有機EL検査方法
【課題】有機ELを用いたパネルの検査に対して、リペア対象となるデバイスに悪影響を与える欠陥箇所を短時間で精度良く選別する。
【解決手段】電圧印加時に検出されるパネル1に生じるリーク光2a,2bは、短時間で強く発光して消滅するものと、長時間で弱く発光して消滅しないものがある。長時間で弱く発光するリーク光2bは一定期間後に電気的ショートとなり不良となるため、選別しリペアを必要とする。このリーク光2a,2bを見分けるため、短時間撮像(時間TS)と長時間撮像(時間TL)の各時間の露光により撮像する。短時間撮像では微弱発光強度のリーク光2bは検出されずリーク光2aのみ検出され、長時間撮像ではリーク光2a,2bが共に検出される。長時間撮像と短時間撮像の取得データから検出するべき長時間に発生するリーク光2bのみを得る。
【解決手段】電圧印加時に検出されるパネル1に生じるリーク光2a,2bは、短時間で強く発光して消滅するものと、長時間で弱く発光して消滅しないものがある。長時間で弱く発光するリーク光2bは一定期間後に電気的ショートとなり不良となるため、選別しリペアを必要とする。このリーク光2a,2bを見分けるため、短時間撮像(時間TS)と長時間撮像(時間TL)の各時間の露光により撮像する。短時間撮像では微弱発光強度のリーク光2bは検出されずリーク光2aのみ検出され、長時間撮像ではリーク光2a,2bが共に検出される。長時間撮像と短時間撮像の取得データから検出するべき長時間に発生するリーク光2bのみを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ,有機EL照明,太陽電池など発光デバイスを用いたパネルに対する検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELを用いた表示パネル、あるいは有機EL照明、太陽電池などのパネルの製造工程における検査、あるいは開発時の解析手法として、リーク光検査手法を用いた解析が行われている。これは、パネルに対し電圧をかけた際に、電気的リーク箇所が発光を起こし、それをCCDカメラ等の撮像手段により検出することによって不良箇所を検出する方法である。
【0003】
以下に具体的な検出の方法の例について示す。なお、本発明では有機ELディスプレイのパネルを例として説明を行うが、前記有機EL照明等のデバイスに対しても適応可能である。
【0004】
図10は従来の有機ELディスプレイにおけるリーク光検査装置の説明図である。図10に示すとおり、リーク光検査装置は、高感度カメラ3,ソースメーター4,可動ステージ5,制御部6,入力部7,出力部8から構成されている。図10を元に、従来のリーク光検査の動作について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0005】
まず、検査の前に、事前に検査する条件を教示し、入力部7から入力しておく。従来の検査の教示条件例を(表1)に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
リーク光2は非常に微弱な発光であるために、従来の外観検査で用いる産業用カメラでは発光像を取得できない。そのため、高感度カメラ3を用い、また取得したリーク光画像からリーク光2の情報を自動で取得するため、リーク光検出強度閾値を設定する。
【0008】
リーク光2の情報として、例えば、パネル1におけるリーク光XY座標、リーク光面積、リーク光最大強度などがある。これらの検出要素から最終的にはリペアポイントを選定することが重要であり、特許文献1では強度、リーク光の面積、およびリーク電流値からリペアできる箇所を特定している。次に、有機ELにリーク光2を発生させるためにかける電圧の電圧値設定を行う。
【0009】
教示が終了すると、まず、可動ステージ5にパネル1を設置して、撮像を行うため高感度カメラ3を移動し(S1)、ソースメーター4とパネル1の電気的コンタクトをとる。次に制御部6よりソースメーター4を駆動させ、教示値の電圧をパネル1に供給する(S2)。このとき、ある電圧条件化で電流リーク箇所にリーク光2が発生し、それを高感度カメラ3で観測する(S3)。どの発光強度のリーク光2を取得するかはあらかじめ教示で設定しておき、高感度カメラ3で画像取得後、制御部6により処理を行い(S4)出力部8に結果が表示される(S6)。
【0010】
パネル1の撮像において、パネル1のサイズが大きく、カメラ視野がパネル全域にない場合、複数視野にまたがり撮像する必要があり(S5のYes)、パネル全域を検査する場合は制御部6から可動ステージ5を動かし、また撮像を繰り返す。これにより欠陥箇所を検出する。
【0011】
リーク光2を検査した後、そのパネル1は廃棄される場合もあるが、リーク箇所をリペアする場合が多い。図10に示す撮像系はパネル全面を検査するマクロ光学系であるが、この後、リーク光2の箇所を顕微鏡光学系で観測し、その不良位置をリペアすることによりパネル1を良品化する。リペアの手法としては、例えばレーザーをリーク光2の箇所に照射し、絶縁化することでパネル全体をリペアする方法が考えられる。このようにリーク光検出は、不良の検査のみならず、不良箇所をリペアするためのXY位置座標条件にも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−266686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような手法によりリーク光を検出し、リペアすることを考えたとき、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することはできないという課題があった。
【0014】
本発明は、前記の事情を考慮してなされたものであり、表示・エネルギーパネル、とりわけ有機ELを用いたパネルの検査に対して、リペア対象となるデバイスに悪影響を与える欠陥箇所を短時間で精度良く選別できる有機EL検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した有機EL検査方法は、有機ELを用いた表示パネルに対し、電圧を印加することにより生じる発光を検出して行う有機EL検査方法であって、検出した発光の状態を区別するために撮像手段による発光の撮像を複数回行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、電圧印加時間を短くした発光の状態と電圧印加時間を長くした発光の状態とを、それぞれの電圧印加時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3,4に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、所定の電圧印加時間による発光の状態を電圧印加時間に同期させた露光により撮像し、かつ撮像を複数回行って、発光の状態を区別すること、さらに、所定の電圧印加時間の露光により撮像した後、所定の電圧印加時間より長くした電圧印加時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0018】
