説明

有機電界発光素子

【課題】発光特性(量子収率、駆動電圧)、耐久性、蒸着性が良好な発光素子を提供する。
【解決手段】一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有する有機電界発光素子。
【化1】


(式中、Qは炭素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。QおよびQは窒素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。Q、Q、Qを構成する原子群において、さらに置換可能な場合、水素原子または置換基を有していてもよい。L、Lは置換基を有していてもよい連結基を表す。nは0または1を表す。Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機白金錯体、およびそれを含む素子、特に有機電界発光素子(EL素子)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の有機EL素子開発においては、外部量子効率向上の研究が種々行われており、中でも、イリジウムや白金といった重金属を用いたりん光発光材料を含有する素子が高い効率を達し、着目されている。白金を使用した発光材料の開発においては、アリール基を三連結した三座配位子が報告されている。(特許文献1、2、3、非特許文献1、2)これらの白金錯体は従来報告されていたオクタエチルポルフィリン白金錯体などの4座配位白金錯体(特許文献4、5)より、発光波長の短波化が可能となっている点が挙げられる。しかしながら、残る単座配位子とした場合、特に塩素原子のようなハロゲン原子を用いた場合、それを含む発光材料では、素子の耐久性に改良が望まれていた。
【特許文献1】国際公開第04/039781号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/039914号パンフレット
【特許文献3】特開2002−363552号明細書
【特許文献4】米国特許第6,303,238(B1)号明細書
【特許文献5】米国特許第6,653,564(B1)号明細書
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of The American Chemical Society, 2004年,126巻, 4958-4971頁.
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・ジ・ケミカル・ソサイエティー・ダルトン・トランザクションズ(Journal of the Chemical Society, Dalton Transactions, 2002年, 3234-3240頁.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、発光特性(量子収率、駆動電圧)、耐久性、蒸着性が良好な有機白金錯体およびそれを含む発光素子の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は下記手段によって達成された。すなわち
(1)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Qは炭素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。QおよびQは窒素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。Q、Q、Qを構成する原子群において、さらに置換可能な場合、水素原子または置換基を有していてもよい。L、Lは置換基を有していてもよい連結基を表す。nは0または1を表す。Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。
(2)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(II)
【0007】
【化2】

【0008】
式中、Q、Q、Q、L、L、nおよびAは一般式(I)におけるQ、Q、Q、L、L、nおよびAと同じ意味を表す。
(3)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(III)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(III)
【0009】
【化3】

【0010】
式中、Q、Q、Q、L、L、nおよびAは一般式(I)におけるQ、Q、Q、L、L、nおよびAと同じ意味を表す。
(4)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(IV)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(IV)
【0011】
【化4】

【0012】
式中、Q、Q、L、Lおよびnは一般式(I)におけるQ、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。QはQと同じ意味を表す。Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。
(5)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(V)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(V)
【0013】
【化5】

【0014】
式中、Q、Q、Q、L、L、Aおよびnは一般式(IV)におけるQ、Q、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。
(6)一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(VI)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(VI)
【0015】
【化6】

【0016】
式中、Q、Q、Q、L、L、Aおよびnは一般式(IV)におけるQ、Q、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。
(7)一般式(I)が下記一般式(VII)で表されることを特徴とする(1)に記載の有機電界発光素子。
一般式(VII)
【0017】
【化7】

【0018】
式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。R、RおよびRが置換基を表し、さらに置換可能である場合、置換基を有していてもよい。p、pおよびpは各々独立に0〜3の整数を表す。p〜pがそれぞれ2以上の場合、複数存在するR、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R同士、R同士、R同士、RとR、RとR、あるいはRとRが互いに結合し環を形成してもよい。p〜pが0の場合、水素原子で置換されていることを表す。L、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表す。
(8)一般式(II)が下記一般式(VIII)で表されることを特徴とする(2)に記載の有機電界発光素子。
一般式(VIII)
【0019】
【化8】

【0020】
式中、R、R、R、p、pおよびpは一般式(VII)におけるR 、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。L、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表す。
(9)一般式(III)が下記一般式(IX)で表されることを特徴とする(3)に記載の有機電界発光素子。
一般式(IX)
【0021】
【化9】

【0022】
式中、R、R、R、p、pおよびpは一般式(VII)におけるR 、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。L、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表す。
(10)一般式(IV)が下記一般式(X)で表されることを特徴とする(4)に記載の有機電界発光素子。
一般式(X)
【0023】
【化10】

