説明

有機電界発光素子

【課題】発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能が向上し、素子劣化時の色度変化を抑制することができる有機電界発光素子の提供。
【解決手段】陽極2と陰極10の間に、少なくとも1層の発光層6と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層7と、を少なくとも含む有機層を有してなり、前記発光層が赤色燐光発光材料と、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種からなるホスト材料とを含有し、前記陰極側隣接層が、非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有する有機電界発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子(以下、「有機エレクトロルミネッセンス素子」、「有機EL素子」と称することもある)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、自発光、高速応答などの特長を持ち、フラットパネルディスプレイなどへの適用が期待されており、特に、正孔輸送性の有機薄膜(正孔輸送層)と電子輸送性の有機薄膜(電子輸送層)とを積層した2層型(積層型)のものが報告されて以来、10V以下の低電圧で発光する大面積発光素子として関心を集めている。積層型の有機電界発光素子は、正極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/負極、を基本構成とし、このうち発光層は、前記2層型の場合のように、前記正孔輸送層又は前記電子輸送層にその機能を兼ねさせてもよい。
【0003】
このような有機電界発光素子において、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能の向上を図るため、種々の検討がなされている。
例えば特許文献1では、燐光発光性ドーパントと組み合わされて燐光発光材料を構成するホスト材料として、数多くのピレン骨格やアントラセン骨格を有する縮合芳香族環化合物が提案されている。この特許文献1の実施例86には、発光層のホスト材料としてアントラセン骨格を有する化合物が用いられ、発光層の陰極側隣接層に含窒素アントラセン化合物が用いられている。
また、特許文献2には、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に設けられた有機薄膜層とを備え、前記有機薄膜層は、置換又は無置換の多環式縮合芳香族骨格部を有する第一の多環式縮合芳香族化合物と、燐光発光を示す第一の燐光発光材料と、を有する発光層と、前記発光層の前記陰極側に、置換又は無置換の多環式縮合芳香族骨格部を有する第二の多環式縮合芳香族化合物を含有する有機層とを備えた有機電界発光素子が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの先行技術文献に記載の技術をそれぞれ単独で用いた場合には、発光層と陰極側隣接層の界面劣化が生じ、この界面劣化は、キャリアバランスを大きく変えるため発光分布が変わり、素子劣化時の色度変化が生じるという課題がある。したがって、素子劣化時の色度変化を抑制することができ、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能の向上を達成できる有機電界発光素子の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−16693号公報
【特許文献2】特開2009−147324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能が向上し、素子劣化時の色度変化を抑制することができる有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物を、発光層のホスト材料及び発光層の陰極側隣接層材料の両方に用いることにより、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能が向上すると共に、素子劣化時の色度変化を抑制することができることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、
前記発光層が赤色燐光発光材料と、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種からなるホスト材料とを含有し、
前記陰極側隣接層が、非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする有機電界発光素子である。
<2> 発光層及び陰極側隣接層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物が、下記一般式(I)で表される前記<1>に記載の有機電界発光素子である。
【化1】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
<3> 発光層及び陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、下記一般式(II)で表される前記<1>から<2>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
【化2】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
<4> 発光層及び陰極側隣接層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物が無置換のアントラセン誘導体骨格を有する化合物であり、
発光層及び陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が無置換のピレン誘導体骨格を有する化合物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<5> 陰極側隣接層における非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しない非含窒素アントラセン誘導体化合物であり、陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しないピレン誘導体骨格を有する化合物である前記<1>から<4>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<6> 発光層におけるアントラセン誘導体骨格が、孤立電子対を有しない非含窒素アントラセン誘導体化合物であり、発光層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しないピレン誘導体骨格を有する化合物である前記<1>から<5>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<7> 赤色燐光発光材料が、中心金属がルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金の少なくともいずれかである有機金属錯体である前記<1>から<6>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
<8> 陰極側隣接層の厚みが、1nm〜10nmである前記<1>から<7>のいずれかに記載の有機電界発光素子である。
【0009】
通常、有機電界発光素子における素子劣化時の色度変化は、発光分布の変化によって引き起こされるが、本発明の有機電界発光素子においては、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物を、発光層のホスト材料及び発光層の陰極側隣接層材料の両方に用いることで、劣化前後による発光分布の変化が小さくなり、素子劣化時の色度変化を抑制できる。
劣化前後の発光分布変化の要因として、発光層と発光層の陰極側隣接層界面の劣化がある。界面劣化は、キャリアバランスを大きく変えるため発光分布が変わり、その結果、色度変化が引き起こされる。界面劣化の要因としては、燐光発光材料とホスト材料、陰極側隣接層材料との化学反応が指摘されている(Scholz et al 2007、Scholz et al 2009参照)。
本発明の有機電界発光素子においては、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物(特に窒素がなく、孤立電子対がなく、置換基もない化合物)を、発光層のホスト材料及び発光層の陰極側隣接層材料の両方に用いることで、燐光発光材料とホスト材料及び陰極側隣接層材料間の化学反応が起きにくく、界面劣化が抑制されたものと推測される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能が向上し、素子劣化時の色度変化を抑制することができる有機電界発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(有機電界発光素子)
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層とを少なくとも含む有機層を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0013】
<発光層>
前記発光層は、その材料、形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記形状としては、膜状、シート状などが挙げられ、また、その平面形状としては、四角形、円形などが挙げられ、前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられ、前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0014】
前記発光層は、赤色燐光発光材料と、ホスト材料とを含有する。
【0015】
−赤色燐光発光材料−
前記赤色燐光発光材料としては、ピーク波長が、580nm〜640nmであるものが好ましい。
前記赤色燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば遷移金属原子、ランタノイド原子を含む錯体などが挙げられる。
前記遷移金属原子としては、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金などが挙げられる。これらの中でも、レニウム、イリジウム、白金が好ましく、イリジウム、白金が特に好ましい。
【0016】
前記ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウム、などが挙げられる。これらの中でも、ネオジム、ユーロピウム、ガドリニウムが特に好ましい。
前記錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry,Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社、1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、又はナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、又はフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子などが挙げられる。これらの中でも、含窒素ヘテロ環配位子が特に好ましい。
【0017】
前記錯体は、化合物中に遷移金属原子を1つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
前記白金を含む錯体である燐光発光材料の具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化3】

