説明

有機EL発光素子

【課題】有機EL素子の発光部位への水分等の侵入を防止することのできる有機EL素子を提供する。
【解決手段】 透明基板1上に、透明導電層、有機発光ユニット層、金属層、及び絶縁封止層を下からこの順に有する。埋め込み部35は、Z方向に絶縁封止層から少なくとも透明導電層の上面の深さ位置まで絶縁封止層と同一の材料層が充填され環形状を示す。埋め込み部37は、封止閉領域B1の内側においてZ方向に有機発光ユニット層を貫通して金属層から透明導電層の上面の深さ位置まで金属層と同一の材料層が充填されている。埋め込み部39は、封止閉領域B1の内側においてZ方向に透明導電層を貫通して有機発光ユニット層から透明基板の上面の深さ位置まで有機発光ユニット層と同一の材料層が充填されている。埋め込み部47及び48は、封止閉領域B1の外側においてX方向に離隔して絶縁封止層の上層に形成された2つの給電層と透明導電層の上面を連絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光光源等として幅広い用途が期待される有機エレクトロルミネッセンス(EL)発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置を構成する有機EL素子は電気エネルギーを光エネルギーに変換する半導体素子である。近年、有機EL素子を用いた研究が加速度的に行われ、有機EL素子を構成する有機材料等の改良により、素子の駆動電圧が格段に下げられると共に発光効率が高められている。
【0003】
有機EL素子は、電圧を印加するための陽極と陰極との間に有機発光ユニット層が挟持された構成を有している。陽極と陰極のうちの少なくとも一方は、素子内で発生する光を外部に取り出すために透明な導電性材料が用いられる。一般には、陽極として透明導電層が用いられ、陽極側から光が取り出される。有機EL素子は面発光光源として機能するため、LED等の点光源とは異なった光の表現が可能になる点において、照明用途としての今後の需要が期待されているところである。
【0004】
しかしながら、有機EL素子は、一定期間駆動した場合に発光特性が初期と比べて著しく劣化する場合があるという問題を有する。この原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素や水分が電極を酸化させることで、当該電極にダークスポット(非発光領域)を形成し、場合によっては電極間の短絡を生じさせるという点が挙げられる。
【0005】
このような問題を防止するため、下記特許文献1には、有機EL素子の基板上に形成された発光層の上方の位置に封止部材をかぶせて接着剤で封止し、更に封止空間内に吸湿作用のある吸着剤等を封入するという措置を施した有機ELパネルが開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−235077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、有機発光ユニット層を含む積層体が存在する領域の側方位置において、ガラス基板と封止部材とが接着剤を介して密着固定されている。このため、長時間の使用により接着剤部分を介して水分や酸素が侵入し、所望の封止性能が十分に得られないという問題を依然として有している。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑み、有機EL素子の発光部位への水分等の侵入を防止することのできる有機EL素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決すべく、本発明に係る有機EL発光素子は、透明基板上に、透明導電層、有機発光ユニット層、金属層、及び絶縁封止層を下からこの順に有してなる構成であって、
前記透明基板の基板面に垂直な第1方向に前記絶縁封止層から少なくとも前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填され、前記第1方向に見て環形状を示す第1埋め込み部と、
前記第1方向に見て前記第1埋め込み部に外周を囲まれてなる封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層を貫通して前記金属層から前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記金属層と同一の材料層が充填された第2埋め込み部と、
前記封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記透明導電層を貫通して前記有機発光ユニット層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記有機発光ユニット層と同一の材料層が充填された第3埋め込み部と、
前記封止閉領域の外縁部又はその外側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記有機発光ユニット層と同一の材料層が充填されてなる埋め込み部と、前記第1方向に前記絶縁封止層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填されてなる埋め込み部の少なくとも何れか一方を有してなる第4埋め込み部と、
前記封止閉領域の外側において、前記基板面に平行な方向に離隔して、直接又は導電性材料が充填された第5埋め込み部を介して前記透明導電層の上面に接触して形成された2つの給電層と、
前記第3埋め込み部及び前記第4埋め込み部は、前記第1埋め込み部と連結して前記封止閉領域を横切るように構成され、前記基板面に平行な方向に前記透明導電層を2つに分断し、
前記2つの給電層のうちの一方は、分断された一方の前記透明導電層と接触し、前記2つの給電層のうちの他方は、分断された他方の前記透明導電層と接触していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る有機EL発光素子によれば、絶縁封止層と同一の材料で形成された第1埋め込み部が、封止閉領域の内側に位置する有機発光ユニット層に対して、側方から水分や酸素が流入するのを防止する障壁としての機能を果たす。また、有機発光ユニット層の上層には絶縁封止層が形成されているため、上方からの水分や酸素の流入も防ぐことができる。これにより、発光特性の経時的な劣化を抑制することが可能となる。
【0011】
また、この有機EL発光素子は、一方の面に透明導電層が形成された透明基板に対して所定の箇所にレーザーで溝を形成する工程と、全面に有機発光ユニット層,金属層,絶縁封止層を成膜する工程によって製造することが可能である。これにより、有機発光ユニット層内部への水分や酸素の侵入を防止する機構を備えた有機EL発光素子を、簡易な工程によって実現できるため、かかる機構を備えることによる歩留まりの大幅な低下や、製造コストの大幅な上昇するという事態を招くことがない。
【0012】
本発明に係る有機EL発光素子は、上記特徴に加えて、前記封止閉領域の外側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層を貫通して前記金属層から前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記金属層と同一の材料層が充填された第6埋め込み部を有することを別の特徴とする。
【0013】
この構成によれば、封止閉領域の外側において、第6埋め込み部が金属層と透明導電層を連絡する機能を果たす。これにより、封止閉領域の外側で、第6埋め込み部及び金属層を介して進行する電流経路が確保される。金属層は透明導電層よりも低抵抗の材料で構成されるため、透明導電層内を電流が流れる場合と比べて電圧の低下が抑制される。これにより、有機EL発光素子上の位置に応じて輝度ムラが生じるのを緩和できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、簡易な製造プロセスによって、発光部位(有機発光ユニット層)への水分や酸素の侵入を防止する機構を付加した有機EL発光素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の概略斜視図
【図2】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の概略上面視平面図
【図3】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の概略断面図
【図4】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の別の概略上面視平面図
【図5】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の工程断面図(1)
