説明

有機ELリペア方法とリペア装置

【課題】レーザ照射装置を使用せず、低コストで 欠陥部を有する有機EL素子をリペアする方法及び、装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子の電圧電流特性の計測、または、逆電圧が印加された状態下の有機EL素子の発光像の輝度を有機EL素子の領域ごとに把握・比較して輝点が 存在するか否かの判断をして、有機EL素子は欠陥部を有するか否かを判定するとともに、欠陥部が存在すると判定された場合には、有機EL素子に逆印加電圧を一定時間印加することによって有機EL素子の欠陥部分をリペアする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥部を有する有機EL素子のリペア方法及びリペア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置として、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機EL表示装置が注目されている。この有機EL素子は自発光素子であり、視野角が広く、バックライトを必要とせず、消費電力も少なく、更に、応答速度も速いという優れた特徴を有している。この有機EL素子は、陽極と陰極との間に発光機能を有する有機EL層を挟持し、さらに有機EL層は、ホール輸送層、発光層及び電子輸送層が 積層される構造となっている。また有機EL表示装置は、この有機EL素子を基板にマトリックス状に配置することにより構成される。
【0003】
この有機EL素子の欠陥としては、製造過程における異物の混入等に起因して、陽極と陰極との間の抵抗値が正常な有機EL素子の場合よりも小さくなるものも多い。この場合には、陽極と陰極の間に電圧を印加しても、この欠陥部分を通じて電流が流れてしまうために、陽極と陰極の間の電位差が小さくなり、有機EL素子が通常の発光をしなくなってしまう。このような欠陥の従来のリペア方法としては、欠陥部分またはその周辺にレーザを照射する方法がある。
【特許文献1】特開2004−227852
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザ照射装置は高価であり、レーザ照射装置によるリペアコストは比較的高額なものとなる。したがって、より簡易な装置でリペアできれば、有機EL素子のリペアコストの低減を図ることが可能となり、最終的には、有機EL素子の製造コストの低減につながる。
【0005】
そこで、本発明は、レーザ照射装置を使用せず、低コストで 欠陥部を有する有機EL素子をリペアする方法及び、リペア装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法であって、
前記有機EL素子に、前記有機EL素子の陰極を高電位、陽極を低電位とする電圧を一定時間印加して、有機EL素子の欠陥部のリペアをすることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(c)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満 以上である場合には当該方法を終了し、前記基準電流特性における電流値以上である場合には前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、前記(b)ステップへ戻るステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(c)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満である場合には当該方法を終了し、前記基準電流特性における電流値以上である場合には、さらに、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加した特定印加回数が所定の特定印加回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、前記(b)ステップへ戻り、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
(a)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(b)撮像した発光像の中に輝点が存在するか否かを検査するステップと、
(c)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して前記(b)ステップへもどるステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
(a)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(b)撮像した発光像の中に前記輝点が存在するか否かを検査するステップと、
(c)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像した特定撮像回数が所定の特定撮像回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して(b)ステップへもどり、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法に係り、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(c)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(d)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満である場合には、(e)ステップへ進み、前記基準電流特性における電流値以上である場合には、さらに、前記特定印加回数が所定の回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに電圧電流特性を計測して(c)ステップへ戻り、所定の回数未満でないときは(e)ステップへ進むステップと、
(e)撮像した発光像の中に前記輝点が存在するか否かを検査するステップと、
