説明

有機電界発光素子および表示装置

【課題】寿命特性を向上させることが可能な有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】陽極11と陰極31との間に有機層20を備え、有機層20は、陽極11側から順に、正孔注入層21、正孔輸送層22、発光層23、電子輸送層24を積層した構造を有している。正孔注入層21は、アニリン誘導体および有機酸を含む第1正孔注入層21Aと、チオフェン誘導体および有機酸を含む第2正孔注入層21Bを有している。正孔輸送層22は、7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミンなどを含んで設けられている。有機層20に電界をかけた場合に、陽極11からの正孔を発光層23へ効率よく十分に注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーディスプレイなどに用いられる有機電界発光素子およびそれを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ、バッテリ、トランジスタあるいは記録デバイスなどに、有機物質を薄膜化して用いる有機電界発光(有機EL)、有機太陽電池、有機トランジスタあるいは有機メモリなどに関する技術、いわゆる有機エレクトロニクスが脚光を浴びている。
【0003】
この中でも、有機ELに関しては、次世代のディスプレイ技術として注目を集めている。具体的には、1987年にイーストマン・コダック社のタンらにより、アモルファス発光層を有する積層構造を備えた低電圧駆動および高輝度発光が可能な有機電界発光素子が発表された。この有機電界発光素子は、陽極および陰極の間に有機層を備え、例えば、その有機層が正孔輸送層、発光層および電子輸送層などを含む積層構造を有している。
【0004】
それ以来、有機電界発光素子についての研究開発が盛んにされているが、長寿命が要求されるディスプレイに用いるものとしては、発光寿命が短く、十分な寿命特性が得られていなかった。そこで、寿命特性の向上を目的として、有機層に用いられる有機材料(有機EL材料)、特に正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料について検討されている。具体的には、正孔輸送材料として、カルバゾール誘導体を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0005】
このような有機EL材料の研究により、携帯電話用あるいはMP3プレーヤ用のディスプレイやカムコーダ用ビューファインダなどのディスプレイとしての使用には、十分な寿命特性が確保できるようになった。これによって、車載オーディオ用途あるいはモバイル機器用途のディスプレイとして商品化が進められているが、CRTや液晶ディスプレイなどのテレビ用のディスプレイとしての表示寿命までには至っていない。このため、さらに寿命特性を向上させ、CRTやプラズマディスプレイあるいは液晶ディスプレイに代わるホームユースの表示装置に用いられる有機電界発光素子の開発が進められている。
【0006】
この表示装置に用いられる有機電界発光素子としては、上面発光型の有機電界発光素子が知られている。具体的には、例えば、図3に示したように、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)などの駆動回路を有する駆動基板102上に、光反射性の陽極103、有機層104、および光透過性の陰極105がこの順で積層された構成を有している。有機層104は、例えば、陽極103側から順に、正孔輸送層104A、発光層104Bおよび電子輸送層104Cが積層した構成を有している。これにより、駆動回路を含む駆動基板102の反対側(陰極105側)から発光光を取り出せるので、発光部の開口率を向上させるうえで有利となる。この開口率の向上によって、有機電界発光素子に印加する電流密度を低く抑えても、十分な発光輝度が得られるため、寿命特性の向上に繋がることになる。
【0007】
このような上面発光型の有機電界発光素子における陽極は、陰極側から発光光を効率的に取り出すために、反射率の高い材料により構成されている。この材料としては、例えば、銀あるいは銀を含む合金を用いることが提案されている(例えば、特許文献5参照)。ところが、銀等の材料を陽極に用いた場合、駆動時、特に高温駆動時に、ヒロック発生によるショートや、マイグレーションによる断線などの問題が生じやすい。
【0008】
そこで、陽極の材料として、アルミニウムを主成分として含むアルミニウム合金を用いることが検討されている。この場合には、アルミニウムの仕事関数が比較的小さいことを補うために、副成分金属として、仕事関数が高い銅、パラジウム、金あるいは白金などを10重量%程度含むアルミニウム合金が用いられている。また、陽極の材料としては、アルミニウムを主成分とし、副成分金属として白金などよりも安価であると共に、アルミニウムの仕事関数よりも相対的に低いネオジム等を用いることも提案されている(例えば、特許文献6参照)。この場合には、陽極上に設けられた正孔注入層の材料として、アザトリフェニレンやトリフェニレンの誘導体を用いることも開示されている。
【0009】
ところで、この有機電界発光素子の有機層を構成する各層は、通常、真空蒸着法などの気相法により成膜されている。この場合、例えば、陽極上に異物が存在すると、その異物の上に有機層が成膜されるため、陽極に被覆されない箇所(非被覆部)が生じる。そして、その非被覆部の上に、陰極を設けると、その非被覆部において陽極および陰極の間で短絡が生じ、その短絡が生じた画素において発光しないことになる。これにより、生産歩留まりの低下が生じやすいという問題がある。また、気相法により成膜する装置は、高価であるため、高コスト化の問題もある。
【0010】
そこで、上記した製造上の問題を解決するために、塗布法により、有機層を形成することが提案されている。具体的には、例えば、正孔注入材料としてPEDOTと称されるポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸誘導体などの有機酸とを混合して用いて、陽極上に塗布法により正孔注入層を形成する方法である(例えば、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3649302号明細書
【特許文献2】特開平11−329737号公報
【特許文献3】特開2003−229279号公報
【特許文献4】特開2005−158691号公報
【特許文献5】特開2003−234193号公報
【特許文献6】特開2006−079836号公報
【非特許文献1】B.W.D’アンドラド,M.E.トンプソン,S.R.フォレスト、Adv.Mater.,14,147(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記したポリチオフェン誘導体およびポリスチレンスルホン酸を含む層を正孔注入層として用いた場合には、発光寿命が短くなりやすく、十分な寿命特性が得られにくかった。また、このことは、正孔注入材料として上記特許文献6に記載されているアザトリフェニレンやトリフェニレンの誘導体を用いた場合にも同様であった。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、寿命特性を向上させることが可能な有機電界発光素子および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、発光層を含む有機層を備え、有機層は、陽極と発光層との間に、陽極側から順に、チオフェン誘導体および有機酸を含む第1の層、ならびに式(1)および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む第2の層を積層して有するものである。また、本発明の表示装置は、本発明の有機電界発光素子を備えたものである。
【0014】
【化1】

(R1およびR2は各々独立して芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R3〜R10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基であり、R3〜R10のうちの隣り合うもの同士は結合して環構造を形成してもよい。L1は、2価の芳香族炭素環基、置換基を有する2価の芳香族炭素環基、2価の芳香族複素環基および置換基を有する2価の芳香族複素環基のうちの少なくとも1種が1つ〜4つ連結してなる連結基である。)
【0015】
【化2】