【図6】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の工程断面図(2)
【図7】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の別の概略斜視図
【図8】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図9】本発明に係る有機EL発光素子の第1実施形態の更に別の概略断面図
【図10】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の概略上面視平面図
【図11】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の概略断面図
【図12】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の別の概略上面視平面図
【図13】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の別の概略断面図
【図14】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図15】本発明に係る有機EL発光素子の第2実施形態の更に別の概略断面図
【図16】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の概略上面視平面図
【図17】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の概略断面図
【図18】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の別の概略上面視平面図
【図19】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図20】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図21】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図22】本発明に係る有機EL発光素子の第3実施形態の別の概略断面図
【図23】本発明に係る有機EL発光素子の第4実施形態の概略上面視平面図
【図24】本発明に係る有機EL発光素子の第4実施形態の概略断面図
【図25】本発明に係る有機EL発光素子の第5実施形態の概略上面視平面図
【図26】本発明に係る有機EL発光素子の第5実施形態の概略断面図
【図27】本発明に係る有機EL発光素子の第5実施形態の別の概略上面視平面図
【図28】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の概略上面視平面図
【図29】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の概略断面図
【図30】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の別の概略上面視平面図
【図31】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図32】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図33】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の更に別の概略上面視平面図
【図34】本発明に係る有機EL発光素子の他の実施形態の更に別の概略上面視平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機EL発光素子(以下、適宜「本素子」という)の各実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、各図面において、実際の寸法比と図面上の寸法比は必ずしも一致するものではない。
【0017】
〔第1実施形態〕
本素子の第1実施形態の構成について説明する。
【0018】
[全体構造]
図1は、本素子の第1実施形態の概略斜視図である。図1に示す有機EL発光素子1は、透明基板11,透明導電層13,有機発光ユニット層15,金属層17,絶縁封止層19,絶縁フィルム21,給電層23を備える。給電層23には、本素子1外部との間で電気的接続を形成するための引き出し線31が接続されている。
【0019】
本明細書では、説明の便宜上、透明基板11が存在する側を「下側」と規定する。このとき、図1に示すように本素子1は、透明基板11上に、透明導電層13,有機発光ユニット層15,金属層17,絶縁封止層19を下からこの順に積層してなる構成である。有機発光ユニット層15には有機発光層が含まれている。つまり、本素子1は、透明基板11側から光が取り出される、いわゆるボトムエミッション型の有機EL発光装置を主な対象としている。なお、透明基板11が存在する側を「下側」として規定したのは、あくまで説明の便宜のためであり、実際の利用形態をこのように限定する意図ではない。つまり、例えば透明基板11が存在する側を上にして本素子を利用したとしても、そのことのみをもって本発明の範囲から外れるわけではないことは言うまでもない。
【0020】
有機発光ユニット層15において発光した光を外部に取り出す観点から、透明基板11はなるべく高い透光性を有することが好ましい。透明基板11の材料としては、例えばガラス板、透明プラスチックフィルム等が利用可能である。また、同様の理由により透明基板1の上に形成される透明導電層13も、できるだけ高い透光性を有することが好ましい。より具体的には、透明基板11及び透明導電層13は、可視光域(350nm〜780nm)における透過率がおおむね50%を超えていればよい。好ましくはその透過率が80%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0021】
透明導電層13を構成する透明導電性材料としては、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウムドープの亜鉛酸化物(IZO)、酸化スズ、酸化亜鉛等が利用可能である。その中でも表面抵抗の低さの観点から、インジウムスズ酸化物(ITO)が好適に用いられる。透明導電層13の形成方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法、パルスレーザー堆積法等が好適に採用される。
【0022】
透明導電層13上には、有機発光ユニット層15が形成される。有機発光ユニット層15は、一般の有機EL発光素子において陰極と陽極とに挟持された部分を指し、有機発光層の他には、例えば電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層等を含む。有機発光ユニット層15は、有機化合物層の他に、薄膜のアルカリ金属層や無機層を有していてもよい。また、有機発光ユニット層15は、特開2003−272860号公報等に開示されているように、電荷発生層(Charge Generation Layer)を介して、膜面の法線方向に複数の発光層が直列に接続されたマルチフォトエミッション(MPE)構成を有していても構わない。
【0023】
有機発光ユニット層15を構成する各層は、目的に応じて適宜の方法により形成され得る。例えば、低分子有機化合物等は蒸着法で形成されてもよいし、高分子有機化合物は印刷法等で形成されてもよい。また、有機EL発光素子の製造工程において、吸湿によって有機発光ユニット層を構成する各層が劣化するのを抑止する観点から、有機発光ユニット層15と金属層17の界面に、金属層17とは別にバッファー層として導電性の層を形成してもよい。
【0024】
有機発光ユニット層15上には、透明導電層13よりも低抵抗の金属層17が形成される。金属層17は、例えば、Al,Ag等を用いて、蒸着,スパッタ等の方法により形成され得る。
【0025】
金属層17上には、絶縁封止層19が形成される。絶縁封止層19は、絶縁性の材料で構成され、吸湿性を更に有する材料であればより好ましい。酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、酸窒化ケイ素等の金属酸窒化物、その他の材料を用いて、CVD,蒸着,スパッタ等の方法により形成することができる。
【0026】
絶縁封止層19上の所定箇所には、外部から電源を供給するための給電層23が形成される。給電層23は、ハンダ,Agペースト,ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)等の導電性材料を用い、材料に応じて蒸着、スパッタ、転写等の方法により形成することができる。
【0027】
