説明

有機電界発光素子およびその光取り出し方法、並びに照明装置および表示装置

【課題】発光面積の増大によらず均一な発光が可能な有機電界発光素子およびその光取り出し方法、並びに照明装置および表示装置を提供する。
【解決手段】基板11面上に沿って正電極12および負電極13を互いに離間して設けると共に、電極間ギャップ領域Gに発光層14Bを配置する。正電極12と負電極13との間に電界Fが印加されると、正電極12から正電荷(+)、負電極13から負電荷(−)がそれぞれ注入されて発光が生じる。外部電界Fの印加方向つまり正電荷(+)および負電荷(−)の注入方向は、正電極12および負電極13の配置方向Aと同じ(または略同じ)になる。発光層14Bで発生した光Hは、正電極12および負電極13の配置方向Aに対して鉛直な方向に、発光層14Bの基板11とは反対側から取り出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子およびその光取り出し方法に関する。また、本発明は、この有機電界発光素子を備えた照明装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)は、電荷を注入する必要がある面内発光素子である。そのため、有機電界発光素子は一般に、基板上に正電極と、発光層または発光ユニットと、負電極とが膜厚方向に積層された構造を有しており、電界印加方向(キャリア注入方向)と光取り出し方向は同一とされている(例えば、特許文献1,特許文献2および非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−39617号公報
【特許文献2】特許第3933591号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. W. Tang、外1名、“Organic electroluminescent diodes”、Applied Physics Letters、American Institute of Physics、1987年、第51巻、第12号、p.913−p.915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の素子構造および光取り出し方法では、大面積発光のためには電極面積を大きくする必要があった。そのため、電極内の電圧降下による発光の不均一性が問題となっていた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、発光面積の増大によらず均一な発光が可能な有機電界発光素子およびその光取り出し方法、並びに照明装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による有機電界発光素子は、以下の(A)〜(C)の構成要素を備えたものである。
(A)基板
(B)基板面上に沿って、互いに離間して配置された正電極および負電極
(C)正電極および負電極の間の領域に設けられ、有機発光分子を含む発光層
【0008】
本発明による有機電界発光素子の光取り出し方法は、基板面上に沿って正電極および負電極を互いに離間して配置すると共に、正電極と負電極の間の領域に有機発光分子を含む発光層を設け、発光層で発生した光を、正電極および負電極の配置方向に対して鉛直な方向に取り出すようにしたものである。
【0009】
ここで本発明にいう「鉛直」とは、鉛直のみならず略鉛直も含む。
【0010】
本発明による照明装置、または本発明による表示装置は、上記本発明の有機電界発光素子を備えたものである。
【0011】
本発明の有機電界発光素子、または本発明の有機電界発光素子の光取り出し方法では、外部電界の印加により正電極および負電極から電荷が注入され、発光層中の有機発光分子が励起されて、基底状態に戻る際に発光が生じる。外部電界の印加方向つまり電荷の注入方向は、正電極および負電極の配置方向と同じ(または略同じ)になる。一方、発光層で発生した光は、正電極および負電極の配置方向に対して鉛直な方向に取り出される。
【0012】
本発明の照明装置、または本発明の表示装置では、上記本発明の有機電界発光素子から取り出された光により照明または表示がなされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有機電界発光素子によれば、基板面上に沿って正電極および負電極を互いに離間して設けると共に、正電極と負電極の間の領域に有機発光分子を含む発光層を配置するようにしたので、また、本発明の有機電界発光素子の光取り出し方法によれば、発光層で発生した光を、正電極および負電極の配置方向に対して鉛直な方向に取り出すようにしたので、正電極および負電極の材料を不透明であるが電気伝導性の高いものとすることが可能となる。よって、電極内の電圧降下による発光の不均一性を低減し、発光面積の増大によらず均一な発光を得ることが可能となる。特に、照明装置または表示装置など、大面積発光が求められる用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した正電極および負電極の例を表す斜視図である。
【図3】図1に示した有機電界発光素子の製造方法の流れを表す図である。
【図4】図3に示した製造方法を工程順に表した平面図および断面図である。
【図5】図4に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図6】図5に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図9】図8に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図10】図9に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す平面図および断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図16】図15に示した有機電界発光素子を備えた照明装置の一例の外観を表す斜視図である。
【図17】照明装置の他の例の外観を表す斜視図である。
【図18】照明装置の更に他の例の外観を表す斜視図である。
【図19】図15に示した有機電界発光素子を備えた液晶表示装置の概略構成を表す断面図である。