【0024】
式中、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。R、RおよびRが置換基を表し、さらに置換可能である場合、置換基を有していてもよい。p、pおよびpは各々独立に0〜3の整数を表す。p、pおよびpがそれぞれ2以上の場合、複数存在するR、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R同士、R同士、R同士、RとR、RとR、あるいはRとRが互いに結合し環を形成してもよい。p、pおよびpが0の場合、水素原子で置換されていることを表す。L、Lおよびnは一般式(I)におけるL 、Lおよびnと同じ意味を表す。Aは一般式(IV)におけるAと同じ意味を表す。
(11)一般式(V)が下記一般式(XI)で表されることを特徴とする(5)に記載の有機電界発光素子。
一般式(XI)
【0025】
【化11】

【0026】
式中、R、R、R、p、pおよびpは一般式(X)におけるR、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。L、Lおよびnは一般式(I)におけるL、Lおよびnと同じ意味を表す。Aは一般式(X )におけるAと同じ意味を表す。
(12)一般式(VI)が下記一般式(XII)で表されることを特徴とする(6)に記載の有機電界発光素子。
一般式(XII)
【0027】
【化12】

【0028】
式中、R、R、R、p、pおよびpは一般式(XIII)におけるR 、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。L、Lおよびnは一般式(I)におけるL、Lおよびnと同じ意味を表す。Aは一般式(X)におけるAと同じ意味を表す。
【発明の効果】
【0029】
本発明の白金錯体およびそれを含む発光素子は、耐久性が良好である。本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。また、本発明の化合物は、医療用途、蛍光増白剤、写真用材料、UV吸収材料、レーザー色素、記録メディア用材料、インクジェット用顔料、カラーフィルター用染料、色変換フィルター、分析用途等にも適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
一般式(I)〜一般式(XII)について説明する。
【0031】
QおよびQは各々独立に、炭素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。QおよびQは各々独立に、窒素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。その原子群は、炭素、窒素、珪素、硫黄、酸素、ゲルマニウム、リンから選択される原子より選択される。不飽和の環を形成する原子間の結合は、単結合、二重結合、三重結合のいかなる組み合わせでもよい。Q、Q、QおよびQは、好ましくは、
炭素、窒素、珪素、硫黄、酸素から形成される場合であり、より好ましくは、炭素、窒素、珪素から形成される場合であり、さらに好ましくは炭素または窒素原子により形成される場合であり、特に好ましくは、Q、Q、QおよびQはいずれも炭素からなり、QおよびQは置換ベンゼン環を形成する場合であり、QおよびQは置換ピリジン環を形成する場合である。Q、Q、QおよびQを構成する原子群において、さらに置換可能な場合、置換基を有していてもよい。
【0032】
その置換基としては例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数3〜10であり、例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、
【0033】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、
【0034】
アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、
【0035】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜3
0、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
【0036】
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0037】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、
【0038】
シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリルオキシ、トリフェニルシリルオキシなどが挙げられる。)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよく、例えば上記のアルキル基は置換アルキル基を含む。
【0039】
Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。Aの部分構造としては、炭素原子で結合する基、窒素原子で結合する基、珪素原子で結合する基、リン原子で結合する基、酸素原子で結合する基、硫黄原子で結合する基が好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子で結合する基がより好ましく、炭素原子、窒素原子、酸素原子で結合する基がさらに好ましく、炭素原子または酸素原子で結合する基が特に好ましい。
【0040】
炭素原子で結合する基としては、炭素原子で結合する置換または無置換のアリール基、炭素原子で結合する置換または無置換の五員芳香族へテロ環基、炭素原子で結合する置換または無置換の六員芳香族へテロ環基が好ましく、炭素原子で結合する置換または無置換
のアリール基、炭素原子で結合する置換または無置換の含窒素五員芳香族へテロ環基、炭素原子で結合する含窒素六員芳香族へテロ環基がより好ましく、炭素原子で結合する置換アリール基が特に好ましい。
【0041】
窒素原子で結合する基としては、置換アミノ基、窒素原子で結合する含窒素芳香族へテロ環基が好ましく、窒素原子で結合する含窒素芳香族へテロ環基がより好ましく、置換カルバゾール、置換ピロール、置換インドールなどが特に好ましい。
【0042】
リン原子で結合する基としては、置換ホスフィノ基が好ましい。珪素原子で結合する基としては、置換シリル基が好ましい。酸素原子で結合する基としてはオキシ基または置換オキシ基、硫黄原子で結合する基としてはチオール基または置換チオール基が好ましい。
【0043】
L、Lは置換基を有していてもよい連結基を表す。その連結基としては、炭素、窒素、珪素、硫黄、酸素、ゲルマニウム、リン等で構成される連結基であり、より好ましくは、置換または無置換の炭素原子、置換または無置換の窒素原子、置換珪素原子、酸素原子、硫黄原子、二価の芳香族炭化水素環基、二価の芳香族ヘテロ環基であり、さらに好ましくは単結合、置換または無置換の炭素原子、置換または無置換の窒素原子、置換珪素原子、二価の芳香族炭化水素環基、二価の芳香族ヘテロ環基であり、特に好ましくは、置換または無置換のアルキレン基である、二価の連結基としては、例えば以下のものが挙げられるが、下記に限定されるものではない。
【0044】
【化13】

