説明

有機電界発光素子

【課題】高い発光効率と高い駆動耐久性とを両立し、かつ低電圧駆動可能な有機電界発光素子を提供すること。
【解決手段】一対の電極間に発光層及び該発光層に隣接するバッファー層を少なくとも含む複数の有機化合物層を有してなり、前記発光層は2種以上のホスト材料と少なくとも1種の発光材料とを含有し、且つ、前記バッファー層は少なくとも1種の前記ホスト材料と少なくとも1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料とを含有することを特徴とする有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルカラ−ディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源やプリンタ−等の光源アレイ等に有効に利用できる有機電界発光素子(以下、適宜「有機EL素子」又は「素子」と称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、発光層又は発光層を含む複数の有機化合物層と、該有機化合物層を挟んだ対向電極とから構成されている。有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが有機化合物層において再結合し、生成した励起子からの発光、及び/又は、前記励起子からエネルギー移動して生成した他の分子の励起子からの発光を利用した、発光を得るための素子である。
【0003】
これまで有機EL素子は、機能を分離した積層構造を採ることにより、輝度及び素子効率が大きく改善され発展してきた。例えば、正孔輸送層と発光兼電子輸送層とを積層した二層積層型素子や、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを積層した三層積層型素子や、正孔輸送層と発光層と正孔阻止層と電子輸送層とを積層した四層積層型素子がよく用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、有機EL素子の実用化には未だ多くの課題が残されている。特に、連続駆動時の品質低下、即ち、非発光あるいは輝度低下領域(所謂ダークスポット)の発生と成長は最大の課題である。
【0005】
この駆動時の輝度劣化を改善するため、正孔輸送材料と電子輸送材料とからなる混合領域を設けて、素子中の有機層界面をなくす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、素子中の有機層界面をなくすことにより、駆動時に界面に電荷が蓄積することを抑制し輝度劣化を防止している。しかしながら、混合領域と隣接する領域の境界においては、混合領域から漏れ出た正孔が電子輸送材料に注入されたり、同じく電子が正孔輸送材料に注入されたりする可能性があり、正孔輸送材料のアニオン状態からの劣化や電子輸送材料のカチオン状態からの劣化を招くことが懸念される。
【0006】
また、電荷輸送材料のみからなるキャリア輸送領域と混合領域との間に濃度勾配を形成する領域を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながらこの方法では混合領域から漏れ出た電荷が濃度勾配領域で再結合し、発光効率の低下や電荷輸送材料の励起状態からの劣化を生じる可能性がある。
【非特許文献1】サイエンス(Science),267巻,3号,1995年,1332頁
【特許文献1】特開2002−305085号公報
【特許文献2】特開2002−313584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い発光効率と高い駆動耐久性とを両立し、かつ低電圧駆動可能な有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、2種以上のホスト材料を含有する発光層と該発光層に隣接するバッファー層を有し、該バッファー層に発光層に含有されるホスト材料の少なくとも一種と電荷捕獲機能を有するドーパント材料とを含有させた有機電界発光素子により、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、前記課題は、下記<1>〜<6>の有機電界発光素子により解決される。
<1> 一対の電極間に発光層及び該発光層に隣接するバッファー層を少なくとも含む複数の有機化合物層を有してなり、前記発光層は2種以上のホスト材料と少なくとも1種の発光材料とを含有し、且つ、前記バッファー層は少なくとも1種の前記ホスト材料と少なくとも1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料とを含有することを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記バッファー層が、1種のホスト材料と、1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料と、を含有することを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 前記バッファー層が、ホスト材料A及びホスト材料Bからなる2種のホスト材料を含有し、該バッファー層中におけるホスト材料Aの含有比率が、該バッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向に、ホスト材料A:ホスト材料B=x:y(x、yは正の整数)になるまで徐々に増加する層であることを特徴とする<1>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記有機化合物層が、前記発光層に含まれない電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を含むことを特徴とする<1>乃至<3>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記発光材料が、燐光発光材料であることを特徴とする<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記電荷捕獲機能を有するドーパント材料が、発光材料であることを特徴とする<1>乃至<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い発光効率と高い駆動耐久性とを両立し、かつ低電圧駆動可能な有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の有機EL素子について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明の有機EL素子は、一対の電極間に発光層及び該発光層に隣接するバッファー層を少なくとも含む複数の有機化合物層を有してなり、前記発光層は2種以上のホスト材料と少なくとも1種の発光材料とを含有し、且つ、前記バッファー層は少なくとも1種の前記ホスト材料と少なくとも1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料(以下、単に「ドーパント材料」と称する場合がある。)とを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明の有機EL素子において、駆動耐久性が向上する原因は未だ明確ではないが、以下のメカニズムが考えられる。
特開2002−305085号公報に記載されたような、電子輸送材料と正孔輸送材料との混合領域を有する有機EL素子においては、発光層に注入された電子及び正孔の大部分は、発光層中で再結合し発光に寄与するが、一部の電子及び正孔はそれぞれ注入された逆側の隣接層に漏れ出ていると推測される。この場合、陽極側に漏れ出た電子は正孔輸送材料へ注入されアニオン状態を形成し、陰極側に漏れ出た正孔は電子輸送材料へ注入されカチオン状態を形成する。同公報に記載されるような素子においては、このようにして生成した正孔輸送材料のアニオン状態からの劣化、同じく電子輸送材料のカチオン状態からの劣化により、素子の駆動電圧の上昇、発光効率の低下などが生じていると推測される。
【0014】
それに対し本発明の有機EL素子は、発光層に隣接するバッファー層がドーパント材料を含有することにより、当該ドーパント材料が、発光層から漏れ出た電子又は正孔を捕獲するものと推測される。このため、発光層の陽極側に存在する正孔輸送材料がアニオン状態に、及び/又は、発光層の陰極側に存在する電子輸送材料がカチオン状態になることを効果的に抑制することでき、延いては、素子の駆動耐久性を改善することができるものと考えられる。更に、電荷捕獲機能を有する材料が発光材料である場合には、漏れ出た電荷を捕獲し再結合させることにより電荷捕獲機能を有する材料を発光させることができ、電荷の漏れによる発光効率の低下を抑制できると考えられる。
【0015】
また、本発明の有機EL素子において、駆動電圧の低下効果が発揮される要因としては、発光層に隣接するバッファー層が、発光層に含有される2種以上のホスト材料のうちの少なくとも1種を含有することにより、隣接層から発光層への電荷注入障壁を低減することができ、それにより素子の駆動電圧を下げることができるものと推測される。
【0016】
本発明の有機EL素子の構成について詳細に説明する。
本発明の有機EL素子は、一対の電極(陽極と陰極)間に、発光層及び該発光層に隣接するバッファー層を少なくとも含む複数の有機化合物層を有してなる。更に、電極と発光層との間に電荷輸送層を有することが好ましく、具体的には、陽極と発光層との間に正孔輸送層を、及び/又は、陰極と発光層との間に電子輸送層を有することが好ましい。
