説明

有機電界発光素子

【課題】発光効率及び発光輝度に優れた有機電界発光素子、特に、発光効率及び発光輝度に優れ、且つ色度の良好な白色発光素子に好適な有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】一対の電極間に、少なくとも2層の発光層を有する有機電界発光素子であって、該少なくとも2層の発光層の各々が、相異なる発光材料を含み、該発光材料の少なくとも1種は燐光発光材料であり、該少なくとも2層の発光層における各々の発光層間にバッファー層を有し、該バッファー層に最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Eg)が4.0eV以上である有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換して発光する有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、種々の表示素子に関する研究開発が活発であり、中でも有機電界発光素子(以下、適宜、「有機EL素子」、「発光素子」、「素子」と称する。)は、低電圧で高輝度の発光を得ることができるため、有望な表示素子として注目されている。一般に、有機EL素子は、発光層もしくは発光層を含む複数の有機層を挟んだ対向電極から構成されており、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが発光層において再結合し、生成した励起子からの発光を利用するもの、又は前記励起子からエネルギー移動によって生成する他の分子の励起子からの発光を利用するものである。
【0003】
有機EL素子は、自発光の面光源であることから、例えば、白色光源としての利用が考えられる。Commission Internationale d'Eclairage (CIE) により定義されているように、理想的な白色光源は(0.33、0.33)の座標を有する。白色発光は、青色、緑色、及び赤色の3色の発光材料、あるいは補色関係にある2色の発光材料の発光により得ることができる。白色発光素子において、発光材料間のエネルギー移動(青色→緑色→赤色)が生じると、所望の色度が得られない。高効率、低電圧、高輝度、高い色度を有する有機EL素子の開発が望まれている。
【0004】
素子の高効率化の手段として、燐光発光材料の発光層への使用がある。現在の青色(発光)燐光材料のいくつかは発光強度が低い。例えば、発光強度が低い青色燐光材料を使用すると、所望の色度を得るために、緑色や赤色の燐光発光強度を下げる調整が必要となり、結果的に素子の発光効率が低下する。発光強度が低い発光材料(好ましくは燐光発光材料)を効率的に発光させる技術の開発が望まれている。
【0005】
複数の発光材料を用いる技術として、相異なる二種以上の発光材を発光層に含み、かつ該発光材の少なくとも一種がオルトメタル化錯体である発光素子開示されている(特許文献1参照)。また、発光層に複数の発光ドーパントを含み、かつ少なくとも一つのドーパントが燐光発光体である有機発光素子が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
青色、緑色、赤色の発光層に、それぞれ燐光発光材料を使用して、発光層を励起子阻止層で隔てることにより、励起子を発光層内に閉じ込め、発光効率を向上させることが開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
発光層が、正孔輸送性発光層と電子輸送性発光層とからなり、正孔輸送性発光層はトリ(o−ターフェニルー4―イル)アミンを有するエレクトロルミネッセンス素子が開示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2001−319780号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2002−0197511号明細書
【特許文献3】特開2004−522276号公報
【特許文献4】特開2001−196183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、発光効率及び発光輝度に優れた有機電界発光素子を提供することを目的とする。特に、本発明は、発光効率及び発光輝度に優れ、且つ色度の良好な白色発光素子に好適な有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、下記手段によって達成された。
<1> 一対の電極間に、少なくとも2層の発光層を有する有機電界発光素子であって、
該少なくとも2層の発光層の各々が、相異なる発光材料を含み、該発光材料の少なくとも1種は燐光発光材料であり、
該少なくとも2層の発光層における各々の発光層間にバッファー層を有し、該バッファー層に最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Eg)が4.0eV以上である有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【0010】
<2> 前記有機化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T1)が、2.7eV以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【0011】
<3> 前記バッファー層が、更に、正孔輸送材料又は電子輸送材料を含むことを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の有機電界発光素子。
【0012】
<4> 前記バッファー層の膜厚が、0.5nm以上10nm以下であることを特徴とする前記<1>から<3>の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【0013】