【化4】

【化5】

【0018】
前記イリジウムを含む錯体である燐光発光材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(2)、(3)及び(4)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【化6】

ただし、前記一般式(2)、(3)及び(4)中、nは、1〜3の整数を表す。X−Yは、二座配位子を表す。環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環構造を表す。R11は、置換基を表し、m1は、0〜6の整数を表す。m1が2以上の場合には隣接するR11どうしが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。R12は、置換基を表し、m2は、0〜4の整数を表す。m2が2以上の場合には隣接するR12どうしが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。なお、R11とR12とが結合して窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環を形成してもよく、該環は更に置換基により置換されていてもよい。
【0019】
前記環Aは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子のいずれかを含んでいてもよい環構造を表し、5員環、6員環などが好適に挙げられる。該環は置換基で置換されていてもよい。
【0020】
X−Yは、二座配位子を表し、二座のモノアニオン性配位子などが好適に挙げられる。
前記二座のモノアニオン性配位子としては、例えば、ピコリナート(pic)、アセチルアセトナート(acac)、ジピバロイルメタナート(t−ブチルacac)などが挙げられる。
上記以外の配位子としては、例えば、Lamanskyらの国際公開第2002/15645号パンフレットの第89頁〜第91頁に記載の配位子が挙げられる。
【0021】
前記R11及びR12における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてもよいアリール基、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてもよいアリールオキシ基を表し、これらは更に置換されていてもよい。
前記R11及びR12は、互いに隣接するものどうしで結合して、窒素原子、硫黄原子又は酸素原子を含んでいてもよい環を形成してもよく、5員環、6員環などが好適に挙げられる。該環は更に置換基で置換されていてもよい。
【0022】
前記一般式(2)、(3)、及び(4)のいずれかで表される具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【0023】
前記燐光発光材料のその他の例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【化33】

【0024】
前記赤色燐光発光材料の含有量は、発光層を形成する全化合物質量に対して、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、3質量%〜10質量%が更に好ましい。
前記含有量が、0.5質量%未満であると、発光効率が小さくなることがあり、30質量%を超えると、燐光発光材料自身の会合により、発光効率が低下することがある。
【0025】
−ホスト材料−
前記ホスト材料としては、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種からなる化合物が用いられる。
【0026】
前記アントラセン誘導体骨格を有する化合物としては、下記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体がある。
【化34】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【0027】
このようなアントラセン誘導体の具体例としては、下記式で表される化合物などが挙げられる。
【化35】

