説明

有機電界発光素子及び表示装置

【課題】高い輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機電界発光素子及び表示装置を提供すること。
【解決手段】有機化合物層が、発光層を含む1以上の層からなり、有機化合物層の少なくとも一層が、下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を含有する電荷輸送性ポリエーテルの少なくとも1種を含み、バッファ層が、前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層及び陽極と接して設けられ、無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の電荷注入材料を含有する有機電界発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機EL素子」という)及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界発光素子(以下、「EL素子」と記述する)は、自発光性の全固体素子であり、視認性が高く衝撃にも強いため、広く応用が期待されている。現在は無機螢光体を用いたものが主流である。
【0003】
一方、有機化合物(例えばアントラセン等)を用いたEL素子研究も行われており、単結晶を用いた研究の他、蒸着法による薄膜化が試みられている(Thin Solid Films, Vol.94, 171 (1982) )。
【0004】
また近年、正孔輸送性有機低分子化合物と電子輸送能を持つ螢光性有機低分子化合物の薄膜を真空蒸着法により順次積層した機能分離型のEL素子において、10V程度の低電圧で1000cd/m2以上の高輝度が得られるものが報告されており(Applied Physics Letter, Vol.51, 913 (1987) )、以来、積層型のEL素子の研究・開発が活発に行われている。
これら積層型の素子は、電極から電荷輸送性の有機化合物からなる電荷輸送層を介して正孔と電子のキャリアバランスを保ちながら螢光性有機化合物からなる発光層に注入され、発光層中に閉じ込められた正孔と電子が再結合することにより高輝度の発光を実現している。
【0005】
また、駆動時におけるジュール熱の発生を抑えるために、正孔輸送性材料として安定なアモルファスガラス状態が得られるスターバーストアミンを用いたり(第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a-SZK-14(1993)など)、ポリフォスファゼンの側鎖にトリフェニルアミンを導入したポリマーを用いたり(第42回高分子討論会予稿集20J21(1993))したEL素子が報告されている。
【0006】
また、工程を短縮できる単層構造の有機EL素子について研究・開発が進められ、ポリ(p-フェニレンビニレン)等の導電性高分子を用いた素子(Nature, Vol.357, 477(1992)など)や、正孔輸送性ポリビニルカルバゾール中に電子輸送性材料と螢光色素を混入した(第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p-g-12(1991))素子が提案されている。
【0007】
また、作製法という観点から、製造の簡略化、加工性、大面積化、コスト等の観点から湿式による塗布方式が検討されており、キャスティング法によっても素子が得られることが報告されている(第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p-ZP-5(1989)、第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a-PB-7(1990))。
【非特許文献1】Thin Solid Films, Vol.94, 171 (1982)
【非特許文献2】Applied Physics Letter, Vol.51, 913 (1987)
【非特許文献3】第40回応用物理学関係連合講演会予稿集30a-SZK-14(1993)
【非特許文献4】第42回高分子討論会予稿集20J21(1993)
【非特許文献5】Nature, Vol.357, 477(1992)
【非特許文献6】第38回応用物理学関係連合講演会予稿集31p-g-12(1991)
【非特許文献7】第50回応用物理学会学術講演予稿集,29p-ZP-5(1989)
【非特許文献8】第51回応用物理学会学術講演予稿集,28a-PB-7(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い輝度を有し、安定性及び耐久性に優れ、且つ大面積化可能であり製造容易な有機電界発光素子及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極間に挟まれたバッファ層及び有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、少なくとも発光層を含む1以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルの少なくとも1種であり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層が、前記バッファ層と接して設けられ、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料が無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴とする有機電界発光素子である。
【0010】
【化1】

【0011】
ここで、上記一般式(I)中、Aは下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’(ここで、R’は水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す)を表し、pは5以上5000以下の整数を表す。
【0012】
【化2】

【0013】
ここで、上記一般式(II−1)及び(II−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、lは0または1を表し、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2以上10以下の分枝状炭化水素を表す。
【0014】
請求項2に係る発明は、
前記バッファ層が、酸化モリブデン及び酸化バナジウムのいずれか、または両方を含有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0015】
請求項3に係る発明は、
上記一般式(II−1)及び(II−2)における前記Arが、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、及び、フルオレンから選ばれる1価の芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0016】
請求項4に係る発明は、
上記一般式(II−1)及び(II−2)における前記Tが、−CH−、−(CH−、−(CH−、又は、−(CH−であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0017】
請求項5に係る発明は、
前記バッファ層の膜厚が、1nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0018】
請求項6に係る発明は、
前記有機化合物層が、少なくとも前記発光層及び電子輸送層から構成され、少なくとも前記発光層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、前記陽極と前記発光層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0019】
請求項7に係る発明は、
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子である。
【0020】
請求項8に係る発明は、
前記有機化合物層が、少なくとも正孔輸送層、前記発光層、及び、電子輸送層から構成され、少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0021】
請求項9に係る発明は、
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子である。
【0022】
請求項10に係る発明は、
前記有機化合物層が、少なくとも正孔輸送層及び前記発光層から構成され、少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0023】
請求項11に係る発明は、
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子である。
【0024】
請求項12に係る発明は、
前記有機化合物層が、前記発光層のみから構成され、前記発光層が電荷輸送能を有する発光層であり、前記電荷輸送能を有する発光層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記電荷輸送能を有する発光層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子である。
【0025】
請求項13に係る発明は、
前記電荷輸送能を有する発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子である。
【0026】
請求項14に係る発明は、
マトリックス状に配置された有機電界発光素子と、前記有機電界発光素子を駆動させるための駆動手段と、を有し、
前記有機電界発光素子が、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極間に挟まれたバッファ層及び有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、少なくとも発光層を含む1以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルの少なくとも1種であり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層が、前記バッファ層と接して設けられ、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料が無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴とする表示装置である。
【0027】
【化3】

【0028】
(一般式(I)中、Aは下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’(ここで、R’は水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す)を表し、pは5以上5000以下の整数を表す。)
【0029】
【化4】

【0030】
(一般式(II−1)及び(II−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、lは0または1を表し、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2以上10以下の分枝状炭化水素を表す。)
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、本発明で用いられる少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルが本発明の有機化合物層の少なくとも一層として用いられず、本発明で用いられるバッファ層に無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料を電荷注入材料として用いない場合に比べ、大面積化及び製造を容易としつつ、高い輝度を有し、安定性及び耐久性に優れた有機電界発光素子を提供できる、といった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態ついて詳細に説明する。
【0033】
本実施の形態に係る有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明(ここで、透明又は半透明とは、可視光の透過率が50%以上であることを意味する。以下同様である。)である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極間に挟まれたバッファ層及び有機化合物層と、を有している。
【0034】
有機化合物層は、少なくとも発光層を含む1以上の層からなっている。また有機化合物層の少なくとも一層は、下記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを、少なくとも1種含有する。
【0035】
【化5】

【0036】
ここで、上記一般式(I)中、Aは下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’(ここで、R’は水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す)を表し、pは5以上5000以下の整数を表す。
【0037】
【化6】

