説明

有機ELパネル、およびこれを用いた有機EL照明装置

【課題】ユーザが安全に有機ELパネルを交換、点灯することができ、しかも、有機ELパネルが寿命に達したことをユーザが適切に判断できるようにする。
【解決手段】有機ELパネル1は、基板3上に有機EL素子4が形成されるとともに、有機EL素子4の品質等の特性情報を保持する特性情報保持部5、およびこの特性情報保持部5に保持されている特性情報を出力する情報出力端子6が形成されている。前記特性情報保持部5に保持されている特性情報は、前記有機EL素子4の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELパネル、およびこれを用いた有機EL照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自発光型のEL素子は、EL(エレクトロルミネッセンス)現象を利用しているので、発熱がほとんどなく、また、軽量、薄型であり、特に、有機EL素子は、無機EL素子に比較して色の選択が容易で、駆動電圧が低くて省電力であるなど、種々の利点を有している。
【0003】
上記の有機EL素子は、陽極と陰極とからなる一対の電極の間に有機発光層が形成されて構成されるが、この有機EL素子は、長時間の点灯によって有機発光層の物性が変化するなど、素子自体の特性変化によって輝度が劣化するといった特性を有している。
【0004】
ところで、有機EL素子は、光出力の高出力化の可能性という面から照明用の光源として有望視されているが、大面積を照明するためには、基板上に単一あるいは複数の有機EL素子を形成して有機ELパネルを構成することも考慮されている。このような場合、上記のように、点灯時間によって有機EL素子の輝度特性が劣化すると、パネルに輝度むらが生じて均一な照明ができなくなるといった不具合を生じる。
【0005】
そこで、従来は、有機EL素子を駆動する点灯装置に、有機EL素子に対する累積点灯時間や点灯強度(印加電圧レベル)を計測するモニタ回路を設け、このモニタ回路で計測されたデータと予め設定されている有機EL素子の輝度特性の経時変化のデータとを比較参照して、有機EL素子の特性劣化に応じて補正された駆動信号を有機EL素子に加えることで輝度むらの発生を抑制するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【特許文献1】特開2002−175041号公報
【特許文献2】特開2002−229513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1,2に記載されている従来技術のように、有機EL素子を駆動する点灯装置に、有機EL素子に対する累積点灯時間や点灯強度(印加電圧レベル)を計測するモニタ回路を設けた場合には、有機EL素子の特性の経時変化(電圧値や電流値)を判断するための検出値やその判断基準となる閾値がモニタ回路側の回路部品のばらつき等によって変動することがあり、正確に経時変化や寿命を検知することが難しいという問題がある。
【0007】
また、有機ELパネルは、その寸法、形状やメーカによってその仕様が種々異なっていることが多い。すなわち、有機ELパネルの寸法や形状、メーカの違いなどによって、電力消費量(ワット数)や定格電圧、定格電流、調光の可否、調色の可否、逆バイアスの印加の可否、定格寿命時間などの仕様がそれぞれ異なっている場合がある。
【0008】
ところが、従来のものでは、このような種々の仕様の違いを容易に判別する手段が何ら設けられていないため、ユーザ側では有機ELパネルを実装する際に、そのような仕様の違いを確実かつ簡単に判断する術がなかった。このため、点灯装置によって規格外の有機ELパネルが誤って点灯され、その結果、有機ELパネルが故障するなどの不具合を生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、ユーザが安全に有機ELパネルを交換、点灯することができ、しかも、ユーザが有機ELパネルの寿命を適切に判断することができる有機ELパネル、およびこれを用いた有機EL照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る有機ELパネルは、基板上に、有機EL素子に加えて、この有機EL素子の品質等の特性情報を保持する特性情報保持部が設けられるとともに、この特性情報保持部に保持されている特性情報を出力する情報出力端子が形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の発明に係る有機ELパネルは、請求項1記載の発明において、前記特性情報保持部に保持されている特性情報は、前記有機EL素子の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とを含むことを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明に係る有機ELパネルは、請求項1または請求項2に記載の有機ELパネルと、この有機ELパネルを点灯する点灯装置とを有し、前記点灯装置は、前記有機ELパネルを点灯駆動する点灯回路、および前記情報出力端子から出力される特性情報に基づいて前記点灯回路の動作を制御する制御部を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、有機ELパネルにその素子の品質等の特性情報を保持する特性情報保持部が設けられているので、有機ELパネルを点灯装置に接続して使用する際、特性情報保持部に保持されている特性情報が情報出力端子から読み出されるので、点灯装置側において、読み出された特性情報に基づいて有機EL素子の品質等の仕様の内容を確実かつ簡単に判断することができる。