説明

有機電界発光素子用塗布液

【課題】十分な耐久性及び効率に優れた有機電界発光素子を作製し得る有機電界発光素子用塗布液を提供すること。
【解決手段】一対の電極間における発光層を含む有機層を形成する有機電界発光素子用塗布液であって、第一の溶媒と第二の溶媒とを含み、前記第一の溶媒が発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、前記第二の溶媒が水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、第一の溶媒の沸点(BP1)と第二の溶媒の沸点(BP2)の関係がBP1≧BP2であることを特徴とする有機電界発光素子用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用塗布液に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用したデバイスとして、有機電界発光素子(以下、OLEDともいう)、有機半導体を利用したトランジスタなどの研究が活発に行われている。特に、有機電界発光素子は、固体発光型の大面積フルカラー表示素子や安価な大面積な面光源としての照明用途としての発展が期待されている。一般に有機電界発光素子は発光層を含む有機層及び該有機層を挟んだ一対の対向電極から構成される。このような有機電界発光素子に電圧を印加すると、有機層に陰極から電子が注入され陽極から正孔が注入される。この電子と正孔が発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出することにより発光が得られる。
【0003】
有機電界発光素子の製造において、一対の電極間に設けられる有機層である薄膜を形成する方法としては、蒸着法として真空蒸着、湿式法としてスピンコーティング法、印刷法、インクジェット法等が行われている。
【0004】
中でも湿式法を用いると、蒸着等のドライプロセスでは成膜が困難な高分子の有機化合物も使用可能となり、フレキシブルなディスプレイ等に用いる場合は耐屈曲性や膜強度等の耐久性の点で適しており、特に大面積化した場合に好ましい。
【0005】
しかし湿式法では、溶液の表面張力により有機薄膜の膜厚均一性が不充分になることや、有機層を積層する場合に各有機層が界面で溶解してしまうという問題がある。
上記の問題を解決するため、種々の検討がなされており、特許文献1には、有機薄膜の膜厚均一性を解決するために、第一の塗布工程と第二の塗布工程でそれぞれ所定の厚さまで塗布液を塗布する方法が記載されている。
【0006】
また、湿式法により得られた有機電界発光素子には発光効率や素子耐久性に劣るという問題があった。発光効率や素子耐久性の劣化を招く原因としては、水分と酸素が考えられている。水分により有機EL層の凝集や結晶化が進行して素子が劣化すると考えられている。また、酸素により有機EL層の酸化もいわゆる黒点(ダークスポット)の発生、成長、経時輝度劣化の要因と考えられている。
そして、特許文献2には、湿式法で積層された有機EL素子内部の初期の水分と酸素を除去することを目的として、水分含有率が少なく、低酸素濃度の不活性ガス中で調製した塗布液を用いて有機薄膜層を得る有機EL素子の製造方法が記載されている。
特許文献3には、有機化合物層の少なくとも1層が分散液を用いる塗布法で塗布し、平滑化処理を行って形成されることにより、外部取り出し効率が高く、長寿命で、かつ低駆動電圧の有機EL素子が開示されており、実施例には正孔輸送材料及び発光材料をアルコールに分散させた分散液をスピンコート法を用いて製膜することが記載されている。また、ホスト材料及び発光材料をハロゲン系溶媒に溶解させた溶液をスピンコート法で製膜したが、その外部取り出し量子効率、発光寿命、駆動電圧はいずれも満足できる結果ではない旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−239628号公報
【特許文献2】特開2004−55225号公報
【特許文献3】国際公開第06/117914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の方法によっては素子の耐久性及び効率の点でいまだ不十分であった。
特許文献3の方法は分散液を用いるため、分散される各材料の分散性の違いなどから膜の状態が不均一になるためか、十分な耐久性及び効率が得られないという問題があった。
本発明は、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、特定の溶媒を用いて発光材料及びホスト材料を溶解した塗布液により、十分な耐久性及び効率に優れた有機電界発光素子を作製し得る有機電界発光素子用塗布液を提供することを目的とする。
また、本発明は、十分な耐久性及び効率に優れた有機電界発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、十分な耐久性及び効率に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記状況を鑑み、本発明者は、鋭意研究を行なったところ、発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種である第一の溶媒と、水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種である第二の溶媒との混合溶媒を含む有機電界発光素子用塗布液により上記課題を解決し得るという知見を得、この知見に基づいて更に検討して本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
〔1〕
一対の電極間における発光層を含む有機層を形成する有機電界発光素子用塗布液であって、
第一の溶媒と第二の溶媒とを含み、
前記第一の溶媒が発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、
前記第二の溶媒が水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、
第一の溶媒の沸点(BP1)と第二の溶媒の沸点(BP2)の関係がBP1≧BP2であることを特徴とする有機電界発光素子用塗布液。
〔2〕
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との使用量が質量比で50:50〜95:5であることを特徴とする〔1〕に記載の有機電界発光素子用塗布液。
〔3〕
更に、前記第一の溶媒がアミド系溶媒であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の有機電界発光素子用塗布液。
〔4〕
更に、第三の溶媒として多価アルコールを含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用塗布液。
〔5〕
