3)の組み合わせを用いて、光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0053】
前記バインダーの前駆体である光硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性官能基、及びカチオン重合性官能基のいずれでもよい。
【0054】
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が特に好ましく、分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが特に好ましい。
【0055】
前記ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)又はそれらの混合物、あるいはそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0056】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)、そのエステル類、アミド類などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が特に好ましい。
【0057】
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、アミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。更に別の例として、前記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0058】
脂肪族多価アルコール化合物としては、例えば、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)、例として、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号〔0026〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。
【0059】
その他の重合性エステルとしては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報等に記載の脂肪族アルコール系エステル類、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0060】
更に脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
【0061】
更にまた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻7号 300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
次に、前記微粒子層のバインダーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0063】
前記カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。前記カチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0064】
前記カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、2〜5個がより好ましい。前記化合物の平均分子量は3,000以下が好ましく、200〜2,000がより好ましく、400〜1,500が更に好ましい。前記平均分子量が該下限値以上であれば、皮膜形成過程での揮発が問題となるなどの不都合が生じることがなく、また該上限値以下であれば、微粒子層用組成物との相溶性が悪くなるなどの問題を生じないので好ましい。
【0065】
前記エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0066】
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。更に、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0067】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも1個の芳香核を有する1価もしくは多価のフェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加体のモノもしくはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕に記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0068】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。前記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0069】
環状チオエーテル化合物としては、前記エポキシ化合物のエポキシ環の代わりに、チオエポキシ環を有する化合物が挙げられる。
【0070】
環状エーテル化合物としてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0071】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば、特表2000−506908号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0072】
ビニル炭化水素化合物としては、例えば、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",32巻2895頁(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",33巻2493頁(1995年)記載等}、ビニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻1015頁(1996年)、特開2002−29162号公報等記載}、イソプロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻2051頁(1996年)記載等}等を挙げることができる。これらは2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0073】
また、前記多官能性化合物は、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕に記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0074】
以上述べたラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比率で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0075】
次に、前記(3)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0076】
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記重合開始剤は、光及び/又は熱照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物であることが好ましい。前記光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0077】
前記ラジカルを発生する化合物は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。公知の重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0078】
前記ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、有機過酸化化合物(特開2001−139663号公報等)、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、特開平1−304453号公報等記載)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(米国特許第3,479,185号明細書等記載)、ジスルホン化合物(特開平5−239015号公報、特開昭61−166544号公報等)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機ホウ酸化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0079】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の"Bull.Chem.Soc Japan",42巻2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Hutt,"J.Heterocyclic Chemistry",1巻(3号)、(1970年)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0080】
前記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60ページ〜62ページ〔株式会社技術情報協会刊、1991年〕、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、特開平11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物などが挙げられる。また、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0081】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin,"Rad.Tech'98.Proceeding April 19〜22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0082】
これらのラジカル発生化合物は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜25質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記添加量の範囲において、微粒子層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0083】
次に、光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
前記光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、前記光酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、オニウム化合物などが挙げられる。これらの中でも、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が特に好ましい。前記有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物の具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0084】
前記オニウム化合物としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば、特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物、などが挙げられる。
【0085】
前記酸発生剤としては、オニウム塩が特に好適に用いられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0086】
前記オニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0087】
前記光酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0088】
これらの酸発生剤は、1種のみをそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記酸発生剤の添加量は、全カチオン重合性モノマーの全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。前記添加量が、前記範囲において、微粒子層用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0089】
前記微粒子層用組成物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5質量%〜10質量%又はカチオン重合開始剤を1質量%〜10質量%の割合で含有していることが好ましく、ラジカル重合開始剤を1質量%〜5質量%、又はカチオン重合開始剤を2質量%〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0090】
前記微粒子層用組成物には、紫外線照射により重合反応を行う場合、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。これらの増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、アミノ酸(例えば、グリシン等)、有機アミン(例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン等)などが挙げられる。
【0091】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10,000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750nm〜1,400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20,000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。
【0092】
前記近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。市販の染料並びに、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)シーエムシー、「特殊機能色素」〔池森・柱谷編集、1986年、株式会社シーエムシー発行〕、J.FABIAN,"Chem.Rev.",92巻1197〜1226頁(1992年)}、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、並びにExciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ及び特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0093】
(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物又はこの有機金属化合物の部分縮合物
前記マトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いて、ゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。
【0094】
前記有機金属化合物としては、例えば、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
前記加水分解可能な官能基な基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。好ましい有機金属化合物は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物又はその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
【0095】
一般式(2):(R21)β−Si(Y21)4−β
ただし、前記一般式(2)中、R21は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。Y21は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR22基、OCOR22基を表す。ここで、R22は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。βは0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは1である。ただし、βが0の場合は、Y21はOR22基又はOCOR22基を表す。
【0096】
前記一般式(2)において、R21の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。R21のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0097】
置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(例えば、フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ等)、アルケニル基(例えば、ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{例えば、アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0098】
これらの置換基のうちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイル}、重合性のアシルアミノ基(例えば、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0099】
前記のようにR22は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、アルキル基は特に限定はないが、例えばR21の脂肪族基と同じものが挙げられ、アルキル基中の置換基の説明はR21と同じである。
【0100】
前記一般式(2)の化合物の含有量は、前記微粒子層用組成物の全固形分の10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0101】
前記一般式(2)の化合物としては、例えば特開2001−166104号公報の段落番号〔0054〕〜〔0056〕に記載の化合物が挙げられる。
【0102】
前記微粒子層用組成物において、前記有機バインダーは、シラノール基を有するものであることが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、微粒子層の物理強度、耐薬品性、耐候性が更に改良され、好ましい。前記シラノール基は、例えば、微粒子層用組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)、重合開始剤、微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を該微粒子層用組成物に配合し、この微粒子層用組成物を透明支持体上に塗布して、前記の分散剤、多官能モノマー、多官能オリゴマー、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応又は重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0103】
前記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。前記触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等の金属アルコキシド類;β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類などが挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号〔0071〕〜〔0083〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0104】
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜50質量%がより好ましく、0.5質量%〜10質量%が更に好ましい。なお、反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0105】
前記微粒子層用組成物において、マトリックスは特定の極性基を有することも好ましい。前記特定の極性基としては、例えば、アニオン性基、アミノ基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。前記アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0106】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが特に好ましい。また、ケトン溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
前記ケトン系溶媒の含有量は、前記微粒子層用組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