また、請求項5,6に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、発光の状態とする電圧印加時間内を順番に、所定時間の露光により撮像して、発光の状態を区別すること、さらに、所定時間の露光により撮像した後、所定時間より長くした時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0019】
前記検査方法によれば、表示パネルに生じる複数の発光の状態を有するリーク箇所を選別することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1におけるリーク光の検出方法の(a)はパネル、(b)は撮像画像、(c)は検出画像を示す図
【図2】本実施形態1におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図3】本実施形態1における短時間の発生リーク光と長時間の発生リーク光を選別する(a)はパネル、(b)はリーク光強度I―電圧印加時間Tの関係、(c)は長時間の検出画像、(d)は短時間の検出画像、(e)は検出結果を示す図
【図4】本実施形態1における検査方法の具体的な動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態2におけるリーク光強度の時間変位を示す図
【図6】本実施形態2におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図7】本実施形態2における検査方法の具体的な動作を示すフローチャート
【図8】本発明の実施形態3におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図9】本実施形態3における発生リーク光を選別する(a)はパネル、(b)はリーク光強度I−電圧印加時間Tの関係、(c)は短時間(Ts1)の検出画像、(d)は短時間(Ts2)の検出画像、(e)は検出結果を示す図
【図10】有機ELディスプレイにおけるリーク光検査装置の説明図
【図11】従来のリーク光検査の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1(a)〜(c)は本発明の実施形態1におけるパネル不良となるリーク光の検出の方法を示す図である。また、前記従来例を示す図10において説明した構成部材に対応し同等機能を有するものには同一の符号を付すと共に、リーク光検査装置として図10を参照しながら説明する。
【0024】
まず、図1(a)に示すパネル1の電極コンタクト部(図10参照)から電圧をかける。このとき電圧を逆方向(負電圧)にかけるとEL発光を起こさないためリーク光2a〜2dのみが図1(b)のように撮像できる。正常パネルであれば逆電圧をかけるとパネル1からは発光を起こさないが、電流リーク箇所があると図1(b)ようにパネル1にリーク光2a〜2dが発生する。
【0025】
図1(b)はリーク光を高感度カメラで撮像した例であり、2a〜2dの4つのリーク光が発生している。リーク光を自動検出するに当たり、検出前の教示データ作成時に、リーク光検出閾値を設定しておく。例えば、強度閾値を1000〜30000という数値に設定したとする。これは、リーク光強度をデジタル画像輝度に変換した数値である。この強度内のリーク光を画像処理等のソフトウェアにより自動検出し、画像表示、テキスト出力を行う。
【0026】
図1(b)で、発生したリーク光2aの強度が20000、リーク光2bで800、リーク光2cで25000、リーク光2dで40000であったとき、強度1000〜30000の間にあるのはリーク光2a,リーク光2cなので、検査結果画像表示としては図1(c)に示すようにリーク光2a,リーク光2cのみが画像表示される。このときテキスト出力としては検出されたリーク光2a,リーク光2cのパネル1のXY座標,面積,最大輝度値などが図10の出力部8に表示され、また計測結果がログファイルに記載される。
【0027】
このリーク光検出には図10に示すように高感度カメラ3を用いて検出する。これはリーク光2が非常に微弱であり、通常のEL発光の約1/10000の強度であって、通常のCCDカメラでは観測できない。そこで冷却式,電子増倍式カメラ等の高感度カメラ3を用いてリーク光2を撮像する。また、リーク光2は微弱かつ微細(1〜50μm)であるため、輝度計で毎回観測することは困難であり、そのため事前に輝度計で参照測定したリーク光2の輝度値(cd/m2)を高感度カメラ3で撮像した強度値に置き換えて表現する。
【0028】
前述したようなパネル不良となるリーク光の取得方法では、リーク光の選別が取得した撮像画像からの強度閾値のみに依存することになり、リーク光自体の時間変化を考慮した選別ができていない。リーク光は実際には瞬間的に発生・消滅するものと、ある時間以上発生するものとがあり、デバイスに悪影響を及ぼすものは、ある時間以上発生するリーク光であると考えられる。この2つを区別せず検査およびリペアすると、デバイスに悪影響を及ぼさない瞬間的に発生するリーク光も検出しリペアすることになるため、無駄な工程を増やし、またデバイスに過剰な加工を与えることになる。
【0029】
電圧をかけた際に検出される、実際のパネル内のリーク光の挙動を図2(a),(b)に示す。図2(a)は1回の撮像により撮像されたリーク光画像である。リーク光強度I―電圧印加時間Tを示す図2(b)のように、パネル1にリーク光2a,2bを発生させるための電圧を印加し続けた場合、実際のリーク発光はリーク光2aのように短時間(数100μsec〜5sec程度)で強いリーク発光を放ち、消滅するものと、リーク光2bのように長時間(10sec以上)で弱いリーク発光を放ち、消滅しないものとがある。
【0030】
この2つのモード(発光の状態)について、すなわち短時間に発生するリーク光2aと、長時間発生するリーク光2bの発生原因を説明する。リーク光は微細な異物(5μm以下の有機物や無機物)がデバイスの電極間に入り込むことで異物箇所に電流集中が起こり、その集中箇所から局所発光が起こっていると考えられる。そういった電流集中箇所はパネル製造後初期ではEL点灯に影響しないが、パネル使用のある一定期間後に熱影響などにより電気的ショートとなり、EL点灯せず、不良パネルとなってしまう。
【0031】
しかし電流集中はパネル電圧印加直後に瞬間的に起こる場合がある。これは前記説明した異物が起因ではなく、有機層の厚みが薄い(数nm〜100nm)ため発生する瞬時的な電流集中が原因であり、パネル内で瞬間的に発生するリーク光である。このリーク光はデバイスに悪影響を及ぼさず、不良箇所とならないため、リペアは不要である。
【0032】