【0045】
LあるいはLが置換可能である場合、置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Q、Q、QおよびQで説明した不飽和環を形成する原子群が、置換基を有する場合で説明した置換基と同じ意味を表す。
【0046】
nは0または1を表す。好ましくはnは1である。nが0の場合、QおよびQは炭素原子とともに形成される不飽和の環、あるいは、QおよびQと窒素原子とともに形成される不飽和の環と、Aとは、結合していないことを意味する。
【0047】
Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。
【0048】
Aの部分構造としては、窒素原子で配位結合する基、リン原子で配位結合する基、酸素原子で配位結合する基、硫黄原子で配位結合する基が好ましく、窒素原子、リン原子、硫黄原子で配位結合する基がより好ましく、窒素原子、リン原子で配位結合する基がさらに好ましく、窒素原子で配位結合する基が特に好ましい。
【0049】
窒素原子で配位結合する基としては、置換アミノ基、窒素原子で配位結合する含窒素へテロへテロアリール基が好ましく、窒素原子で配位結合する含窒素へテロ六員環へテロアリール基がより好ましく、特に好ましくは置換ピリジン環である。
【0050】
リン原子で配位結合する基としては、置換ホスフィノ基が好ましい。酸素原子で配位結合する基としては置換オキシ基、硫黄原子で配位結合する基としては置換スルフィド基が好ましい。
【0051】
と白金、またはAと白金との結合はいかなる結合であっても良い。AまたはAが配位性の分子の場合、白金原子との間の結合は点線で表され、配位結合を表す。AまたはAが配位性の基を表す場合、白金原子との間の結合は実線で表され、配位結合を表す。
【0052】
配位結合については、例えば、松林玄悦、黒沢英夫、芳賀正明、松下隆之著「錯体・有機金属の化学」32-35頁(丸善株式会社)、基礎錯体工学研究会編「新版 錯体化学 基礎と最新の展開」11頁(講談社サイエンティフィク)等の成書に詳しく解説されている。
【0053】
次に、一般式(I)の好ましい範囲について説明する。一般式(I)は、好ましくは、一般式(VII)で表される化合物を表す。
【0054】
一般式(VII)で表される化合物について以下に詳しく説明する。
【0055】
一般式(VII)において、R、RおよびRはそれぞれ独立に置換基を表す。その置換基の例としては、前記一般式(I)の説明において、Q〜Qにより形成される不飽和環の原子群が置換基を有する場合において、説明した置換基と同じ意味を表す。
【0056】
Rは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヘテロ環基、またはシリル基である。これらの基の好ましい例としては、置換基で説明した好ましい基と同義であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはヘテロ環基であり、最も好ましくは、Rは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはシアノ基である。
【0057】
RおよびRは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヘテロ環基、またはシリル基である。これらの基の好ましい例としては、置換基で説明した好ましい基と同義であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、特に好ましくは、RおよびRは、置換もしくは無置換のアルキル基または置換又は無置換のアルコキシ基である。
【0058】
R、RおよびRが置換基を表し、さらに置換可能である場合、置換基を有していてもよく、R同士、R同士、R同士、RとRまたは、RとRは互いに結合し環を形成してもよい。
【0059】
一般式(VII)において、p、pおよびpは各々独立に0〜3の整数を表し、好ましくはp、pおよびpは0〜2であり、より好ましくは、p、pおよびpは0〜1である。p〜pがそれぞれ2以上の場合、複数存在するR、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R同士、R 同士あるいはR同士が互いに結合し環を形成してもよい。p〜pが0の場合、水素原子で置換されていることを表す。L、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、L、nおよびAと同義である。
【0060】
次に、一般式(II)の好ましい範囲について説明する。一般式(II)は、好ましくは、一般式(VIII)で表される化合物を表す。
【0061】
一般式(VIII)について以下に詳しく説明する。
【0062】
一般式(VIII)において、R、R、R、p、pおよびpは前記一般式(VII)で説明したR、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。その好ましい例としては、前記一般式(VII)で説明した、好ましいR、R、R、p、pおよびpの範囲として説明した意味と同義である。
L、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、L、nおよびAと同義である。
【0063】
次に、一般式(III)の好ましい範囲について説明する。一般式(III)は、好ましくは、一般式(IX)で表される化合物を表す。
【0064】
一般式(IX)について以下に詳しく説明する。
【0065】
一般式(IX)において、R、R、R、p、pおよびpは前記一般式(VII)で説明したR、R、R、p、pおよびpと同じ意味を表す。その好ましい例としては、前記一般式(VII)で説明した、好ましいR、R、R、p、pおよびpの範囲として説明した意味と同義である。L 、L、nおよびAは一般式(I)におけるL、L、nおよびAと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、L、nおよびAと同義である。