【0038】
ここで、上記一般式(II−1)及び(II−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、lは0または1を表し、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2以上10以下の分枝状炭化水素を表す。
【0039】
上記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層は、バッファ層と接して設けられている。またバッファ層は、陽極とも接して設けられている。
【0040】
バッファ層は、1種以上の電荷注入材料を含有し、電荷注入材料は、無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴としている。
【0041】
上記組成及び構成とする事により、有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性を向上させることができる。
上記組成及び構成により、有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性が向上する理由は定かではないが、バッファ層の電荷注入材料が陽極―有機化合物層間のエネルギー障壁を低下させることにより電荷注入性が上がると共に、陽極―バッファ層間の密着性が良いだけでなく、上記特定の電荷輸送性ポリエーテルを含む有機化合物層―バッファ層間の密着性が良くなるため、輝度、安定性、及び耐久性が向上すると推測される。
加えて、有機化合物層に含まれる上記特定の電荷輸送性ポリエーテルが、高い電荷移動度及び高いガラス転移温度をもつため、有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性を高くすることができると推測される。
また発光層等の主な機能層に有機材料を用いることにより、大面積化及び製造が容易となる。
【0042】
以下、それぞれの層について説明する。
【0043】
[1]バッファ層
バッファ層に含まれる電荷注入材料は、無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴としている。
【0044】
無機酸化物の例としては、例えば、希土類元素を含む遷移金属、アルミニウム、珪素、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、インジウム、錫、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス等の酸化物、及びこれらの複合酸化物等を挙げることが出来るが、これに限られるものではない。
【0045】
無機窒化物の例としては、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム、モリブデン、バナジウム、ランタン、クロム、珪素、ホウ素、鉄、銅、亜鉛、バリウム、チタン、イットリウム、カルシウム、タンタル、ジルコニウム、タンタル等の窒化物、及びこれらの複合窒化物等を挙げることが出来るが、これに限られるものではない。
【0046】
無機酸窒化物の例としては、例えば、Si(窒化ケイ素)にAl(アルミナ)やSiO(シリカ)などを固溶させて作るサイアロン(SiAlON)と呼ばれる酸窒化物や、これにリチウム、カルシウム、バリウム、ランタン、等を含有する複合サイアロンや、その他の無機酸化物、無機窒化物を固溶させた多元サイアロン等を挙げることが出来るが、これに限られるものではない。
【0047】
これらの無機酸化物・無機窒化物・無機酸窒化物の中でも、酸化モリブデン、酸化バナジウムが望ましい。
【0048】
バッファ層が酸化モリブデン及び酸化バナジウムのいずれか、または両方を含有することにより、さらに有機電界発光素子の輝度を向上させることができる。
上記構成により、さらに有機電界発光素子の輝度が向上する理由は定かではないが、酸化モリブデン及び酸化バナジウムは、陽極―有機化合物層間のエネルギー障壁を効率よく低下させるだけでなく、他の物質に比べ可視光の吸収率が低く薄膜化が可能であることにより膜の光透過性が良く、有機電界発光素子の光取り出し効率が向上するためであると推測される。
【0049】
バッファ層の膜厚は、1nm以上200nm以下が望ましく、1nm以上15nm以下がより望ましく、5nm以上15nm以下がさらに望ましい。
【0050】
バッファ層の膜厚を上記範囲とする事により、さらに有機電界発光素子の輝度を向上させることができる。
バッファ層の膜厚を上記範囲とする事によりさらに有機電界発光素子の輝度が向上する理由は定かではないが、バッファ層の電荷注入性と光透過性とを両立させることにより、さらに有機電界発光素子の輝度を向上させることができるためであると推測される。
なお、バッファ層の膜厚は膜厚センサーにより測定される。
【0051】
[2]有機化合物層
有機化合物層を構成する層のうち少なくとも一層は、上記電荷輸送性ポリエーテルを含有する。以下、上記電荷輸送性ポリエーテルについて詳細に説明する。
【0052】
電荷輸送性ポリエーテルは、上記一般式(I)で示され、上記一般式(I)中、Aは上記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表す。
【0053】
上記一般式(II−1)及び(II−2)中のArとして具体的には、例えば、置換もしくは未置換のフェニル基、置換もしくは未置換の1価の多核芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の縮合環芳香族炭化水素、置換もしくは未置換の1価の芳香族複素環、又は、少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表す。
【0054】
なお、当該多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素とは、本発明においては、具体的には以下に定義される多環式芳香族のことを意味する。即ち、「多核芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、炭素―炭素の単結合によって結合している炭化水素化合物を表す。また、「縮合環芳香族炭化水素」とは、炭素と水素とから構成される芳香環が2個以上存在し、これらの芳香環同士が、1対の隣接して結合する2以上の炭素原子を共有している炭化水素化合物を表す。
【0055】
多核芳香族炭化水素及び縮合環芳香族炭化水素を構成する芳香環数は特に限定されないが、芳香環数が2以上5以下のものが望ましく、縮合環芳香族炭化水素においては、全縮合環芳香族炭化水素が望ましい。ここで「全縮合環芳香族炭化水素」とは、本発明においては、全ての芳香環が縮合環構造のより連続的に隣接してなる縮合環芳香族炭化水素を表す。
【0056】
多核芳香族炭化水素の具体例としては、例えば、ビフェニル、ターフェニル等が挙げられる。また縮合環芳香族炭化水素の具体例としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等が挙げられる。
【0057】
また芳香族複素環は、本発明においては、炭素と水素以外の元素も含む芳香環を表す。その環骨格を構成する原子数(Nr)は、Nr=5及び/又は6が好ましく用いられる。また環骨格を構成するC以外の元素(異種元素)の種類及び数は特に限定されないが、例えば、S、N、O等が好ましく用いられ、前記環骨格中には2種類以上及び/又は2個以上の異種原子が含まれていてもよい。特に5員環構造を持つ複素環としては、チオフェン、チオフィン及びフランもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環、ピロールもしくはこれらの3位及び4位の炭素をさらに窒素で置換した複素環が好ましく用いられ、6員環構造をもつ複素環として、ピリジンが好ましく用いられる。
【0058】
さらに、芳香族複素環を含む芳香族基は、本発明においては、骨格を構成する原子団中に、少なくとも1種の前記芳香族複素環を含む結合基を表す。これらは、すべてが共役系で構成されたもの、或いは少なくとも一部が非共役系で構成されたもののいずれでもよいが、電荷輸送性や発光効率の点で、すべてが共役系で構成されたものが望ましい。
【0059】
Arを表す構造として選択されるベンゼン環、多核芳香族炭化水素、縮合環芳香族炭化水素、複素環、又は芳香族複素環を含む芳香族基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリール基、アラルキル基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる、アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。置換アミノ基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体例は前述の通りである。
【0060】
Arは、上記に挙げた具体例のうちベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、及び、フルオレンから選ばれる1価の芳香族基であることが望ましい。
Arが上記置換基であることにより、さらに有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性を向上させることができる。
Arが上記置換基であることにより有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性が向上する理由は定かではないが、バッファ層との密着性が向上するためであると推測される。
【0061】
上記一般式(II−1)及び(II−2)中のXとして具体的には、例えば、置換もしくは未置換のフェニレン基、又は置換もしくは未置換の芳香環数2以上10以下の2価の多核芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の芳香環数2以上10以下の2価の縮合環芳香族炭化水素、又は置換もしくは未置換の2価の芳香族複素環、又は少なくとも1種の芳香族複素環を含む置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表す。
ここで、「多核芳香族炭化水素」「縮合環芳香族炭化水素」「芳香族複素環」「芳香族複素環を含む芳香族基」については前述に示す通りである。
【0062】
一般式(II−1)及び(II−2)中、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素、又は炭素数2以上10以下の2価の分枝鎖状炭化水素基を示し、望ましくは炭素数が2以上6以下の2価の直鎖状炭化水素基、又は炭素数3以上7以下の2価の分枝鎖状炭化水素である。
Tの具体例としては、例えば以下に示す構造を持つものが挙げられるが、
【0063】
【化7】