リペアを効率的に行うためには短時間に発生するリーク光2aと長時間発生するリーク光2bを検出時に選別し、長時間発生するリーク光2bのみをリペア工程に流す必要がある。しかし、従来のリーク光検出方法のようにリーク光強度のみで検出有無を判定する方法では、リーク光2aとリーク光2bは共に不良となるリーク光と判定され、良品・不良品の区別はできない。強度閾値を変えて判定する方法もあるが、短時間に発生するリーク光2aは瞬間的なスパーク状の発光であることもあり、カメラの検出強度としては大きな値をとり、長時間に発生するリーク光2bの強度と見分けがつかない。よって、リーク光2aとリーク光2bを選別する方法が必要となってくる。
【0033】
図3(a)〜(e)を用いて短時間に発生するリーク光と長時間に発生するリーク光を選別する方法を説明する。また、リーク光強度I―電圧印加時間Tの関係を示す図3(b)においては説明の簡略化のため、リーク光は矩形的に発生するとしている。短時間に発生するリーク光2aを検出するため、図3(b)に示すように、時間TS(<TL)の間のみ露光して撮像を行う。
【0034】
この時間TSの間を露光する撮像では、図3(d)に示すように長時間に発生するリーク光2bは発光強度が微弱なため、検出強度閾値以下で検出されない。また、時間TLの間を露光する撮像では短時間に発生するリーク光2aと長時間に発生するリーク光2bが図3(c)のように両方とも検出される。
【0035】
よって、取得データの図3(c)から図3(d)に示す画像データを減算することで、目的とする微弱リーク光2bの図3(e)に示す取得データのように、検出するべき長時間に発生するリーク光2bのみを得ることができる。
【0036】
図4に本実施形態1における検査方法の具体的な動作のフローチャートを示す、また、(表2)に教示条件を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
まず、従来の教示とは異なり、短時間に発生するリーク光の検出条件と長時間に発生するリーク光の検出条件を区別して教示する。撮像露光時間は前述した説明のとおり、TS,TLの時間を区別する。時間TSはおおよそ100μsec〜10secの間に設定する。ただし、あまり長い時間とすると長時間に発生するリーク光を検出してしまい、画像減算時に長時間発生するリーク光も減算してしまう。時間TLは10sec以上が良い。撮像時間が極端に長い場合は装置内に存在する微弱な外部光がノイズとして増加してしまうため、特に10sec〜300secに設定すると良い。撮像時間はこのようなノイズ値に注意しながら、あらかじめどんな発光強度値のリーク光がどういった不良に関連するか検証し、それを検出できる撮像時間を確認してから条件設定を行う。
【0039】
次に、リーク光を検出するための発光強度閾値を設定する。リーク光強度はcd/m2といった輝度値を、画像のデジタル強度(8bit画像であれば0〜255、16bit画像であれば0〜65535)に置き換え、教示データとしてはデジタル画像の強度値範囲を入力する。例えば16bit画像で強度閾値を設定する場合は、1000〜30000の範囲を閾値と設定する。この強度閾値も短時間・長時間に発生するリーク光のモードそれぞれに関して別々に設定する。短時間に発生するリーク光は瞬間的に大きな発光を起こす場合が多く、かつ長時間に発生するリーク光を検出しない必要があるため、閾値は長時間に発生するリーク光の検出条件よりも大きい値を入れる。逆に長時間に発生するリーク光は弱い発光を検出するため小さい値を入れる。
【0040】
次に、リーク光を発生させるための電圧条件を設定する。この値は通常のEL発光の電圧設定値と異なる場合が多い。例えば、有機ELデバイスでは通常2〜6Vで駆動しEL発光を起こすが、リーク光検出のためには、−8V〜−15Vといった大きな逆方向電圧をかけることが多い。リーク光強度は電圧設定値に対し指数関数的に増加していくため、大きな電圧値をかけて検出する方が効果的である。ただし、デバイスに対する影響(熱の発生など)を極力避けたいことから、±15V程度までに抑える方が良い。
【0041】
あるいは、発光開始前電圧0〜2Vの電圧を印加して検出することもある。リーク発光は順方向電圧でも発生するが、EL発光の中にうずもれてしまい、観測することができない。そこで、0〜2VのEL発光前の電圧値でリーク光を観測する。またソースメーターから供給される電圧源は1つだけでない場合もあって、例えば駆動用TFTのゲート電圧もリーク光検出のために操作することもあり、その場合は2つの電圧設定値が必要となってくる。
【0042】
また、短時間に発生するリーク光はスパーク状に強く発生する場合が多く、強いスパーク状の光は高感度カメラを破壊することもあるため、リーク光発生強度を抑える必要がある。そして、ELデバイスにかける電圧を小さくするとスパーク上のリーク光強度は弱くなるため、長時間に発生するリーク光を出す電圧条件より、1〜5V小さい電圧値を設定しても良い。
【0043】
図4の実際の検査を示すフローチャートと、図3および図10の装置構成を参照しながら説明する。まず、検査する撮像領域に可動ステージ5を動かす(S11)。次に短時間リーク光用の条件の電圧を供給して(S12)、リーク光2aを発生させる。時間TSの間を露光する撮像を行い(S13)、設定した強度閾値の図3(d)のリーク光2aを検出する(S14)。同様に、長時間リーク光用の条件の電圧を供給して(S22)、リーク光2a,2bを発生させる。時間TLの間を露光する撮像を行い(S23)、設定した強度閾値の図3(c)のリーク光2a,2bを検出する(S24)。
【0044】
時間TL,TSの間を露光する撮像からリーク光2a,2bの取得データを減算することにより(S25)、目的とする長時間に発生するリーク光2bのみの図3(e)の検出データを取得する(S26)。さらに、他の検査視野がある場合は(S15のYes)、処理S11に戻り、撮像を繰り返す。全ての検査視野を検査すれば(S15のNo)、処理S16として装置での結果出力、結果のログファイルの吐き出しを行う。以上により、良品・不良品の2つのモードが存在するパネル1のリーク箇所を短時間で精度良く選別することができる。
【0045】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。リーク光は実際には同じ強度の発光を断続的に続けているのではなく、図5に示すように、同じ電圧を加え続けていた場合でも強度変化を繰り返す、点滅状態で発光を行っている。そして、長時間に発生するリーク光では撮像時間が長いため強度が平均化して検出できる。
【0046】
しかしながら、短時間に発生するリーク光は撮像時間が短いため強度が平均化されず、同じリーク光でも撮像ごとに取得強度が異なってくる。リーク光を取得する強度閾値を下げてやれば、検出できる短時間のリーク光数を増やすことができるが、その場合は点ノイズを多く拾ってしまう。よって、強度バラつきのある短時間に発生するリーク光を検出する方法が必要となってくる。
【0047】