本発明における電荷輸送層としては、電極からの電荷注入制御と電荷輸送性最適化の観点から、発光層に含まれない電荷輸送材料を含有する層であることが好ましい。
【0017】
有機EL素子の性質上、一対の電極のうちの少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
発光層は、2種以上のホスト材料と少なくとも1種の発光材料とを含有することを要する。該2種以上のホスト材料としては、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料とを含むことが好ましい。
バッファー層は、発光層に含有される2種以上のホスト材料の中の少なくとも1種と、電荷捕獲機能を有するドーパント材料と、を含有する層であり、電荷輸送層から電荷を受け取り、発光層へ注入する機能と、発光層から漏れ出た電荷を捕獲する機能とを少なくとも有する。バッファー層は、発光層の陽極側に形成される場合には正孔輸送性バッファー層として、発光層の陰極側に形成される場合には電子輸送性バッファー層として形成されることが好ましい。
電極、発光層、バッファー層等の有機EL素子を構成する各要素の詳細については後述する。
【0018】
本発明における有機化合物層の積層の形態としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。更に、正孔輸送層と発光層との間に正孔輸送性バッファー層、及び/又は、発光層と電子輸送層との間に、電子輸送性バッファー層を有することが好ましい。また、陽極と正孔輸送層との間に正孔注入層を、同様に陰極と電子輸送層との間に電子注入層を設けてもよい。
【0019】
本発明の有機電界発光素子における有機化合物層の好適な態様としては、陽極側から順に、少なくとも、下記(1)〜(3)の層構成を有する態様が挙げられるが、これらの限定されるものではない。
(1) 正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねてもよい)、正孔輸送性バッファー層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねてもよい)を有する態様。
(2) 正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねてもよい)、発光層、電子輸送性バッファー層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねてもよい)を有する態様。
(3) 正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねてもよい)、正孔輸送性バッファー層、発光層、電子輸送性バッファー層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねてもよい)を有する態様。
【0020】
次に、本発明の発光素子を構成する要素について、詳細に説明する。
【0021】
<有機化合物層>
本発明における有機化合物層について説明する。
本発明における有機化合物層は、発光層及び該発光層に隣接するバッファー層(正孔輸送性バッファー層、及び/又は、電子輸送性バッファー層)を少なくとも含み、発光層以外の他の有機化合物層としては、正孔注入層、正孔輸送層、正孔輸送性バッファー層、電子輸送性バッファー層、電子輸送層、電子注入層等の各層が挙げられる。
なお、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0022】
−有機化合物層の形成−
本発明の有機EL素子において、有機化合物層を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、転写法、印刷法、塗布法、インクジェット法、スプレー法等いずれによっても好適に形成することができる。
【0023】
(バッファー層)
本発明におけるバッファー層は、電荷輸送層から電荷を受け取り、発光層へ注入する機能と、発光層から漏れ出た電荷を捕獲する機能とを、少なくとも有する層であるが、他の機能を併有していてもよい。
【0024】
バッファー層は、発光層に含有される2種以上のホスト材料の中の少なくとも1種と、少なくとも1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料とを含有することを要する。
【0025】
バッファー層は、発光層の陽極側に隣接して形成される場合には、正孔輸送性バッファー層として形成されることが好ましい。正孔輸送性バッファー層は、発光層に含有される正孔輸送性ホスト材料を少なくとも一つ含有することが好ましい。また、正孔輸送性バッファー層は、発光層への正孔注入を促進する機能、及び/又は、電子をブロックする機能を有することが好ましい。
【0026】
バッファー層は、発光層の陰極側に隣接して形成される場合には、電子輸送性バッファー層として形成されることが好ましい。電子輸送性バッファー層は、発光層に含有される電子輸送性ホスト材料を少なくとも一つ含有することが好ましい。また、電子輸送性バッファー層は、発光層への電子注入を促進する機能、及び/又は、正孔をブロックする機能を有することが好ましい。
【0027】
更に、正孔輸送性バッファー層、及び/又は、電子輸送性バッファー層は、発光層で生成する励起子をブロックする機能を有することが好ましい。
尚、バッファー層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0028】
バッファー層が含有するホスト材料としては、発光層に含有されるホスト材料として後述する、正孔輸送性ホスト又は電子輸送性ホストを好適に用いることができる。
【0029】
バッファー層は、電荷捕獲機能を有するドーパント材料を少なくとも1種含有することを要する。
本発明における電荷捕獲機能を有するドーパント材料とは、正孔捕獲の場合はホスト材料のイオン化ポテンシャルより低いイオン化ポテンシャルを有するドーパント材料であり、電子捕獲の場合はホスト材料の電子親和力より高い電子親和力を有するドーパント材料である。
本発明におけるドーパント材料としては、正孔捕獲機能、電子捕獲機能、あるいはその両方を有することが好ましい。
【0030】
正孔輸送性バッファー層は、電子捕獲機能を有するドーパント材料を少なくとも一つ含有することが好ましい。電子輸送性バッファー層は、正孔捕獲機能を有するドーパント材料を少なくとも一つ含有することが好ましい。
尚、バッファー層は2種類以上のドーパント材料を含有してもよい。
【0031】
バッファー層に含有されるドーパント材料として具体的には、アリールアミン系材料、チオフェン誘導体、後述する蛍光発光性ドーパント材料、燐光発光性ドーパント材料、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体を含む金属錯体材料などが好適に挙げられる。
【0032】
本発明におけるドーパント材料としては、上記した中でも、発光効率の更なる向上の観点から、発光材料であることが好ましい。
ドーパント材料として用いられる発光材料としては、発光層が含有する発光材料として後述する発光性ドーパントなどが好適に用いられる。
【0033】
バッファー層中のドーパント材料は、バッファー層を形成する全化合物質量に対して、0.1〜30質量%含有されることが好ましく、1〜15質量%含有されることが更に好ましく、2〜12質量%含有されることが特に好ましい。
【0034】
バッファー層中に含有されるホスト材料に対するドーパント材料の含有率としては、0.1〜40質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、2〜15質量%が更に好ましい。
【0035】
バッファー層の厚さは、駆動電圧低下、発光効率向上、及び耐久性向上の観点から、0.1nm以上20nm以下であることが好ましく、0.5nm以上15nm以下であることがより好ましく、1nm以上10nm以下であることが特に好ましい。
【0036】
本発明におけるバッファー層の一つの好適な態様は、1種のホスト材料と1種のドーパント材料とを含有する態様である(以下、本態様のバッファー層を「バッファー層(A)」とする。)。
バッファー層(A)が、正孔輸送性バッファー層である場合は、1種の正孔輸送性ホストと1種のドーパント材料とが含有されることが好ましい。また、バッファー層が、電子輸送性バッファー層である場合は、1種の電子輸送性ホストと1種のドーパント材料とが含有される態様であることが好ましい。
本発明におけるバッファー層を、バッファー層(A)にすることにより、発光層からバッファー層に漏れ出た電荷をドーパント材料により捕獲することができる。これによりバッファー層中のホスト材料が電荷により劣化するのを効果的に抑制することができ、結果的に素子の駆動耐久性を改善することができる。
【0037】
本発明におけるバッファー層の他の好適な態様は、ホスト材料A及びホスト材料Bからなる2種のホスト材料を含有し、バッファー層中におけるホスト材料Aの含有比率が、バッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向に、ホスト材料A:ホスト材料B=x:y(x、yは正の整数)になるまで徐々に増加する態様である(以下、本態様のバッファー層を「バッファー層(B)」とする。)。