【0064】
Tは上記に挙げた具体例のうち−CH−,−(CH−,−(CH−,−(CH−等が特に望ましい。
Tが上記置換基であることにより、さらに有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性を向上させることができる。
Tが上記置換基であることにより有機電界発光素子の輝度、安定性、及び耐久性が向上する理由は定かではないが、特に高いガラス転移温度を持つ電荷輸送性ポリエーテルを得ることができると共に、バッファ層との密着性が向上するためであると推測される。
【0065】
上記一般式(I)中、Aは上記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択された少なくとも1種を表し、一つのポリマー中に構造Aが2種類以上含まれてもよい。
【0066】
上記一般式(I)中、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’を表す。
【0067】
アルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
アリール基としては、炭素数6以上20以下のものが好ましく、例えば、フェニル基、トルイル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、炭素数7以上20以下のものが好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
また、置換アリール基、置換アラルキル基の置換基としては、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0068】
アシル基としては、アクリロイル基、クロトノイル基、メタクリロイル基、n-ブチロイル基、2−フロイル基、ベンゾイル基、シクロヘキサンカルボニル基、エナンチル基、フェニルアセチロイル基、トルイル基等が挙げられる。
【0069】
基−CONH−R’中のR’は、水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す。
【0070】
上記一般式(I)中、pは重合度を表わし、5以上5,000以下の範囲であるが、望ましくは10以上1,000以下の範囲である。
【0071】
本実施の形態に用いる電荷輸送性ポリエーテルの重量平均分子量Mは5,000以上1,000,000以下の範囲であるが、10,000以上300,000以下の範囲にあるのが望ましい。
【0072】
電荷輸送性ポリエーテルの重量平均分子量Mは、以下の方法により測定することができる。
まず、電荷輸送性ポリエーテルの1.0質量%THF(テトラヒドロフラン)溶液を調製し、示差屈折率検出器(RI、TOSOH社製、商品名:UV‐8020)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、標準サンプルとしてスチレンポリマーを用いて行う。
【0073】
ここで、一般式(I)の電荷輸送性ポリエーテルの具体例としては、例えば、特開平8−176293号、特開平8−269446号、特開平8−269446号、特開平8−269446号などに開示されているものが挙げられる。
【0074】
次に、電荷輸送性ポリエーテルの合成方法について説明する。
本実施の形態に用いる電荷輸送性ポリエーテルは、例えば、以下に示す第1乃至第3の方法により合成することができる。
【0075】
第1の方法としては、例えば、下記構造式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを加熱脱水縮合させることにより、電荷輸送性ポリエーテルを合成する方法が挙げられる。
【0076】
【化8】