そして、絶縁封止層19及び給電層23の上面には、保護目的の絶縁フィルム21が形成されている。絶縁フィルム21には、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレン等の高分子絶縁素材を用いることができる。一例としては、硬化性樹脂を塗布した後に絶縁フィルム21を形成し、その後に樹脂を硬化させることで絶縁フィルム21を固定的に貼り付ける方法が採用され得る。
【0028】
後述するように、透明導電層13,有機発光ユニット層15,及び金属層17には、夫々所定の箇所において、当該層とは異なる材料層が充填された溝状の埋め込み部が形成されている。つまり、透明導電層13の所定位置に形成されている埋め込み部内には、透明導電層13ではない別の層材料が充填されている。有機発光ユニット層15、金属層17においても同様である。
【0029】
なお、本明細書では、透明基板11が矩形形状を有しているものとして説明するが、本素子1において透明基板11の形状は矩形に限定されるものではない。
【0030】
[埋め込み部の構造]
図2は、本素子1の概略上面視平面図である。なお、図2では、理解の容易化のために、積層体の内部に形成されている埋め込み部が強調して図示されている。
【0031】
図2に示すように、本素子1には、埋め込み部35,37,39,41,47及び48が形成されている。埋め込み部35は、溝部に絶縁封止層19と同一の材料層が充填されて形成されたものである。埋め込み部37は、溝部に金属層17と同一の材料層が充填されて形成されたものである。埋め込み部39は、後述するように埋め込み部35によって形成される封止閉領域B1の内側において、溝部に有機発光ユニット層15と同一の材料層が充填されて形成されたものである。埋め込み部41は、封止閉領域B1の外側において、溝部に有機発光ユニット層15と同一の材料層が充填されて形成されたものである。埋め込み部47及び48は、溝部に給電層23と同一の材料層が充填されて形成されたものである。
【0032】
図面上、各埋め込み部35,37,39,41,47及び48における塗りつぶしパターンは、図1で図示されている各層の塗りつぶしパターンに対応させている。なお、後述するように、各埋め込み部は、同形状の溝部を形成した後に充填すべき材料層を各溝部内に充填することで形成されている。
【0033】
以下では、透明基板11の基板面に平行な平面を「X−Y平面」と呼び、図2における左右方向を「X方向」、上下方向を「Y方向」と呼ぶ。また、X−Y平面に直交する方向を「Z方向」と呼ぶ。このZ方向は「第1方向」に対応する。特に本明細書では、絶縁封止層19から透明基板11に向かう方向をZ方向と規定して説明する。
【0034】
(埋め込み部35)
埋め込み部35は、「第1埋め込み部」に対応する。埋め込み部35は、Z方向に見てX−Y平面上に矩形環状を示すように形成されている。これにより、本素子1の形成領域は、Z方向に見て埋め込み部35に外周を囲まれてなる封止閉領域B1と、その外側の領域B2に分離される。
【0035】
この埋め込み部35は、金属層17及び有機発光ユニット層15をZ方向に貫通しているが、透明導電層13の上面に達するに留まっており、透明導電層13及びその下層の透明電極11を分断することはない。絶縁封止層19と同一の材料層で形成された埋め込み部35により、金属層17及び有機発光ユニット層15が2つの領域B1,B2に分離され、絶縁封止層19と透明導電層13が連絡されている。
【0036】
本実施形態では、埋め込み部35の形状を矩形環状であるとして説明するが、少なくともその内側に閉領域B1を形成するような環状であればよい。つまり、円環状や楕円環状、三角形環状、その他の環状であっても構わない。また、この埋め込み部35は、一部の箇所において透明基板11の上面に達するように形成されていてもよい。この形態については後に説明される。
【0037】
(埋め込み部37)
埋め込み部37は、「第2埋め込み部」に対応する。埋め込み部37は、封止閉領域B1の内側において、Z方向に有機発光ユニット層15を貫通し、金属層17から透明導電層13の上面の深さ位置まで金属層17と同一の材料層が充填されることで形成されている。この埋め込み部37は、有機発光ユニット層15をZ方向に貫通しているが、透明導電層13の上面に達するに留まっており、透明導電層13及びその下層の透明電極11を分断することはない。金属層17と同一の材料層で形成された埋め込み部37により、金属層17と透明導電層13が連絡される。
【0038】
(埋め込み部39)
埋め込み部39は、「第3埋め込み部」に対応する。埋め込み部39は、封止閉領域B1の内側において、Z方向に透明導電層13を貫通し、有機発光ユニット層15から透明基板11の上面の深さ位置まで有機発光ユニット層15と同一の材料層が充填されることで形成されている。この埋め込み部41は、透明導電層13をZ方向に貫通しているが、透明基板11の上面に達するに留まっており、透明基板11を分断することはない。
【0039】
そして、図2に示すように、埋め込み部39は封止閉領域B1を2つの領域に分断するように延伸して形成されている。図2の例では、埋め込み部39がY方向に延伸する例が示されているが、延伸方向はY方向に限定されるものではない。
【0040】
(埋め込み部41)
埋め込み部41は、「第4埋め込み部」に対応する。埋め込み部41は、封止閉領域B1の外側において、Z方向に透明導電層13を貫通する、透明導電層13以外の材料層が充填された埋め込み部を指している。そして、この埋め込み部41は、埋め込み部35及び39と連結されて封止閉領域B1を横切るように構成されている。これらの埋め込み部によって、透明導電層13は、X−Y平面上において2つの領域A1,A2に分断される。図2ではY方向に延伸する埋め込み部によって、透明導電層13がX方向に2領域に分断されるものとして図示している。
【0041】
図2の構成によれば、埋め込み部41は、封止閉領域B1の外側において、Z方向に有機発光ユニット層15から透明基板11の上面の深さ位置まで有機発光ユニット層15と同一の材料層が充填されて形成される。また、埋め込み部41と埋め込み部35が結合する箇所においては、Z方向に絶縁封止層19から透明基板11の上面の深さ位置まで絶縁封止層19と同一の材料層が充填されて形成される。なお、当該箇所において、有機発光ユニット層15と同一の材料層が透明導電層13を貫通する構成としても構わない。
【0042】
(埋め込み部47及び48)
埋め込み部47及び48は、「第5埋め込み部」に対応する。この埋め込み部の説明を行うに当たり、まず給電層23の説明を行う。給電層23は、封止閉領域B1の外側において、基板面に平行な方向(ここではX方向)に離隔した2か所に形成されている。そして、埋め込み部47は、一方の給電層23からZ方向に透明導電層13の上面の深さ位置まで導電性の材料層が充填されて形成されている。埋め込み部48は、他方の給電層23からZ方向に透明導電層13の上面の深さ位置まで導電性の材料層が充填されて形成されている。つまり、埋め込み部47及び48も、封止閉領域B1の外側において基板面に平行な方向(X方向)に離隔して形成されている。
【0043】
そして、埋め込み部47は、領域A1に係る透明導電層13の上面に接触し、埋め込み部48は、領域A2に係る透明導電層13の上面に接触する構成である。つまり、一方の給電層23は、領域A1に係る透明導電層13と埋め込み部47を介して連絡され、他方の給電層23は、領域A2に係る透明導電層13と埋め込み部48を介して連絡されている。
【0044】
本実施形態では、図示の簡単のため、埋め込み部37,47及び48が、いずれもY方向に変位せずX方向にのみ変位した位置関係に配置されているものとして説明する(図2参照)。つまり、埋め込み部37,47及び48を通過するX方向に平行な線分X1−X2を引くことができるものとする。しかし、本素子1において、これらの埋め込み部37,47及び48が、相互にY方向に変位した位置に配置されていても構わない。
【0045】
[断面構造]
以下、本素子1の断面構造につき、図2で図示したX1−X2線、及びX3−X4線で切断した概略断面図を参照して説明する。図3は、本素子1の概略断面図であり、(a)にX1−X2線の断面図を、(b)にX3−X4線の断面図を示す。
【0046】
図2の平面図からも分かるように、X1−X2断面においては埋め込み部35,37,39,47,48が現れており、X3−X4断面においては埋め込み部35,39が現れている。なお、埋め込み部37,47及び48が相互にY方向に変位していた場合には、X1−X2断面図において埋め込み部37,47,48の何れか一のみが現れる構成となる。
【0047】
図3により明らかなように、領域A1内に形成された引き出し線31は、領域A1内の給電層23及び給電層23と同一の材料層で形成された埋め込み部47を介して、領域A1内の透明導電層13と電気的に接続される。なお、透明導電層13は、埋め込み部35,39及び41が結合されることで領域A1とA2に分断されるため、領域A1内の透明導電層13と領域A2内の透明導電層13とが直接短絡されることはない。