【0107】
特定の極性基を有するマトリックスは、例えば、微粒子層用組成物に、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ、及び特定の極性基を有し、かつ架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、更に所望により、特定の極性基及び、架橋又は重合性の官能基を有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー及び/又は一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0108】
前記特定の極性基を有する単官能性モノマーは、微粒子層用組成物の中で微粒子の分散助剤として機能することができ、好ましい。更に、塗布後、分散剤、多官能モノマー、多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで微粒子層における微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた微粒子層を作製することができる。
【0109】
前記微粒子層用組成物を、前記透明基板上に、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光及び/又は熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化から有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理することも好ましい。
【0110】
光照射の光源は、紫外線光域又は近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0111】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm2〜100mW/cm2程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は100mJ/cm2〜1,000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0112】
前記微粒子層の平均厚みは、5μm〜200μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。前記平均厚みが、5μm未満であると、微粒子層による十分な光角度変換がなく、十分な光取出し効率が得られないことがあり、200μmを超えると、光が散乱されすぎて、後方散乱の光が増え、有機電界発光層内部に戻る光が多くなり、光取出し効率が低下する、また、前記微粒子層が厚いことは高コストに繋がり、前記微粒子層の厚みのバラツキが大きくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じるおそれがある。
前記平均厚みは、例えば、微粒子層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定し、微粒子層の厚みを求めることができる。
【0113】
前記微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は前記微粒子層の光出射面に平坦化層を有すること好ましい。これにより、微粒子の密度を増加させても後方散乱の増加を抑制できる。また、平坦化することで異物付着が防止される。更に、ロール状に巻き取った場合、表面(微粒子層側)が平坦であるため、裏面(バリア層)と当接した場合でも傷付けることがないという利点がある。
【0114】
前記微粒子層の光出射面を平坦にする方法としては、例えば前記微粒子層の形成に使用した材料から前記散乱用微粒子を取り除いたものを硬化後した前記微粒子層上に積層する方法などが挙げられる。
【0115】
前記平坦化層としては、前記微粒子層において前記散乱用微粒子を含まない組成であることが好ましく、前記微粒子層と同様にして形成することができる。
前記平坦化層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜50μmが好ましい。前記平坦化層の厚みが、5μm未満であると、突出した元の微粒子層の表面を平坦化できず、50μmを超えると、前記平坦化層の光の吸収により光取り出し能が低下してしまうことがある。
【0116】
−基材−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記低屈折率層転写シートの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0117】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましく、ロールでの塗布適性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
前記基材の表面には、その上に設けるバリア層及び微粒子層との密着性を向上させるため、表面活性化処理を行うことが好ましい。前記表面活性化処理としては、例えばグロー放電処理、コロナ放電処理などが挙げられる。
【0118】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0119】
前記有機電界発光用基板の水分透過度は、1×10−3g/m2/day以下が好ましく、1×10−4g/m2/day以下がより好ましい。
前記水分透過度は、例えば、G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display ResearchConference 1435-1438頁に記載の方法(カルシウムを用いた測定法)により測定することができる。
前記有機電界発光用基板の酸素透過度は、1cc/m2/day以下が好ましく、0.1cc/m2/day以下がより好ましい。
前記酸素透過度は、例えば、酸素透過率測定装置(MOCON社製、MOCON酸素透過率測定装置、OX−TRAN 1/50A)により測定することができる。
【0120】
本発明の有機電界発光用基板は、バリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができるので、各種有機電界発光装置などに用いることができるが、以下の本発明の有機電界発光装置に用いることが特に好ましい。
【0121】
(有機電界発光装置)
本発明の有機電界発光装置は、本発明の前記有機電界発光用基板を少なくとも有し、有機電界発光層、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0122】
−有機電界発光層−
前記有機電界発光層としては、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0123】
前記有機電界発光層は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0124】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0125】
−−発光層−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、発光材料を含む。前記発光層は発光材料のみで構成されていてもよいし、ホスト材料と発光材料の混合層でもよい(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。前記発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上が混合されていてもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0126】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2nm〜500nmが好ましく、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmがより好ましく、5nm〜100nmが更に好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0127】
−−−発光材料−−−
前記発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
前記発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜50質量%含有されることがより好ましい。
【0128】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、白金などが挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
【0129】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0130】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0131】
これらの中でも、燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の各公報に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。これらの中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体がより好ましく、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が更に好ましく、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0132】
前記燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化1】
【0134】
【化2】
【0135】
【化3】
【0136】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体、希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0137】
−−−ホスト材料−−−
前記ホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0138】
<正孔輸送性ホスト材料>
前記正孔輸送性ホスト材料としては、例えば、以下の材料を挙げることができる。即ち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物がより好ましい。
【0139】
<電子輸送性ホスト材料>
前記電子輸送性ホスト材料としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ル、ベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。これらの中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。前記金属錯体電子輸送性ホストとしては、例えば特開2002−235076号公報、特開2004−214179号公報、特開2004−221062号公報、特開2004−221065号公報、特開2004−221068号公報、特開2004−327313号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
前記正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
【化4】
【0142】
【化5】
【0143】
【化6】
【0144】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボンなどを含有する層であることが好ましい。
【0145】
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。前記正孔注入層、又は正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜20質量%が更に好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0146】
前記正孔注入層、又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0147】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0148】
前記電子注入層、又は電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。前記電子注入層、又は電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Li等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属、還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%が更に好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0149】
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0150】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚みは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが更に好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0151】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを含む。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0152】
前記電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その陽極、陰極において、前記反射金属、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0153】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0154】
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0155】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0156】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着、スパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法、印刷法によって行ってもよい。
【0157】
本発明の有機電界発光装置のように微粒子層等の拡散効果のある層を基板上に設けた場合、正面の色度が大きく変化する。拡散効果によりあらゆる角度の光(角度依存性により色度が異なる)が集まるためである。基本的には赤色から青色(色温度が上がる方向)に動く。よって、少し色温度を低めに設定することが好ましい。例えば、CIE表色系の(x,y)の色度表記で(0.31、0.31)(白)狙いであれば、有機電界発光装置単独の色度を(0.34、0.33)付近の色度x、色度yを高めの値に設定して、設計、作製すると、微粒子層を付けた状態では狙いの(0.31、0.31)付近に来ると予測される。
したがって、有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05高くなるように設定することが好ましい。
【0158】
ここで、図1は、本発明の有機電界発光装置の一例を示す概略図である。この図1の有機電界発光装置は、基材1の有機電界発光層側の面にバリア層3と、基材1の光出射面側の面に微粒子層2とを有する有機電界発光用基板を有し、
この有機電界発光用基板のバリア層3上に、電極(ITO)4と、有機層5と、電極6とを有し、これらが封止缶7で封止されたものである。
【0159】
前記有機電界発光装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成することができる。
前記有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば、「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタ層を通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
この場合は、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の画素ごとにレーザーパワー、厚みを適宜調整することが好ましい。
また、上記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色(B)、緑色(G)、及び赤色(R)の有機電界発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0160】
前記有機電界発光装置は、例えば、照明機器、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0161】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0162】
(調製例1)
<混合塗布液1の調製方法>
蒸留水179質量部、界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名:ナロアクティーCL−95)46質量部、ナノサイズの微粒子(日産化学株式会社製、スノーテックスZL、固形分40質量%)114質量部、平均粒径2μmの微粒子(日産化学株式会社製、オプトビーズ2000M、固形分100質量%)275質量部、水性ポリウレタン(三井化学株式会社製、タケラックシリーズW−6010、固形分33質量%)359質量部、及び硬化剤(日清紡績株式会社製、V−02−L2、固形分40質量%)27質量部を混合し、スターラーを用い攪拌して、混合塗布液1を調製した。
【0163】
(調製例2)
<混合塗布液2の調製>
界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名:ナロアクティーCL−95)59質量部、水性ポリウレタン(三井化学株式会社製、タケラックシリーズW−6010、固形分33質量%)992質量部、及び硬化剤(日清紡績株式会社製、V−02−L2、固形分40質量%)59質量部を混合して、混合塗布液2を調製した。
【0164】
(実施例1)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、平均厚みが50nmとなるようにAl2O3を真空スパッタ法で成膜して、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、再度130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例1の有機電界発光用基板を作製した。
【0165】
作製した有機電界発光用基板について、以下のようにして、バリア層の厚みむらを測定したところ、平均厚み±7nmとなり、14nmの厚みむらが生じていた。
<バリア層の厚みむらの測定>
バリア層の厚みむらは、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定した。なお、厚みむらの値は9箇所測定の平均値で示した。
【0166】
−有機電界発光装置の作製−
まず、作製した実施例1の有機電界発光用基板のバリア層上に、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)を厚みが100nmとなるように成膜した。
次に、前記ITO上に、下記構造式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)に、下記構造式で表されるF4−TCNQを0.3質量%ドープした正孔注入層を厚みが150nmになるように共蒸着した。
【化7】
【化8】
【0167】
次に、前記正孔注入層上に、正孔輸送層としてα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)を厚みが7nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
次に、前記正孔輸送層上に、下記構造式で表される有機材料Aを真空蒸着して、厚み3nmの第2の正孔輸送層を形成した。
【化9】
【0168】
次に、第2の正孔輸送層上に、ホスト材料として下記構造式で表される有機材料Bと、該有機材料Bに対して40質量%の燐光発光材料である下記構造式で表される発光材料Aをドープした発光層を30nmの厚みに真空蒸着した。
【化10】
【化11】
【0169】
次に、白色発光層上に電子輸送層として下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III))を厚みが39nmとなるように真空蒸着した。
【化12】
【0170】
次に、電子輸送層上に、下記構造式で表されるBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を電子注入層として、厚みが1nmとなるように蒸着した。
【化13】
次に、電子注入層上にバッファ層としてLiFを厚みが1nm、その上にアルミニウムを電極層として厚みが100nmとなるように蒸着した。