(f)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像した前記特定撮像回数が所定の回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して(e)ステップへもどり、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6に 記載のリペア方法に係り、
前記逆印加電圧は前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧以下のDC電圧であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至6に 記載のリペア方法に係り、
前記逆印加電圧はパルス電圧であって、前記パルス電圧は3ボルト以上で前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧の3倍以下であって、パルス幅は2msec以上5sec以下であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、請求項3及び6に 記載のリペア方法に係り、
前記所定の特定印加回数は6回であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、請求項5及び6に 記載のリペア方法に係り、
前記所定の特定撮像回数は6回であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、請求項3及び6に 記載のリペア方法に係り、
前記所定の特定印加回数は、リペア対象である前記有機EL素子と同様の工程及び仕様によって製造された相当数の有機EL素子の故障解析を予め行って定めたものであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、請求項5及び6に 記載のリペア方法に係り、
前記所定の特定撮像回数は、リペア対象である前記有機EL素子と同様の工程及び仕様によって製造された相当数の有機EL素子の故障解析を予め行って定めたものであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項13に記載の発明は、有機EL素子のリペアを行うリペア装置に係り、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する有機EL素子保持手段と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する逆電圧印加手段と、
前記電圧を印加された前記有機EL素子を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像したデータより前記有機EL素子の各領域における輝度分布を検査して、その周辺より著しく輝度が高い点を前記輝点と判断する輝点判断手段と、を含むことを特徴とする。
【0019】
また、請求項14に記載の発明は、有機EL素子のリペアを行うリペア装置に係り、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する手段と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する手段と、
前記有機EL素子の電圧電流特性を計測する電圧電流特性計測手段と、
前記計測手段により計測された前記有機EL素子の前記電圧電流特性を所定の基準電圧電流特性と比較することにより、両者の相違が所定の範囲外か否かを判断する電流値判断手段と、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、請求項15に記載の発明は、有機EL素子のリペアを行うリペア装置に係り、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する前記有機EL素子保持手段と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する前記逆電圧印加手段と、
前記電圧を印加された前記有機EL素子を撮像する前記撮像手段と、
前記撮像手段により撮像したデータより前記有機EL素子の各領域における輝度分布を検査して、その周辺より著しく輝度が高い点を前記輝点と判断する前記輝点判断手段と、
前記輝点が前記有機EL素子のどの領域に存在しているかを示す位置情報を記憶する輝点位置情報記憶手段と、を含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項16に記載の発明は、請求項13乃至15記載のリペア装置に係り、
前記逆印加電圧は前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧以下のDC電圧であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項17に記載の発明は、請求項13乃至15記載のリペア装置に係り、
前記逆印加電圧はパルス電圧であって、前記パルス電圧は3ボルト以上で前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧の3倍以下であって、パルス幅は2msec以上5sec以下であることを特徴とする。
【0023】
また、請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17に記載のリペア方法またはリペア装置に係り、
前記逆印加電圧はパルス電圧であって、前記パルス電圧の 絶対値が3以上で前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧の絶対値の3倍以下であって、パルス幅は2msec以上5sec以下であることを特徴とする。
【0024】
前記電圧電流特性の測定は、所定の1箇所の電圧の電流値だけを測定し、前記電圧電流特性の比較は前記所定の1箇所の電圧の電流値だけを比較することを特徴とする。
【0025】
また、請求項19に記載の発明は、請求項1乃至17に記載のリペア方法またはリペア装置に係り、