このため、例えば点灯装置によって規格外の有機ELパネルが誤って点灯されて故障を引き起こすなどの不具合が生じるの未然に防止することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、特性情報保持部に保持されている特性情報は、有機EL素子の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とを含むので、有機EL素子の特性の経時変化(電圧値や電流値)を判断するための検出値やその判断基準となる閾値がモニタ回路側の回路部品のばらつき等の影響によって変動するのが抑制され、より正確に経時変化や寿命を検知することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、有機ELパネルを点灯する点灯装置の制御部は、有機ELパネルの情報出力端子から出力される特性情報に基づいて点灯回路の動作を制御するので、点灯装置が規格外の有機ELパネルを誤って点灯して故障を引き起こすなどの不具合を防止できるだけでなく、有機EL素子の特性に応じてその駆動信号を補正できるため、輝度むらの発生等を抑制することができる。さらに、特性情報に基づいて有機EL素子に加わる電圧値や電流値が基準値よりも低下するなどの異常が検知された場合には、有機ELパネルの点灯を停止させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における有機EL照明装置の有機ELパネルと点灯装置とを示す斜視図、図2は有機ELパネルの正面図、図3(A)は有機EL照明装置の要部構成を示すブロック図、図3(B)は有機ELパネルの回路図である。
【0018】
この実施の形態1の有機EL照明装置は、有機ELパネル1と点灯装置2とからなる。
【0019】
有機ELパネル1は、例えばガラス等でできた透明の単一の基板3上に有機EL素子4が形成されている。有機EL素子4は、陽極と陰極とからなる一対の電極の間に有機発光層が形成されてなるもので、陽極は例えばITOなどの透明電極から構成されている。
【0020】
さらに、この実施の形態1の有機ELパネル1は、基板3上に有機EL素子4の品質等の特性情報を保持する特性情報保持部5が設けられるとともに、この特性情報保持部5に保持されている特性情報を外部に出力する複数(本例では4つ)の情報出力端子6が形成されている。
【0021】
この場合の特性情報保持部5は、例えば特性情報が予め記憶された半導体メモリにより構成される。また、特性情報保持部5に保持される特性情報としては、有機ELパネル1の電力消費量(ワット数)、定格電圧や定格電流、調光の可否、調色の可否、このパネルを製造したメーカ、逆バイアスの印加の可否、定格寿命に関する特性値などの情報が含まれている。そして、前記4つの情報出力端子のうち情報出力端子6a,6bの2つは定格寿命に関する特性値に係るもので、他の情報出力端子は有機ELパネル1の電力消費量(ワット数)、定格電圧や定格電流、調光の可否、調色の可否、このパネルを製造したメーカ、逆バイアスの印加の可否等の特性情報に関するものである。なお、7a,7bは有機EL素子4の有機発光層を挟む一対の電極にそれぞれ接続された駆動信号入力端子である。
【0022】
一方、点灯装置2は、有機ELパネル1を装着するソケット部8、有機ELパネル1の情報出力端子6から出力される特性情報の内容を表示する表示部9を備えるとともに、有機ELパネル1を点灯駆動する点灯回路10、および有機ELパネル1の特性情報保持部5から読み出された特性情報に基づいて点灯回路10の動作を制御する制御部11を有している。なお、表示部9は、有機ELパネル1に異常がある場合にその旨を報知する報知部を兼用している。
【0023】
上記構成において、有機ELパネル1をソケット部8に装着すると、これに応じて有機ELパネル1の特性情報保持部5に保持されている特性情報が読み出され、この特性情報が情報出力端子6から出力されて点灯装置2の制御部11に取り込まれる。
【0024】
点灯装置2の制御部11は、有機ELパネル1から読み出された特性情報を表示部9に表示するため、ユーザはその表示内容を見て、点灯装置2に対して適切な仕様の有機ELパネル1であるか否かを簡単に確認することができる。また、制御部11は、有機ELパネル1から読み出された特性情報に基づいて有機ELパネル1を点灯駆動する点灯回路10の動作を制御する。
【0025】
例えば、消費電力量の情報を読み取った場合、制御部11は規格外のものであれば、点灯回路10の点灯駆動を停止させるとともに、表示部9を点滅して規格外である旨をユーザに報知する。また、定格電圧、電流の情報を読み取った場合、制御部11はその定格電圧、電流に適合するように点灯回路10を制御する。調光情報を読み取った場合、制御部11はこの調光情報に基づいて点灯回路10を制御して調光を行う。調光不可の場合には、定格点灯のみを行う。調色の可否の情報を読み取った場合も調光の場合と同様な制御を行う。さらに、パネル製造メーカの情報を読み取った場合、制御部11はそのメーカの特性に適合するように、例えば同一の定格電圧であっても発光出力特性が若干異なる場合、メーカ情報に基づいて発光出力がメーカに影響されずに同じになるように有機EL素子4に加える印加電圧を制御する。逆バイアス電圧の印加の可否の情報を読み取った場合、制御部11は有機EL素子4に対する逆バイアス電圧の印加が可能であれば、逆バイアスを含む電圧を印加することで寿命を確保しつつ点灯を行う。
【0026】
またこの実施形態1においては、有機ELパネル1の特性情報保持部5には、有機EL素子4の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とを保持するようになっている。そして、図3(B)に示すように、有機EL素子ELに接続されて有機EL素子を点灯させるための電圧を印加する駆動信号入力端子7a,7b間には、抵抗R1,R2による分圧回路と、抵抗R3,R4による分圧回路とを設けて、抵抗R3,R4による分圧電圧を情報出力端子6aから出力して有機EL素子4の経時変化に伴う特性値の計測情報とするとともに、抵抗R2に並列に接続したツェナダイオードZDのツェナ電圧VZを情報出力端子6bから出力して有機EL素子の寿命の判断基準となる閾値情報としている。この場合、抵抗R1,R2,R3,R4やツェナダイオードZDはチップ部品で形成しているが、有機EL素子の積層膜形成プロセスで作り込んでも良い。