前記多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンより選択される少なくとも一つであることを特徴とする〔4〕に記載の有機電界発光素子用塗布液。
〔6〕
前記第三の溶媒の含有量が塗布液全量に対して5質量%〜40質量%であることを特徴とする〔4〕又は〔5〕に記載の有機電界発光素子用塗布液。
〔7〕
第一の電極を基板上に形成する工程と、
該第一に電極を形成した基板上に、〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用塗布液を塗布して有機層を形成する工程と、
該有機層上に第二の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
〔8〕
一対の電極間に有機層を含有する有機電界発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層が〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の有機電界発光素子用塗布液により形成されたことを特徴とする有機電界発光素子。
〔9〕
一対の電極間に有機層を含有する有機電界発光素子であって、〔7〕に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記従来の問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明によれば、十分な耐久性を有し、効率に優れた有機電界発光素子を作製し得る有機電界発光素子用塗布液を提供することができる。
また、本発明は、十分な耐久性を有し、効率に優れた有機電界発光素子の製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、十分な耐久性を有し、効率に優れた有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】は本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0014】
<有機電界発光素子用塗布液>
本発明の有機電界発光素子用塗布液(以下、適宜「有機EL素子用塗布液」と称する。)は、一対の電極間における有機層を形成する有機電界発光素子用塗布液であって、第一の溶媒と第二の溶媒とを含み、前記第一の溶媒が発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、前記第二の溶媒が水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、第一の溶媒の沸点(BP1)と第二の溶媒の沸点(BP2)の関係がBP1≧BP2である。
以下、本発明の有機EL素子用塗布液を構成する各成分について説明する。
【0015】
〔溶媒〕
(第一の溶媒)
本発明の有機EL素子用塗布液中には、第一の溶媒として発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種を含有する。第一の溶媒の沸点は200〜300℃であることが好ましく、200〜250℃であることがより好ましい。
これにより、発光層塗布膜の平滑性の向上と、隣接層との密着性の向上が得られ、有機EL素子の発光効率、及び素子耐久性の向上が可能になる。
かかる第一の溶媒としては、例えばアミド系溶媒、アミド系を除く非プロトン性極性溶媒、高沸点疎水性溶媒が挙げられる。
アミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃)、2−ピロリドン(沸点245℃)、1−アセチル−2−ピロリドン(沸点231℃)、N−エチル−2−ピロリドン(沸点218℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(沸点220℃)、ホルムアミド(沸点210.5℃)、N,N−ジブチルホルムアミド(沸点243℃)、m−キシリレンジアミン(沸点245℃)など、若しくはこれらの誘導体を挙げることができる。
アミド系を除く非プロトン性極性溶媒としては、炭酸プロピレン(沸点243℃)、γ―ブチロラクトン(沸点204℃)、γ―バレロラクトン(沸点207℃)、α−アセチル−γ−ブチロラクトン(沸点235℃)など、もしくこれらの誘導体を挙げることができる。
高沸点疎水性溶媒としては、シクロヘキシルベンゼン(沸点240℃)、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン(沸点203℃)、3−メチルビフェニル(沸点272℃)、4−メチルビフェニル(沸点262℃)、1−メチルナフタレン(沸点244.8℃)など、若しくはこれらの誘導体を挙げることができる。
発光材料の溶解性の観点から、アミド系溶媒が好ましく、中でもN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンがより好ましい。
第一の溶媒を2種以上混合したものであってもよい。
【0016】
(第二の溶媒)
本発明の有機EL素子用塗布液中には、第二の溶媒として水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種を含有する。水との共沸温度は98〜50℃であることが好ましく、80〜50℃であることが好ましい。
これにより、製膜した有機層中の水分を除去でき、有機電界発光素子の長寿命化を可能にすることができる。
かかる第二の溶媒としてはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−n−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、ヘキサン、トルエン、クメン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピルなどを挙げることができる。
第二の溶媒を2種以上混合したものであってもよい。
【0017】
第一の溶媒と第二の溶媒の好ましい組み合わせとしては、第一の溶媒としてアミド系溶媒から選択される溶媒と、第二の溶媒として、アルコール系溶媒から選択される溶媒とを用いることが好ましい。また、第一の溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンから選択される溶媒と、第二の溶媒として、2−n−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートから選択される溶媒とを用いることがより好ましい。
【0018】
第一の溶媒と第二の溶媒の使用量は、質量比で50:50〜95:5が好ましく、60:40〜90:10がより好ましい。この範囲であれば、発光材料、ホスト材料の溶解性を維持することができ、析出、相分離することなく、ホスト材料中に発光材料が均一に分散された有機膜を製膜できるためである。
【0019】
(第三の溶媒)