前記電圧電流特性の測定は、所定の数箇所の電圧の電流値だけを測定し、前記電圧電流特性の比較は前記所定の数箇所の電圧の電流値だけを比較することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に記載の発明によれば、有機EL素子が欠陥部を含む有機EL素子の陽極と陰極の間に逆電圧を印加することにより、欠陥部に集中して電流を流して、欠陥部を効率的にリペアでき、欠陥部にレーザを照射することによるリペア方法に比べてリペアコストを低減できる。レーザ照射装置は高価であり、また、欠陥部にレーザを照射することによるリペア方法より、逆電圧を印加することによるリペア方法のほうが作業効率が高いからである。
【0027】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に 記載の発明による効果に加えて、有機EL素子が欠陥部を含むか否かを、有機EL素子の電圧電流特性によって効率的に判断できる。より詳しく言えば、有機EL素子の電圧電流特性の測定は、短時間で、簡易に行え、また、1度だけの逆印加電圧の印加によってはリペアできない場合に、電圧電流特性の測定と逆印加電圧の印加を繰り返すことによって効率よく、有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項2に 記載の発明の効果に加えて、電圧電流特性の測定と逆印加電圧の印加の繰り返し回数を、相当数の有機EL素子のリペア実績を参考にして、最適な回数を得て、その回数だけ繰り返すことによって、より効果的に有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
【0029】
また、請求項4に記載の発明によれば、逆印加電圧が印加されている状態下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像し、輝点の有無によって、有機EL素子が欠陥部を有するか否かを判断することによって、電圧電流特性による判断だけでは発見できない欠陥部を発見でき、有機EL素子の品質を向上させることができる。
【0030】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項4に 記載の発明による効果に加えて、所定の回数、逆印加電圧が印加されている状態下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像し、輝点の有無を判断するステップと、逆印加電圧の印加を繰り返すことにより、さらに有機EL素子の品質を向上させることができる。また、相当数の有機EL素子のリペア実績を参考にして、最適な繰り返し回数を得て、その回数だけ繰り返すことによって、より効果的に有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に 記載の発明による効果に加えて、有機EL素子が欠陥部を含むか否かを、有機EL素子の電圧電流特性によって効率的に判断できる。より詳しく言えば、有機EL素子の電圧電流特性の測定は、短時間で、簡易に行え、また、1度だけの逆印加電圧の印加によってはリペアできない場合に、電圧電流特性の測定と逆印加電圧の印加を繰り返すことによって効率よく、有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
【0031】
また、請求項6に記載の発明によれば、最初に効率 的に欠陥部の有無を判断できる電圧電流特性の判断によって発見できる欠陥部を効率よくリペアし、その後で、効率は電圧電流特性による判断よりは悪いが、電圧電流特性による判断では発見できない欠陥部をも発見できるという輝点の有無による判断によるリペアを行うことによって、効率と品質の両方の側面を考慮したリペアをすることができる。
【0032】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項1乃至6に記載の発明の効果に加えて、有機EL素子を破壊しない範囲で逆印加電圧値を大きくすることにより電極間に流れる電流値を増加させ、より効果的にリペアを行うことができる。
【0033】
また、請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至6に記載の発明の効果に加えて、逆印加電圧としてDC電圧として印加すると有機EL素子を破壊してしまうほど大きな電圧値をパルス的に印加することにより、有機EL素子を破壊することなく欠陥部をリペアできるという効果を得られる。
【0034】
また、請求項9に記載の発明によれば、時間的な観点から妥当な範囲でリペアできる。
【0035】
また、請求項10に記載の発明によれば、時間的な観点から妥当な範囲でリペアできる。
【0036】
また、請求項11に記載の発明によれば、請求項3及び6に記載の発明の効果に加えて、相当 数の有機EL素子のリペア実績を参考にして、最適な繰り返し回数を得て、その回数だけ繰り返すことによって、より効果的に有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
【0037】
また、請求項12に記載の発明によれば、請求項5及び6に記載の発明の効果に加えて、相当数の有機EL素子のリペア実績を参考にして、最適な繰り返し回数を得て、その回数だけ繰り返すことによって、より効果的に有機EL素子の欠陥部をリペアできる。
【0038】
また、請求項13に記載の発明によれば、逆印加電圧が印加されている状態下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像し、輝点の有無によって、有機EL素子が欠陥部を有するか否かを効率良く 判断し、また、逆印加電圧の印加によってリペアすることによりレーザ照射装置を具備しない装置でリペアでき、レーザ照射装置を使用する場合に比べて、リペアコストを低減できる。
【0039】
また、請求項14に記載の発明によれば、電圧電流特性によって、有機EL素子が欠陥部を有するか否かを効率良く判断し、また、逆印加電圧の印加によってリペアすることによりレーザ照射装置を具備しない装置でリペアでき、レーザ照射装置を使用する場合に比べて、リペアコストを低減できる。
【0040】
また、請求項15に記載の発明によれば、逆印加電圧が印加されている状態下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像し、輝点の有無及び電圧電流特性によって、有機EL素子が欠陥部を有するか否かを効率良く判断し、また、逆印加電圧の印加によってリペアすることによりレーザ照射装置を具備しない装置でリペアでき、レーザ照射装置を使用する場合に比べて、リペアコストを低減できる。