(X1はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基または、それらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。X2はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基、あるいはそれらに1もしくは2以上の置換基が導入された基、または−N(Y1)(Y2)−であり、Y1およびY2は芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基あるいはアラルキル基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R13およびR14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。)
【0016】
本発明の有機電界発光素子および表示装置では、有機層が、陽極と発光層との間に、陽極側から順に、チオフェン誘導体および有機酸を含む第1の層、ならびに式(1)および式(2)示した化合物のうちの少なくとも一方を含む第2の層を積層して有している。これにより、両極間に電界を印加すると、第1の層が、第2の層に対して、正孔を効率よく注入し、第2の層が注入された正孔を発光層へ効率よく輸送する。このように陽極側から移動した正孔と、陰極側から輸送された電子とが、発光層において再結合して光が発せられる。この場合、第1の層中に遊離したプロトン(H+ )が含まれていると、プロトンも正孔と共に移動する。ここで、第2の層を設けていないと、プロトンが発光層へ拡散し、発光効率が低下して十分な発光強度を維持しにくくなるが、第2の層を有していることによって、第2の層がプロトンを捕捉しつつ、正孔を発光層へ効率よく輸送する。このため、長時間駆動しても発光効率の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機電界発光素子または表示装置によれば、有機層が、陽極と発光層との間に、陽極側から順に、上記の第1の層、および上記の第2の層を設けるようにしたので、長時間駆動しても発光強度が良好に維持され、寿命特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明する順序は以下の通りである。
1.有機電界発光素子(上面発光型の例)
2.表示装置(有機電界発光素子の使用例)
3.変形例
【0019】
[1.有機電界発光素子(上面発光型の例)]
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表している。この有機電界発光素子(有機EL素子)は、例えばカラーディスプレイなどの表示装置に用いられるものである。この有機電界発光素子は、例えば、基板10上に、陽極11、有機層20および陰極31をこの順で備えている。また、有機層20は、陽極11側から順に、正孔注入層21、正孔輸送層22、発光層23および電子輸送層24を積層した構造を有している。ここでは、発光層23から発せられる光(以下、発光光という)が陰極31側から取り出される上面発光型の有機電界発光素子の場合について説明する。
【0020】
基板10は、例えば、ガラスなどの透明基板や、シリコン基板や、フィルム状のフレキシブル基板などを含んで構成されている。また、基板10は、有機電界発光素子を用いて構成される表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、画素ごとにTFTなどの駆動回路が設けられたものなどでもよい。この場合の基板10には、画素ごとに、陽極11がマトリックス状に設けられており、これによりアクティブマトリックス方式の表示装置では、各画素が独立して駆動する。
【0021】
陽極11は、可視光の実質的全波長成分を反射できるように形成されていることが好ましい。陽極11を構成する材料としては、例えば、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタルあるいはニオブ、またはこれらのうちの1種あるいは2種以上を含む合金や、それらの酸化物などが挙げられ、その他に、酸化スズ、ITO、酸化亜鉛あるいは酸化チタンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併せて用いてもよい。
【0022】
中でも、陽極11を構成する材料は、アルミニウムを主成分として含み、かつ副成分としてアルミニウムよりも相対的に仕事関数が低い元素を含む合金(以下、アルミニウム合金という)であるのが好ましい。反射率が高く、比較的安価であるからである。このアルミニウム合金が含む副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくはないが、この元素を含むことにより、陽極11の安定性が向上すると共に十分な正孔注入性が得られるからである。また、アルミニウム合金は、副成分として、このランタノイド系列元素の他に、ケイ素や銅などを含んでいてもよい。アルミニウム合金が含む副成分元素の含有量は、10重量%以下であることが好ましい。良好な反射率が得られ、導電性も高く、基板10との密着性も高いからである。また、有機電界発光素子を製造する際に、その反射率が良好かつ安定的に維持される共に、高い加工精度および化学的安定性が得られるからである。
【0023】
また、陽極11は、その構成材料として上記のアルミニウム合金を用いる場合には、例えば、複数の層により形成されていてもよい。具体的には、このアルミニウム合金を含む層を第1層とし、有機層20側に優れた光透過性を有する第2層を設けた2層構造としてもよい。この優れた光透過性を有する第2層を構成する材料としては、上記のアルミニウム合金の酸化物、タングステンの酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、タンタルの酸化物、バナジウムの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、ITOあるいはIZOなどが挙げられる。中でも、アルミニウム合金の酸化物は、アルミニウム合金を含む第1層を形成したのちに、超高真空中に保持していなければ、その第1層の表面が酸化されて自然に形成される。このため、真空蒸着法やスパッタ法などの成膜工程を行わなくてもよいことから好ましい。また、アルミニウム合金を含む層を第1層とし、この第1層と基板10との間に、陽極11と基板10との密着性を向上させるために、導電性を有する第2層を形成してもよい。この導電性を有する第2層を構成する材料としては、例えば、ITOやIZOなどの透明導電性材料などが挙げられる。なお、陽極11では、上記で説明した2層構造の双方を併せて有していてもよい。すなわち、基板10との密着性を向上させるための導電性を有する層と、その上に設けられた上記したアルミニウム合金を含む層と、その上に設けられた優れた光透過性を有する層とを備えた3層構造としてもよい。
【0024】
有機層20が備えた正孔注入層21は、陽極11において生じた正孔を正孔輸送層22に効率よく注入するためのものである。この正孔注入層21は、例えば、2層構造を有しており、陽極11側から順に、第1正孔注入層21Aおよび第2正孔注入層21Bが積層して設けられている。
【0025】
第1正孔注入層21Aは、アニリン誘導体および有機酸を含んでいる。本実施の形態では、この第1正孔注入層21は必須のものではないが、寿命特性を向上させるという観点からすると、設けることが好ましい。第1正孔注入層21Aを設けないようにすると、後述するチオフェン誘導体および有機酸を含む層(第2正孔注入層21B)を陽極11の上に設けることになる。このチオフェン誘導体および有機酸を含む層を形成する際に用いる材料が強い酸性を示す場合には、陽極11が、例えばアルミニウム合金などの耐酸性の低い材料を含んでいると、陽極11が腐食されやすくなる。これにより、寿命特性を含む素子特性が低下するおそれがある。ところが、この第1正孔注入層21Aを設けることにより、そのようなチオフェン誘導体および有機酸を含む層を形成する際に用いる材料が強い酸性を示す場合であっても、耐酸性の高い第1正孔注入層21Aによって、陽極11の腐食が抑制される。そのうえ、第1正孔注入層21Aを設けることにより、正孔注入層21の正孔注入効率も高くなり、良好に維持される。よって、素子特性の中でも特に、高い寿命特性が得られやすくなる。
【0026】
このアニリン誘導体としては、式(7)で表される高分子化合物が好ましく、有機酸としては、式(4)で表される有機酸、式(5)で表される有機酸(フッ素化されたポリエーテルスルホン酸誘導体)および式(6)で表される有機酸(ポリスチレンスルホン酸誘導体)のうちの少なくとも1種が好ましい。なお、アニリン誘導体であれば、式(7)に示した高分子化合物に限定されるものではない。また、有機酸であれば、式(4)〜式(6)に示した有機酸に限定されるものでもない。
【0027】
【化3】

(R41〜R45は各々独立して水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、飽和炭化水素オキシ基、不飽和炭化水素オキシ基、アリール基、置換基を有するアリール基、アリールオキシ基、置換基を有するアリールオキシ基、複素環基あるいは置換基を有する複素環基である。L4〜L6は各々独立してベンゼン環骨格あるいはナフタレン環骨格を有する2価の基である。l、mおよびnは各々独立して0以上の整数であり、(l+m+n)≧1以上を満たす。)
【0028】
【化4】

(R31およびR32は各々独立してカルボキシル基あるいは水酸基である。B1はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環あるいは複素環を有する3価の基である。)
【0029】
【化5】

(x、yおよびzは各々独立して1以上の整数である。)
【0030】
【化6】

(pは1以上の整数である。)
【0031】
式(7)中で説明したL4〜L6は、ベンゼン環骨格あるいはナフタレン環骨格を有する2価の基であれば任意であるが、中でも、式(A−1),式(A−2)で表されるベンゼン環骨格を有する2価の基、あるいは式(B−1)〜式(B−3)で表されるナフタレン骨格を有する2価の基であるのが好ましい。
【0032】
【化7】

(R50〜R75は各々独立して水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、飽和炭化水素オキシ基、不飽和炭化水素オキシ基、アリール基、置換基を有するアリール基、アリールオキシ基、置換基を有するアリールオキシ基、複素環基、置換基を有する複素環基、アミノ基、置換基を有するアミノ基、アリールアミノ基、置換基を有するアリールアミノ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、ハロゲン原子、シラノール基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基あるいはカルボキシル基である。)
【0033】
式(7)に示した高分子化合物としては、例えば、式(7−1)で表される高分子化合物が挙げられる。すなわち、式(7)中のL4およびL5が式(A−1)に示した2価の基であり、L6が式(B−1)に示した2価の基であり、かつR41〜R45、R50〜R53およびR58〜R63がいずれも水素原子である高分子化合物である。なお、式(7)に示した構造を有していれば、式(7−1)に示した高分子化合物に限定されない。
【0034】
【化8】

(l、mおよびnは各々独立して0以上の整数であり、(l+m+n)≧1以上を満たす。)
【0035】
また、式(4)に示した化合物としては、例えば、式(4−1)で表される化合物が挙げられる。すなわち、R31およびR32がそれぞれカルボキシル基および水酸基であり、B1がベンゼン環である化合物である。なお、式(4)に示した構造を有していれば、式(4−1)に示した化合物に限定されない。
【0036】
【化9】

【0037】
第2正孔注入層21Bは、チオフェン誘導体および有機酸を含んでいる。これにより、正孔注入効率が高くなり、良好に維持される。なお、この第2正孔注入層21Bは、特許請求の範囲における「第1の層」に対応する一具体例である。
【0038】
このチオフェン誘導体としては、例えば、式(3)で表される高分子化合物が好ましい。また、この有機酸としては、上記した式(4)〜式(6)に示した化合物のうちの少なくとも1種が好ましい。なお、チオフェン誘導体であれば、式(3)に示した高分子化合物に限定されるものではない。このことは、ここで用いる有機酸についても同様である。
【0039】
【化10】

(R21は炭素数1〜5のアルキレン基、あるいは炭素数1〜5のアルキレン基に置換基が導入された2価の基である。Z1は酸素原子あるいは硫黄原子である。qは1以上の整数である。)
【0040】
式(3)中で説明したR21は、炭素数1〜5のアルキレン基の炭素骨格を有していれば任意であるが、中でも、炭素数2あるいは3のアルキレン基が好ましい。容易に入手可能であると共に、高い効果が得られるからである。
【0041】
この式(3)に示した高分子化合物としては、例えば、式(3−1)で表される高分子化合物などが挙げられる。なお、式(3)に示した構造を有していれば、式(3−1)に示した高分子化合物に限定されない。
【0042】
【化11】

(qは1以上の整数である。)
【0043】
この正孔注入層21の各層(第1正孔注入層21A,第2正孔注入層21B)を形成する方法としては、真空蒸着法などの気相方式や、湿式方式などが挙げられるが、中でも、湿式方式が好ましい。この各層を形成する材料が溶媒に対する溶解性を有すると共に、陽極11の上に異物があったとしても、その異物による短絡が抑制されるからである。具体的には、湿式方法を用いた膜は、陽極11上に異物があったとしても、非被覆部が生じないように、陽極11を良好に被覆できる。このため、陰極31の形成時に有機膜の非被覆部により生じるおそれがある電極間の短絡の発生が抑制され、これにより、非発光が生じにくくなる。従って、歩留まりの向上、低コスト化が可能となる。また、真空蒸着法などの気相法と比べて低コスト化が可能である。この湿式方式としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、あるいはスプレー法などの一般的な方法を用いることができる。この湿式方式で各層を形成する場合に用いる溶媒としては、例えば、フェノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、水、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルホルムアニリド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン、エタノール、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチルあるいはメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、形成工程や各層の膜厚制御などの必要に応じて複数種を混合して用いてもよい。
【0044】
正孔輸送層22は、正孔注入層21から注入された正孔を発光層23へ効率よく輸送するためのものであり、式(1)および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含んでいる。これにより、正孔注入層21(特に第2正孔注入層21B)が遊離したプロトンを含み、かつプロトンが正孔と共に移動してきても、正孔輸送層22がプロトンを捕捉し、発光層23へのプロトンの移動を抑制する。そのうえ、正孔輸送効率が良好に維持されるため、寿命特性が向上する。なお、正孔輸送層22は、特許請求の範囲における「第2の層」に対応する一具体例である。
【0045】
【化12】