【化36】

【0028】
また、前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体は、例えば、下記一般式(3)で表される非対称型アントラセンであってもよい。
【0029】
【化37】

ただし、前記一般式(3)中、A及びAは、それぞれ独立に、水素原子、又は置換もしくは無置換の核炭素数6から50の芳香族環基である。
からR10は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6から50の芳香族環基、置換もしくは無置換の核炭素数5から50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6から50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基から選ばれる。
Ar、Ar、R及びR10は、それぞれ複数であっても良く、隣接するもの同士で飽和もしくは不飽和の環状構造を形成していてもよい。
ただし、前記一般式(3)において、中心のアントラセンの9位及び10位に、前記アントラセン上に示すX−Y軸に対して対称型となる基が結合する場合はない。
【0030】
このような非対称型アントラセン誘導体として、例えば、下記のようなものが挙げられる。
【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【0031】
また、前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体は、下記一般式(4)で表されるビスアントラセン誘導体であってもよい。
【化44】

ただし、前記一般式(4)中、Antは、アントラセン誘導体であり、置換されていてもよい。Rは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6から50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3から50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6から50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。Kは0から9の整数である。
【0032】
このようなビスアントラセン誘導体として、例えば、下記式のようなものが挙げられる。
【化45】

【化46】

【0033】
また、前記一般式(I)で表されるアントラセン誘導体として、下記一般式(5)で表されるベンズアントラセン誘導体であってもよい。
【化47】

ただし、前記一般式(5)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6から50の芳香族環基である。
からR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6から50の芳香族環基、置換もしくは無置換の核炭素数5から50の芳香族複素環基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6から50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5から50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1から50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又はヒドロキシル基から選ばれる。
Ar、Ar、R11及びR12は、それぞれ複数であっても良く、隣接するもの同士で飽和もしくは不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【0034】
このようなベンズアントラセン誘導体として、例えば、下記のようなものが挙げられる。
【化48】

【0035】
前記発光層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物としては、無置換の(置換基を有さない)アントラセン誘導体骨格を有する化合物であることが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
前記発光層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物としては、非含窒素であることが好ましく、孤立電子対を有しないことが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
【0036】
前記ピレン誘導体骨格を有する化合物としては、下記一般式(II)で表されるピレン誘導体が挙げられる。
【化49】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
【0037】
このようなピレン誘導体化合物として、例えば、下記のようなものが挙げられる。
【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【0038】
前記発光層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物としては、無置換の(置換基を有さない)ピレン誘導体骨格を有する化合物であることが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
前記発光層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物としては、孤立電子対を有しないことが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
【0039】
前記ホスト材料の含有量は、前記発光層を形成する全化合物質量に対して、10質量%〜99.9質量%であることが好ましく、20質量%〜99.5質量%がより好ましく、30質量%〜99質量%が更に好ましい。
【0040】
前記発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、又は正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、又は電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
前記発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
【0041】
前記発光層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm〜500nmが好ましく、発光効率の観点から、3nm〜200nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。また、前記発光層は1層であっても2層以上であってもよい。
【0042】
<陰極側隣接層>
前記陰極側隣接層は、発光層と陰極側で隣接する有機層である。
前記陰極側隣接層は、非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記ピレン誘導体骨格としては、前記発光層におけるホスト材料の上記一般式(II)で表されるピレン誘導体骨格を有する化合物を用いることができる。
前記非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物としては、前記発光層におけるホスト材料の上記一般式(I)で表される化合物のうち、非含窒素化合物を用いることができる。
陰極側隣接層の非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及び前記ピレン誘導体骨格を有する化合物は、無置換の(置換基を有さない)アントラセン誘導体骨格を有する化合物であることが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
陰極側隣接層の非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物は、孤立電子対を有しないことが、劣化前後の色度変化を抑制する点で特に好ましい。
【0043】
ここで、前記陰極側隣接層に好適に用いられるピレン誘導体骨格を有する化合物の具体例について以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【0044】
ここで、前記陰極側隣接層に好適に用いられる非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物の具体例について以下に挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
【化59】