図6(a),(b)に、短時間に発生するリーク光2の、強度変化が存在する場合の画像およびリーク光強度変化を示す。前述の実施形態1では短時間に発生するリーク光2aは瞬間的に強い値である例を示した。リーク光によっては、図6(b)に示すように、有機ELデバイスに対し同一の電圧値でオン/オフしても、同一リーク光2の位置で強度値にバラつきが生じることがある。ある電圧印加時には強度閾値より下のリーク光2が発生する場合もあるため、リーク光2を検出できない場合が出てくる。
【0048】
よって、確実に閾値を超えるリーク光2を取得するため、所定の時間(短時間)露光によって、所定の回数を行う撮像を、電圧印加オン/オフと同期させて行うことで、短時間に発生するリーク光検出の精度を上げる。
【0049】
図7に本実施形態2における検査方法の具体的な動作のフローチャートを示す、また、(表3)に教示条件を示す。長時間に発生するリーク光の検出教示条件は、実施形態1の(表2)と同じである。さらに、短時間に発生するリーク光の検出条件として、撮像回数を追加する。この回数により強度バラつきのある短時間に発生するリーク光を検出し続ける。
【0050】
【表3】
【0051】
傾向としては同一電圧条件では10回程度でリーク光を取得できるが、回数を増やしすぎると検出時間が長くかかってしまう。処理としては図7に示すように、検査視野に移動した後(S11)、電圧供給を行い(S12)、画像撮像(S13)、画像処理を行う(S14)。短時間露光での撮像回数が複数ある場合は(S21のNo)、一旦ここで電圧をオフし、再度電圧をオンにしてから処理S12へ戻り画像撮像を行う。
【0052】
この短時間に発生するリーク光は電圧のオン時に瞬間的(数100μsec〜5sec程度)に発生するため、撮像ごとに電圧をオン/オフする必要がある。短時間露光の撮像が終わると(S21のYes)、前述した図4のフローチャートで説明したように、長時間露光の電圧供給を行い(S22)、画像撮像(S23)、画像処理を行う(S24)。長短の撮像時間から取得データを処理(S25)、目的とする検出データを取得する(S26)。
【0053】
さらに、他の検査視野がある場合(S15のYes)、処理S11に戻り、次の視野の検査を実施し、全ての検査視野が終わると(S15のNo)、結果を出力して(S16)検査を終了する。
【0054】
以上により短時間に発生するリーク光を精度良く検出することができる。短時間に発生するリーク光は直接不良になることは少ないが、その挙動を解析するため、発光部の断面解析を行う場合がある。その場合には本手法により短時間により発生するリーク光を漏れなく検出する方法は有効である。
【0055】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。リーク光によっては微弱ではなく、発生時に大きな値を示すものもある。図8(a),(b)に示すように、リーク光2cは、本来リペア対象とするべき微弱なリーク光2aと比べて強度が大きく、例えば撮像時間が3sec以下といった短い撮像時間でも、16bit画像で65535値をとる、といった結果となる。
【0056】
このような強いリーク光の中には異物サイズが大きく(10μm以上)、リーク光として検出しても、レーザーによるリペアが不可能な場合がある。このような検出点が発生した場合は、そのパネルはリペアせず廃棄するか、全く別のリペア工程に持っていく必要がある。露光時間を長く(60sec以上)した場合、リペアすべき微弱なリーク光も取得データ上は大きな強度値(65535以下)をとることもあるため、このような強いリーク光2cは従来の検出方法ではリーク光2a,2bと選別することができない。よって、リーク光2cを選別した後に、リーク光2aを選別する方法が必要となってくる。
【0057】
図9(a)〜(e)を用いて選別する方法の説明を行う。図9(a)に示す2aが短時間に発生するリーク光、2bが長時間に発生する弱いリーク光であり、2cが長時間に発生する強いリーク光である。リーク光2cを検出した後に、リーク光2aとリーク光2bを選別していく。このために、短時間露光による撮像を2回(図9(b)において、時間TS1の短時間撮像を1回、時間TS2の短時間撮像を1回)行い、その後に時間TLの長時間露光による撮像を実施する。短時間露光による撮像2回目の撮像画像が図9(d)であり、長時間に発生する強いリーク光2cを検出することができる。
【0058】
また、短時間露光による撮像1回目の撮像画像の図9(c)では短時間に発生するリーク光2aおよび長時間に発生するリーク光2cが両方とも撮像される。この図9(c)のリーク光検出位置から図9(d)のリーク光検出位置を差し引くことで、図9(e)に示すように短時間に発生するリーク光2aを検出することができる。このリーク光2aと、長時間に発生するリーク光2bを選別する方法は実施形態1と同様である。
【0059】
また、本実施形態3における検査方法の具体的な動作は、実施形態2の図7に示すフローチャートの処理S21で行う複数回の撮像を2回行うようにしたものであり、その他の処理動作は同様である。また、教示条件を(表4)に示す。長時間および短時間に発生するリーク光の検出教示条件は、実施形態1の(表2)と同じであり、短時間に発生するリーク光の検出を2回行うものである。
【0060】
【表4】
【0061】
以上に説明した各実施形態により、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る有機EL検査方法は、複数存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができ、有機ELディスプレイ,有機EL照明,太陽電池など発光デバイスを用いたパネルの製造工程の検査、あるいは開発時の解析手法として電気的リーク箇所の特定する方法の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 パネル
2,2a,2b,2c,2d リーク光
3 高感度カメラ
4 ソースメーター
5 可動ステージ
6 制御部
7 入力部
8 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ,有機EL照明,太陽電池など発光デバイスを用いたパネルに対する検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELを用いた表示パネル、あるいは有機EL照明、太陽電池などのパネルの製造工程における検査、あるいは開発時の解析手法として、リーク光検査手法を用いた解析が行われている。これは、パネルに対し電圧をかけた際に、電気的リーク箇所が発光を起こし、それをCCDカメラ等の撮像手段により検出することによって不良箇所を検出する方法である。
【0003】
以下に具体的な検出の方法の例について示す。なお、本発明では有機ELディスプレイのパネルを例として説明を行うが、前記有機EL照明等のデバイスに対しても適応可能である。
【0004】
図10は従来の有機ELディスプレイにおけるリーク光検査装置の説明図である。図10に示すとおり、リーク光検査装置は、高感度カメラ3,ソースメーター4,可動ステージ5,制御部6,入力部7,出力部8から構成されている。図10を元に、従来のリーク光検査の動作について、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0005】
