説明

有機電界発光素子

【課題】 発光効率と駆動耐久性とを両立した有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】 一対の電極間に少なくとも一層の有機層を設けて構成された積層体を有する有機電界発光素子であって、前記積層体は保護層で覆われており、前記保護層は非縮環型芳香族化合物を含有する層であることを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラ−ディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源や、プリンタ−等の光源アレイなどに有効に利用できる有機電界発光素子(以下、適宜、「有機EL素子」又は「素子」と称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光層若しくは発光層を含む複数の有機層と、該有機層を挟んだ対向電極とから構成されている。有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機層において再結合し、生成した励起子からの発光、及び/又は、該励起子からエネルギー移動して生成した他の分子の励起子からの発光を利用した、発光を得るための素子である。
【0003】
しかしながら、有機EL素子の実用化には未だ多くの課題が残されている。特に、連続駆動時の品質低下、即ち、非発光或いは輝度低下領域(所謂ダークスポット)の発生と成長の抑制は最大の課題である。
【0004】
この駆動時の輝度劣化を生ずる原因として、酸素や水分の影響が考えられている。そのため素子の作製工程においては、可能な限り酸素や水分を低減させた環境で素子作製を実施したり、また、作製した素子を封止して空気中の酸素や水分を遮断する方法が採られている。特に、素子を封止する手法については、これまでに種々の封止方法が考えられている。
【0005】
封止方法の例としては、発光層又は電子注入層と同一の有機化合物を保護層に用いる方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、保護層が電荷輸送性を持ち得るために、素子の短絡や効率低下を招き易いという問題がある。
【0006】
また、作製した素子上に、プラズマ重合法を用いて有機保護膜を形成し封止する方法がある(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、プラズマによる有機層へのダメージを完全に除去することができず、結果的に発光効率の低下や耐久性の劣化を生じてしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平6−231881号公報
【特許文献2】特開平9−270295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、発光効率と駆動耐久性とを両立した有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 一対の電極間に少なくとも一層の有機層を設けて構成された積層体を有する有機電界発光素子であって、前記積層体は保護層で覆われており、前記保護層は非縮環型芳香族化合物を含有する層であることを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記積層体は、前記基板上に設けられ、かつ前記基板と封止部材とから構成される空間に内在していることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
【0009】
<3> 前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子。
一般式(1) L−(Ar)m
(一般式(1)中、Arは下記一般式(2)で表される基を表し、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。
【0012】
<4> 前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子。
【0013】
【化2】

【0014】
一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。
【0015】
<5> 前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(4)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、Arはアリール基を表し、R3は置換基を表し、n3は0以上の整数を表す。
【0018】
<6> 一般式(4)で表される化合物が一般式(5)で表されることを特徴とする前記<5>に記載の有機電界発光素子。
【化4】

【0019】
一般式(5)中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24及びAr25はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、R4は水素原子又は置換基を表す。
【0020】
<7> 前記一般式(4)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする前記<5>に記載の有機電界発光素子。
【0021】
【化5】

【0022】
一般式(6)中、R51、R52、R53、R54、R55及びR56はそれぞれ置換基を表し、n51、n52、n53、n54、n55及びn56はそれぞれ0〜5の整数を表す。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、発光効率と駆動耐久性とを両立した有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に少なくとも一層の有機層を設けて構成された積層体を有する有機電界発光素子であって、前記積層体は保護層で覆われており、前記保護層は非縮環型芳香族化合物を含有する層であることを特徴とする。
前記積層体は、前記基板上に設けられ、かつ前記基板と封止部材とから構成される空間に内在していることが好ましい。
【0025】
本発明における保護層が有する機能は、特に限定されないが、前記積層体を覆うことにより、該積層体を空気中の酸素や水分から効果的に遮断する機能、及び/又は、該保護層が非縮環型芳香族化合物を含有することにより、発光効率及び駆動耐久性がより一層顕著に発揮される機能等がある。
【0026】
本発明における保護層は、積層体の全体を被覆するように形成されることが好ましいが、本発明の効果を発揮することが可能である限り、積層体の一部が保護層により覆われる態様も本発明に包含される。
例えば、後に詳述する本発明の好適な実施形態(図1参照)を例にすれば、積層体において、基板と封止部材とから構成される空間に露出している外表面部分(即ち、背面電極側の表面部分)は、保護層により被覆される必要があるが、積層体が基板と接する部分については、保護層により覆われなくともよい。
【0027】
積層体における有機層としては、有機化合物のみを含有する層であってもよいし、無機化合物を含有する層を更に含んでいてもよい。また、有機層は、発光層のみの単層であってもよいし、発光層と他の有機層との積層構造であってもよい。さらに、本発明の有機EL素子は、ボトムエミッション型の素子形態、トップエミッション型の素子形態(封止部材が透明な場合)、等いずれの形態の素子であってもよい。なお、以下の説明においては、ボトムエミッション型の素子形態を例に説明を行う。また、本発明に適用される電極及び有機層の詳細については後に詳述する。
【0028】
<保護層>
本発明においては、保護層に非縮環型芳香族化合物を含有することを要する。
本発明に用いられる非縮環型芳香族化合物は、好ましくは下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1) L−(Ar)m
一般式(1)中、Arは、下記一般式(2)で表される基を表し、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。mは、好ましくは3以上6以下であり、さらに好ましくは3又は4である。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。
【0031】
一般式(2)中、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基、(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、プロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基、(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル、p−メチルフェニルなどが挙げられる。)、
【0032】
アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシなどが挙げられる。)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、
【0033】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、
【0034】
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、
【0035】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メシル、トシルなどが挙げられる。)スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、
【0036】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばヘテロ原子として、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子などを有する基であり、具体的にはイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。)などが挙げられる。
【0037】
1は複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。また、R1は更に置換されてもよい。
【0038】
1にさらに導入可能な置換基としては、R1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
【0039】
一般式(2)中、n1は0〜9の整数を表す。n1として好ましくは0〜6の整数であり、さらに好ましくは0〜3の整数である。
【0040】
前記非縮環型芳香族化合物の他の好ましい態様は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0041】
【化7】