【0066】
一般式(IV)の好ましい範囲について説明する。一般式(IV)は、好ましくは、一般式(X)で表される化合物を表す。
【0067】
一般式(X)について以下に詳しく説明する。
【0068】
一般式(X)において、R、R、pおよびpは前記一般式(VII)で説明したR、R、p、およびpと同じ意味を表す。その好ましい例としては、前記一般式(VII)で説明した、好ましいR、R、pおよびpの範囲として説明した意味と同義である。Rは置換基を表す。その置換基の例としては、前記一般式(I)の説明において、Q〜Qにより形成される不飽和環の原子群が置換基を有する場合において、説明した置換基と同じ意味を表す。
【0069】
Rは、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヘテロ環基、またはシリル基である。これらの基の好ましい例としては、置換基で説明した好ましい基と同義であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、スルホニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはヘテロ環基であり、最も好ましくは、Rは、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、またはシアノ基である。
【0070】
一般式(X)において、pは0〜3の整数を表し、好ましくはpは0〜2であり、より好ましくは、は0〜1である。一般式(X)においてp、pおよびpがそれぞれ2以上の場合、複数存在するR、R、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、R同士、R同士あるいはR同士が互いに結合し環を形成してもよい。p、pおよびpが0の場合、水素原子で置換されていることを表す。
【0071】
L、Lおよびnは一般式(I)におけるL、Lおよびnと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、Lおよびnと同義である。Aは一般式(IV)において説明したAと同じ意味を表し、その例も同様である。
【0072】
一般式(V)の好ましい範囲について説明する。一般式(V)は、好ましくは、一般式(XI)で表される化合物を表す。
【0073】
一般式(XI)について以下に詳しく説明する。
【0074】
一般式(XI)において、R、R、pおよびpは前記一般式(VII)で説明したR、R、p、およびpと同じ意味を表す。その好ましい例としては、前記一般式(VII)で説明した、好ましいR、R、pおよびpの範囲として説明した意味と同義である。Rは置換基を表す。その置換基の例としては、前記一般式(I)の説明において、Q〜Qにより形成される不飽和環の原子群が置換基を有する場合において、説明した置換基と同じ意味を表す。Rおよびpは前記一般式(X)で説明したRおよびpと同じ意味を表し、Rおよびpの好ましい範囲は、前記一般式(X)で説明した好ましいRおよびpの範囲と同じ意味を表す。L、Lおよびnは一般式(I)におけるL、Lおよびnと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、Lおよびnと同義である。Aは一般式(IV)において説明したAと同じ意味を表し、その例も同様である。
【0075】
一般式(VI)の好ましい範囲について説明する。一般式(VI)は、好ましくは、一般式(XII)で表される化合物を表す。
【0076】
一般式(XII)について以下に詳しく説明する。
【0077】
一般式(XII)において、R、R、pおよびpは前記一般式(VII)で説明したR、R、p、およびpと同じ意味を表す。その好ましい例としては、前記一般式(VII)で説明した、好ましいR、R、pおよびpの範囲として説明した意味と同義である。Rは置換基を表す。その置換基の例としては、前記一般式(I)の説明において、Q〜Qにより形成される不飽和環の原子群が置換基を有する場合において、説明した置換基と同じ意味を表す。Rおよびpは前記一般式(X)で説明したRおよびpと同じ意味を表し、Rおよびpの好ましい範囲は、前記一般式(X)で説明した好ましいR およびpの範囲と同じ意味を表す。L、Lおよびnは一般式(I)におけるL、Lおよびnと同じ意味を表し、その好ましい例としては、前記一般式(I)において説明した、好ましいL、Lおよびnと同義である。Aは一般式(IV)において説明したAと同じ意味を表し、その例も同様である。
【0078】
本発明の化合物は低分子化合物であっても良く、また、オリゴマー化合物、ポリマー化合物(重量平均分子量(ポリスチレン換算)は好ましくは1000〜5000000、より好ましくは2000〜1000000、さらに好ましくは3000〜100000である。)であっても良い。ポリマー化合物の場合、一般式(I)〜一般式(XII)で表される構造がポリマー主鎖中に含まれても良く、また、ポリマー側鎖に含まれていても良い。また、ポリマー化合物の場合、ホモポリマー化合物であっても良く、共重合体であっても良い。本発明の化合物は低分子化合物が好ましい。
【0079】
本発明の化合物は、有機EL素子に適用可能であり、電子輸送材料、正孔ブロック材料、電子ブロック材料、励起子ブロック材料のいずれに用いることも可能であるが、好ましくは正孔注入材料、正孔輸送材料、電子ブロック材料、発光材料であり、より好ましくは正孔注入材料、発光材料であり、さらに好ましくは発光材料である。発光材料として用いる場合、紫外発光、可視光発光、赤外発光であってもよく、また蛍光発光であっても燐光発光であってもよい。
【0080】
次に本発明の化合物の化合物例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
【化17】