【化60】

【0045】
前記陰極側隣接層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記陰極側隣接層の厚みは、1nm〜10nmであることが好ましく、2nm〜5nmであることがより好ましい。前記厚みが、1nm未満であると、陰極側隣接層を形成できず、高効率化や高耐久性化の効果が十分ではないことがあり、10nmを超えると、陰極側隣接層の電子移動度が高い場合、有機電界発光素子として高電圧化してしまうことがある。
【0046】
<電子輸送層>
前記電子輸送層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
【0047】
前記電子輸送層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記構造式で表される2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(バソクプロイン;BCP)、BCPにLiをドープしたもの、下記構造式で表されるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノール又はその誘導体を配位子とする有機金属錯体、下記構造式で表されるBAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium (III))等のキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、などが挙げられる。
【0048】
【化61】

【化62】

【化63】

【0049】
前記電子輸送層は、例えば、蒸着法、湿式製膜法、電子ビーム法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などの上述した方法により好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1nm〜500nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましい。
前記電子輸送層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0050】
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層とを少なくとも含む有機層を有してなり、前記陰極側隣接層の陰極側に隣接する電子輸送層、更に必要に応じてその他の層を有していてもよい。
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば電子注入層、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、などが挙げられる。
【0051】
−電子注入層−
前記電子注入層は、陰極又は陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。
前記電子注入層は、1種又は2種以上の材料からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子注入層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1nm〜200nmであるのが好ましく、0.2nm〜100nmであるのがより好ましく、0.5nm〜50nmであるのが更に好ましい。
【0052】
−正孔注入層、正孔輸送層−
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。該正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物でもよく、無機化合物あってもよい。
前記正孔注入材料又は正孔輸送材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばピロール誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、チオフェン誘導体、有機シラン誘導体、カーボン、三酸化モリブデンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記正孔注入層及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、特に制限はなく、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜30質量%がより好ましく、0.1質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0054】
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚みは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜250nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。
【0055】
−電子ブロック層−
前記電子ブロック層は、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通り抜けることを防止する機能を有する層であり、通常、発光層と陽極側で隣接する有機化合物層として設けられる。
前記電子ブロック層を構成する化合物としては、例えば前述の正孔輸送材料として挙げたものが利用できる。また、前記電子ブロック層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
前記電子ブロック層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布法、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記電子ブロック層の厚みは、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜50nmがより好ましく、3nm〜10nmが更に好ましい。
【0056】
<電極>
本発明の有機電界発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機電界発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
【0057】
−陽極−
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモン、フッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からITOが特に好ましい。
【0058】
−陰極−
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が特に好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)を意味する。
【0059】
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。これらの中でも、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
【0060】
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
【0061】
<基板>
本発明の有機電界発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
【0062】
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
【0063】
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
【0064】
−保護層−
有機電界発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばIn、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物;SiNx、SiNxOy等の金属窒化物;MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
【0065】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
【0066】
−封止容器−
本発明の有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機電界発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム、などが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類、などが挙げられる。
【0067】
−樹脂封止層−
本発明の有機電界発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制することが好ましい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
【0068】
前記樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法、などが挙げられる。
【0069】
−封止接着剤−
前記封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有する。
前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分の侵入防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。
前記封止接着剤にフィラーを添加することも好ましい。前記フィラーとしては、例えばSiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。該フィラーの添加により、封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。前記乾燥剤としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、などが挙げられる。前記乾燥剤の添加量は、前記封止接着剤に対し0.01質量%〜20質量%が好ましく、0.05質量%〜15質量%がより好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、20質量%を超えると、封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になることがある。
本発明においては、前記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
【0070】
図1は、本発明の有機電界発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機EL素子11は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えばITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、電子ブロック層5と、発光層6と、陰極側隣接層(正孔ブロック層)7と、電子輸送層8と、電子注入層9と、陰極10(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えばITO電極)と陰極10(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。
【0071】
−駆動−
本発明の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機電界発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機電界発光素子は、例えばWO2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598A1明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
【0072】
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の厚みを制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の有機電界発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
【0073】
本発明の有機電界発光素子は、共振器構造を有してもよい。例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第1の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
【0074】
−用途−
本発明の有機電界発光素子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機電界発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機電界発光素子による青色発光を色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機電界発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、などが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
(比較例1−1)
−有機電界発光素子の作製−
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み70nmにスパッタ法により形成した。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層厚みは水晶振動子を用いて測定した。
【0077】
まず、陽極(ITO)上に、下記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)に、MoOを30質量%ドープした正孔注入層を厚みが30nmになるように真空蒸着法により形成した。
【化64】