【0077】
なお、上記一般式(III−1)または(III−2)中、Ar、X、T、k、lは、前記一般式(II−1)または(II−2)におけるAr、X、T、k、lと同様である。
【0078】
上記第1の方法により電荷輸送性ポリエーテルを合成する場合は、無溶媒で上記構造式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを加熱溶融し、水の脱離による重合反応を促進させるため、減圧下で反応させることが望ましい。
【0079】
一方、第1の方法により電荷輸送性ポリエーテルを合成する場合において、溶媒を使用することもできる。溶媒を使用する場合は、重合中に生成する水を除去するため、水と共沸する溶媒を用いることが望ましい。水と共沸する溶媒とは、例えば、トリクロロエタン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が挙げられる。上記水と共沸する溶媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、望ましくは1当量以上100当量以下、より望ましくは2当量以上50当量以下の範囲で用いられる。
【0080】
第1の方法により電荷輸送性ポリエーテルを合成する場合の反応温度としては、特に制限はないが、重合中に生成する水を除去するために、溶媒の沸点の温度で反応させるのが望ましい。また重合を促進させるために、反応系から溶媒を除去し、粘ちょう状態で加熱撹拌してもよい。
【0081】
第2の方法としては、例えば、上記構造式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを、酸触媒を用いて脱水縮合することにより、電荷輸送性ポリエーテルを合成する方法が挙げられる。
【0082】
酸触媒としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸、あるいは塩化亜鉛等のルイス酸等が挙げられる。酸触媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、望ましくは1/10000当量以上1/10当量以下、より望ましくは1/1000当量以上1/50当量以下の範囲で用いられる。
【0083】
また、重合中に生成する水を除去するために、反応時に水と共沸可能な溶剤を用いるのが好ましい。反応時に用いる溶剤としては、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン等が挙げられる。上記溶媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、望ましくは1当量以上100当量以下、より望ましくは2当量以上50当量以下の範囲で用いられる。
【0084】
第2の方法により電荷輸送性ポリエーテルを合成する場合の反応温度としては特に制限はないが、重合中に生成する水を除去するために、溶剤の沸点の温度で反応させることが望ましい。
【0085】
第3の方法としては、例えば、上記構造式(III−1)または(III−2)で示される電荷輸送性モノマーを、縮合剤を用いて縮合させることにより、電荷輸送性ポリエーテルを合成する方法が挙げられる。
【0086】
縮合剤としては例えば、イソシアン化シクロヘキシル等のイソシアン化アルキル、シアン化シクロヘキシル等のシアン化アルキル、シアン酸p−トリルや2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン等のシアン酸エステル、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)、トリクロロアセトニトリル等が挙げられる。縮合剤は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、望ましくは1/2当量以上10当量以下、より望ましくは1当量以上3当量以下の範囲で用いられる。
【0087】
反応時には、溶剤として、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等を用いることが望ましい。上記溶媒は、電荷輸送性モノマー1当量に対して、望ましくは1当量以上100当量以下、より望ましくは2当量以上50当量以下の範囲で用いられる。
【0088】
第3の方法により電荷輸送性ポリエーテルを合成する場合の反応温度としては特に制限はないが、室温(例えば25℃)以上であり、かつ、溶剤の沸点以下である温度の範囲で反応させることが望ましい。
【0089】
上記第1乃至第3の方法のうち、異性化や副反応が起こりにくいという観点から、第1の方法又は第3の方法が望ましい。また、反応条件がより穏和であるという観点から、特に第3の方法がより望ましい。
【0090】
電荷輸送性ポリエーテルの合成反応終了後には、例えば、沈澱処理を行うことがよい。
具体的には、電荷輸送性ポリエーテルの合成反応の過程において溶剤を用いなかった場合は、電荷輸送性ポリエーテルが溶解可能な溶剤に溶解させ、ポリエーテル溶液を作製する。一方、電荷輸送性ポリエーテルの合成反応の過程において溶剤を用いた場合には、合成反応終了直後の溶液をそのまま、ポリエーテル溶液として用いる。
次に、上記ポリエーテル溶液を、電荷輸送性ポリエーテルが溶解しにくい貧溶剤(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、アセトン等)の中に滴下し、電荷輸送性ポリエーテルを析出させる。その後、電荷輸送性ポリエーテルを分離し、水や有機溶剤で十分に洗浄し、乾燥させる。
【0091】
さらに必要であれば、上記の沈澱処理(適当な有機溶剤に溶解させ、貧溶剤中に滴下し、電荷輸送性ポリエーテルを析出させる処理)を繰り返してもよい。
【0092】
沈澱処理の際には、メカニカルスターラー等で、効率よく撹拌しながら行うことが望ましい。再沈澱処理の際に電荷輸送性ポリエーテルを溶解させる溶剤は、電荷輸送性ポリエーテル1当量に対して、望ましくは1当量以上100当量以下、より望ましくは2当量以上50当量以下の範囲で用いられる。また、貧溶剤は、電荷輸送性ポリエーテル1当量に対して、望ましくは1当量以上1000当量以下、より望ましくは10当量以上500当量以下の範囲で用いられる。
【0093】
さらに、上記反応において、電荷輸送性モノマーを2種以上、望ましくは2種以上5種以下、さらに望ましくは2種以上3種以下用いることにより、共重合ポリマーを合成することも可能である。異種の電荷輸送性モノマーを共重合することによって、電気特性、成膜性、溶解性を制御することができる。
【0094】
電荷輸送性ポリエーテルの末端基は、電荷輸送性モノマーと同様にヒドロキシル基(すなわち上記一般式(I)中のRが水素原子)であってもよいが、溶解性、成膜性、モビリティー等のポリマー物性に影響を及ぼす場合には、電荷輸送性ポリエーテルの末端基を修飾し物性を制御することができる。
【0095】
例えば、電荷輸送性ポリエーテルの末端のヒドロキシル基を、硫酸アルキル、ヨウ化アルキル等を用いてアルキルエーテル化することができる。アルキルエーテル化するための具体的な試薬としては、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が挙げられる。上記試薬は、末端のヒドロキシル基1当量に対し、望ましくは1当量以上3当量以下、より望ましくは1当量以上2当量以下の範囲で用いる。アルキルエーテル化の際、塩基触媒を用いることができる。塩基触媒としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウム金属等が挙げられる。塩基触媒は、末端のヒドロキシル基1当量に対し、望ましくは1当量以上3当量以下、より望ましくは1当量以上2当量以下の範囲で用いる。
【0096】
アルキルエーテル化における反応温度は、例えば、0℃以上であり、かつ、使用する溶剤の沸点以下である温度の範囲とすることができる。また、アルキルエーテル化の際に用いる溶剤として、例えば、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の不活性溶剤から選んだ単独溶剤、あるいは2種以上3種以下の混合溶剤を使用することができる。
また、必要に応じて、相間移動触媒としてテトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド等の第4級アンモニウム塩を使用することもできる。
【0097】
また、電荷輸送性ポリエーテルの末端のヒドロキシル基を、酸ハロゲン化物を用いてアシル化する(すなわち、上記一般式(I)中のRをアシル基とする)こともできる。酸ハロゲン化物は特に限定するものではないが、例えばアクリロイルクロリド、クロトノイルクロリド、メタクリロイルクロリド、n−ブチロイルクロリド、2−フロイルクロリド、ベンゾイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、エナンチルクロリド、フェニルアセチルクロリド、o−トルオイルクロリド、m−トルオイルクロリド、p−トルオイルクロリド等があげられる。酸ハロゲン化物は、末端のヒドロキシル基1当量に対し、望ましくは1当量以上3当量以下、より望ましくは1当量以上2当量以下の範囲で用いる。アシル化の際、塩基触媒を用いることもできる。塩基触媒としては、例えば、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等から任意に選ぶことができる。塩基触媒は、酸ハロゲン化物1当量に対し、望ましくは1当量以上3当量以下、より望ましくは1当量以上2当量以下の範囲で用いる。
【0098】
アシル化の際に用いる溶剤として、例えば、ベンゼン、トルエン、塩化メチルン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
アシル化における反応温度は、例えば、0℃以上であり、かつ、使用する溶剤の沸点以下である温度の範囲とすることができる。望ましくは、0℃以上30℃以下の範囲で行う。
【0099】
さらに、無水酢酸等の酸無水物を用いることによりアシル化することもできる。酸無水物を用いてアシル化する場合においても、溶剤を用いることができる。溶剤として具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の不活性溶剤が挙げられる。
酸無水物を用いてアシル化する際の反応温度としては、例えば、0℃以上であり、かつ、用いる溶剤の沸点以下である温度の範囲とすることができる。望ましくは、50℃以上であり、かつ、溶剤の沸点以下である温度の範囲で反応を行う。
