説明

有機ELデバイス

【課題】有機ELデバイスにおいて、電極取出し部を簡易に形成することができ、効率的に製造することができるものとする。
【解決手段】有機ELデバイス1は、導電性を有する第1の基板2と、第1の基板2上に形成された有機層3と、透光性を有する第2の基板6と、第2の基板6上に形成された電極層4と、を備え、第1の基板2の電極層4及び第2の基板6の有機層3が当接するように配され、有機層3は、第2の基板の周縁部のいずれかの領域には形成されておらず、有機層3が形成されていない領域に、電極層4の一部が延設され、第1の基板2は、延設された電極層と対向するが存在せず、電極層4の一部が露出して電極取出し部40を構成する。有機層3が形成されていない領域に延設された電極層4が第1の基板2から露出して電極取出し部40となしたので、第1の基板2を除去する等の簡易な手順で電極取出し部40を形成でき、効率的に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極取出し部が形成された有機ELデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、陽極及び陰極で挟持させた発光層が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面状の発光パネルとしての製造が容易であることから、各種表示装置やバックライトとして用いられる。更に、近年では、高輝度に対応したものが実現され、これを照明器具に用いることが注目されている。
【0003】
一般的な有機EL素子は、ガラス基板上に、陽極として、ITO等の透明電極が形成され、この陽極上に有機発光材料等から成る発光層を含む有機層が形成されると共に、この有機層上に、陰極として、アルミ等の金属薄膜層が形成された構成となっている。陽極は、基板及び有機層の間に存在するので、陽極を外部給電端子と接続するため、陽極の一部、又は陽極の導電性を補助する補助電極の一部が、有機層が形成される領域外に延設され、この延設された部分が、電極取出し部として機能する。また、陽極、有機層、陰極は、陽極の取出電極部及び陰極の一部を除いて、銅箔等の封止部材によって封止される。この構成によれば、陽極及び陰極間に電圧印加されて、発光層で発生した光は、直接又は陰極によって反射されて、陽極及びガラス基板を透過して、素子外に取り出される。
【0004】
発光層が結晶化されている一般的なLED(無機EL素子)とは異なり、有機EL素子の発光層を含む有機層は、高分子等の有機材料から構成されているので、可撓性を有するものとすることができる。また、これらの有機材料には、真空蒸着の他、スピンコート、インクジェット印刷、スクリーン印刷等によって発光層を形成することができるものがある。更に、基板には、上述したガラス基板に限らず、可撓性を有する透光性プラスチック基板を用いることもできる。これらの材料を用いることにより、有機EL素子は、巻き取りや折り曲げが可能なフレキシブルな発光デバイスの光源として利用することができる。また、ロール状に巻かれた可撓性の基板が、発光層等を形成するため成膜装置に供給され、成膜後のデバイスがロール状に巻かれて回収される、いわゆるロールツーロール方式により、有機ELデバイスを製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−165620公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1には、電極取出し部をどのように形成するかについて、具体的に記載されていない。通常、電極取出し部を設けるためには、陽極及び発光層を複雑な形状にパターンニング形成する必要があり、上述したロールツーロール方式による製造方法であっても、必ずしもデバイスを効率的に製造することができなかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電極取出し部を簡易に形成することができ、効率的に製造することができる有機ELデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る有機ELデバイスは、導電性を有する第1の基板と、前記第1の基板上に形成された有機層と、透光性を有する第2の基板と、前記第2の基板上に形成された電極層と、を備え、前記第1の基板の有機層が形成された面及び前記第2の基板の電極層が形成された面が対面するように配され、前記有機層は、前記第2の基板の周縁部のいずれかの領域には形成されておらず、前記第2の基板は、前記有機層が形成されていない領域と対向する部分に、前記電極層の一部が該有機層のある領域より外周側に延設され、前記第1の基板は、前記延設された電極層と対向する部分には存在せず、前記延設された電極層が前記第1の基板から露出して電極取出し部を構成していることを特徴とする。
【0009】
上記有機ELデバイスにおいて、前記第1の基板及び前記第2の基板は、前記第1の基板又は前記第2の基板の周縁部に設けられた接着層によって接合されることが好ましい。
【0010】
上記有機ELデバイスにおいて、前記第2の基板のうち、前記電極層と向かい合う面には、前記有機層が形成される領域と重なり合わないように、且つ前記電極層と接触しないように、吸湿層が設けられていることが好ましい。