まず、検査の前に、事前に検査する条件を教示し、入力部7から入力しておく。従来の検査の教示条件例を(表1)に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
リーク光2は非常に微弱な発光であるために、従来の外観検査で用いる産業用カメラでは発光像を取得できない。そのため、高感度カメラ3を用い、また取得したリーク光画像からリーク光2の情報を自動で取得するため、リーク光検出強度閾値を設定する。
【0008】
リーク光2の情報として、例えば、パネル1におけるリーク光XY座標、リーク光面積、リーク光最大強度などがある。これらの検出要素から最終的にはリペアポイントを選定することが重要であり、特許文献1では強度、リーク光の面積、およびリーク電流値からリペアできる箇所を特定している。次に、有機ELにリーク光2を発生させるためにかける電圧の電圧値設定を行う。
【0009】
教示が終了すると、まず、可動ステージ5にパネル1を設置して、撮像を行うため高感度カメラ3を移動し(S1)、ソースメーター4とパネル1の電気的コンタクトをとる。次に制御部6よりソースメーター4を駆動させ、教示値の電圧をパネル1に供給する(S2)。このとき、ある電圧条件化で電流リーク箇所にリーク光2が発生し、それを高感度カメラ3で観測する(S3)。どの発光強度のリーク光2を取得するかはあらかじめ教示で設定しておき、高感度カメラ3で画像取得後、制御部6により処理を行い(S4)出力部8に結果が表示される(S6)。
【0010】
パネル1の撮像において、パネル1のサイズが大きく、カメラ視野がパネル全域にない場合、複数視野にまたがり撮像する必要があり(S5のYes)、パネル全域を検査する場合は制御部6から可動ステージ5を動かし、また撮像を繰り返す。これにより欠陥箇所を検出する。
【0011】
リーク光2を検査した後、そのパネル1は廃棄される場合もあるが、リーク箇所をリペアする場合が多い。図10に示す撮像系はパネル全面を検査するマクロ光学系であるが、この後、リーク光2の箇所を顕微鏡光学系で観測し、その不良位置をリペアすることによりパネル1を良品化する。リペアの手法としては、例えばレーザーをリーク光2の箇所に照射し、絶縁化することでパネル全体をリペアする方法が考えられる。このようにリーク光検出は、不良の検査のみならず、不良箇所をリペアするためのXY位置座標条件にも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−266686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、このような手法によりリーク光を検出し、リペアすることを考えたとき、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することはできないという課題があった。
【0014】
本発明は、前記の事情を考慮してなされたものであり、表示・エネルギーパネル、とりわけ有機ELを用いたパネルの検査に対して、リペア対象となるデバイスに悪影響を与える欠陥箇所を短時間で精度良く選別できる有機EL検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した有機EL検査方法は、有機ELを用いた表示パネルに対し、電圧を印加することにより生じる発光を検出して行う有機EL検査方法であって、検出した発光の状態を区別するために撮像手段による発光の撮像を複数回行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、電圧印加時間を短くした発光の状態と電圧印加時間を長くした発光の状態とを、それぞれの電圧印加時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0017】
また、請求項3,4に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、所定の電圧印加時間による発光の状態を電圧印加時間に同期させた露光により撮像し、かつ撮像を複数回行って、発光の状態を区別すること、さらに、所定の電圧印加時間の露光により撮像した後、所定の電圧印加時間より長くした電圧印加時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0018】
また、請求項5,6に記載した発明は、有機EL検査方法の撮像手段が複数回行う各撮像において、発光の状態とする電圧印加時間内を順番に、所定時間の露光により撮像して、発光の状態を区別すること、さらに、所定時間の露光により撮像した後、所定時間より長くした時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする。
【0019】
前記検査方法によれば、表示パネルに生じる複数の発光の状態を有するリーク箇所を選別することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1におけるリーク光の検出方法の(a)はパネル、(b)は撮像画像、(c)は検出画像を示す図
【図2】本実施形態1におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図3】本実施形態1における短時間の発生リーク光と長時間の発生リーク光を選別する(a)はパネル、(b)はリーク光強度I―電圧印加時間Tの関係、(c)は長時間の検出画像、(d)は短時間の検出画像、(e)は検出結果を示す図
【図4】本実施形態1における検査方法の具体的な動作を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態2におけるリーク光強度の時間変位を示す図
【図6】本実施形態2におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図7】本実施形態2における検査方法の具体的な動作を示すフローチャート
【図8】本発明の実施形態3におけるリーク光の検出される(a)はパネル、(b)はリーク光の挙動を示す図
【図9】本実施形態3における発生リーク光を選別する(a)はパネル、(b)はリーク光強度I−電圧印加時間Tの関係、(c)は短時間(Ts1)の検出画像、(d)は短時間(Ts2)の検出画像、(e)は検出結果を示す図
【図10】有機ELディスプレイにおけるリーク光検査装置の説明図
【図11】従来のリーク光検査の動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1(a)〜(c)は本発明の実施形態1におけるパネル不良となるリーク光の検出の方法を示す図である。また、前記従来例を示す図10において説明した構成部材に対応し同等機能を有するものには同一の符号を付すと共に、リーク光検査装置として図10を参照しながら説明する。
【0024】