【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
【化20】

【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
【化23】

【0091】
【化24】

【0092】
【化25】

【0093】
【化26】

【0094】
【化27】

【0095】
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物はThe Journal of American Chemical Society, 117, 8447,(1995)または、Organometallics, 18, 3337,(1999)に記載の方法等を参照とし合成することができる。
【0096】
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物は種々の手法で合成することができる。例えば、配位子、またはその解離体と金属イオンMを含有する化合物を溶媒(例えば、ハロゲン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、アミド系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキサイド系溶媒、水などが挙げられる)の存在下、又は溶媒非存在下、塩基の存在下(無機、有機の種々の塩基、例えば、ナトリウムメトキサイド、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン、炭酸カリウムなどが挙げられる)、もしくは、塩基非存在下、室温以下、もしくは加熱し(通常の加熱以外にもマイクロウェーブで加熱する手法も有効である)得ることができる。
【0097】
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物を合成する際の反応時間は反応の活性により異なり、特に限定されないが、1分以上5日以下が好ましく、5分以上3日以下がより好ましく、10分以上24時間以下がさらに好ましい。
【0098】
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物を合成する際の反応温度は反応の活性により異なり、特に限定されないが、0℃以上300℃以下が好ましく、5℃以上250℃以下がより好ましく、10℃以上200℃以下がさらに好ましい。
【0099】
本発明の一般式(I)〜(VI)で表される化合物は、目的とする錯体の部分構造を形成している配位子を金属化合物に対し、好ましくは0.1当量〜10当量、より好ましくは0.3当量〜6当量、さらに好ましくは0.5当量〜4当量加えて合成することができる。前記の金属化合物としては、金属ハロゲン化物(例えば、塩化白金、塩化白金酸カリウム等)、金属アセテート(例えば、酢酸白金等)、金属アセチルアセトナート(例えば、白金アセチルアセトナート等)、又はそれらの水和物などがあげられる。
【0100】
次に本発明の前記一般式(I)で表される化合物のうち、例示化合物(I-51)の具体的な合成例を示すが、この方法に限定されるものではない。
【0101】
【化28】