本発明におけるバッファー層を、バッファー層(B)にすることにより、発光層/バッファー層の界面に電荷が溜まることなく、発光層からの漏れ電荷をバッファー層中で速やかに捕獲することができる。更に、発光層/正孔輸送性バッファー層界面で電子に対する注入障壁がある場合、発光層/正孔輸送性バッファー層界面で電子が溜まり、正孔輸送性バッファー層中のホスト材料の劣化を促進する可能性がある。また、発光層/電子輸送性バッファー層界面で正孔に対する注入障壁がある場合は、発光層/電子輸送性バッファー層界面に正孔が溜まり、電子輸送性バッファー層中のホスト材料の劣化を促進する可能性がある。本態様では発光層/バッファー層界面の電荷注入障壁を低減させることにより、バッファー層中での漏れ電荷捕獲をより効果的に行うことができる。
【0038】
バッファー層(B)としては、(1)ホスト材料Aが電子輸送性ホスト材料であり、ホスト材料Bが正孔輸送性ホスト材料である態様、又は、(2)ホスト材料Aが正孔輸送性ホスト材料であり、ホスト材料Bが電子輸送性ホスト材料である態様、が挙げられる。バッファー層(B)は、上記(1)及び(2)のいずれか一方のみを有していてもよいし、双方を有していてもよい。上記(1)及び(2)の双方を有することがより好ましい。
バッファー層(B)が、上記(1)の態様である場合には、発光層の陽極側に形成されることが好ましく、上記(2)の態様である場合には、発光層の陰極側に形成されることが好ましい。
【0039】
ここで、ホスト材料Aの含有比率が「徐々に増加する」とは、ホスト材料Bに対するホスト材料Aの含有量が、バッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向に増加することを意味する。増加は一次関数的であってもよく、ステップ関数的であってもよい。一次関数的に増加していることが好ましい。
【0040】
バッファー層(B)におけるホスト材料A及びホスト材料Bの含有比率は、バッファー層(B)の最も発光層側において、ホスト材料A:ホスト材料B=x:y(但し、x、yは正の整数)である。x及びyは任意に設定しうるが、ホスト材料A:ホスト材料B=1:1であることが好ましい。
バッファー層(B)の最も電極側におけるホスト材料A及びホスト材料Bの含有比率は、ホスト材料A:ホスト材料B=0:1であってもよいし、ホスト材料Bよりも小さい含有比率でホスト材料Aが存在していてもよい。
【0041】
また、バッファー層(B)中におけるドーパント材料は、バッファー層(B)の全体に亘って一様に存在していてもよいし、バッファー層(B)中に偏在していてもよい。ドーパント材料が、バッファー層(B)中に偏在する態様としては、例えば、ホスト材料Aの増加に伴ってバッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向に徐々に増加する態様などが挙げられる。
【0042】
なお、バッファー層(B)におけるホスト材料Aの含有比率は、バッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向にのみ徐々に増加するものであり、水平方向についてはこのような変化はなく一定である。
【0043】
バッファー層(B)は、例えば、以下のように形成できるが、これに限定されるものではない。
真空蒸着法でバッファー層を形成する方法について説明する。発光層より下層にバッファー層(B)を形成する場合は、ホスト材料Bの蒸着をある一定の蒸着速度で開始し、ホスト材料Bの蒸着速度を一定に保ったまま、ホスト材料Aの蒸着速度を徐々に上げていく。バッファー層の膜厚が目標値に到達した時点で、ホスト材料A及びホスト材料Bの含有比率がホスト材料A:ホスト材料B=x:yとなるように、ホスト材料Aの蒸着速度を調節する。
発光層より上層にバッファー層を形成する場合は、ホスト材料A及びホスト材料Bの含有比率がホスト材料A:ホスト材料B=x:yとなるようにそれぞれのホスト材料の蒸着速度を調節して蒸着を開始し、ホスト材料Bの蒸着速度を一定に保ったまま、ホスト材料Aの蒸着速度を徐々に下げていく。バッファー層の膜厚が目標値に到達した時点で、ホスト材料A:ホスト材料B=0:1になっているか、ホスト材料Aの含有比率がホスト材料Bよりも小さくなるようにホスト材料Aの蒸着速度を調節する。
【0044】
(発光層)
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層又は正孔輸送性バッファー層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、電子輸送層又は電子輸送性バッファー層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
本発明における発光層は、2種以上のホスト材料と、少なくとも一種の発光材料(以下、適宜「発光性ドーパント」とも称する。)とを含む。
また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。発光層が複数の場合であっても、発光層の各層に、2種以上のホスト化合物と少なくとも一種の発光性ドーパントとを含有することが好ましい。
【0045】
本発明における発光層が含有する2種以上のホスト化合物と少なくとも一種の発光性ドーパントとしては、一重項励起子からの発光(蛍光)が得られる蛍光発光性ドーパントと2種以上のホスト材料との組み合せでも、三重項励起子からの発光(燐光)が得られる燐光発光性ドーパントと2種以上のホスト材料との組み合せでもよいが、中でも、発光効率の観点から、燐光発光性ドーパントと2種以上のホスト材料との組み合せであることが好ましい。
本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上の発光性ドーパントを含有することができる。
【0046】
−発光性ドーパント−
本発明における発光性ドーパントとしては、燐光発光材料、蛍光発光材料等いずれも用いることができる。発光層に含有される発光材料(発光性ドーパント)としては、燐光発光材料(以下、「燐光発光性ドーパント」とも称する。)であることが好ましい。
【0047】
=燐光発光性ドーパント=
前記燐光発光性ドーパントとしては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、銅、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
【0048】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは炭素数6〜30、更に好ましく炭素数6〜20であり、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、ナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数5〜30、より好ましくは炭素数6〜30、更に好ましく炭素数6〜20であり、特に好ましくは6〜12であり、例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、フェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(好ましくは炭素数2〜30、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜16であり、例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、フェノラト配位子など)、シリルオキシ配位子(好ましくは炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、更に好ましくは炭素数3〜20であり、例えば、トリメチルシリルオキシ配位子、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ配位子、トリフェニルシリルオキシ配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子、リン配位子(例えば、トリフェニルホスフィン配位子など)、チオラト配位子(例えば、フェニルチオラト配位子など)、ホスフィンオキシド配位子(例えば、トリフェニルホスフィンオキシド配位子など)であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
【0049】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては、例えば、米国特許第6,303,238B1号、同6,097,147号の各明細書、国際公開第00/57676号、同00/70655号、同01/08230号、同01/39234A2号、同01/41512A1号、同02/02714A2号、同02/15645A1号、同02/44189A1号の各パンフレット、特開2001−247859、特開2002−302671公報、特開2002−117978公報、特開2003−133074公報、特開2002−235076公報、特開2003−123982公報、特開2002−170684公報、欧州特許第1211257号明細書、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679の各公報、特開2005−310733公報、特願2005−75340、特願2005−75341の各明細書等の特許文献に記載の燐光発光化合物などが挙げられる。
中でも、更に好ましい発光性ドーパントとしては、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が好ましい。
【0050】
=蛍光発光性ドーパント=
前記蛍光性の発光性ドーパントとしては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、発光性ドーパントの具体例としては例えば下記の化合物(D−1〜D−25)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化1】