<5> 前記バッファー層に含まれる正孔輸送材料又は電子輸送材料の濃度が、1質量%以上95質量%以下であることを特徴とする前記<3>又は<4>に記載の有機電界発光素子。
【0014】
<6> 前記有機化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする前記<1>から<5>の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
一般式(1) L−(Ar)m
一般式(1)中、Arは下記一般式(2)で表される基を表し、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。
【0017】
<7> 前記有機化合物が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする前記<1>から<5>の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。
【0020】
<8> 白色発光であることを特徴とする前記<1>から<7>の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発光効率及び発光輝度に優れた有機電界発光素子提供することができる。更に、本発明によれば、発光効率及び発光輝度に優れ、且つ色度の良好な白色発光素子に好適な有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極間に、少なくとも2層の発光層を有する有機電界発光素子であって、該少なくとも2層の発光層の各々が、相異なる発光材料を含み、該発光材料の少なくとも1種は燐光発光材料であり、該少なくとも2層の発光層における各々の発光層間にバッファー層を有し、該バッファー層に最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Eg)が4.0eV以上である有機化合物を含むことを特徴とする。
【0023】
以下、本発明の有機電界発光素子について詳細に説明する。本発明の素子は、一対の電極(陽極及び陰極)間に、少なくとも2層の発光層を有する。
【0024】
本発明に使用できる、電極(陽極及び電極)、並びに電極及び有機化合物層を形成するための支持基板については、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方は、透明であることが好ましい。
【0025】
本発明においては、少なくとも2層の発光層の他に別の有機化合物層を有してもよく、該少なくとも2層の発光層における各々の発光層間に、Egが4.0eV以上である有機化合物を含むバッファー層を有することが、本発明の素子における特徴的な要素の一つである。
【0026】
一対の電極間の層(有機化合物層)としては、発光層及びバッファー層のみを有していてもよいし、更に他の有機化合物層を有する積層構造であってもよい。有機化合物層が積層構造である場合、積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間、又は、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。
以下、本発明における有機化合物層について詳細に説明する。
【0027】
−発光層−
発光層(有機発光層)は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料を混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。
【0028】
本発明においては、少なくとも2層設けられる発光層の各々が、相異なる発光材料を含み、該発光材料の少なくとも1種は燐光発光材料である。
ここで、「相異なる発光材料」とは、化学構造の異なる発光材料を意味する。
本発明においては、燐光発光材料を少なくとも一種含む、(構造の)相異なる少なくとも2種の発光材料を用いることにより、任意の色に発光する発光素子を得ることができる。
本発明においては、総ての発光層に、燐光発光材料を含む態様がより好ましい。
【0029】
また、本発明の発光素子は、発光材料を適切に選ぶことにより、高発光効率及び高発光輝度で、且つ色度に優れた白色発光素子とすることができる。例えば、青色発光材料と橙色発光材料の組み合わせにより、白色発光素子を得ることができる。
【0030】
高発光効率及び高発光輝度であり、且つ、色度に優れた白色発光素子とするためには、構造の相異なる3種以上の発光材料を適切に選ぶことが好ましい。このような発光材料としては、発光波長400〜500nmの青色発光材料、500〜570nmの緑色発光材料、580〜670nmの赤色発光材料から、それぞれ選ぶことが好ましい。これらの発光材料を、それぞれ別個の発光層に含ませることにより白色発光素子を得ることができる。これらの発光材料は後述する例より適切に選ぶことができる。
【0031】
本発明に用いられる燐光発光材料としては、特に限定されることはなく、公知の材料から適宜選択して使用することができる。例えば、特開2004−221068号公報の[0051]から[0057]等に記載のものを挙げることができるが、中でも、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0032】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁、232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophisics of Coodination Compounds」71〜77頁、135〜146頁、Springer-Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0033】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0034】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem., 1991年, 30号, 1685頁、同 1988年, 27号, 3464頁.、同 1994年, 33号, 545頁、Inorg.Chim.Acta, 1991年, 181号, 245頁、J.Organomet.Chem., 1987年, 335号, 293頁、J.Am.Chem.Soc. 1985年, 107号, 1431頁 等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
