説明

有機ELパネル

【課題】 表示領域における最外周の画素が、中央部の画素よりも短期間で劣化する虞が少ない有機ELパネルを提供する。
【解決手段】 有機ELパネル14は、積層体16を基板15に形成したものである。積層体16は、第一電極17と、絶縁層18と、有機層20と、第二電極21とを有する。第一電極17は、ストライプ状に形成された陽極部17aと、第二電極21に電気的に接続される陰極端子部17bと、を有する。絶縁層18は、表示領域Sにて各々所定幅Wをあけてマトリクス状に形成された複数の第一の開口部18aと、第一電極17が形成されていない領域にて第一の開口部18aから前記所定幅Wをあけて形成された第二の開口部18bと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一電極と第二電極の間に有機層を挟持した有機EL素子を含む積層体を基板上に形成した有機ELパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、基板上に有機EL素子を形成した有機ELパネルが種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。有機ELパネル1は、ガラス基板2上に積層体3を形成したものであり、この積層体3は、第一電極4,絶縁層5,有機層6,第二電極7を有する(図8及び図9参照)。
【特許文献1】特開2001−68267号公報
【0003】
第一電極4は、ITO(Indium
Tin Oxide)からなるものであり、縦方向のストライプ状の陽極部4aと、第二電極7に電気的に接続される陰極端子部4bとを有している。絶縁層5には、マトリクス状に設けられる画素に対応した開口部5aと、陰極端子部4bと第二電極7を導通させるコンタクトホール5cとが形成されている。絶縁層5は、有機層6よりも広い領域に形成されている。有機層6は、蒸着等の方法によって正孔注入層,正孔輸送層,発光層,電子輸送層及び電子注入層を順次形成したものである。第二電極7は、アルミニウム(Al)からなるものであり、横方向のストライプ状になっている。有機ELパネル1の表示領域Sには、画素Pがマトリクス状に設けられており、図示しない駆動回路によって画素Pを各々オン/オフさせ、所望の文字や図形を表示することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示領域Sにおける最外周の画素P1は、中央部の画素P2よりも短期間で劣化するという問題を有していた。この問題は、最外周の画素P1では、有機層6が、絶縁層5から発せられる有機ガス(以下、アウトガスと記す)の影響を受けやすいために生じると考えられる。つまり、絶縁層5の開口部5aは一定間隔で設けられており、中央部の画素P2は、所定幅W1の絶縁層5に囲まれているが、最外周の画素P1では、絶縁層5の外縁までの幅W2が前記所定幅W1よりも大きくなるため、絶縁層5から発せられるアウトガスの影響を受けやすい。
本発明は、表示領域における最外周の画素が、中央部の画素よりも短期間で劣化する虞が少ない有機ELパネルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するため、請求項1に記載したように、第一電極17と絶縁層18と有機層20と第二電極21とを有する積層体16を基板15に形成した有機ELパネル14において、前記絶縁層18は、表示領域Sにて各々所定幅Wをあけてマトリクス状に形成された複数の第一の開口部18aと、前記第一電極17が形成されていない領域にて前記第一の開口部18aから前記所定幅Wをあけて形成された第二の開口部18bと、を有するものである。
【0006】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記第一電極17は、ストライプ状に形成された陽極部17aと、前記第二電極21に電気的に接続される陰極端子部17bと、を有するものである。
【0007】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記絶縁層18,28,38は、前記陰極端子部17bを前記第二電極21に電気的に接続させるための第三の開口部18c,28c,38cを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
第二の開口部を設けて、各画素における周囲の絶縁層の幅を等しくしたことによって、最外周の画素が、中央部の画素よりも短期間で劣化する虞が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を添付の図面に基づいて説明する。図1乃至図5は第一実施形態を示すものである。
有機ELパネル14は、ガラス基板15上に積層体16を形成したものである。積層体16は、第一電極17,絶縁層18,リブ部19,有機層20,第二電極21を有している。
【0010】
第一電極17は、酸化インジウム(InO)と酸化スズ(SnO)の混合物であるITO(Indium