【0041】
また、請求項16に記載の発明によれば、請求項13 乃至15に記載の発明の効果に加えて、有機EL素子を破壊しない範囲で逆印加電圧値を大きくすることにより電極間に流れる電流値を増加させ、より効果的にリペアを行うことができる。
【0042】
また、請求項17に記載の発明によれば、請求項13 乃至15に記載の発明の効果に加えて、逆印加電圧としてDC電圧として印加すると有機EL素子を破壊してしまうほど大きな電圧値をパルス的に印加することにより、有機EL素子を破壊することなく欠陥部をリペアできるという効果を得られる。
【0043】
また、請求項18に記載の発明によれば、請求項13 乃至15に記載の発明の効果に加えて、電圧電流特性の比較を、1箇所の電流値による比較のみにすることにより、ある程度の見逃し確立は増加するものの、高い効率で有機EL素子が欠陥部分を有するか否かを判断でき、より効率的にリペア処理をおこなうことが可能となり、大量生産モードに適した製造ラインに適している。
【0044】
また、請求項19に記載の発明によれば、請求項13 乃至15に記載の発明の効果に加えて、電圧電流特性の比較をする電圧値の箇所の数について相当数の実績より最適な数を算出して適用することにより、見逃し確立の増加と生産性の向上という相反する要素の調和を実現できる電圧値の箇所の数を採用して有機EL素子の欠陥部分のリペア処理をおこなうことが可能となり、柔軟に大量生産モードに適した製造ラインを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図を参照しつつ、発明を実施するための最良の形態につき説明する。実施の形態1では、リペア方法に係る発明について、実施の形態2では、リペア装置に係る発明について説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るリペア方法を 適用する有機EL素子の断面図である。
図1において、100は有機EL表示装置の有機EL素子である。101は有機EL素子の陰極である。102は有機EL素子の陽極である。103は有機EL層である。有機EL層103は、さらにホール輸送層、発光層及び電子輸送層からなるが、本図においては図示していない。105は有機EL層103中に存在する異物である。104は、逆印加電圧を示す。106は逆印加電圧104が印加されたことにより流れる電流を示す矢印である。
欠陥を有しない有機EL素子に図1に示されるように逆印加電圧104を印加した場合には、 ダイオードに逆電圧を印加した状態となり、電流はほとんど流れない。しかし、有機EL層103中に、何らかの異物105が混入すると、その部分だけは本来は構成されているべきであるダイオードが部分的に形成されていないことになり、印加電圧に対してダイオード特性を示さず、逆印加電圧104を印加した場合には、有機EL層に異物105が存在すると、その異物105が存在する欠陥部分は局所的に陽極102と陰極101の間の抵抗値が小さくなってしまう。その結果、陰極101が高電位となり、陽極102が低電位となるような逆印加電圧104を印加すると、欠陥部分を有しない有機EL素子の場合には電流はほとんど流れないが、欠陥部分を有する有機EL素子のかなりの割合のものは、陰極101から陽極102に電流が流れてしまう。また、欠陥部分以外はダイオードの逆方向状態であり高抵抗であるので、陰極から陽極へ流れる電流は、欠陥部分に集中する。一般に異物による欠陥部分の大きさは1ミクロン以下から数ミクロンの微小なものであるので、電流がこの欠陥部分を集中的に流れることによって、ジュール熱が発生して、欠陥部分は高抵抗化してしまう。本実施態様に係る発明は、この点に着目した有機EL素子のリペア方法である。以下、実際に欠陥部を有する有機EL素子を本発明に係るリペア方法によってリペアをした実施例に基づいて、説明する。
欠陥を有する有機EL素子を本発明に係るリペア方法によってリペアするためには、リペア対象となる有機EL素子の陰極101が高電位、陽極102が低電位となるように、陰極101と陽極102の間に逆印加電圧を一定時間印加する。本実施例では、印加電圧は7ボルトである。本実施例では、この7ボルトの逆印加電圧を5分間印加することにより欠陥を有する有機EL素子がリペアされた。
【0047】
図2は、本実施例でリペアされた有機EL素子のリペア前とリペア後の、逆印加電圧が印加されている状態下の発光像である。図2の(a)は、リペア前の発光像である。図2の(b)は、リペア後の発光像である。図2において、201は7ボルトの逆印加電圧を印加し始めた時の有機EL素子の発光像である。207は7ボルトの逆印加電圧を5分間印加した後の有機EL素子の発光像である。202、203、204、205及び206は欠陥に起因するリーク電流が流れていることによる輝点である。図2の(a)においては、5つの輝点が存在していたが、5分間7ボルトの逆印加電圧を印加することにより、この5つの輝点は消滅した。
この5つの輝点が消滅したことにより視覚的に欠陥がリペアされたことが確認できたが、本実施例について、リペア前とリペア後の有機EL素子の電圧電流特性を計測して、電圧電流特性の点からも、欠陥がリペアされたことを再確認した。
【0048】
図3は本実施例に係る有機EL素子のリペア前とリペア後の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフである。図3において、301はリペア前の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフである。302は7ボルトの逆印加電圧を5分間印加した後の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフである。グラフ302からわかるように、7ボルトの逆印加電圧を5分間印加した後の有機EL素子に流れる電流は7ボルトの逆印加電圧を5分間印加する前に流れた電流にくらべて格段に少なく、リペアが正常におこなわれていることを電圧電流特性からも確認できた。
【0049】