【0053】
【化2】

【0054】
【化3】

【0055】
【化4】

【0056】
上記の中でも、本発明で用いる発光性ドーパントとしては、発光効率、耐久性の観点からD−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−9、D−10、D−11、D−12、D−13、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、D−24、D−25が好ましく、D−2、D−3、D−4、D−5、D−6、D−7、D−8、D−12、D−14、D−15、D−16、D−21、D−22、D−23、D−24がより好ましく、D−21、D−22、D−23、D−24が更に好ましい。
【0057】
発光層中の発光性ドーパントは、発光層中に一般的に発光層を形成する全化合物質量に対して、0.1〜30質量%含有されるが、耐久性、発光効率の観点から1〜15質量%含有されることが好ましく、2〜12質量%含有されることがより好ましい。
【0058】
発光層の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、1nm〜500nmであるのが好ましく、中でも、発光効率の観点で、5nm〜200nmであるのがより好ましく、5nm〜100nmであるのが更に好ましい。
【0059】
−ホスト材料−
発光層には2種以上のホスト材料を用いることが必要である。2種以上のホスト材料としては、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト材料(正孔輸送性ホスト)及び電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト材料(電子輸送性ホスト)を用いることができる。
【0060】
=正孔輸送性ホスト=
本発明に用いられる発光層内の正孔輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.3eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.1eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上5.8eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.8eV以下であることが更に好ましい。
【0061】
このような正孔輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピロール、カルバゾール、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマチオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及び、それらの誘導体等が挙げられる。
中でも、カルバゾール誘導体、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン誘導体が好ましく、特に分子内にカルバゾール骨格および/または芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
このような正孔輸送性ホストとしての具体的化合物としては、例えば下記の化合物(H−1〜H−38)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
【化8】