【0102】
1Lの三口フラスコに、2,6-ジブロモピリジン(A)25.0 g(106 mmol)、無水テトラヒドロフラン67 ml、時エチルエーテル133 mlを加えて、窒素気流下−78℃で撹拌しているところにn-ブチルリチウム(1.6Mヘキサン溶液、65.5ml、 40.9 mmol)を少しずつ滴下した。その後、−78℃で5分間撹拌した後、無水N,N-ジメチルホルムアミド16.75 mlを少しずつ滴下した。−78℃で一時間撹拌した後、−50℃まで昇温させ、メタノール125mlを加えた。さらに室温まで昇温させ撹拌しているところに、水素化ホウ素ナトリウム4.06 g(107 mmol)を加え、室温下で5時間撹拌した。その後、反応混合物にアセトンを加えて反応を停止させたあと、水を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無機塩を濾別したあと有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、15.3 g(収率77%)の(B)を得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3) δ= 3.22 (br.s, 1H), 4.85 (s, 2H), 7.37 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.46 (d, 1H, J = 7.7 Hz), 7.56 (t, 1H, J = 7.7 Hz).
【0103】
1-ブロモ-2,4-ジフルオロベンゼン (C)17.6 ml (17.4 mmol)、還元鉄0.60 g (10.7 mmol)を1L三口フラスコに入れ、60℃に加熱撹拌しているところに、臭素24.8 g(18.3 mmol)を30分以上かけてゆっくりと滴下した。そのまま60℃でさらに5時間撹拌した。反応終了後、混合物を0℃まで冷却し、さらに無10%水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ滴下した。さらに飽和食塩水を加え、混合物をトルエンで2回抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。無機塩を濾別したあと有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、(D)を30.6 g(収率72%)得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3) δ= 6.98 (t, 1H, J = 6.0 Hz), 7.77 (t, 1 H, J = 6.0 Hz).
【0104】
300 ml三口フラスコに、(D)を4.90 g(18.0 mmol)、ビスピナコラートジボラン10.1 g(
39.6 mmol)、無水N,N-ジメチルホルムアミド200 ml、酢酸カリウム10.4 g(106 mmol)を加え、窒素気流下、攪拌しているところに、ジフェニルホスフィノフェロセンパラジウムジクロリド0.86 g(1.05 mmol)を加え、80℃で9時間攪拌した。その後、水を加え、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したあと有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)を6.73 gを定量的に得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3) δ= 1.36 (s, 24 H), 6.73 (t, 1H, J = 9.66 Hz), 8.13 (t, 1H, J = 7.44 Hz).
【0105】
300 ml三口フラスコに、(B)を 4.11 g(21.9 mmol)、(E)を4.00 g(10.9 mmol)、1,2-ジメトキシエタン80 ml、1M炭酸水素ナトリウム水溶液60 mlを加え、窒素気流下、攪拌しているところに、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.75 g(0.65 mmol)を加え、80℃で9時間攪拌した。その後、水、酢酸エチルを加え、水層を酢酸エチルで抽出した。集めた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、無機塩を濾別したあと有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し (F)を1.34 g (収率37%)を得た。
1H-NMR (300 MHz, in CDCl3) δ= 3.79 (br.s, 2H, -OH), 4.84 (s, 4H), 7.05 (t, 1H, J = 10.5 Hz), 7.25 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 7.69 (br.d, 2H, J = 7.5 Hz), 7.793 (t, 2H, J = 7.8 Hz), 8.58 (t, 1H, J = 9.0 Hz).
【0106】
100 ml三口フラスコに、(F)を 200 mg (0.609 mmol)、過ヨウ素酸ナトリウム782 mg (3.67 mmol)、三塩化ルテニウムn水和物を一片、アセトニトリル4ml、四塩化炭素4ml、水4mlを加え、窒素気流下、室温で3日間攪拌した。その後、反応混合物をアセトニトリルで希釈し、セライトろ過した。得られた残渣をロータリーエバポレーターで濃縮し、さらに粗結晶をクロロホルム−ヘキサンで結晶化させることにより(G)を119 mg(収率57%)を得た。この(G)はこれ以上精製することなく、速やかに次の反応に用いた。
【0107】
100 ml三口フラスコに(G)を 84 mg(0.24 mmol)、塩化白金酸カリウム98 mg (0.24 mmol)、アセトニトリル10 ml、水5 mlを加え、窒素気流下、2日間、加熱還流下で撹拌した。その後、生じた結晶を濾別した。粗結晶を水、アセトニトリル、クロロホルムで洗浄し、難溶性の朱色の結晶(121)34 mg(収率26%)を得た。MS(MALDI-MS, positive), m/z 550 , M+1.
【0108】
次に、本発明の化合物を含有する発光素子に関して説明する。本発明の発光素子は、本発明の化合物を利用する素子である点以外は通常の発光システム、駆動方法、利用形態などに用いることができる。一般式(I)〜(XII)で表される化合物を発光材料または正孔注入材料・正孔輸送材料として利用する物が好ましい。発光材料として用いる場合は、紫外発光であっても赤外発光であっても良く、また蛍光発光であってもりん光発光であっても良い。代表的な発光素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を挙げることができる。
【0109】
本発明の発光素子は、種々の公知の手法により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板・ITO層・有機層の屈折率を制御する、基板・ITO層・有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0110】
本発明の発光素子は、陽極側から発光を取り出す、いわゆる、トップエミッション方式(特開2003−208109,2003−248441,2003−257651,2003−282261などに記載)であっても良い。
【0111】
本発明の発光素子で用いられる基材は、特に限定されないが、ジルコニア安定化イットリウム、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体等の高分子量材料であっても良い。
【0112】
本発明の有機電界発光素子は、青色蛍光発光化合物を含有しても良いし、また、青色蛍光化合物を含有する青色発光素子と本発明の発光素子を同時に用いて、マルチカラー発光デバイス、フルカラー発光デバイスを作製しても良い。
【0113】
本発明の発光素子は、ホスト材料が一種であっても良いし、二種以上有していても良い。ホスト材料としては、アリールアミン(トリフェニルアミン、ベンジジン)およびその誘導体等、芳香族炭化水素化合物(トリフェニルベンゼン、トリフェニレン、フェナンスレン、ナフタレン、テトラフェニレンなど)およびその誘導体等、芳香族含窒素ヘテロ環化合物(ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、ピロールなど)およびその誘導体等、金属錯体(亜鉛錯体、アルミニウム錯体、ガリウム錯体など)が好ましい。
【0114】
本発明の発光素子は陰極と発光層の間にイオン化ポテンシャル5.9eV以上(より好ましくは6.0eV以上)の化合物を含有する層を用いるのが好ましく、イオン化ポテンシャル5.9eV以上の電子輸送層を用いるのがより好ましい。
【0115】
本発明の化合物を含有する発光素子の有機層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法(スプレーコート法、ディップコート法、含浸法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、フローコート法、バーコート法、マイクログラビアコート法、エアードクターコート、ブレードコート法、スクイズコート法、トランスファーロールコート法、キスコート法、キャストコート法、エクストルージョンコート法、ワイヤーバーコート法、スクリーンコート法等)、インクジェット法、印刷法、転写法などの方法が用いられ、特性面、製造面で抵抗加熱蒸着、コーティング法、転写法が好ましい。上記のいずれかの形成方法によって基板上に本発明の化合物の層を形成するが、その厚さは特に制限するものではない。好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm〜5μmである。
