説明

有機EL発光装置、有機EL照明装置および有機EL発光装置の電流注入方法

【課題】発光輝度のばらつきを抑制する有機EL発光装置、有機EL照明装置および有機EL発光装置の電流注入方法を提供する。
【解決手段】有機EL発光装置130は、管と、第1電極層と、有機物層OLと、第2電極層とを備えている。管は、透光性を有している。第1電極層は、管の内側に管の延びる方向に沿って形成され、透光性を有している。有機物層OLは、第1電極層の内側に管の延びる方向に沿って形成され、電圧が印加されることにより発光する。第2電極層は、有機物層の内側に管の延びる方向に沿って形成されている。第1電極層および第2電極層のいずれか一方が陽極で、他方が陰極である。第1電極層の電気抵抗値と第2電極層の電気抵抗値とは同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL発光装置、有機EL照明装置および有機EL発光装置の電流注入方法に関し、特に、内面に有機EL発光素子を形成した円筒型有機EL発光装置に電流を供給するための有機EL発光装置、有機EL照明装置および有機EL発光装置の電流注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL(Electro Luminescence)素子が形成された円筒型の面発光デバイスが提案されている。たとえば特開2007−73403号公報(特許文献1)によれば、面発光デバイスは、円筒形状の透明基材(管)と、この透明基材に形成された有機EL素子とを備えている。有機EL素子は、管の内側に順番に成膜された透明電極と、有機EL層と、金属電極とを有している。透明電極は、金属薄膜、インジウム、亜鉛、錫のいずれかの酸化物、またはチタンの窒化物が用いられている。金属電極は、アルミニウム、金、銀、銅などが用いられている。
【0003】
また、たとえば特開2003−142252号公報(特許文献2)には、筒状の非透湿性透明基板(管)と、この内周面に形成された有機EL素子とを備えている管状発光装置が開示されている。有機EL素子は、陽電極層、発光機能層および陰電極層からなる。陽電極層は仕事関数の大きい金属から形成され、陰電極層は仕事関数の小さい金属から形成されることが開示されている。
【0004】
この有機EL素子は、ダイオードの特性を有し、透明電極および金属電極に電圧を印加して電流を注入することにより発光するデバイスである。つまり、有機EL素子は、一般的には直流電流を供給することで発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−73403号公報
【特許文献2】特開2003−142252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1および2に開示のデバイスでは、管の長手方向において発光輝度にばらつきが生じるという問題があった。また、この問題に対して上記特許文献1および2では何らの工夫もされていなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、発光輝度のばらつきを抑制する有機EL発光装置、有機EL照明装置および有機EL発光装置の電流注入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の有機EL発光装置は、管と、第1電極層と、有機物層と、第2電極層とを備えている。管は、透光性を有している。第1電極層は、管の内側に管の延びる方向に沿って形成され、透光性を有している。有機物層は、第1電極層の内側に管の延びる方向に沿って形成され、電圧が印加されることにより発光する。第2電極層は、有機物層の内側に管の延びる方向に沿って形成されている。第1電極層および第2電極層のいずれか一方が陽極で、他方が陰極である。第1電極層の電気抵抗値と第2電極層の電気抵抗値とは同じである。
【0009】
本発明の有機EL発光装置によれば、第1および第2電極層の延びる方向に沿う単位長さ当たりの電気抵抗値が同一である。このため、第1電極層および第2電極層のいずれか一方の陽極に電流を供給し、他方の陰極から電流を取り出すと、第1電極層および第2電極層の延びる方向に沿った互いに対向する位置において同一の電圧降下が生じる。つまり、管の長手方向に沿った第1電極層および第2電極層との電位差が同一になる。このため、第1電極層および第2電極層から有機物層に管の長手方向に沿って均一な電流を流すことができる。したがって、発光輝度のばらつきを抑制することができる。
【0010】
なお、上記「第1電極層の電気抵抗値と第2電極層の電気抵抗値とは同じ」とは、第1電極層の電気抵抗値と第2電極層の電気抵抗値とは、数値が完全に同一である場合と、数値が実質的に同一とみなされる場合とを含む。数値が実質的に同一とみなされる場合とは、たとえば第2電極層の電気抵抗値が第1電極層の電気抵抗値の90%以上110%の範囲内である。
【0011】
上記有機EL発光装置において好ましくは、第1電極層の複数箇所と電気的に接続された第1外部電極と、第2電極層の複数箇所と電気的に接続された第2外部電極とをさらに備えている。第1外部電極から第1電極層の複数箇所までのそれぞれの距離が同じである。第2外部電極から第2電極層の複数箇所までのそれぞれの距離が同じである。
【0012】
これにより、第1外部電極と第1電極層との電気的な接続に要する抵抗を均一にすることができる。また第2外部電極と第2電極層との電気的な接続に要する抵抗を均一にすることができる。このため、第1電極層および第2電極層の抵抗のうち、管の延びる方向と交差する方向における抵抗をより均一にすることができる。したがって、周方向における発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0013】
上記有機EL発光装置において好ましくは、第1外部電極は、第1電極層の一方端部で接続され、第2外部電極は、第2電極層の他方端部で接続され、第1電極層の一方端部は、管の内周側または外周側のいずれか一方であり、第2電極層の他方端部は、第1電極層の一方端部と管の周方向において反対側である。
【0014】
これにより、第1電極層および第2電極層から有機物層により均一な電流を流すことができる。このため、発光輝度のばらつきをより抑制した有機EL発光装置を実現することができる。