(R1およびR2は各々独立して芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R3〜R10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基であり、R3〜R10のうちの隣り合うもの同士は結合して環構造を形成してもよい。L1は、2価の芳香族炭素環基、置換基を有する2価の芳香族炭素環基、2価の芳香族複素環基および置換基を有する2価の芳香族複素環基のうちの少なくとも1種が1つ〜4つ連結してなる連結基である。)
【0046】
【化13】

(X1はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基または、それらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。X2はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基、あるいはそれらに1もしくは2以上の置換基が導入された基、または−N(Y1)(Y2)−であり、Y1およびY2は芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基あるいはアラルキル基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R13およびR14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。)
【0047】
まず、式(1)に示した化合物について説明する。
【0048】
式(1)中で説明したR1,R2は、上記した基のうちのいずれかであれば任意である。R1,R2として導入される芳香族炭素環基としては、例えば、ベンゼン環の単環あるいは2〜5縮合環からなる基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基あるいはペリレニル基などである。また、R1,R2として導入される芳香族複素環基としては、例えば、5員環あるいは6員環の単環あるいは2〜5縮合環が挙げられる。具体的には、ピリジル基、トリアジニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基あるいはチエニル基などである。
【0049】
また、R1,R2として導入される芳香族炭素環基および芳香族複素環基が有する置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基あるいはアリル基などの炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基あるいはエトキシカルボニル基などの炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基あるいはエトキシ基などの炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基あるいはナフトキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などの炭素数7〜13のアラルキルオキシ基)、2級または3級アミノ基(例えば、ジエチルアミノ基あるいはジイソプロピルアミノ基などの炭素数2〜20の直鎖あるいは分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基あるいはフェニルナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基、メチルフェニルアミノ基などの炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子)、芳香族炭素環基(例えば、フェニル基あるいはナフチル基などの炭素数6〜10の芳香族炭素環基)、または芳香族複素環基(例えば、チエニル基あるいはピリジル基などの5員環あるいは6員環の単環または2縮合環からなる芳香族複素環基)などが挙げられる。中でも、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、ハロゲン原子、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基あるいはアリールアミノ基が特に好ましい。
【0050】
なお、R1,R2は、例えば、ターフェニル基などの、3つ以上の芳香族基を有すると共にその芳香族基を2つ以上の直接結合を介して連なった構造を含まないことが好ましい。以下のことが考えられるからである。R1およびR2がこの構造を含むと、式(1)中の−N(R1)(R2)で表したアリールアミノ基の部分によって、正孔輸送層22中の分子間距離が長く(離れて)形成されやすく、その結果、正孔輸送能を低下させるおそれがある。また、そのアリールアミノ基を有することによって、式(1)に示した化合物のガラス転移点(Tg)を低下させやすい。よって、正孔輸送層22がより高い正孔輸送能を発揮するためには、式(1)に示した化合物では、R1,R2として上記の構造を含まないことが好ましい。
【0051】
式(1)中で説明したR3〜R10は、上記した基のうちのいずれかであれば任意である。R3〜R10としては、水素原子、シアノ基、カルボキシル基および水酸基の他に、例えば、以下の基が挙げられる。すなわち、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子などである。アルキル基は、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基や、シクロペンチル基あるいはシクロヘキシル基などの炭素数5〜8のシクロアルキル基などである。アラルキル基は、ベンジル基あるいはフェネチル基などの炭素数7〜13のアラルキル基などである。アルケニル基は、ビニル基あるいはアリル基などの炭素数2〜7の直鎖または分岐のアルケニル基である。アミノ基は、ジエチルアミノ基あるいはジイソプロピルアミノ基などの炭素数2〜20の直鎖あるいは分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基や、ジフェニルアミノ基あるいはフェニルナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基や、メチルフェニルアミノ基などの炭素数7〜20のアリールアルキルアミノ基などである。アシル基は、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基あるいはナフトイル基などの炭素数1〜20の直鎖、分岐あるいは環状の炭化水素基部分を含むアシル基などである。アルコキシカルボニル基は、メトキシカルボニル基あるいはエトキシカルボニル基などの炭素数2〜7の直鎖あるいは分岐のアルコキシカルボニル基などである。アルコキシ基は、メトキシ基あるいはエトキシ基などの炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアルコキシ基である。アリールオキシ基は、フェノキシ基あるいはベンジルオキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基などである。アルキルスルホニル基は、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基あるいはヘキシルスルホニル基などの炭素数1〜6のアルキルスルホニル基である。アミド基は、メチルアミド基、ジメチルアミド基あるいはジエチルアミド基などの炭素数2〜7のアルキルアミド基や、ベンジルアミド基あるいはジベンジルアミド基などのアリールアミド基などである。芳香族炭素環基は、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基あるいはピレニル基などのベンゼン環の単環あるいは2〜4縮合環からなる芳香族炭素環基などである。芳香族複素環基は、カルバゾリル基、ピリジル基、トリアジル基、ピラジル基、キノキサリル基またはチエニル基などの5員環もしくは6員環の単環、2〜3縮合環からなる芳香族複素環基である。
【0052】
また、R3〜R10は、上記した基に1あるいは2以上の置換基が導入された基でもよい。この導入される置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、アルキル基(例えば、メチル基あるいはエチル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基あるいはアリル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルケニル基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基あるいはエトキシカルボニル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシカルボニル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基あるいはエトキシ基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルコキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基あるいはナフトキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基)、ジアルキルアミノ基(例えば、ジエチルアミノ基あるいはジイソプロピルアミノ基などの炭素数2〜20の直鎖または分岐のアルキル基を有するジアルキルアミノ基)、ジアリールアミノ基(ジフェニルアミノ基あるいはフェニルナフチルアミノ基などのジアリールアミノ基)、芳香族炭素環基(例えば、フェニル基などの芳香族炭素環基)、芳香族複素環基(例えば、チエニル基あるいはピリジル基などの5員環または6員環の単環からなる芳香族複素環基)、アシル基(例えば、アセチル基あるいはプロピオニル基などの炭素数1〜6の直鎖あるいは分岐のアシル基)、ハロアルキル基(例えばトリフルオロメチル基などの炭素数1〜6の直鎖または分岐のハロアルキル基)、またはシアノ基などが挙げられる。中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基あるいは芳香族炭素環基がより好ましい。
【0053】
また、R3〜R10は、式(1)中で説明したように、隣り合うもの同士が結合して環構造を形成してもよい。この場合には、式(1)中のN−カルバゾリル基がさらに縮合環を有することになる。この場合に形成される環構造は任意であるが、その員数は、5員環〜8員環であってもよく、5員環あるいは6員環であるのが好ましく、6員環であるのがより好ましい。また、この場合に形成される環構造の種類は、芳香族環であってもよいし、非芳香族環であってもよいが、芳香族炭化水素環であるのが好ましい。このR1〜R8のうちの隣り合う基同士が結合した場合の縮合環を有するN−カルバゾリル基としては、例えば、式(C−1)〜式(C−4)で表される基などが挙げられる。
【0054】
【化14】