作製した積層体を、真空から窒素雰囲気下の部屋に移し、封止缶にて封止する。なお、封止缶の内側には予め吸湿材を貼っておいた。以上により、図1に示す実施例1の有機電界発光装置を作製した。
【0171】
(実施例2)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、下記表1に示した重合性化合物(合計20質量部)と、重合開始剤(ランベルティ社製、エザキュアKTO46)とからなる組成物を乾燥平均厚みが1,000nmとなるようにメチルエチルケトンで調製して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量1.2J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。
前記有機層上に無機層(Al2O3)を平均厚みが50nmとなるようにスパッタ法により成膜し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
【0172】
【表1】
<重合性化合物F−1>
【化14】
<重合性化合物F−2>
【化15】
<重合性化合物F−3>
【化16】
<重合性化合物F−4>
【化17】
【0173】
次に、前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例2の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、無機層では平均厚み±7nmとなり、14nmの厚みむらが発生し、有機層では平均厚み±20nmとなり、40nmの厚みむらが生じており、バリア層全体としては、42nmの厚みむらが生じていた。
【0174】
−有機電界発光装置の作製−
次に、作製した実施例2の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図2に示す実施例2の有機電界発光装置を作製した。
【0175】
(実施例3)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、実施例2と同様にして、有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層の順に9層を塗布法と、スパッタ法により成膜し、バリア層を形成し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例3の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、94nmの厚みむらが生じていた。
【0176】
−有機電界発光装置の作製−
作製した実施例3の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図3に示す実施例3の有機電界発光装置を作製した。
【0177】
(実施例4)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、実施例2と同様にして、有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層の順に9層を塗布法とスパッタ法により成膜し、バリア層を形成し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を形成した。
更に、前記微粒子層上に、前記混合塗布液2をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液2を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み12.5μmの平坦化層を形成した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、101nmの厚みむらが生じていた。
【0178】
−有機電界発光装置の作製−
次に、作製した実施例4の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図4に示す実施例4の有機電界発光装置を作製した。
【0179】
(比較例1)
−有機電界発光装置の作製−
実施例1において、実施例1で作製した有機電界発光用基板の代わりにガラス基板(コーニング社製、ガラス基板Eagle XG(厚み0.7mm))を用いた以外は、実施例1と同様にして、図5に示す比較例1の有機電界発光装置を作製した。
【0180】
(比較例2)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例1における有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、15nmの厚みむらが生じていた。
次に、実施例1において、実施例1の有機電界発光用基板の代わりに比較例2の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、図6に示す比較例2の有機電界発光装置を作製した。
【0181】
(比較例3)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例2における有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例2と同様にして、比較例3の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、41nmの厚みむらが生じていた。
実施例2において、実施例2の有機電界発光用基板の代わりに比較例3の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例2と同様にして、図7に示す比較例3の有機電界発光装置を作製した。
【0182】
(比較例4)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例3の有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例3と同様にして、比較例4の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、98nmの厚みむらが生じていた。
実施例3において、実施例3の有機電界発光用基板の代わりに比較例4の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、図8に示す比較例4の有機電界発光装置を作製した。
【0183】
(比較例5)
<有機電界発光装置の作製>
実施例3の有機電界発光用基板の代わりに、以下のようにしてバリア層と凹凸層を形成した基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、図9に示す比較例5の有機電界発光装置を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、95nmの厚みむらが生じていた。
−凹凸層を形成した基板の作製−
ポリエーテルサルホンフィルム(厚み100μm)を基材として前記基材の一方の面上に、実施例3と同様に9層のバリア層を形成した。
前記基材の他方の面に、ビス(4−メタクリロイルチオ−3,5−フェニル)スルフィド(住友精化株式会社製、MPSMA)13質量部、エポキシアクリレート(昭和高分子株式会社製、VR−60−LAV)6質量部、ジエチレングリコール54質量部、酢酸エチル26質量部、及び光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE907)1質量部からなる均一な混合コート液を塗布し、120℃、10分間で加熱乾燥後、スタンピングホイル用PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーX44)を貼り合わせ、UV照射で硬化させた。
このPETフィルムを前記基材から剥がすことによって、厚み2μmの凹凸層を形成した(凹凸層の屈折率(nD)1.65、平均粗さ260nm)。
【0184】
次に、実施例1〜4及び比較例1〜5の有機電界発光装置について、以下のようにして、正面輝度及び色度の配光角度依存性、機差(基板面位置差)による色度バラツキ、水分透過度、並びに酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0185】
<正面輝度及び色度の配光角度依存性の測定>
東陽テクニカ株式会社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を各有機電界発光装置に印加して発光させた。正面輝度は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で分光放射輝度計(トプコン社製、SR−3)を用いて測定した。
基板回転時の配光分布については、分光輝度計(コニカミノルタ社製、CS−2000)を用い、配光測定時の光量分布、スペクトルを測定した。なお、配光測定時に有機電界発光装置をセットする回転ステージは自動的に回転する手製のものを使用した。一定の電流量(10mA/cm2)を前記基板に流し、発光させながら、基板(発光面)に鉛直な方向を0°とし、±80°の範囲を5°ステップで、前記分光輝度計にて光量分布及びスペクトルを測定した。得られたスペクトルからCIE表色系を用い、0°と80°それぞれの色度x値とy値を算出し、0°から80°での色度x値、y値の変化量(Δx、Δy)を求めた。
【0186】
<機差(基板面位置差)による色度バラツキ>
バリア層は基板面内に厚みむらがあるため、バリア層付きの基板の切り出し位置によってバリア層の厚みが異なる。このため、有機電界発光装置は機差(基板面での位置差)により色度が異なる(機差バラツキ)可能性がある。そこで、図17に示すように、バリア層付きの基板をカットし、何点かのサンプル(例えば図17中A、B、C、D)を作製し、機差バラツキについて測定を行った。測定は正面輝度の測定と同様にして行った。各有機電界発光装置の得られたスペクトルからCIE表色系を用い、それぞれの色度x値とy値を算出し、色度x値、y値の機差が最大となる値Δx’、Δy’(最大機差色度とおく)を求めた。
【0187】
<水分透過度の測定>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERら、SID Conference Record of the International Display Research Conference1435-1438頁に記載の方法(カルシウムを用いた測定法)を用い、温度は40℃、相対湿度は90%中で測定した。
本測定方法では、水分透過度が1.0×10−5g/m2/day以下の場合には数値精度に問題が生じるおそれがあるので、<1.0×10−5と表記した。
【0188】
<酸素透過度の測定>
酸素透過率測定装置(MOCON社製、MOCON酸素透過率測定装置 OX−TRAN 1/50A)を用い、測定した。
本測定方法では、酸素透過度が0.1cc/m2/dayが測定限度であり、測定限界以下の場合には、<0.1と表記した。
【0189】
【表2−1】
【表2−2】
【0190】
<バリア層、凹凸緩和層、又は微粒子層を設けたことによる発光スペクトルの形状変化>
図12〜図15に、比較例1、比較例4、比較例5、及び実施例4の有機電界発光装置での発光スペクトルを示す。発光スペクトルは、前記正面輝度の測定と同様に、東陽テクニカ株式会社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を各有機電界発光装置に印加して発光させ、発光面中心で10mA/cm2の電流値で分光放射輝度計(トプコン社製、SR−3)により測定した。
これらの結果から、バリア層によって変調した発光スペクトル(比較例1→比較例4)が、凹凸緩和層によって緩和され(比較例4→比較例5)、更に、微粒子層ではほぼ完全に変調成分が除去される(比較例5→実施例4)ことが認められた。
また、図16では、比較例4と同構成でかつ同時に作製されたバリア層有りの有機電界発光装置である比較例4−1と比較例4−2における発光スペクトルを示した。図16の結果から、比較例4のバリア層付き有機電界発光装置の発光スペクトル形状は、比較例4−1と比較例4−2のように同時に成膜したため基板以外の全ての構成が同一であるのにも関わらず、バリア層の厚みむらによって、発光スペクトルの形状が変化し、色度に機差によるばらつき(最大機差色度)が発生することが認められた。
【0191】
表2の結果から、実施例1の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,360cd/m2の正面輝度が得られ、微粒子層の無い比較例2の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例1の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例2に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例2に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例2の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,365cd/m2の輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例3の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例2の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例3に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例3に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例3の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,362cd/m2の輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例4の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例3の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例4に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例4の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,722cd/m2の正面輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例4の有機電界発光装置に比べて約70%程度の輝度が上昇していた。また、基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例4に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
比較例2〜4の有機電界発光装置は、比較例1と同じ電流値では輝度はほぼ同等であるが、比較例2〜4では配光の色度角度依存性が大きくなり、また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例1に比べて大きくなっている。ガラス基板には無かった、バリア層の干渉と厚みむらによる影響と推定する。
比較例5の有機電界発光装置は、比較例4との比較で、輝度は同電流値で1,884cd/m2で取り出し効率は20%弱大きくなっているが、実施例3及び4に比べて劣る結果となっている。また、配光の色度角度依存性(Δx、Δy)、最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4との比較では小さくなっているが、実施例3及び4に比べて配光の色度角度依存性、最大機差色度の抑制効果は小さい結果となっている。
【0192】
(応用例1)
−フレキシブルな有機電界発光パネルの作製−
実施例4における有機電界発光装置の作製において、アルミニウム蒸着後の積層体をCVD装置に移し、無機封止層11としてのSiN膜を厚みが3μmとなるように成膜した。成膜後、窒素雰囲気下のグローブボックスに積層体を移し、SiN膜上に固体接着層12を貼り付け、熱圧着し、更に固体接着層12上に厚み100μmのPETフィルム13を貼り付けた。固体接着層を加熱にて硬化させて、図10に示すフレキシブルな有機電界発光パネルを作製した。
【0193】
(応用例2)
−フレキシブルな有機電界発光パネルの作製−
実施例4における有機電界発光装置の作製において、アルミニウム蒸着後の積層体を窒素雰囲気下のグローブボックスに移し、積層体、電極上付近中央に充填材16、基板周囲に封止材15を塗布し、更にその上に、実施例4で作製した基板と同じ有機層と無機層が合計9層積層されたバリア層14の付いたPETフィルム(微粒子層無し)13を、バリア層側を充填材16、及び封止材15塗布側に向けて貼り付けた。充填材16、及び封止材15をUV照射及び加熱にて固化させることで、図11に示すフレキシブルな有機電界発光パネルを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明の有機電界発光用基板及び有機電界発光装置は、例えば、各種照明、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0195】
1 基材
2 微粒子層
3 バリア層
4 電極
5 有機層
6 電極
7 封止缶
8 平坦化層
9 凹凸層
10 ガラス基板
11 無機封止層
12 接着層
13 基材(PET)
14 バリア層
15 封止材
16 乾燥剤入り充填材
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光用基板、及び該有機電界発光用基板を用いた有機電界発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光装置は、自発光型の表示装置であり、ディスプレイ、照明の用途に期待されている。例えば、有機電界発光ディスプレイは、従来のCRT、LCDと比較して視認性が高く、視野角依存性がない等の表示性能上の利点を有している。また、ディスプレイを軽量化、薄層化できる利点もある。その一方、有機電界発光照明は、軽量化、薄層化が可能であるとの利点に加え、フレキシブルな基板を用いることでこれまで実現できなかった形状の照明を実現できる可能性を有している。
【0003】
このような有機電界発光装置において、光取り出し効率を向上させるため、光取り出し層を設けることが数多く提案されている。
例えば特許文献1には、基材の一の面にバリア層と、基材の他の面に高屈折率凹凸層とを有する発光装置が提案されている。この提案の段落〔0008〕には、高屈折率凹凸層が微粒子層であってもよいと記載されている。
しかし、この提案の高屈折率凹凸層は、色度変化の角度依存性が小さく、スペクトルの変調、角度依存性を十分に抑制することができない。また、光取り出しにおいても単純な凹凸層では効果が小さく、凹凸層の形成され方にバラツキがあり、光取り出し効率及び色度変化の角度依存性についてもバラツキが生じるおそれがある。更に、この提案では、光取り出し側の最表面が平坦でないため、異物が付き易く、前記異物による遮蔽等により光取り出し効率が低下してしまうという問題がある。
【0004】
したがって、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置の提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−20746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板、及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光用基板である。
<2> バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する前記<1>に記載の有機電界発光用基板である。
<3> 有機層と無機層との合計積層数が2層以上である前記<2>に記載の有機電界発光用基板である。
<4> 微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子用基板である。
<5> 微粒子層における微粒子の分布密度が30%〜80%である前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<6> 微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は微粒子層の光出射面に平坦化層を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<7> 更に基材を有してなり、該基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかである前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光用基板である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機電界発光用基板を有することを特徴とする有機電界発光装置である。
<9> 有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05大きくなるように設定する前記<8>に記載の有機電界発光装置である。
【0008】
基材上に設けたバリア層の干渉効果(特にバリア層と基材の屈折率が異なる場合)によって、バリア層上に設けた有機電界発光層からの発光スペクトルに変調が生じ、特に多層化されたバリア層では、その変調が強く、色度が変化するおそれがある。このようなバリア層の厚みむらがバッチ間で生じるとバッチによって色度にずれが生じる。また、バリア層の厚みむら(位置依存性)がある場合には、発光場所によって色度が変化する状況となる。