【図20】本発明の第6の実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図21】図20に示した有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図22】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図23】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図24】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図25】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図26】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図27】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(平坦な基板に、正電極および負電極と、発光層とを設けた例)
2.第2の実施の形態(凹凸を有する基板を用いた例)
3.第3の実施の形態(磁界印加する例)
4.第4の実施の形態(光反射層を備えた例)
5.第5の実施の形態(白色発光層を備えた例;照明装置、液晶表示装置)
6.第6の実施の形態(素子間に隔壁を設けた例;有機EL表示装置)
【0016】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表すものである。この有機電界発光素子は、照明装置または液晶用バックライト装置などに用いられるものであり、例えば、基板11に、正電極(アノード電極)12および負電極(カソード電極)13と、有機層14とを有している。有機層14は、発光層14Bを有している。
【0017】
基板11は、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などにより構成されている。
【0018】
正電極12および負電極13は、基板11面上に沿って、互いに離間して配置されている。発光層14Bは、正電極12および負電極13の全体を覆っており、正電極12および負電極13の間の電極間ギャップ領域Gに設けられている。これにより、この有機電界発光素子では、発光面積の増大によらず均一な発光が可能となっている。
【0019】
電極間ギャップ領域Gは、正電荷および負電荷の再結合が生じる領域であり、例えば、100nm程度とされていることが好ましい。電極間ギャップ領域Gに存在する有機発光分子内で正電荷および負電荷が伝導される距離が100nmを超えると、失活して熱に変わってしまう可能性が高まるからである。
【0020】
正電極12は、例えば、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されている。また、正電極12は、反射電極により構成してもよい。その場合、正電極12は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。例えば、正電極12を構成する材料としては、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。なお、正電極12の下には、後述する製造工程において工程数を削減するため、負電極13と同じ材料よりなる下層電極15が設けられていてもよい。
【0021】
負電極13は、例えば、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、負電極13は、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されていてもよい。負電極13の厚みは、例えば、30nm以上100nm以下であることが好ましい。30nm以上であれば良好な電気伝導を得ることが可能であり、100nm以下であれば表面粗さの影響が許容できるからである。
【0022】
有機層14は、例えば、正孔輸送層14A、発光層14Bおよび電子輸送層(図示せず)を有するが、これらのうち発光層14B以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層14は、発光層14Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。
【0023】
正孔輸送層14Aは、発光層14Bへの正孔輸送効率を高めるためのものであり、正電極12の表面に設けられている。正孔輸送層14Aは、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。なお、正孔輸送層14Aと正電極12との間には、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)などよりなる正孔注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0024】
発光層14Bは、有機発光分子を含んでおり、電界をかけることにより正電荷と負電荷との再結合が起こり、光を発生するものである。発光層14Bは、例えば、厚みが10nm以上100nm以下であり、材料は発光色により異なっている。赤色の光を発生する発光層14Bは、例えば、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)に2,6≡ビス[4´≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成されている。緑色の光を発生する発光層14Bは、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )、またはADNにクマリン6(Coumarin6)を5体積%混合したものにより構成されている。Alq3 の場合には、発光層14Bが電子輸送層の機能を兼ねることが可能なので、電子輸送層を別途設ける必要はない。青色の光を発生する発光層14Bは、例えば、ADNに4,4´≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成されている。また、発光層14Bは、高分子材料により構成されていてもよい。
【0025】
電子輸送層は、発光層14Bへの電子輸送効率を高めるためのものであり、負電極13の表面に設けられている。電子輸送層は、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 により構成されている。なお、電子輸送層と負電極13との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0026】
これら正電極12,負電極13および有機層14は、必要に応じて保護層16により被覆されている。保護層16は、例えば、厚みが500nm以上10000nm以下であり、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。
【0027】
図2は、正電極12および負電極13の形状および配置の一例を表したものである。なお、図2では有機層14および保護層16を省略している。正電極12は、正電極母線12Aと、この正電極母線12Aから分岐する2本以上の正電極支線12Bとよりなる櫛歯形状を有している。一方、負電極13は、負電極母線13Aと、この負電極母線13Aから分岐する2本以上の負電極支線13Bよりなる櫛歯形状を有している。正電極支線12Bと、負電極支線13Bとは、交互に配置されている。