【0116】
本発明の発光素子は陽極、陰極の一対の電極間に発光層もしくは発光層を含む複数の有機化合物膜を形成した素子であり、発光層のほか正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、保護層などを有してもよく、またこれらの各層はそれぞれ他の機能を備えたものであってもよい。各層の形成にはそれぞれ種々の材料を用いることができる。
【0117】
陽極は正孔注入層、正孔輸送層、発光層などに正孔を供給するものであり、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができ、好ましくは仕事関数が4eV以上の材料である。具体例としては酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物、あるいは金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられ、好ましくは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが好ましい。陽極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜500nmである。
【0118】
陽極は通常、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、透明樹脂基板などの上に層形成したものが用いられる。ガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分であれば特に制限はないが、ガラスを用いる場合には、通常0.2mm以上、好ましくは0.7mm以上のものを用いる。
陽極の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えばITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で膜形成される。
陽極は洗浄その他の処理により、素子の駆動電圧を下げたり、発光効率を高めることも可能である。例えばITOの場合、UV−オゾン処理、プラズマ処理などが効果的である。
【0119】
陰極は電子注入層、電子輸送層、発光層などに電子を供給するものであり、電子注入層、電子輸送層、発光層などの負極と隣接する層との密着性やイオン化ポテンシャル、安定性等を考慮して選ばれる。陰極の材料としては金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物を用いることができ、具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K等)及びそのフッ化物または酸化物、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)及びそのフッ化物または酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金またはそれらの混合金属、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属、インジウム、イッテリビウム等の希土類金属等が挙げられ、好ましくは仕事関数が4eV以下の材料であり、より好ましくはアルミニウム、リチウム−アルミニウム合金またはそれらの混合金属、マグネシウム−銀合金またはそれらの混合金属等である。陰極は、上記化合物及び混合物の単層構造だけでなく、上記化合物及び混合物を含む積層構造を取ることもできる。例えば、アルミニウム/フッ化リチウム、アルミニウム/酸化リチウムの積層構造が好ましい。陰極の膜厚は材料により適宜選択可能であるが、通常10nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは50nm〜1μmであり、更に好ましくは100nm〜1μmである。
陰極の作製には電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、コーティング法、転写法などの方法が用いられ、金属を単体で蒸着することも、二成分以上を同時に蒸着することもできる。さらに、複数の金属を同時に蒸着して合金電極を形成することも可能であり、またあらかじめ調整した合金を蒸着させてもよい。
陽極及び陰極のシート抵抗は低い方が好ましく、数百Ω/□以下が好ましい。
【0120】
発光層の材料は、電界印加時に陽極または正孔注入層、正孔輸送層から正孔を注入することができると共に陰極または電子注入層、電子輸送層から電子を注入することができる機能や、注入された電荷を移動させる機能、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層を形成することができるものであれば何でもよく、本発明の化合物のほか、例えばベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ペリレン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノールの金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、イリジウムトリスフェニルピリジン錯体、及び、白金ポルフィリン錯体に代表される遷移金属錯体、及
び、それらの誘導体等が挙げられる。発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。
発光層の形成方法は、特に限定されるものではないが、抵抗加熱蒸着、電子ビーム、スパッタリング、分子積層法、コーティング法、インクジェット法、印刷法、LB法、転写法などの方法が用いられ、好ましくは抵抗加熱蒸着、またはコーティング法である。
【0121】
発光層は単一化合物で形成されても良いし、複数の化合物で形成されても良い。また、発光層は一つであっても複数であっても良く、それぞれの層が異なる発光色で発光して、例えば、白色を発光しても良い。単一の発光層から白色を発光しても良い。発光層が複数の場合は、それぞれの発光層は単一材料で形成されていても良いし、複数の化合物で形成されていても良い。
【0122】
正孔注入層、正孔輸送層の材料は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、本発明の化合物、及び、それらの誘導体等が挙げられる。正孔注入層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5nmの範囲のものが好ましく、より好ましくは1nm〜100nmであり、更に好ましくは1nm〜10nmである。正孔輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。正孔注入層、正孔輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0123】
正孔注入層、正孔輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記正孔注入輸送材料を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法、インクジェット法、印刷法、転写法が用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0124】
電子注入層、電子輸送層の材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれか有しているものであればよい。その具体例としては、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、8−キノリノールの金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン、及び、それらの誘導体等が挙げられる。電子注入層、電子輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは5nm〜1μmであり、更に好ましくは10nm〜500nmである。電子注入層、電子輸送層は上述した材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
電子注入層、電子輸送層の形成方法としては、真空蒸着法やLB法、前記電子注入輸送材料を溶媒に溶解または分散させてコーティングする方法、インクジェット法、印刷法、転写法などが用いられる。コーティング法の場合、樹脂成分と共に溶解または分散することができ、樹脂成分としては例えば、正孔注入輸送層の場合に例示したものが適用できる。
【0125】
保護層の材料としては水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、SiN、SiOなどの窒化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
保護層の形成方法についても特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0126】
[実施例]
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されない。
【0127】
(比較例1)
洗浄したITO基板を蒸着装置に入れ、NPDを50nm蒸着し、この上にCBP及び1-1’(国際公開第2004/039914号に記載の化合物)を10:1の質量比で40nm蒸着し、さらにこの上にBAlqを10nm、さらにこの上にAlqを30nm蒸着した。得られた有機薄膜上にパターニングしたマスク(発光面積が4mm×5mmとなる)を設置し、フッ化リチウムを3nm蒸着した後アルミニウムを60nm蒸着して比較例1の有機EL素子を作製した。得られた有機EL素子に直流定電圧(5V)を印加したところ、発光が観測された。輝度300cd/mで10時間発光させた。
【0128】
【化29】