まず、図1(a)に示すパネル1の電極コンタクト部(図10参照)から電圧をかける。このとき電圧を逆方向(負電圧)にかけるとEL発光を起こさないためリーク光2a〜2dのみが図1(b)のように撮像できる。正常パネルであれば逆電圧をかけるとパネル1からは発光を起こさないが、電流リーク箇所があると図1(b)ようにパネル1にリーク光2a〜2dが発生する。
【0025】
図1(b)はリーク光を高感度カメラで撮像した例であり、2a〜2dの4つのリーク光が発生している。リーク光を自動検出するに当たり、検出前の教示データ作成時に、リーク光検出閾値を設定しておく。例えば、強度閾値を1000〜30000という数値に設定したとする。これは、リーク光強度をデジタル画像輝度に変換した数値である。この強度内のリーク光を画像処理等のソフトウェアにより自動検出し、画像表示、テキスト出力を行う。
【0026】
図1(b)で、発生したリーク光2aの強度が20000、リーク光2bで800、リーク光2cで25000、リーク光2dで40000であったとき、強度1000〜30000の間にあるのはリーク光2a,リーク光2cなので、検査結果画像表示としては図1(c)に示すようにリーク光2a,リーク光2cのみが画像表示される。このときテキスト出力としては検出されたリーク光2a,リーク光2cのパネル1のXY座標,面積,最大輝度値などが図10の出力部8に表示され、また計測結果がログファイルに記載される。
【0027】
このリーク光検出には図10に示すように高感度カメラ3を用いて検出する。これはリーク光2が非常に微弱であり、通常のEL発光の約1/10000の強度であって、通常のCCDカメラでは観測できない。そこで冷却式,電子増倍式カメラ等の高感度カメラ3を用いてリーク光2を撮像する。また、リーク光2は微弱かつ微細(1〜50μm)であるため、輝度計で毎回観測することは困難であり、そのため事前に輝度計で参照測定したリーク光2の輝度値(cd/m2)を高感度カメラ3で撮像した強度値に置き換えて表現する。
【0028】
前述したようなパネル不良となるリーク光の取得方法では、リーク光の選別が取得した撮像画像からの強度閾値のみに依存することになり、リーク光自体の時間変化を考慮した選別ができていない。リーク光は実際には瞬間的に発生・消滅するものと、ある時間以上発生するものとがあり、デバイスに悪影響を及ぼすものは、ある時間以上発生するリーク光であると考えられる。この2つを区別せず検査およびリペアすると、デバイスに悪影響を及ぼさない瞬間的に発生するリーク光も検出しリペアすることになるため、無駄な工程を増やし、またデバイスに過剰な加工を与えることになる。
【0029】
電圧をかけた際に検出される、実際のパネル内のリーク光の挙動を図2(a),(b)に示す。図2(a)は1回の撮像により撮像されたリーク光画像である。リーク光強度I―電圧印加時間Tを示す図2(b)のように、パネル1にリーク光2a,2bを発生させるための電圧を印加し続けた場合、実際のリーク発光はリーク光2aのように短時間(数100μsec〜5sec程度)で強いリーク発光を放ち、消滅するものと、リーク光2bのように長時間(10sec以上)で弱いリーク発光を放ち、消滅しないものとがある。
【0030】
この2つのモード(発光の状態)について、すなわち短時間に発生するリーク光2aと、長時間発生するリーク光2bの発生原因を説明する。リーク光は微細な異物(5μm以下の有機物や無機物)がデバイスの電極間に入り込むことで異物箇所に電流集中が起こり、その集中箇所から局所発光が起こっていると考えられる。そういった電流集中箇所はパネル製造後初期ではEL点灯に影響しないが、パネル使用のある一定期間後に熱影響などにより電気的ショートとなり、EL点灯せず、不良パネルとなってしまう。
【0031】
しかし電流集中はパネル電圧印加直後に瞬間的に起こる場合がある。これは前記説明した異物が起因ではなく、有機層の厚みが薄い(数nm〜100nm)ため発生する瞬時的な電流集中が原因であり、パネル内で瞬間的に発生するリーク光である。このリーク光はデバイスに悪影響を及ぼさず、不良箇所とならないため、リペアは不要である。
【0032】
リペアを効率的に行うためには短時間に発生するリーク光2aと長時間発生するリーク光2bを検出時に選別し、長時間発生するリーク光2bのみをリペア工程に流す必要がある。しかし、従来のリーク光検出方法のようにリーク光強度のみで検出有無を判定する方法では、リーク光2aとリーク光2bは共に不良となるリーク光と判定され、良品・不良品の区別はできない。強度閾値を変えて判定する方法もあるが、短時間に発生するリーク光2aは瞬間的なスパーク状の発光であることもあり、カメラの検出強度としては大きな値をとり、長時間に発生するリーク光2bの強度と見分けがつかない。よって、リーク光2aとリーク光2bを選別する方法が必要となってくる。
【0033】
図3(a)〜(e)を用いて短時間に発生するリーク光と長時間に発生するリーク光を選別する方法を説明する。また、リーク光強度I―電圧印加時間Tの関係を示す図3(b)においては説明の簡略化のため、リーク光は矩形的に発生するとしている。短時間に発生するリーク光2aを検出するため、図3(b)に示すように、時間TS(<TL)の間のみ露光して撮像を行う。
【0034】
この時間TSの間を露光する撮像では、図3(d)に示すように長時間に発生するリーク光2bは発光強度が微弱なため、検出強度閾値以下で検出されない。また、時間TLの間を露光する撮像では短時間に発生するリーク光2aと長時間に発生するリーク光2bが図3(c)のように両方とも検出される。
【0035】
よって、取得データの図3(c)から図3(d)に示す画像データを減算することで、目的とする微弱リーク光2bの図3(e)に示す取得データのように、検出するべき長時間に発生するリーク光2bのみを得ることができる。
【0036】
図4に本実施形態1における検査方法の具体的な動作のフローチャートを示す、また、(表2)に教示条件を示す。
【0037】
【表2】
【0038】
まず、従来の教示とは異なり、短時間に発生するリーク光の検出条件と長時間に発生するリーク光の検出条件を区別して教示する。撮像露光時間は前述した説明のとおり、TS,TLの時間を区別する。時間TSはおおよそ100μsec〜10secの間に設定する。ただし、あまり長い時間とすると長時間に発生するリーク光を検出してしまい、画像減算時に長時間発生するリーク光も減算してしまう。時間TLは10sec以上が良い。撮像時間が極端に長い場合は装置内に存在する微弱な外部光がノイズとして増加してしまうため、特に10sec〜300secに設定すると良い。撮像時間はこのようなノイズ値に注意しながら、あらかじめどんな発光強度値のリーク光がどういった不良に関連するか検証し、それを検出できる撮像時間を確認してから条件設定を行う。
【0039】