【0015】
上記有機EL発光装置において好ましくは、有機物層と陰極との間に位置し、かつ管の延びる方向に沿って配置された引き出し電極をさらに備えている。
【0016】
これにより、引き出し電極に電圧を印加することで、陰極から均一な電子の放出を行うことができる。このため、陰極から引き出し電極を介して有機物層までを電子が直進することにより、有機物層に均一な電流を注入することができる。したがって、発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0017】
上記有機EL発光装置において好ましくは、第1電極層と有機物層と第2電極層とを含む発光素子は、管内に複数形成され、発光素子が相互に直列接続されている。
【0018】
これにより、第1および第2電極層の長さを短くできるので、管の延びる方向の第1および第2電極層の電気抵抗を小さくできる。したがって、発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0019】
また、発光素子を相互に直列接続することで、電圧は上がるが、発光素子に流れる電流を下げることができる。消費電力は電圧と電流との積なので発光素子を相互に直列接続しても消費電力は変わらないが、電流を下げることで、第1および第2電極層に電流が流れるときに発生するジュール熱を抑制することができる。すなわち、大面積の発光素子を分割して直列接続することで、低電圧大電流発光を高電圧低電流発光に変換することができる。発光出力は変化しないが低電流化することで、第1および第2電極層でのジュール熱の発生を抑制できる。
【0020】
さらに、発光素子を分割して直列接続することで、一つの発光素子が短絡(ショート)しても、他の発光素子に電流は供給されるので、発光を持続することができる。
【0021】
上記有機EL発光装置において好ましくは、第2電極層の内側に管の延びる方向に沿って形成され、第1電極層と同じ電極の第3電極層と、第3電極層の内側に管の延びる方向に沿って形成され、電圧が印加されることにより発光する第2有機物層と、第2有機物層の内側に管の延びる方向に沿って形成され、第2電極層と同じ電極の第4電極層とをさらに備えている。第3電極層の電気抵抗値と第4電極層の電気抵抗値とは同じである。有機物層と第2有機物層との極性が同一方向である。第1電極層と第4電極層とが電気的に接続されている。
【0022】
第1電極層、有機物層および第2電極層を含む第1発光素子(有機EL素子)はダイオードの特性をもっているので一方向にしか電流が流れない。第3電極層、第2有機物層および第4電極層を含む第2発光素子を第1発光素子と2段直列に重ねて、第1電極層と第2電極層との間、および、第3電極層と第4電極層との間に交流電圧を印加することで、第1および第2発光素子を交互に発光させることができる。交流電圧を印加すると、第1電極層と第2電極層との間、および、第3電極層と第4電極層との間を流れる電流の方向が変化するので、発光輝度のばらつきを抑制することができる。
【0023】
また、一般的な有機EL発光装置は直流駆動なので、交流電圧を印加する場合には、交流を直流に変換する必要がある。交流駆動は正電圧と負電圧が切り替わるタイミングで多少のちらつきが存在する。しかし、上記第1および第2発光素子により、安定器やAC−DCコンバータが必要なく、これらに起因する電力損失を低減できる。
【0024】
なお、「第1電極層と同じ電極の第3電極層」とは、第1電極層が陽極の場合には第3電極層も陽極であり、第1電極層が陰極の場合には第3電極層も陰極である。また、「第2電極層と同じ電極の第4電極層」とは、第2電極層が陽極の場合には第4電極層も陽極であり、第2電極層が陰極の場合には第4電極層も陰極である。
【0025】
上記有機EL発光装置において好ましくは、管の内側で、かつ第1電極層の外側に管の延びる方向に沿って形成され、曲げることが可能な透光性を有する基板をさらに備えている。
【0026】
このように、フレキシブルな基板が管の内面に形成された場合においても、上記事項はすべて適用できる。
【0027】
上記有機EL発光装置において好ましくは、基板と第1電極層と有機物層と第2電極層とを有する積層体を複数含み、複数の積層体は筒状に重なるように巻かれ、第1電極層同士、および第2電極層同士を接続する帯状の補助電極をさらに備えている。
【0028】
このように、透光性を有するフレキシブルな基板を管の内面に沿って多重に巻きつけて装着する場合においても、帯状の補助電極を基板上に設置した状態で巻きつければ、補助電極を基板の配線と接触させることができるので、上記事項はすべて適用できる。基板を多重に巻きつけることにより、発光面積を増やすことが可能となる。
【0029】
上記有機EL発光装置において好ましくは、第1電極層に接続され、かつ第1電極層の電気抵抗を減らすための直線または金網状の金属電極をさらに備えている。
【0030】
第1電極層は透光性を有しているので、通常の金属に比べて電気抵抗が大きい。第1電極層の外側または内側に直線または金網状の金属電極を設けることにより、電気抵抗を低減することができる。
【0031】
本発明の有機EL照明装置は、上記いずれかの複数の有機EL発光装置と、複数の有機EL発光装置を接続する連結器とを備えている。
【0032】
本発明の有機EL照明装置によれば、発光輝度のばらつきを抑制した有機EL発光装置を備えている。このため、発光輝度のばらつきを抑制した有機EL照明装置を実現することができる。
【0033】
本発明の有機EL発光装置の電流注入方法は、上記いずれかに記載の有機EL発光装置
に電流を注入する方法であって、以下の工程を備えている。まず、陽極に電流が供給される。そして、管の延びる方向に沿って電流を流して、陰極から電流が取り出される。
【0034】
本発明の有機EL発光装置の電流注入方法によれば、第1電極層の電気抵抗値と第2電極層の電気抵抗値とは同じであるので、陽極の電気抵抗値と陰極の電気抵抗値とは同じである。そして、有機物層は絶縁体に近く、電気抵抗値は陽極や陰極の電気抵抗値よりもかなり大きいので、筒型コンデンサに近い。このため、管の長手方向に沿って均一な電流を流すことができる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明によれば、管の延びる方向において有機物層に均一な電流を供給することができるので、発光輝度のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1における発光装置の構成を概略的に示す外観図であり、(A)が上面図であり、(B)が側面図である。