【0055】
R3〜R10としては、中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基が好ましく、特に、水素原子、メチル基、メトキシ基あるいはフェニル基が好ましい。具体的には、R3〜R10はいずれも水素原子である、またはR3〜R10のうちのいずれか1以上がメチル基、メトキシ基あるいはフェニル基であると共に、その他が水素原子であるのが好ましい。
【0056】
式(1)中で説明したL1は、芳香族骨格を含む2価の基が1〜4つ結合してなる連結基であれば任意である。このL1としては、例えば、−Ar1−、−Ar2−Ar3−、−Ar4−Ar5−Ar6−、あるいは−Ar7−Ar8−Ar9−Ar10−で表される基が好ましい。この場合のL1の末端を構成するAr1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar6、Ar7およびAr10は、員数5あるいは6の芳香族環の単環または2〜5縮合環からなる2価の基、またはそれらに置換基が導入された基を表し、これらのうちのAr6、Ar7およびAr10は、置換されていてもよい員数5あるいは6の芳香族環の単環あるいは2〜5縮合環からなる2価の基を表すか、あるいは−N(Ar11)−(Ar11は置換基を有してもよい1価の芳香族炭素環基または置換基を有してもよい1価の芳香族複素環基である)を表す。
【0057】
Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar6、Ar7およびAr10としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、ペリレニレン基などの2価の芳香族炭素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基や、ピリジレン基、トリアジレン基、ピラジレン基、キノキサリレン基、チエニレン基あるいはオキサジアゾリレン基などの2価の芳香族複素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基が挙げられる。
【0058】
なお、上記した場合の連結基L1として最も小さな連結基であるAr1としては、式(1)に示した化合物の剛直性、およびこれに起因する耐熱性を向上させるためには、3縮合環以上であることが好ましい。
【0059】
また、Ar2、Ar3、Ar4、Ar6、Ar7およびAr10としては、単環、2縮合環あるいは3縮合環が好ましく、単環あるいは2縮合環がより好ましい。
【0060】
また、上記の場合の連結基L1の中央を構成するAr5、Ar8およびAr9は、末端を構成するAr1等として上述した基に代表される2価の芳香族基であるか、あるいは−N(Ar11)−で表される2価のアリールアミノ基(Ar11は置換基を有していてもよい1価の芳香族炭素環基または芳香族複素環基である)である。Ar11としては、例えば、5または6員環の芳香族基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナンチル基、チエニル基、ピリジル基あるいはカルバゾリル基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基などが挙げられる。
【0061】
Ar5、Ar8およびAr9は、耐熱性向上の点からは、芳香族炭素環あるいは芳香族複素環からなる基であることが好ましい。さらに、Ar5、Ar8およびAr9は、式(1)に示した化合物の非晶質性を向上させる点から、−N(Ar11)−であることが好ましい。なお、Ar8およびAr9は、一方が−N(Ar11)−であるとき、他方は芳香族環からなる基であることが好ましい。
【0062】
Ar1〜Ar10が芳香族骨格の他に有する置換基としては、例えば、上記したR1〜R8がさらに置換基を有する場合に説明した、それに導入される置換基と同様の基が挙げられる。中でも、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基または芳香族複素環基が特に好ましい。
【0063】
Ar11が有する芳香族骨格に導入される置換基としても、例えば、上記したR3〜R10がさらに置換基を有する場合に説明した、それに導入される置換基と同様の基が挙げられる。中でも、アリールアミノ基、フェニル基あるいはナフチル基などの芳香族炭素環基、またはカルバゾリル基などの芳香族複素環基が特に好ましい。
【0064】
以上に説明した式(1)に示した化合物としては、例えば、式(1−1)〜式(1−26)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
次に、式(2)に示した化合物について説明する。
【0069】
式(2)中で説明したX1,X2は、それぞれ上記した基であれば任意である。X1,X2がN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基である場合、それらは無置換であってもよいし、他の置換基で置換されていてもよい。それらが他の置換基で置換されている場合、すなわち、それらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である場合には、その導入される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、あるいは炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
【0070】
X1,X2がN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基またはそれらに1もしくは2以上の置換基が導入された基の場合には、X1,X2は、N−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基、または、置換基としてハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基あるいは炭素数6〜10のアリール基が1あるいは2以上導入されたN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基もしくはN−フェノチアジイル基が好ましい。この場合、中でも、N−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基、または、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基あるいは炭素数6〜10のアリール基が1あるいは2以上導入されたN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基であるのが好ましい。この場合、さらに好ましくは、N−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基である。
【0071】
この場合のX1,X2の具体例としては、例えば、N−カルバゾイル基、2−メチル−N−カルバゾイル基、3−メチル−N−カルバゾイル基、4−メチル−N−カルバゾイル基、3−n−ブチル−N−カルバゾイル基、3−n−ヘキシル−N−カルバゾイル基、3−n−オクチル−N−カルバゾイル基、3−n−デシル−N−カルバゾイル基、3,6−ジメチル−N−カルバゾイル基、2−メトキシ−N−カルバゾイル基、3−メトキシ−N−カルバゾイル基、3−エトキシ−N−カルバゾイル基、3−イソプロポキシ−N−カルバゾイル基、3−n−ブトキシ−N−カルバゾイル基、3−n−オクチルオキシ−N−カルバゾイル基、3−n−デシルオキシ−N−カルバゾイル基、3−フェニル−N−カルバゾイル基、3−(4’−メチルフェニル)−N−カルバゾイル基、3−クロロ−N−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基あるいは2−メチル−N−フェノチアジイル基などが挙げられる。
【0072】
また、X2が−N(Y1)(Y2)である場合、Y1,Y2は、芳香族炭素環骨格あるいは芳香族複素環骨格を有していれば任意であり、その骨格に1あるいは2以上の置換基が導入されていてもよい。この導入される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基あるいはアリール基が挙げられる。Y1,Y2は、総炭素数6〜20であることが好ましい。
【0073】
Y1,Y2の芳香族炭素環基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基あるいはアントリル基などが挙げられ、その芳香族複素環基としては、例えば、フリル基、チエニル基あるいはピリジル基などが挙げられる。Y1,Y2は、未置換、または、置換基として、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基もしくはアリール基が1あるいは2以上導入された、総炭素数6〜20の芳香族炭素環基または総炭素数3〜20の芳香族複素環基であるのが好ましい。より好ましくは、未置換、または、ハロゲン原子、炭素数1〜14のアルキル基、炭素数1〜14のアルコキシ基もしくは炭素数6〜10のアリール基が1あるいは2以上導入された、総炭素数6〜20の芳香族炭素環基である。さらに好ましくは、未置換、または、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基もしくは炭素数6〜10のアリール基が1あるいは2以上導入された、総炭素数6〜16の芳香族炭素環基である。
【0074】
このようなY1およびY2の具体例としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アントリル基、9−アントリル基、4−キノリル基、4−ピリジル基、3−ピリジル基、2−ピリジル基、3−フリル基、2−フリル基、3−チエニル基、2−チエニル基、2−オキサゾリル基、2−チアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾイミダゾリル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−n−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−sec−ブチルフェニル基、2−sec−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、3−tert−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−n−ペンチルフェニル基、4−イソペンチルフェニル基、2−ネオペンチルフェニル基、4−tert−ペンチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−(2’−エチルブチル)フェニル基、4−n−ヘプチルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2’−エチルヘキシル)フェニル基、4−tert−オクチルフェニル基、4−n−デシルフェニル基、4−n−ドデシルフェニル基、4−n−テトラデシルフェニル基、4−シクロペンチルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−(4’−メチルシクロヘキシル)フェニル基、4−(4’−tert−ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3−シクロヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−エチル−1−ナフチル基、6−n−ブチル−2−ナフチル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,5−ジ−tert−ブチルフェニル基、4,6−ジ−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、5−tert−ブチル−2−メチルフェニル基、4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、4−n−プロポキシフェニル基、3−n−プロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、4−n−ブトキシフェニル基、4−イソブトキシフェニル基、2−sec−ブトキシフェニル基、4−n−ペンチルオキシフェニル基、4−イソペンチルオキシフェニル基、2−イソペンチルオキシフェニル基、4−ネオペンチルオキシフェニル基、2−ネオペンチルオキシフェニル基、4−n−ヘキシルオキシフェニル基、2−(2’−エチルブチル)オキシフェニル基、4−n−オクチルオキシフェニル基、4−n−デシルオキシフェニル基、4−n−ドデシルオキシフェニル基、4−n−テトラデシルオキシフェニル基、4−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−シクロヘキシルオキシフェニル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、4−n−ブトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、6−n−ブトキシ−2−ナフチル基、6−n−ヘキシルオキシ−2−ナフチル基、7−メトキシ−2−ナフチル基、7−n−ブトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2−メチル−5−メトキシフェニル基、3−メチル−5−メトキシフェニル基、3−エチル−5−メトキシフェニル基、2−メトキシ−4−メチルフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、3,4−ジメトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、3,5−ジエトキシフェニル基、3,5−ジ−n−ブトキシフェニル基、2−メトキシ−4−エトキシフェニル基、2−メトキシ−6−エトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、2−フェニルフェニル基、4−(4’−メチルフェニル)フェニル基、4−(3’−メチルフェニル)フェニル基、4−(4’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−n−ブトキシフェニル)フェニル基、2−(2’−メトキシフェニル)フェニル基、4−(4’−クロロフェニル)フェニル基、3−メチル−4−フェニルフェニル基、3−メトキシ−4−フェニルフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−クロロ−1−ナフチル基、4−クロロ−2−ナフチル基、6−ブロモ−2−ナフチル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4−ジクロロ−1−ナフチル基、1,6−ジクロロ−2−ナフチル基、2−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−フルオロ−5−メチルフェニル基、3−フルオロ−2−メチルフェニル基、3−フルオロ−4−メチルフェニル基、2−メチル−4−フルオロフェニル基、2−メチル−5−フルオロフェニル基、3−メチル−4−フルオロフェニル基、2−クロロ−4−メチルフェニル基、2−クロロ−5−メチルフェニル基、2−クロロ−6−メチルフェニル基、2−メチル−3−クロロフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、3−メチル−4−クロロフェニル基、2−クロロ−4,6−ジメチルフェニル基、2−メトキシ−4−フルオロフェニル基、2−フルオロ−4−メトキシフェニル基、2−フルオロ−4−エトキシフェニル基、2−フルオロ−6−メトキシフェニル基、3−フルオロ−4−エトキシフェニル基、3−クロロ−4−メトキシフェニル基、2−メトキシ−5−クロロフェニル基、3−メトキシ−6−クロロフェニル基あるいは5−クロロ−2,4−ジメトキシフェニル基などが挙げられる。なお、Y1,Y2は、これらに限定されるものではない。
【0075】
式(2)中で説明したR11,R12は、上記した基であれば任意であるが、水素原子、直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、総炭素数6〜20の芳香族炭素環基、総炭素数3〜20の芳香族複素環基あるいはアラルキル基であるのが好ましい。R11,R12が芳香族炭素環基、芳香族複素環基あるいはアラルキル基である場合においても、それらは無置換であっても、1あるいは2以上の置換基が導入されていてもよい。その導入される置換基としては、ハロゲン原、アルキル基、アルコキシ基あるいはアリール基などが挙げられる。
【0076】
R11,R12としては、水素原子、炭素数1〜16の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数4〜16の置換あるいは未置換のアリール基、または炭素数5〜16の置換あるいは未置換のアラルキル基が好ましい。より好ましくは、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数6〜12の置換あるいは未置換のアリール基または炭素数7〜12の置換あるいは未置換のアラルキル基である。また、さらに好ましくは、炭素数1〜8の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数6〜10の芳香族炭素環基または炭素数7〜10の炭素環式アラルキル基である。
【0077】
R11,R12の置換または未置換のアリール基の具体例としては、例えば、Y1,Y2の具体例として挙げた置換または未置換のアリール基が挙げられる。Y1,Y2の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基あるいはn−ヘキサデシル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
また、R11,R12の置換または未置換のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、フルフリル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、4−エチルベンジル基、4−イソプロピルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、4−n−ヘキシルベンジル基、4−ノニルベンジル基、3,4−ジメチルベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、4−n−ブトキシベンジル基、4−n−ヘキシルオキシベンジル基、4−ノニルオキシベンジル基、4−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、2−クロロベンジル基あるいは4−クロロベンジル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
式(2)に示したR13,R14は、上記した基であれば任意であるが、水素原子、ハロゲン原子、直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、直鎖、分岐あるいは環状のアルコキシ基、総炭素数6〜20の芳香族炭素環基、または総炭素数3〜20の芳香族複素環基であるのが好ましい。R13,R14が芳香族炭素環基または芳香族複素環基で有る場合、これらは無置換であってもよいし、1あるいは2以上の置換基が導入されていてもよい。この導入される置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基あるいはアリール基などが挙げられる。
【0080】
R13,R14としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜16の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖、分岐あるいは環状のアルコキシ基、または炭素数4〜20の置換あるいは未置換のアリール基が好ましい。より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数1〜8の直鎖、分岐あるいは環状のアルコキシ基、または炭素数6〜12の置換あるいは未置換のアリール基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0081】
R13,R14の直鎖、分岐または環状のアルキル基の具体例としては、例えば、式(1)中で説明したR3〜R10の具体例として挙げた直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基が挙げられる。また、R13,R14の置換または未置換のアリール基の具体例としては、例えば、Y1,Y2の具体例として挙げた置換または未置換のアリール基が挙げられる。
【0082】
R13,R14のハロゲン原子、または直鎖、分岐あるいは環状のアルコキシ基の具体例としては、例えば、フッ素原子、塩素原子あるいは臭素原子などのハロゲン原子や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘキシルメチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基あるいはn−ヘキサデシルオキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。
【0083】
以上に説明した式(2)に示した化合物としては、例えば、式(2−1)〜式(2−5)で表される化合物が挙げられる。すなわち、式(2−1)の7−(N’−カルバゾリル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、式(2−2)の7−(N’−カルバゾリル)−N,N−ジ(4−ビフェニリル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、式(2−3)の7−(N’−カルバゾリル)−N,N−ジ(2−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、式(2−4)の7−(N’−カルバゾリル)−N,N−ジ(1−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、式(2−5)の7−(N’−カルバゾリル)−N−(4−ビフェニリル)−N−(2−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0084】
【化18】