【0011】
上記有機ELデバイスにおいて、前記電極取出し部は、前記電極層の一部を除いて封止材によって封止されていることが好ましい。
【0012】
上記有機ELデバイスにおいて、前記封止材の一部は、前記接着層が延設されたものであることが好ましい。
【0013】
上記有機ELデバイスにおいて、前記封止材は、前記接着層とは別部材であることが好ましい。
【0014】
上記有機ELデバイスにおいて、前記電極層は、前記有機層と当接する主電極部と、前記主電極部と接すると共に、前記有機層とは絶縁された補助電極部と、から構成されることが好ましい。
【0015】
上記有機ELデバイスにおいて、前記電極取出し部の電極層は、前記補助電極部の一部であることが好ましい。
【0016】
上記有機ELデバイスにおいて、前記主電極部は、低抵抗性を有する細線材を格子状、ライン状又はハニカム状に配置したグリッド電極から構成されていることが好ましい。
【0017】
上記有機ELデバイスにおいて、前記第1の基板は、バリア性を有する金属材料から構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、有機層が形成されていない領域に延設された電極層が第1の基板から露出して電極取出し部となるようにしたので、第1の基板を除去する等の簡易な手順で電極取出し部を形成することができ、有機ELデバイスを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る有機ELデバイスの分解斜視図。
【図2】同有機ELデバイスの裏面図。
【図3】(a)は図2の(A)線又は(D)線での側断面図、(b)は同図の(B)線での側断面図、(c)は同図の(C)線での側断面図。
【図4】同有機ELデバイスの電極取出し部の斜視図。
【図5】同有機ELデバイスの電極層として用いられるグリッド電極の構成例を斜視図。
【図6】(a)乃至(e)は同有機ELデバイスの電極取出し部の作成手順を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る有機ELデバイスの構成について、図1乃至図5を参照して説明する。本実施形態の有機ELデバイス1は、図1に示すように、導電性を有する第1の基板2と、第1の基板2上に形成された有機層3と、透光性を有する第2の基板6と、第2の基板6上に形成された電極層4と、を備える。第1の基板2の有機層3が形成された面及び第2の基板6の電極層4が形成された面は、互いに当接するように配される。本実施形態において、第1の基板2は、有機層3を形成するための基板として機能するだけでなく、電子を供給する陰極としても機能する。また、電極層4は、有機層3に正孔を供給する陽極として機能する。
【0021】
有機層3は、第1の基板2側から順に、電子注入層31と、発光層32と、ホール輸送層33と、ホール注入層34と、から構成される。電極層4は、有機層3と当接する主電極部41と、主電極部41と接すると共に、有機層3とは絶縁層7によって絶縁された補助電極部42と、から構成される。接着層5は、吸湿層8を含み、この吸湿層8は、絶縁層7の外周に位置するように、第1の基板2及び第2の基板6間に挟持される。
【0022】
有機層3は、第1の基板2において、第2の基板6の周縁部のいずれかの領域に対応する部分には形成されていない。本例においては、図2の(B)線及び(C)線で示す部分には、有機層3が形成されていない。この有機層3が形成されていない領域は、第2の基板6の4辺のいずれかに設けられていればよく、また、一辺の全長に亘って設けられていなくてもよく、部分的に設けられていてもよい(不図示)。一方、図2の(A)線及び(D)線で示す部分には、有機層3が端部まで形成されている(図3(a)も参照)。なお、本実施形態の有機ELデバイス1の製造工程において、第1の基板2に対して有機層3がロールツーロール方式で形成される場合、ロール進行方向は、図2の(A)線及び(D)線方向となる。図2の(A)線及び(D)線で示す部分を含む両辺には、有機層3等を封止すると共に、有機ELデバイス1の側部を保護する保持部材(不図示)が設けられる。この保持部材は、図2の(B)線及び(C)線で示す部分を含む両辺にも設けられてもよい。
【0023】
有機層3が形成されていない領域、すなわち本例では、図2の(B)線及び(C)線で示す部分には、絶縁層7を介して補助電極部42の一部が延設されている(図1参照)。延設された補助電極部42は、図3(b)(c)、図4に示すように、対向する第1の基板2が除去されて露出することにより、電極取出し部40を構成する。この露出した補助電極部42の一部に、外部給電端子等に電気的に接続される。なお、電極取出し部40の形成手順については後述する。
【0024】
第1の基板2は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、錫、鉛、金、銀、鉄又はチタン等の金属又は合金等から成るシート材が用いられ、このシート材は、ロール巻取りが可能な程度の可撓性を有するものが好ましい。シート材の表面は、素子の短絡を抑制するため、平滑性を有することが必要であり、その表面粗さは、Ra100nm以下であることが好ましく、Ra10nm以下であることが更に好ましい。