更に、塗布液中には、更に第三の溶媒として多価アルコールを含有することが好ましい。これにより、塗布液中の溶存酸素濃度を低減することができる。かかる第三の溶媒としては、例えばグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられ、これらを2種以上混合したものであってもよい。多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンより選択される少なくとも一つであることが好ましく、より好ましくはエチレングリコール、又はジエチレングリコールである。
第三の溶媒の添加量としては、塗布液全体量に対し5質量%〜40質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、5〜10質量%が更に好ましい。
なお、第一の溶媒、第二の溶媒、及び第三の溶媒は、精製処理したものが好ましい。具体的には、(1)シリカゲル、アルミナ、カチオン性イオン交換樹脂、アニオン性イオン交換樹脂等のカラム精製処理、(2)無水硫酸ナトリウム、無水硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、モレキュラーシーブス、ゼオライト等の脱水処理、(3)蒸留処理、(4)不活性ガス(窒素、アルゴン)等によるバブリング処理、(5)濾過、遠心沈降等による不純物の除去処理等、任意の方法を用いることができる。より好ましくは、カラム精製処理と脱水処理による精製方法である。
【0020】
本発明の有機EL素子用塗布液を適用して形成しうる有機層としては、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電荷輸送層、電荷注入層等が挙げられる。いずれか一層に有機EL素子用塗布液を適用してもよいし、複数層に適用してもよい。好ましくは、発光層、正孔輸送層、又は発光層及び正孔輸送層の両層に適用され、より好ましくは、発光層に適用される。
有機EL素子用塗布液の成分としては、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電荷輸送層、電荷注入層等に含有される材料が挙げられる。
【0021】
〔他の成分〕
有機EL素子用塗布液は、更に、その他の添加剤、被膜安定化材料を添加してもよく、例えば、安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、pH調整剤、防腐剤、樹脂エマルジョン、レベリング剤等を用いることができる。
【0022】
本発明の有機EL素子用塗布液の粘度は、1mPa・s〜50mPa・sであることが好ましく、2mPa・s〜10mPa・sであることがより好ましい。
【0023】
また、本発明の有機EL素子用塗布液は、表面張力が20mN/m〜70mN/mであって、25mN/m〜40mN/mが好ましい。この範囲の表面張力にすることにより、はじきやムラがない平滑な塗布膜を形成することができる。
【0024】
また、本発明の有機EL素子用塗布液は、上述した粘度及び表面張力の少なくとも1つについて、前記数値範囲を満足することが好ましいが、2以上の任意の組合せの特性について条件を満足するもの、更にはすべての特性について満足するものであってもよい。これによって、塗布に適した組成物とすることができる。
【0025】
〔有機電界発光素子の製造方法〕
次に、本発明の有機電界発光素子の製造方法に説明する。
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、第一の電極を基板上に形成する工程と、
該第一の電極を形成した基板上に、本発明の有機電界発光素子用塗布液を塗布して有機層を形成する工程と、
該有機層上に第二の電極を形成する工程と、を有する。
【0026】
本発明の有機EL素子の製造方法では、第一の溶媒と第二の溶媒とを含む本発明の有機EL素子用塗布液を用いることにより、十分な耐久性及び発光効率に優れた有機電界発光素子を製造することができる。これは、形成した有機層の乾燥中の材料の析出による膜質の低下を防止でき、かつ、水分除去が十分に行うことができるためと考えられる。
【0027】
有機層が複数存在する場合は、少なくとも一層の有機層を形成する工程が本発明の有機電界発光素子用塗布液を塗布して形成する工程であればよく、他の有機層を形成する工程は乾式製膜法又は湿式製膜法により製膜してよい。湿式製膜法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式製膜法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式製膜法としては印刷法、塗布法を用いることができる。
【0028】
第一の電極は後述の背面電極であってよく、第一の電極の形成工程については背面電極の形成方法についての記載を適用することができる。
第二の電極は後述の透明電極であってよく、第二の電極の形成工程については透明電極の形成方法についての記載を適用することができる。
【0029】
第一の電極を形成した基板上に、本発明の有機電界発光素子用塗布液を塗布して有機層を形成する工程における塗布法としては、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの製膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。中でも好ましくは、塗布液の利用効率の高い(ロスの少ない)方法であるため、ディップコート法、スプレーコート法、インクジェット方法である。
また、製膜した後に乾燥することが好ましい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。また、乾燥時には、(1)有機膜への酸素の付加に伴う、有機電界発光素子の発光効率の低下を防止するため、(2)有機膜の吸湿に伴い、有機電界発光素子の耐久性が低下するのを防止するため、露点温度が低い、不活性ガス(窒素、アルゴン等)の雰囲気で行うことが好ましい。
【0030】
〔有機電界発光素子〕
以下、本発明に用いられる有機電界発光素子について説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に有機層を含有する有機電界発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層が本発明の有機電界発光素子用塗布液により形成された有機電界発光素子である。
有機層は発光層を含み、発光層は燐光発光性化合物を含有することが好ましい。必要に応じて発光層以外の有機層や保護層、封止層等を有していてもよい。
有機電界発光素子は本発明の製造方法により作製されることが好ましい。
【0031】
素子中における酸素濃度は低いほど好ましく、100ppm以下であればよく、好ましくは50ppm以下である。酸素濃度が100ppm以下の雰囲気を得るための方法は特に限定されない。例えば、酸素濃度100ppm以下の不活性ガス雰囲気下で封止工程を行えばよい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等がコスト及び取り扱い易さの観点から好ましい。
