説明

有機電界発光表示素子及びその製造方法

【課題】パッド部不良を防止することができる有機電界発光表示素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る有機電界発光表示素子は、有機電界発光アレイと、有機電界発光アレイに駆動信号を供給すると共に、透明導電層136及び該透明導電層136の一部を露出させる不透明導電層134が積層されているパッド137とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光表示(ELD)に関するもの、特に、パッド部不良を防止することができる有機電界発光表示素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、陰極線管(Cathode Ray Tube)の短所である重さと大きさを減らすことができる各種フラットパネル表示装置が開発されている。このようなフラットパネル表示装置には、液晶表示装置(Liquid Crystal Display : 以下 LCD という)、電界放出表示装置(Field Emission Display : 以下 FED という)、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel : 以下 PDP という)、及びエレクトロルミネセンス(Electro-luminescence:以下 EL という)表示装置などがある。このようなフラットパネル表示装置の表示品質を高めて大画面化を試みる研究が活発に進められている。
【0003】
この中でPDPは、構造と製造工程が単純であることから軽量化、小型化を図るとともに、大画面化に一番有利な表示装置として注目されているが、発光效率と輝度が低く、消費電力の大きいという短所がある。一方、スイッチング素子で薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor : 以下 TFT という)が適用されたアクティブマトリックスLCDは、半導体工程を利用するため大画面化が困難であり、バックライトユニットによる消費電力が大きく、偏光フィルター、プリズムシート、拡散板などの光学素子による光損失が多く、視野角が狭い特性を有するという欠点があった。
【0004】
また、EL表示素子は、自ら発光する自発光素子であり、発光層の材料によって無機EL素子と有機EL素子に大別される。EL表示素子は、前述した表示素子と比較して、応答速度が早く、発光效率がよく、高輝度で、視野角が大きいという長所を有する。無機EL素子は、有機EL素子に比べて消費電力が大きく、高輝度を得ることができず、R、G、Bによる多様な色を発光させることができない。これに対して、有機EL素子は、数十ボルトの低い直流電圧で駆動でき、応答速度が速く、高輝度を得ることができ、R、G、Bによるの多様な色を発光させることができるため次世代フラットディスプレイ素子として適している。
【0005】
図7は従来の有機EL表示素子を概略的に示す断面図で、図8は図7に示された有機ELアレイのI−I’ 線を切断して示す断面図である。
【0006】
図7及び図8に図示された有機ELアレイ(有機電界発光アレイ)50は、基板2上に第1電極(またはアノード電極)4と第2電極(またはカソード電極)12が互いに交差する方向に形成されている。第1電極4は基板2上に所定の間隔をおいて多数個形成されている。このような第1電極4が形成された基板2上には、個々のEL領域ごとに開口部を有する絶縁膜6が形成される。絶縁膜6上には、その上に形成される有機発光層10及び第2電極12を分離するための隔壁8が設けられている。隔壁8は第1電極4を横切る方向に形成され、上段部が下段部より広い幅を有するオーバーハング(Overhang)構造を備えている。隔壁8が形成された絶縁膜6上には、順次、有機化合物から構成される有機発光層10と第2電極12が全面蒸着される。有機発光層10は、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーを表し、一般的には、各画素(P)ごとに赤、緑、青色を発光する個別の有機物質をパターニングすることによって形成される。
【0007】
有機発光層10は、図8に示されるように、第1電極4上に順次に形成された正孔注入層(10e)、正孔輸送層(10d)、発光層(10c)、電子輸送層(10b)及び電子注入層(10a)を含む。 このような、有機EL表示素子は、第1電極4と第2電極12の間に電圧が印加されると、第2電極12から発生した電子(またはカソード)が、電子注入層(10a)及び電子輸送層(10b)を通じて発光層(10c)の方向に移動する。また、第1電極4から発生した正孔(またはアノード)は、正孔注入層(10e)及び正孔輸送層(10d)を通じて発光層(10c)の方向に移動する。これによって、発光層(10c)では、電子輸送層(10b)と正孔輸送層(10d)から供給された電子と正孔の再結合によってエキシトン(EXCITON)が形成され、エキシトンは、再び基底状態に励起されながら一定のエネルギーの光を第1電極4を通じて外部に放出し、その結果、画像が表示されるようになる。
【0008】
このような有機ELアレイ50は、湿気及び酸素により容易に劣化する特性を有している。このような問題を解決するために、有機ELアレイ50を封止(Encapsulation)する工程が実施されている。これにより有機ELアレイ50が形成された基板2とキャップ28は、密封材、封止材(Sealant)26によって接合される。
【0009】
図9は従来の有機EL素子のパッド部を示す図面である。