【0028】
この有機電界発光素子は、例えば次のようにして製造することができる。
【0029】
図3は、この有機電界発光素子の製造方法の流れを表したものであり、図4ないし図11は、この製造方法を工程順に表したものである。まず、図4に示したように、上述した材料よりなる基板11を用意する(ステップS101)。
【0030】
次いで、図5に示したように、この基板11の全面に、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる負電極13を形成する(ステップS102)。
【0031】
続いて、図6に示したように、負電極13の上に、アノード形成用マスク17Aを用いた蒸着法により、上述した材料よりなる正電極12を形成する(ステップS102)。
【0032】
そののち、図7に示したように、例えばFIB(集束イオンビーム)エッチングにより、正電極12と負電極13との間に、電極間ギャップ領域Gを設ける(ステップS103)。なお、このとき、正電極12の下には、負電極13と同じ材料よりなる下層電極15が形成される。
【0033】
電極間ギャップ領域Gを設けたのち、図8に示したように、正孔輸送層形成用マスク17Bを用いた蒸着法により、正電極12の表面に、上述した材料よりなる正孔輸送層14Aを形成する(ステップS104)。また、図示しないが、必要に応じて、電子輸送層形成用マスクを用いた蒸着法により、負電極13の表面に、上述した材料よりなる電子輸送層を形成する(ステップS104)。そののち、図9に示したように、正孔輸送層形成用マスク17Bを除去する。
【0034】
正孔輸送層14Aおよび電子輸送層を形成したのち、図10に示したように、発光層14Bを、正電極12および負電極13の全体を覆って形成する。これにより、正電極12および負電極13の間の電極間ギャップ領域Gに発光層14Bが設けられる(ステップS105)。
【0035】
発光層14Bの形成方法としては、例えば、Alq3などの低分子材料の場合には蒸着などの乾式成膜を用い、PPV(ポリフェニレンビニレン)などの高分子材料の場合には、ドクターブレード,スピンコート,スクリーン印刷などの湿式成膜を用いる。
【0036】
発光層14Bを形成したのち、図11に示したように、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる保護層16を形成して封止する(ステップS106)。なお、発光層14Bおよび保護層16は、正電極12および負電極13の一部を被覆せずに露出させており、この露出領域が外部接続端子となっている。
【0037】
この有機電界発光素子では、正電極12と負電極13との間に電界Fが印加されると、正電極12から正電荷(+)、負電極13から負電荷(−)がそれぞれ注入され、発光層14B中の有機発光分子が励起されて、基底状態に戻る際に発光が生じる。ここでは、正電極12および負電極13が、基板11面上に沿って互いに離間して設けられていると共に、電極間ギャップ領域Gに発光層14Bが配置されているので、外部電界Fの印加方向つまり正電荷(+)および負電荷(−)の注入方向は、正電極12および負電極13の配置方向Aと同じ(または略同じ)になる。一方、発光層14Bで発生した光Hは、正電極12および負電極13の配置方向Aに対して鉛直な方向に、発光層14Bの基板11とは反対側から取り出される。なお、図1では、正電荷(+)および負電荷(−)の移動方向を点線矢印で表している。
【0038】
このように本実施の形態では、基板11面上に沿って正電極12および負電極13を互いに離間して設けると共に、電極間ギャップ領域Gに発光層14Bを配置するようにしたので、正電極12および負電極13の材料を不透明であるが電気伝導性の高いものとすることが可能となる。よって、正電極12および負電極13内の電圧降下による発光の不均一性を低減し、発光面積の増大によらず均一な発光を得ることが可能となる。
【0039】
(第2の実施の形態)
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、基板11の凹部11Aに正電極12、凸部11Bに負電極13が設けられていることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有している。凹部11Aおよび凸部11Bは、基板11が樹脂基板である場合には射出成形などで容易に形成可能である。また、凹部11Aおよび凸部11Bを用いたナノインプリントを利用することで、凹部11Aのみに正電極12、凸部11Bのみに負電極13をそれぞれ形成することが容易となる。更に、基板11に凹部11Aおよび凸部11Bが設けられていることにより、発光層14Bで発生した光Hの取り出し効率の向上も期待できる。
【0040】
(第3の実施の形態)
図13は、本発明の第3の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、外部磁界発生部20を有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0041】
外部磁界発生部20は、正電極12および負電極13の配置方向Aに対して鉛直であると共に光取り出し方向Hに対して鉛直な方向(紙面に垂直な方向)への外部磁界を印加するものである。外部磁界発生部20は、例えば、所定の方向へ外部磁界を発生するような位置に離間して配置した2つの永久磁石により構成されている。あるいは、所定の面内方向へ着磁された磁性膜を基板11上の正電極12または負電極13下部へ配置することにより構成されている。
【0042】
この有機電界発光素子は、外部磁界発生部20を設けることを除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0043】
この有機電界発光素子では、正電極12と負電極13との間に電界Fが印加されると、第1の実施の形態と同様に、正電極12から正電荷(+)、負電極13から負電荷(−)がそれぞれ注入され、発光層14Bにおいて発光が生じる。ここでは、外部磁界発生部20が設けられているので、この外部磁界発生部20により印加された外部磁界が、正電極12および負電極13から注入された正電荷(+)および負電荷(−)を、基板11面から鉛直かつ正電極12および負電極13から離れる方向に移動させる。このような電荷の移動によって、基板11側の有機発光分子だけではなく、保護層16側(基板11とは反対側)の有機発光分子も励起させることが可能となり、発光層14Bからの光Hの取り出し効率が高まる。
【0044】
このように本実施の形態では、外部磁界発生部20を設けるようにしたので、発光層14Bからの光Hの取り出し効率を高めることが可能となる。