【0032】
図1は各々、本発明の発光素子の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示す発光素子は、基材1の上に透明電極2、有機層3及び背面電極4を積層してなる発光積層体7、並びに有機層3を封止する封止部材9を有する。これらの実施形態においては、封止部材9を封止剤(接着剤)8によって基材1、透明電極リード5、背面電極リード6等に接着し、発光積層体7に設置される。空間10には、水分吸収剤又は不活性液体を挿入してよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能である。
【0033】
本発明の発光素子において、発光積層体の構成は、基材上に透明電極/発光層/背面電極、透明電極/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/背面電極、透明電極/正孔輸送層/発光層/背面電極、透明電極/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極、透明電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/背面電極等をこの順に積層した構成、これらを逆に積層した構成等であってよい。発光層は燐光発光性化合物を含有し、通常、透明電極から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0034】
有機層の形成位置は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができるが、透明電極又は背面電極上に形成するのが好ましい。このとき有機層は透明電極又は背面電極の全面又は一部に形成してよい。有機層の形状、大きさ及び厚みも目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
有機層のいずれか一層は本発明の塗布液を用いた湿式製膜法により製膜するが、他の層については乾式製膜法又は湿式製膜法を適宜選択して製膜してよい。湿式製膜法を用いると有機層を容易に大面積化することができ、高輝度で発光効率に優れた発光素子が低コストで効率よく得られ、好ましい。乾式製膜法としては蒸着法、スパッタ法等が使用でき、湿式製膜法としてはディッピング法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が使用可能である。これらの製膜法は有機層の材料に応じて適宜選択できる。湿式製膜法により製膜した場合は製膜した後に乾燥してよい。乾燥は塗布層が損傷しないように温度、圧力等の条件を選択して行う。
【0036】
本発明の発光素子は通常、その透明電極と背面電極との間に2〜40ボルト程度の直流電圧(交流成分を含んでもよい)又は直流電流を印加すると発光する。また、本発明の発光素子を駆動する際には、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号、米国特許5828429号、同6023308号、日本特許第2784615号等に記載の駆動方法を利用することができる。以下、本発明で用いる発光積層体をなす各層について詳述するが、本発明はそれらにより限定されない。
【0037】
(A)基材
本発明で使用する基材は、水分を透過させない材料又は水分透過率が極めて低い材料からなるのが好ましい。該材料は、好ましくは有機層から発せられる光を散乱又は減衰させない。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料等が挙げられる。中でも、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性及び加工性に優れ、かつ低通気性及び低吸湿性である有機材料が特に好ましく使用できる。基材は単一材料で形成しても、2種以上の材料で形成してもよい。基材の材料は透明電極材料に応じて適宜選択してよく、例えば透明電極が酸化インジウムスズ(ITO)である場合には、ITOとの格子定数の差が小さい材料を用いるのが好ましい。
【0038】
基材の形状、構造、大きさ等は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。形状は板状とするのが一般的である。構造は単層構造であっても積層構造であってもよい。基材は無色透明であっても有色透明であってもよいが、発光層から発せられる光を散乱又は減衰させることがない点で無色透明であるのが好ましい。
【0039】
基材の電極側の面、電極と反対側の面又はその両方に透湿防止層(ガスバリア層)を設けてもよい。透湿防止層を構成する材料としては窒化ケイ素、酸化ケイ素等の無機物を用いるのが好ましい。透湿防止層は高周波スパッタリング法等により成膜できる。また、基材には必要に応じてハードコート層やアンダーコート層を設けてもよい。
【0040】
(B)透明電極
通常、透明電極は有機層に正孔を供給する陽極としての機能を有するが、陰極として機能させることもでき、この場合背面電極を陽極として機能させる。以下、透明電極を陽極とする場合について説明する。
【0041】
透明電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。透明電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料を用いる。具体例としては、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、半導性金属酸化物(酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等)、金属(金、銀、クロム、ニッケル等)、これら金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、無機導電性物質(ヨウ化銅、硫化銅等)、有機導電性材料(ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等)及びこれとITOとの積層物等が挙げられる。
【0042】
透明電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化学的方法等によって基材上に形成することができる。形成方法は透明電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、透明電極の材料としてITOを用いる場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等を用いればよい。また透明電極の材料として有機導電性材料を用いる場合には、湿式製膜法を用いてよい。
【0043】
透明電極のパターニングはフォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。また、マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0044】