【0078】
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層として上記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚みが10nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、ホスト材料である下記構造式で表される化合物Jと、該化合物Jに対して下記構造式で表される赤色燐光発光材料1(ピーク波長628nm)を8質量%ドープした発光層を厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化65】

【化66】

【0079】
次に、発光層上に、陰極側隣接層として下記構造式で表される化合物Fを、厚みが5nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化67】

【0080】
次に、陰極側隣接層上に、電子輸送層として上記構造式で表される化合物Fを、厚みが45nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚み100nmとなるように真空蒸着法により形成した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、比較例1−1の有機電界発光素子を作製した。
【0081】
(比較例1−2)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、下記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例1−2の有機電界発光素子を作製した。
【化68】

【0082】
(比較例1−3)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例1−3の有機電界発光素子を作製した。
【0083】
(実施例1−1)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a−1に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、実施例1−1の有機電界発光素子を作製した。
【0084】
(比較例2−1)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを下記構造式で表される化合物Kに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例2−1の有機電界発光素子を作製した。
【化69】

【0085】
(比較例2−2)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物Kに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、下記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例2−2の有機電界発光素子を作製した。
【化70】

【0086】
(比較例2−3)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例2−3の有機電界発光素子を作製した。
【0087】
(実施例2−1)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a’−55に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、実施例2−1の有機電界発光素子を作製した。
【0088】
(比較例3−1)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを下記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、下記構造式で表される化合物Iに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例3−1の有機電界発光素子を作製した。
【化71】

【化72】

【0089】
(比較例3−2)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、下記構造式で表される化合物2a’−59に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例3−2の有機電界発光素子を作製した。
【化73】

【0090】
(比較例3−3)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a’−59に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物Iに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例3−3の有機電界発光素子を作製した。
【0091】
(実施例3−1)
−有機電界発光素子の作製−
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物2a’−59に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物2a’−59に代えた以外は、比較例1−1と同様にして、実施例3−1の有機電界発光素子を作製した。
【0092】
(比較例4−1)
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物Iに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例4−1の有機電界発光素子を作製した。
【0093】
(比較例4−2)
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、下記構造式で表される化合物3aに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例4−2の有機電界発光素子を作製した。
【化74】

【0094】
(比較例4−3)
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物3aに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物Iに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、比較例4−3の有機電界発光素子を作製した。
【0095】
(実施例4−1)
比較例1−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表される化合物Jを上記構造式で表される化合物3aに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物Fを、上記構造式で表される化合物3aに代えた以外は、比較例1−1と同様にして、実施例4−1の有機電界発光素子を作製した。
【0096】
(比較例5−1)
−有機電界発光素子の作製−
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み70nmにスパッタ法により形成した。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層厚みは水晶振動子を用いて測定した。
【0097】
まず、陽極(ITO)上に、下記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)に、MoOを30質量%ドープした正孔注入層を厚みが30nmになるように真空蒸着法により形成した。
【化75】

【0098】
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層として上記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚みが10nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、ホスト材料である下記構造式で表されるBAlq〔Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III)〕と、該BAlqに対して下記構造式で表される赤色燐光発光材料2(ピーク波長627nm)を8質量%ドープした発光層を厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化76】

【化77】

【0099】
次に、発光層上に、陰極側隣接層として下記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、厚みが5nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化62】

【0100】
次に、陰極側隣接層上に、電子輸送層として下記構造式で表される化合物Gを、厚みが45nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化78】

【0101】
次に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚み100nmとなるように真空蒸着法により形成した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、比較例5−1の有機電界発光素子を作製した。
【0102】
(比較例5−2)
比較例5−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるAlqを、下記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例5−2の有機電界発光素子を作製した。
【化79】

【0103】
(比較例5−3)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例5−3の有機電界発光素子を作製した。
【0104】
(実施例5−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a−1に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、上記構造式で表される化合物2a−1に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、実施例5−1の有機電界発光素子を作製した。
【0105】
(比較例6−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例6−1の有機電界発光素子を作製した。
【化80】

【0106】
(比較例6−2)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、下記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例6−2の有機電界発光素子を作製した。
【化81】

【0107】
(比較例6−3)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例6−3の有機電界発光素子を作製した。
【0108】
(実施例6−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a’−55に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、上記構造式で表される化合物2a’−55に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、実施例6−1の有機電界発光素子を作製した。
【0109】
(比較例7−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例7−1の有機電界発光素子を作製した。
【0110】
(比較例7−2)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、下記構造式で表される化合物2a’−59に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例7−2の有機電界発光素子を作製した。
【化82】