【0045】
(第4の実施の形態)
図14は、本発明の第4の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、基板11面上に光反射層31および下地層32を有していることを除いては、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。よって、対応する構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0046】
光反射層31は、基板11面上に設けられ、例えば金属反射膜により構成されている。下地層32は、正電極12と負電極13との短絡を防止するためのものであり、光反射層31と正電極12および負電極13との間に設けられ、光反射層31の表面を覆っている。下地層32は、例えば透明誘電体膜により構成されている。
【0047】
この有機電界発光素子は、基板11面上に光反射層31および下地層32を設けることを除いては、第1の実施の形態と同様にして製造することができる。
【0048】
この有機電界発光素子では、正電極12と負電極13との間に電界Fが印加されると、第1の実施の形態と同様に、正電極12から正電荷(+)、負電極13から負電荷(−)がそれぞれ注入され、発光層14Bにおいて発光が生じる。ここでは、基板11面上に光反射層31および下地層32が設けられているので、基板11側へ進んだ光が光反射層31で反射され、発光層14Bの基板11とは反対側から取り出される。よって、発光層14Bで発生した光Hの損失が小さくなり、光Hの取り出し効率が高まる。
【0049】
このように本実施の形態では、基板11面上に光反射層31および下地層32を設けるようにしたので、発光層14Bで発生した光Hの取り出し効率を高めることが可能となる。
【0050】
なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態と同様の外部磁界発生部20を設けるようにしてもよい。
【0051】
(第5の実施の形態)
図15は、本発明の第5の実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表したものである。この有機電界発光素子は、発光層14Bが、基板11側から順に、青色発光層14BB,緑色発光層14BGおよび赤色発光層14BRを順に積層した白色発光層であることを除いては、上記第2の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0052】
(照明装置)
図16および図17は、この第5の実施の形態の有機電界発光素子が適用される卓上用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、基台41に設けられた支柱42に、照明部43を取り付けたものであり、この照明部43は、上記第5の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。照明部43は、基板11として樹脂基板などの湾曲可能なものを用いることにより、図16に示した筒状、または図17に示した曲面状など、任意の形状とすることが可能である。
【0053】
図18は、第5の実施の形態の有機電界発光素子が適用される室内用の照明装置の外観を表したものである。この照明装置は、例えば、上記第5の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成された照明部44を有している。照明部44は、建造物の天井50Aに適宜の個数および間隔で配置されている。なお、照明部44は、用途に応じて、天井50Aに限らず、壁50Bまたは床(図示せず)など任意の場所に設置することが可能である。
【0054】
(液晶表示装置)
図19は、第5の実施の形態の有機電界発光素子が適用される液晶表示装置の概略構成を表したものである。この液晶表示装置は、液晶テレビジョン装置などとして用いられるものであり、液晶パネル61と、バックライト装置(面光源装置)62とを有する透過型カラー液晶表示装置である。
【0055】
液晶パネル61は、一対の透明基板の間に液晶層を挟んだ透過型液晶表示パネルである。透明基板の内面には透明電極膜、配向膜、カラーフィルタ等が設けられている。透明基板の外面には、それぞれ偏光板が設けられている。なお、必要に応じて、透明基板と偏光板との間には、位相差板等の光学補償シートが配置されていてもよい。
【0056】
バックライト装置62は、光源63と、拡散板64とを有しており、光源63は、上記第5の実施の形態に係る白色発光の有機電界発光素子により構成されている。拡散板64は、光学機能シート65と適宜組み合わせられてスクリーンを構成するものであり、第1面64Aに光源63からの光が照射され、第1面64Aの反対側の第2面64Bから、光が再放射されるようになっている。拡散板64は、光源63から距離Dを隔てて置かれている。光源63から放射された光は、拡散板64および光学機能シート65よりなるスクリーンと、光源63との間の空間で混合されることで、拡散板64に入射される光が均一化されるようになっている。
【0057】
(第6の実施の形態)
図20は、本発明の第6の実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板11の上に、表示領域110として、複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110の周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0058】
表示領域110内において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点に、トランジスタTrを介して、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)が配置されている。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介してトランジスタTrのドレイン電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介してトランジスタTrのゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。なお、トランジスタTrは、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0059】