次に、リーク光を検出するための発光強度閾値を設定する。リーク光強度はcd/m2といった輝度値を、画像のデジタル強度(8bit画像であれば0〜255、16bit画像であれば0〜65535)に置き換え、教示データとしてはデジタル画像の強度値範囲を入力する。例えば16bit画像で強度閾値を設定する場合は、1000〜30000の範囲を閾値と設定する。この強度閾値も短時間・長時間に発生するリーク光のモードそれぞれに関して別々に設定する。短時間に発生するリーク光は瞬間的に大きな発光を起こす場合が多く、かつ長時間に発生するリーク光を検出しない必要があるため、閾値は長時間に発生するリーク光の検出条件よりも大きい値を入れる。逆に長時間に発生するリーク光は弱い発光を検出するため小さい値を入れる。
【0040】
次に、リーク光を発生させるための電圧条件を設定する。この値は通常のEL発光の電圧設定値と異なる場合が多い。例えば、有機ELデバイスでは通常2〜6Vで駆動しEL発光を起こすが、リーク光検出のためには、−8V〜−15Vといった大きな逆方向電圧をかけることが多い。リーク光強度は電圧設定値に対し指数関数的に増加していくため、大きな電圧値をかけて検出する方が効果的である。ただし、デバイスに対する影響(熱の発生など)を極力避けたいことから、±15V程度までに抑える方が良い。
【0041】
あるいは、発光開始前電圧0〜2Vの電圧を印加して検出することもある。リーク発光は順方向電圧でも発生するが、EL発光の中にうずもれてしまい、観測することができない。そこで、0〜2VのEL発光前の電圧値でリーク光を観測する。またソースメーターから供給される電圧源は1つだけでない場合もあって、例えば駆動用TFTのゲート電圧もリーク光検出のために操作することもあり、その場合は2つの電圧設定値が必要となってくる。
【0042】
また、短時間に発生するリーク光はスパーク状に強く発生する場合が多く、強いスパーク状の光は高感度カメラを破壊することもあるため、リーク光発生強度を抑える必要がある。そして、ELデバイスにかける電圧を小さくするとスパーク上のリーク光強度は弱くなるため、長時間に発生するリーク光を出す電圧条件より、1〜5V小さい電圧値を設定しても良い。
【0043】
図4の実際の検査を示すフローチャートと、図3および図10の装置構成を参照しながら説明する。まず、検査する撮像領域に可動ステージ5を動かす(S11)。次に短時間リーク光用の条件の電圧を供給して(S12)、リーク光2aを発生させる。時間TSの間を露光する撮像を行い(S13)、設定した強度閾値の図3(d)のリーク光2aを検出する(S14)。同様に、長時間リーク光用の条件の電圧を供給して(S22)、リーク光2a,2bを発生させる。時間TLの間を露光する撮像を行い(S23)、設定した強度閾値の図3(c)のリーク光2a,2bを検出する(S24)。
【0044】
時間TL,TSの間を露光する撮像からリーク光2a,2bの取得データを減算することにより(S25)、目的とする長時間に発生するリーク光2bのみの図3(e)の検出データを取得する(S26)。さらに、他の検査視野がある場合は(S15のYes)、処理S11に戻り、撮像を繰り返す。全ての検査視野を検査すれば(S15のNo)、処理S16として装置での結果出力、結果のログファイルの吐き出しを行う。以上により、良品・不良品の2つのモードが存在するパネル1のリーク箇所を短時間で精度良く選別することができる。
【0045】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。リーク光は実際には同じ強度の発光を断続的に続けているのではなく、図5に示すように、同じ電圧を加え続けていた場合でも強度変化を繰り返す、点滅状態で発光を行っている。そして、長時間に発生するリーク光では撮像時間が長いため強度が平均化して検出できる。
【0046】
しかしながら、短時間に発生するリーク光は撮像時間が短いため強度が平均化されず、同じリーク光でも撮像ごとに取得強度が異なってくる。リーク光を取得する強度閾値を下げてやれば、検出できる短時間のリーク光数を増やすことができるが、その場合は点ノイズを多く拾ってしまう。よって、強度バラつきのある短時間に発生するリーク光を検出する方法が必要となってくる。
【0047】
図6(a),(b)に、短時間に発生するリーク光2の、強度変化が存在する場合の画像およびリーク光強度変化を示す。前述の実施形態1では短時間に発生するリーク光2aは瞬間的に強い値である例を示した。リーク光によっては、図6(b)に示すように、有機ELデバイスに対し同一の電圧値でオン/オフしても、同一リーク光2の位置で強度値にバラつきが生じることがある。ある電圧印加時には強度閾値より下のリーク光2が発生する場合もあるため、リーク光2を検出できない場合が出てくる。
【0048】
よって、確実に閾値を超えるリーク光2を取得するため、所定の時間(短時間)露光によって、所定の回数を行う撮像を、電圧印加オン/オフと同期させて行うことで、短時間に発生するリーク光検出の精度を上げる。
【0049】
図7に本実施形態2における検査方法の具体的な動作のフローチャートを示す、また、(表3)に教示条件を示す。長時間に発生するリーク光の検出教示条件は、実施形態1の(表2)と同じである。さらに、短時間に発生するリーク光の検出条件として、撮像回数を追加する。この回数により強度バラつきのある短時間に発生するリーク光を検出し続ける。
【0050】
【表3】
【0051】
傾向としては同一電圧条件では10回程度でリーク光を取得できるが、回数を増やしすぎると検出時間が長くかかってしまう。処理としては図7に示すように、検査視野に移動した後(S11)、電圧供給を行い(S12)、画像撮像(S13)、画像処理を行う(S14)。短時間露光での撮像回数が複数ある場合は(S21のNo)、一旦ここで電圧をオフし、再度電圧をオンにしてから処理S12へ戻り画像撮像を行う。
【0052】
この短時間に発生するリーク光は電圧のオン時に瞬間的(数100μsec〜5sec程度)に発生するため、撮像ごとに電圧をオン/オフする必要がある。短時間露光の撮像が終わると(S21のYes)、前述した図4のフローチャートで説明したように、長時間露光の電圧供給を行い(S22)、画像撮像(S23)、画像処理を行う(S24)。長短の撮像時間から取得データを処理(S25)、目的とする検出データを取得する(S26)。
【0053】
さらに、他の検査視野がある場合(S15のYes)、処理S11に戻り、次の視野の検査を実施し、全ての検査視野が終わると(S15のNo)、結果を出力して(S16)検査を終了する。
【0054】
以上により短時間に発生するリーク光を精度良く検出することができる。短時間に発生するリーク光は直接不良になることは少ないが、その挙動を解析するため、発光部の断面解析を行う場合がある。その場合には本手法により短時間により発生するリーク光を漏れなく検出する方法は有効である。
【0055】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3について説明する。リーク光によっては微弱ではなく、発生時に大きな値を示すものもある。図8(a),(b)に示すように、リーク光2cは、本来リペア対象とするべき微弱なリーク光2aと比べて強度が大きく、例えば撮像時間が3sec以下といった短い撮像時間でも、16bit画像で65535値をとる、といった結果となる。