【0085】
式(2)に示した化合物としては、上記の他に、以下に示す(2−6)〜(2−105)の化合物が挙げられる。すなわち、(2−6)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−7)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9−メチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−8)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−9)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−10)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−11)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−エチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−12)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−tert−ブチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−13)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’,4’−ジメチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−14)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’,5’−ジメチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−15)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(3’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−16)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−17)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−エチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−18)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−19)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−20)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−エトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−21)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−n−ブトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−22)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−23)7−(N’−カルバゾイル)−N−(3’−メチルフェニル)−N−(4”−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−24)7−(N’−カルバゾイル)−N−(4’−メチルフェニル)−N−(4”−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、あるいは(2−25)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−フルオロフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0086】
また、(2−26)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−クロロフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−27)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−フェニルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−28)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(1’−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−29)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(2’−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−30)7−(N’−カルバゾイル)−N−(4’−メチルフェニル)−N−(2”−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−31)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(2’−フリル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−32)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(2’−チエニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−33)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−4−フルオロ−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−34)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−3−メトキシ−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−35)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−4−フェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−36)7−(3’−メチル−N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−37)7−(3’−メトキシ−N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−38)7−(3’−クロロ−N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−39)2,7−ジ(N’−カルバゾイル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、(2−40)7−(N’−フェノキサジイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−41)7−(N’−フェノキサジイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−42)7−(N’−フェノキサジイル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、(2−43)7−(N’−フェノチアジイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−44)7−(N’−フェノチアジイル)−N−フェニル−N−(3’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、あるいは(2−45)7−(N’−フェノチアジイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0087】
また、(2−46)7−(N’−フェノチアジイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−47)7−(N’−フェノチアジイル)−N−フェニル−N−(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−48)7−(N’−フェノチアジイル)−N−フェニル−N−(2’−ナフチル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−49)2,7−ジ(N−フェノチアジイル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、(2−50)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジエチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−51)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジエチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−52)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジエチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−53)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−メトキシフェニル)−9,9−ジエチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−54)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−4−メチル−9,9−ジエチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−55)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−イソプロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−56)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ−n−プロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−57)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジ−n−プロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−58)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジ−n−プロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−59)2,7−ジ(N−カルバゾイル)−9,9−ジ−n−プロピル−9H−フルオレン、(2−60)2,7−ジ(N−フェノキサジイル)−9,9−ジ−n−プロピル−9H−フルオレン、(2−61)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ−n−ブチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−62)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジ−n−ブチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−63)2,7−ジ(N−カルバゾイル)−9,9−ジ−n−ブチル−9H−フルオレン、(2−64)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジ−n−ペンチル−9H−フルオレン−2−アミン、あるいは(2−65)7−(N−フェノキサジイル)−N−フェニル−N−(3’−メトキシフェニル)−9,9−ジ−n−ペンチル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0088】
また、(2−66)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4”−メトキシフェニル)−9,9−ジ−n−ペンチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−67)2,7−ジ(N’−カルバゾイル)−9,9−ジ−n−ペンチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−68)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ−n−ヘキシル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−69)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジ−n−ヘキシル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−70)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−シクロヘキシル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−71)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ−n−オクチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−72)7−(N’−フェノキサジイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジ−n−オクチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−73)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−メチル−9−エチル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−74)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−メチル−9−n−プロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−75)7−(N’−フェノチアジイル)−N,N−ジフェニル−9−メチル−9−n−プロピル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−76)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−エチル−9−n−ヘキシル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−77)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−エチル−9−シクロヘキシル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−78)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−ベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−79)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−80)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ(4’−メチルベンジル)−9H−フルオレン−2−アミン、(2−81)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジ(4’−メトキシベンジル)−9H−フルオレン−2−アミン、(2−82)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−83)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−84)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メトキシフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、あるいは(2−85)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−フェニルフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0089】
さらに、(2−86)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(2’−ナフチル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−87)7−(N’−フェノキサジイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−88)7−(N’−フェノチアジイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−89)2,7−(N’−カルバゾイル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン、(2−90)2,7−(N’−カルバゾイル)−9,9−ジ(4’−メチルベンジル)−9H−フルオレン、(2−91)2−(N’−カルバゾイル)−7−(N’−フェノチアジイル)−9,9−ジベンジル−9H−フルオレン、(2−92)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−メチル−9−ベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−93)7−(N’−フェノキサジイル)−N,N−ジフェニル−9−エチル−9−ベンジル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−94)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−95)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−96)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−97)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−メチルフェニル)−9,9−ジ(4”−メチルフェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、(2−98)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(3’−メチルフェニル)−9,9−ジ(4”−メトキシフェニル)−9H−フルオレン−2−アミン、(2−99)7−(N’−フェノキサジイル)−N,N−ジ(4’−メチルフェニル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−100)7−(N’−フェノチアジイル)−N,N−ジフェニル−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−アミン、(2−101)2,7−ジ(N’−カルバゾイル)−9,9−ジ(4’−メチルフェニル)−9H−フルオレン、(2−102)2−(N−カルバゾイル)−7−(N’−フェノキサジイル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン、(2−103)2−(N−フェノキサジイル)−7−(N’−フェノチアジイル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン、(2−104)7−(N’−カルバゾイル)−N−フェニル−N−(4’−メチルフェニル)−9−メチル−9−フェニル−9H−フルオレン−2−アミン、あるいは(2−105)7−(N’−カルバゾイル)−N,N−ジフェニル−9−エチル−9−フェニル−9H−フルオレン−2−アミンである。
【0090】
発光層23は、陽極11と陰極31との間で電界が印加された際に、陽極11側から注入された正孔と、陰極31側から注入された電子とが再結合し、光を発生する領域である。この発光層23を構成する材料としては、発光機能(正孔と電子との再結合の場を提供し、この再結合を発光につなげる機能)と共に、例えば、電荷の注入機能および電荷の輸送機能を有するものが好ましい。これにより、発光効率が向上する一方で、後述する電子輸送層24を設けなくとも、発光することが可能となる。ここでいう電荷の注入機能とは、電界印加時において、正孔輸送層22からの正孔を注入することができると共に、陰極31からの電子を注入することができる機能のことである。また、電荷の輸送機能とは、注入された正孔および電子を電界の力で移動させる機能のことである。すなわち、この発光層23は、電子輸送性を有する、電子輸送層を兼ね備えたものでもよい。
【0091】
この発光層23は、例えば、ホストとなる化合物(ホスト材料)に対して、各色(青色、緑色、赤色)の発光色素(発光性ゲスト材料)がドーピングされており、電界が印加されると、その発光色素の色調に従って、各色を発光する。
【0092】
このホスト材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、インデン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、トリフェニレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、フルオランテン誘導体、アセフェナントリレン誘導体、ペンタフェン誘導体、ペンタセン誘導体、コロネン誘導体、ブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体あるいはビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体などが挙げられる。具体的には、例えば、式(8)で表される9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)などが挙げられる。
【0093】
【化19】