【0111】
(比較例7−3)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a’−59に代え以外は、比較例5−1と同様にして、比較例7−3の有機電界発光素子を作製した。
【0112】
(実施例7−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物2a’−59に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、上記構造式で表される化合物2a’−59に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、実施例7−1の有機電界発光素子を作製した。
【0113】
(比較例8−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例8−1の有機電界発光素子を作製した。
【0114】
(比較例8−2)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、下記構造式で表される化合物3aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例8−2の有機電界発光素子を作製した。
【化83】

【0115】
(比較例8−3)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物3aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例8−3の有機電界発光素子を作製した。
【0116】
(実施例8−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物3aに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、上記構造式で表される化合物3aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、実施例8−1の有機電界発光素子を作製した。
【0117】
(比較例9−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例9−1の有機電界発光素子を作製した。
【0118】
(比較例9−2)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−ビフェニル(CBP)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、下記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例9−2の有機電界発光素子を作製した。
【化84】

【0119】
(比較例9−3)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、比較例9−3の有機電界発光素子を作製した。
【0120】
(実施例9−1)
比較例5−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Aに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるアルミニウムキノリン錯体(Alq)を、上記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例5−1と同様にして、実施例9−1の有機電界発光素子を作製した。
【0121】
(比較例10−1)
−有機電界発光素子の作製−
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み70nmにスパッタ法により形成した。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層厚みは水晶振動子を用いて測定した。
【0122】
まず、陽極(ITO)上に、下記構造式で表される化合物Lに、MoOを30質量%ドープした正孔注入層を厚みが30nmになるように真空蒸着法により形成した。
【化85】

【0123】
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層として下記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚みが10nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化86】

【0124】
次に、ホスト材料である下記構造式で表されるBAlq〔Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III)〕と、該BAlqに対して下記構造式で表される赤色燐光発光材料3(ピーク波長620nm)を8質量%ドープした発光層を厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化87】

【化88】

【0125】
次に、発光層上に、陰極側隣接層として上記構造式で表されるBAlqを、厚みが5nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【0126】
次に、陰極側隣接層上に、電子輸送層として下記構造式で表される化合物Iを、厚みが45nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化89】

【0127】
次に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚みが100nmとなるように真空蒸着法により形成した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、比較例10−1の有機電界発光素子を作製した。
【0128】
(比較例10−2)
比較例10−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例10−2の有機電界発光素子を作製した。
【化90】

【0129】
(比較例10−3)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例10−3の有機電界発光素子を作製した。
【0130】
(実施例10−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Aに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Aに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、実施例10−1の有機電界発光素子を作製した。
【0131】
(比較例11−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Bに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例11−1の有機電界発光素子を作製した。
【化91】

【化92】

【0132】
(比較例11−2)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例11−2の有機電界発光素子を作製した。
【0133】
(比較例11−3)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Bに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例11−3の有機電界発光素子を作製した。
【0134】
(実施例11−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Bに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Bに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、実施例11−1の有機電界発光素子を作製した。
【0135】
(比較例12−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Cに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例12−1の有機電界発光素子を作製した。
【化93】

【0136】
(比較例12−2)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例12−2の有機電界発光素子を作製した。
【0137】
(比較例12−3)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Cに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例12−3の有機電界発光素子を作製した。
【0138】
(実施例12−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Cに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Cに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、実施例12−1の有機電界発光素子を作製した。
【0139】
(比較例13−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Dに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例13−1の有機電界発光素子を作製した。
【化94】

【0140】
(比較例13−2)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例13−2の有機電界発光素子を作製した。
【0141】
(比較例13−3)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Dに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例13−3の有機電界発光素子を作製した。
【0142】
(実施例13−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Dに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Dに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、実施例13−1の有機電界発光素子を作製した。
【0143】
(比較例14−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、下記構造式で表される化合物Eに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例14−1の有機電界発光素子を作製した。
【化95】