本実施例と、その他の実施例によって、逆印加電圧を印加すると輝点を生じたり、電圧電流特性において、正常な有機EL素子よりも大きな電流が流れてしまったりするような欠陥を有する有機EL素子のかなりの割合のものについては7ボルト近辺の逆印加電圧を数分間印加することによって輝点が消滅し、電圧電流特性も正常な有機EL素子の電圧電流特性と同様なものとなり欠陥部分がリペアされることを確認した。しかし、欠陥部分が大きいと、7ボルトの逆印加電圧を5分間印加するだけでは、リペアされない場合もある。そこで、リペア方法としては、逆印加電圧を一定時間印加する方法に加えて、逆印加電圧を一定時間印加した後に、輝点を確認し、また、電圧電流特性から、欠陥の有無を判断して、リペアされていないと判断される間は、逆印加電圧を一定時間印加するステップと欠陥の有無を確認する ステップと、を繰り返すリペア方法をも採用する。以下、説明する。
【0050】
図4は、逆印加電圧の印加と、輝点の撮像・確認と、電圧電流特性の計測と、電圧電流特性を正常な有機EL素子の電圧電流特性と比較するステップを含む実施の形態1に係る複合的なリペア方法を示すフローチャートである。
図4において、S401は有機EL素子の逆バイアス電圧から有機EL素子の発光開始電圧直前の準バイアス電圧までの電圧を印加して、有機EL素子の電圧電流特性を計測するステップである。
S402は逆印加電圧が印加された状態の有機EL素子の発光像を顕微鏡とCCDカメラで撮像するステップである。
S403は計測した欠陥を有する有機EL素子の電圧電流特性における電流値を、予め相当数の正常な有機EL素子の電圧電流特性を計測して定めた所定の基準電圧電流特性における電流値と比較して、ステップ401またはステップ408で計測した電圧電流特性における電流値が所定の基準電圧電流特性における電流値より大きいか否かを比較・判断し、所定の基準電圧電流特性における電流値より大きい場合のみ、逆印加電圧を一定時間印加し、小さい場合は、輝点の有無による判断に進むとするステップである。本実施形態に係る発明は、欠陥部を有する有機EL素子であって、逆印加電圧を一定時間印加することによって欠陥部分をリペアできる有機EL素子の電圧電流特性における電流値は所定の基準電圧電流特性における電流値より大きいことに着目しているからである
S404はその電圧電流特性による判断の回数が所定の回数以下か否かを判断し、所定の回数以上の場合には輝点の確認をするステップに進むステップである。所定の回数だけ逆印加電圧を一定時間印加しても、電圧電流特性における電流値が所定の値以下にならない場合にはさらなる逆印加電圧の印加によって、リペアされる可能性は低く、無限にループすることを防止し、輝点による確認に移行するためである。
【0051】
S405は撮像した発光像の中に輝点が存在しているか否かを確認するステップである。
S406は輝点が存在する場合にこの輝点の 確認のステップを通った回数が所定の回数以下であるか否かを判断するステップである。
S407は欠陥部を有する有機EL素子に逆印加電圧を印加するステップである。
S408は直前のS407ステップにおいて逆印加電圧を印加した有機EL素子に対して有機EL素子の逆バイアス電圧から有機EL素子の発光開始電圧直前の電圧までの順方向バイアス電圧を印加して、有機EL素子の電圧電流特性を計測するステップである。直前のステップ(S407)において一定時間逆印加電圧を印加することによって、リペアにより欠陥部が正しく修正されたか否かを電圧電流特性によって判断するために計測するものである。
【0052】
S409は輝点が存在する有機EL素子に逆印加電圧を一定時間印加するステップである。
S410は直前のS409ステップにおいて逆印加電圧を印加した有機EL素子に対して逆印加電圧印加下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像する ステップである。一定時間逆印加電圧を印加することによって、リペアされたか否かを輝点の有無によって判断するためである。
【0053】
以下、全体的に説明する。最初に、ステップS401において、欠陥を有する有機EL素子の電圧電流特性を測定する。後のステップで、電圧電流特性から欠陥部分の有無と逆印加電圧を一定時間印加することによってリペアが可能なタイプの不良か否かを判別するためである。次に、ステップS402において、逆印加電圧を印加して、印加状態下の有機EL素子の発光像をCCDカメラと顕微鏡を用いて撮像する。後のステップで、輝点の有無によって有機EL素子が欠陥部を有するか否かを判別するためである。次に、ステップS403で、ステップ401またはステップ408において計測した欠陥を有する有機EL素子の電圧電流特性における電流値を、予め相当数の正常な有機EL素子の電圧電流特性を計測して定めた所定の基準電圧電流特性における電流値と比較して、該計測した電圧電流特性における電流値が所定の基準電圧電流特性における電流値より大きいか否かを比較・判断し、所定の基準電圧電流特性における電流値より大きい場合には、逆印加電圧を一定時間印加し、小さい場合には、輝点の有無による判断に進む。次に、ステップS404で、電圧電流特性による判断の回数が所定の回数以下か否かを判断し、所定の回数未満であれば、ステップ407に進む。ステップ407では逆印加電圧を一定時間印加する。陰極より陽極に電流を流して、欠陥部分を高抵抗化することによってリペアするためである。また、所定の回数以上の場合には輝点の 確認をするステップに進む。
次に、ステップS408では、直前のS407ステップにおいて逆印加電圧を印加した有機EL素子に対して有機EL素子の逆バイアス電圧から有機EL素子の発光開始電圧直前の準バイアス電圧までの電圧を印加して、有機EL素子の電圧電流特性を計測する。計測した後には、ステップS403において、該計測した電圧電流特性を所定の基準電圧電流特性と比較する。一定時間逆印加電圧を印加した効果を確認するためである。
【0054】