【0035】
また、本発明においては、上記燐光発光材料に加え、蛍光発光材料を併用して使用することもできる。本発明で使用できる蛍光発光材料の例としては、特に制限はなく、公知のものから適宜選択することができる。例えば、特開2004−146067号公報の[0027]、特開2004−103577号公報の[0057]等に記載のものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
発光層中における燐光発光材料は、発光層1層当たり、0.1〜40質量%含有されることが好ましく、0.5〜20質量%含有されることがより好ましい。
また、発光層中に、発光材料として、蛍光発光材料を含む場合は、蛍光発光材料のみで発光層を形成する態様とすることも好適であり、また、ホスト材料中に蛍光発光材料を混合して発光層を形成する態様も好適である。発光層が、ホスト材料と蛍光発光材料との混合層である場合の蛍光発光性化合物の濃度は、発光層1層当たり、0.1〜99.9質量%含有されることが好ましく、1〜99質量%含有されることがより好ましく、10〜90質量%含有されることが更に好ましい。
【0037】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1層当たり、1nm〜500nmであるのが好ましく、5nm〜200nmであるのがより好ましく、10nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0038】
−バッファー層−
本発明の発光素子は、上述した、少なくとも2層の発光層における各々の発光層間にバッファー層を有し、該バッファー層に最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差Egが4.0eV以上である有機化合物(バッファー層に含まれる有機化合物)を含む。
即ち、本発明における発光層及びバッファー層の構成としては、例えば、発光層を2層有する場合であれば、発光層/バッファー層/発光層であり、発光層を3層有する場合であれば、発光層/バッファー層/発光層/バッファー層/発光層であるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明においては、バッファー層にEgの大きい化合物を含有させることにより、発光層中の電子及び正孔が、隣接する他の発光層やその他の層に移動することを効率的に阻止することができ、その結果、発光層中での電荷の再結合確率が上がり、発光効率を向上させることができる。
また、2層以上設けられた発光層においては、電子や正孔が一つの発光層から隣接する他の発光層に移動する場合に、隣接する発光層が発光してしまい、色度が悪化するという問題が生じることが予想されるが、本発明のごとく、相異なる発光層間にバッファー層を設け、該バッファー層中にEgの大きな化合物を含むことで、隣接する他の発光層への電子や正孔の移動を効率的に抑制することができ、色度の悪化を防止することができる。
即ち、本発明のごとく、相異なる発光層の間に、最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差Egが4.0eV以上の有機化合物を含むバッファー層を有することにより、各発光層の発光輝度、及び発光効率を向上させることができ、また、色度の悪化を抑制し、所望の色度に発光させることが可能になる。その結果、非常に発光効率が高く、かつ色度に優れた発光素子を得ることができる。
【0040】
バッファー層に含まれる有機化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T1)は、2.7eV以上であることが好ましく、2.8eV以上がより好ましい。
バッファー層に、T1が2.7eV以上の有機化合物を含むことにより、該有機化合物への発光材料からの励起子拡散が抑制され、発光効率を一層向上させることができる点で好ましい。
特に、発光材料が青色燐光発光材料である場合には、そのT1が2.6eV前後よりも大きいことから、三重項励起子の拡散を抑制するためには、有機化合物のT1はそれ以上、即ち、2.7eV以上であることが好ましい。バッファー層にT1が2.7eV以上の有機化合物を含むことにより、青色燐光発光材料を用いる場合においても発光効率を一層向上させることができる。
本発明において、バッファー層に含まれる有機化合物のT1は、2.7eV以上であるが、その上限値としては、3.7eVであることが好ましい。
【0041】
前記バッファー層に含まれる有機化合物は、上記条件を満足する化合物であれば特に限定されることはないが、安定性の観点から、芳香族炭化水素が好ましく、下記一般式(1)又は一般式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0042】
一般式(1) L−(Ar)m
【0043】
一般式(1)中、Arは下記一般式(2)で表される基、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。
【0044】
【化3】