【0048】
他方、領域A2内に形成された引き出し線31は、領域A2内の給電層23及び給電層23と同一の材料層で形成された埋め込み部48を介して、領域A2内の透明導電層13と電気的に接続される。この領域A2内の透明導電層13は、金属層17と同一の材料が充填された埋め込み部37を介して、金属層17と電気的に接続される。
【0049】
[本素子の機能]
領域A1内の給電層23と領域A2内の給電層23との間に電圧を印加すると、領域A1内で且つ封止閉領域B1内において、透明導電層13と金属層17の間に電圧が印加される。これにより、透明導電層13と金属層17に挟持された、領域A1内で且つ封止閉領域B1内の有機発光ユニット層15が発光する。一方、領域A2内或いは領域B2内の有機発光ユニット層15は発光しない。つまり、埋め込み部35及び39によって囲まれた領域のうち、埋め込み部37が形成されていない側の領域が発光領域となり、それ以外は非発光領域となる。
【0050】
一般には、透明導電層13を陽極領域とし、金属層17を陰極領域として機能させる。つまり、本素子1を発光素子として機能させる際には、領域A1側の引き出し線31が領域A2側の引き出し線31に対して正極性となるような電圧を印加する。このとき、領域A1内の給電層23が陽極端子、領域A2内の給電層23が陰極端子として機能する。
【0051】
図2及び図3において示されるように、封止閉領域B1は、絶縁封止層19と同一の材料で形成された埋め込み部35によって周囲を取り囲まれている。つまり、この埋め込み部35は、封止閉領域B1内に位置する有機発光ユニット層15に対して、側方から水分や酸素が流入するのを防止する障壁としての機能を果たす。また、有機発光ユニット層15の上層には絶縁封止層19及び絶縁フィルム21が形成されているため、上方からの水分や酸素の流入も防止される。なお、絶縁フィルム21は、必ず設けなければならないものではないが、上方からの水分や酸素の流入を抑制する効果を高め、また引き出し線23や給電層31以外の箇所における本素子1の表面部分の絶縁性を担保するためには、絶縁フィルム21を設けるのが好適である。
【0052】
発光領域の面積をできるだけ確保しながら、有機発光ユニット層15に対して水分や酸素の流入を防ぐ機能を付加するためには、領域A1内のできるだけ広い領域を埋め込み部35で囲むことが好ましい。一例として、図4に示すような構造とすることが可能である。また、発光領域の面積をできるだけ確保するという観点に立てば、図4において領域A2をなるべく狭くするのが望ましい。
【0053】
[製造プロセス]
以下、本実施形態における本素子1の具体的な製造プロセスの実施例につき、図5及び図6の工程断面図(紙面の都合上、2図面に分けている)を参照して説明する。図5及び図6の工程断面図は、図2の平面図上におけるX1−X2線断面図及びX3−X4線断面図を示している。なお、膜厚の数値、成膜方法、材料、加工時におけるレーザーの出力条件等はあくまで一例であり、これらに限定されるものではない。
【0054】
以下では、埋め込み部35,37,39,41,47,48を形成するために予め形成する溝部を夫々、35h,37h,39h,41h,47h,48hと符号を付して説明する。また、以下では工程毎にステップ番号S1〜S10を付して説明する。
【0055】
(透明導電層付き透明基板の準備:ステップS1)
図5(a)に示すように、透明導電層として平均膜厚150nmのITO膜が片面全体に形成された無アルカリガラス(200mm×200mm、厚さ0.7mm)を用意する。無アルカリガラスが透明基板11に、ITO膜が透明導電層13に夫々対応する。
【0056】
(溝部39h及び41hの形成:ステップS2)
ステップS1の後、透明導電層13が形成された透明基板11を、透明導電層13側の面(ITO膜面)が上になるようにXYステージ上に設置し、YAGレーザーの基本波を用いて上面からレーザービームを照射し、Y方向に走査することにより、所定箇所においてY方向に透明導電層13を除去して透明基板11の基板面を露出させる。これにより、図5(b)に示すように、所定箇所においてY方向に延伸する溝部39hが形成される。なお、図5内には現れないが、本工程において溝部39hに連結されて溝部41hも形成される。これらの溝部を境界として、透明基板11は概念上2つの領域A1,A2に分けられる。
【0057】
このとき、透明基板11の基板面が極力損傷しないよう、レーザーの出力条件を設定する必要がある。本実施例では、レーザーの発振周波数は15kHz、出力は14W、ビーム径は約25μm、加工速度は50mm/秒である。
【0058】
(有機発光ユニット層15の形成:ステップS3)
ステップS2の後、基板を中性洗剤で洗浄し、150℃で20分加熱乾燥させた後、パターン化された透明導電層13上に、酸化モリブデン層/4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(以下「α−NPD」)層/α−NPD層/[トリス(8−ハイドロキシキノリナート)]アルミニウム(III)(以下「Alq」)層/LiF層/Al層からなる有機発光ユニット層15を、真空蒸着法により形成する。これにより、図5(c)に示すように、ステップS2で形成された溝部39hには有機発光ユニット層15と同一の材料層で充填されて、埋め込み部39が形成される。
【0059】
より具体的には、まず、透明導電層13の直上層に、発光ユニットを形成するホール注入層として、酸化モリブデンとα−NPDを真空蒸着法により夫々10nmの膜厚で順次製膜する。本実施例では、モリブデンの蒸着速度は0.015nm/秒、α―NPDの蒸着速度は0.135nm/秒である。
【0060】
次いでホール輸送層として、α−NPDを、真空蒸着法により50nmの膜厚で形成する(蒸着速度0.08nm〜0.12nm/秒)。更にその直上層に、電子輸送層を兼ねた発光層として、Alqを、真空蒸着法により70nmの膜厚で形成する(蒸着速度0.25nm〜0.30nm/秒)。更にその直上層にバッファー層として、膜厚1nmのLiF(蒸着速度0.01nm〜0.05nm/秒)及び膜厚150nmのAlを、真空蒸着法により順次形成する。
【0061】
(溝部37hの形成:ステップS4)
ステップS3の後、基板を、有機発光ユニット層15側が下面になるようにXYステージ上に設置した。このとき、有機発光ユニット層15面とXYステージ面との距離が7mmとなるように、基板の端部4個所で基板とXYステージとを固定して、基板のレーザー加工面がXYステージと直接接触しないようにした。このようにXYステージから基板を浮かせた状態でレーザー加工を行うことで、レーザー加工による蒸発物が基板に再付着することや、ステージで反射・散乱したレーザー光による悪影響を抑制し得る。
【0062】
この状態で、YAGレーザーの第2高調波を用いて上面からレーザービームを照射することにより、領域A2内の所定箇所において有機発光ユニット層15を除去して透明導電板13の上面を露出させる。これにより、図5(d)に示すように、領域A2内の所定箇所に溝部37hが形成される。
【0063】
このとき、透明基板11及び透明導電層13が極力損傷しないよう、レーザーの出力条件を設定する必要がある。本実施例では、レーザーの発振周波数は5kHz、出力は0.4W、ビーム径は約25μm、加工速度は50mm/秒である。
【0064】
(金属層17の形成:ステップS5)
ステップS4の後、基板を真空蒸着機に設置して、有機発光ユニット層15の上層にAlを真空蒸着法により150nm(蒸着速度0.30nm〜0.35nm/秒)の膜厚で製膜することで金属層17を形成した。これにより、図5(e)に示すように、ステップS4で形成された溝部37hには金属層17と同一の材料層で充填されて、埋め込み部37が形成される。
【0065】
本ステップS5により、領域A2内の所定箇所において、透明導電層13と金属層17との間の電気的接続経路が確保される。
【0066】
(溝部35hの形成:ステップS6)
ステップS5の後、基板を、金属層17が下面になるようにXYステージ上に設置した。このとき、ステップS4と同様に、基板の端部4個所で基板とXYステージとを固定して、基板のレーザー加工面がXYステージと直接接触しないようにした。そして、YAGレーザーの第2高調波を用いて上面からレーザービームを照射し、矩形環状に走査することにより、所定箇所において金属層17及び有機発光ユニット層15を除去して、矩形環状に透明導電層13の上面を露出させる。これにより、図5(f)に示すように、所定箇所においてX−Y平面上において矩形環状を示す溝部35hが形成され、基板11は、この溝部35hを境界として、内側の閉領域B1と外側の領域B2の2つの領域に概念上分けられる。