【0042】
一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。
【0043】
一般式(3)中、R2で表される置換基は、前記一般式(2)における置換基R1と同義であり、好ましい態様も同様である。
一般式(3)中、n2は0〜20の整数を表す。n2の好ましい範囲は0〜10の整数であり、さらに好ましくは0〜5の整数である。
【0044】
前記非縮環型芳香族化合物の他の好ましい態様は、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0045】
【化8】

【0046】
一般式(4)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、Arはアリール基を表し、R3は置換基を表し、n3は0以上の整数を表す。
【0047】
一般式(4)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、好ましくはアリール基である。Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15が表すアリール基及びヘテロアリール基は、単環構造を有することが好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ベンゾアンスリル基、ベンゾフェナンスリル基等が挙げられる。中でもフェニル基、ナフチル基、アンスリル基及びフェナンスリル基が好ましく、フェニル基及びナフチル基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、アクリジル基、フェナントリジル基、フタラジル基、フェナンスロリル基、トリアジル基等が挙げられる。中でもピリジル基及びトリアジル基が好ましい。
【0048】
Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15は、さらに置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、後述するR3で表される置換基と同様のものが挙げられる。
【0049】
一般式(4)中、Arはアリール基を表し、好ましくはフェニル基、フェナンスリル基又はアンスリル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0050】
一般式(4)中、R3は置換基を表す。R3で表される置換基は、前記一般式(2)におけるR1と同義であり、好ましい態様も同様である。
3で表される置換基は、更に置換基を有していてもよい。R3に更に導入可能な置換基としては、R1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
3としては、アルキル基、アリール基(特にフェニル基)又はヘテロアリール基(特にピリジル基及びトリアジル基)であることが好ましい。
【0051】
一般式(4)中、n3は0以上の整数を表す。n3は0〜10の整数であることが好ましく、0〜5の整数であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0052】
一般式(4)で表される化合物のうち、好ましくは下記一般式(5)で表される化合物であり、より好ましくは下記一般式(6)で表される化合物である。
【0053】
【化9】

【0054】
一般式(5)中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24及びAr25はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、R4は水素原子又は置換基を表す。
【0055】
【化10】

【0056】
一般式(6)中、R51、R52、R53、R54、R55及びR56はそれぞれ置換基を表し、n51、n52、n53、n54、n55及びn56はそれぞれ0〜5の整数を表す。
【0057】
一般式(5)中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24及びAr25は、前記一般式(4)におけるAr11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15は同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(5)中、R4は水素原子又は置換基を表す。R4で表される置換基としては、前記一般式(2)における置換基R1と同義であり、好ましい態様も同様である。
4として、好ましくはアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基である。
【0058】
一般式(6)中、R51、R52、R53、R54、R55及びR56はそれぞれ置換基を表し、該置換基の例としては、前記一般式(4)においてR3で表される置換基と同様のものが挙げられる。R51、R52、R53、R54、R55及びR56として、好ましくはアルキル基である。
一般式(6)中、n51、n52、n53、n54、n55及びn56はそれぞれ0〜5の整数を表し、好ましくは0、1又は2であり、より好ましくは0又は1である。
【0059】
次に、一般式(1)〜(6)で表される化合物の具体例〔例示化合物(1−1)〜(1−29)、(2−1)〜(2−58)〕を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
【化11】