【0094】
また、発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、さらには金属錯体等の有機発光材料が用いられる。以下で各色の発光ゲスト材料について説明する。
【0095】
青色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約400nm〜490nmの範囲にピークを有する化合物のことであり、このよう有機化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体などが挙げられる。具体的には、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体が挙げられ、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。
【0096】
緑色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約490nm〜580nmの範囲にピークを有する化合物ことであり、このような有機化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、インデノ[1,2,3−cd]ペリレン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体ピラン系色素などが挙げられる。具体的には、アミノアントラセン誘導体、フルオランテン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、インデノ[1,2,3−cd]ペリレン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体が挙げられ、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。
【0097】
赤色発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約580nm〜700nmの範囲にピークを有する化合物のことであり、このような有機化合物としては、ニールレッドや、DCM1({4−Dicyanmethylene−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran})あるいはDCJT({4−(ジシアノメチレン)−2−t− ブチル−6− (ジュロリジルスチリル)− ピラン}などのピラン誘導体や、スクアリリウム誘導体や、ポルフィリン誘導体や、クロリン誘導体や、ユーロジリン誘導体などが挙げられ、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。
【0098】
なお、発光層23は、上記した各色の発光性ゲスト材料を用いて、それらのうちの1色を発光するようにしてもよいし、各色のうちの1色を発光する層を積層して発光光を白色としてもよい。すなわち、発光層23は、青色発光層、緑色発光層あるいは赤色発光層のうちのいずれかでもよいし、それらを積層して白色発光層としてもよい。
【0099】
電子輸送層24は、陰極31から注入された電子を発光層23に効率よく輸送するためのものである。電子輸送層24を構成する材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、式(9)で表されるトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)が挙げられ、その他、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベンあるいは1,10−フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0100】
【化20】