一方、角度依存性による干渉長の変化により色度の変化が大きくなることがある。特に白色発光の場合には、色バランスが変わることで、白色が大きく変化し角度によって見え方が変化して、違和感が生じる。このような角度依存性についてもバリア層の影響が加わった場合、更に色度の変化が大きくなる可能性がある。
そこで、本発明の有機電界発光装置においては、厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有する有機電界発光用基板を用いることにより、基材の一の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ基材の他の面に設けた光取り出し効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、基材の一の面に微粒子層を設けると共に、基材の他の面に設けたバリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができる有機電界発光用基板及び該有機電界発光用基板を有する有機電界発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例3の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例4の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図5】図5は、比較例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図6】図6は、比較例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図7】図7は、比較例3の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図8】図8は、比較例4の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図9】図9は、比較例5の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図10】図10は、応用例1の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図11】図11は、応用例2の有機電界発光装置を示す概略図である。
【図12】図12は、バリア層無し(比較例1)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図13】図13は、バリア層有り(比較例4)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図14】図14は、バリア層と凹凸層を有するもの(比較例5)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図15】図15は、バリア層と微粒子層を有するもの(実施例4)の発光スペクトルを示すグラフである。
【図16】図16は、比較例4と同構成でかつ同時に作製されたバリア層有りの有機電界発光装置である比較例4−1及び比較例4−2における発光スペクトルの差異を示すグラフである。
【図17】図17は、実施例において、バリア層付きの基板をカットし、サンプル作製する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(有機電界発光用基板)
本発明の有機電界発光用基板は、バリア層と、微粒子層とを少なくとも有し、基材、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0012】
前記有機電界発光用基板としては、例えば、基材と、該基材の一の面にバリア層と、前記基材の他の面に微粒子層とを有する態様、即ち、バリア層が、基材の有機電界発光層側の面に設けられ、微粒子層が、基材の光出射側の面に設けられることが好ましい。
【0013】
<バリア層>
前記バリア層は、厚みむらが10nm以上1,000nm以下であり、10nm〜800nmが好ましい。前記厚みむらが、10nm未満であると、前記厚みむらによる前記有機電界発光装置の色度の変化が殆ど目立たなくなり、前記微粒子層による色度の平均化効果が現れにくいことがある。一方、前記厚みむらが、1,000nmを超えると、有機電界発光層から発する可視光の波長を上回り、干渉効果による色度変化が起き難くなり、前記厚みむらが、10nm未満の場合と同様、前記微粒子層による色度の平均化効果が現れにくいことがある。
ここで、前記バリア層の厚みむらとは、1枚の基板上での前記バリア層の厚み方向の最大高低差を意味する。
前記バリア層が有機材料を塗布することにより形成される有機層である場合には厚みむらは60nm程度であり、前記バリア層が無機材料を蒸着法、スパッタ法により形成される無機層である場合には、厚みむらは15nm程度である。
前記バリア層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機層であれば300nm〜2,000nmが好ましく、800nm〜1,500nmがより好ましい。前記無機層であれば10nm〜200nmが好ましく、30nm〜150nmがより好ましい。
前記バリア層の厚みむらは、例えば、作製した前記バリア層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)などにより厚みを測定することにより求めることができる。
【0014】
前記バリア層としては、有機材料からなる有機層単独、又は無機材料からなる無機層単独であってもよいが、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有することが、前記無機層の応力緩和による剥離防止、前記無機層に発生したピンホールを埋め、水分透過率及び酸素透過率の上昇を防ぐ点で好ましい。
前記有機層と前記無機層との合計積層数は、2層以上が好ましく、4層〜11層がより好ましい。前記合計積層数が、2層未満であると、前記バリア層がピンホールにより水分透過率及び酸素透過率が上昇し、前記有機電界発光装置に影響を及ぼし、ダークスポットの発生、最悪の場合には点灯できなくなることがある。
【0015】
−無機層−
前記無機層の少なくとも1層は、2種以上の金属酸化物より構成されることが好ましい。
このような無機層は、2種以上の金属酸化物を同時にフィルム上に堆積させることにより形成することができる。
前記金属酸化物としては、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、Ta等の酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。コスト及び膜を形成した際の光線透過性の観点から、好ましくは、酸化珪素と酸化アルミニウムである。
【0016】
これらの酸化物薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の公知の方法を用いることができるが、2種の酸化物を割合を制御しながら同時に堆積させる点で、反応性スパッタ法、電子線加熱蒸着法及びそれらの組み合わせた方法が特に好ましい。
反応性スパッタ方式は、例えば、2つの電極上にそれぞれSiとAlの金属ターゲットを設置し、高真空中でアルゴン等の希ガスと酸素ガスを導入しながら、DCプラズマ、高周波プラズマによって金属原子を叩き出し、フィルム表面上で金属原子と酸素を反応させつつ共堆積させる方法である。
また、電子線加熱蒸着法は、Si又はSiOxの入った坩堝とAl又はAl2Oxの入った坩堝を真空チャンバー中に設置し、それぞれ電子線によって加熱蒸発させ、フィルム面上に共堆積させるものである。この場合、坩堝に入れた材料の酸化度と目標とする膜の酸化度に応じて酸素ガスを流してもよいし流さなくてもよい。
【0017】
共堆積された酸化物薄膜中の2種の金属の比率は任意に設定することができるが、1/9〜9/1の範囲が好ましい。酸化珪素と酸化アルミニウムの場合、Si/Alの比率は7/3〜2/8の範囲が好ましい。
また、各々の金属原子と酸素原子の比率も任意であるが、酸素原子の比率が酸化物の化学量論的な比率から極端に少ない場合は、膜の透明度が低下したり、着色が起こったりして好ましくない。逆に酸素原子が多すぎる場合にも、膜の緻密性が低下してバリア性が低下するため好ましくない。SiOxの場合にはxの値は1.5〜1.8が特に好ましい。また、Al2Oxの場合、xの値は1.0〜1.4が特に好ましい。
前記無機層の厚みは、薄すぎるとバリア性が不十分となり、逆に厚すぎると曲げた際にクラックが入ったり、割れたりしてバリア性を著しく損なう。そこで、前記無機層の適正な厚みとしては、5nm〜1,000nmが好ましく、10nm〜1000nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
【0018】
−有機層−
前記有機層は、いずれのポリマーでも使用することができる。以下に好ましい有機層の例とその成膜方法について示す。
【0019】
(1)ポリシロキサン
RF電極を用いた平行平板型のプラズマ装置にヘキサメチルジシロキサンを加熱蒸発させた蒸気を導入し、プラズマ中で重合反応を起こさせ、フィルム基材上にポリシロキサン薄膜として堆積させる。成膜速度が速いこと、重合開始剤が不要なこと、酸素プラズマ等で容易に親水化できるのでその後に付ける無機層との密着性が良好であること、積層バリア膜とした時の曲げ耐性に優れることなどの特徴があり、特に好ましいものである。
【0020】
(2)ポリパラキシリレン
高真空中で原料のジパラキシリレンを加熱蒸発させ、この蒸気を650℃〜700℃で加熱することで熱分解させて熱ラジカルを発生させる。このラジカルモノマー蒸気をチャンバー内に導くと、フィルム基材への吸着と同時にラジカル重合反応が進行し、ポリパラキシリレンとして堆積する。この膜の特徴は、機械的、熱的、化学的な強度に優れた膜が形成されることであり、この方法も本発明には好ましい方法である。
【0021】
(3)重付加ポリマー
真空中で蒸発させたA,B二種のモノマーがA,B交互に繰り返し付加重合することでできるポリマーである。例えば、重縮合のように水、アルコールなどの低分子が脱離することはなく、本発明のような真空中でバリア膜を成膜する方法として基本的に優れている。
前記重付加ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン(ジイソシアナート/グリコール)、ポリ尿素(ジイソシアナート/ジアミン)、ポリチオ尿素(ジチオイソシアナート/ジアミン)、ポリチオエーテルウレタン(ビスエチレンウレタン/ジチオール)、ポリイミン(ビスエポキシ/第一アミン)、ポリペプチドアミド(ビスアゾラクトン/ジアミン)、ポリアミド(ジオレフィン/ジアミド)などが挙げられる。これらの中でも、透明性、材料コスト等を考慮すると、ポリ尿素が特に好ましい。
【0022】
(4)アクリル系ポリマー
アクリル系ポリマーは、硬化速度が速いこと、室温での硬化が容易であること、透明性が高いなどの特徴があり、前記有機層として好ましく用いられる。
アクリレートモノマーとしては、単官能、2官能、多官能があり、いずれも用いることができるが、これらの中から適当な蒸発速度、硬化度、硬化速度等を得るためにブレンドすることが好ましい。単官能アクリレートしては、脂肪族、脂環式、エーテル系、環状エーテル系、芳香族系、水酸基含有、カルボキシ基含有等があり、いずれも用いることができる。
【0023】
(5)光カチオン硬化ポリマー
カチオン重合系は同じ光硬化型であるアクリレートと比べ低刺激性であるという特徴を有する。特に、エポキシ系、オキセタン系のような開環重合タイプは、硬化時の体積収縮が少ないため内部応力が小さく密着性に優れるため、本発明では特に好ましい。
前記エポキシ系としては、脂環式エポキシ系が特に好ましく、2官能性モノマー、多官能性オリゴマー、それらの混合物を好ましく用いることができる。
前記オキセタン系としては、単官能オキセタン、2官能オキセタン、シルセスキオキサン構造を有するオキセタン等が好ましいが、これらの混合物、あるいはグリシジルエーテル化合物を加えた混合物、更にはエポキシ化合物との混合物も好ましい。
光カチオン硬化ポリマーの場合、光をトリガーとして硬化反応を開始させる光硬化型潜在性硬化剤を含むことができる。エポキシ系、オキセタン系の場合、通常、光酸発生剤が好ましい。前記光酸発生剤としては、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩などが知られているが、トリアリールスルホニウム塩が最も一般的である。
また、増感剤として光ラジカル生成する化合物の併用が好ましい。増感剤としては、例えば、芳香族ケトン、フェノチアジン、ジフェニルアントラセン、ルブレン、キサントン、チオキサントン誘導体、クロロチオキサントンなどが挙げられる。これらの中でも、チオキサントン誘導体が好ましい。
【0024】
<微粒子層>
前記微粒子層は、ポリマーと、微粒子とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0025】
<<微粒子>>
前記微粒子としては、屈折率が微粒子層のポリマーの屈折率と異なり、光を散乱可能なものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよく、2種以上の微粒子を含有することが好ましい。以下、散乱用微粒子と称することもある。
【0026】
前記有機微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリスチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ、などが挙げられる。
前記無機微粒子としては、例えば、ZrO2、TiO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、などが挙げられる。これらの中でも、TiO2、ZrO2、ZnO、SnO2が特に好ましい。
【0027】
前記微粒子の屈折率は、前記微粒子層のポリマーの屈折率と異なるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.55〜2.6が好ましく、1.58〜2.1がより好ましい。
前記微粒子の屈折率は、例えば、自動屈折率測定器(KPR−2000、株式会社島津製作所製)を用い、屈折液の屈折率を測定してから、精密分光計(GMR−1DA、株式会社島津製作所製)で、シュリブスキー法により測定することができる。
【0028】
前記微粒子の平均粒径は、0.5μm〜10μmが好ましく、0.5μm〜6μmがより好ましい。前記微粒子の平均粒径が、10μmを超えると、光の殆どが前方散乱になり、散乱用微粒子による光の角度を変換する能力が低下してしまうことがある。一方、前記微粒子の平均粒径が、0.5μm未満であると、可視光の波長より小さくなり、ミー散乱がレーリー散乱の領域に変化し、微粒子の散乱効率の波長依存性が大きくなり、発光素子の色度が大きく変わってしまったり、光取り出し効率が低下することが予想される。
前記微粒子の平均粒径は、例えば、日機装株式会社製ナノトラックUPA−EX150等の動的光散乱法を利用した装置、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
【0029】
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、30%〜80%が好ましく、40%〜70%がより好ましい。前記体積充填率が、30%未満であると、微粒子層に入射してきた光が微粒子に散乱される確率が小さく、微粒子層の光角度を変換する能力が小さいので、微粒子層の厚みを充分に厚くしないと光取出し効率が低下することがある。また、前記微粒子層の厚みを厚くすることはコストの増加に繋がり、前記微粒子層の厚みのバラツキが大きくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じるおそれがある。一方、前記体積充填率が、80%を超えると、前記微粒子層の表面が大きく荒れ、内部にも空洞が生じることで、前記微粒子層の物理的強度が低下することがある。
前記微粒子層における微粒子の体積充填率は、例えば、重量測定法により測定することができる。まず、粒子比重測定装置(MARK3、株式会社ユニオン・エンジニアリング製)で粒子の比重を測定して、電子天秤(FZ−3000i、エー・アンド・デイ社製)で微粒子の重量を測定する。次に、作製した微粒子層の一部を切り取って、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で微粒子層の厚みを測定し、微粒子層における微粒子の体積充填率を求めることができる。
【0030】
−高屈折率微粒子−
前記高屈折率微粒子としては、屈折率は2.0以上が好ましく、2.4〜3.0がより好ましい。;一次粒子の平均粒径は0.5nm〜100nmが好ましく、1nm〜80nmがより好ましく、1nm〜50nmが更に好ましい。
前記高屈折率微粒子の屈折率が2.0以上であれば、層の屈折率を効果的に高めることができ、前記屈折率が3.0以下であれば粒子が着色するなどの不都合がないので好ましい。また高屈折率微粒子の一次粒子の平均粒径が100nm以下であれば、形成される微粒子層のヘイズ値が高くなって層の透明性を損なうなどの不都合が生じないので好ましく、0.5nm以上であれば高い屈折率が保持されるので好ましい。
前記高屈折率微粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による平均一次粒子径で表す。平均一次粒子径はそれぞれの微粒子の最大径の平均値で表し、長軸径と短軸径を有する場合、各微粒子の長軸径の平均値を平均一次粒子径とする。
【0031】
前記高屈折率微粒子としては、例えば、Ti、Zr、Ta、In、Nd、Sn、Sb、Zn,La、W、Ce、Nb、V、Sm、Y等の酸化物又は複合酸化物、硫化物を主成分とする粒子が挙げられる。ここで、主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。本発明でより好ましい高屈折率微粒子はTi、Zr、Ta、In、及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む酸化物もしくは複合酸化物を主成分とする粒子である。
【0032】
前記高屈折率微粒子には、粒子の中に種々の元素が含有されていても構わない(以下このような元素を含有元素ということがある)。
前記含有元素としては、例えば、Li、Si、Al、B、Ba、Co、Fe、Hg、Ag、Pt、Au、Cr、Bi、P、Sなどが挙げられる。酸化錫、酸化インジウムにおいては粒子の導電性を高めるために、Sb、Nb、P、B、In、V、ハロゲンなどの含有元素を含有させることが好ましく、特に、酸化アンチモンを5質量%〜20質量%含有させたものが最も好ましい。
【0033】
前記高屈折率微粒子は、含有元素としてCo、Zr、及びAlから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子(以下、「特定の酸化物」と称することもある)が挙げられる。これらの中でも、Coが特に好ましい。
Co、Al、及びZrの総含有量は、Tiに対し0.05質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜10質量%がより好ましく、0.2質量%〜7質量%が更に好ましく、0.3質量%〜5質量%が特に好ましく、0.5質量%〜3質量%が最も好ましい。
前記含有元素Co、Al、Zrは、二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部又は表面に存在する。二酸化チタンを主成分とする高屈折率微粒子の内部に存在することがより好ましく、内部と表面の両方に存在することが更に好ましい。これらの含有元素のうち金属元素は、酸化物として存在してもよい。
【0034】
他の好ましい高屈折率微粒子としては、チタン元素と、酸化物が屈折率1.95以上となる金属元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素(以下、「Met」とも略称する)との複合酸化物の粒子で、かつ該複合酸化物はCoイオン、Zrイオン及びAlイオンから選ばれる金属イオンの少なくとも1種がドープされてなる無機微粒子(「特定の複酸化物」と称することもある)が挙げられる。ここで、前記酸化物の屈折率が1.95以上となる金属元素としては、例えば、Ta、Zr、In、Nd、Sb、Sn、Biなどが挙げられる。これらの中でも、Ta、Zr、Sn、Biが特に好ましい。
前記特定の複合酸化物にドープされる金属イオンの含有量は、複合酸化物を構成する全金属[Ti+Met]量に対して、25質量%を超えない範囲で含有することが屈折率維持の観点から好ましく、0.05質量%〜10質量%がより好ましく、0.1質量%〜5質量%が更に好ましく、0.3質量%〜3質量%が特に好ましい。
【0035】
ドープされた金属イオンは、金属イオンとして、又は金属原子のいずれの形態で存在してもよく、前記複合酸化物の表面から内部まで適宜に存在することができる。複合酸化物の表面と内部との両方に存在することが好ましい。
【0036】
前記高屈折率微粒子は結晶構造を有することが好ましい。前記結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼが主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。このことにより、前記特定の酸化物又は特定の複酸化物の高屈折率微粒子は、屈折率が1.9〜2.8を有することになり、好ましい。前記屈折率は、2.1〜2.8がより好ましく、2.2〜2.8が更に好ましい。このことにより、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、微粒子層自身並びに微粒子層と接する上/下の両層のそれぞれの耐候性を著しく改良することができる。