図9に示された有機EL素子のパッド部のパッド37は、外部から駆動信号を受けるために、導電性フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)30を間に介してCOF(Chip On Film)、TCP(Tape Carrier Package)などの信号供給フィルム32と電気的に接続されている。パッド37は、有機ELアレイ50の第1電極4または第2電極12と接続される透明導電層36と、透明導電層36の導電性を高めるための不透明導電層34とが積層された構造を有している。ここで、透明導電層36にはITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)などが使用され、不透明導電層34にはモリブデン(Mo)などが使用される。また、不透明導電層34上には湿気及び酸素などにより不透明導電層34の酸化を防止するためのシリコン膜38が形成される。
【0010】
ところで、このような従来の有機EL表示素子のパッド部に形成された不透明導電層34は、水(H2O)及び酸素(O2)などによって腐蝕され、信号供給フィルム32を通じて印加されるはずの駆動信号が印加されないなどのパッド不良問題が頻繁に発生する。これをより詳しく説明すると次のようになる。
【0011】
一般的にモリブデン(Mo)などから形成された不透明導電層34は、露出していると、湿気及び酸素などにより酸化または腐蝕される性質がある。このような不透明導電層34は、有機ELアレイ50が形成された基板2とキャップ28の接合工程、及びACF30を間に介してパッド37と信号供給フィルム32との接続工程などが実施される間、図10に示されるように、大気中の湿気及び酸素にさらされる。このように露出した不透明導電層34は酸化される。また、シリコン膜38を形成した後にもシリコン膜38と透明導電層36及び不透明導電層34の間の界面で酸素及び湿気が浸透することによって不透明導電層34は酸化される。このような酸化は、各パッド37に印加された電圧差によって生じるガルヴァーニ電気腐蝕を促進させ、その結果、外部駆動信号が有機ELアレイ50に印加されなくなるなどパッド部の不良問題をもたらすようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、パッド部の不良の発生を防止することができる有機電界発光表示素子及びその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る有機電界発光表示素子の発明は、有機電界発光アレイと、該有機電界発光アレイに駆動信号を供給すると共に、透明導電層及び該透明導電層の一部を露出させる不透明導電層が積層されているパッドとを具備することを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の有機電界発光表示素子において、さらに、前記有機電界発光アレイを覆うパッケージング板と、前記パッドと電気的に接続される信号供給フィルムと、前記透明導電層上に形成されたシリコン層とを具備することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2の有機電界発光表示素子において、前記不透明導電層は、前記パッケージング板及び前記信号供給フィルムが設けられている領域以外の領域で一部除去されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1の有機電界発光表示素子において、前記透明導電層は酸化物を含み、前記不透明導電層はモリブデン(Mo)を含むことを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項1の有機電界発光表示素子において、前記有機電界発光アレイはアノード電極及びカソード電極を含み、前記透明導電層は前記アノード電極及びカソード電極の中の少なくともいずれか一つと同一物質であることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6に係る有機電界発光表示素子の製造方法の発明は、有機電界発光アレイを形成する工程と、前記有機電界発光アレイから伸びる透明導電層及び該透明導電層の一部を露出させる不透明導電層が積層されたパッドを形成する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項6の有機電界発光表示素子の製造方法において、さらに、前記有機電界発光アレイを覆うようにパッケージング板を前記基板に接合させる工程と、外部駆動信号を前記有機電界発光アレイに供給するために前記パッドに信号供給フィルムを接続させる工程と、前記透明導電層上にシリコン層を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項7の有機電界発光表示素子の製造方法において、前記不透明導電層は、前記パッケージング板及び前記信号供給フィルムが設けられている領域以外の領域で一部除去されていることを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項9の発明は、請求項6の有機電界発光表示素子の製造方法において、前記透明導電層は酸化物を含み、前記不透明導電層はモリブデン(Mo)を含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項10の発明は、請求項6の有機電界発光表示素子の製造方法において、前記有機電界発光アレイはアノード電極及びカソード電極を有し、前記透明導電層は前記アノード電極及びカソード電極の中の少なくともいずれか一つと同一物質であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る有機電界発光表示素子及びその製造方法は、有機ELアレイから伸張された透明導電層上に、該透明導電層の一部を露出させると共に、パッケージング板及び接続フィルムと重畳するように不透明導電層を形成する。これによって、不透明導電層の露出をなくし、水(H2O)及び酸素(O2)などによる不透明導電層の酸化を防止することができ、パッド部の不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の参考例に係る有機電界発光表示素子の一部を示す面である。