【0045】
一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。
【0046】
【化4】

【0047】
一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。
【0048】
まず、一般式(1)について詳細に説明する。
一般式(1)に含まれるLは、3価以上のベンゼン骨格を表す。Arは一般式(2)で表される基を表し、mは3以上の整数を表す。
Lで表されるベンゼン骨格としては、3価又は4価のベンゼン骨格であることが好ましい。
mは好ましくは3以上6以下であり、さらに好ましくは3又は4である。
【0049】
次に、一般式(2)で表される基について説明する。
一般式(2)に含まれるR1は置換基を表す。ここで置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、プロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル、アントラニルなどが挙げられる)、
【0050】
アミノ基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜10であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノなどが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる)、ヘテロアリールオキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる)、
【0051】
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜30、より好ましくは炭素数7〜20、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる)、
【0052】
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30、より好ましくは炭素数0〜20、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオなどが挙げられる)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる)、
【0053】
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、
【0054】
ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子として、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子などを有し、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、チエニル、ピペリジル、モルホリノ、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル基、アゼピニル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは炭素数3〜24であり、例えばトリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。
【0055】
一般式(2)のR1で表される置換基としては、好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20アルケニル基、炭素数2〜20アルキニル基、炭素数6〜30アリール基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアシルオキシ基、炭素数7〜30のアリールオキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜30のアリールチオ基、炭素数5〜30のヘテロ環基、炭素数3〜30のシリル基であり、より好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30アリール基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜30のアリールオキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜30のシリル基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜30アリール基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアシル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数3〜30のシリル基である。
【0056】
1は、複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよく、これらは互いに結合して環を形成してもよい。また、R1は更に置換されてもよい。
【0057】
n1は0から9の整数を表す。n1として好ましくは0から6の整数であり、さらに好ましくは0から3である。
【0058】
一般式(1)で表される化合物におけるL、Ar、及びmの組み合わせとしては、それぞれの好ましい態様として上記したものの組み合わせであること好ましい。
【0059】
続いて、一般式(3)について説明する。
一般式(3)におけるR2は置換基を表す。R2で表される置換基は、前記R1で表される置換基と同義であり好ましい態様も同様である。
n2は0から20の整数を表す。n2の好ましい範囲は0から10であり、さらに好ましくは0から5である。
【0060】
以下に、一般式(1)又は一般式(3)の化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0061】
【化5】

【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
【化11】

【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
前記バッファー層に含まれる有機化合物は、1種単独で含まれてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。前記バッファー層に含まれる有機化合物の含有量としては、2質量%以上99.5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは5質量%以上99質量%以下である。
【0074】
また、本発明において、バッファー層が複数層含まれる場合(即ち、発光層が3層以上である場合)には、複数含まれるバッファー層は、同一の構成成分を含む層であってもよいし、異なる構成成分を含むバッファー層を複数含んでいてもよい。
【0075】
また、本発明におけるバッファー層は、発光素子の駆動電圧を最適な範囲に設定するために、正孔輸送材料又は電子輸送材料を含むことも好ましい。
バッファー層に含まれる正孔輸送材料又は電子輸送材料として用いられる材料としては、特に限定されることはなく、公知の材料から適宜選択して使用することができる。例えば、後述する特許公報等に記載の材料を用いることができる。
正孔輸送材料又は電子輸送材料のバッファー層中における含有量としては、0.5質量%以上98質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1質量%以上95質量%以下である。
【0076】
本発明におけるバッファー層の膜厚は、発光素子の駆動電圧を適正な範囲に設定するために、0.5nm以上20nm以下であることが好ましく、0.5nm以上15nm以下がさらに好ましく、0.5nm以上10nm以下が特に好ましい。
【0077】
本発明の有機電界発光素子における、支持基板、電極、各有機化合物層、その他の層、等の他の構成要素については、例えば、特開2004−221068号公報の[0013]から[0082]、特開2004−214178号公報の[0017]から[0091]、特開2004−146067号公報の[0024]から[0035]、特開2004−103577号公報の[0017]から[0068]、特開2003−323987号公報の[0014]から[0062]、特開2002−305083号公報の[0015]から[0077]、特開2001−172284号公報の[0008]から[0028]、特開2000−186094号公報の[0013]から[0075]、特表2003−515897号公報の[0016]から[0118]等に記載のものが本発明においても同様に適用することができる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の有機EL素子における正孔注入層又は正孔輸送層には、素子内の電荷のバランスを調整したり、駆動電圧を調節するために、電子受容性ドーパントを含有させることができる。正孔注入層又は正孔輸送層に導入しうる電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でもよいし、有機化合物でもよい。
【0079】
具体的には、無機化合物の場合には、塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153号、特開平11−111463号、特開平11−251067号、特開2000−196140号、特開2000−286054号、特開2000−315580号、特開2001−102175号、特開2001−160493号、特開2002−252085号、特開2002−56985号、特開2003−157981号、特開2003−217862号、特開2003−229278号、特開2004−342614号、特開2005−72012号、特開2005−166637号、特開2005−209643号等に記載の化合物を好適に用いることが出来る。
【0080】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの含有量は、材料の種類によって異なるが、正孔注入層材料又は正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
【0081】
本発明の有機EL素子における電子注入層又は電子輸送層には、素子内の電荷のバランスを調整したり、駆動電圧を調節するために、電子供与性ドーパントを含有させることができる。電子注入層又は電子輸送層に導入しうる電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153号、特開2000−196140号、特開2003−68468号、特開2003−229278号、特開2004−342614号等に記載の材料を用いることができる。
【0082】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子注入層材料又は電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0083】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明の有機電界発光素子について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0085】
[比較例1]
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。Baytron P(PEDOT−PSS溶液(ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸ドープ体)/バイエル社製)をUV−オゾン処理したITO基板上にスピンコートし(4000rpm、40sec)、120℃にて10分、真空乾燥した。PEDOT−PSS層の膜厚は40nmであった。
このPEDOT−PSS層上に、真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
【0086】
なお、実施例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.2nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0087】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
CBP=92質量%、Firpic=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第2発光層)
CBP=92質量%、Btp2Ir(acac)=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第3発光層)
CBP=92質量%、Ir(ppy)3=8質量%の混合層:膜厚10nm
(電子輸送層)
BCP:膜厚10m
【0088】
各発光層において用いた発光材料のT1は以下の通りである。
Firpic; 2.7eV
Btp2Ir(acac); 2.0eV
Ir(ppy)3; 2.5eV
【0089】
以下に、上記で用いた、PEDOT−PSS、NPD、CBP、Firpic、Btp2Ir(acac)、Ir(ppy)3、BCPの構造を示す。
【0090】
【化17】