【0061】
【化12】

【0062】
【化13】

【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【0065】
【化16】

【0066】
【化17】

【0067】
【化18】

【0068】
【化19】

【0069】
【化20】

【0070】
【化21】

【0071】
【化22】

【0072】
【化23】

【0073】
【化24】

【0074】
【化25】

【0075】
【化26】

【0076】
前記非縮環型芳香族化合物は、保護層中に1〜100質量%含有することが好ましい。より好ましくは10〜100質量%であり、さらに好ましくは20〜100質量%である。
【0077】
保護層の膜厚は、好ましくは0.05〜10μmであり、より好ましくは0.1〜10μmであり、さらに好ましくは0.1〜1μmである。
【0078】
保護層には、前記非縮環型芳香族化合物以外の他の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、特に限定されないが、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものが好ましい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物;SiNx、SiNxy等の金属窒化物;MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体;テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体;共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体;吸水率1%以上の吸水性物質;吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0079】
保護層中において、上記非縮環型芳香族化合物(化合物Aとする)以外の他の材料の含有量は、保護層の設計等により適宜決定することができるが、例えば、金属酸化物を0〜10質量%、及び/又は金属窒化物を0〜20質量%(残部は化合物A)含むことが好ましい。
【0080】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0081】
本発明の有機EL素子の好適な実施形態は、基板上に、積層体として、一方の電極、有機層、及び他方の電極(背面電極)が設けられ、該積層体が保護層で被覆されており、かつ基板と封止部材とから構成される空間に当該積層体が内在している態様である。
【0082】
上記実施形態において、基板と封止部材(封止容器)とから構成される空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0083】
基板と封止部材とから構成される空間は、例えば、基板上に封止部材を紫外線硬化型の接着剤などより接着することにより形成することができる。
【0084】
以下に、図を用いて本発明の有機EL素子の好適な実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
図1は、本発明の有機EL素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。図1中、1は基板を示し、該基板1上に、陽極2、正孔輸送層3、発光層4、電子輸送層5、及び陰極6がこの順に設けられ、積層体7が構成される。
図1中、8は非縮環型芳香族化合物を含有する保護層であり、積層体7の全体を被覆するように形成される。
図1中、9は封止部材であり、基板1と封止部材9とから構成された空間に、該空間に保護層8で被覆された積層体7を内在させて素子が封止される。本発明の有機EL素子は、かかる形態を採ることにより、保護層8による被覆の効果と相俟って、本発明の効果である発光効率及び駆動耐久性を向上させることができる。
【0086】
本発明の有機EL素子における各要素について更に詳細に説明する。
<基板>
本発明で使用しうる基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0087】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0088】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0089】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0090】
<陽極>
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0091】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0092】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0093】
本発明の有機EL素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。陽極は、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0094】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0095】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0096】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0097】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0098】
<陰極>
陰極は、通常、有機層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0099】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0100】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0101】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0102】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0103】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0104】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0105】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0106】
<有機層>
本発明における有機層について説明する。
本発明の有機EL素子における有機層は、発光層を含む少なくとも一層の有機層であり、発光層以外の他の有機層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層(正孔ブロック層、等)、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0107】
本発明の有機EL素子において、有機層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0108】
−発光層−
発光層(有機発光層)は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
【0109】
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料(ドーパント)との混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。
【0110】
ホスト材料は、電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料を2種以上用いる構成としては、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。
さらに、発光層中には、電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0111】
本発明に使用できる蛍光発光材料としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0112】
蛍光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0113】
本発明に使用できる燐光発光材料としては、例えば、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金である。
ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0114】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer-Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0115】
燐光発光材料は、発光層中に、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
【0116】
本発明における発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するもの及びアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0117】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。
【0118】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々500nm以下であることが好ましい。