【0066】
【化9】

【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
正孔輸送性ホストとしては、H−1〜H−21が好ましく、H−1〜H−18がより好ましく、H−1、H−4〜H−6、H−12、H−14、H−17、H−18が更に好ましい。
【0070】
=電子輸送性ホスト=
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホストとしては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.2eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.1eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
【0071】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の材料を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
【0072】
電子輸送性ホストとして好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物(A)は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、パラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、パラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、パラジウムイオンである。
【0073】
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社 H.Yersin著 1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」 裳華房社 山本明夫著 1982年発行 等に記載の配位子が挙げられる。
【0074】
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
【0075】
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、キノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、トリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、アントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、ベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げら、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホストの例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
【0076】
このような電子輸送性ホストとしては、具体的には、例えば、以下の化合物(E−1〜E−22)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
電子輸送性ホストとしては、E−1〜E−6、E−8、E−9、E−21、E−22が好ましく、E−3、E−4、E−6、E−8、E−9、E−10、E−21、E−22がより好ましく、E−3、E−4、E−21、E−22が更に好ましい。
【0081】
本発明における発光層において、発光性ドーパントとして燐光発光性ドーパントを用いたとき、該燐光発光性ドーパントの最低三重項励起エネルギーT1(D)と前記複数のホスト化合物の最低励起三重項エネルギーのうち最小のもの前記T1(H)minとが、T1(H)min>T1(D)の関係を満たすことが色純度、発光効率、駆動耐久性の点で好ましい。
【0082】
また、発光層に含有される2種以上のホスト材料の含有量は、特に限定されるものではないが、発光効率、駆動電圧の観点から、発光層を形成する全化合物質量に対して、それぞれ15質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
【0083】
また、発光層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から、10-6cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が好ましく、10-5cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-4cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が特に好ましい。
発光層のキャリア移動度は、後述の前記キャリア輸送層のキャリア移動度より小さいことが発光効率、駆動耐久性の観点から好ましい。
キャリア移動度は、Time of Flight法により測定し、得られた値をキャリア移動度とした。
【0084】
(正孔注入層、正孔輸送層)
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。
正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、ピロール誘導体、カルバゾール誘導体、ピラゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、発光層に含まれない材料を選択することが好ましい。
【0085】
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
なお、本発明の有機EL素子の正孔注入層あるいは正孔輸送層には、電子受容性ドーパントなどを含有させることができる。正孔注入層、あるいは正孔輸送層に導入する電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
【0086】
具体的には、無機化合物としては、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモンなどのハロゲン化金属、五酸化バナジウム、三酸化モリブデンなどの金属酸化物などが挙げられる。
【0087】
有機化合物としては、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなどを好適に用いることができる。
この他にも、特開平6−212153、特開平11−111463、特開平11−251067、特開2000−196140、特開2000−286054、特開2000−315580、特開2001−102175、特開2001−160493、特開2002−252085、特開2002−56985、特開2003−157981、特開2003−217862、特開2003−229278、特開2004−342614、特開2005−72012、特開2005−166637、特開2005−209643等に記載の化合物を好適に用いることができる。
【0088】
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料に対して0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.05質量%〜20質量%であることが更に好ましく、0.1質量%〜10質量%であることが特に好ましい。
上記の電子受容性ドーパントを含有することによって、駆動電圧を低減することができる。
【0089】
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0090】
正孔輸送層のIp(HTL)は、発光層中に含有されるドーパントのIp(D)より小さいことが駆動耐久性の点で好ましい。
正孔輸送層におけるIp(HTL)は、後述するIpの測定方法により測定することができる。
【0091】
また、正孔輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から10-5cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が好ましく、10-4cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-3cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が特に好ましい。
キャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度の測定方法と同様の方法により測定した値を採用する。
また、正孔輸送層のキャリア移動度は、発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性、発光効率の観点から好ましい。
【0092】
(電子注入層、電子輸送層)
電子注入層、電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入され得た正孔を障壁する機能のいずれかを有している層である。
電子注入層、電子輸送層の材料としては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、シロール、フェナントロリン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子注入層、電子輸送層の材料としては、発光層に含まれない材料を選択することが好ましい。
【0093】
電子注入層、電子輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
なお、本発明の有機EL素子の電子注入層あるいは電子輸送層には、電子供与性ドーパントなどを含有させることができる。電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属や還元性有機化合物などが好適に用いられる。金属としては、特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。また、還元性有機化合物としては、例えば、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物などが挙げられる。