【0037】
上記した特定の金属元素又は金属イオンをドープする方法は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、特開平5−330825号公報、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ公開特許第0335773号公報等に記載の方法;イオン注入法〔例えば、権田俊一、石川順三、上条栄治編「イオンビーム応用技術」株式会社シ−エムシー、1989年刊行、青木康、「表面科学」18巻(5)、262頁、1998、安保正一等、「表面科学」20巻(2)、60頁、1999等記載〕などに従って製造できる。
【0038】
前記高屈折率微粒子は表面処理してもよい。前記表面処理とは、無機化合物及び/又は有機化合物を用いて該粒子表面の改質を実施するもので、これにより高屈折率微粒子表面の濡れ性が調整され有機溶媒中での微粒子化、微粒子層用組成物中での分散性及び分散安定性が向上する。粒子表面に物理化学的に吸着させる無機化合物としては、例えば、ケイ素を含有する無機化合物(SiO2等)、アルミニウムを含有する無機化合物[Al2O3、Al(OH)3等]、コバルトを含有する無機化合物(CoO2、Co2O3,Co3O4等)、ジルコニウムを含有する無機化合物[ZrO2、Zr(OH)4等]、鉄を含有する無機化合物(Fe2O3等)、などが挙げられる。
【0039】
前記表面処理に用いる有機化合物としては、従来公知の金属酸化物、無機顔料等の無機フィラー類の表面改質剤を用いることができる。例えば、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」第一章(技術情報協会、2001年刊行)等に記載されている。
【0040】
具体的には、高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基を有する有機化合物、カップリング化合物が挙げられる。前記高屈折率微粒子表面と親和性を有する極性基としては、例えば、カルボキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、環状酸無水物基、アミノ基等が挙げられ、これらを分子中に少なくとも1種を含有する化合物が好ましい。例えば、長鎖脂肪族カルボン酸(例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等)、ポリオール化合物{例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ECH(エピクロルヒドリン)変性グリセロールトリアクリレート等}、ホスホノ基含有化合物{例えば、EO(エチレンオキシド)変性リン酸トリアクリレート等}、アルカノールアミン{エチレンジアミンEO付加体(5モル)等}が挙げられる。
【0041】
前記カップリング化合物としては、従来公知の有機金属化合物が挙げられ、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤等が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。具体的には、例えば、特開2002−9908号公報、特開2001−310423号公報の段落番号〔0011〕〜〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの表面処理に用いる化合物は、2種類以上を併用することもできる。
【0042】
前記高屈折率微粒子は、これをコアとして他の無機化合物からなるシェルを形成したコア/シェル構造の微粒子であることも好ましい。前記シェルとしては、Al、Si、及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素からなる酸化物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−166104号公報記載の内容が挙げられる。
【0043】
前記高屈折率微粒子の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状又は不定形状が好ましい。前記高屈折率微粒子は単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
前記高屈折率微粒子の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、ポリマーの屈折率を1.55〜1.95とすることができる範囲が好ましい。
【0044】
<<ポリマー>>
前記ポリマーとしては、(A)有機バインダー、並びに(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物及びこの有機金属化合物の部分縮合物、の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0045】
−(A)有機バインダー−
前記(A)の有機バインダーとしては、(1)従来公知の熱可塑性樹脂、
(2)従来公知の反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、又は
(3)バインダー前駆体(後述する硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)と重合開始剤との組み合わせ、から形成されるバインダーが挙げられる。
【0046】
前記(1)、(2)又は(3)の有機バインダーと、前記微粒子と、前記高屈折微粒子とを含有する微粒子層用組成物が調製されることが好ましい。この微粒子層用組成物は、支持体上に塗布され、塗膜が形成された後、バインダー成分に応じた方法で硬化されて微粒子層が形成される。硬化方法は、バインダー成分の種類に応じて適宜選択され、例えば、加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段により、硬化性化合物(例えば、多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応を生起させる方法が挙げられる。なかでも、前記(3)の組み合わせを用いて光照射することにより硬化性化合物を架橋反応又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法が好ましい。
【0047】
更に、微粒子層用組成物を塗布と同時又は塗布後に、微粒子の分散液に含有される分散剤を架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
【0048】
このようにして作製した硬化膜中のバインダーは、例えば、前記分散剤とバインダーの前駆体である硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。更に、硬化膜中のバインダーは、アニオン性基が高屈折率微粒子の分散状態を維持する機能を有するので、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、高屈折率微粒子を含有する硬化膜中の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良することができる。
【0049】
{熱可塑性樹脂(A−1)}
前記(1)の熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂、などが挙げられる。
【0050】
{反応性硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ(A−2)}
前記(2)の反応性硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂及び/又は電離放射線硬化型樹脂を使用することが好ましい。
前記熱硬化型樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばフェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
前記電離放射線硬化型樹脂には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性不飽和基{(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等}及び/又はカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂などが挙げられる。
【0051】
これらの反応性硬化性樹脂に必要に応じて、架橋剤(例えば、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(例えば、アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
【0052】
{バインダー前駆体と重合開始剤との組み合わせ(A−3)}
以下、硬化したバインダーの好ましい形成方法である前記(3)の組み合わせを用いて、光照射により硬化性化合物を架橋又は重合反応させて硬化したバインダーを形成する方法について、主に説明する。
【0053】
前記バインダーの前駆体である光硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーの官能基としては、ラジカル重合性官能基、及びカチオン重合性官能基のいずれでもよい。
【0054】
前記ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和基などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基が特に好ましく、分子内に2個以上のラジカル重合性基を含有する多官能モノマーを含有することが特に好ましい。
【0055】
前記ラジカル重合性多官能モノマーとしては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜6個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)又はそれらの混合物、あるいはそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0056】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)、そのエステル類、アミド類などが挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が特に好ましい。
【0057】
また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類、アミド類と、単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との反応物も好適である。更に別の例として、前記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0058】
脂肪族多価アルコール化合物としては、例えば、アルカンジオール、アルカントリオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサントリオール、イノシットール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン等が挙げられる。これら脂肪族多価アルコール化合物と、不飽和カルボン酸との重合性エステル化合物(モノエステル又はポリエステル)、例として、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号〔0026〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。
【0059】
その他の重合性エステルとしては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報等に記載の脂肪族アルコール系エステル類、特開平2−226149号公報等に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0060】
更に脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とから形成される重合性アミドの具体例としては、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス(メタ)アクリルアミド、キシリレンビス(メタ)アクリルアミド、特公昭54−21726号公報記載のシクロヘキシレン構造を有するもの等を挙げることができる。
【0061】
更にまた、1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物(特公昭48−41708号公報等)、ウレタンアクリレート類(特公平2−16765号公報等)、エチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物(特公昭62−39418号公報等)、ポリエステルアクリレート類(特公昭52−30490号公報等)、更に、日本接着協会誌20巻7号 300〜308頁(1984年)に記載の光硬化性モノマー及びオリゴマーも使用することができる。これらラジカル重合性の多官能モノマーは、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
次に、前記微粒子層のバインダーの形成に用いることができるカチオン重合性基含有の化合物(以下、「カチオン重合性化合物」又は「カチオン重合性有機化合物」とも称する)について説明する。
【0063】
前記カチオン重合性化合物は、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状チオエーテル化合物、環状エーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル炭化水素化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。前記カチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0064】
前記カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、2〜5個がより好ましい。前記化合物の平均分子量は3,000以下が好ましく、200〜2,000がより好ましく、400〜1,500が更に好ましい。前記平均分子量が該下限値以上であれば、皮膜形成過程での揮発が問題となるなどの不都合が生じることがなく、また該上限値以下であれば、微粒子層用組成物との相溶性が悪くなるなどの問題を生じないので好ましい。
【0065】
前記エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0066】
前記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。更に、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。また、脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、又は不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0067】
前記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、少なくとも1個の芳香核を有する1価もしくは多価のフェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加体のモノもしくはポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシ化合物として、例えば、特開平11−242101号公報中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕に記載の化合物、特開平10−158385号公報中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0068】
これらのエポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。前記エポキシ化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0069】
環状チオエーテル化合物としては、前記エポキシ化合物のエポキシ環の代わりに、チオエポキシ環を有する化合物が挙げられる。
【0070】
環状エーテル化合物としてのオキセタニル基を含有する化合物としては、具体的には、例えば特開2000−239309号公報中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物等が挙げられる。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0071】
スピロオルソエステル化合物としては、例えば、特表2000−506908号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0072】
ビニル炭化水素化合物としては、例えば、スチレン化合物、ビニル基置換脂環炭化水素化合物(ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等)、前記ラジカル重合性モノマーで記載の化合物、プロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",32巻2895頁(1994年)記載等}、アルコキシアレン化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",33巻2493頁(1995年)記載等}、ビニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻1015頁(1996年)、特開2002−29162号公報等記載}、イソプロペニル化合物{"J.Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry",34巻2051頁(1996年)記載等}等を挙げることができる。これらは2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0073】
また、前記多官能性化合物は、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号公報中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕に記載の化合物、特開2000−191737号公報中の段落番号〔0015〕に記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0074】
以上述べたラジカル重合性化合物とカチオン重合性化合物とを、ラジカル重合性化合物:カチオン重合性化合物の質量比率で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0075】
次に、前記(3)の組み合わせにおいて、バインダー前駆体と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
【0076】
前記重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
前記重合開始剤は、光及び/又は熱照射により、ラジカルもしくは酸を発生する化合物であることが好ましい。前記光重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0077】
前記ラジカルを発生する化合物は、光及び/又は熱照射によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。公知の重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0078】
前記ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、有機過酸化化合物(特開2001−139663号公報等)、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、特開平1−304453号公報等記載)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(米国特許第3,479,185号明細書等記載)、ジスルホン化合物(特開平5−239015号公報、特開昭61−166544号公報等)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機ホウ酸化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0079】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等の"Bull.Chem.Soc Japan",42巻2924頁(1969年)、米国特許第3,905,815号明細書、特開平5−27830号公報、M.P.Hutt,"J.Heterocyclic Chemistry",1巻(3号)、(1970年)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:s−トリアジン化合物が挙げられる。より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0080】