電流電圧特性による検査が終了したものについては、 ステップS405で、輝点の有無を確認する。有機EL層に異物が混入して有機EL素子に逆印加電圧を印加すると異物が混入下部分に電流が集中して流れ、輝点となる 場合があるからである。また、輝点の有無による検査は電流電圧特性の検査より、所謂、感度が高く、電圧電流特性によって発見できない欠陥部をも発見できるからである。次に、ステップS406で、輝点が存在する場合にこの輝点の確認のステップを通った回数が所定の回数以下であるか否かを判断し、所定の回数以上である場合には終了する。逆印加電圧を一定時間印加することを所定の回数だけしても輝点が消滅しない場合には、さらに逆電圧を印加してもリペアできる可能性は相対的に低く、無限ループを避けるためである。輝点の確認のステップを通った回数が所定の回数以下である場合には、ステップS409において、輝点が存在する有機EL素子に逆印加電圧を一定 時間印加する。輝点のリペアを再度行うためである。次に、ステップS410で直前のS409ステップにおいて逆印加電圧を印加した有機EL素子に対して逆印加電圧印加下の有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像する。一定時間逆印加電圧を印加することによって、リペアされたか否かを輝点の有無によって判断するためである。
【0055】
本実施形態に係る発明においては、リペア対象となる有機EL素子の不良率、求められる品質レベルに応じて、柔軟に、ステップS404とステップ406における所定の回数を定めることができる。回数を少なくすれば、リペアの効率は向上するが品質レベルは下がる。回数を多くすればリペアの効率は下がるが品質レベルは上がる。
【0056】
また、電流電圧特性を計測するポイントの数についても同様であり、リペア対象となる有機EL素子の不良率、求められる品質レベルに応じて、柔軟に計測するポイントの数を定める。ポイントの数を少なくすれば、リペアの効率は向上するが品質レベルは下がる。ポイントの数を多くすればリペアの効率は下がるが品質レベルは上がる。
【0057】
実施例においては、マイナス8Vの1点だけの電流値による判断であっても、相当の効果があることを確認できた。
(実施の形態1に係る効果)
本発明に係るリペア方法は、高価なレーザ照射装置を 必要としないため、レーザを照射することによって欠陥部をリペアする方法に比較して使用する装置が安価なものとなる。また本発明に係るリペア方法によるリペア手順は容易であり、さらに、複数の欠陥部を同時にリペアすることができ、複数の欠陥部をリペアする場合には、各欠陥部ごとにレーザを照射しなければならないというレーザ照射によるリペア方法に比較して、リペア作業効率も格段に高く、リペアコストを大幅に低減できる。また、潜在的な欠陥部も同時にリペアしてしまうので有機EL素子の品質改善にもつながる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明に係るリペア装置について説明する。実際にリペアをした有機EL素子は実施の形態1に係る有機EL素子と同じものである。
【0058】
図5は本実施の形態2に係るリペア装置である。本リペア装置は制御用コンピュータ509と、表示装置510と、撮像部501と、ソースメータ508と、プローブ部506及び保持部505を備える。また、撮像部501は高感度CCDカメラ502と顕微鏡503を備える。高感度CCDカメラ502、顕微鏡503及びソースメータ508はコントローラと通信用ボードを経由して制御用コンピュータ509につながれ、制御用コンピュータ509により制御される。
【0059】
保持部505は有機EL素子を保持する。また、保持部505は制御用コンピュータ509によって制御されX軸、Y軸方向に移動する。プローブ部506は保持部505に保持された有機EL素子504と電気的に接触する。ソースメータ508はプローブ部506に接続されておりプローブ部506を通して有機EL素子504に電圧を印加し、また、有機EL素子に流れる電流を計測する。撮像部501は 顕微鏡503によって拡大された保持部505に保持された有機EL素子の画像をCCDカメラによって撮像する。表示装置510は制御用コンピュータ509の制御により、撮像されたものを表示する。
【0060】
次に、本発明に係るリペア装置の機能と構成を、実際例を基に説明する。
【0061】
欠陥部を有する有機EL素子504を保持部505に設置し、プローブ部506を通してソースメータ508に接続する。次に、ソースメータ508は印加する電圧を順次変化させながら有機EL素子の陽極と陰極の間を流れる電流を測定する。図3は本実施例によって測定された電圧電流特性である。また、ソースメータ508は逆印加電圧を有機EL素子504に一定時間印加して有機EL素子をリペアする。撮像部501は保持部505に設置された有機EL素子の画像を撮像し、表示装置510は 制御用コンピュータ509の制御下において、撮像部501が撮像した画像を表示する。図2の(a)は、7ボルトの逆印加電圧が印加された直後の有機EL素子の画像であり、5つの輝点202、203、204、205、206及び206が観測される。印加されている電圧は、逆電圧であるので、有機EL素子は正常な発光はしないはずであるので、これらの輝点は欠陥部におけるリーク電流に起因すると考えられる。図2の(b)は7ボルトの逆印加電圧が5分間印加された後の画像であり、5つの輝点は消滅している。
【0062】
また、電圧電流特性の比較によって有機EL素子が欠陥部を有するか否かを検査・確認できる。図3において、301はリペアされる前の電圧電流特性を示すグラフである。302は7ボルトの逆印加電圧が5分間印加された後の電圧 電流特性である。グラフ301と302の比較から、容易に確認できるように、電圧が約3.5ボルト以下の、一般的な有機EL素子の正常な発光開始電圧より低い電圧帯における電流値については、リペア後の有機EL素子の電流値は、リペア前の有機EL素子の電流値より格段に小さくなっている。また、このリペア後の有機EL素子の電圧電流特性は欠陥部を有しない有機EL素子の電圧電流特性と同様であり、電圧電流特性の観点からも欠陥部がリペアされていることを確認できた。また、本発明に係るリペア装置においては制御用コンピュータ509は撮像部501と、ソースメータ508とを制御して、有機EL素子504に印加する電圧を自由に変化させて、陽極と 陰極に流れる電流を計測でき、また、同時に、撮像部501を制御して、ソースメータ508によって電圧を印加されている状態の有機EL素子の画像を撮像して、その像を表示装置510に表示する。
【0063】