【図2】図1に示されたパッド部(A)を具体的に示す斜視図である。
【図3】図1のII−II’ 線における断面図である。
【図4】本発明の参考例に係る有機電界発光表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る有機電界発光表示素子の一部を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る有機電界発光表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】従来の有機電界発光表示素子を概略的に示す断面図である。
【図8】図7に示された有機電界発光アレイのI−I’ 線における断面図である。
【図9】従来の有機電界発光表示素子のパッド部を示す図である。
【図10】従来のパッド部の不良を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明に係る有機電界発光表示素子について詳しく説明する。
【0026】
図1は、本発明の参考例に係る有機EL表示素子の一部を示す図であり、図2は、図1に示されたパッド部(A)のパッドを具体的に示す図であり、図3は、図1に示されたII−II’ 線における断面図である。
【0027】
図1乃至図3に示された本発明に係る有機EL表示素子の有機ELアレイ150の構造は、図7乃至図9に示される従来の構造と同一である。基板102上には、第1電極(またはアノード電極)104と第2電極(またはカソード電極)112が、互いに交差する方向に形成されている。第1電極104は、基板102上に所定の間隔をおいて多数個形成されている。このような第1電極104が形成された基板102上には、個々のEL領域ごとに開口部を有する絶縁膜106が形成されている。絶縁膜106上には、その上に形成される有機発光層110及び第2電極112を分離するための隔壁8が設けられている。隔壁108は第1電極104を横切る方向に形成され、上段部が下段部より広い幅を有するオーバーハング(Overhang)構造を有している。隔壁108が形成された絶縁膜106上には、順次、有機化合物から構成される有機発光層110と第2電極112が全面蒸着されている。
【0028】
有機EL表示素子のパッド部のパッド137は、外部から駆動信号を受けるために、導電性フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)130を間に介して、COF(Chip On Film)、TCP(Tape Carrier Package)などの信号供給フィルム132と電気的に接続されている。パッド137は、有機ELアレイ150の第1電極104または第2電極112と接続される透明導電層(第1導電層)136と、透明導電層136の導電性を高めるための不透明導電層(第2導電層)134と、透明導電層136及び不透明導電層134を覆うように形成されるダミー絶縁パターン175とを具備している。
【0029】
ダミー絶縁パターン175は、不透明導電層34の酸化及び腐蝕を防止する機能を有している。言い替えれば、水(H2O)及び酸素(O2)などに弱いモリブデン(Mo)などから形成されている不透明導電層134を覆うようにダミー絶縁パターン175が設けられ、不透明導電層134が水(H2O)及び酸素(O2)などにさらされるのを回避している。これによりパッド137が酸化及び腐蝕されるなどのパッド部の不良を防止することができる。 また、ダミー絶縁パターン175には、不透明導電層134を一部露出させる接触ホール180が形成されており、信号供給フィルム132が接触ホール180を介して露出する不透明導電層134と接続されて、パッド137と電気的に接続できるようになっている。
【0030】
ここで、透明導電層136には、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)などが使用され、不透明導電層134には、モリブデン(Mo)などが使用されている。ダミー絶縁パターン175は、有機ELアレイ150の絶縁パターン106と同一物質からなっている。
【0031】
さらに、ダミー絶縁パターン175上、または基板102とダミー絶縁パターン175の界面領域にシリコン膜138を設けることによって不透明導電層134を万全に保護している。
【0032】
このように本発明の参考例に係る有機EL表示素子のパッド部は、有機ELアレイ150の第1及び第2電極(104,112)の中の少なくともいずれか一つと電気的に接続された透明導電層136と、不透明導電層134と、透明導電層136及び不透明導電層134を覆うように形成されて不透明導電層(第2導電層)134を一部露出させる接触ホール180を有したダミー絶縁パターン175を具備している。これによって、湿気及び酸素などから不透明導電層134を保護することができ、パッド部の不良を防止することができる。
【0033】
図4は、本発明の参考例に係る有機EL表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