Tin Oxide)からなるものであり、スパッタリング或いは蒸着等の手段によって、ガラス基板15に形成されている。第一電極17は、一定間隔をあけて配置された縦方向のストライプ状の陽極部17aと、第二電極21に導通される陰極端子部17bとを有している。
【0011】
絶縁層18は、ポリイミド系の絶縁材料からなるものであり、フォトリソグラフィー法等の手段によってパターニングされている。絶縁層18は、マトリクス状に配置された画素Pに対応する開口部18a(第一の開口部)と、表示領域S外に形成されたダミー開口部18b(第二の開口部)と、陰極端子部17bと第二電極21を電気的に接続させるコンタクトホール18c(第三の開口部)とを有している。
【0012】
リブ部19は、フェノール系の絶縁材料からなるものであり、フォトリソグラフィー法等の手段によって形成されている。リブ部19は、絶縁層18上に形成されており、逆テーパ形状になっている。リブ部19は、陽極部17aと直交する方向に平行線状に設けられており、このリブ部19によって有機層20及び第二電極21をストライプ状に分断されている。
【0013】
有機層20は、正孔注入層20a,正孔輸送層20b,発光層20c及び電子輸送層20dからなるものであり、白色発光するものである(図4参照)。なお、有機層20は、少なくとも発光層20cがあれば良いが、本実施形態のように正孔注入層20a,正孔輸送層20b及び電子輸送層20dを設けることにより、発光輝度を向上させることができる。第二電極21は、アルミニウム(Al)からなるものであり、リブ部19によって、第一電極17の陽極部17aに直交する方向のストライプ状に分断されている。
【0014】
次に、図5に基づいて、絶縁層18について更に詳述する。絶縁層18の開口部18aは、表示領域S内において、各々所定幅Wをあけて形成されている。つまり、隣設する開口部18aと開口部18aとの間隔は、所定幅Wとなっている。絶縁層18のダミー開口部18bは、隣設された開口部18aから前記所定幅Wをあけて、表示領域S外に形成されている。ダミー開口部18bは、表示領域Sの左右に設けられており、ダミー開口部18bにおいては、第一電極17は形成されておらず、第二電極21がガラス基板15に当接している。
【0015】
本実施形態の如く、ダミー開口部18bを設けたことにより、各画素Pにおける左右の絶縁層18の幅が等しくなり、最外周の画素Pが、中央部の画素Pよりも短期間で劣化する虞が少ない。
なお、本実施形態の有機ELパネル14はリブ部19を有するため、ダミー開口部18bは表示領域Sの左右のみに設けられているが、リブ部19がない場合には、図6に示す第二実施形態のように、表示領域Sの左右だけでなく、表示領域Sの上下にもダミー開口部18bを形成しても良い。また、図7に示す第三実施形態のように、ダミー開口部18bを切込み形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態を示す断面図。
【図3】同上実施形態を示す断面図。
【図4】同上実施形態を示す有機層の拡大正面図。
【図5】同上実施形態を示す正面図。
【図6】本発明の第二実施形態を示す正面図。
【図7】本発明の第三実施形態を示す正面図。
【図8】従来例を示す正面図。
【図9】同上従来例を示す断面図。
【図10】同上従来例を示す正面図。
【符号の説明】
【0017】
14 有機ELパネル
15 基板
16 積層体
17 第一電極
17a 陽極部
17b 陰極端子部
18 絶縁層
18a 開口部(第一の開口部)
18b ダミー開口部(第二の開口部)
18c コンタクトホール(第三の開口部)
20 有機層
21 第二電極
S 表示領域
W 所定幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と絶縁層と有機層と第二電極とを有する積層体を基板に形成した有機ELパネルにおいて、
前記絶縁層は、表示領域にて各々所定幅を開けてマトリクス状に形成された複数の第一の開口部と、前記第一電極が形成されていない領域にて前記第一の開口部から前記所定幅をあけて形成された第二の開口部と、を有することを特徴とする有機ELパネル。
【請求項2】
前記第一電極は、ストライプ状に形成された陽極部と、前記第二電極に電気的に接続される陰極端子部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の有機ELパネル。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記陰極端子部を前記第二電極に電気的に接続させるための第三の開口部を有することを特徴とする請求項2の有機ELパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−194062(P2007−194062A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10778(P2006−10778)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】