【0091】
【化18】

【0092】
【化19】

【0093】
続いて、電子輸送層上にパターニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを0.1nm/秒の蒸着速度にて0.5nm蒸着し電子注入層とした。最後に金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
このものを、大気に触れさせること無くアルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ製)を用いて封止した。
以上のようにして、比較例1の発光素子を作製した。
【0094】
[実施例1]
有機化合物層の層構成を下記のように変更した以外は、比較例1の発光素子と同様の方法で、実施例1の発光素子を作製した。
【0095】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
CBP=92質量%、Firpic=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第1バッファー層)
化合物A=50質量%、CBP=50質量%の混合層:膜厚3nm
(第2発光層)
CBP=92質量%、Btp2Ir(acac)=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第2バッファー層)
化合物A=50質量%、CBP=50質量%の混合層:膜厚3nm
(第3発光層)
CBP=92質量%、Ir(ppy)3=8質量%の混合層:膜厚10nm
(電子輸送層)
BCP:膜厚10m
【0096】
以下に、バッファー層に用いた化合物A(前記の例示化合物(1))の構造を示す。
【0097】
【化20】

【0098】
<評価>
実施例1及び比較例1で得られた発光素子を用いて、以下の方法により、発光効率、発光輝度、及び色度について評価した。
東洋テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し発光させて、発光性能を測定した。その時の最高輝度をLmaxとし、さらに1000Cd/m2時の発光効率を外部量子効率(η1000)とした。また、その時の発光スペクトルより、CIE色度座標を求めた。得られた結果を下記表1に示す。
【0099】
また、前記バッファー層に含まれる有機化合物(化合物A)、及びCBPのEg、T1は、下記の方法により確認した。結果を下記表2に示す。
Egは、化合物単独の蒸着膜の吸収スペクトルの吸収端より求めた。
T1は、化合物のサンプルを液体窒素温度下に冷却し、燐光測定して、その立ち上がり波長から求めた。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
[比較例2]
有機化合物層の層構成を下記のように変更する以外は、比較例1と同様の方法により、比較例2の発光素子を作製した。
【0103】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
CBP=92質量%、Firpic=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第1バッファー層)
BCP:膜厚3nm
(第2発光層)
CBP=92質量%、Btp2Ir(acac)=8質量%の混合層:膜厚10nm
【0104】
[実施例2]
有機化合物層の構成を下記のように変更した以外は、比較例2の発光素子と同様の方法により、実施例2の発光素子を作製した。
【0105】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
CBP=92質量%、Firpic=8質量%の混合層:膜厚10nm
(第1バッファー層)
化合物A=75質量%、BCP=25質量%の混合層:膜厚3nm
(第2発光層)
CBP=92質量%、BtpIr(acac)=8質量%の混合層:膜厚10nm
【0106】
<評価>
得られた実施例2及び比較例2の発光素子を用いて、実施例1と同様にして評価した。
得られた結果を表3に、化合物A、CBP、及びBCPのEg及びT1を表4に示す。
【0107】
【表3】