【0067】
このとき、透明基板11及び透明導電層13が極力損傷しないよう、レーザーの出力条件を設定する必要がある。本実施例では、レーザーの発振周波数は5kHz、出力は0.4W、ビーム径は約25μm、加工速度は200mm/秒である。
【0068】
なお、この溝部35hは、後のステップで絶縁封止層19の材料層が充填されることで埋め込み部35を形成する。図2において示したように、埋め込み部35によって構成される閉領域B1は埋め込み部39によって横切られる位置関係となる必要がある。このため、本ステップでは、領域A1及びA2を跨ぐ矩形環状の溝部35hを形成する必要がある。
【0069】
なお、この溝部35hは、閉領域を構成する環状であれば、矩形環状に限定されない点は既に上述した通りである。発光領域をできるだけ確保するためには、例えば図4の埋め込み部35が示すような形状にするのが好適である。
【0070】
(絶縁封止層19の形成:ステップS7)
ステップS6の後、基板をプラズマCVD装置に設置して、金属層17の上層にSiNをプラズマCVD法により1.6μmの膜厚で製膜することにより、絶縁封止層19を形成した。これにより、図6(a)に示すように、ステップS6で形成された溝部35hには絶縁封止層19と同一の材料層で充填されて、埋め込み部35が形成される。上述したように、この埋め込み部35は、環状の封止閉領域B1を形成し、その内側に位置する有機発光ユニット層15の水分や酸素の流入を防止する壁としての役目を果たす。
【0071】
(溝部47hの形成:ステップS8)
ステップS7の後、基板を、絶縁封止層19側が下面になるようにXYステージ上に設置した。このとき、ステップS4,S6と同様に、基板の端部4個所で基板とXYステージとを固定して、基板のレーザー加工面がXYステージと直接接触しないようにした。そして、YAGレーザーの第2高調波を用いて上面から、埋め込み部35の外側において、領域A1及びA2内の所定箇所にレーザービームを照射することで、絶縁封止層19、金属層17及び有機発光ユニット層15を除去して透明導電層13の上面を露出させる。これにより、図6(b)に示すように溝部47h及び48hが形成される。
【0072】
(給電層23の形成:ステップS9)
ステップS8の後、超音波によりハンダを塗布することにより、給電層23を形成した。これにより、図6(c)に示すように、ステップS8で形成された溝部47hに給電層23と同一の材料層で充填されて埋め込み部47が形成され、ステップS8で形成された溝部48hに給電層23と同一の材料層で充填されて埋め込み部48が形成される。埋め込み部47及び48は、本素子1の外部と透明導電層13との電気的接続を確保するための経路としての役目を果たす。
【0073】
(絶縁フィルム21、引き出し線31の形成:ステップS10)
ステップS9の後、給電層23を外部に引き出すための引き出し線31を給電層23に接触形成させた後、引き出し線31を給電層23に超音波ハンダにより接合させた後、接着剤付きのPETフィルムを貼り付けることにより、絶縁フィルム21を形成した。
【0074】
以上において説明したように、本実施形態における本素子1は、一方の面に透明導電層13が形成された透明基板11に対し、所定の箇所にレーザーで溝を形成する工程と、全面に有機発光ユニット層15,金属層17,絶縁封止層19を成膜する工程によって実現することが可能である。すなわち、有機発光ユニット層15内部への水分や酸素の侵入を防止する機構を備えた有機EL発光素子を、簡易な工程によって実現できるため、かかる機構を備えることによる歩留まりの大幅な低下や、製造コストの大幅な上昇するという事態を招くことがない。
【0075】
[変形例]
本実施形態においては、給電層23を絶縁封止層19の上層に形成し、埋め込み部48又は49(第5埋め込み部)を介して給電層23と透明導電層13を接触させる構成とした。これに対し、Z方向から本素子1を見た場合に、透明基板11及び透明導電層13が、有機発光ユニット層15、金属層17及び絶縁封止層19よりも外側にはみ出しているような構成においては、透明導電層13の上面に直接給電層23を接触させる構成としても構わない。
【0076】
図7は、このような構成における概略斜視図である。なお、図7では、本素子1上における給電層の位置関係を明瞭にするために、絶縁フィルム21を図示していない。また、図8は、図7に示す本素子を図2にならって上から見た平面図として図示したものである。図8に示すように、領域A1内の透明導電層13上には給電層23aが形成され、領域A2内の透明導電層13上には給電層23bが形成されている。また、図9は、図8上のX1−X2線で本素子を切断したときの概略断面図である。実際の構造では、図7の状態において、給電層の上面を含む全面に絶縁フィルム21が形成されているものとして構わない。
【0077】
図9に示す本素子によれば、図2及び図3に示す本素子1と同様に、領域A1側の引き出し線31が領域A2側の引き出し線31に対して正極性となるような電圧を印加することで、領域A1内の給電層23が陽極端子、領域A2内の給電層23が陰極端子として機能し、透明導電層13と金属層17に挟持された、領域A1内で且つ封止閉領域B1内の有機発光ユニット層15が発光する。
【0078】
なお、図9に示す本素子を製造するに際しては、図1の素子と同様に、ステップS1〜S7を実行後、透明基板11の外周付近に形成されている有機発光ユニット層15、金属層17及び絶縁封止層19の積層体を除去して透明導電層13の上面を露出させる。その後、ステップS8を経ずにステップS9においてこの露出した透明導電層13上に給電層23(23a、23b)を形成すればよい。
【0079】
〔第2実施形態〕
本素子の第2実施形態の構成について説明する。なお、以下の各実施形態では、第1実施形態と異なる箇所についてのみ説明し、共通する箇所についての説明は割愛する。第1実施形態と共通する箇所については、同じ符号を付している。
【0080】
また、以下の各実施形態では、給電層23が埋め込み部47又は48を介して透明導電層13に接触する構成について説明するが、図7〜図9において説明したように、給電層23を直接透明導電層13上に形成する構成とすることも可能である。
【0081】
図10は、本実施形態における有機EL発光素子1aの概略上面視平面図である。また、図11は、図10上のY1−Y2線で切断したときの概略断面図である。なお、本実施形態における有機EL発光素子1aは、第1実施形態における有機EL発光素子1と比較して、概略斜視図、並びに、X1−X2線及びX3−X4線の断面図は共通である。
【0082】
図2と図10を比較すれば分かるように、本実施形態の本素子1aは、第1実施形態の本素子1と比較して、更にX方向に延伸する埋め込み部51及び52を有している点が異なる。これらの埋め込み部51及び52は、溝部に金属層17と同一の材料層が充填されて形成されたものである。
【0083】
埋め込み部51及び52は、「第6埋め込み部」に対応する。埋め込み部51及び52は、封止閉領域B1の外側において、Z方向に有機発光ユニット層15を貫通して金属層17から透明導電層13の上面の深さ位置まで金属層17と同一の材料層が充填されて形成される。本実施形態では、Y方向に離隔した2か所の位置に、夫々埋め込み部51及び52が形成されているものとして説明するが、何れか一方の埋め込み部のみが形成されているものとしても構わないし、例えば図12に示す構造のように両埋め込み部51及び52が一体化されていても構わない。図12に示す本素子1aのY1−Y2線断面図は、図11と共通である。なお、図13に同素子1aのX1−X2線断面図を示している。
【0084】
図2及び図3を参照すれば分かるように、第1実施形態の本素子1の場合、領域A1内において給電層23に与えられた電位は、埋め込み部47を介して透明導電層13との接触箇所に与えられた後、この透明導電層13内をX−Y平面に伝搬する。ここで、透明導電層13を構成するITOやAGO等の金属酸化物は、透明性が求められない金属層17を構成する材料と比較して高抵抗であるという性質を有している。このため、透明導電層13内の電位は、領域A1内において埋め込み部47と透明導電層13の接触箇所から離れれば離れるほど、給電層23に印加された電位よりも低下する。
【0085】
他方、領域A2内の給電層23は、埋め込み部48,透明導電層13,埋め込み部37を介して金属層17と電気的に接続される。この金属層17は、透明性材料が用いられていないため、その抵抗は十分小さく位置に応じて電位が低下するということはない。
【0086】
この結果、X−Y平面上の座標位置に応じて、上層にある金属層17と、下層にある透明導電層13との電位差が変化するという問題が生じる。有機発光ユニット層15の輝度は、印加される電圧に応じて決定されるため、場所に応じて金属層17と透明導電層13の間の電位差が変化することは、場所に応じて有機発光ユニット層15の輝度が変化してしまうことを意味している。これは、有機EL発光素子1を構成する透明基板11の面積を大きくすればするほど顕著な問題となる。より具体的には、輝度ムラとして現れることとなる。