透明電極の形成位置は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、基材上に形成するのが好ましい。このとき透明電極は基材の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。
【0045】
透明電極の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10nm〜50μmであり、好ましくは50nm〜20μmである。透明電極の抵抗値は10Ω/□以下とするのが好ましく、10Ω/□以下とするのがより好ましい。透明電極は無色透明であっても有色透明であってもよい。透明電極側から発光を取り出すためには、その透過率は60%以上とするのが好ましく、70%以上とするのがより好ましい。透過率は分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0046】
また、「透明導電膜の新展開」(沢田豊監修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されている電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、透明電極材料としてITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい。
【0047】
(C)背面電極
通常、背面電極は有機層に電子を注入する陰極としての機能を有するが、陽極として機能させることもでき、この場合上記透明電極を陰極として機能させる。以下、背面電極を陰極とする場合について説明する。
【0048】
背面電極の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択することができる。背面電極を形成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等を用いることができ、好ましくは仕事関数が4.5eV以下の材料を用いる。具体例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、希土類金属(イッテルビウム等)等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させるためには2種以上を併用するのが好ましい。これら材料の中で、電子注入性の観点からはアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性の観点からはアルミニウムを主体とする材料が好ましい。ここでアルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金又は混合物(リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)を指す。背面電極の材料としては、特開平2−15595号、特開平5−121172号等に詳述されているものも使用できる。
【0049】
背面電極は印刷法、コーティング法等の湿式方法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方法、CVD、プラズマCVD法等の化学的方法等によって形成することができる。形成方法は背面電極材料との適性を考慮して適宜選択すればよい。例えば、背面電極の材料として2種以上の金属等を用いる場合には、その材料を同時又は順次にスパッタして形成できる。
【0050】
背面電極のパターニングはフォトリソグラフィー等による化学的エッチング、レーザー等を用いた物理的エッチング等により行うことができる。また、マスクを用いた真空蒸着やスパッタリング、リフトオフ法、印刷法等によりパターニングしてもよい。
【0051】
背面電極の形成位置は発光素子の用途及び目的に応じて適宜選択してよいが、有機層上に形成するのが好ましい。このとき背面電極は有機層の表面全体に形成しても一部のみに形成してもよい。また、背面電極と有機層との間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物等からなる誘電体層を0.1〜5nmの厚みで設置してもよい。誘電体層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0052】
背面電極の厚みはその材料に応じて適宜選択すればよいが、通常10nm〜5μmであり、好ましくは50nm〜1μmである。背面電極は透明であっても不透明であってもよい。透明背面電極は、上述した材料の層を1〜10nmの厚みに薄く製膜し、更にITOやIZO等の透明導電性材料を積層して形成してよい。
【0053】
(D)発光層
本発明の発光素子において、発光層は燐光発光性化合物を含有することが好ましい。本発明で用いる燐光発光性化合物は、三重項励起子から発光することができる化合物であれば特に限定されることはない。燐光発光性化合物としては、オルトメタル化錯体又はポルフィリン錯体を用いるのが好ましく、オルトメタル化錯体を用いるのがより好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」, 150頁及び232頁, 裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」, 71〜77頁及び135〜146頁, Springer−Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体又は2−フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。また、これらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。中でもイリジウムが特に好ましい。このようなオルトメタル化錯体を含む有機層は、発光輝度及び発光効率に優れている。
【0055】
本発明の発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特開2002−225352、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−111379、特開2004−357791、特開2004−214179、特開2005−120209、特開2005−310733、特開2006−256999、特開2007−73891、特開2007−81388、特開2008−270737、特開2008−19443に記載のものが挙げられる。
本発明の発光材料は、重合性基を有していてもよい。重合性基としては、アクリレート、メタクリレート、ビニル、ビニルエーテル、エポキシ、オキセタン、アルコキシシラン、イソシアネート、ヒドロキシ基などを挙げることができる。
具体的には、下記の化合物が挙げられる。
【0056】
【化1】