【0056】
このような強いリーク光の中には異物サイズが大きく(10μm以上)、リーク光として検出しても、レーザーによるリペアが不可能な場合がある。このような検出点が発生した場合は、そのパネルはリペアせず廃棄するか、全く別のリペア工程に持っていく必要がある。露光時間を長く(60sec以上)した場合、リペアすべき微弱なリーク光も取得データ上は大きな強度値(65535以下)をとることもあるため、このような強いリーク光2cは従来の検出方法ではリーク光2a,2bと選別することができない。よって、リーク光2cを選別した後に、リーク光2aを選別する方法が必要となってくる。
【0057】
図9(a)〜(e)を用いて選別する方法の説明を行う。図9(a)に示す2aが短時間に発生するリーク光、2bが長時間に発生する弱いリーク光であり、2cが長時間に発生する強いリーク光である。リーク光2cを検出した後に、リーク光2aとリーク光2bを選別していく。このために、短時間露光による撮像を2回(図9(b)において、時間TS1の短時間撮像を1回、時間TS2の短時間撮像を1回)行い、その後に時間TLの長時間露光による撮像を実施する。短時間露光による撮像2回目の撮像画像が図9(d)であり、長時間に発生する強いリーク光2cを検出することができる。
【0058】
また、短時間露光による撮像1回目の撮像画像の図9(c)では短時間に発生するリーク光2aおよび長時間に発生するリーク光2cが両方とも撮像される。この図9(c)のリーク光検出位置から図9(d)のリーク光検出位置を差し引くことで、図9(e)に示すように短時間に発生するリーク光2aを検出することができる。このリーク光2aと、長時間に発生するリーク光2bを選別する方法は実施形態1と同様である。
【0059】
また、本実施形態3における検査方法の具体的な動作は、実施形態2の図7に示すフローチャートの処理S21で行う複数回の撮像を2回行うようにしたものであり、その他の処理動作は同様である。また、教示条件を(表4)に示す。長時間および短時間に発生するリーク光の検出教示条件は、実施形態1の(表2)と同じであり、短時間に発生するリーク光の検出を2回行うものである。
【0060】
【表4】
【0061】
以上に説明した各実施形態により、良品・不良品の2つのモードが存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る有機EL検査方法は、複数存在するパネルのリーク箇所を短時間で精度良く選別することができ、有機ELディスプレイ,有機EL照明,太陽電池など発光デバイスを用いたパネルの製造工程の検査、あるいは開発時の解析手法として電気的リーク箇所の特定する方法の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 パネル
2,2a,2b,2c,2d リーク光
3 高感度カメラ
4 ソースメーター
5 可動ステージ
6 制御部
7 入力部
8 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ELを用いた表示パネルに対し、電圧を印加することにより生じる発光を検出して行う有機EL検査方法であって、
前記検出した発光の状態を区別するために撮像手段による前記発光の撮像を複数回行うことを特徴とする有機EL検査方法。
【請求項2】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、電圧印加時間を短くした発光の状態と電圧印加時間を長くした発光の状態とを、それぞれの電圧印加時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、所定の電圧印加時間による発光の状態を前記電圧印加時間に同期させた露光により撮像し、かつ前記撮像を複数回行って、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項4】
前記所定の電圧印加時間の露光により撮像した後、前記所定の電圧印加時間より長くした電圧印加時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項3記載の有機EL検査方法。
【請求項5】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、発光の状態とする電圧印加時間内を順番に、所定時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項6】
前記所定時間の露光により撮像した後、前記所定時間より長くした時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項5記載の有機EL検査方法。
【請求項1】
有機ELを用いた表示パネルに対し、電圧を印加することにより生じる発光を検出して行う有機EL検査方法であって、
前記検出した発光の状態を区別するために撮像手段による前記発光の撮像を複数回行うことを特徴とする有機EL検査方法。
【請求項2】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、電圧印加時間を短くした発光の状態と電圧印加時間を長くした発光の状態とを、それぞれの電圧印加時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、所定の電圧印加時間による発光の状態を前記電圧印加時間に同期させた露光により撮像し、かつ前記撮像を複数回行って、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項4】
前記所定の電圧印加時間の露光により撮像した後、前記所定の電圧印加時間より長くした電圧印加時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項3記載の有機EL検査方法。
【請求項5】
前記撮像手段が複数回行う各撮像において、発光の状態とする電圧印加時間内を順番に、所定時間の露光により撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項1記載の有機EL検査方法。
【請求項6】
前記所定時間の露光により撮像した後、前記所定時間より長くした時間の露光によって撮像して、発光の状態を区別することを特徴とする請求項5記載の有機EL検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−258495(P2011−258495A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133723(P2010−133723)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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