【0087】
これに対し、本実施形態の本素子1aによれば、X方向に延伸する埋め込み部51及び52が形成されている。これらの埋め込み部51及び52は、図11に示すように、封止閉領域の外側である領域B2内において金属層17と透明導電層13を連絡する役目を果たしている。すなわち、埋め込み部47と透明導電層13の接触箇所からX方向に離れた位置においても、埋め込み部51及び52、並びにこれに連絡された金属層17を介してX方向に進行する電流経路が確保される。埋め込み部51及び52、並びに金属層17は抵抗値が低い材料で構成されるため、この経路を電流が通過することによる電圧降下はほとんど生じない。このため、第1実施形態の本素子1と比べて、輝度ムラを解消する効果が期待できる。図12に示す本素子1aの構造によれば、その効果が更に期待できることは言うまでもない。なお、図10や図12の構造のように、Y方向に対称性を有した構造を実現することで、意匠性に優れるという効果も得られる。
【0088】
なお、本素子1aを製造するに際しては、第1実施形態のステップS4において、埋め込み部37のための溝部37hに加えて、埋め込み部51及び52のための溝部を形成することの他は、第1実施形態と同様の工程で製造できる。
【0089】
本実施形態の別の構成例としては、図14に示すような構造を採用することが可能である。図14に示す本素子1aは、埋め込み部35によって囲まれた封止閉領域B1内に埋め込み部51及び52を有している。そして、埋め込み部51の内側において絶縁封止層19が充填された埋め込み部35aが形成されており、埋め込み部52の内側において絶縁封止層19が充填された埋め込み部35bが形成されている。つまり、埋め込み部51は、埋め込み部35,35a及び41によって外周を取り囲まれており、埋め込み部52は、埋め込み部35,35b及び41によって外周を取り囲まれている。
【0090】
ここで、埋め込み部35a及び35bは「第7埋め込み部」に対応する。なお、埋め込み部51及び52が「第6埋め込み部」に対応する点は図10の構成と同じである。
【0091】
図15は、図14に示す本素子1aのY1−Y2線で切断したときの概略断面図である。図15に示すように、埋め込み部35a及び35bは、絶縁封止層19の直下に形成され、金属層17をZ方向に貫通しているが、有機発光ユニット層15の上面に達するに留まっており、有機発光ユニット層15及びその下層の透明導電層13,透明電極11を分断していない。
【0092】
このように構成した場合、図10や図12の構成と同様に、X方向にわたって抵抗値に少ない電流経路が形成されるため、第1実施形態の本素子1よりも輝度ムラを解消する効果が得られる。一方で、図14の構成の場合、埋め込み部35,35a,35b,及び39で囲まれた領域(図15内における領域Cに対応)が発光領域となるため、理論的に図10や図12の構成と比べて発光領域が狭くなってしまうという欠点がある。ただし、第1実施形態で上述したように、本素子1aについても、レーザーにより形成した溝に材料層を充填することで埋め込み部を形成する構成であるため、埋め込み部の幅を極めて細く加工することができる。このため、図14のような構成であっても、実用的な観点からすれば非発光領域が増大するという問題はさほど大きなものではない。
【0093】
なお、図14の構成の場合には、第1実施形態のステップS4において、埋め込み部37のための溝部37hに加えて、埋め込み部51及び52のための溝部を形成し、更に、ステップS6において、埋め込み部35のための溝部35hに加えて、埋め込み部35a及び35bのための溝部を形成することの他は、第1実施形態と同様の工程によって製造することが可能である。
【0094】
〔第3実施形態〕
本素子の第3実施形態につき説明する。図16は、本実施形態における本素子1bの概略上面視平面図である。また、図17は、図16上において線分Y1−Y2線で本素子1bを切断したときの概略断面図である。本素子1bは、図10に示す本素子1aに対して、埋め込み部55を備えた点が異なる。
【0095】
埋め込み部55は、「第8埋め込み部」に対応する。この埋め込み部55は、領域A1内において、透明基板1の外周に沿うように形成されており、Z方向に絶縁封止層19から透明基板11の上面の深さ位置まで絶縁封止層19と同一の材料層が充填されて形成されている。つまり、本実施形態では、少なくとも領域A1側において、透明導電層13、有機発光ユニット層15、及び金属層17からなる積層体は、透明基板11よりもZ方向に見て面積が小さくなっており、絶縁封止層19は、この埋め込み部55を介して前記積層体の外壁に接触しながら透明基板11の上面に連絡されている。
【0096】
このように構成された埋め込み部55により、埋め込み部51及び透明導電層13に対して外部から水分や酸素が流入するのを防ぐ障壁としての機能が発揮される。よって、埋め込み部51や透明導電層13を介して有機発光ユニット層15内に水分や酸素が侵入するのを防止する効果を更に高めることができる。
【0097】
図16では、透明基板11を構成する3辺に沿って埋め込み部51が形成されるものとしたが、1辺或いは向かい合う2辺に沿って埋め込み部51が形成される構成であっても構わない。更に、図18に示すように、埋め込み部51が、領域A1及びA2を含む透明基板11の全外周を取り囲むように形成されていても構わない。このように構成することで、水分や酸素が有機発光ユニット層15内に流入するのを更に抑制することができる。
【0098】
なお、埋め込み部51及び52を備えない構成において、埋め込み部55を備える構成としても構わない。
【0099】
別の実施例として、図19に示すように、埋め込み部47及び48を透明基板11の外周に沿う位置に形成するものとしても構わない。このように構成することで、封止閉領域B1をX−Y平面上において拡げることができるため、発光領域を拡大することができる。ただし、この構成の場合、導電性材料が充填された埋め込み部47及び48が本素子1bの側面に露出することのないよう、素子1bの外周全面を絶縁フィルム21等の絶縁素材で覆うのが好ましい。
【0100】
なお、本実施形態以外の構成であっても、埋め込み部47及び48を透明基板の外周に沿う位置に形成することは可能である。また、図12の場合と同様、本実施形態においても、埋め込み部51と52を連絡する構成としてもよい(図20参照)。このとき、X方向及びY方向において、発光領域C1の両サイドに非発光領域C2がほぼ均等の幅で形成されるような位置関係となるように各埋め込み部を形成するのがより好ましい。図20の構成においても、埋め込み部35及び39で周囲を囲まれた領域のうち、埋め込み部37が形成されていない側の領域が発光領域となる点は図2や図10の構成と同じである。このとき、Z方向に見て埋め込み部35及び39によって囲まれる発光領域と、それ以外の領域である非発光領域とが対称的な位置関係となるように配置され、意匠性に優れる。
【0101】
更に、別の構成として、図21に示すように、領域A2内において、埋め込み部35と埋め込み部55をX方向に連結する構成としても構わない。なお、図21に示す本素子1bをX1−X2線,X3−X4線で切断したときの概略断面図を図22に示す。Y1−Y2線の断面図は、図17と共通である。
【0102】
本実施形態で説明した各構造についても、埋め込み部形成のための溝部の形成箇所を、本素子の構造に応じて変更する他は、第1実施形態で説明した本素子1の製造プロセスに準じた方法で製造が可能である。
【0103】
〔第4実施形態〕
本素子の第4実施形態について説明する。図23は、本実施形態における本素子1cの概略上面視平面図である。また、図24は、図23上において線分X1−X2線で本素子1cを切断したときの概略断面図である。
【0104】
図23に示されるように、本実施形態における本素子1cは、X方向に、埋め込み部35,埋め込み部37,埋め込み部39,埋め込み部41を複数配置して構成されている。これにより、埋め込み部35に外周を囲まれてなる封止閉領域B1も同じX方向に複数形成される。また、埋め込み部39,41及び35が連結されて各封止閉領域B1を横切るように形成され、これにより透明導電層13はX方向に複数分断される。
【0105】
埋め込み部47は、X方向に分断された複数の透明導電層13のうちの一方の端部に位置する透明導電層13の上面に連絡される。また、埋め込み部48は、X方向に分断された複数の透明導電層13のうちの他方の端部に位置する透明導電層13の上面に連絡される。2つの給電層23のうち、一方は埋め込み部47に接触し、他方は埋め込み部48に接触している。
【0106】