前記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60ページ〜62ページ〔株式会社技術情報協会刊、1991年〕、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、特開平11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物などが挙げられる。また、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0081】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin,"Rad.Tech'98.Proceeding April 19〜22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報の段落番号〔0022〕〜〔0027〕に記載の化合物が挙げられる。またその他の有機ホウ素化合物としては、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0082】
これらのラジカル発生化合物は、1種のみを添加しても、2種以上を併用してもよい。添加量としては、ラジカル重合性モノマー全量に対し、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜25質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%が更に好ましい。前記添加量の範囲において、微粒子層用組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0083】
次に、光重合開始剤として用いることができる光酸発生剤について詳述する。
前記光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の光酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。また、前記光酸発生剤としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物、オニウム化合物などが挙げられる。これらの中でも、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が特に好ましい。前記有機ハロゲン化合物、ジスルホン化合物の具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。
【0084】
前記オニウム化合物としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられ、例えば、特開2002−29162号公報の段落番号〔0058〕〜〔0059〕に記載の化合物、などが挙げられる。
【0085】
前記酸発生剤としては、オニウム塩が特に好適に用いられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
【0086】
前記オニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号〔0035〕に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号明細書の段落番号〔0010〕〜〔0011〕に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号〔0017〕に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載のオニウム塩等が挙げられる。
【0087】
前記光酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルフォネート等)等の化合物が挙げられる。
【0088】
これらの酸発生剤は、1種のみをそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。前記酸発生剤の添加量は、全カチオン重合性モノマーの全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜10質量%が更に好ましい。前記添加量が、前記範囲において、微粒子層用組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。
【0089】
前記微粒子層用組成物は、ラジカル重合性化合物又はカチオン重合性化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5質量%〜10質量%又はカチオン重合開始剤を1質量%〜10質量%の割合で含有していることが好ましく、ラジカル重合開始剤を1質量%〜5質量%、又はカチオン重合開始剤を2質量%〜6質量%の割合で含有することがより好ましい。
【0090】
前記微粒子層用組成物には、紫外線照射により重合反応を行う場合、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。これらの増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、アミノ酸(例えば、グリシン等)、有機アミン(例えば、ブチルアミン、ジブチルアミン等)などが挙げられる。
【0091】
また、近赤外線照射により重合反応を行う場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10,000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750nm〜1,400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20,000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。
【0092】
前記近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。市販の染料並びに、文献{例えば、「化学工業」1986年5月号45〜51頁の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990年)シーエムシー、「特殊機能色素」〔池森・柱谷編集、1986年、株式会社シーエムシー発行〕、J.FABIAN,"Chem.Rev.",92巻1197〜1226頁(1992年)}、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、並びにExciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログ及び特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0093】
(B)加水分解性官能基を含有する有機金属化合物又はこの有機金属化合物の部分縮合物
前記マトッリクスとして、加水分解可能な官能基を含有する有機金属化合物を用いて、ゾル/ゲル反応により塗布膜形成後に硬化された膜を形成することも好ましい。
【0094】
前記有機金属化合物としては、例えば、Si、Ti、Zr、Al等からなる化合物が挙げられる。
前記加水分解可能な官能基な基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。好ましい有機金属化合物は、下記一般式(2)で表される有機ケイ素化合物又はその部分加水分解物(部分縮合物)である。なお、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物は、容易に加水分解し、引き続いて脱水縮合反応が生じることはよく知られた事実である。
【0095】
一般式(2):(R21)β−Si(Y21)4−β
ただし、前記一般式(2)中、R21は、置換もしくは無置換の炭素数1〜30脂肪族基又は炭素数6〜14のアリール基を表す。Y21は、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子等)、OH基、OR22基、OCOR22基を表す。ここで、R22は置換もしくは無置換のアルキル基を表す。βは0〜3の整数を表し、好ましくは0、1又は2、特に好ましくは1である。ただし、βが0の場合は、Y21はOR22基又はOCOR22基を表す。
【0096】
前記一般式(2)において、R21の脂肪族基としては、好ましくは炭素数1〜18(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基等)が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは1〜8のものである。R21のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラニル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0097】
置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(例えば、メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(例えば、フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ等)、アルケニル基(例えば、ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基{例えば、アセトキシ、(メタ)アクリロイル等}、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)などが好ましい。
【0098】
これらの置換基のうちで、更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基であり、特に好ましくはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基{(メタ)アクリロイル}、重合性のアシルアミノ基(例えば、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)である。またこれら置換基は更に置換されていてもよい。
【0099】
前記のようにR22は置換もしくは無置換のアルキル基を表し、アルキル基は特に限定はないが、例えばR21の脂肪族基と同じものが挙げられ、アルキル基中の置換基の説明はR21と同じである。
【0100】
前記一般式(2)の化合物の含有量は、前記微粒子層用組成物の全固形分の10質量%〜80質量%が好ましく、20質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜50質量%が更に好ましい。
【0101】
前記一般式(2)の化合物としては、例えば特開2001−166104号公報の段落番号〔0054〕〜〔0056〕に記載の化合物が挙げられる。
【0102】
前記微粒子層用組成物において、前記有機バインダーは、シラノール基を有するものであることが好ましい。バインダーがシラノール基を有することで、微粒子層の物理強度、耐薬品性、耐候性が更に改良され、好ましい。前記シラノール基は、例えば、微粒子層用組成物を構成するバインダー形成成分として、バインダー前駆体(硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)、重合開始剤、微粒子の分散液に含有される分散剤と共に、架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を該微粒子層用組成物に配合し、この微粒子層用組成物を透明支持体上に塗布して、前記の分散剤、多官能モノマー、多官能オリゴマー、一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋反応又は重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0103】
前記の有機金属化合物を硬化させるための加水分解・縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。前記触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネート等の金属アルコキシド類;β−ジケトン類又はβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類などが挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報中の段落番号〔0071〕〜〔0083〕に記載の化合物等が挙げられる。
【0104】
これらの触媒化合物の組成物中での割合は、有機金属化合物に対し、0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜50質量%がより好ましく、0.5質量%〜10質量%が更に好ましい。なお、反応条件は有機金属化合物の反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0105】
前記微粒子層用組成物において、マトリックスは特定の極性基を有することも好ましい。前記特定の極性基としては、例えば、アニオン性基、アミノ基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。前記アニオン性基、アミノ基及び四級アンモニウム基の具体例としては、前記分散剤について述べたものと同様のものが挙げられる。
【0106】
−溶媒−
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、アミド類、エーテル類、エーテルエステル類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル等)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、メチルクロロホルム等)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン等)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラハイドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等)、エーテルアルコール(例えば、1−メトキシ−2−プロパノール、エチルセルソルブ、メチルカルビノール等)が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノールが特に好ましい。また、ケトン溶媒(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)を主にした塗布溶媒系も好ましく用いられる。
前記ケトン系溶媒の含有量は、前記微粒子層用組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。
【0107】
特定の極性基を有するマトリックスは、例えば、微粒子層用組成物に、硬化膜形成成分として、特定の極性基を有するバインダー前駆体(特定の極性基を有する硬化性の多官能モノマー、多官能オリゴマーなど)と重合開始剤の組み合わせ、及び特定の極性基を有し、かつ架橋又は重合性官能基を有する一般式(2)で表される有機ケイ素化合物の少なくともいずれかを配合し、更に所望により、特定の極性基及び、架橋又は重合性の官能基を有する単官能性モノマーを配合し、該塗布組成物を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、単官能性モノマー、多官能モノマー、多官能オリゴマー及び/又は一般式(2)で表される有機ケイ素化合物を架橋又は重合反応させることにより得られる。
【0108】
前記特定の極性基を有する単官能性モノマーは、微粒子層用組成物の中で微粒子の分散助剤として機能することができ、好ましい。更に、塗布後、分散剤、多官能モノマー、多官能オリオリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで微粒子層における微粒子の良好な均一な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた微粒子層を作製することができる。
【0109】
前記微粒子層用組成物を、前記透明基板上に、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、エクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光及び/又は熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化から有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理することも好ましい。
【0110】
光照射の光源は、紫外線光域又は近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350nm〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750nm〜1,400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
【0111】
光照射による光ラジカル重合の場合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性モノマーの重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1mW/cm2〜100mW/cm2程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は100mJ/cm2〜1,000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0112】
前記微粒子層の平均厚みは、5μm〜200μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。前記平均厚みが、5μm未満であると、微粒子層による十分な光角度変換がなく、十分な光取出し効率が得られないことがあり、200μmを超えると、光が散乱されすぎて、後方散乱の光が増え、有機電界発光層内部に戻る光が多くなり、光取出し効率が低下する、また、前記微粒子層が厚いことは高コストに繋がり、前記微粒子層の厚みのバラツキが大きくなり、発光面内の散乱効果にバラツキが生じるおそれがある。
前記平均厚みは、例えば、微粒子層の一部を切り取り、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定し、微粒子層の厚みを求めることができる。
【0113】
前記微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は前記微粒子層の光出射面に平坦化層を有すること好ましい。これにより、微粒子の密度を増加させても後方散乱の増加を抑制できる。また、平坦化することで異物付着が防止される。更に、ロール状に巻き取った場合、表面(微粒子層側)が平坦であるため、裏面(バリア層)と当接した場合でも傷付けることがないという利点がある。
【0114】
前記微粒子層の光出射面を平坦にする方法としては、例えば前記微粒子層の形成に使用した材料から前記散乱用微粒子を取り除いたものを硬化後した前記微粒子層上に積層する方法などが挙げられる。
【0115】
前記平坦化層としては、前記微粒子層において前記散乱用微粒子を含まない組成であることが好ましく、前記微粒子層と同様にして形成することができる。
前記平坦化層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm〜50μmが好ましい。前記平坦化層の厚みが、5μm未満であると、突出した元の微粒子層の表面を平坦化できず、50μmを超えると、前記平坦化層の光の吸収により光取り出し能が低下してしまうことがある。
【0116】
−基材−
前記基材としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記低屈折率層転写シートの大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0117】
前記基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂が好ましく、ロールでの塗布適性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
前記基材の表面には、その上に設けるバリア層及び微粒子層との密着性を向上させるため、表面活性化処理を行うことが好ましい。前記表面活性化処理としては、例えばグロー放電処理、コロナ放電処理などが挙げられる。
【0118】
前記基材は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0119】
前記有機電界発光用基板の水分透過度は、1×10−3g/m2/day以下が好ましく、1×10−4g/m2/day以下がより好ましい。
前記水分透過度は、例えば、G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display ResearchConference 1435-1438頁に記載の方法(カルシウムを用いた測定法)により測定することができる。
前記有機電界発光用基板の酸素透過度は、1cc/m2/day以下が好ましく、0.1cc/m2/day以下がより好ましい。