この他にも、特開平6−212153、特開2000−196140、特開2003−68468、特開2003−229278、特開2004−342614等の各公報に記載の材料を用いることができる。
【0094】
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
上記電子供与性ドーパントを含有することによって、駆動電圧を低減することができる。
【0095】
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記発光層に隣接したキャリア輸送層が電子輸送層であるとき、該電子輸送層のEa(ETL)は前記発光層中に含有されるドーパントのEa(D)より大きいことが駆動耐久性の点で好ましい。
【0096】
Ea(ETL)は、後述するEaの測定方法と同様の方法により測定した値を用いる。
【0097】
また、電子輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10-7cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下であり、中でも、発光効率の点から、10-5cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が好ましく、10-4cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が更に好ましく、10-3cm2・V-1・s-1以上10-1cm2・V-1・s-1以下が特に好ましい。
また、電子輸送層のキャリア移動度は、前記発光層のキャリア移動度より大きいことが駆動耐久性の観点から好ましい。該キャリア移動度は、前記正孔輸送層の測定方法と同様に行った。
本発明における発光素子のキャリア移動度において、正孔輸送層、電子輸送層、及び発光層におけるキャリア移動度としては、(電子輸送層≧正孔輸送層)>発光層であることが、駆動耐久性の点で好ましい。
【0098】
(正孔ブロック層)
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明においては、発光層の陰極側に設ける有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。正孔ブロック層の形成位置としては、発光層と電子輸送層の間、また電子輸送性バッファー層が形成される場合には、電子輸送性バッファー層と電子輸送層の間に形成されることが好ましい。
正孔ブロック層は、特に限定されるものではないが、具体的には、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、ピラザボール誘導体等を含有することができる。
また、正孔ブロック層の厚さは、駆動電圧を下げるため、一般的に50nm以下であることが好ましく、1〜50nmであることが好ましく、5〜40nmであることが更に好ましい。
【0099】
(陽極)
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。前述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。
【0100】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物が好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。陽極材料の具体例としては、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、導電性金属酸化物であり、特に、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが好ましい。
【0101】
陽極は、例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、陽極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って、前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、陽極の形成は、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って行うことができる。
【0102】
本発明の有機EL素子において、陽極の形成位置としては特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができる。陽極は、基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0103】
なお、陽極を形成する際のパターニングとしては、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0104】
陽極の厚みとしては、陽極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常、10nm〜50μm程度であり、50nm〜20μmが好ましい。
【0105】
陽極の抵抗値としては、103Ω/□以下が好ましく、102Ω/□以下がより好ましい。陽極が透明である場合は、無色透明であっても、有色透明であってもよい。透明陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
【0106】
なお、透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述があり、ここに記載される事項を本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0107】
(陰極)
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0108】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0109】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0110】
なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されており、これらの広報に記載の材料は、本発明においても適用することができる。
【0111】
陰極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式などの中から、前記した陰極を構成する材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0112】
陰極を形成するに際してのパターニングは、フォトリソグラフィーなどによる化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザーなどによる物理的エッチングによって行ってもよく、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0113】
本発明において、陰極形成位置は特に制限はなく、有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等により形成することができる。
【0114】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、更にITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0115】
(基板)
本発明においては基板を用いることができる。用いられる基板としては、有機化合物層から発せられる光を散乱又は減衰させない基板であることが好ましい。その具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。
例えば、基板としてガラスを用いる場合、その材質については、ガラスからの溶出イオンを少なくするため、無アルカリガラスを用いることが好ましい。また、ソーダライムガラスを用いる場合には、シリカなどのバリアコートを施したものを使用することが好ましい。有機材料の場合には、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、及び加工性に優れていることが好ましい。
【0116】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0117】
基板は、無色透明であっても、有色透明であってもよいが、有機発光層から発せられる光を散乱又は減衰等させることがない点で、無色透明であることが好ましい。
【0118】
基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
熱可塑性基板を用いる場合には、更に必要に応じて、ハードコート層、アンダーコート層などを設けてもよい。
【0119】
(保護層)
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO2、Al23、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe23、Y23、TiO2等の金属酸化物、SiNx、SiNxy等の金属窒化物、MgF2、LiF、AlF3、CaF2等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0120】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法を適用できる。
【0121】
(封止)
さらに、本発明の有機EL素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、シリコーンオイル類が挙げられる。
【0122】
本発明の有機EL素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明における有機EL素子の駆動耐久性は、特定の輝度における輝度半減時間により測定することができる。例えば、KEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させ、初期輝度2000cd/m2の条件で連続駆動試験をおこない、輝度が1000cd/m2になった時間を輝度半減時間T(1/2)として、該輝度半減時間を従来発光素子と比較することにより求めることができる。本発明においてはこの数値を用いた。
【0123】
有機EL素子の重要な特性値として、外部量子効率がある。外部量子効率は、「外部量子効率φ=素子から放出されたフォトン数/素子に注入された電子数」で算出され、この値が大きいほど消費電力の点で有利な素子と言える。