先ず、ステップ2において、基板102上に、有機ELアレイ150の第1電極104及び第2電極112とそれぞれ接続される透明導電層136が形成される。ここで、透明導電層136には、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)などが使用されている。
【0034】
ステップ4において、透明導電層136上にスパッタリングなどの蒸着方法を利用して不透明導電物質が全面蒸着された後、マスクを利用したフォトリソグラフィ工程及びエッチング工程により不透明導電物質がパターニングされ不透明導電層134が形成される。
【0035】
次に、ステップ6において、第1電極104、透明導電層136及び不透明導電層134が形成された基板102上に感光性絶縁物質が蒸着された後、フォトリソグラフィ工程により感光性絶縁物質がパターニングされ、有機ELアレイ150の絶縁膜106と、不透明導電層134上のダミー絶縁パターン175が形成される。絶縁膜106は、第1電極104を部分的に露出することにより、発光領域を形成しており、ダミー絶縁膜175は、透明導電層136及び不透明導電層134を覆うように形成されると共に、不透明導電層134の一部を露出させる接触ホール180を有している。これで、透明導電層136、不透明導電層134及びダミー絶縁パターン175が積層された構造のパッド137が形成される。
【0036】
次に、ステップ8において、封止(Encapsulation)工程によりキャップ128が基板102と接合される。また、ステップ10において、ACF130を介してパッド137と信号供給フィルム132が電気的に接続される。即ち、ACF130は、ダミー絶縁パターン175の接触ホール180を介してパッド137の不透明導電層134と接続される。そして最後に、ステップ12において、ダミー絶縁パターン175上、またはダミー絶縁パターン175と基板102の界面領域にシリコン膜138が形成される。
【0037】
図5は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示素子の一部を示す図である。
図5に示された有機EL装置のパッド領域のパッド137は、外部から駆動信号を受けるために導電性フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)130を間に介して信号供給フィルム132、例えば、TCP(Tape Carrier Package)132などのような接続フィルムと電気的に接続されている。パッド137は、有機ELアレイ150の第1電極104または第2電極112と接続される透明導電層136と、透明導電層136の導電性を高めるための不透明導電層134が積層された構造を有している。ここで、不透明導電層134は、透明導電層136上に形成されると共に、透明導電層136の一部が露出するように形成されている。さらに具体的には、パッケージング板128及びTCP132と重畳される領域以外の領域では、透明導電層136が露出するように形成されている。不透明導電層134及び透明導電層136上には、湿気及び酸素などにより不透明導電層134の酸化を防止するためのシリコン層138が形成されている。
【0038】
このように本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置のパッド領域には、第1及び第2電極(4,12)の中のいずれか一つと接続される透明導電層136上に、パッケージング板128及びTCP132と重畳される領域に不透明導電層134が形成されている。これによって、パッド領域の中のパッケージング板128及びTCP132と重畳しない領域で透明導電層136が露出する態様に形成され、従来と比べて水(H2O)及び酸素(O2)などによる不透明導電層134の酸化を防止することができる。
【0039】
これをより詳しく説明すると次のようになる。
一般的にモリブデン(Mo)などによって形成された不透明導電層134は、湿気及び酸素などにさらされると、酸化される性質がある。これに比べて、透明導電層136は、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)などによって形成されているので酸素及び湿気などにより酸化されない。すなわち、透明導電層136は、酸化物(Oxide)を含むことによって不透明導電層134に比べて相対的に酸に強い性質を有している。
【0040】
これによって、有機ELアレイ150が形成された基板102とパッケージング板128の接合工程、及びACF130を間に介してパッド137と TCP132との接続工程などが実施される間、透明導電層136は大気中の湿気及び酸素にさらされても酸化されず、不透明導電層134はパッケージング板128及びTCP132により湿気及び酸素にさらされないので、どの導電層も酸化されなくなり、各パッド137に印加される電圧差によるガルヴァーニ電気腐蝕も発生しなくなる。よって、パッド不良を防止することができる。
【0041】
図6は、本発明に係る有機EL表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
先ず、ステップ32において、基板102上に有機ELアレイ150が形成されると共に、有機ELアレイ150の第1電極104及び第2電極112とそれぞれ接続される透明導電層136が形成される。ここで、透明導電層136には、 ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)などが使用されている。
【0042】