【0027】
一方、点灯装置2には、有機ELパネル1の各情報出力端子6a,6bに対して接続されたコンパレータ12が設けられており、このコンパレータ12によって一方の情報出力端子6aから出力される計測値と他方の情報出力端子6bから出力される閾値とを比較するようになっている。
【0028】
そして、コンパレータ12によって一方の情報出力端子6aから出力される計測値と他方の情報出力端子6bから出力される閾値とが比較され、計測値が閾値を越えた場合には、コンパレータ12の出力レベルが反転するので、これに応じて、制御部11は、有機ELパネル1が寿命に達したものと判断し、制御部11の制御回路11aの出力により停止回路11bが動作して点灯回路10の出力を停止させて有機ELパネルの点灯を停止させると共に、表示部9の表示によりユーザにパネル交換を促す。
【0029】
このように、この実施の形態1では、有機EL素子4の経時変化に伴う特性値の計測情報や寿命の判断基準となる閾値情報を有機ELパネル1から直接に得られるようにしておけば、それらの情報が点灯装置2側の回路部品のばらつき等の影響によって変動するのが抑制され、より正確に経時変化や寿命を検知することができ、点灯装置の構成を簡略化できる。また、有機ELパネル1の特性情報保持部5に予めその品質等の特性情報を保持させるようにしているので、点灯装置2によって規格外の有機ELパネル1が誤って点灯されて故障を引き起こすなどといった不具合が生じるのを未然に防止することができる。さらに、有機EL素子4の特性に応じて点灯回路10から出力される駆動信号を補正できるため、輝度むらの発生等を有効に抑制することができる。
【0030】
なお、この実施の形態1では特性情報保持部5を半導体メモリで構成したが、これに限らず、例えばICタグ、バーコード、QRコード等によって構成することも可能である。
【0031】
(実施の形態2)
図4(A)は本発明の実施の形態2における有機EL照明装置の要部構成を示すブロック図、図4(B)は有機ELパネルの回路図であり、実施の形態1と対応する構成部分には同一の符号を付す。
【0032】
この実施の形態2においても、実施の形態1の場合と同様、有機ELパネル1には特性情報保持部5とその情報出力端子が設けられている。ただし、この実施の形態2では、有機ELパネル1にコンパレータ12とその電源回路13とを備えていて、特性情報保持部5に保持されている特性情報は、有機EL素子4の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とをコンパレータ12で対比した結果の寿命判定情報である。その他の構成は実施の形態1の場合と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0033】
このように、実施の形態2においては、情報出力端子6から寿命判定情報が出力されるので、これに応じて、制御部11は有機ELパネル1が寿命に達したものと判断し、制御部11の制御回路11aの出力により停止回路11bが動作して点灯回路10の出力を停止させて有機ELパネルの点灯を停止させる。
【0034】
なお、上記の実施の形態1,2において、制御部11は制御回路11aの出力で停止回路11bが動作するとしたが、停止回路11bにかえて寿命の延命措置のための出力低下をさせるものであったり、光出力の低下を防止するための出力上昇を行うものであったりしても良い。また、有機ELパネル1は専ら照明用として使用する場合を前提として説明したが、本発明はこれに限らず、例えばドットマトリックス型の有機EL表示用として使用する場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における有機EL照明装置の有機ELパネルと点灯装置とを示す斜視図である。
【図2】同装置を構成する有機ELパネルの正面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における有機EL照明装置を示すものであり(A)は要部構成を示すブロック図、(B)は有機ELパネルの回路図である。
【図4】本発明の実施の形態2における有機EL照明装置を示すものであり(A)は要部構成を示すブロック図、(B)は有機ELパネルの回路図である。
【符号の説明】
【0036】
1 有機ELパネル
2 点灯装置
3 基板
4 有機EL素子
5 特性情報保持部
6,6a,6b 情報出力端子
9 表示部(報知部)
10 点灯回路
11 制御部
11a 制御回路
11b 停止回路
12 コンパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に有機EL素子が形成されてなる有機ELパネルにおいて、前記基板上には、前記有機EL素子の品質等の特性情報を保持する特性情報保持部が設けられるとともに、この特性情報保持部に保持されている特性情報を出力する情報出力端子が形成されていることを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記特性情報保持部に保持されている特性情報は、前記有機EL素子の経時変化に伴う特性値の計測情報と、寿命の判断基準となる閾値情報とを含むことを特徴とする請求項1記載の有機ELパネル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の有機ELパネルと、この有機ELパネルを点灯する点灯装置とを有し、前記点灯装置は、前記有機ELパネルを点灯駆動する点灯回路、および前記情報出力端子から出力される特性情報に基づいて前記点灯回路の動作を制御する制御部を備えることを特徴とする有機EL照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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