図21は、図20に示した表示領域110の断面構成を表したものである。なお、図21では、隣接する有機電界発光素子10Rおよび10Gのみを表している。有機電界発光素子10Rは、赤色の光を発生する赤色発光層14BRを有している。有機電界発光素子10Gは、緑色の光を発生する緑色発光層14BGを有している。有機電界発光素子10Bは、図示しないが、青色の光を発生する青色発光層14BBを有している。有機電界発光素子10R,10G,10Bは、隔壁18により互いに隔てられている。このことを除いては、有機電界発光素子10R,10G,10Bは、上記第1の実施の形態と同様の構成を有し、その作用および効果も同様である。
【0060】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130からトランジスタTrのゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号がトランジスタTrのドレイン電極を介して供給される。これら走査信号および画像信号に応じてトランジスタTrがオンオフ制御され、これにより、各有機電界発光素子10R,10G,10Bの正電極12と負電極13との間に電界Fが印加される。この電界Fにより、正電極12から正電荷(+)、負電極13から負電荷(−)がそれぞれ注入され、第1の実施の形態と同様にして発光が生じる。発光層14Bで発生した光Hは、正電極12および負電極13の配置方向Aに対して鉛直な方向に、発光層14Bの基板11とは反対側から取り出される。
【0061】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0062】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図22に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、保護層16から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0063】
(適用例1)
図23は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0064】
(適用例2)
図24は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0065】
(適用例3)
図25は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0066】
(適用例4)
図26は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0067】
(適用例5)
図27は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0068】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0069】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、有機電界発光素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
11…基板、12…正電極、13…負電極、14…有機層、14A…正孔輸送層、14B…発光層、15…下層電極、16…保護層、20…外部磁界発生部、31…光反射層、32…下地層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板面上に沿って、互いに離間して配置された正電極および負電極と、
前記正電極および前記負電極の間の領域に設けられ、有機発光分子を含む発光層と
を備えた有機電界発光素子。
【請求項2】
前記発光層で発生した光は、前記正電極および前記負電極の配置方向に対して鉛直な方向に取り出される
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記発光層で発生した光は、前記発光層の前記基板とは反対側から取り出される
請求項2記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記正電極は、正電極母線および前記正電極母線から分岐する2本以上の正電極支線よりなる櫛歯形状を有し、
前記負電極は、負電極母線および前記負電極母線から分岐する2本以上の負電極支線よりなる櫛歯形状を有し、
前記正電極支線および前記負電極支線は交互に配置されている
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記正電極および前記負電極の配置方向に対して鉛直であると共に前記光取り出し方向に対して鉛直な方向への外部磁界を印加する外部磁界発生手段を備えた
請求項2記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記外部磁界発生手段により印加された外部磁界が、前記電極から注入された電荷を前記基板面から鉛直かつ前記電極から離れる方向に移動させる
請求項5記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記基板面上に設けられた光反射層と、
前記光反射層と前記正電極および前記負電極との間に設けられ、前記光反射層の表面を覆う下地層と
を備えた請求項1ないし6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
基板面上に沿って正電極および負電極を互いに離間して配置すると共に、前記正電極と前記負電極の間の領域に有機発光分子を含む発光層を設け、前記発光層で発生した光を、前記正電極および前記負電極の配置方向に対して鉛直な方向に取り出す
有機電界発光素子の光取り出し方法。
【請求項9】
基板と、
前記基板面上に沿って、互いに離間して配置された正電極および負電極と、
前記正電極および前記負電極の間の領域に設けられ、有機発光分子を含む発光層と
を有する有機電界発光素子を備えた照明装置。
【請求項10】
前記発光層は、赤色発光層、緑色発光層および青色発光層を含む白色発光層である
請求項9記載の照明装置。
【請求項11】
基板と、
前記基板面上に沿って、互いに離間して配置された正電極および負電極と、
前記正電極および前記負電極の間の領域に設けられ、有機発光分子を含む発光層と
を有する有機電界発光素子を備えた表示装置。
【請求項12】
前記有機電界発光素子を複数有すると共に、前記複数の有機電界発光素子を隔てる隔壁とを備えた
請求項11記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2010−282891(P2010−282891A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136353(P2009−136353)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】