かかる構成とすることで、埋め込み部35及び39に周囲を囲まれた領域のうち、埋め込み部37が形成されていない側の領域からなる発光領域が、X方向に複数配列されることとなる。なお、隣接する発光領域の間には、埋め込み部35及び39に周囲を囲まれた領域のうち、埋め込み部37が形成されている側の領域からなる非発光領域が形成される。つまり、発光領域と非発光領域がX方向に交互に配置される構成となる。
【0107】
透明導電層13及び金属層17は、いずれもX方向に複数分断されている。図24によれば、分断された各透明導電層13は、埋め込み部47が接触する透明導電層13を除けば、埋め込み部47側に隣接する封止閉領域B1内の金属層17と、埋め込み部37を介して電気的に接続されて同電位となる。この金属層17と、同じ封止閉領域B1内の透明導電層13の間で生じている電位差が同閉領域内の有機発光ユニット層15に印加される。そして、この閉領域B1内の透明導電層13は、同様の理屈により更に埋め込み部27側に隣接する閉領域内の金属層17と電気的に接続されて同電位となっている。かかる構成が、X方向にわたって連続して形成されている。
【0108】
このような構成とすることで、図2の構成と比較した場合、埋め込み部47に近い位置における透明導電層13と金属層17の間の印加電圧の大きさと、埋め込み部48に近い位置における透明導電層13と金属層17の間の印加電圧の大きさの差異を小さくすることが可能となる。これにより、透明基板1を大型化した場合においても、場所に応じた輝度ムラを抑制することが可能である。
【0109】
なお、本素子1cにおいても、埋め込み部形成のための溝部の形成箇所を、本素子の構造に応じて変更する他は、第1実施形態で説明した本素子1の製造プロセスに準じた方法で製造が可能である。
【0110】
ここで、図23においては、理論上、X方向にわたって一定間隔で非発光領域が存在することとなる。しかし、上述したように、本素子1cは第1実施形態の本素子1と同様に、レーザーにより形成した溝に材料層を充填することで埋め込み部を形成する構成であるため、埋め込み部の幅を極めて細く加工することができる。このため、図23に示す構成であっても、X方向に一定間隔で非発光領域が視認されるようなことはない。
【0111】
なお、図23では、図2と同様の埋め込み部を有してなる単位構造がX方向に複数配置された構成としたが、単位構造をどのような構成にするかは、適宜自由に選択できる。例えば、図10や図21に示したような構成を単位構造とすることも可能である。
【0112】
更に、単位構造の構成を異ならせた状態でX方向に複数配置することで本素子1cを形成しても構わない。各実施形態で上述したように、本素子は埋め込み部35及び39によって発光領域が画定される。つまり、これを逆に言えば、埋め込み部35及び39の形状を変化させることで、発光領域の形状を自由に変化させることが可能になることを意味している。埋め込み部35及び39の形状は、ステップS4及びS6に係る各溝部形成工程によって決定されるため、このステップにおいて、溝部が所望の形状となるようにレーザーを走査することで容易に実現できる。特に、本実施形態のように、透明基板11上に複数の発光領域が構成される形態の場合、各発光領域を幾何学的模様やアルファベット、数字等の形状にすることで、ユーザーの要望に応じて発光領域の形状を変化させることのできる、自由度の高い照明装置が実現できる。
【0113】
〔第5実施形態〕
本素子の第5実施形態について説明する。図25は、本実施形態における本素子1dの概略上面視平面図である。また、図26は、図25上において線分Y1−Y2線で本素子1dを切断したときの概略断面図である。
【0114】
上記の各実施形態では、埋め込み部41として、有機発光ユニット層15と同一の材料層が充填されてなる場合を想定した(特に図2及び図3参照)。このような埋め込み部41が設けられているのは、埋め込み部39と共に埋め込み部35と連結されることで透明導電層13をX方向に分断し、埋め込み部47及び48が透明導電層13を介して直接的に短絡されるのを防止する趣旨である。
【0115】
従って、埋め込み部41は、埋め込み部39と共に埋め込み部35と連結されて透明導電層13をX方向に分断する構成であれば、絶縁封止層19と同一の材料層が充填されて形成される構成であっても構わない。
【0116】
本素子1dは、このような点に鑑み、上記の各実施形態とは異なり封止閉領域B1の外縁を形成する埋め込み部35の一部が、透明基板11の上面に接触する埋め込み部(61及び62)を構成している。図26に示すように、埋め込み部61及び62は、埋め込み部35と同様に、絶縁封止層19と同一の材料層が充填されて形成されているが、例えば図2の構造の埋め込み部35とは異なり、金属層17,有機発光ユニット層15に加えて透明導電層13をもZ方向に貫通している。なお、X1−X2断面、X3−X4断面については図3と同じである。
【0117】
かかる構成とした場合、埋め込み部61及び62が形成されている領域には、透明導電層13が形成されていないため、かかる領域内において、埋め込み部47と48をつなぐ電流経路は形成されない。また、封止閉領域B1内においては、透明導電層13が除去された埋め込み部39が形成されているため、やはり埋め込み部47と48をつなぐ電流経路は形成されない。
【0118】
つまり、埋め込み部35の一部分を構成する埋め込み部61及び62は、封止閉領域B1の外縁において、Z方向に透明導電層13を貫通する、透明導電層13以外の材料層が充填されて形成されており、「第4埋め込み部」に対応している。すなわち、埋め込み部61及び62が、図2の構成において封止閉領域B1の外側に形成された埋め込み部41の役割を果たす。
【0119】
なお、図25の構成において、埋め込み部61及び62によって透明基板1の外周を取り囲むように形成することも可能である。
【0120】
また、図25では、埋め込み部61及び62が封止閉領域B1の外縁の一部を構成していたが、図27に示す構造のように、封止閉領域B1の外側の位置にのみ埋め込み部61及び62を形成しても構わない。この場合、X1−X2線、X3−X4線、Y1−Y2線における各断面図は、いずれも図2の構成と同じになる。図27の構成であっても、埋め込み部61及び62、埋め込み部35、埋め込み部39が結合して透明導電層13をX方向に分断しているので、埋め込み部47及び48が透明導電層13を介して直接短絡されることはない。
【0121】
〔他の実施形態〕
他の実施形態について説明する。
【0122】
〈1〉 図28は他の実施形態における概略上面視平面図、図29は図28に示される本素子1eをX3−X4線で切断したときの概略断面図である。本素子1eのように、埋め込み部35が、埋め込み部39との連結に寄与しない一部の箇所において透明基板11の上面に連絡されていても構わない。図28では、埋め込み部35の一部である埋め込み部35cが、透明導電層13を貫通して透明基板11の上面に連絡されている。なお、X1−X2線の断面図については、図3(a)と同じである。
【0123】
〈2〉 上述の各実施形態では、領域A2内において、埋め込み部37が封止閉領域B1の内側の所定箇所に形成されるものとしたが、この埋め込み部37は埋め込み部39と同様にY方向に延伸する構成としても構わない(例えば図30参照)。図30に示す本素子1fは、第1実施形態の図2に示す本素子1の構成に対し、埋め込み部37を埋め込み部35に連結する箇所までY方向に延伸した構成である。
【0124】
更に、この埋め込み部37の一部を、領域A2内において封止閉領域B1の外側(すなわち、領域B2内)に形成しても構わない(例えば図31参照)。つまり、第2埋め込み部の一部が封止閉領域B1の外側に形成されていても構わない。このとき、金属層17は、領域A2内において、封止閉領域B1内に形成された埋め込み部37のみならず、封止閉領域B1の外側(領域B2内)に形成された埋め込み部37を介して、透明導電層13と連絡され、電気的に接続される。
【0125】
図31は、図30に示す本素子1fに対し、埋め込み部37を埋め込み部35の外側にまで更にY方向に延伸させた構成である。また、この図31に示す構成を基礎として、第4実施形態の図23に示す本素子1cにならってX方向に複数の埋め込み部を配置した本素子1fの概略上面視平面図を図32に示す。
【0126】
また、第3実施形態の図21に示す本素子1bに対し、図31の構成と同様に埋め込み部37をY方向に延伸した構成を図33に示す。図33の本素子1fによれば、金属層が充填されている埋め込み部37と埋め込み部51(52)によって、埋め込み部41を隔てた環形状が形成される。各埋め込み部の幅が極めて狭く形成されていることを鑑みれば、埋め込み部37及び51が形成する形状は、X方向及びY方向に対称な矩形環状を示しているとみなすことができる。このとき、領域A1側の透明基板11のY方向に延伸する外周辺と埋め込み部51とのX方向に係る離隔距離と、領域A2側の透明基板11のY方向に延伸する外周辺と埋め込み部35とのX方向に係る離隔距離とを等しくすることで、X及びY方向に対称性を有する素子が実現され、極めて高い意匠性が得られる。