【0025】
また、第1の基板2は、水分やガス等に対するバリア性を有する金属材料から構成されていることが好ましい。こうすれば、水分やガス等による有機層3の劣化を抑制することができる。また、第1の基板2は、有機層3に電子を供給する陰極として機能するので、仕事関数の小さい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料から構成されることが好ましい。
【0026】
また、第1の基板2には、アルミニウムや銀等の金属、又はこれら金属を含む化合物を用いることができ、アルミニウムと他の電極材料とを組み合わせて、積層構造等として構成されたものを用いてもよい。このような電極材料の組み合わせとしては、アルカリ金属とアルミニウムとの積層体、アルカリ金属と銀との積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムとの積層体、アルカリ金属の酸化物とアルミニウムとの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とアルミニウムとの積層体、これらの金属種と他の金属との合金等が挙げられる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム等とアルミニウムとの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、フッ化リチウム(LiF)/アルミニウム混合物/積層体、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物等が挙げられる。
【0027】
有機層3を構成する電子注入層31としては、第1の基板2を構成する材料と共通のもの、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物、上記材料を含めて、電子注入を促進させるドーパントを混合した有機半導体材料等が用いられる。また、発光層32としては、有機EL素子の発光材料として知られる任意の材料が用いられる。このような発光材料としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、及びこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子の一部分に有する化合物あるいは高分子等が挙げられる。また、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えば、Ir錯体、Os錯体、Pt錯体、ユーロピウム錯体等々の発光材料、又はそれらを分子内に有する化合物、若しくは高分子も好適に用いることができる。また、これらの材料から成る発光層32は、蒸着、転写等乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等、塗布によって成膜するものであってもよい。
【0028】
ホール輸送層33は、例えば、ホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNB等を代表例とする、トリアリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物等を挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることができる。ホール注入層34は、例えは、銅フタロシアニン(CuPc)等の低分子量の有機化合物や、チオフェントリフェニルメタン、ヒドラゾリン、アリールアミン、ヒドラゾン、スチルベン、トリフェニルアミン等を含む有機材料が挙げられる。具体的には、ポリビニルカルバゾール(PVCz)、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)、TPD等の芳香族アミン誘導体等で、上記材料を単独で用いてもよく、また、二種類以上の材料を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
電極層4の主電極部41には、有機EL素子の陽極材料として知られる任意の材料を用いることができる。陽極材料としては、銀、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物、金等の金属のナノワイヤー、ナノドットを含むナノ粒子、導電性高分子、導電性の有機材料、ドーパント(ドナー又はアクセプタ)含有有機層、導電体と導電性有機材料(高分子含む)の混合物が挙げられ、導電性及び透光性を有していればよく、これらに限定されない。また、導電性物質の他にバインダーを含んだものであってもよい。バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ジアクリルフタレート樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられる。
【0030】