前記酸素透過度は、例えば、酸素透過率測定装置(MOCON社製、MOCON酸素透過率測定装置、OX−TRAN 1/50A)により測定することができる。
【0120】
本発明の有機電界発光用基板は、バリア層の干渉によるスペクトル変調、色度の面位置依存性、及び色度の角度依存性を抑制でき、かつ光取り出し効率を高めることができるので、各種有機電界発光装置などに用いることができるが、以下の本発明の有機電界発光装置に用いることが特に好ましい。
【0121】
(有機電界発光装置)
本発明の有機電界発光装置は、本発明の前記有機電界発光用基板を少なくとも有し、有機電界発光層、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0122】
−有機電界発光層−
前記有機電界発光層としては、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを有し、両電極の間に発光層を有する。両電極間に配置されうる、発光層以外の機能層としては、正孔輸送層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0123】
前記有機電界発光層は、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有することが好ましく、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。更に、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層を設けてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層を設けてもよい。
また、前記発光層と正孔輸送層との間に正孔輸送性中間層(電子ブロック層)を設けてもよく、発光層と電子輸送層との間に電子輸送性中間層(正孔ブロック層)を設けてもよい。各機能層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0124】
前記発光層を含むこれらの機能層は、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式等のいずれによっても好適に形成することができる。
【0125】
−−発光層−−
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、発光材料を含む。前記発光層は発光材料のみで構成されていてもよいし、ホスト材料と発光材料の混合層でもよい(後者の場合、発光材料を「発光性ドーパント」もしくは「ドーパント」と称する場合がある)。前記発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、2種以上が混合されていてもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。更に、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0126】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2nm〜500nmが好ましく、外部量子効率の観点で、3nm〜200nmがより好ましく、5nm〜100nmが更に好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0127】
−−−発光材料−−−
前記発光材料は、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも好適に用いることができる。本発明における発光性ドーパントは、ホスト化合物との間で、イオン化ポテンシャルの差(ΔIp)と電子親和力の差(ΔEa)が、1.2eV>△Ip>0.2eV、及び/又は1.2eV>△Ea>0.2eVの関係を満たすドーパントであることが、駆動耐久性の観点で好ましい。
前記発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1質量%〜50質量%含有されるが、耐久性、外部量子効率の観点から1質量%〜50質量%含有されることが好ましく、2質量%〜50質量%含有されることがより好ましい。
【0128】
<燐光発光材料>
前記燐光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
前記遷移金属原子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、白金などが挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
【0129】
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0130】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0131】
これらの中でも、燐光発光材料としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、WO05/19373A2、WO2004/108857A1、WO2005/042444A2、WO2005/042550A1、特開2001−247859、特開2002−302671、特開2002−117978、特開2003−133074、特開2002−235076、特開2003−123982、特開2002−170684、EP1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−93542、特開2006−261623、特開2006−256999、特開2007−19462、特開2007−84635、特開2007−96259等の各公報に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。これらの中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が好ましく、Ir錯体、Pt錯体、又はRe錯体がより好ましく、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が更に好ましく、発光効率、駆動耐久性、色度等の観点で、3座以上の多座配位子を含むIr錯体、Pt錯体、又はRe錯体が特に好ましい。
【0132】
前記燐光発光材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化1】
【0134】
【化2】
【0135】
【化3】
【0136】
<蛍光発光材料>
前記蛍光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、又はペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体、希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0137】
−−−ホスト材料−−−
前記ホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホストと記載する場合がある)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物(電子輸送性ホストと記載する場合がある)を用いることができる。
【0138】
<正孔輸送性ホスト材料>
前記正孔輸送性ホスト材料としては、例えば、以下の材料を挙げることができる。即ち、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、チオフェン、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、インドール誘導体、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体、分子内にカルバゾール基を有するものが好ましく、t−ブチル置換カルバゾール基を有する化合物がより好ましい。
【0139】
<電子輸送性ホスト材料>
前記電子輸送性ホスト材料としては、例えば、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、又はそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ル、ベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。これらの中でも、耐久性の点から金属錯体化合物が好ましく、金属に配位する少なくとも1つの窒素原子又は酸素原子又は硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。前記金属錯体電子輸送性ホストとしては、例えば特開2002−235076号公報、特開2004−214179号公報、特開2004−221062号公報、特開2004−221065号公報、特開2004−221068号公報、特開2004−327313号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
前記正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料の具体例として、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
【化4】
【0142】
【化5】
【0143】
【化6】
【0144】
−−正孔注入層、正孔輸送層−−
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層は、陽極又は陽極側の層から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いられる正孔注入材料、正孔輸送材料は、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボンなどを含有する層であることが好ましい。
【0145】
前記正孔注入層、又は前記正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。前記正孔注入層、又は正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
具体的には、無機化合物は塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物などが挙げられる。有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜20質量%が更に好ましく、0.1質量%〜10質量%が特に好ましい。
【0146】
前記正孔注入層、又は正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0147】
−−電子注入層、電子輸送層−−
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、陰極又は陰極側の層から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。これらの層に用いる電子注入材料、電子輸送材料は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
具体的には、ピリジン誘導体、キノリン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、フタラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアジン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、シロールに代表される有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0148】
前記電子注入層、又は電子輸送層には、電子供与性ドーパントを含有させることができる。前記電子注入層、又は電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Li等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属、還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、及びYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%が好ましく、1.0質量%〜80質量%が更に好ましく、2.0質量%〜70質量%が特に好ましい。
【0149】
前記電子注入層、又は前記電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0150】
−−正孔ブロック層、電子ブロック層−−
前記正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が陰極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
一方、前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記正孔ブロック層を構成する化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。電子ブロック層を構成する化合物の例としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。
前記正孔ブロック層及び電子ブロック層の厚みは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが更に好ましい。また正孔ブロック層及び電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0151】
−−電極−−
前記有機電界発光素子は、一対の電極、即ち、陽極と陰極とを含む。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。
通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0152】
前記電極としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その陽極、陰極において、前記反射金属、前記半透明部材としての半透明金属を構成することが好ましい。
【0153】
前記陽極を構成する材料の具体例としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0154】
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0155】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0156】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着、スパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法、印刷法によって行ってもよい。
【0157】
本発明の有機電界発光装置のように微粒子層等の拡散効果のある層を基板上に設けた場合、正面の色度が大きく変化する。拡散効果によりあらゆる角度の光(角度依存性により色度が異なる)が集まるためである。基本的には赤色から青色(色温度が上がる方向)に動く。よって、少し色温度を低めに設定することが好ましい。例えば、CIE表色系の(x,y)の色度表記で(0.31、0.31)(白)狙いであれば、有機電界発光装置単独の色度を(0.34、0.33)付近の色度x、色度yを高めの値に設定して、設計、作製すると、微粒子層を付けた状態では狙いの(0.31、0.31)付近に来ると予測される。
したがって、有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05高くなるように設定することが好ましい。
【0158】
ここで、図1は、本発明の有機電界発光装置の一例を示す概略図である。この図1の有機電界発光装置は、基材1の有機電界発光層側の面にバリア層3と、基材1の光出射面側の面に微粒子層2とを有する有機電界発光用基板を有し、
この有機電界発光用基板のバリア層3上に、電極(ITO)4と、有機層5と、電極6とを有し、これらが封止缶7で封止されたものである。
【0159】
前記有機電界発光装置は、フルカラーで表示し得る装置として構成することができる。
前記有機電界発光装置をフルカラータイプのものとする方法としては、例えば、「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する層構造を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の層構造による白色発光をカラーフィルタ層を通して3原色に分ける白色法、青色発光用の層構造による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。
この場合は、青色(B)、緑色(G)、赤色(R)の画素ごとにレーザーパワー、厚みを適宜調整することが好ましい。
また、上記方法により得られる異なる発光色の層構造を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色(B)、緑色(G)、及び赤色(R)の有機電界発光素子を組み合わせた白色発光光源、等である。
【0160】
前記有機電界発光装置は、例えば、照明機器、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【実施例】
【0161】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0162】
(調製例1)
<混合塗布液1の調製方法>
蒸留水179質量部、界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名:ナロアクティーCL−95)46質量部、ナノサイズの微粒子(日産化学株式会社製、スノーテックスZL、固形分40質量%)114質量部、平均粒径2μmの微粒子(日産化学株式会社製、オプトビーズ2000M、固形分100質量%)275質量部、水性ポリウレタン(三井化学株式会社製、タケラックシリーズW−6010、固形分33質量%)359質量部、及び硬化剤(日清紡績株式会社製、V−02−L2、固形分40質量%)27質量部を混合し、スターラーを用い攪拌して、混合塗布液1を調製した。
【0163】
(調製例2)
<混合塗布液2の調製>
界面活性剤(三洋化成工業株式会社製、商品名:ナロアクティーCL−95)59質量部、水性ポリウレタン(三井化学株式会社製、タケラックシリーズW−6010、固形分33質量%)992質量部、及び硬化剤(日清紡績株式会社製、V−02−L2、固形分40質量%)59質量部を混合して、混合塗布液2を調製した。
【0164】
(実施例1)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、平均厚みが50nmとなるようにAl2O3を真空スパッタ法で成膜して、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、再度130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例1の有機電界発光用基板を作製した。
【0165】
作製した有機電界発光用基板について、以下のようにして、バリア層の厚みむらを測定したところ、平均厚み±7nmとなり、14nmの厚みむらが生じていた。
<バリア層の厚みむらの測定>
バリア層の厚みむらは、走査型電子顕微鏡(S−3400N、日立ハイテク株式会社製)で測定した。なお、厚みむらの値は9箇所測定の平均値で示した。
【0166】
−有機電界発光装置の作製−
まず、作製した実施例1の有機電界発光用基板のバリア層上に、スパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)を厚みが100nmとなるように成膜した。
次に、前記ITO上に、下記構造式で表される4,4’,4”−トリス(N,N−(2−ナフチル)−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)に、下記構造式で表されるF4−TCNQを0.3質量%ドープした正孔注入層を厚みが150nmになるように共蒸着した。
【化7】
【化8】
【0167】
次に、前記正孔注入層上に、正孔輸送層としてα−NPD(Bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl]benzidine)を厚みが7nmとなるように真空蒸着法にて形成した。
次に、前記正孔輸送層上に、下記構造式で表される有機材料Aを真空蒸着して、厚み3nmの第2の正孔輸送層を形成した。
【化9】
【0168】
次に、第2の正孔輸送層上に、ホスト材料として下記構造式で表される有機材料Bと、該有機材料Bに対して40質量%の燐光発光材料である下記構造式で表される発光材料Aをドープした発光層を30nmの厚みに真空蒸着した。
【化10】
【化11】
【0169】
次に、白色発光層上に電子輸送層として下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III))を厚みが39nmとなるように真空蒸着した。
【化12】
【0170】
次に、電子輸送層上に、下記構造式で表されるBCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)を電子注入層として、厚みが1nmとなるように蒸着した。
【化13】
次に、電子注入層上にバッファ層としてLiFを厚みが1nm、その上にアルミニウムを電極層として厚みが100nmとなるように蒸着した。