【0144】
(比較例14−2)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)に代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例14−2の有機電界発光素子を作製した。
【0145】
(比較例14−3)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Eに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、比較例14−3の有機電界発光素子を作製した。
【0146】
(実施例14−1)
比較例10−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Eに代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表されるBAlqを、上記構造式で表される化合物Eに代えた以外は、比較例10−1と同様にして、実施例14−1の有機電界発光素子を作製した。
【0147】
(比較例15−1)
−有機電界発光素子の作製−
0.5mm厚み、2.5cm角のガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み70nmにスパッタ法により形成した。次に、このITO付きガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。
なお、以下の実施例及び比較例における蒸着速度は、特に断りのない場合は0.1nm/秒である。蒸着速度は水晶振動子を用いて測定した。また、以下の各層厚みは水晶振動子を用いて測定した。
【0148】
まず、陽極(ITO)上に、下記構造式で表される化合物Lに、MoOを30質量%ドープした正孔注入層を厚みが30nmになるように真空蒸着法により形成した。
【化96】

【0149】
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層として下記構造式で表されるNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚みが10nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化97】

【0150】
次に、ホスト材料である下記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)と、該mCPに対して下記構造式で表される赤色燐光発光材料4(ピーク波長618nm)を8質量%ドープした発光層を厚みが30nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化98】

【化99】

【0151】
次に、発光層上に、陰極側隣接層として下記構造式で表される化合物2a−48を、厚みが5nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化100】

【0152】
次に、陰極側隣接層上に、電子輸送層として下記構造式で表される化合物Iを、厚みが45nmとなるように真空蒸着法により形成した。
【化101】

【0153】
次に、電子輸送層上に、電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を、厚みが1nmとなるように真空蒸着法により形成した。
次に、電子注入層上に、陰極としてパタ−ニングしたマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、金属アルミニウムを厚みが100nmとなるように真空蒸着法により形成した。
以上により作製した積層体を、アルゴンガスで置換したグローブボックス内に入れ、ステンレス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、比較例15−1の有機電界発光素子を作製した。
【0154】
(比較例15−2)
比較例15−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、下記構造式で表されるBAlq〔Bis−(2−methyl−8−quinolinolato)−4−(phenyl−phenolate)−aluminium(III)〕に代えた以外は、比較例15−1と同様にして、比較例15−2の有機電界発光素子を作製した。
【化102】

【0155】
(比較例15−3)
比較例15−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)を、上記構造式で表される化合物2a−48に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、上記構造式で表されるBAlqに代えた以外は、比較例15−1と同様にして、比較例15−3の有機電界発光素子を作製した。
【0156】
(実施例15−1)
比較例15−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)を、上記構造式で表される化合物2a−48に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、下記構造式で表される化合物Eに代えた以外は、比較例15−1と同様にして、実施例15−1の有機電界発光素子を作製した。
【化103】

【0157】
(比較例16−1)
比較例15−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、下記構造式で表される化合物2a’−60に代えた以外は、比較例15−1と同様にして、比較例16−1の有機電界発光素子を作製した。
【化104】

【0158】
(比較例16−2)
比較例15−1において、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、上記構造式で表されるBAlqに代えた以外は、比較例15−1と同様にして、比較例16−2の有機電界発光素子を作製した。
【0159】
(比較例16−3)
比較例15−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)を、上記構造式で表される化合物2a’−60に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、上記構造式で表されるBAlqに代えた以外は、比較例15−1と同様にして、比較例16−3の有機電界発光素子を作製した。
【0160】
(実施例16−1)
比較例15−1において、発光層のホスト材料としての上記構造式で表されるmCP(N,N’−dicarbazolyl−3,5−benzene)を、上記構造式で表される化合物2a’−60に代え、陰極側隣接層としての上記構造式で表される化合物2a−48を、上記構造式で表される化合物2a’−60に代えた以外は、比較例15−1と同様にして、実施例16−1の有機電界発光素子を作製した。
【0161】
次に、作製した実施例及び比較例について、以下のようにして、素子性能、及び経時の色度変化を測定した。結果を表1、表2、表3、及び表4に示す。
【0162】
<素子性能>
−駆動電圧(V)−
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電流通電時の輝度が1,000cdでの駆動電圧を計測した。
【0163】
−外部量子効率(EQE)−
KEITHLEY社製ソースメジャーユニット2400型を用いて、電流密度25mA/cmの直流電流を各素子に通電し、発光させた。1,000cdでの輝度と発光スペクトルを、トプコン社製輝度計SR−3を用いて測定した。これらの測定結果をもとに、外部量子効率を発光スペクトル換算法により算出した。
【0164】
−駆動耐久性(輝度半減時間)−
各有機電界発光素子を、初期輝度5,000cd/mで輝度が半減するまで定電流駆動し、輝度半減期(t5000)を測定する。5,000cd/mの輝度半減期より、1.5乗則を仮定し、下記式より、1,000cd/mの輝度半減期を算出した。
1000=t5000×(5,000cd/1,000cd)1.5
【0165】
<経時の色度変化>
各有機電界発光素子を、初期輝度3,000cdで輝度が半減するまで定電流駆動し、初期と半減時の1,000cdでの色度変化(Δx及びΔy)をトプコン社製輝度計SR−3により測定した。なお、色度変化(Δx及びΔy)が小さいほど経時での色度変化が少ないことを意味する。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の有機電界発光素子は、発光効率、駆動電圧、駆動耐久性等の素子性能が向上し、素子劣化時の色度変化を抑制することができるので、例えば表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信などに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0171】
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 電子ブロック層
6 発光層
7 陰極側隣接層
8 電子輸送層
9 電子注入層
10 陰極
11 有機電界発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に、少なくとも1層の発光層と、該発光層の陰極側に隣接する陰極側隣接層と、を少なくとも含む有機層を有してなり、
前記発光層が赤色燐光発光材料と、アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種からなるホスト材料とを含有し、
前記陰極側隣接層が、非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物及びピレン誘導体骨格を有する化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項2】
発光層及び陰極側隣接層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物が、下記一般式(I)で表される請求項1に記載の有機電界発光素子。
【化105】