【0108】
【表4】

【0109】
[比較例3]
0.5mm厚み、2.5cm角のITO膜を有するガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
このITO基板上に真空蒸着法にて以下の有機化合物を順次蒸着した。
【0110】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
1−[3,5−ジ(1−ピレニル)−フェニル]−ピレン:膜厚24nm
(第2発光層)
CBP=86質量%、Ir(ppy)3=14質量%の混合層:膜厚24nm
(第3発光層)
CBP=97質量%、ビス(2-フェニルキノリン)アセチルアセトナートイリジウム=3質量%の混合層:膜厚24nm
(電子輸送層)
2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]:膜厚24nm
【0111】
この有機化合物層の上にパタ−ニングしたマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、蒸着装置内でマグネシウム:銀=10:1(モル比)を0.25μm蒸着し、さらに銀を0.3μm蒸着して陰極を設けた。陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリ−ド線を出して発光素子を作製した。該素子を窒素ガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ガラス製の封止容器で紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ製、XNR5493)を用いて封止した。
以上のようにして比較例3の発光素子を作製した。
【0112】
[実施例3]
有機化合物層の層構成を下記のように変更した以外は、比較例3と同様の方法により、実施例3の発光素子を作製した。
【0113】
(正孔輸送層)
NPD:膜厚40nm
(第1発光層)
1−[3,5−ジ(1−ピレニル)−フェニル]−ピレン:膜厚24nm
(第1バッファー層)
化合物A=20質量%、CBP=80質量%の混合層:膜厚7nm
(第2発光層)
CBP=86質量%、Ir(ppy)3=14質量%の混合層:膜厚24nm
(第2バッファー層)
化合物A=20質量%、CBP=80質量%の混合層:膜厚7nm
(第3発光層)
CBP=97質量%、ビス(2-フェニルキノリン)アセチルアセトナートイリジウム=3質量%の混合層:膜厚24nm
(電子輸送層)
2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]:膜厚24nm
【0114】
以下に、1−[3,5−ジ(1−ピレニル)−フェニル]−ピレン及びビス(2−フェニルキノリン)アセチルアセトナートイリジウム、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス[3−(2−メチルフェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン]の構造を示す。
【0115】
【化21】

【0116】
<評価>
得られた実施例4及び比較例4の発光素子を用いて、実施例1と同様にして評価した。
得られた結果を表5に示す。
【0117】
【表5】

【0118】
[実施例4]
上記実施例1、実施例2、及び実施例3において、化合物A(例示化合物(1))の代わりに、前記の例示化合物(4)、(11)、(20)、(35)、(44)を、それぞれ用いても、同様に良好な結果を得ることができる。例示化合物(4)、(11)、(20)、(35)、(44)のEg、T1については下記表6に示した。
【0119】
【表6】

【0120】
以上の結果より、2層以上の相異なる発光層の間にバッファー層を有し、バッファー層にEgが4.0eV以上である有機化合物を含む実施例の発光素子は、バッファー層を有さない、或いは、バッファー層に本発明に係る有機化合物を含まない比較例の発光素子に比べ、発光輝度、発光効率、色度の何れにおいても、著しく優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の発光素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の分野に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、少なくとも2層の発光層を有する有機電界発光素子であって、
該少なくとも2層の発光層の各々が、相異なる発光材料を含み、該発光材料の少なくとも1種は燐光発光材料であり、
該少なくとも2層の発光層における各々の発光層間にバッファー層を有し、該バッファー層に最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Eg)が4.0eV以上である有機化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記有機化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T1)が、2.7eV以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記バッファー層が、更に、正孔輸送材料又は電子輸送材料を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記バッファー層の膜厚が、0.5nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記バッファー層に含まれる正孔輸送材料又は電子輸送材料の濃度が、1質量%以上95質量%以下であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物が、下記一般式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
一般式(1) L−(Ar)m
[一般式(1)中、Arは下記一般式(2)で表される基を表し、Lは3価以上のベンゼン骨格を表し、mは3以上の整数を表す。]
【化1】

[一般式(2)中、R1は置換基を表し、R1が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n1は0〜9の整数を表す。]
【請求項7】
前記有機化合物が、下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の有機電界発光素子。
【化2】

[一般式(3)中、R2は置換基を表し、R2が複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。n2は0〜20の整数を表す。]
【請求項8】
白色発光であることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の有機電界発光素子。

【公開番号】特開2006−302864(P2006−302864A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376274(P2005−376274)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】