【図2】図1(B)におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線から見たときの模式図である。
【図4】図2におけるIV−IV線から見たときの模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1における有機EL発光装置の等価回路図である。
【図6】本発明の実施の形態2における有機EL発光装置の概略的な断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2における有機EL発光装置の等価回路図である。
【図8】本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の構成を概略的に示す側面図である。
【図9】本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の構成を概略的に示す上面図である。
【図10】本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の等価回路図である。
【図11】本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の等価回路図である。
【図12】本発明の実施の形態3の変形例1における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。
【図13】本発明の実施の形態3の変形例2における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。
【図14】本発明の実施の形態3の変形例3における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。
【図15】本発明の実施の形態3の変形例4における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。
【図16】本発明の実施の形態3の変形例5における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。
【図17】本発明の実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の断面図である。
【図18】本発明の実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の等価回路図である。
【図19】(A)および(B)は、本発明の実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の概念図である。
【図20】本発明の実施の形態1の変形例2における有機EL発光装置の断面図である。
【図21】本発明の実施の形態1の変形例2における有機EL発光装置の等価回路図である。
【図22】本発明の実施の形態1の変形例2における有機EL発光装置の等価回路図である。
【図23】本発明の実施の形態1の変形例3の有機EL発光装置の構成の断面図である。
【図24】本発明の実施の形態1の変形例3の基板を示す模式図である。
【図25】本発明の実施の形態1の変形例3の基板を示す模式図である。
【図26】本発明の実施の形態1の変形例3の有機EL発光装置の製造過程を示す模式図である。
【図27】本発明の実施の形態1の変形例4の有機EL発光装置の構成の断面図である。
【図28】本発明の実施の形態1の変形例4のフレキシブル基板および補助電極を示す模式図である。
【図29】本発明の実施の形態1の変形例4のフレキシブル基板および補助電極を示す模式図である。
【図30】本発明の実施の形態1の変形例5の金属電極を示す模式図である。
【図31】本発明の実施の形態1の変形例5の金属電極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
はじめに本実施の形態の発光装置の構成について説明する。図1および図2のそれぞれは、本発明の実施の形態1における発光装置の構成を概略的に示す外観図および断面図である。
【0038】
図1および図2を参照して、本実施の形態の有機EL発光装置130は、円筒管1(基材)と、有機EL素子12と、封止部110と、電極112a、112bと、配線113a、113bと、乾燥剤127a、127bとを備えている。
【0039】
円筒管1は、長さ方向(図中LD方向)に延びる空洞部を有する管である。すなわち円筒管1は管形状を有している。また円筒管1は透光性を有している。具体的には円筒管1は、たとえばソーダ石灰ガラスにより形成された、直径50mm、長さ540mm、厚さ1mmの管である。
【0040】
有機EL素子12は、円筒管1の内面上に順に、保護層12aと、透明陽極層12b(第1電極層)と、有機物層OLと、陰極層12g(第2電極層)とを含んでいる。有機物層OLは、第1〜第4の層12c〜12fを有している。保護層12aと、透明陽極層12bと、有機物層OLと、陰極層12gとは、円筒管1の中心(図中LD方向)から同心円状に配置されている。
【0041】
保護層12aは、アルカリ金属イオンの移動を防止する機能を有している。よって円筒管1の材質にソーダ石灰ガラスなどのアルカリ金属イオンを含む材質が用いられても、円筒管1から透明陽極層12bへアルカリ金属イオンが移動することが防止される。保護層12aは、たとえば酸化シリコン(SiO2)により形成された厚さ10nmの層である

【0042】
透明陽極層12bは、透光性を有しており、かつ有機EL素子12の陽極としての機能を有している。透明陽極層12bは、導電性の酸化物層であり、たとえば酸化インジウム錫(ITO(Tin doped Indium Oxide))により形成された厚さ5μmの層である。
【0043】