【0129】
(実施例1)
比較例1において、1-1’の代わりに、本発明の化合物(121)を用いた以外は比較例1と同様にして実施例1の有機EL素子を作成した。得られた有機EL素子に直流定電圧(5V)を印加したところ、発光が観測された。輝度300cd/mで10時間発光させたところ、比較例1と比較して、輝度半減期が2倍以上であった。
【0130】
同様に、他の本発明の化合物を用いても、耐久性の高い発光素子を作製することができる。本発明の化合物は、青〜緑のりん光発光が可能であり、本発明の化合物を有する青〜緑発光素子を作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(I)
【化1】


(式中、Qは炭素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。QおよびQは窒素原子とともに不飽和の環を形成するのに必要な原子群を表す。Q、Q、Qを構成する原子群において、さらに置換可能な場合、水素原子または置換基を有していてもよい。L、Lは置換基を有していてもよい連結基を表す。nは0または1を表す。Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。
【請求項2】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(II)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(II)
【化2】


式中、Q、Q、Q、L、L、nおよびAは一般式(I)におけるQ、Q、Q、L、L、nおよびAと同じ意味を表す。
【請求項3】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(III)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(III)
【化3】


式中、Q、Q、Q、L、L、nおよびAは一般式(I)におけるQ、Q、Q、L、L、nおよびAと同じ意味を表す。
【請求項4】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(IV)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(IV)
【化4】


式中、Q、Q、L、Lおよびnは一般式(I)におけるQ、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。QはQと同じ意味を表す。Aは白金と結合する原子を含有する部分構造を表す。
【請求項5】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(V)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴とする有機電界発光素子。
一般式(V)
【化5】


式中、Q、Q、Q、L、L、Aおよびnは一般式(IV)におけるQ、Q、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。
【請求項6】
一対の電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機電界発光素子であって、下記一般式(VI)で表される化合物の少なくとも一種を有機層に含有することを特徴
とする有機電界発光素子。
一般式(VI)
【化6】


式中、Q、Q、Q、L、L、Aおよびnは一般式(IV)におけるQ、Q、Q、L、Lおよびnと同じ意味を表す。

【公開番号】特開2006−114889(P2006−114889A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268616(P2005−268616)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】