次に、ステップ34において、透明導電層136上にスパッタリングなどの蒸着方法を利用して不透明導電物質が全面蒸着された後、マスクを利用したフォトリソグラフィ工程、及びエッチング工程により不透明導電物質がパターニングされ不透明導電層134が形成される。ここで、不透明導電層134は、後に実施される封止工程により基板102と接合されるパッケージング板128及びパッド137と電気的に接続されたTCP132と重畳する領域に形成される。これによってパッケージング板128及びTCP132と重畳しない領域の透明導電層136が露出するようになる。これで、透明導電層136及び不透明導電層134が積層された構造のパッド137が形成される。
【0043】
次に、ステップ36において、封止工程によりパッケージング板128が基板102と接合され、ステップ38において、ACF130を介してパッド137と TCP132が電気的に接続される。そして最後に、ステップ40において、露出した透明導電層136上にシリコン層138が形成される。
【0044】
このように本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、有機ELアレイに駆動信号を供給する透明導電層136上に透明導電層136を一部露出させると共に、パッケージング板128及びTCP132と重畳する領域に不透明導電層134が形成される。これによって、不透明導電層134が露出しなくなるので、水(H2O)及び酸素(O2)などによる不透明導電層134の酸化を防止することができる。これで、各パッド137に印加される電圧差によるガルヴァーニ電気腐蝕も発生しなくなり、パッド不良を防止することができる。
【符号の説明】
【0045】
102 基板
104 第1電極
106 絶縁膜
108 隔壁
110 有機発光層
112 第2電極
126 封止材
128 パッケージング板
130 ACF
132 信号供給フィルム
134 不透明導電層(第2導電層)
136 透明導電層(第1導電層)
137 パッド
138 シリコン膜
150 有機ELアレイ
175 ダミー絶縁パターン
180 接触ホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界発光アレイと、該有機電界発光アレイに駆動信号を供給すると共に、透明導電層及び該透明導電層の一部を露出させる不透明導電層が積層されているパッドとを具備することを特徴とする有機電界発光表示素子。
【請求項2】
前記有機電界発光アレイを覆うパッケージング板と、前記パッドと電気的に接続される信号供給フィルムと、前記透明導電層上に形成されたシリコン層とをさらに具備することを特徴とする請求項2記載の有機電界発光表示素子。
【請求項3】
前記不透明導電層は、前記パッケージング板及び前記信号供給フィルムが設けられている領域以外の領域で一部除去されていることを特徴とする請求項2記載の有機電界発光表示素子。
【請求項4】
前記透明導電層は酸化物を含み、前記不透明導電層はモリブデン(Mo)を含むことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光表示素子。
【請求項5】
前記有機電界発光アレイはアノード電極及びカソード電極を含み、前記透明導電層は前記アノード電極及びカソード電極の中の少なくともいずれか一つと同一物質であることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光表示素子。
【請求項6】
有機電界発光アレイを形成する工程と、前記有機電界発光アレイから伸びる透明導電層及び該透明導電層の一部を露出させる不透明導電層が積層されたパッドを形成する工程とを有することを特徴とする有機電界発光表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記有機電界発光アレイを覆うようにパッケージング板を前記基板に接合させる工程と、外部駆動信号を前記有機電界発光アレイに供給するために前記パッドに信号供給フィルムを接続させる工程と、前記透明導電層上にシリコン層を形成する工程とをさらに有することを特徴とする請求項6記載の有機電界発光表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記不透明導電層は、前記パッケージング板及び前記信号供給フィルムが設けられている領域以外の領域で一部除去されていることを特徴とする請求項7記載の有機電界発光表示素子の製造方法。
【請求項9】
前記透明導電層は酸化物を含み、前記不透明導電層はモリブデン(Mo)を含むことを特徴とする請求項6記載の有機電界発光表示素子。
【請求項10】
前記有機電界発光アレイはアノード電極及びカソード電極を有し、前記透明導電層は前記アノード電極及びカソード電極の中の少なくともいずれか一つと同一物質であることを特徴とする請求項6記載の有機電界発光表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−66017(P2011−66017A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292313(P2010−292313)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【分割の表示】特願2005−39392(P2005−39392)の分割
【原出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(502032105)エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド (2,269)
【Fターム(参考)】