また、主電極部41は、図5に示すように、低抵抗性を有する細線材43を格子状、ライン状又はハニカム状に配置した、いわゆるグリッド電極41’から構成されたものであってもよい。細線材43の径は、主電極部41の透光性を低下させ難いように、100μm以下であることが好ましい。また、図示したような、細線材43が格子状に配置されたものの場合、各細線材43の間隔は、導電性を維持できる範囲で広く設定され、好ましくは、開口率が90%以上となるように設定される。細線材43としては、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、鉛、金、チタン等の各種金属及び合金、カーボン等の導電性材料が挙げられる。グリッド電極41’は、上記金属又は導電性材料を含むペーストをスクリーン印刷やグラビアコート、ダイコート等により、有機層3上にパターン形成される。このグリッド電極41’は、塗布による膜成形が容易であり、有機ELデバイス1を効率的に製造する上で有効である。なお、これらの材用や形成方法は、有機層3への濡れ性や、有機層3へのダメージを発生させないものであれば、特に限定されない。
【0031】
補助電極部42は、対向する有機層3の周縁を囲うように枠状に配置されると共に、その一部が上述したように有機層3のある領域より外周側に延設されて、この延設された部分が電極取出し部40を構成する。補助電極部42は、第2の基板6上に、上述した形状となるようにパターニング形成され、補助電極部42の枠状となった部分の上に、絶縁層7が配される。すなわち、発光層32と対向する主電極部41に透明性の高い材料を用い、周囲の補助電極部42に導電性の高い材料を用いれば、電極層4全体としては、透光性が高く、且つ導電性も高くすることができる。補助電極部42の構成材料としては、一般的な配線電極に用いられる各種金属が用いられ、主電極部41との電気伝導性が良いものであれば、特に限定されない。また、主電極部41とは異なり、透光性を有していなくてもよい。
【0032】
接着層5は、第1の基板2及び絶縁層7との接着性に優れた樹脂材から成るペースト状又はシート状の部材が、有機層3及び電極層4の周縁を覆うように配置されたものである。接着層5の構成材料としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0033】
第2の基板6は、第1の基板2と同形状に形成された透明な板状部材であり、板厚が均一で、表面平滑性を有するものが用いられる。第2の基板6の構成材料としては、例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラスや、透光性樹脂材料等が用いられる。
【0034】
絶縁層7は、補助電極部42の枠状部分と略相似形状で、補助電極部42よりも幅広となるようにパターン形成されたものである。絶縁層7は、その内周縁が有機層3の外周よりも大きくなるようパターンニングされ、補助電極部42と有機層3との間の絶縁性を確保する。絶縁層7の構成材料としては、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等から成る熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂をウェットプロセスにより形成するか、SiOやSiN等の酸化物や窒化物をスパッタ等のドライプロセスで形成することができる。なお、何れのプロセスにおいてもパターニングが必要であり、特にウェットプロセスとしては、好ましくはスクリーン印刷、ダイコート、スプレーコート、グラビアコート等の方法によって絶縁層7を形成することができる。なお、接着層5は、その種類や形状等によっては絶縁層7に代替させることができ、この場合、絶縁層7は設けられなくてもよい。
【0035】
吸湿層8は、乾燥剤を含有させた樹脂材料を、有機層3が形成される領域が開口するよう枠状にパターン形成されたものである。この吸湿層8を設けることにより、接着層5に僅かに侵入した水分がブロックされるので、有機層3の劣化を効果的に抑制することができる。吸湿層8の構成材料には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等から成る光硬化型接着性樹脂に、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、酸化マグネシウム等から成る乾燥剤が添加されたものを用いることができる。なお、吸湿層8は、第2の基板6と第1の基板2とが接合される前に、予め第2の基板6(補助電極部42を含む)のうち、第1の基板2と向かい合う面に設けられていることが好ましい。
【0036】
次に、電極取出し部40の形成手順について、図6(a)乃至(e)を参照して説明する。第1の基板2上には、図6(a)に示すように、有機層3が積層される。また、第2の基板6上には、図6(b)に示すように、補助電極部42、主電極部41及び絶縁層7が夫々所定の形状にパターン形成される。また、第1の基板2及び第2の基板6が、図6(c)に示すように、有機層3及び電極層4(主電極部41)が当接するように配され、第2の基板6の所定位置には、吸湿層8が設けられ、図6(d)に示すように、これらが接着層5によって接着固定される。このとき、接着層5は、延設された補助電極部42上には被らないように配される。また、補助電極部42及び絶縁層7が枠状に構成され(図1参照)、これら補助電極部42及び絶縁層7が、積層されて他の部分より厚くなることにより、接着層5の有機層3側への流入を堰き止めるダムとして機能する。接合後、図6(e)に示すように延設された補助電極部42と対向する第1の基板2が除去されて、補助電極部42が露出することにより、電極取出し部40が形成される。なお、延設された補助電極部42と対向する第1の基板2を除去した後に、第1の基板2及び第2の基板6とを接合させてもよい。