ただし、前記一般式(I)中、Ar及びArは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の核炭素数6〜20の芳香族環から誘導される基である。前記芳香族環は、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。前記置換基は、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。前記芳香族環が2以上の置換基で置換されている場合、前記置換基は同一であっても、異なっていてもよく、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
からRは、水素原子、置換もしくは無置換の核炭素数6〜50のアリール基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のヘテロアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数6〜50のアラルキル基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の核原子数5〜50のアリールチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシカルボニル基、置換もしくは無置換のシリル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基及びヒドロキシ基から選ばれる。また、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和又は不飽和の環状構造を形成していてもよい。
【請求項3】
発光層及び陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、下記一般式(II)で表される請求項1から2のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【化106】

ただし、前記一般式(II)中、Ar1a及びAr2aは、それぞれ置換もしくは無置換の核炭素数6〜50の芳香族環基を表す。
Lは、それぞれ置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフタレニレン基、置換もしくは無置換のフルオレニレン基又は置換もしくは無置換のジベンゾシロリレン基である。
mは0〜2の整数、nbは1〜4の整数、sは0〜2の整数、tは0〜4の整数である。
また、L又はAr1aは、ピレンの1〜5位のいずれかに結合し、L又はAr2aは、ピレンの6〜10位のいずれかに結合する。
ただし、nb+tが偶数のとき、Ar1a、Ar2a、Lは下記(1)又は(2)を満たす。
(1)Ar1a≠Ar2a(ここで≠は、異なる構造の基であることを示す。)
(2)Ar1a=Ar2aの時
(2−1)m≠s及び/又はnb≠t、又は
(2−2)m=sかつnb=tの時、
(2−2−1)L、又はピレンが、それぞれAr1a及びAr2a上の異なる結合位置に結合しているか、
(2−2−2)L、又はピレンが、Ar1a及びAr2a上の同じ結合位置に結合している場合、L、又はAr1a及びAr2aのピレンにおける置換位置が1位と6位、又は2位と7位である場合はない。
【請求項4】
発光層及び陰極側隣接層におけるアントラセン誘導体骨格を有する化合物が無置換のアントラセン誘導体骨格を有する化合物であり、
発光層及び陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が無置換のピレン誘導体骨格を有する化合物である請求項1から3のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
陰極側隣接層における非含窒素アントラセン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しない非含窒素アントラセン誘導体化合物であり、陰極側隣接層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しないピレン誘導体骨格を有する化合物である請求項1から4のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
発光層におけるアントラセン誘導体骨格が、孤立電子対を有しない非含窒素アントラセン誘導体化合物であり、発光層におけるピレン誘導体骨格を有する化合物が、孤立電子対を有しないピレン誘導体骨格を有する化合物である請求項1から5のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
赤色燐光発光材料が、中心金属がルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金の少なくともいずれかである有機金属錯体である請求項1から6のいずれかに記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
陰極側隣接層の厚みが、1nm〜10nmである請求項1から7のいずれかに記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−151108(P2011−151108A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9791(P2010−9791)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【特許番号】特許第4603624号(P4603624)
【特許公報発行日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】