【0124】
また、有機EL素子の外部量子効率は、「外部量子効率φ=内部量子効率×光取り出し効率」で決まる。有機化合物からの蛍光発光を利用する有機EL素子においては、内部量子効率の限界値が25%であり、光取り出し効率が約20%であることから、外部量子効率の限界値は約5%とされている。
【0125】
有機EL素子の外部量子効率としては、消費電力を下げられる点、駆動耐久性を上げられる点で、6%以上が好ましく、12%以上が特に好ましい。
該外部量子効率の数値は、20℃で素子を駆動したときの外部量子効率の最大値、もしくは、20℃で素子を駆動した時の100〜300cd/m2付近(好ましくは200cd/m2)での外部量子効率の値を用いることができる。
本発明においては、東陽テクニカ製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流定電圧をEL素子に印加し発光させ、その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定し、200cd/m2における外部量子効率を算出した値を用いる。
【0126】
また、有機EL素子の外部量子効率は、発光輝度、発光スペクトル、電流密度を測定し、その結果と比視感度曲線から算出することができる。すなわち、電流密度値を用い、入力した電子数を算出することができる。そして、発光スペクトルと比視感度曲線(スペクトル)を用いた積分計算により、発光輝度を発光したフォトン数に換算することができる。これらから外部量子効率(%)は、「(発光したフォトン数/素子に入力した電子数)×100」で計算することができる。
【0127】
本発明におけるイオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)、及び三重項状態準位(T1)について説明する。
イオン化ポテンシャル(Ip)、電子親和力(Ea)、及び三重項状態準位(T1)は、石英上に各材料を真空蒸着法により製膜した単層膜を測定して得られた値である。
イオン化ポテンシャル(Ip)は、紫外線光電子分析装置「AC−1」又は「AC−3」(理研計器(株)製)により、室温・大気下で測定した値で規定する。紫外線光電子分析装置の測定原理については、安達千波矢等著「有機薄膜仕事関数データ集」シーエムシー出版社2004年発行に記載されている。
また、電子親和力(Ea)は、単層膜の吸収スペクトルの長波端からバンドギャップを算出し、これと前記イオン化ポテンシャルの値から電子親和力(Ea)を算出した値で規定する。
最低三重項励起エネルギー(三重項状態準位(T1))は、室温での燐光発光スペクトルを測定し、その短波端から算出した値で規定する。測定は液体窒素冷却温度においても行うことができる。
【0128】
本発明の有機EL素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【0129】
本発明の有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
【実施例】
【0130】
以下に、本発明の有機電界発光素子の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0131】
1.有機電界発光素子の作製
〔実施例1〕
0.5mm厚み、2.5cm角のITOガラス基板(ジオマテック社製、表面抵抗10Ω/□)を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。この透明陽極上に真空蒸着法にて以下の層を蒸着した。本発明の実施例における蒸着速度は特に断りのない場合は0.2nm/秒である。本実施例における蒸着速度は、水晶振動子を用いて測定した。以下に記載の膜厚も水晶振動子を用いて測定したものである。
【0132】
(正孔注入層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm(蒸着速度:0.5nm/秒)
(正孔輸送層)
α−NPD:膜厚30nm(蒸着速度:0.3nm/秒)
(ホール輸送性バッファー層)
CBPの蒸着速度を0.3nm/秒とし、燐光発光性ドーパントEM−1がバッファー層中の有機材料全体の8質量%になるように共蒸着を行った。バッファー層の膜厚は10nmとした。
(発光層)
CBP(正孔輸送性ホスト)及びETM−1(電子輸送性ホスト)の蒸着速度をそれぞれ0.3nm/秒とし、燐光発光性ドーパントEM−1が発光層中の有機材料全体の8質量%となるように三元共蒸着を行った。発光層の膜厚は20nmとした。
(電子輸送性バッファー層)
ETM−1の蒸着速度を0.3nm/秒とし、燐光発光性ドーパントEM−1がバッファー層中の有機材料全体の8質量%になるように共蒸着を行った。バッファー層の膜厚は10nmとした。
(電子輸送層1)
BAlq:膜厚10nm(蒸着速度:0.3nm/秒)
(電子輸送層2)
電子輸送材料Alq:膜厚30nm(蒸着速度:1nm/秒)
【0133】
以上の各層を形成後、パタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、フッ化リチウムを0.1nm/秒の蒸着速度にて1nm蒸着し電子注入層とした。更に金属アルミニウムを100nm蒸着し陰極とした。
以上のごとく作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグロ−ブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ(株)製)を用いて封止し、実施例1の有機EL素子を作製した。
【0134】
〔比較例1〕
実施例1の有機EL素子において、ホール輸送性バッファー層の代わりにα−NPDを蒸着速度0.3nm/秒で10nm蒸着し、電子輸送性バッファー層の代わりにBAlqを蒸着速度0.3nm/秒で10nm蒸着した以外は実施例1の有機EL素子と同様にして、比較例1の有機EL素子を作製した。
【0135】
〔実施例2〕
実施例1の有機EL素子において、ホール輸送性バッファー層と電子輸送性バッファー層の蒸着条件を下記の通りに変更した以外は、実施例1の有機EL素子と同様にして、実施例2の有機EL素子を作製した。
(ホール輸送性バッファー層)
CBPの蒸着速度を0.3nm/秒に固定し、電子輸送材料ETM−1及び燐光発光性ドーパントEM−1の蒸着速度を徐々に上げ、EM−1がバッファー層中の有機材料全体の8質量%となるように3元共蒸着を行った。膜厚を10nmとし、10nmに達したときの蒸着速度比はCBP:ETM−1=1:1となるように蒸着速度を調整した。
(電子輸送性バッファー層)
CBP及びETM−1の蒸着速度をそれぞれ0.3nm/秒とし、EM−1がバッファー層中の有機材料全体の8質量%となるように3元共蒸着を開始した。膜厚を10nmとし、CBP及びEM−1の蒸着速度を徐々に下げ、10nmに達したときのCBPの蒸着速度が0になるように調整した。
【0136】
〔比較例2〕
実施例2の有機EL素子において、ホール輸送性バッファー層と電子輸送性バッファー層の蒸着条件を下記のとおりに変更した以外は、実施例2の有機EL素子と同様にして、比較例2の有機EL素子を作製した。
(ホール輸送性バッファー層)
CBPの蒸着速度を0.3nm/秒に固定し、ETM−1の蒸着速度を徐々に上げて共蒸着を行った。EM−1の蒸着は行わなかった。膜厚を10nmとし、10nmに達したときの蒸着速度比はCBP:ETM−1=1:1となるように蒸着速度を調整した。
(電子輸送性バッファー層)
CBP及びETM−1の蒸着速度をそれぞれ0.3nm/秒とし、共蒸着を開始した。膜厚を10nmとし、CBPの蒸着速度を徐々に下げ、10nmに達したときのCBPの蒸着速度が0になるように調整した。EM−1の蒸着は行わなかった。
【0137】
〔実施例3〜4〕
実施例1〜2の有機EL素子において、発光層及びバッファー層に用いたEM−1の代わりに発光性ドーパントEM−2を用いた以外は、実施例1〜2及び比較例1〜2と同様にして有機EL素子を作製し、実施例3〜4の有機EL素子とした。
〔比較例3〜4〕
比較例1〜2の有機EL素子において、発光層に用いたEM−1の代わりに発光性ドーパントEM−2を用いた以外は、比較例1〜2と同様にして有機EL素子を作製し、比較例3〜4の有機EL素子とした。
【0138】
〔実施例5〜6〕
実施例1〜2の有機EL素子において、発光層及びバッファー層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及びEM−3をそれぞれを用いた以外は、実施例1〜2と同様にして有機EL素子を作製し、それぞれ実施例5〜6の有機EL素子とした。
【0139】
〔比較例5〜6〕
比較例1の有機EL素子において、発光層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及びEM−3をそれぞれを用いた以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製し、比較例5の有機EL素子とした。
また、比較例2の有機EL素子において、発光層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及びEM−3をそれぞれを用い、バッファー層に用いたCBPの代わりにMCPを用いた以外は、比較例2と同様にして有機EL素子を作製し、比較例6の有機EL素子とした。
【0140】
〔実施例7〜8〕
実施例1〜2の有機EL素子において、発光層及びバッファー層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及び発光性ドーパントEM−4を用いた以外は、実施例1〜2と同様にして有機EL素子を作製し、実施例7〜8の有機EL素子とした。
【0141】
〔比較例7〜8〕
比較例1の有機EL素子において、発光層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及びEM−4をそれぞれ用いた以外は、比較例1と同様にして有機EL素子を作製し、比較例7の有機EL素子とした。
また、比較例2の有機EL素子において、発光層に用いたCBP及びEM−1の代わりに、MCP及びEM−4をそれぞれ用い、バッファー層に用いたCBPの代わりにMCPを用いた以外は、比較例2と同様にして有機EL素子を作製し、比較例8の有機EL素子とした。
【0142】
上記の各有機EL素子に用いた化合物の構造を下記に示す。
【0143】
【化15】