【0037】
すなわち、有機ELデバイス1は、有機層3が形成されていない領域に延設された電極層4が第1の基板2から露出して電極取出し部40となしたので、第1の基板2を除去する等の簡易な手順で電極取出し部40を形成でき、効率的に製造することができる。また、第1の基板2、有機層3、絶縁層7、補助電極部42及び主電極部41を構成する材料には、可撓性を有する材料を用いることができ、また、第2の基板6は、可撓性又は硬質性のいずれを有するものであってもよい。つまり、可撓性を有するように作成された有機層3付の第1の基板6を、可撓性又は硬質性を有する適宜の第2の基板6に接合させれば、同一構成の有機層3付の第1の基板6を用いて、フレキシブル型及びハード型の両方の有機ELデバイス1を製造することができる。
【0038】
また、本実施形態の有機ELデバイス1は、第1の基板2として、ロール状に巻かれた状態で供給される帯状のシート材を用いることもできる。この場合、帯状の第1の基板2の表面上に、有機層3をスリットコータ等によって連続的に形成し、形成後、再びロール状に巻き取り回収する。こうすれば、いわゆるロールツーロール方式により、複数の有機層3付の第1の基板6から成るシートロール(不図示)を作成することができる。そして、帯状の第1の基板2と同じ幅で、且つ同じ長さに形成され、電極層4等が形成された長尺の第2の基板6に、このシートロールを接着し、これらを定間隔で裁断すると共に、上述したように、第1の基板2を除去して、電極取出し部40を形成する。こうすれば、図2に示したような有機ELデバイス1を、短時間で数多く製造することができる。特に、近年では、発光層32の複層化や、それらの間に電荷調整層を配置する等、有機層3が多層化される傾向にあり、ロールツーロール方式による有機層3の形成は、上述したような多数層から成る有機層を、同時に数多く製造することができる。
【0039】
なお、本発明は、基板の周縁部に有機層が形成されいない領域があり、この領域に配された電極層と対向する基板の一部が除去されて、電極層が露出することによって、電極取出し部が形成されるものであれば、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 有機ELデバイス
2 第1の基板(陰極)
3 有機層
4 電極層(陽極)
40 電極取出し部
41 主電極部
42 補助電極部
5 接着層
6 第2の基板
7 絶縁層
8 吸湿層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1の基板と、前記第1の基板上に形成された有機層と、透光性を有する第2の基板と、前記第2の基板上に形成された電極層と、を備え、
前記第1の基板の有機層が形成された面及び前記第2の基板の電極層が形成された面が対面するように配され、
前記有機層は、前記第2の基板の周縁部のいずれかの領域には形成されておらず、
前記第2の基板は、前記有機層が形成されていない領域と対向する部分に、前記電極層の一部が該有機層のある領域より外周側に延設され、
前記第1の基板は、前記延設された電極層と対向する部分には存在せず、前記延設された電極層が前記第1の基板から露出して電極取出し部を構成していることを特徴とする有機ELデバイス。
【請求項2】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、前記第1の基板又は前記第2の基板の周縁部に設けられた接着層によって接合されることを特徴とする請求項1に記載の有機ELデバイス。
【請求項3】
前記接着層は、吸湿層を含むことを特徴とする請求項2に記載の有機ELデバイス。
【請求項4】
前記電極層は、前記有機層と当接する主電極部と、前記主電極部と接すると共に、前記有機層とは絶縁された補助電極部と、から構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機ELデバイス。
【請求項5】
前記電極取出し部の電極層は、前記補助電極部の一部であることを特徴とする請求項4に記載の有機ELデバイス。
【請求項6】
前記第1の基板は、バリア性を有する金属材料から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の有機ELデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−174472(P2012−174472A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35172(P2011−35172)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】