有機物層OLの第1の層12cは、たとえば下記の式(1)に示す有機材料(NPD)から形成された厚さ40nmの層である。
【0044】
【化1】

【0045】
第2の層12dは、たとえば、下記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)を主成分とし、かつ下記の式(3)に示すペリレン(C2012)により1.5重量%のドーピングがなされた、厚さ7nmの層である。
【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
第3の層12eは、たとえば、上記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)を主成分とし、かつ下記の式(4)に示す有機材料(DCM1)により0.25重量%のドーピングがなされた、厚さ23nmの層である。
【0049】
【化4】

【0050】
第4の層12fは、たとえば、上記の式(2)に示す有機材料(Znbox2)から形成された、厚さ30nmの層である。
【0051】
なお上記の第1の層12cはホール輸送層としての機能を有し、第4の層12fは電子輸送層としての機能を有している。また第2の層12dおよび第3の層12eのそれぞれは、ドーパント色素としてペリレンおよびDCM1を含有することにより、発光層としての機能を有している。第2の層12dおよび第3の層12eのそれぞれにおいて青色およびオレンジ色の発光が生じ、これら2色の光が混合することで白色の光が得られる。
【0052】
陰極層12gは、有機EL素子12の陰極としての機能を有している。陰極層12gは、金属層であり、たとえばアルミニウムにより形成された厚さ50nmの層である。
【0053】
本実施の形態では、陰極層12gは円筒管1の内周側に配置され、透明陽極層12bは円筒管1の外周側に配置されている。また光を円筒管1の外部へ効率的に放出するために、陰極層12gは光を反射させる性質を有し、透明陽極層12bは光を透過させる性質を有している。このため、透明陽極層12bの材料と陰極層12gの材料とは異なっている。その結果、透明陽極層12bの材料と陰極層12gの材料とは、材料で決まる固有の電気抵抗値が異なっている。そこで、本実施の形態の陰極層12gにおいて、円筒管1の延びる方向に沿う単位長さ当たりの電気抵抗値が透明陽極層12bと同一になるように調節されている。言い換えると、電流経路に沿って透明陽極層12bおよび陰極層12gを切ったときの面の抵抗値が同一である。たとえば透明陽極層12bがITOで構成され、陰極層12gが金属で構成される場合には、陰極層12gの厚みは透明陽極層12bの厚みよりも薄くなる。
【0054】
なお、透明陽極層12bの材料と陰極層12gの材料とは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
なお、有機物層OL上の領域のうち円筒管1の長さ方向の両端側の領域は、陰極層12gが形成されていない。この陰極層12gが形成されていない領域は、ショート防止用スペースSPである。このショート防止用スペースSPが設けられていることにより、陰極層12gと透明陽極層12bとが有機EL素子12の端部において短絡することが防止されている。
【0056】
封止部110は、封止部品110a、110b、およびOリング124a、124bを有している。封止部品110aおよび110bのそれぞれには、有機EL発光装置130の外部に向かって突出した電極112aおよび112bが配置されている。また封止部品110a、110bのそれぞれには、乾燥剤127a、127bが配置されている。封止部品110aおよび110bのそれぞれには、円筒管1の両端に、Oリング124a、124bにより着脱可能に固定されている。封止部110の材質は、たとえばガラスまたはアルミニウムである。各Oリング124a、124bは、エラストマーからなり、エラストマーの復元力により封止部品110aおよび110bのいずれかと、円筒管1とに密着されている。これにより封止部110は、不活性ガスIGが充填された円筒管1の内部を封止している。よって、有機EL素子12が形成された領域、すなわち有機物層OLと陰極層12gとを含む領域が、有機EL発光装置130の外部から気密に封止されている。なおOリング124a、124bによる封止をより確実にするため、封止部110にOリング124a、124bを締め付けるためのネジが取り付けられてもよい。
【0057】
図3は、図2におけるIII−III線から見たときの模式図であり、透明陽極層12bと配線113aとの接続を概略的に示す。図3を参照して、透明陽極層12bの複数箇所と電極112a(第1外部電極)とは、電気的に接続されている。電極112aから透明陽極層12bの複数箇所までのそれぞれの距離が同じである。
【0058】
図4は、図2におけるIV−IV線から見たときの模式図であり、陰極層12gと配線113bとの接続を概略的に示す図である。図4を参照して、陰極層12gの複数箇所と電極112b(第2外部電極)とは、電気的に接続されている。電極112b(第2外部電極)から陰極層12gの複数箇所までのそれぞれの距離が同じである。
【0059】
なお、上記「距離が同じ」とは、電極112aから透明陽極層12bの複数箇所までのそれぞれの電気抵抗値にばらつきがない程度であり、電極112bから陰極層12gの複数箇所までのそれぞれの電気抵抗値にばらつきがない程度である。
【0060】
また、電極112aは、透明陽極層12bの一方端部(円筒管1の外周側)で接続され、電極112bは、陰極層12gの他方端部(円筒管1の内周側)で接続されている。
【0061】
本実施の形態では、配線113aの一端は透明陽極層12bに放射状に電気的に接続されており、配線113aの他端は電極112aに電気的に接続されている。また配線113bの一端は陰極層12gに放射状に電気的に接続されており、配線113bの他端は電極112bに電気的に接続されている。また電極112a、112bの各々は封止部品110a、110bの中心に貫通して形成されている。つまり、円筒管1の円周方向に対して配線113a、113bの長さをそれぞれ同じにすることができるので、配線113a、113bによる電気抵抗値の差を低減できる。この構成により、円筒管1の周方向において配線113a、113bの抵抗の差を低減することができる。このため、円筒管1の封止領域の外部に露出した電極112aと電極112bとの間に電圧を印加することで、透明陽極層12bと陰極層12gとの間の有機物層OLに均一な電位差が生じ、この電位差により有機物層OLに均一な電流が供給されて均一な発光が生じる。