【0100】
上記のように、電荷輸送性ポリエーテルの末端のヒドロキシル基をアルキルエーテル化又はアシル化することの他に、モノイソシアネートを用いて電荷輸送性ポリエーテルの末端にウレタン残基を導入(すなわち、上記一般式(I)中のRを基−CONH−R′とする)することもできる。
具体的なモノイソシアネートとしては、例えば、イソシアン酸ベンジルエステル、イソシアン酸n−ブチルエステル、イソシアン酸t−ブチルエステル、イソシアン酸シクロヘキシルエステル、イソシアン酸2,6−ジメチルエステル、イソシアン酸エチルエステル、イソシアン酸イソプロピルエステル、イソシアン酸2−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸4−メトキシフェニルエステル、イソシアン酸n−オクタデシルエステル、イソシアン酸フェニルエステル、イソシアン酸i−プロピルエステル、イソシアン酸m−トリルエステル、イソシアン酸p−トリルエステル、イソシアン酸1−ナフチルエステル等から任意に選ぶことができる。モノイソシアネートは、末端のヒドロキシル基1当量に対し、望ましくは1当量以上3当量以下、より望ましくは1当量以上2当量以下の範囲で用いる。
【0101】
電荷輸送性ポリエーテルの末端にウレタン残基を導入する際用いる溶剤としては例えば、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができる。
【0102】
電荷輸送性ポリエーテルの末端にウレタン残基を導入する際の反応温度は、例えば、0℃以上であり、かつ、用いる溶剤の沸点以下である温度の範囲とすることができる。反応が進みにくい場合は、ジラウリン酸ジブチルスズ(II)、オクチル酸スズ(II)、ナフテン酸鉛等の金属化合物、あるいはトリエチルアミン、トリメチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の3級アミンを触媒として添加することもできる。
【0103】
[3]有機電界発光素子の層構成
次に、本実施の形態の有機電界発光素子の層構成について詳記する。
【0104】
本実施の形態の有機電界発光素子は、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極の間に挟まれた、前記陽極と接して設けられたバッファ層と有機化合物層より構成される。
【0105】
本実施の形態の有機電界発光素子においては、有機化合物層が1つの層により構成される場合は、有機化合物層は「キャリア輸送能を持つ発光層」を意味し、該発光層が前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる。また、有機化合物層が複数の層により構成される場合(機能分離型の場合)は、その少なくとも一層は発光層であり、他の有機化合物層は、キャリア輸送層、すなわち、正孔輸送層、電子輸送層、又は、正孔輸送層及び電子輸送層よりなるものを意味し、これらの少なくとも一層が前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなる。具体的には、例えば、有機化合物層は、少なくとも発光層及び電子輸送層から構成、少なくとも正孔輸送層、発光層及び電子輸送層から構成、或いは、少なくとも正孔輸送層及び発光層から構成され、これらの少なくとも一層(正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層)が前記電荷輸送性ポリエーテルを含有してなるものが挙げられる。本発明の有機電界発光素子においては、発光層が、電荷輸送性材料(前記電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送性材料、電子輸送性材料)を含有してもよい。詳しくは後述する。
【0106】
以下、図面を参照しつつ、より詳細に説明するが、これらに限定されるわけではない。
図1乃至図4は、本実施の形態の有機電界発光素子の層構成を説明するための模式的断面図であって、図1、図2、図3の場合は、有機化合物層が複数の場合の一例であり、図4の場合は、有機化合物層が1つの場合の例を示す。なお、図1乃至図4において、同様の機能を有するものは同じ符号を付して説明する。
【0107】
図1に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、発光層5、電子輸送層6及び背面電極8を順次積層してなる。少なくとも発光層5は、電荷輸送性ポリエーテルを含んでいる。
【0108】
有機電界発光素子10が上記構成をとることにより、他の層構成に比べ、製造容易性と発光効率との両立が図られる。
上記構成により、他の層構成に比べ製造容易性と発光効率との両立が図られる理由は定かではないが、これは、全て機能分離した層構成に比べ層数が少ない一方で、一般に正孔に比較して移動度が低い電子の注入効率を補い、発光層での電荷の均衡が図られるためであると推測される。
【0109】
図2に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び背面電極8を順次積層してなる。少なくとも正孔輸送層4は、電荷輸送性ポリエーテルを含んでいる。
【0110】
有機電界発光素子10が上記構成をとることにより、他の層構成の素子に比べ、発光効率に優れ、低電圧駆動が可能となる。
上記構成により、他の層構成の素子に比べ発光効率に優れ、低電圧駆動が可能となる理由は定かではないが、これは、全て機能分離することで、他の層構成に比べ、電荷の注入効率が最も高くなり、発光層で電荷が再結合可能であるためであると推測される。
【0111】
図3に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、正孔輸送層4、発光層5及び背面電極8を順次積層してなる。少なくとも正孔輸送層4は、電荷輸送性ポリエーテルを含んでいる。
【0112】
有機電界発光素子10が上記構成をとることにより、他の構成に比べ、製造容易性と耐久性との両立が図れる。
上記構成により、他の構成に比べ製造容易性と耐久性との両立が図れる理由は定かではないが、これは、全て機能分離した層構成に比べ層数が少ない一方で、発光層への正孔の注入効率が向上し、発光層で過剰な電子の注入が抑制されるためであると推測される。
【0113】
図4に示す有機電界発光素子10は、透明絶縁体基板1上に、透明電極2、バッファ層3、キャリア輸送能を持つ発光層7及び背面電極8を順次積層してなる。キャリア輸送能を持つ発光層7は、電荷輸送性ポリエーテルを含んでいる。
【0114】
有機電界発光素子10が上記構成をとることにより、他の層構成に比べ、素子の大面積化及び製造が容易である。
上記構成により、他の層構成に比べ、素子の大面積化及び製造が容易である理由は定かではないが、これは、層数が少なく、例えば湿式塗布等により作製できるためであると推測される。
【0115】
ここで発光層5及びキャリア輸送能を持つ発光層7は、電荷輸送性材料(上記電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送性材料、電子輸送性材料)を含んでもよい。
【0116】
有機電界発光素子10が上記構成をとることにより、発光層に電荷が溜まり難くなり、耐久性が向上する。
上記構成により、発光層に電荷が溜まり難くなり耐久性が向上する理由は定かではないが、これは、発光層に電荷輸送能が付与或いは向上され、電荷が溜まり難くなるためであると推測される。
【0117】
ここで、上記特定の電荷輸送性ポリエーテルを含む有機化合物層のうち、バッファ層と接している有機化合物層の膜厚は、20nm以上100nm以下の範囲内であることが望ましい。
【0118】
以下、各々を詳しく説明する。
【0119】
上記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層は、例えば図1に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、発光層5、電子輸送層6としていずれも作用することができ、また、図2に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6としていずれも作用することができ、図3に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、正孔輸送層4、発光層5としていずれも作用することができ、図4に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層7として作用することができる。
【0120】
図1乃至図4に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、透明絶縁体基板1は、発光を取り出すため透明なものが望ましく、具体的には例えば、ガラス、プラスチックフィルム等が用いられるが、これらに限られるものではない。
【0121】
透明電極2は、透明絶縁体基板と同様に発光を取り出すため透明であって、かつ、正孔の注入を行うため仕事関数の大きなものが望ましく、具体的には例えば、酸化スズインジウム(ITO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の酸化膜、及び蒸着或いはスパッタされた金、白金、パラジウム等が用いられるが、これらに限られるものではない。
【0122】
図1及び図2に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、電子輸送層6は、目的に応じて機能(電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテル単独で形成されていてもよいが、電気的特性をさらに改善する等の目的で、電子移動度を調節するために、電荷輸送性ポリエーテル以外の電子輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
このような電子輸送性材料としては、好適には例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。より好適な具体例として、例えば、下記例示化合物(V−1)乃至(V−3)が挙げられるが、これらに限定されたものではない。なお、前記電荷輸送性ポリエーテルを用いない場合、電子輸送層6は、これら電子輸送性材料のみで形成されることとなる。
【0123】
【化9】