【0057】
【化2】

【0058】
【化3】

【0059】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg.Chem.,30,1685,1991、Inorg.Chem.,27,3464,1988、Inorg.Chem.,33,545, 1994、Inorg.Chim.Acta,181,245,1991、J.Organomet.Chem.,335,293,1987、J.Am.Chem.Soc.,107,1431,1985 等に記載の公知の手法で合成することができる。
【0060】
発光層中の燐光発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であり、1〜20質量%であるのが好ましい。燐光発光性化合物の含有量が0.1質量%以上70質量%以下であれば、その効果が十分に発揮できる。
【0061】
本発明において、発光層は必要に応じてホスト化合物、正孔輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。
【0062】
上記ホスト化合物とは、その励起状態から燐光発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果、該燐光発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。具体的には、たとえば、特開平9−12548、特開2000−286056、特開2003−178884、特開2003−192652、特開2004−217557、特開2008−252094、特開2009−114370に記載のものが挙げられる。ホスト化合物は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明に用いられるホスト化合物としては、カルバゾール誘導体、アリールアミン誘導体が好ましい。
【0063】
正孔輸送材料は陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子(たとえば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレンジオキシチオフェン/ナフィオン)、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリトリアリールアミン誘導体、等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。正孔輸送材料としては、アリールアミン誘導体、ポリチオフェン等の導電性高分子が好ましい。具体的には、たとえば、特開平11−292829、特開2000−150169、特開2002−25780、特開2003−82035、特開2004−303636、特開2004−18787、特開2004−199935、特開2008−186872、特開2008−311367に記載のものが挙げられる。
ホスト化合物、正孔輸送材料としては、例えば、以下の一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化4】

【0065】
(R〜R10は水素原子又は置換基を表す。)
【0066】
〜R10が表す置換基として好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヘテロ環基、シリル基であり、より好ましくは置換又は無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、フッ素原子、ヘテロ環であり、更に好ましくは、メチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、メトキシ基、アリール基、シアノ基である。
〜R10として特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、トリフルオロメチル基、フッ素原子、メトキシ基、フェニル基、2−トリル基であり、最も好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、フッ素原子である。
【0067】
一般式(1)で表される化合物及び他のホスト化合物、正孔輸送材料としてより具体的には以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の化合物におけるnは繰り返し単位の数を表す。
【0068】
【化5】

【0069】
【化6】

【0070】
【化7】

【0071】
【化8】

【0072】
正孔注入層は正孔の移動のキャリアとなるドーパントを含有するのが好ましい。正孔注入層に導入するドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用でき、具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、及び五塩化アンチモンなどのルイス酸化合物を好適に用いることができる。
【0073】
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フレーレンなどを好適に用いることができる。
具体的にはヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−1ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C60、及びC70などが挙げられる。
好ましくは、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンである。
【0074】
電子輸送材料は陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ピリミジン誘導体、ピリジン誘導体、カルバゾール誘導体等が使用可能である。電子輸送材料としては、例えば、特開平11−140060、特開平11−95265、特開平9−316441、特開2002−10167、特開2003−297391、特開2007−258692、特開2007−266598、WO2007/080801に記載のものが挙げられる。
【0075】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。ポリマーバインダーを含有する発光層は、湿式製膜法によって、容易にかつ大面積に塗布形成することができる。
【0076】
発光層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nm以下であれば駆動電圧が上昇するのを抑制でき、10nm以上であると発光素子が短絡するのを防止できる。
【0077】
(E)電子輸送層
本発明の発光素子は、必要に応じて上述した電子輸送材料からなる電子輸送層を有してよい。電子輸送層は上述のポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nm以下であれば駆動電圧が上昇するのを抑制でき、10nm以上であると発光素子が短絡するのを防止できる。
【0078】
(F)正孔注入層、正孔輸送層
本発明の発光素子は、必要に応じて上述した正孔注入材料又は正孔輸送材料を含む正孔注入層又は正孔輸送層を有してよい。正孔注入層及び正孔輸送層は上述のポリマーバインダーを含有してもよい。正孔注入層又は正孔輸送層の厚みは10〜200nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚みが200nm以下であれば駆動電圧が上昇するのを抑制でき、10nm以下であると発光素子が短絡するのを防止できる。
【0079】
(G)その他
本発明の発光素子は、特開平7−85974号、同7−192866号、同8−22891号、同10−275682号、同10−106746号等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は発光素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、基材、透明電極、有機層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、基材、背面電極、有機層及び透明電極をこの順に積層する場合には透明電極の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚み等は特に限定されない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の発光素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0080】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0081】
〔封止〕
また、発光素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Tl、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等)、金属フッ化物(MgF、LiF、AlF、CaF等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、該液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0082】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0083】
本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0084】
〔用途〕
本発明により作製した有機電界発光素子は、高い効率と素子寿命を与えることができるため、フルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源、プリンター等の光源アレイ等に好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0086】
〔実施例1〕
(塗布液Aの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.15質量%、下記化合物(1)2.85質量%、溶媒(NMP(沸点202℃)と2−n―ブトキシエタノール(沸点172℃、共沸溶剤、水との共沸温℃79.2℃)を質量比率60/40で混合した溶媒)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液A)を得た。
【0087】
〔実施例1−1〕
(有機EL素子1−1の作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、正孔注入層(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をスピンコートした後、150℃で1時間真空乾燥し、正孔注入層とした(膜厚約40nm)。
この上に塗布液Aをグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、発光層とした(膜厚約40nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0088】
〔実施例2〕
(塗布液Bの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.23質量%、下記化合物(1)2.77質量%、溶媒(NMP(沸点202℃)と、2−n―ブトキシエタノール(沸点172℃、共沸溶剤、水との共沸温度79.2℃)と、エチレングリコールとを質量比率55/35/10で混合した溶媒を97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液B)を得た。
【0089】
〔実施例2−1〕
(有機EL素子2−1の作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、正孔注入層(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をスピンコートした後、100℃で1時間真空乾燥し、正孔注入層とした(膜厚約40nm)。
この上に塗布液Bをグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、発光層とした(膜厚約40nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0090】
〔比較例1〕
(塗布液Cの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.15質量%、下記化合物(1)2.85質量%、溶媒(DMI(Bp=220℃)と2−メトキシエタノール(Bp=125℃、共沸温度99.9℃)とを質量比率60/40で混合した溶媒97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液C)を得た。
【0091】
〔比較例C1−1〕
(比較有機EL素子C1−1の作製)
実施例1−1の塗布液Aを塗布液Cに変更した以外は実施例1−1と同様にして比較有機EL素子C1−1を作製した。
【0092】
〔比較例2〕
(塗布液Dの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.15質量%、下記化合物(1)2.85質量%、溶媒(クロロホルム(沸点61.15℃、共沸溶媒、水との共沸温度56.1℃))97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液D)を得た。
【0093】
〔比較例C2−1〕
(比較有機EL素子C2−1の作製)
実施例1−1の塗布液Aを塗布液Dに変更した以外は実施例1−1と同様にして比較有機EL素子C2−1を作製した。
【0094】
以下に実施例1−1、2−1、比較例C1−1、C2−1の素子に使用した化合物等を示す。
【0095】
【表1】