【0127】
〈3〉 上述の各実施形態において、金属層17と同一の材料層が充填されてなる埋め込み部(35,51,52)は、間隔を有した状態で(ドット状に)延伸する構成とすることが可能である。一例として、図33の本素子1fに対し、埋め込み部35及び51(52)をドット状に形成した構成を図34に示す。図34に示す本素子1fにおいても、図33の本素子と同様にX及びY方向についての対称性が実現できる。
【符号の説明】
【0128】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f: 本発明の有機EL素子
11: 透明基板
13: 透明導電層
15: 有機発光ユニット層
17: 金属層
19: 絶縁封止層
21: 絶縁フィルム
23: 給電層
31: 引き出し線
35: 第1埋め込み部
35a,35b: 第7埋め込み部
35h: 溝部
37: 第2埋め込み部
37h: 溝部
39: 第3埋め込み部
39h: 溝部
41: 第4埋め込み部
47,48: 第5埋め込み部
47h,48h: 溝部
51,52: 第6埋め込み部
55: 第8埋め込み部
61,62: 第1又は第4埋め込み部の一部
B1: 封止閉領域
B2: 埋め込み部35の外側領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、透明導電層、有機発光ユニット層、金属層、及び絶縁封止層を下からこの順に有してなる有機EL発光素子であって、
前記透明基板の基板面に垂直な第1方向に前記絶縁封止層から少なくとも前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填され、前記第1方向に見て環形状を示す第1埋め込み部と、
前記第1方向に見て前記第1埋め込み部に外周を囲まれてなる封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層を貫通して前記金属層から前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記金属層と同一の材料層が充填された第2埋め込み部と、
前記封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記透明導電層を貫通して前記有機発光ユニット層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記有機発光ユニット層と同一の材料層が充填された第3埋め込み部と、
前記封止閉領域の外縁部又はその外側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記有機発光ユニット層と同一の材料層が充填されてなる埋め込み部と、前記第1方向に前記絶縁封止層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填されてなる埋め込み部の少なくとも何れか一方を有してなる第4埋め込み部と、
前記封止閉領域の外側において、前記基板面に平行な方向に離隔して、直接又は導電性材料が充填された第5埋め込み部を介して前記透明導電層の上面に接触して形成された2つの給電層と、を有し、
前記第3埋め込み部及び前記第4埋め込み部は、前記第1埋め込み部と連結して前記封止閉領域を横切るように構成され、前記基板面に平行な方向に前記透明導電層を2つに分断し、
前記2つの給電層のうちの一方は、分断された一方の前記透明導電層と接触し、前記2つの給電層のうちの他方は、分断された他方の前記透明導電層と接触していることを特徴とする有機EL発光素子。
【請求項2】
前記封止閉領域の外側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層を貫通して前記金属層から前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記金属層と同一の材料層が充填された第6埋め込み部を有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光素子。
【請求項3】
前記封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記有機発光ユニット層を貫通して前記金属層から前記透明導電層の上面の深さ位置まで前記金属層と同一の材料層が充填された第6埋め込み部と、
前記封止閉領域の内側において、前記第1方向に前記金属層を貫通して前記絶縁封止層から前記有機発光ユニット層の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填された第7埋め込み部とを有し、
前記第6埋め込み部は、前記第1方向に見て、前記第1埋め込み部、前記第3埋め込み部、及び前記第7埋め込み部によって外周を囲まれてなる閉領域の内側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL発光素子。
【請求項4】
前記第4埋め込み部が、前記第1方向に前記有機発光ユニット層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記有機発光ユニット層と同一の材料層が充填されて形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項5】
前記第4埋め込み部が、前記第1方向に前記絶縁封止層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填されて形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項6】
前記第1方向に前記絶縁封止層から前記透明基板の上面の深さ位置まで前記絶縁封止層と同一の材料層が充填された第8埋め込み部を有し、
前記透明導電層、前記有機発光ユニット層、及び前記金属層からなる積層体は、前記第1方向に見て前記透明基板よりも面積が小さく、
前記絶縁封止層は、前記第8埋め込み部を介して前記積層体の外壁に接触しながら前記透明基板の上面に連絡されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項7】
前記2つの給電層は、前記基板面に平行な方向に離隔して前記絶縁封止層の上層に形成され、前記第5埋め込み部を介して前記透明導電層の上面に接触する構成であって、
前記第5埋め込み部が、前記透明基板の外周を構成する向かい合う2辺の上方の一部箇所に形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項8】
前記第1方向に見て、前記第1埋め込み部及び前記第3埋め込み部によって外周を囲まれてなる発光領域と、当該発光領域以外の領域である非発光領域とが対称的な位置関係となるように配置されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項9】
前記第3埋め込み部は、前記封止閉領域の外側にも形成されており、
前記金属層は、分断された一方の前記透明導電層と、前記封止閉領域の内側及び外側に形成された前記第3埋め込み部を介して連絡されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の有機EL発光素子。
【請求項10】
前記基板面に平行な第2方向に、前記第1埋め込み部、前記第2埋め込み部、前記第3埋め込み部、及び前記第4埋め込み部が複数配置されることで、前記第1埋め込み部に外周を囲まれてなる前記封止閉領域が前記第2方向に複数形成されると共に、前記第3埋め込み部及び前記第4埋め込み部によって前記透明導電層が前記第2方向に複数分断され、
前記2つの給電層のうちの一方は、前記第2方向に分断された複数の前記透明導電層のうちの一方の端部に位置する前記透明導電層と直接又は前記第5埋め込み部を介して連絡され、
前記2つの給電層のうちの他方は、前記第2方向に分断された複数の前記透明導電層のうちの他方の端部に位置する前記透明導電層と直接又は前記第5埋め込み部を介して連絡されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の有機EL発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−181931(P2012−181931A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42152(P2011−42152)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】