【0124】
図2及び図3に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、正孔輸送層4は、目的に応じて機能(正孔輸送能)が付与された電荷輸送性ポリエーテル単独で形成されていてもよいが、正孔移動度を調節するために電荷輸送性ポリエーテル以外の正孔輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成されていてもよい。
このような正孔輸送性材料としては、具体的には例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられ、特に好適な具体例としては、例えば、下記例示化合物(VI−1)乃至(VI−7)が挙げられる。さらに、電荷輸送性ポリエーテルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体がより望ましい。また、他の汎用の樹脂等との混合物としてもよい。なお、前記電荷輸送性ポリエーテルを用いない場合、正孔輸送層4は、これら正孔輸送性材料のみで形成されることとなる。
【0125】
【化10】

【0126】
ここで、上記一般式(VI−6)中、nは整数値であり、10以上100000以下の範囲内であることが望ましく、1000以上50000以下の範囲内であることがより望ましい。
【0127】
図1、図2又は図3に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、発光層5は、他種と比べ、固体状態で高い蛍光量子収率を示す化合物が発光材料として用いられる。発光材料が有機低分子の場合、真空蒸着法もしくは低分子と結着樹脂を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。また、高分子の場合、それ自身を含む溶液または分散液を塗布・乾燥することにより良好な薄膜形成が可能であることが条件である。好適な具体例としては例えば、有機低分子の場合、キレート型有機金属錯体、多核または縮合芳香環化合物、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられ、高分子の場合、ポリパラフェニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。より好適な具体例としては例えば、下記の化合物(VII−1)乃至(VII−17)が挙げられるが、これらに限定されたものではない。
【0128】
【化11】

【0129】
【化12】

【0130】
ここで、上記一般式(VII−13)乃至(VII−17)中、Ar及びXは、上記一般式(II−1)及び(II−2)におけるAr及びXと同様の構造を有する一価基あるいは二価基を意味し、n及びxは1以上の整数を、yは0または1を示す。
【0131】
また、有機電界発光素子10の耐久性向上或いは発光効率の向上を目的として、上記の発光材料中にゲスト材料として発光材料と異なる色素化合物をドーピングしてもよい。真空蒸着によって発光層を形成する場合、共蒸着によってドーピングを行い、溶液または分散液を塗布・乾燥することで発光層を形成する場合、溶液または分散液中に混合することでドーピングを行う。発光層中における色素化合物のドーピングの割合としては0.001重量%以上40重量%以下程度、望ましくは0.01重量%以上10重量%以下程度である。このようなドーピングに用いられる色素化合物としては、発光材料との相容性が良く、かつ発光層の良好な薄膜形成を妨げない有機化合物が用いられ、好適には例えば、DCM誘導体、キナクリドン誘導体、ルブレン誘導体、ポルフィリン系化合物等が挙げられる。より好適な具体例としては例えば、下記の化合物(VIII−1)乃至(VIII−4)が用いられるが、これらに限定されたものではない。
【0132】
【化13】

【0133】
発光層5は、図1に示される有機電界発光素子10の層構成の場合は、前記発光性材料の他に上記電荷輸送性ポリエーテルが含まれている。また図2又は図3に示される有機電界発光素子10の層構成の場合は、発光層5は、前記発光性材料単独で形成されても良いが、電気特性及び発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光性材料の他に上記電荷輸送性ポリエーテルを含んでも良い。また発光層5は、上記電荷輸送性ポリエーテルの他に、それ以外の電荷輸送性材料を含んでもよい。
上記電荷輸送性ポリエーテル又はそれ以外の電荷輸送性材料を発光層5に含ませる場合は、前記電荷輸送性ポリエーテルを1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成、もしくは前記発光性高分子中に前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。また、前記電荷輸送性高分子が発光特性も兼ね備えたものである場合、発光材料として用いても良く、その場合、電気特性及び発光特性をさらに改善する等の目的で、前記発光材料に前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を1重量%ないし50重量%の範囲で混合分散して形成させてもよい。
【0134】
図4に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、キャリア輸送能を持つ発光層7は、目的に応じて機能(正孔輸送能、或いは電子輸送能)が付与された前記電荷輸送性ポリエーテル中に発光材料(具体的には例えば前記発光材料(VII−1)乃至(VII−17))を50重量%以下分散させた有機化合物層であるが、有機電界発光素子10に注入される正孔と電子のバランスを調節するために前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を10重量%以上50重量%以下分散させてもよい。
【0135】
このような電荷輸送性材料としては、キャリア輸送能を持つ発光層7の電子移動度を調節する場合、電子輸送性材料として好適には例えば、オキサジアゾール誘導体、ニトロ置換フルオレノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体等が挙げられる。より好適な具体例としては例えば、上記例示化合物(V−1)乃至(V−3)が挙げられる。また、前記電荷輸送性ポリエーテルと強い電子相互作用を示さない有機化合物が用いられることが望ましく、より望ましくは下記例示化合物(19)が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0136】
【化14】

【0137】
キャリア輸送能を持つ発光層7の正孔移動度を調節する場合、正孔輸送性材料として好適には例えば、テトラフェニレンジアミン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導、スチルベン誘導体、アリールヒドラゾン誘導体、ポルフィリン系化合物等、特に好適な具体例として上記例示化合物(VI−1)乃至(VI−7)が挙げられるが、電荷輸送性ポリエーテルとの相容性が良いことから、テトラフェニレンジアミン誘導体が好ましい。
【0138】
図1乃至図4に示される有機電界発光素子10の層構成の場合、背面電極8には、真空蒸着可能で、電子注入を行うため仕事関数の小さな金属が使用されるが、特に望ましくは例えば、マグネシウム、アルミニウム、銀、インジウム及びこれらの合金、もしくフッ化リチウムや酸化リチウム等の金属ハロゲン化合物や金属酸化物、リチウム、カルシウム、バリウム、セシウム等のアルカリ金属等も用いられる。また、背面電極8上には、さらに素子の水分や酸素による劣化を防ぐために保護層を設けてもよい。具体的な保護層の材料としては、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Alなどの金属、MgO、SiO、TiO等の金属酸化物、ポリエチレン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層の形成には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ重合法、CVD法、コーティング法が適用できる。
【0139】
[4]有機電界発光素子の製造方法
これら図1乃至図4に示される有機電界発光素子10は、まず透明電極2の上にバッファ層3を形成する。
バッファ層3は上記各材料を真空蒸着法、スパッタリング、CVD法、等を用いることにより薄膜形成する。
【0140】
次に、各有機電界発光素子10の層構成に応じて、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6或いはキャリア輸送能を持つ発光層7を順に形成していく。正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6或いはキャリア輸送能を持つ発光層7は、上記各材料を、真空蒸着法、もしくは有機溶媒中に溶解或いは分散し、得られた塗布液を用いて前記透明電極上に、例えばスピンコーティング法、ディップ法等を用いて成膜することによって形成される。
【0141】
また、電荷輸送材料、発光材料として高分子を用いる場合、各層形成は塗布液を用いた製膜法により行うことが望ましいが、例えばインクジェット法等を利用して成膜を行ってもよい。
【0142】
形成される正孔輸送層4、発光層5及び電子輸送層6の膜厚は、例えば、各々20nm以上100nm以下、特に30nm以上80nm以下の範囲であることが望ましい。また、キャリア輸送能を持つ発光層7の膜厚は、例えば、30μm以上200μm以下程度が望ましい。上記各材料(前記電荷輸送性ポリエーテル、発光材料等)の分散状態は、分子分散状態でも粒子分散状態でも構わない。塗布液を用いた成膜法の場合、分子分散状態とするためには、分散溶媒は上記各材料の共通溶媒を用いる必要があり、粒子分散状態とするために分散溶媒は上記各材料の分散性及び溶解性を考慮して選択する必要がある。粒子状に分散するためには、例えば、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー、アトライター、ホモジェナイザー、超音波法等が利用できる。
【0143】
そして、最後に、発光層5、電子輸送層6或いはキャリア輸送能を持つ発光層7の上に背面電極8を、例えば真空蒸着法により形成することにより素子が完成される。
【0144】
[5]表示装置
本実施の形態の表示装置は、上記本実施の形態の有機電界発光素子と、有機電界発光素子を駆動するための駆動手段と、を有する。
本実施の形態の表示装置が、上記本実施の形態の有機電界発光素子を有することにより、表示装置の大面積化及び製造を容易としつつ、輝度、安定性及び耐久性の向上を実現することができる。
【0145】
表示装置として具体的には例えば、図1乃至4に示すように、有機電界発光素子10の一対の電極(透明電極2、背面電極8)に連結され、当該一対の電極間に直流電圧を印加するための電圧印加装置9を、駆動手段として備えたものが挙げられる。
電圧印加装置9を用いた有機電界発光素子10の駆動方法としては、例えば、一対の電極間に、4V以上20V以下で、電流密度1mA/cm以上200mA/cm以下の直流電圧を印加することによって有機電界発光素子10を発光させることができる。
【0146】
また、本実施の形態の有機電界発光素子10は、最小単位(1画素単位)の構成について説明したが、例えば、当該1画素単位(有機電界発光素子10)をマトリクス状に配置した表示装置に適用される。無論、電極対をマトリクス状に配置してもよい。
また、表示装置の駆動方式としては、従来公知の技術、例えば複数の行電極及び列電極を配し、行電極を走査駆動しながら各行電極に対応する画像情報に応じて列電極を一括して駆動させる単純マトリクス駆動や、各画素毎に配された画素電極によるアクティブマトリックス駆動等を利用することができる。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0148】
―電荷輸送性ポリエーテルの合成―
以下に合成例を示すが、溶媒としてはトルエンを、縮合剤としてはDCC(N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いた。また、用いた縮合剤の量は、電荷輸送性モノマー1等量に対し、1/2等量であった。
(合成例1)
下記化合物(IX−1)2.1g、を50mlの三口ナスフラスコにいれ、8時間加熱還流して反応を続けた。その後、室温まで冷却し、モノクロロベンゼン50mlに加熱溶解し、不溶物を0.5μmのPTFEフィルターにてろ過し、ろ液を攪拌しているメタノール500ml中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.5gの電荷輸送性ポリエーテル(X−1)を得た。分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定し、Mw=5.82×10(スチレン換算)であり、Mw/Mn=1.43であった。
【0149】
【化15】