また、制御用コンピュータ509は保持部505を制御することにより有機EL素子504と撮像手段との相対的位置関係を変化させながら有機EL素子内の輝点を発見する。また、該発見をした場合にはその保持部505を制御したデータに基づいて位置情報を把握して、輝点の位置を把握し、記録する。また、制御用コンピュータ509はソースメータ508を制御して、計測した電圧電流特性と所定の基準電圧電流特性を比較して、測定した電圧電流特性から両者の相違が所定の範囲内であるか否かを判断する。また、制御用コンピュータ509は撮像手段501を制御するとともに、撮像されたデータの輝度分布を有機EL素子の各領域ごとに把握し、その分布データを比較することにより輝点の存在を判断する。
(実施の形態2に係る効果)
本発明に係るリペア装置を使用する者は、有機EL素子に印加する電圧値と印加時間を適時変化させ、その状態での有機EL素子の発光像を表示装置510で観測しながら、画像内の輝点の有無、電圧電流特性の変化を観測しつつ、有機EL素子に印加する逆電圧の電圧と時間を変化させたり、場合によっては、有機EL素子の逆耐圧以上の電圧値を持つパルス電圧を印加したり、適時、ソースメータ508による逆電圧の印加、撮像部501による 撮像、及びソースメータ508による電圧電流特性の計測を繰り返すことにより、柔軟に、有機EL素子の欠陥部をリペアでき、またリペアされたことを確認できる。本発明に係るリペア装置はレーザを照射することによって欠陥部をリペアする装置に比較して安価であり、また操作も容易である。よって、同じ 欠陥部をリペアする場合にレーザリペア装置に比較して、リペアコストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係るリペア 方法を適用する有機EL素子の断面図である。
【図2】本実施例でリペアされた有機EL素子のリペア前とリペア後の、逆印加電圧が印加されている状態の発光像である。図2の(a)は、リペア前の発光像である。図2の(b)は、リペア後の発光像である。
【図3】本実施例に係る有機EL素子のリペア前とリペア後の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフである。
【図4】逆印加電圧の印加と、輝点の撮像・確認と、電圧電流特性の計測と、電圧電流特性を正常な有機EL素子の電圧電流特性と比較するステップを含む実施の形態1に係る複合的なリペア方法を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態2に係るリペア装置である。
【符号の説明】
【0065】
100 有機EL表示装置の有機EL素子
101 有機EL素子の陰極
102 有機EL素子の陽極
103 有機EL層
104 逆印加電圧
105 有機EL層103中に存在する異物
106 逆印加電圧104が印加されたことにより流れる電流を示す矢印
201 7ボルトの逆印加電圧を印加し始めた時の有機EL素子の発光像
202 輝点
203 輝点
204 輝点
205 輝点
206 輝点
207 7ボルトの逆印加電圧を5分間印加した後の有機EL素子の発光像
301 リペア前の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフ
302 リペア後の有機EL素子の電圧電流特性を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア方法であって、
前記有機EL素子に、前記有機EL素子の陰極を高電位、陽極を低電位とする電圧(以下「逆印加電圧」ともいう)を一定時間印加して、有機EL素子の欠陥部のリペアをすることを特徴とするリペア方法。
【請求項2】
有機EL素子のリペアを行うリペア方法であって、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(c)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満である場合には当該方法を終了し、前記基準電流特性における電流値以上である場合には前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、前記(b)ステップへ戻るステップと、を含むことを特徴とするリペア方法。
【請求項3】
有機EL素子のリペアを行うリペア方法であって、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(c)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満である場合には当該方法を終了し、前記基準電流特性における電流値以上である場合には、さらに、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加した回数(以下「特定印加回数」ともいう)が所定の特定印加回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、前記(b)ステップへ戻り、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とするリペア方法。
【請求項4】
有機EL素子のリペアを行うリペア方法であって、
(a)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(b)撮像した発光像の中に周囲より一段と明るい点(以下「輝点」ともいう)が存在するか否かを検査するステップと、
(c)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して前記(b)ステップへもどるステップと、を含むことを特徴とするリペア方法。
【請求項5】
有機EL素子のリペアを行うリペア方法であって、
(a)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(b)撮像した発光像の中に前記輝点が存在するか否かを検査するステップと、
(c)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像した回数(以下「特定撮像回数」ともいう)が所定の特定撮像回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して(b)ステップへもどり、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とするリペア方法。
【請求項6】