【0096】
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
DMI: 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
【0097】
【化9】

【0098】
(性能評価)
(1)耐久性
初期の発光輝度500cd/mで、室温において、OLED素子に定電流を印加して連続的に駆動を行い、発光輝度が1/2に低下するまでの時間を測定し、比較例C1−1を基準として、比較対象を行い表2に示した。評価基準は以下の通りである。
◎:比較例C1−1の発光輝度が1/2に低下するまでの時間に比べ、5倍以上長い
○:比較例C1−1の発光輝度が1/2に低下するまでの時間に比べ、3倍〜5倍未満の範囲内
△:比較例C1−1の発光輝度が1/2に低下するまでの時間の0.3倍〜3倍未満の範囲内
×:比較例C1−1の発光輝度が1/2に低下するまでの時間に比べ、0.3倍より短い
(2)効率
駆動電流密度2.5mA/cmにおける発光輝度を測定した。測定方法としては、有機EL素子の正面における分光放射輝度を分光放射輝度計(コニカミノルタ(株)製CS−1000)を用いて測定し、外部量子効率を算出した。比較例C1−1を基準として、比較対象を行い表2に示した。評価基準は以下の通りである。
◎:比較例C1−1の外部量子効率に比べ、5倍以上
○:比較例C1−1の外部量子効率に比べ、2倍から5倍未満の範囲内
△:比較例C1−1の外部量子効率の0.5倍から2倍未満の範囲内
×:比較例C1−1の外部量子効率に比べ、0.5倍未満
【0099】
(評価結果)
得られた結果を表2に示した。
【0100】
【表2】

【0101】
評価の結果、本発明の有機EL素子は、高い耐久性、優れた効率を有することがわかった。
【0102】
〔比較例3〕
(塗布液E−1の調整)
イリジウム錯体(G−1)0.15質量%、ホスト化合物H−1 2.85質量%、溶媒(クロロホルム)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液E−1)を得た。
【0103】
(比較有機EL素子E−1の作製)
実施例1−1の塗布液Aを塗布液E−1に変更した以外は実施例1−1と同様にして比較有機EL素子E−1を作製した。
【0104】
(塗布液E−2〜E−4の調整)
イリジウム錯体(G−1)0.15質量%、ホスト化合物(H−13) 2.85質量%、溶媒として、各々クロロホルム、ジクロロベンゼン(沸点180.48℃、共沸溶媒、水との共沸温度90℃)、THF(テトラヒドロフラン)(沸点66℃、共沸溶媒、水との共沸温度64℃)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液E−2〜E−4)を得た。
【0105】
(比較有機EL素子E−2〜E−4の作製)
実施例1−1の塗布液Aを塗布液E−2〜E−4に変更した以外は実施例1−1と同様にして比較有機EL素子E−2〜E−4を作製した。
(性能評価)
比較例E−1を基準にして、比較例E−2〜E−4に関して、実施例1と同様の評価を行った。
【0106】
〔実施例3〕
(塗布液Eの調整)
下記の発光材料0.15質量%、ホスト化合物2.85質量%、溶媒(NMP(沸点202℃)と、2−n―ブトキシエタノール(沸点172℃、共沸溶剤、水との共沸温度79.2℃)とを質量比率60/40で混合した溶媒)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液E)を得た。
【0107】
【表3】