【0150】
(合成例2)
下記化合物(IX−2)2.5g、を50mlの三口ナスフラスコにいれ、8時間加熱還流して反応を続けた。その後、室温まで冷却し、モノクロロベンゼン50mlに加熱溶解し、不溶物を0.5μmのPTFEフィルターにてろ過し、ろ液を攪拌しているメタノール500ml中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.3gの電荷輸送性ポリエーテル(X−2)を得た。分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定し、Mw=9.52×10(スチレン換算)であり、Mw/Mn=1.38であった。
【0151】
【化16】

【0152】
(合成例3)
下記化合物(IX−3)4.7g、を50mlの三口ナスフラスコにいれ、8時間加熱還流して反応を続けた。その後、室温まで冷却し、モノクロロベンゼン50mlに加熱溶解し、不溶物を0.5μmのPTFEフィルターにてろ過し、ろ液を攪拌しているメタノール500ml中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、3.2gの電荷輸送性ポリエーテル(X−3)を得た。分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定し、Mw=9.66×10(スチレン換算)であり、Mw/Mn=1.25であった。
【0153】
【化17】

【0154】
(合成例4)
下記化合物(IX−4)3.2g、を50mlの三口ナスフラスコにいれ、8時間加熱還流して反応を続けた。その後、室温まで冷却し、モノクロロベンゼン50mlに加熱溶解し、不溶物を0.5μmのPTFEフィルターにてろ過し、ろ液を攪拌しているメタノール500ml中に滴下し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーをろ過し、十分にメタノールで洗浄した後、乾燥させ、1.1gの電荷輸送性ポリエーテル(X−4)を得た。分子量分布はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定し、Mw=8.39×10(スチレン換算)であり、Mw/Mn=1.45であった。
【0155】
【化18】

【0156】
―有機電界発光素子の作成―
次に、上記方法で得た電荷輸送性ポリエステルを使用し、以下のようにして素子を作成した。
【0157】
(実施例1)
2mm幅の短冊型ガラス基板上に、エッチングによりITO電極を形成し洗浄後乾燥させた後、バッファ層用材料として三酸化モリブデン(MoO)を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmのバッファ層を形成した。
【0158】
次に電荷輸送性材料として、電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(X−1)〕を0.5重量部と、発光性高分子として、下記例示化合物(XI、ポリフルオレン系、Mw≒10)を0.5重量部混合し、混合物の10重量%クロロベンゼン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、バッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚80nmの電荷輸送能を持つ発光層を形成した。
【0159】
【化19】

【0160】
最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、150nm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0161】
(実施例2)
2mm幅の短冊型ガラス基板上に、エッチングによりITO電極を形成し洗浄後乾燥させた後、バッファ層用材料として三酸化モリブデン(MoO)を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmのバッファ層を形成した。
【0162】
次に正孔輸送性材料として、電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(X−2)〕の5重量%クロロベンゼン溶液を調整し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した後にバッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0163】
十分乾燥させた後、発光材料として、昇華精製したAlq(例示番号VII−1)をタングステンボードに入れ、真空蒸着法により蒸着して、正孔輸送層上に膜厚50nmの発光層を形成した。この時の真空度は10―5Torr、ボート温度は300℃であった。
【0164】
最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、150nm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0165】
(実施例3)
2mm幅の短冊型ガラス基板上に、エッチングによりITO電極を形成し洗浄後乾燥させた後、バッファ層用材料として三酸化モリブデン(MoO)を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmのバッファ層を形成した。
【0166】
次に正孔輸送性材料として、電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(X−3)〕の5重量%クロロベンゼン溶液を調整し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した後にバッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚30nmの正孔輸送層を形成した。
【0167】
十分乾燥させた後、発光材料として、昇華精製したAlq(例示番号VII−1)をタングステンボードに入れ、真空蒸着法により蒸着して、正孔輸送層上に膜厚50nmの発光層を形成した。この時の真空度は10―5Torr、ボート温度は300℃であった。
【0168】
最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、150nm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0169】
(実施例4)
2mm幅の短冊型ガラス基板上に、エッチングによりITO電極を形成し洗浄後乾燥させた後、バッファ層用材料として三酸化モリブデン(MoO)を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmのバッファ層を形成した。
【0170】
次に電荷輸送性材料として、電荷輸送性ポリエーテル〔例示化合物(X−4)〕を0.5重量部と、発光性高分子として、下記例示化合物(XII、PPV系、Mw≒10)を0.1重量部混合し、混合物の10重量%クロロベンゼン溶液を調製し、0.1μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターで濾過した。この溶液を用いて、バッファ層上にスピンコート法により塗布して膜厚80nmの電荷輸送能を持つ発光層を形成した。
【0171】
【化20】