【0062】
次に、本実施の形態の有機EL発光装置130を図5に示す等価回路図を用いて説明する。図5において、透明陽極層12bと陰極層12gとは抵抗で表し、有機EL素子12はダイオードと抵抗とで表している。その他の部分は薄膜ではないので電気抵抗が無視できるものとして実線で表している。
【0063】
図5に示すように、透明陽極層12bの材料と陰極層12gの材料とは、それぞれの機能に応じて異なっているので、透明陽極層12bの電気抵抗率(単位体積当たりの電気抵抗値)と陰極層12gの電気抵抗率(単位体積当たりの電気抵抗値)とはそれぞれ異なっている。しかし、透明陽極層12bおよび陰極層12gの少なくとも一方の膜厚を最適化することで、透明陽極層12bおよび陰極層12gの円筒管1の延びる方向に沿って対向する位置の単位長さ当たりの電気抵抗を同じにすることができる。このため、電極112aから透明陽極層12bに電流を供給し、他方の電極112bから陰極層12gに電流を取り出すと、円筒管1の長さ方向において円筒管1の長さに比例した同一の電圧降下がそれぞれ生じる。たとえば、10Vの直流電圧を印加した場合、透明陽極層12bの電気抵抗によって透明陽極層12bの中央では9Vになり、末端では8Vに電圧が降下する。陰極層12gの出口側の電圧を0Vとすると、陰極層12gの中央では1Vになり、末端では2Vの電圧が生じている。つまり、有機物層OLに印加される電位差は全ての位置で8Vと同一になる。このように電流を注入することで、円筒管1の長手方向において発光層(有機物層OL)に均一に電流を流すことができる。
【0064】
透明陽極層12bおよび陰極層12gにそれぞれ電圧を印加すると、電子と正孔とがそれぞれ注入される。注入された電子と正孔とが、電子輸送層としての第4の層12fおよびホール輸送層としての第1の層12cをそれぞれ通過し、発光層としての第2の層12dおよび第3の層12eで結合する。上述したように、本実施の形態では、有機物層OLに印加される電圧差は全ての位置で同一であるので、有機物層OLの膜厚が均一であれば、有機物層OLに流れる電流は円筒管1の延びる方向の全ての位置で同じになる。したがって、円筒管1の延びる方向において発光輝度のばらつきを抑制することができる。
【0065】
また、発光輝度のばらつきを抑制することができるので、複数の電極を分散して配置しなくても、大面積の有機物層OLを用いることができる。
【0066】
さらに、発光輝度の低い領域の輝度を向上する必要がないので、この発光輝度の低い領域の輝度を向上するために電流量を増加する必要がない。このため、透明陽極層12bおよび陰極層12gの電気抵抗によって発生するジュール熱を低減することができる。したがって、有機EL発光装置130の発光効率を向上でき、かつ寿命を向上することができる。
【0067】
なお本実施の形態においては有機物層OL、透明陽極層12bおよび陰極層12gの膜厚を均一にしているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、透明陽極層12bの膜厚を変化させたとしても、陰極層12gの膜厚を最適化することで、有機物層OLに印加される電位差が全ての場所で同じになっていればよい。
【0068】
また本実施の形態においては透明陽極層12bは、陰極層12gの外周側に配置しているが、本発明はこれに限定されるものではない。透明陽極層12bが陰極層12gの内周側に配置されていてもよい。この場合、透明陽極層12bにおいて電極112aと接続される一方端部が円筒管1の内周側で、陰極層12gにおいて電極112bと接続される他方端部が円筒管1の外周側であってもよい。
【0069】
また本実施の形態においては管(基材)として円筒管としているが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば管の断面形状が矩形であってもよい。
【0070】
(変形例1)
図17は、実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の断面図である。図17を参照して、実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置は、ショート防止用スペースSPを間に入れて3個の有機EL素子12(発光素子)を有している。一の有機EL素子12の陰極層12gは、隣接する他の有機EL素子12の透明陽極層12bと、接続配線114aで接続されている。つまり、複数の有機EL素子12は、相互に直列接続されている。なお、接続配線114aの代わりに陰極層12gを延長して、隣接する有機EL素子12の透明陽極層12bと接続してもよい。
【0071】
図18は、実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の等価回路図である。図18において、透明陽極層12bは抵抗で表し、有機EL素子12はダイオードと抵抗とで表している。その他の部分は薄膜ではないので電気抵抗が無視できるものとして実線で表している。
【0072】
図18を参照して、電極112aから透明陽極層12bに電流を供給し、他方の電極112bから陰極層12gに電流を取り出すと、円筒管1の長さ方向において円筒管1の長さに比例した同一の電圧降下が各有機EL素子12においてそれぞれ生じる。このように電流を注入することで、円筒管1の長手方向において発光層(有機物層OL)に均一に電流を流すことができる。
【0073】
図19は、実施の形態1の変形例1における有機EL発光装置の概念図である。図19(A)を参照して、円筒管1の延びる方向の透明陽極層12bの電気抵抗が0.5Ωで、5Vの電圧で、かつ5Aの電流で発光する有機EL素子12は、透明陽極層12bからおよそ12.5W発熱する。図19(B)を参照して、この有機EL素子12を5分割して直列に接続すると、1個あたりの円筒管1の延びる方向の透明陽極層12bの電気抵抗は0.1Ωになる。分割した有機EL素子12の面積は1/5になるので、発光に必要な電流も1/5の1Aになるが、円筒管1の内側の方向、有機物層OLから陰極層12gへの電気抵抗は5倍になる。ゆえに、分割した有機EL素子12の1つは5Vの電圧で、かつ1Aの電流で発光し、直列に5個接続した場合、25Vの電圧で、かつ1Aの電流で発光する。このとき、個々の透明陽極層12bはおよそ0.1W発熱し、5個の合計でも0.5Wの発熱に抑制できる。すなわち、有機EL素子12を5分割することにより発熱量を1/25に減らすことができる。