【0101】
陰極31は、発光層23に電界を印加する一方の電極であり、光透過性の材料により構成されている。これにより、発光層23からの発光光およびその発光光が陽極11表面において反射した光が、陰極31から外側へ取り出されることとなる。この陰極31は、発光層23側に仕事関数が小さい材料を用いた層が形成されており、発光層23側から順に第1陰極層31Aおよび第2陰極層31Bが積層されている。
【0102】
第1陰極層31Aは、光透過性が良好であると共に、仕事関数が小さく、かつ電子輸送層24に電子を効率よく注入することが可能な材料により構成されている。このような材料としては、例えば、Li2 O、Cs2 O、LiFあるいはCaF2 などのアルカリ金属酸化物、アルカリ金属弗化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類弗化物などが挙げられる。
【0103】
また、第2陰極層31Bは、薄膜のMgAg電極材料やCa電極材料などの光透過性を有し、かつ導電性が良好な材料により構成されている。また、この有機電界発光素子が、特に陽極11と陰極31との間で発光光を共振させて取り出すキャビティ構造を備える場合には、第2陰極層31Bは、例えば、Mg−Ag(9:1)10nm厚のような半透過性反射材料を用いて構成してもよい。
【0104】
なお、陰極31は、必要に応じて、第2陰極層31B上に、電極の劣化抑制のための封止電極として第3陰極層(図示せず)を積層した構造でもよい。
【0105】
この陰極31の各層(第1陰極層31A、第2陰極層31Bおよび必要に応じて第3陰極層)を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法あるいはプラズマCVD法などが挙げられる。
【0106】
このような有機電界発光素子は、例えば、以下のように製造することができる。
【0107】
まず、基板10上に陽極11を蒸着法やスパッタリング法などにより形成する。続いて、陽極11の上に、有機層20を形成する。この場合には、まず、陽極11の上に、アニリン誘導体および有機酸を含む第1正孔注入層21Aをスピンコート法などの湿式方式により形成する。こののち、チオフェン誘導体および有機酸を含む第2正孔注入層21Bをスピンコート法などの湿式方式により形成し、正孔注入層21とする。続いて、第2正孔注入層21Bの上に、真空蒸着法など気相方式により、式(1)および式(2)に示した化合物のうちの少なくとも1種を含む正孔輸送層22、発光層23および電子輸送層24をこの順で積層する。これにより、有機層20が形成される。最後に、電子輸送層24の上に、蒸着法などにより、第1陰極層31Aおよび第2陰極層31Bをこの順で積層して、陰極31を形成する。これにより、図1に示した有機電界発光素子が完成する。なお、ここでは、有機層20のうち、正孔輸送層22、発光層23および電子輸送層24を真空蒸着法など気相方式により形成したが、湿式方式により形成してもよい。これにより、上記したように異物混入による短絡の発生がより抑制され、歩留まり等が向上する。
【0108】
本実施の形態における有機電界発光素子では、陽極11と陰極31との間に電圧が印加され、有機層20に電界がかかると、陽極11からの正孔が第1正孔注入層21Aおよび第2正孔注入層21Bにより、正孔輸送層22へ効率よく注入される。この注入された正孔を正孔輸送層22が発光層へ効率よく輸送する。その一方で、陰極31からの電子が電子輸送層24を介して効率よく発光層23に輸送される。このように陽極11側から移動してきた正孔と、陰極31側から移動してきた電子とが、発光層23において再結合し、光を発することとなる。この発光層23からの発光光と、この発光光が陽極11の表面で反射した光とが陰極31を透過して、射出する。この場合、第2正孔輸送層21B中に遊離したプロトンが含まれていると、そのプロトンが正孔と共に移動する。ここで、正孔輸送層22が上記した式(1)および式(2)示した化合物を含んでいないと、プロトンが発光層23へ拡散し、発光効率が低下して十分な発光強度を維持しにくくなる。ところが、正孔輸送層22が式(1)および式(2)に示した化合物のうちの少なくとも一方を含んでいることによって、正孔輸送層22がそのプロトンを捕捉しつつ、正孔注入層21により注入された正孔を発光層23へ効率よく輸送することができる。このため、長時間駆動しても発光効率の低下が抑制される。
【0109】
すなわち、この有機電界発光素子では、有機層20が、陽極11と発光層23との間に、陽極11側から順に、第2正孔注入層21B、および正孔輸送層22を積層して有している。この場合、第2正孔注入層21Bは、チオフェン誘導体および有機酸を含み、正孔輸送層22は、式(1)および式(2)に示した化合物のうちの少なくとも一方を含んでいる。これにより、高い発光強度が良好に維持されるため、寿命特性を向上させることができる。また、この場合、陽極11と第2正孔注入層21Bとの間に、アニリン誘導体および有機酸を含む第1正孔注入層21Aを有する。これにより、第2正孔注入層21Bを形成する際に用いる材料が強い酸性を示したとしても、陽極11の酸による腐食が抑制され、高い寿命特性を得ることができる。
【0110】
また、陽極11がアルミニウムを含有する合金を含み、そのアルミニウムを含有する合金がアルミニウムを主成分として含み、かつ副成分としてアルミニウムよりも相対的に仕事関数が低い元素を含むようにすれば、陽極11の反射率が高くなる。これにより、発光層23の発光強度が低くても、陰極31を透過する光量を確保することができる。よって、駆動電圧を低く抑えられるため、寿命特性をより向上させることができる。
【0111】
次に、上記した有機電界発光素子の適用例について説明する。ここで、表示装置を例に挙げると、上記した有機電界発光素子は以下のように用いられる。
【0112】
[2.表示装置]
図2は表示装置の断面構成を表している。この表示装置は、TFTなどの駆動回路(図示せず)を備えた基板10の上に絶縁層12および有機電界発光素子1R,1G,1Bを有する構成となっている。また、この表示装置では、有機電界発光素子1R,1G,1Bの上に、それらを覆うように保護層32が形成され、この保護層32上に設けられた接着層33により接着された封止用基板40により全面にわたって封止されている。すなわち、ここで説明する表示装置の駆動方式は、アクティブマトリックス方式である。
【0113】
基板10は、ガラスなどの透明基板や、シリコン基板や、フィルム状のフレキシブル基板などの上に、有機電界発光素子1R,1G,1BごとにTFTなどの駆動回路(図示せず)および平坦化絶縁膜(図示せず)が設けられている。
【0114】
有機電界発光素子1R,1G,1Bは、上記した有機電界発光素子と同様の構成を有している。ここでは、有機電界発光素子1R,1G,1Bから取り出される光は、表示装置において、それぞれ赤色、緑色および青色を呈することとする。なお、ここでは、後述する封止用基板40がカラーフィルタ(図示せず)を有しているので、有機電界発光素子1R,1G,1Bが有する発光層23は、同一の構成を有しているが、それぞれ異なる構成を有していてもよい。その場合には、有機電界発光素子1R,1G,1Bにおいて、それぞれの発光層23が含む発光性ゲスト材料が異なることとなる。
【0115】
絶縁層12は、有機電界発光素子1R,1G,1Bの陽極11と陰極31との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものである。この絶縁層12は、基板10の上において、有機電界発光素子1R,1G,1Bの各陽極11との間に、各陽極11を取り囲み、開口部を形成するように設けられている。このような絶縁層12は、例えばポリイミドなどの感光性樹脂により構成されている。なお、ここでは、有機層20および陰極31は、絶縁層12の上にも連続して設けられているが、発光光が生じるのは絶縁層12の開口部(陽極11の上部)だけである。
【0116】
保護層32は、有機層20に水分などが侵入することを防止するためのものであり、透過水性および吸水性の低い材料により構成されると共に十分な厚みを有している。また、保護層32は、発光層23で発生した光に対する透過性が高く、例えば80%以上の透過率を有する材料により構成されている。このような保護層32は、例えば、厚さが2μm〜3μm程度であり、アモルファスな絶縁性材料により構成されている。具体的には、アモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x x )あるいはアモルファスカーボン(α−C)が好ましい。これらのアモルファスな絶縁性材料は、グレインを構成しないので透水性が低く、良好な保護層32となる。また、保護層32は、ITOのような透明導電性材料により構成されていてもよい。
【0117】
接着層33は、例えば、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。
【0118】
封止用基板40は、有機電界発光素子1R,1G,1Bの陰極31側に位置しており、接着層32と共に有機電界発光素子1R,1G,1Bを封止するものである。この封止用基板40は、有機電界発光素子1R,1G,1Bで発生した光を透過可能なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板40には、例えば、カラーフィルタ(図示せず)が設けられている。これにより、有機電界発光素子1R,1G,1Bで発生した光を取り出すと共に、有機電界発光素子1R,1G,1Bならびにその間の配線(図示せず)において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっていてもよい。
【0119】
カラーフィルタは、封止用基板40のどちら側の面に設けられてもよいが、有機電界発光素子1R,1G,1Bの側に設けられることが好ましい。カラーフィルタが表面に露出せず、接着層33により保護することができるからである。また、発光層23とカラーフィルタとの間の距離が狭くなることにより、有機電界発光素子1R,1B,1Gから射出された光が隣接する他の色のカラーフィルタに入射して混色を生じることを避けることができるからである。カラーフィルタは、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタ(いずれも図示せず)を有しており、有機電界発光素子1R,1G,1Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これらの赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されていてもよい。この顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0120】
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0121】
まず、基板10を用意し、その上に、例えばスパッタリング法により、陽極11を形成し、例えばドライエッチングにより所定の形状に成形する。
【0122】
続いて、基板10の全面にわたり、陽極11を覆うように感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により発光領域に対応して開口部を設け、焼成することにより、絶縁層12を形成する。
【0123】
そののち、例えば、上記した有機電界発光素子を製造する際の手順と同様の手順により、有機層20を形成したのち、有機層20の上に陰極31を形成する。このようにして、有機電界発光素子1R,1G,1Bを形成する。
【0124】
有機電界発光素子1R,1G,1Bを形成したのち、これらの上に保護膜32を形成する。保護膜32の形成方法は、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法またはCVD法が好ましい。また、保護膜32は、陰極31を大気に暴露することなく、陰極31の形成と連続して行うことが望ましい。大気中の水分や酸素により有機層20が劣化してしまうのを抑制することができるからである。さらに、有機層20の劣化による輝度の低下を防止するため、保護膜32の成膜温度は常温に設定すると共に、保護膜32の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0125】
また、例えば、封止用基板40の上に、赤色フィルタの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタを形成する。続いて、赤色フィルタと同様にして、青色フィルタおよび緑色フィルタを順次形成する。
【0126】
そののち、保護膜32の上に、接着層33を形成し、この接着層33を介して封止用基板40を貼り合わせる。その際、封止用基板40のカラーフィルタを形成した面を、有機電界発光素子1R,1G,1B側にして配置することが好ましい。以上により、図2に示した表示装置が完成する。
【0127】
このような表示装置では、画像データに基づいて選択された各有機電界発光素子1R,1G,1Bにおいて、陽極11および陰極31の間に駆動電圧が印加されると、有機層20に電界がかかる。この電界がかかった有機層20では、発光層23において正孔と電子とが再結合して発光光が生じる。この発光光は、カラーフィルタおよび封止用基板40を透過して取り出される。
【0128】
この表示装置によれば、有機電界発光素子1R,1B,1Gの有機層20が、陽極11と発光層23との間に、陽極11側から順に、上記した第2正孔輸送層21Bおよび正孔輸送層22を有する。これにより、高い発光強度が良好に維持されるため、寿命特性を向上させることができる。この他の作用効果については、上記した有機電界発光素子と同様である。
【0129】
[3.変形例]
なお、本実施の形態における有機電界発光素子では、正孔輸送層21中にアニリン誘導体および有機酸を含む第1正孔注入層21Aを設けるようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、この第1正孔注入層21Aを設けずに、チオフェン誘導体および有機酸を含む第2正孔注入層21Bを設けてもよい。すなわち、正孔注入層21は、チオフェン誘導体および有機酸を含む層(第1の層)により構成されていてもよい。この場合においても、上記した第1正孔注入層21Aを有する有機電界発光素子と同様の作用効果を得ることができる。この場合、チオフェン誘導体および有機酸を含む層を形成する際に用いる材料が強い酸性を示すと、陽極11がアルミニウム合金を含む場合に、腐食の影響を受けやすくなる。このため、陽極11の有機層20側には、ITO、IZO、MoO3 あるいはV2 5 などの耐酸性を有する材料による層が形成されているのが好ましい。これにより、陽極11がチオフェン誘導体および有機酸を含む層を形成する際に生じるおそれがある腐食の影響を受けにくくなる。よって、より高い寿命特性を得ることができる。
【0130】
また、上記した実施の形態および変形例では、有機層20を正孔注入層21、正孔輸送層22、発光層23および電子輸送層24により構成したが、これに限定されるものではない。すなわち、有機層20が、発光層23と陽極11との間にチオフェン誘導体および有機酸を含む層と、式(1)および式(2)に示した化合物のうちの少なくとも一方を含む層とを有していればよく、その他の層は、必要に応じて設けるようにしてもよい。このことは、陽極11および陰極31の構成についても同様である。
【0131】
さらに、上記した実施の形態および変形例では、有機層20を構成する第1正孔注入層21A、第2正孔注入層21B、正孔輸送層22、発光層23および電子輸送層24をそれぞれ単層で形成する場合について主に説明したが、各層を複数層で形成するようにしてもよい。この場合においても、同様の作用効果を得ることができる。
【0132】
さらにまた、上記した実施の形態および変形例では、単一の有機層20を備えた有機電界発光素子について説明したが、有機層20を積層して、いわゆるスタック型としてもよい。このスタック型とは、マルチフォトエミッション素子(MPE素子)とも呼ばれる構成であり、例えば、特開2003−272860号公報に記載されている。このように、複数の有機層20が絶縁性の電荷発生層を介して積層された場合でも、同様の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0133】
本発明の実施例について詳細に説明する。
【0134】
(実験例1〜11)
以下の手順により、図1に示した有機電界発光素子を作製した。
【0135】
まず、30mm×30mmのガラスからなる基板10上に、陽極11を形成した。この場合には、ランタノイド系元素であるネオジウム(Nd)を10重量%含むアルミニウム合金層(AlNd層;厚さ150nm)を蒸着して形成した。
【0136】
次に、陽極11の上に、発光領域となる2mm×2mmの開口部を有するように、RFスパッタ法により酸化ケイ素(SiO2 )からなる絶縁層を形成した。こののち、酸素プラズマにより前処理をした。
【0137】
次に、陽極11の上に、有機層20を形成した。まず、陽極11の上に、厚さ20nmの第1正孔注入層21Aを形成した。この場合、アニリン誘導体として式(7−1)に示した高分子化合物と有機酸として式(4−1)に示した化合物とを含む溶液を用いて、大気雰囲気下で、スピンコート法(3000rpm、120秒)により塗布膜を形成した。この溶液は、式(7−1)に示した高分子化合物と式(4−1)に示した化合物とを8:2の重量比で混合した材料を、溶媒に対して固形分濃度が3重量%となるように溶解させて調整した。また、この溶媒には、N−メチル−2−ピロリジンとフェノールとを5:2の重量比で混合したものを用いた。こののち、大気雰囲気の加熱炉により、この塗布膜を200℃、30分間加熱し、乾燥させた。なお、ここで用いた式(7−1)に示した高分子化合物をゲルパーメーションクロマトグラフィ法(GPC法)により分子量測定したところ、式(7−1)中のl+m+nは20以下であった。
【0138】
続いて、第1正孔注入層21Aの上に、厚さ15nmの第2正孔注入層21Bを形成した。この場合には、チオフェン誘導体として式(3−1)に示した高分子化合物(q=2000程度)と、有機酸として式(5)に示した有機酸および式(6)に示した有機酸(p=1000程度)とを含む溶液を用いて、大気雰囲気下で、スピンコート法(6000rpm、120秒)により塗布膜を形成した。この溶液は、式(3−1)に示した高分子化合物と式(5)に示した有機酸と式(6)に示した有機酸とを1:2:8の重量比で混合した材料を、溶媒に対して固形分濃度が1重量%となるように溶解させて調整した。この溶媒には、水とエタノールとを2:1の重量比で混合したものを用いた。こののち、大気雰囲気の加熱炉により、この塗布膜を200℃、30分間加熱し、乾燥させた。なお、上記したqおよびpも、各高分子化合物をGPC法により分子量測定し、その結果から算出されたものである。
【0139】
続いて、第2正孔注入層21Bの上に、厚さ10nmの正孔輸送層22を蒸着法により形成した。この際、蒸着速度は、1nm/秒とした。この場合には、正孔輸送層22を形成する材料としては、表1に示したように、式(1)に示した化合物である式(1−3)、式(1−9)、式(1−10)、式(1−15)、式(1−18)あるいは式(1−19)に示した化合物(実験例1〜6)または式(2)を示した化合物である式(2−1)〜式(2−5)に示した化合物(実験例7〜11)を用いた。
【0140】
続いて、正孔輸送層22の上に、膜厚28nmの発光層23を蒸着法により形成した。この場合には、ホスト材料として式(8)に示した化合物(9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン;ADN)を用い、これに青色の発光性ゲスト材料として出光興産社製BD−142をドーピングした。蒸着速度は、それぞれ1nm/秒(ホスト材料)、0.05nm/秒(発光性ゲスト材料)として、発光性ゲスト材料のドーピング量は5体積%とした。
【0141】
続いて、発光層23の上に、厚さ12nmの電子輸送層24を蒸着法により形成した。この場合には、式(9)に示したAlq3を1nm/秒の蒸着速度で蒸着した。これにより、有機層20が形成された。
【0142】
次に、有機層20の上に、第1陰極層31Aおよび第2陰極層31Bを有する陰極31を真空蒸着法により形成した。この場合には、LiFよりなる厚さ約0.3nmの第1陰極層31Aを、0.01nm/秒の蒸着速度で形成したのち、MgAg(体積比9:1)よりなる厚さ10nmの第2陰極層31Bを0.9nm/秒(Mg)および0.1nm/秒(Ag)の蒸着速度で形成した。これにより、図1に示した有機電界発光素子が完成した。
【0143】
(実験例12,13)
陽極11として、AlNd層の上に厚さ10nmのITO層を形成すると共に、第1正孔注入層31Aの厚さが10nmとなるように形成したことを除き、実験例2,11と同様の手順を経た。この陽極11を形成する際には、実験例2,11と同様にしてAlNd層(厚さ150nm)を形成したのち、ITOを蒸着した。また、この第1正孔注入層31Aを形成する際には、塗布膜を形成する際に用いた溶液の固形分濃度を1.5重量%としたことを除き、実験例2,11と同様にした。
【0144】
(実験例14,15)
陽極11が有するITO層の厚さを20nmとすると共に、第1正孔注入層21Aを形成しなかったことを除き、実験例12,13と同様の手順を経た。
【0145】
(実験例16〜18)
式(1)に示した化合物である式(1−9)に示した化合物に代えて、下記の式(10)に示した化合物(α−NPD)を用いたことを除き、実験例2,12,14と同様の手順を経た。
【0146】
【化21】