正孔輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。また、正孔注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであることが好ましく、0.5nm〜100nmであることがより好ましく、1nm〜100nmであることが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0119】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0120】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、駆動電圧を下げるという観点から、各々50nm以下であることが好ましい。
電子輸送層の厚さとしては、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。また、電子注入層の厚さとしては、0.1nm〜200nmであることが好ましく、0.2nm〜100nmであることがより好ましく、0.5nm〜50nmであることが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0121】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
正孔ブロック層の厚さとしては、1nm〜500nmであることが好ましく、5nm〜200nmであることがより好ましく、10nm〜100nmであることが更に好ましい。
正孔ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0122】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0123】
以下に、本発明の有機EL素子について、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0124】
〔実施例1〕
0.5mm厚み、2.5cm角のITOガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極上に真空蒸着法にて以下の層(有機層)を蒸着した。本発明の実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0125】
(正孔注入層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(正孔輸送層)
NPD:膜厚20nm
(発光層)
CBP=95質量%、Ir(ppy)3=5質量%の混合層:膜厚30nm
(正孔ブロック層)
BAlq3:膜厚12nm
(電子輸送層)
Alq3:膜厚40nm
【0126】
この上にパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを0.1nm/秒の蒸着速度にて1nm蒸着し電子注入層とした。更に金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
【0127】
形成した有機層及び陰極を完全に被覆するように、本発明に係る化合物(1−1)を0.2nm/秒の蒸着速度で200nm蒸着し、保護層とした。
このものを、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶(封止部材)及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
【0128】
得られた有機EL素子に、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400を用いて、直流定電圧を印加し、発光させ、その輝度をトプコン社製の輝度計BM−8、発光波長とCIE色度座標を浜松ホトニクス社製のスペクトルアナライザーPMA−11を用いて測定した。その結果、CIE色度が(x,y)=(0.28,0.63)、発光ピーク波長が515nmの緑色発光が得られ、最高輝度は42000cd/m2、外部量子効率は16.0%であった。
【0129】
〔比較例1〕
実施例1において、保護層を形成しないで封止した以外は、実施例1と同様にして比較例1の有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を実施例1と同様に評価したところ、CIE色度が(x,y)=(0.30,0.63)、発光ピーク波長が514nmの緑色発光が得られ、最高輝度は16000cd/m2、外部量子効率は15.7%であった。
【0130】
実施例1と比較例1の有機EL素子の駆動耐久性について、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400及びトプコン社製の輝度計BM−8を用いて、初期輝度2000cd/m2で定電流駆動した場合の輝度半減時間で比較した。その結果、実施例1の有機EL素子の方が、比較例1の有機EL素子に比べて2倍長寿命であった。
【0131】
〔実施例2〕
実施例1において、発光層を、CBP=95質量%、Ir(piq)3=5質量%の混合層:膜厚30nmに代えて、保護層として本発明に係る化合物(2−1)を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を実施例1と同様に評価したところ、CIE色度が(x,y)=(0.67,0.33)、発光ピーク波長が620nmの赤色発光が得られ、最高輝度は25000cd/m2、外部量子効率は9.1%であった。
【0132】
〔比較例2〕
実施例2において、保護層を形成しないで封止した以外は、実施例2と同様にして比較例2の有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子を実施例2と同様に評価したところ、CIE色度が(x,y)=(0.66,0.34)、発光ピーク波長が619nmの赤色発光が得られ、最高輝度は24000cd/m2、外部量子効率は9.2%であった。
【0133】
実施例2と比較例2の有機EL素子の駆動耐久性を、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400及びトプコン社製の輝度計BM−8を用いて、初期輝度2000cd/m2で定電流駆動した場合の輝度半減時間で比較した。その結果、実施例2の有機EL素子の方が、比較例2の有機EL素子に比べて2倍長寿命であった。
【0134】
以上の実施例及び比較例の結果より、本発明の有機EL素子は、従来の積層型素子と比較して、発光効率が同等或いはそれ以上であり、素子の駆動耐久性については飛躍的に向上することがわかった。また、保護層として本発明に係る非縮環型芳香族化合物を用いることで、駆動耐久性向上効果がより顕著に発揮されることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明により製造される有機電界発光素子は、フルカラーディスプレイ、バックライト等の面光源やプリンター等の光源アレイなどに有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の有機EL素子の実施形態の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0137】
1 基板
2 陽極
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 陰極
7 積層体
8 保護層
9 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に少なくとも一層の有機層を設けて構成された積層体を有する有機電界発光素子であって、前記積層体は保護層で覆われており、前記保護層は非縮環型芳香族化合物を含有する層であることを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記積層体は、前記基板上に設けられ、かつ前記基板と封止部材とから構成される空間に内在していることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
一般式(1) L−(Ar)m
(一般式(1)中、Arは下記一般式(2)で表される基を表し、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。)
【化1】

(一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。)
【請求項4】
前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【化2】

(一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。)
【請求項5】
前記非縮環型芳香族化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子。
【化3】

(一般式(4)中、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14及びAr15はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、Arはアリール基を表し、R3は置換基を表し、n3は0以上の整数を表す。)
【請求項6】
一般式(4)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の電界発光素子。
【化4】

(一般式(5)中、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24及びAr25はそれぞれアリール基又はヘテロアリール基を表し、R4は水素原子又は置換基を表す。)
【請求項7】
前記一般式(4)で表される化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
【化5】

(一般式(6)中、R51、R52、R53、R54、R55及びR56はそれぞれ置換基を表し、n51、n52、n53、n54、n55及びn56はそれぞれ0〜5の整数を表す。)

【図1】
image rotate