【0074】
(変形例2)
図20は、実施の形態1の変形例2における有機EL発光装置の断面図である。図20を参照して、実施の形態1の変形例2における有機EL素子12は、円筒管1の外周から内周に向けて、透明陽極層12b(第1電極層)、有機物層OL(有機物層)、陰極層12g(第2電極層)、透明陽極層12b(第3電極層)、有機物層OL(第2有機物層)、および陰極層12g(第4電極層)の順番に形成されている。透明陽極層12b(第1電極層)、有機物層OL(有機物層)および陰極層12g(第2電極層)で第1発光素子(第1有機EL素子)を形成し、透明陽極層12b(第3電極層)、有機物層OL(第2有機物層)および陰極層12g(第4電極層)で第2発光素子(第2有機EL素子)を形成している。つまり、有機EL素子12は、第1発光素子と第2発光素子とを含んでいる。透明陽極層12b(第1電極層)の電気抵抗値と陰極層12g(第2電極層)の電気抵抗値とは同じであり、かつ、透明陽極層12b(第3電極層)の電気抵抗値と陰極層12g(第4電極層)の電気抵抗値とは同じである。
【0075】
有機物層OLと透明陽極層12bとの間(中間部)の陰極層12gは、透明な材料が使用されている。各有機EL素子12は、配線113a、113bと、接続配線114a、114bとで接続されている。電極112a、112bに交流を印加すると、プラスとマイナスとの極性が交互に入れ替わる。電極112aがプラスで電極112bがマイナスの場合、外側の有機物層OLが順方向電圧となって電流が流れ、発光する。内側の有機物層OLは逆方向電圧となっているので電流が流れない。次に極性が反転し、電極112aがマイナスで電極112bがプラスの場合、内側の有機物層OLが順方向電圧となって電流が流れ、発光する。外側の有機物層OLは逆方向電圧となっているので電流が流れない。
【0076】
図21および図22は、実施の形態1の変形例2における有機EL発光装置の等価回路図である。図21は、電極112aがプラスで電極112bがマイナスの場合の等価回路図であり、図22は、電極112aがマイナスで電極112bがプラスの場合の等価回路図である。図21および図22において、透明陽極層12bは抵抗で表し、有機EL素子12はダイオードと抵抗とで表している。その他の部分は薄膜ではないので電気抵抗が無視できるものとして実線で表している。
【0077】
図21および図22を参照して、電極112a、112bに交流を供給すると、円筒管1の長さ方向において円筒管1の長さに比例した同一の電圧降下がそれぞれ生じる。このように交流の場合であっても、円筒管1の長手方向において発光層(有機物層OL)に均一に電流を流すことができる。
【0078】
(変形例3)
図23は、本発明の実施の形態1の変形例3の有機EL発光装置の構成の断面図である。実施の形態1の変形例3の有機EL発光装置は、円筒管1の内側で、かつ透明陽極層12bの外側に円筒管1の延びる方向に沿って形成され、曲げることが可能な透光性を有する基板をさらに備えている。図24および図25は、実施の形態1の変形例3の基板を示す模式図である。図23および図24を参照して、変形例3の基板は、たとえばフレキシブル基板115を用いている。
【0079】
変形例3では、円筒管1の内面上に順に、フレキシブル基板115と、透明陽極層12bと、有機物層OLと、陰極層12gとが形成されている。変形例3では、円筒管1の内面上にフレキシブル基板115が形成されているので、保護層12aは形成されていない。なお、フレキシブル基板115と円筒管1との間に保護層12aが形成されていてもよい。
【0080】
変形例3の有機EL発光装置を製造する場合には、たとえば以下の方法により行なうことができる。まず、図24を参照して、フレキシブル基板115を準備し、矢印の方向に曲げる。これにより、図25に示すように円筒形状のフレキシブル基板115を形成できる。図25に示すフレキシブル基板115を、円筒管1の内部に図26に示す矢印の方向に沿って挿入する。なお、図26は、実施の形態1の変形例3の有機EL発光装置の製造過程を示す模式図である。その後、有機EL素子12などを形成することで、図23に示す変形例3の有機EL発光装置を製造することができる。
【0081】
ここで、変形例3の有機EL発光装置の製造方法は、上記方法に限定されず、図24に示すフレキシブル基板115の上に有機EL素子12を形成した後、図25に示すように、円筒形状にして、図26に示す円筒管1に挿入してもよい。
【0082】
(変形例4)
図27は、本発明の実施の形態1の変形例4の有機EL発光装置の構成の断面図である。図28および図29は、実施の形態1の変形例4のフレキシブル基板および補助電極を示す模式図である。図27〜図29を参照して、実施の形態1の変形例4の有機EL発光装置は、変形例3のフレキシブル基板115、透明陽極層12b、有機物層OLおよび陰極層12gが複数(図27では2層)積層され、陰極層12gに接触している帯状の補助電極114をさらに備えている。補助電極114は、積層されたフレキシブル基板115の内部のコンタクトをとるために設けられている。
【0083】
変形例4は、円筒管1の内面上に順に、フレキシブル基板115と、透明陽極層12bと、有機物層OLと、陰極層12gと、フレキシブル基板115と、透明陽極層12bと、有機物層OLと、陰極層12gとが形成されている。つまり、フレキシブル基板115と透明陽極層12bと有機物層OLと陰極層12gとを有する積層体を複数含み、複数の積層体は筒状に重なるように巻かれている。有機物層OLとフレキシブル基板115との間に位置している陰極層12gは透光性を有していることが好ましく、酸化インジウム錫などを用いることができる。
【0084】