【0147】
(実験例19,20)
正孔注入層21を形成する際に、式(3−1)、式(5)および式(6)に示した高分子化合物の混合材料に代えて、下記の式(11)に示した化合物を用いたことを除き、実験例14,15と同様の手順を経た。
【0148】
【化22】

【0149】
これらの実験例1〜20の有機電界発光素子について、駆動電圧および発光効率を測定すると共に発光寿命を評価したところ、表1に示した結果が得られた。
【0150】
電圧および発光効率を測定する際には、電流密度を10mA/cm2 とした。また、発光寿命を評価する際には、輝度半減寿命を測定した。この場合、電流密度;平均20mA/cm2 、duty;25%として駆動した時の初期輝度に対する相対輝度が半減するまでの時間を測定した。上記の測定は、いずれも酸素濃度が0.5ppm以下の窒素ガス雰囲気中において、雰囲気温度25℃、露点温度−80℃の条件で行った。
【0151】
【表1】

【0152】
表1に示したように、式(3−1),式(5),式(6)に示した高分子化合物を含む正孔注入層21および式(1−3)に示した化合物等を含む正孔輸送層22を形成した実験例1〜15では、それを形成しなかった実験例16〜20と比較して、駆動電圧および発光効率は同程度であった。その一方で、実験例1〜15では、実験例16〜20と比較して、発光寿命が著しく長くなった。
【0153】
詳細には、正孔輸送層22が、式(1−3)に示した化合物等を含む実験例1〜15では、式(10)に示した化合物を含む実験例16〜18と比較して、駆動電圧および発光効率は同程度であったが、発光寿命が2倍〜3倍長くなった。また、正孔注入層21が式(3−1),式(5),式(6)に示した高分子化合物を含む実験例14,15では、式(11)に示した化合物を含む実験例19,20と比較して、駆動電圧および発光効率は同程度であったが、輝度半減寿命が2倍程度長くなった。この結果は、以下のことを表している。すなわち、有機層20は、式(3−1)示した高分子化合物などのチオフェン誘導体と式(5),式(6)に示した有機酸とを含む正孔注入層21と共に、式(1−3)に示した化合物等を含む正孔輸送層22を有する。これにより、陽極11の構成や、第1正孔注入層21Aの有無に依存することなく、発光層23への正孔の注入効率が良好に長時間維持される。
【0154】
また、陽極11の有機層20側にITOからなる層を形成した実験例12,13では、それを形成しなかった実験例2,11と比較して、駆動電圧、発光効率および輝度半減寿命が同程度であった。また、第1正孔注入層21Aを形成した実験例2,11では、それに代えて陽極11の有機層20側にITOからなる層を形成した実験例14,15と比較して、駆動電圧、発光効率および輝度半減寿命が同程度であった。
【0155】
これらのことから、本実施例の有機電界発光素子では、以下のことが確認された。すなわち、有機層20が、チオフェン誘導体および有機酸を含む正孔注入層21と共に、式(1)および式(2)に示した化合物のうちの少なくとも1種を含む正孔輸送層22を有することにより、寿命特性を向上させることができる。
【0156】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施の形態および実施例では、上面発光型の有機電界発光素子について説明したが、下面発光型としてもよい。この場合には、基板を透明材料により構成し、基板上に、上記した陰極、有機層および陽極の順で積層し、その有機層を陰極側から順に、電子輸送層、発光層、正孔輸送層および正孔注入層が積層した構造を有する。
【0157】
また、上記した実施の形態では、アクティブマトリックス方式の表示装置について説明したが、パッシブ方式の表示装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子の構成を表す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子を備えた表示装置の構成を表す断面図である。
【図3】従来の有機電界発光素子の構成を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1R,1B,1G…有機電界発光素子、10…基板、11…陽極、12…絶縁層、20…有機層、21…正孔注入層、21A…第1正孔注入層、21B…第2正孔注入層、22…正孔輸送層、23…発光層、24…電子輸送層、30…封止用基板、31…陰極、31A…第1陰極層、31B…第2陰極層、32…保護層、33…接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に、発光層を含む有機層を備え、
前記有機層は、前記陽極と前記発光層との間に、前記陽極側から順に、チオフェン誘導体および有機酸を含む第1の層、ならびに式(1)および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む第2の層を積層して有する
有機電界発光素子。
【化1】

(R1およびR2は各々独立して芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R3〜R10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基であり、R3〜R10のうちの隣り合うもの同士は結合して環構造を形成してもよい。L1は、2価の芳香族炭素環基、置換基を有する2価の芳香族炭素環基、2価の芳香族複素環基および置換基を有する2価の芳香族複素環基のうちの少なくとも1種が1つ〜4つ連結してなる連結基である。)
【化2】

(X1はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基または、それらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。X2はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基、あるいはそれらに1もしくは2以上の置換基が導入された基、または−N(Y1)(Y2)−であり、Y1およびY2は芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基あるいはアラルキル基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R13およびR14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。)
【請求項2】
前記チオフェン誘導体は、式(3)で表される高分子化合物であり、
前記有機酸は、式(4)〜式(6)で表される有機酸のうちの少なくとも1種である
請求項1記載の有機電界発光素子。
【化3】

(R21は炭素数1〜5のアルキレン基、あるいは炭素数1〜5のアルキレン基に置換基が導入された2価の基である。Z1は酸素原子あるいは硫黄原子である。qは1以上の整数である。)
【化4】

(R31およびR32は各々独立してカルボキシル基あるいは水酸基である。B1はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環あるいは複素環を有する3価の基である。)
【化5】

(x、yおよびzは各々独立して1以上の整数である。)
【化6】

(pは1以上の整数である。)
【請求項3】
前記有機層は、前記陽極と前記第1の層との間に、アニリン誘導体および有機酸を含む層を有する
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記アニリン誘導体は、式(7)で表される高分子化合物であり、
前記有機酸は、式(4)〜式(6)で表される有機酸のうちの少なくとも1種である
請求項3記載の有機電界発光素子。
【化7】

(R41〜R45は各々独立して水素原子、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、飽和炭化水素オキシ基、不飽和炭化水素オキシ基、アリール基、置換基を有するアリール基、アリールオキシ基、置換基を有するアリールオキシ基、複素環基あるいは置換基を有する複素環基である。L4〜L6は各々独立してベンゼン環骨格あるいはナフタレン環骨格を有する2価の基である。l、mおよびnは各々独立して0以上の整数であり、(l+m+n)≧1以上を満たす。)
【化8】

(R31およびR32は各々独立してカルボキシル基あるいは水酸基である。B1はベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環あるいは複素環を有する3価の基である。)
【化9】

(x、yおよびzは各々独立して1以上の整数である。)
【化10】

(pは1以上の整数である。)
【請求項5】
前記陽極は光反射性、前記陰極は光透過性をそれぞれ有し、
前記発光層から発せられた光を前記陰極側から射出する
請求項1記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記陽極は、アルミニウムを主成分として含み、かつ副成分としてアルミニウムよりも相対的に仕事関数が低い元素を含む
請求項5記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
陽極と陰極との間に発光層を含む有機層を有する有機電界発光素子を備え、
前記有機層は、前記陽極と前記発光層との間に、前記陽極側から順に、チオフェン誘導体および有機酸を含む第1の層、ならびに式(1)および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む第2の層を積層して有する
表示装置。
【化11】

(R1およびR2は各々独立して芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R3〜R10は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルホニル基、水酸基、アミド基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基であり、R3〜R10のうちの隣り合うもの同士は結合して環構造を形成してもよい。L1は、2価の芳香族炭素環基、置換基を有する2価の芳香族炭素環基、2価の芳香族複素環基および置換基を有する2価の芳香族複素環基のうちの少なくとも1種が1つ〜4つ連結してなる連結基である。)
【化12】

(X1はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基あるいはN−フェノチアジイル基または、それらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。X2はN−カルバゾイル基、N−フェノキサジイル基、N−フェノチアジイル基、あるいはそれらに1もしくは2以上の置換基が導入された基、または−N(Y1)(Y2)−であり、Y1およびY2は芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R11およびR12は各々独立して水素原子、アルキル基、芳香族炭素環基、芳香族複素環基あるいはアラルキル基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。R13およびR14は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭素環基あるいは芳香族複素環基、またはそれらに1あるいは2以上の置換基が導入された基である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−97964(P2010−97964A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264786(P2008−264786)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】