【0144】
【化16】

【0145】
2.化合物物性の評価
実施例及び比較例に用いた化合物のイオン化ポテンシャル、電子親和力、及びT1エネルギーの測定方法及び測定結果を表1に示す。
(1)イオン化ポテンシャル
ガラス基板上に、有機化合物層に用いた各化合物を、50nmの厚みになるように蒸着した。この膜を常温常圧下、理研計器(株)製の紫外線光電子分析装置AC−1又はAC−3によりイオン化ポテンシャルを測定した。
【0146】
(2)電子親和力
イオン化ポテンシャル測定に用いた膜の紫外可視吸収スペクトルを、島津製作所製のUV3100型分光光度計で測定し、吸収スペクトルの長波長端のエネルギーから励起エネルギーを求めた。励起エネルギーと前記イオン化ポテンシャルの値から電子親和力を算出した。
(3)T1エネルギー
イオン化ポテンシャル測定に用いた膜の燐光スペクトルを、日立製作所製のF4500を用いて、温度条件77Kにて測定し、燐光スペクトルの短波長端のエネルギーからT1エネルギーを求めた。
【0147】
【表1】

【0148】
3.有機EL素子の評価
得られた有機EL素子を以下の方法により評価した。
(1)外部量子効率
作製した発光素子の発光スペクトルの波形は、浜松フォトニクス社製のマルチ・チャンネル・アナライザーPMA−11を用いて測定する。この測定データより発光ピークの波長の値を求める。更に、この発光スペクトルの波形と測定時の電流・輝度(300cd/m2)から外部量子効率を計算する。結果を表2に示す。
【0149】
(2)駆動耐久性試験
KEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し発光させる。その輝度をトプコン社製輝度計BM−8を用いて測定し、300cd/m2における外部量子効率を算出する。
続いて、この発光素子を初期輝度一定の条件で連続駆動試験をおこない、輝度が半分になった時間を輝度半減時間T(1/2)とする。結果を表2に示す。
(実施例1〜4及び比較例1〜4の素子は初期輝度2000cd/m2、実施例5〜8及び比較例5〜8の素子は初期輝度360cd/m2で評価した。)
【0150】
(3)駆動電圧
KEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を発光素子に印加し発光させる。輝度(トプコン社製輝度計BM−8にて測定)が、300cd/m2となる時の電圧を測定する。結果を表2に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
表2の結果より、実施例1〜8の有機EL素子は、低電圧で駆動し、高発光効率を有し、且つ、駆動耐久性に優れた素子であることがわかる。
【0153】
〔実施例9〜10〕
実施例7〜8の有機EL素子において、正孔注入層を下記の通りに変更した以外は、実施例7〜8と同様にして有機EL素子を作製し、実施例9〜10の有機EL素子とした。
(正孔注入層)
前記化合物H−10及びトラフルオロテトラシアノキノジメタンを用い、化合物H−10の蒸着速度を0.5nm/秒とし、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが正孔注入層中の有機材料全体の0.3質量%になるように共蒸着を行った。正孔注入層の膜厚は160nmとした。
【0154】
〔比較例9〜10〕
比較例7〜8の有機EL素子において、正孔注入層を下記の通りに変更した以外は、比較例7〜8と同様にして有機EL素子を作製し、比較例9〜10の有機EL素子とした。
(正孔注入層)
化合物H−10(先に正孔輸送輸送性ホストの例として挙げた化合物H−10と同じ化合物)及びトラフルオロテトラシアノキノジメタンを用い、化合物H−10の蒸着速度を0.5nm/秒とし、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが正孔注入層中の有機材料全体の0.3質量%になるように共蒸着を行った。正孔注入層の膜厚は160nmとした。
【0155】
以上の結果を表3に示す。
【0156】
【表3】

【0157】
表3の結果より、正孔注入層として電子受容性ドーパントであるテトラフルオロテトラシアノキノジメタンを含有した実施例9及び10の素子は、比較例9及び10の素子との比較において、低電圧で駆動し、高発光効率を示し、且つ、駆動耐久性に優れた素子であることがわかる。
【0158】
〔実施例11〜12〕
実施例7〜8における有機EL素子において、電子輸送層2を下記の通りに変更した以外は、実施例7〜8と同様にして有機EL素子を作製し、実施例11〜12の有機EL素子とした。
(電子輸送層2)
電子輸送輸送材料Alq:蒸着速度を0.2nm/秒
リチウム:電子輸送層2中の材料全体の1.5質量%になるように共蒸着を行った。
電子輸送層2の膜厚は40nmとした。
【0159】
〔比較例11〜12〕
比較例7〜8の有機EL素子において、電子輸送層2を下記の通りに変更した以外は、比較例7〜8と同様にして有機EL素子を作製し、比較例11〜12の有機EL素子とした。
(電子輸送層2)
電子輸送輸送材料Alq:蒸着速度を0.2nm/秒
リチウム:電子輸送層2中の材料全体の1.5質量%になるように共蒸着を行った。
電子輸送層2の膜厚は40nmとした。
【0160】
以上の結果を表4に示す。
【0161】
【表4】

【0162】
表4の結果より、電子輸送層2として電子供与性ドーパントであるリチウムを含有した実施例11及び12の素子は、比較例11及び12の素子との比較において、低電圧で駆動し、高発光効率を示し、且つ、駆動耐久性に優れた素子であることがわかる。
【0163】
〔実施例13〜14〕
実施例7〜8の有機EL素子において、正孔注入層および電子輸送層2を下記の通りに変更した以外は、実施例7〜8と同様にして有機EL素子を作製し、実施例13〜14の有機EL素子とした。
(正孔注入層)
前記化合物H−10及びテトラフルオロテトラシアノキノジメタンを用い、化合物H−10の蒸着速度を0.5nm/秒とし、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが正孔注入層中の有機材料全体の0.3質量%になるように共蒸着を行った。
正孔注入層の膜厚は160nmとした。
(電子輸送層2)
電子輸送輸送材料Alq:蒸着速度を0.2nm/秒
リチウム:電子輸送層2中の材料全体の1.5質量%になるように共蒸着を行った。
電子輸送層2の膜厚は40nmとした。
【0164】
〔比較例13〜14〕
比較例7〜8における有機EL素子において、正孔注入層および電子輸送層2を下記の通りに変更した以外は、比較例7〜8と同様にして、比較例13〜14の有機EL素子とした。
(正孔注入層)
前記化合物H−10及びテトラフルオロテトラシアノキノジメタンを用い、化合物H−10の蒸着速度を0.5nm/秒とし、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンが正孔注入層中の有機材料全体の0.3質量%になるように共蒸着を行った。
正孔注入層の膜厚は160nmとした。
(電子輸送層2)
電子輸送輸送材料Alq:蒸着速度を0.2nm/秒
リチウム:電子輸送層2中の材料全体の1.5質量%になるように共蒸着を行った。
電子輸送層2の膜厚は40nmとした。
【0165】
以上の結果を表5に示す。
【0166】
【表5】

【0167】
表5の結果より、正孔注入層として電子受容性ドーパントであるテトラフルオロテトラシアノキノジメタンを含有し、電子輸送層2として電子供与性ドーパントであるリチウムを含有した実施例13及び14の素子は、比較例13及び14の素子との比較において、低電圧で駆動し、高発光効率を示し、且つ、駆動耐久性に優れた素子であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層及び該発光層に隣接するバッファー層を少なくとも含む複数の有機化合物層を有してなり、前記発光層は2種以上のホスト材料と少なくとも1種の発光材料とを含有し、且つ、前記バッファー層は少なくとも1種の前記ホスト材料と少なくとも1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料とを含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
前記バッファー層が、1種のホスト材料と、1種の電荷捕獲機能を有するドーパント材料と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
前記バッファー層が、ホスト材料A及びホスト材料Bからなる2種のホスト材料を含有し、バッファー層中におけるホスト材料Aの含有比率が、バッファー層の電極側から発光層側への膜厚方向に、ホスト材料A:ホスト材料B=x:y(x、yは正の整数)になるまで徐々に増加する層であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機化合物層が、前記発光層に含まれない電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光材料が、燐光発光材料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記電荷捕獲機能を有するドーパント材料が、発光材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。

【公開番号】特開2007−110102(P2007−110102A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250624(P2006−250624)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】