変形例4では、補助電極114は、配線113a、113bと、複数の陰極層12gとをそれぞれ接続している。補助電極114は、陰極層12gの代わりに透明陽極層12bと接続されていてもよい。
【0085】
変形例4の有機EL発光装置を製造する場合には、たとえば以下の方法により行なうことができる。まず、図28を参照して、フレキシブル基板115と、フレキシブル基板115の長さ方向の両端側の領域に形成された補助電極114と、フレキシブル基板115上に形成された有機EL素子12とを有する積層物を準備する。その後、この積層物を図28に示す矢印の方向に曲げる。これにより、積層物を図29に示すように円筒形状に形成できる。図29に示す円筒形状のフレキシブル基板115などを、円筒管1の内部に図26に示す矢印の方向に沿って挿入することで、図27に示す変形例4の有機EL発光装置を製造することができる。
【0086】
(変形例5)
図30および図31は、本発明の実施の形態1の変形例5の金属電極を示す模式図である。図30および図31に示すように、変形例5の有機EL発光装置は、第1電極層である透明陽極層12bに接続され、かつ透明陽極層12bの電気抵抗を減らすための直線または金網状の金属電極12iをさらに備えている。金属電極12iは、図30に示すように直線、つまりストライプ状であってもよく、図31に示すように金網状、つまりメッシュ状であってもよい。また、図30および図31では、透明陽極層12bの外周に金属電極12iが形成されているが、内周に形成されていてもよい。
【0087】
透明陽極層12bは透光性を有しているので、通常の金属に比べて電気抵抗が大きい。このため、透明陽極層12bの外側または内側に直線または金網状の金属電極12iを設けることにより、電気抵抗を低減することができる。
【0088】
(実施の形態2)
はじめに、図6を参照して、本実施の形態の有機EL発光装置の構成について説明する。図6は本発明の実施の形態2における有機EL発光装置の概略的な断面図である。図6を参照して、本実施の形態の有機EL発光装置130では、実施の形態1における有機物層OLと陰極層12gとの間に位置し、かつ円筒管1の延びる方向に沿って配置された引き出し電極112cをさらに備えている。
【0089】
図6を参照して、電極112bは、円筒管1の延びる方向に沿って延在し、有機物層OLと対向している。この電極112bの円筒管1の内部であって、かつ有機物層OLと対向する領域上に陰極層12gが形成されている。この陰極層12gは、有機物層OLから空間的に離れた位置に設けられている。陰極層12gが形成された領域の電極112bと
、陰極層12gとで陰極12hを構成している。この陰極層12gは、たとえばカーボンナノチューブ、シリコンナノ結晶層などの電子放出源を用いることができる。
【0090】
有機物層OLと陰極12hとの間の空間は、真空VSである。本実施の形態では、円筒管1の内部は、真空VSに保たれている。
【0091】
引き出し電極112cは、陰極層12gと有機物層OLとの間に配置されている。この引き出し電極112cは、陰極層12gから放出された電子を有機物層OLに注入する際に、電界や磁界により制御することにより、整流、発振、変調、検波、増幅などの作用を行なうことができるように構成されている。このような引き出し電極112cとして、たとえばメッシュ状の金属部材を用いることができる。
【0092】
次に、本実施の形態の有機EL発光装置130を図7に示す等価回路図で説明する。図7において、透明陽極層12bは抵抗で表し、有機EL素子12はダイオードと抵抗とで表している。その他の部分は薄膜ではないので電気抵抗が無視できるものとして実線で表している。
【0093】
図7を参照して、引き出し電極112cに電圧を印加すると、陰極12hの表面に形成した陰極層12gから電子eが放出される。放出された電子eは引き出し電極112cの間を通過し、有機物層OLに注入される。このため、有機EL素子12に電流が注入される。
【0094】
なお、引き出し電極112cに高電圧を印加して陰極12hから電子eが放出されるので、電子eの放出は透明陽極層12bの抵抗に影響されない。
【0095】
本実施の形態における有機EL発光装置130によれば、有機物層OLと陰極層12gとの間に位置し、かつ円筒管1の延びる方向に沿って配置された引き出し電極112cをさらに備えている。このため、陰極層12gから引き出し電極112cを介して有機物層OLまでを電子eが直進することにより、有機物層OLに均一な電流を注入することができる。したがって、有機EL発光装置130の発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0096】
また本実施の形態においては、電子eを効率よく有機物層OLに注入することができるので、たとえば電流密度が0.14mA/cm2以上で、発光効率が138cd/A以上の高い電流効率で発光させることができる。
【0097】
さらに、実施の形態1と異なり、本実施の形態では陰極12hと有機物層OLとの間に真空VSの領域が形成されている。このため、有機物層OLに生じる点欠陥によってショートすることを抑制することができる。
【0098】
上記の有機EL発光装置130において好ましくは、陰極層12gにカーボンナノチューブを使用する。カーボンナノチューブは印加電圧が閾値電圧に達すると、セルフエミッション現象によって、自動的な電子放出が全体で生じる。このため、より均一な電子注入が得られるので、発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0099】
また有機EL発光装置130において好ましくは、陰極層12gにシリコンナノ結晶層を使用する。シリコンナノ結晶層は印加電圧が閾値電圧に達すると、弾道電子放出現象によって、自動的な電子放出が全体で生じる。このため、より均一な電子注入が得られるので、発光輝度のばらつきをより抑制することができる。
【0100】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0101】
(実施の形態3)
はじめに本実施の形態の有機EL照明装置の構成について説明する。図8は、本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の構成を概略的に示す側面図であり、図9は上面図である。本実施の形態の有機EL照明装置は、複数の有機EL発光装置130と、この有機EL発光装置130を接続する連結器131とを備えている。