有機EL素子のリペアを行うリペア方法であって、
(a)前記有機EL素子に、電圧を印加して、電圧電流特性を計測するステップと、
(b)前記有機EL素子に、前記逆印加電圧を印加して、前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像するステップと、
(c)前記計測した前記電圧電流特性を、所定の基準電流特性と比較するステップと、
(d)前記比較の結果によって、前記計測した前記電圧電流特性における電流値が前記基準電流特性における電流値未満である場合には、(e)ステップへ進み、前記基準電流特性における電流値以上である場合には、さらに、前記特定印加回数が所定の回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに電圧電流特性を計測して(c)ステップへ戻り、所定の回数未満でないときは(e)ステップへ進むステップと、
(e)撮像した発光像の中に前記輝点が存在するか否かを検査するステップと、
(f)前記検査の結果、前記輝点が存在しない場合には、当該方法を終了し、前記輝点が存在する場合には、前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像した前記特定撮像回数が所定の回数未満であるときは、前記逆印加電圧を前記有機EL素子に一定時間印加して、さらに前記逆印加電圧が印加されている前記有機EL素子の発光像をCCDカメラで撮像して(e)ステップへもどり、所定の回数以上であるときは当該 方法を終了するステップと、を含むことを特徴とするリペア方法。
【請求項7】
前記逆印加電圧は前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧以下のDC電圧であることを特徴とする請求項1乃至6に記載のリペア方法。
【請求項8】
前記逆印加電圧はパルス電圧であって、前記パルス電圧は3ボルト以上で前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧の3倍以下であって、パルス幅は2msec以上5sec以下であることを特徴とする請求項1乃至6に記載のリペア方法。
【請求項9】
前記所定の特定印加回数は6回であることを特徴とする
請求項3及び6に記載のリペア方法。
【請求項10】
前記所定の特定撮像回数は6回であることを特徴とする
請求項5及び6に記載のリペア方法。
【請求項11】
前記所定の特定印加回数は、リペア対象である前記有機EL素子と同様の工程及び仕様によって製造された相当数の有機EL素子の故障解析を予め行って定めたものであることを特徴とする請求項3及び6に記載のリペア方法。
【請求項12】
前記所定の特定撮像回数は、リペア対象である前記有機EL素子と同様の工程及び仕様によって製造された相当数の有機EL素子の故障解析を予め行って定めたものであることを特徴とする請求項5及び6に記載のリペア方法。
【請求項13】
有機EL素子のリペアを行うリペア装置であって、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する手段(以下「有機EL素子保持手段」ともいう)と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する手段(以下「逆電圧印加手段」ともいう)と、
前記電圧を印加された前記有機EL素子を撮像する撮像手段(以下「撮像手段」ともいう)と、
前記撮像手段により撮像したデータより前記有機EL素子の各領域における輝度分布を検査して、その周辺より著しく輝度が高い点を前記輝点と判断する判断手段(以下「輝点判断手段」ともいう)と、を含むことを特徴とするリペア装置。
【請求項14】
有機EL素子の欠陥部のリペアを行うリペア装置であって、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する手段と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する手段と、
前記有機EL素子の電圧電流特性を計測する計測手段(以下「電圧電流特性計測手段」ともいう)と、
前記計測手段により計測された前記有機EL素子の前記電圧電流特性を所定の基準電圧電流特性と比較することにより、両者の相違が所定の範囲外か否かを判断する手段(以下「電流値判断手段」ともいう)と、を含むことを特徴とするリペア装置。
【請求項15】
有機EL素子のリペアを行うリペア装置であって、
リペア対象である前記有機EL素子を保持する前記有機EL素子保持手段と、
リペア対象である前記有機EL素子に前記逆印加電圧を一定時間印加する前記逆電圧印加手段と、
前記電圧を印加された前記有機EL素子を撮像する前記撮像手段と、
前記撮像手段により撮像したデータより前記有機EL素子の各領域における輝度分布を検査して、その周辺より著しく輝度が高い点を前記輝点と判断する前記輝点判断手段と、
前記輝点が前記有機EL素子のどの領域に存在しているかを示す位置情報を記憶する手段(以下「輝点位置情報記憶手段」ともいう)と、を含むことを特徴とするリペア装置。
【請求項16】
前記逆印加電圧は前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧以下のDC電圧であることを特徴とする請求項13乃至15記載のリペア装置。
【請求項17】
前記逆印加電圧はパルス電圧であって、前記パルス電圧は3ボルト以上で前記有機EL素子の逆バイアスに対する耐圧の3倍以下であって、パルス幅は2msec以上5sec以下であることを特徴とする請求項13乃至15記載のリペア装置。
【請求項18】
前記電圧電流特性の測定は、所定の1箇所の電圧の電流値だけを測定し、前記電圧電流特性の比較は前記所定の1箇所の電圧の電流値だけを比較することを特徴とする請求項1乃至17に記載のリペア方法またはリペア装置。
【請求項19】
前記電圧電流特性の測定は、所定の数箇所の電圧の電流値だけを測定し、前記電圧電流特性の比較は前記所定の数箇所の電圧の電流値だけを比較することを特徴とする請求項1乃至17に記載のリペア方法またはリペア装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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