【0108】
〔実施例3−1〜3−8〕
(有機EL素子3−1の作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、正孔注入層(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をスピンコートした後、150℃で1時間真空乾燥し、正孔注入層とした(膜厚約40nm)。
この上に塗布液Eをグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、発光層とした(膜厚約40nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
(有機EL素子3−2〜3−8の作製)
有機EL素子3−1の作製に用いた塗布液Eにおける発光材料及びホスト材料を表3の3−1から3−2〜3−8に代えた以外は有機EL素子3−1の作製と同様にして、有機EL素子3−2〜3−8を作製した。
【0109】
(性能評価)
比較例E−1を基準にして、実施例1と同様の評価を行った。
【0110】
(評価結果)
得られた結果を表4に示した。
【0111】
【表4】

【0112】
〔実施例4〕
(塗布液Fの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.23質量%、上記化合物(1)2.77質量%、溶媒(DMI(沸点220℃)と、2−n―ブトキシエタノール(沸点172℃、共沸溶剤、水との共沸温度79.2℃)とを質量比率80/20で混合した溶媒)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液F)を得た。
【0113】
〔実施例4−1〕
(有機EL素子4−1の作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、正孔注入層(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をスピンコートした後、100℃で1時間真空乾燥し、正孔注入層とした(膜厚約40nm)。
この上に塗布液Fをグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、120℃で1時間真空乾燥を行い、発光層とした(膜厚約40nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0114】
〔実施例5〕
(塗布液Gの調整)
イリジウム錯体(Ir(ppy))0.23質量%、上記化合物(1)2.77質量%、溶媒(DMI(沸点220℃)と、メチルエチルケトン(沸点79.5℃、共沸溶剤、水との共沸温度73.6℃)とを質量比率50/50で混合した溶媒)97質量%を混合し、有機電界発光素子用塗布液(塗布液G)を得た。
【0115】
〔実施例5−1〕
(有機EL素子5−1の作製)
25mm×25mm×0.7mmのガラス基板上にITOを150nmの厚さで蒸着し製膜したものを透明支持基板とした。この透明支持基板をエッチング、洗浄した。
このITOガラス基板上に、正孔注入層(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をスピンコートした後、100℃で1時間真空乾燥し、正孔注入層とした(膜厚約40nm)。
この上に塗布液Gをグローブボックス(露点−68℃、酸素濃度10ppm)内でスピンコートし、120℃で1時間真空乾燥を行い、発光層とした(膜厚約40nm)。
次いで、その上に、真空蒸着法にてBAlqを膜厚40nmに蒸着し電子注入層とした。
そして、この上にフッ化リチウムを1nm蒸着し、更に金属アルミニウムを70nm蒸着し、陰極とした。
作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止した。
【0116】
(性能評価)
比較例E−1を基準にして、実施例1と同様の評価を行った。
(評価結果)
得られた結果を表5に示した。
【0117】
【表5】

【0118】
評価の結果、本発明の塗布液を用いた有機EL素子は、高い耐久性と優れた効率を有することがわかった。
【符号の説明】
【0119】
1・・・基材
2・・・透明電極
3・・・有機層
4・・・背面電極
5・・・透明電極リード
6・・・背面電極リード
7・・・発光積層体
8・・・封止剤(接着剤)
9・・・封止部材
10・・・空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間における発光層を含む有機層を形成する有機電界発光素子用塗布液であって、
第一の溶媒と第二の溶媒とを含み、
前記第一の溶媒が発光層に含まれる発光材料及びホスト材料を溶解し、沸点が200℃以上の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、
前記第二の溶媒が水との共沸温度が99℃以下の溶媒から選ばれる少なくとも一種であり、
第一の溶媒の沸点(BP1)と第二の溶媒の沸点(BP2)の関係がBP1≧BP2であることを特徴とする有機電界発光素子用塗布液。
【請求項2】
前記第一の溶媒と前記第二の溶媒との使用量が質量比で50:50〜95:5であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用塗布液。
【請求項3】
さらに、前記第一の溶媒がアミド系溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用塗布液。
【請求項4】
さらに、第三の溶媒として多価アルコールを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用塗布液。
【請求項5】
前記多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンより選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項4に記載の有機電界発光素子用塗布液。
【請求項6】
前記第三の溶媒の含有量が塗布液全量に対して5質量%〜40質量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載の有機電界発光素子用塗布液。
【請求項7】
第一の電極を基板上に形成する工程と、
該第一に電極を形成した基板上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用塗布液を塗布して有機層を形成する工程と、
該有機層上に第二の電極を形成する工程と、を有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
一対の電極間に有機層を含有する有機電界発光素子であって、前記有機層の少なくとも一層が請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電界発光素子用塗布液により形成されたことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項9】
一対の電極間に有機層を含有する有機電界発光素子であって、請求項7に記載の有機電界発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−66388(P2011−66388A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67072(P2010−67072)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】