作製した積層体を、真空から窒素雰囲気下の部屋に移し、封止缶にて封止する。なお、封止缶の内側には予め吸湿材を貼っておいた。以上により、図1に示す実施例1の有機電界発光装置を作製した。
【0171】
(実施例2)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、下記表1に示した重合性化合物(合計20質量部)と、重合開始剤(ランベルティ社製、エザキュアKTO46)とからなる組成物を乾燥平均厚みが1,000nmとなるようにメチルエチルケトンで調製して製膜し、酸素100ppm雰囲気下で紫外線照射量1.2J/cm2で照射して硬化させ、有機層を作製した。
前記有機層上に無機層(Al2O3)を平均厚みが50nmとなるようにスパッタ法により成膜し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
【0172】
【表1】
<重合性化合物F−1>
【化14】
<重合性化合物F−2>
【化15】
<重合性化合物F−3>
【化16】
<重合性化合物F−4>
【化17】
【0173】
次に、前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例2の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、無機層では平均厚み±7nmとなり、14nmの厚みむらが発生し、有機層では平均厚み±20nmとなり、40nmの厚みむらが生じており、バリア層全体としては、42nmの厚みむらが生じていた。
【0174】
−有機電界発光装置の作製−
次に、作製した実施例2の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図2に示す実施例2の有機電界発光装置を作製した。
【0175】
(実施例3)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、実施例2と同様にして、有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層の順に9層を塗布法と、スパッタ法により成膜し、バリア層を形成し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を作製した。
以上により、実施例3の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、94nmの厚みむらが生じていた。
【0176】
−有機電界発光装置の作製−
作製した実施例3の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図3に示す実施例3の有機電界発光装置を作製した。
【0177】
(実施例4)
−有機電界発光用基板の作製−
厚み0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一の面に、実施例2と同様にして、有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層の順に9層を塗布法とスパッタ法により成膜し、バリア層を形成し、水、及び酸素に対するバリア性を有するバリア層付きフィルム基板を作製した。
前記PETフィルムの他方の面に、前記混合塗布液1をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液1を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み15μmの微粒子層を形成した。
更に、前記微粒子層上に、前記混合塗布液2をワイヤーバーで塗布し、130℃で2分間加熱硬化させた。その上に前記混合塗布液2を塗布し、130℃で2分間加熱硬化させ、厚み12.5μmの平坦化層を形成した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、101nmの厚みむらが生じていた。
【0178】
−有機電界発光装置の作製−
次に、作製した実施例4の有機電界発光用基板のバリア層上に、実施例1と同様にして、有機電界発光層を形成し、図4に示す実施例4の有機電界発光装置を作製した。
【0179】
(比較例1)
−有機電界発光装置の作製−
実施例1において、実施例1で作製した有機電界発光用基板の代わりにガラス基板(コーニング社製、ガラス基板Eagle XG(厚み0.7mm))を用いた以外は、実施例1と同様にして、図5に示す比較例1の有機電界発光装置を作製した。
【0180】
(比較例2)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例1における有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例1と同様にして、比較例2の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、15nmの厚みむらが生じていた。
次に、実施例1において、実施例1の有機電界発光用基板の代わりに比較例2の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例1と同様にして、図6に示す比較例2の有機電界発光装置を作製した。
【0181】
(比較例3)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例2における有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例2と同様にして、比較例3の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、41nmの厚みむらが生じていた。
実施例2において、実施例2の有機電界発光用基板の代わりに比較例3の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例2と同様にして、図7に示す比較例3の有機電界発光装置を作製した。
【0182】
(比較例4)
−有機電界発光用基板及び有機電界発光装置の作製−
実施例3の有機電界発光用基板の作製において、微粒子層を形成しない以外は、実施例3と同様にして、比較例4の有機電界発光用基板を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、98nmの厚みむらが生じていた。
実施例3において、実施例3の有機電界発光用基板の代わりに比較例4の有機電界発光用基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、図8に示す比較例4の有機電界発光装置を作製した。
【0183】
(比較例5)
<有機電界発光装置の作製>
実施例3の有機電界発光用基板の代わりに、以下のようにしてバリア層と凹凸層を形成した基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、図9に示す比較例5の有機電界発光装置を作製した。
作製した有機電界発光用基板について、実施例1と同様にして、バリア層の厚みむらを測定したところ、バリア層全体としては、95nmの厚みむらが生じていた。
−凹凸層を形成した基板の作製−
ポリエーテルサルホンフィルム(厚み100μm)を基材として前記基材の一方の面上に、実施例3と同様に9層のバリア層を形成した。
前記基材の他方の面に、ビス(4−メタクリロイルチオ−3,5−フェニル)スルフィド(住友精化株式会社製、MPSMA)13質量部、エポキシアクリレート(昭和高分子株式会社製、VR−60−LAV)6質量部、ジエチレングリコール54質量部、酢酸エチル26質量部、及び光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE907)1質量部からなる均一な混合コート液を塗布し、120℃、10分間で加熱乾燥後、スタンピングホイル用PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラーX44)を貼り合わせ、UV照射で硬化させた。
このPETフィルムを前記基材から剥がすことによって、厚み2μmの凹凸層を形成した(凹凸層の屈折率(nD)1.65、平均粗さ260nm)。
【0184】
次に、実施例1〜4及び比較例1〜5の有機電界発光装置について、以下のようにして、正面輝度及び色度の配光角度依存性、機差(基板面位置差)による色度バラツキ、水分透過度、並びに酸素透過度を測定した。結果を表2に示す。
【0185】
<正面輝度及び色度の配光角度依存性の測定>
東陽テクニカ株式会社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を各有機電界発光装置に印加して発光させた。正面輝度は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で分光放射輝度計(トプコン社製、SR−3)を用いて測定した。
基板回転時の配光分布については、分光輝度計(コニカミノルタ社製、CS−2000)を用い、配光測定時の光量分布、スペクトルを測定した。なお、配光測定時に有機電界発光装置をセットする回転ステージは自動的に回転する手製のものを使用した。一定の電流量(10mA/cm2)を前記基板に流し、発光させながら、基板(発光面)に鉛直な方向を0°とし、±80°の範囲を5°ステップで、前記分光輝度計にて光量分布及びスペクトルを測定した。得られたスペクトルからCIE表色系を用い、0°と80°それぞれの色度x値とy値を算出し、0°から80°での色度x値、y値の変化量(Δx、Δy)を求めた。
【0186】
<機差(基板面位置差)による色度バラツキ>
バリア層は基板面内に厚みむらがあるため、バリア層付きの基板の切り出し位置によってバリア層の厚みが異なる。このため、有機電界発光装置は機差(基板面での位置差)により色度が異なる(機差バラツキ)可能性がある。そこで、図17に示すように、バリア層付きの基板をカットし、何点かのサンプル(例えば図17中A、B、C、D)を作製し、機差バラツキについて測定を行った。測定は正面輝度の測定と同様にして行った。各有機電界発光装置の得られたスペクトルからCIE表色系を用い、それぞれの色度x値とy値を算出し、色度x値、y値の機差が最大となる値Δx’、Δy’(最大機差色度とおく)を求めた。
【0187】
<水分透過度の測定>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERら、SID Conference Record of the International Display Research Conference1435-1438頁に記載の方法(カルシウムを用いた測定法)を用い、温度は40℃、相対湿度は90%中で測定した。
本測定方法では、水分透過度が1.0×10−5g/m2/day以下の場合には数値精度に問題が生じるおそれがあるので、<1.0×10−5と表記した。
【0188】
<酸素透過度の測定>
酸素透過率測定装置(MOCON社製、MOCON酸素透過率測定装置 OX−TRAN 1/50A)を用い、測定した。
本測定方法では、酸素透過度が0.1cc/m2/dayが測定限度であり、測定限界以下の場合には、<0.1と表記した。
【0189】
【表2−1】
【表2−2】
【0190】
<バリア層、凹凸緩和層、又は微粒子層を設けたことによる発光スペクトルの形状変化>
図12〜図15に、比較例1、比較例4、比較例5、及び実施例4の有機電界発光装置での発光スペクトルを示す。発光スペクトルは、前記正面輝度の測定と同様に、東陽テクニカ株式会社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧を各有機電界発光装置に印加して発光させ、発光面中心で10mA/cm2の電流値で分光放射輝度計(トプコン社製、SR−3)により測定した。
これらの結果から、バリア層によって変調した発光スペクトル(比較例1→比較例4)が、凹凸緩和層によって緩和され(比較例4→比較例5)、更に、微粒子層ではほぼ完全に変調成分が除去される(比較例5→実施例4)ことが認められた。
また、図16では、比較例4と同構成でかつ同時に作製されたバリア層有りの有機電界発光装置である比較例4−1と比較例4−2における発光スペクトルを示した。図16の結果から、比較例4のバリア層付き有機電界発光装置の発光スペクトル形状は、比較例4−1と比較例4−2のように同時に成膜したため基板以外の全ての構成が同一であるのにも関わらず、バリア層の厚みむらによって、発光スペクトルの形状が変化し、色度に機差によるばらつき(最大機差色度)が発生することが認められた。
【0191】
表2の結果から、実施例1の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,360cd/m2の正面輝度が得られ、微粒子層の無い比較例2の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例1の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例2に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例2に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例2の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,365cd/m2の輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例3の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例2の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例3に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例3に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例3の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,362cd/m2の輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例4の有機電界発光装置に比べて約50%程度輝度が上昇していることが分かった。また、実施例3の基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例4に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
実施例4の有機電界発光装置は、発光面中心で10mA/cm2の電流値で2,722cd/m2の正面輝度が得られ、微粒子層の無い、比較例4の有機電界発光装置に比べて約70%程度の輝度が上昇していた。また、基板回転時の色度の変化(Δx、Δy)は比較例4に比べて非常に小さくなった。また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4に比べて小さくなり、バリア層の厚みむらによる色度差が抑制されている。
比較例2〜4の有機電界発光装置は、比較例1と同じ電流値では輝度はほぼ同等であるが、比較例2〜4では配光の色度角度依存性が大きくなり、また、色度の基板面内分布となる最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例1に比べて大きくなっている。ガラス基板には無かった、バリア層の干渉と厚みむらによる影響と推定する。
比較例5の有機電界発光装置は、比較例4との比較で、輝度は同電流値で1,884cd/m2で取り出し効率は20%弱大きくなっているが、実施例3及び4に比べて劣る結果となっている。また、配光の色度角度依存性(Δx、Δy)、最大機差色度(Δx’、Δy’)も比較例4との比較では小さくなっているが、実施例3及び4に比べて配光の色度角度依存性、最大機差色度の抑制効果は小さい結果となっている。
【0192】
(応用例1)
−フレキシブルな有機電界発光パネルの作製−
実施例4における有機電界発光装置の作製において、アルミニウム蒸着後の積層体をCVD装置に移し、無機封止層11としてのSiN膜を厚みが3μmとなるように成膜した。成膜後、窒素雰囲気下のグローブボックスに積層体を移し、SiN膜上に固体接着層12を貼り付け、熱圧着し、更に固体接着層12上に厚み100μmのPETフィルム13を貼り付けた。固体接着層を加熱にて硬化させて、図10に示すフレキシブルな有機電界発光パネルを作製した。
【0193】
(応用例2)
−フレキシブルな有機電界発光パネルの作製−
実施例4における有機電界発光装置の作製において、アルミニウム蒸着後の積層体を窒素雰囲気下のグローブボックスに移し、積層体、電極上付近中央に充填材16、基板周囲に封止材15を塗布し、更にその上に、実施例4で作製した基板と同じ有機層と無機層が合計9層積層されたバリア層14の付いたPETフィルム(微粒子層無し)13を、バリア層側を充填材16、及び封止材15塗布側に向けて貼り付けた。充填材16、及び封止材15をUV照射及び加熱にて固化させることで、図11に示すフレキシブルな有機電界発光パネルを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明の有機電界発光用基板及び有機電界発光装置は、例えば、各種照明、コンピュータ、車載用表示器、野外表示器、家庭用機器、業務用機器、家電用機器、交通関係表示器、時計表示器、カレンダ表示器、ルミネッセントスクリーン、音響機器等をはじめとする各種分野において好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0195】
1 基材
2 微粒子層
3 バリア層
4 電極
5 有機層
6 電極
7 封止缶
8 平坦化層
9 凹凸層
10 ガラス基板
11 無機封止層
12 接着層
13 基材(PET)
14 バリア層
15 封止材
16 乾燥剤入り充填材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光用基板。
【請求項2】
バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する請求項1に記載の有機電界発光用基板。
【請求項3】
有機層と無機層との合計積層数が2層以上である請求項2に記載の有機電界発光用基板。
【請求項4】
微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子用基板。
【請求項5】
微粒子層における微粒子の体積充填率が30%〜80%である請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項6】
微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は微粒子層の光出射面に平坦化層を有する請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項7】
更に基材を有してなり、該基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の有機電界発光用基板を有することを特徴とする有機電界発光装置。
【請求項9】
有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05大きくなるように設定する請求項8に記載の有機電界発光装置。
【請求項1】
厚みむらが10nm以上1,000nm以下であるバリア層と、微粒子を含有する微粒子層と、を少なくとも有することを特徴とする有機電界発光用基板。
【請求項2】
バリア層が、有機材料からなる有機層と、無機材料からなる無機層とを交互に積層した多層構造を有する請求項1に記載の有機電界発光用基板。
【請求項3】
有機層と無機層との合計積層数が2層以上である請求項2に記載の有機電界発光用基板。
【請求項4】
微粒子の平均粒径が0.5μm〜10μmである請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子用基板。
【請求項5】
微粒子層における微粒子の体積充填率が30%〜80%である請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項6】
微粒子層の光出射面が平坦であるか、又は微粒子層の光出射面に平坦化層を有する請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項7】
更に基材を有してなり、該基材の材質が、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)のいずれかである請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光用基板。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の有機電界発光用基板を有することを特徴とする有機電界発光装置。
【請求項9】
有機電界発光用基板における微粒子層を設ける前の状態での色度を、CIE表色系で、目標色度より色度xが0.01〜0.05、色度yが0.01〜0.05大きくなるように設定する請求項8に記載の有機電界発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−69507(P2012−69507A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134988(P2011−134988)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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