【0172】
最後にMg−Ag合金を共蒸着により蒸着して、2mm幅、150nm厚の背面電極をITO電極と交差するように形成した。形成された有機電界発光素子の有効面積は0.04cmであった。
【0173】
(実施例5)
バッファ層用材料として三酸化バナジウム(VO)を用いた以外は(実施例1)と同様にして素子を作製した。
【0174】
(実施例6)
バッファ層用材料として三酸化バナジウム(VO)を用いた以外は(実施例2)と同様にして素子を作製した。
【0175】
(実施例7)
バッファ層用材料として三酸化バナジウム(VO)を用いた以外は(実施例3)と同様にして素子を作製した。
【0176】
(実施例8)
バッファ層用材料として三酸化バナジウム(VO)を用いた以外は(実施例4)と同様にして素子を作製した。
【0177】
(比較例1)
バッファ層を形成せず、ITO電極を形成したガラス基板上に直接発光層からの形成を行った以外は、実施例1と同様にして素子を作成した。
【0178】
(比較例2)
バッファ層を形成せず、ITO電極を形成したガラス基板上に直接正孔輸送層からの形成を行った以外は、実施例2と同様にして素子を作成した。
【0179】
(比較例3)
バッファ層を形成せず、ITO電極を形成したガラス基板上に直接正孔輸送層からの形成を行った以外は、実施例3と同様にして素子を作成した。
【0180】
(比較例4)
バッファ層を形成せず、ITO電極を形成したガラス基板上に直接電荷輸送能をもつ発光層からの形成を行った以外は、実施例4と同様にして素子を作成した。
【0181】
(比較例5)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテルの代わりに、ビニル骨格を有する電荷輸送性高分子〔下記化合物(XIII)、Mw=5.46×10(スチレン換算)〕を用いた以外は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0182】
【化21】

【0183】
(比較例6)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテルの代わりに、ポリカーボネート骨格を有する電荷輸送性高分子〔下記化合物(XIV)、Mw=7.83×10(スチレン換算)〕を用いた以外は、実施例3と同様にして素子を作製した。
【0184】
【化22】

【0185】
(比較例7)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテルの代わりに、ビニル骨格を有する電荷輸送性高分子〔前記化合物(XIII)、Mw=5.46×10(スチレン換算)〕を用いた以外は、実施例4と同様にして素子を作製した。
【0186】
(比較例8)
正孔輸送性材料として電荷輸送性ポリエーテルの代わりに、ポリカーボネート骨格を有する電荷輸送性高分子〔前記化合物(XIV)、Mw=7.83×10(スチレン換算)〕を用いた以外は、実施例4と同様にして素子を作製した。
【0187】
―評価方法―
以上のように作製した有機電界発光素子を、真空中(133.3×10−3Pa(10−5Torr))でITO電極側をプラス、Mg−Ag背面電極をマイナスとして直流電圧を印加し、発光について測定を行い、このときの立ち上がり電圧、最高輝度、及び最高輝度時の駆動電流密度を評価した。それらの結果を表1に示す。また、乾燥窒素中で有機電界発光素子の発光寿命(素子寿命)の測定を行った。発光寿命の評価は、初期輝度が50cd/mとなるように電流値を設定し、定電流駆動により輝度が初期値から半減するまでの時間を素子寿命(hour)とした。この時の素子寿命も表1に示す。
【0188】
【表1】

【0189】
以上の結果から、本実施例は、比較例に比べ、電荷の注入性や電荷バランスが改善され、安定的で高輝度、高効率、長寿命な特性を示すことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】本発明における表示装置の一例の模式的断面図である。
【図2】本発明における表示装置の一例の模式的断面図である。
【図3】本発明における表示装置の一例の模式的断面図である。
【図4】本発明における表示装置の一例の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0191】
1…透明絶縁体基板
2…透明電極
3…バッファ層
4…正孔輸送層
5…発光層
6…電子輸送層
7…キャリア輸送能を持つ発光層
8…背面電極
9…電圧印加装置
10…有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極間に挟まれたバッファ層及び有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、少なくとも発光層を含む1以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルの少なくとも1種であり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層が、前記バッファ層と接して設けられ、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料が無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴とする有機電界発光素子。
【化1】

(一般式(I)中、Aは下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’(ここで、R’は水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す)を表し、pは5以上5000以下の整数を表す。)
【化2】

(一般式(II−1)及び(II−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、lは0または1を表し、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2以上10以下の分枝状炭化水素を表す。)
【請求項2】
前記バッファ層が、酸化モリブデン及び酸化バナジウムのいずれか、または両方を含有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
上記一般式(II−1)及び(II−2)における前記Arが、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、及び、フルオレンから選ばれる1価の芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
上記一般式(II−1)及び(II−2)における前記Tが、−CH−、−(CH−、−(CH−、又は、−(CH−であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記バッファ層の膜厚が、1nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物層が、少なくとも前記発光層及び電子輸送層から構成され、少なくとも前記発光層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを少なくとも1種含有し、前記陽極と前記発光層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記有機化合物層が、少なくとも正孔輸送層、前記発光層、及び、電子輸送層から構成され、少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記有機化合物層が、少なくとも正孔輸送層及び前記発光層から構成され、少なくとも前記正孔輸送層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記正孔輸送層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項10に記載の有機電界発光素子。
【請求項12】
前記有機化合物層が、前記発光層のみから構成され、前記発光層が電荷輸送能を有する発光層であり、前記電荷輸送能を有する発光層が、前記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記陽極と前記電荷輸送能を有する発光層との間に、前記バッファ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項13】
前記電荷輸送能を有する発光層が、前記電荷輸送性ポリエーテル以外の電荷輸送性材料を含むことを特徴とする請求項12に記載の有機電界発光素子。
【請求項14】
マトリックス状に配置された有機電界発光素子と、前記有機電界発光素子を駆動させるための駆動手段と、を有し、
前記有機電界発光素子が、少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極と、前記陽極及び陰極間に挟まれたバッファ層及び有機化合物層と、を有し、
前記有機化合物層が、少なくとも発光層を含む1以上の層からなり、
前記有機化合物層の少なくとも一層が、少なくとも1種の電荷輸送性ポリエーテルを含有し、前記電荷輸送性ポリエーテルが下記一般式(I)で示される電荷輸送性ポリエーテルの少なくとも1種であり、
前記電荷輸送性ポリエーテルを含有する層の少なくとも一層が、前記バッファ層と接して設けられ、
前記バッファ層が、前記陽極と接して設けられ、且つ1種以上の電荷注入材料を含有し、前記電荷注入材料が無機酸化物、無機窒化物、及び無機酸窒化物から選択された少なくとも1種の無機材料であることを特徴とする表示装置。
【化3】

(一般式(I)中、Aは下記一般式(II−1)及び(II−2)で示される構造から選択される少なくとも1種を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基、アシル基、又は、基−CONH−R’(ここで、R’は水素原子、アルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアラルキル基を表す)を表し、pは5以上5000以下の整数を表す。)
【化4】

(一般式(II−1)及び(II−2)中、Arは置換もしくは未置換の1価の芳香族基を表し、Xは置換もしくは未置換の2価の芳香族基を表し、k、lは0または1を表し、Tは炭素数1以上6以下の2価の直鎖状炭化水素又は炭素数2以上10以下の分枝状炭化水素を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−258272(P2008−258272A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96670(P2007−96670)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】