【0102】
図8および図9を参照して、本実施の形態の有機EL照明装置は、4本の円筒型有機EL発光装置130の両端にある電極112a、112b(図2および図6参照)を連結器131で固定している。両端に配置された連結器131は反射鏡132で結合されていて、個々の有機EL発光装置130は容易に取り外し可能な構造を有している。
【0103】
なお電極112a、112bにはプラスおよびマイナスの極性を有しているので、電極112a、112bを異なった形状にして、それぞれを連結器131と結合させている。
【0104】
図10および図11は、本発明の実施の形態3における有機EL照明装置の等価回路図である。図10および図11を参照して、個々の有機EL発光装置130はダイオードと抵抗で表している。その他の部分は金属配線なので電気抵抗が無視できるものとして実線で表している。
【0105】
有機EL照明装置は、4本の有機EL発光装置130は連結器131の内部で、図10に示すように直列接続、または図11に示すように並列接続されている。
【0106】
(変形例1)
図12は実施の形態3の変形例1における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。図12に示すように、平面形状が四角形になるように、4本の有機EL発光装置130を4個の連結器131を用いて接続している。
【0107】
(変形例2)
図13は、実施の形態3の変形例2における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。図13に示すように、平面形状が六角形になるように、6本の有機EL発光装置130を6個の連結器131を用いて接続している。
【0108】
(変形例3)
図14は、実施の形態3の変形例3における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。図14に示すように、平面形状が八角形になるように、8本の有機EL発光装置130を8個の連結器131を用いて接続している。
【0109】
(変形例4)
図15は、実施の形態3の変形例4における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。図15に示すように、直線をなすように、3本の有機EL発光装置130を2個の連結器131を用いて接続している。
【0110】
(変形例5)
図16は、実施の形態3の変形例5における有機EL照明装置の構成を概略的に示す外観図である。図16に示すように、本変形例における連結器131は、6本の有機EL発光装置130を連結している。このため、この連結器131は、6本の有機EL発光装置130を放射状に接続している。
【0111】
本実施の形態およびその変形例の有機EL照明装置によれば、複数の有機EL発光装置130と、この複数の有機EL発光装置130を接続する連結器131を備えている。連結器131によって、複数の有機EL発光装置130を直列または並列に接続して1組の有機EL照明装置としている。このため、任意の形状の有機EL照明装置を実現することができる。
【0112】
また、上記有機EL照明装置において好ましくは、連結器131は、有機EL発光装置130と着脱可能である。このため、複数の有機EL発光装置130の一部を交換するなど必要に応じて有機EL発光装置130を取り外すことができる。したがって、利便性を向上することができる。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、発光輝度のばらつきを抑制することができる有機EL発光装置を実現できるので、大面積で均一に発光することが要求される有機EL発光装置、特に有機EL照明装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0115】
1 円筒管、12 有機EL素子、12a 保護層、12b 透明陽極層、12c 第1の層、12d 第2の層、12e 第3の層、12f 第4の層、12g 陰極層、12h 陰極、12i 金属電極、110 封止部、110a,110b 封止部品、112a,112b 電極、112c 引き出し電極、113a,113b 配線、114 補助電極、114a,114b 接続配線、115 フレキシブル基板、124a,124b Oリング、127a,127b 乾燥剤、130 有機EL発光装置、131 連結器、132 反射鏡、OL 有機物層、SP ショート防止用スペース、IG 不活性ガス、VS 真空、e 電子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する管と、
前記管の内側に前記管の延びる方向に沿って形成され、透光性を有する第1電極層と、
前記第1電極層の内側に前記管の延びる方向に沿って形成され、電圧が印加されることにより発光する有機物層と、
前記有機物層の内側に前記管の延びる方向に沿って形成された第2電極層とを備え、
前記第1電極層および前記第2電極層のいずれか一方が陽極で、他方が陰極であり、
前記第1電極層の電気抵抗値と前記第2電極層の電気抵抗値とは同じである、有機EL発光装置。
【請求項2】
前記第1電極層の複数箇所と電気的に接続された第1外部電極と、
前記第2電極層の複数箇所と電気的に接続された第2外部電極とをさらに備え、
前記第1外部電極から前記第1電極層の前記複数箇所までのそれぞれの距離が同じであり、
前記第2外部電極から前記第2電極層の前記複数箇所までのそれぞれの距離が同じである、請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
前記第1外部電極は、前記第1電極層の一方端部で接続され、
前記第2外部電極は、前記第2電極層の他方端部で接続され、
前記第1電極層の前記一方端部は、前記管の内周側または外周側のいずれか一方であり、前記第2電極層の他方端部は、前記第1電極層の前記一方端部と前記管の周方向において反対側である、請求項2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
前記有機物層と前記陰極との間に位置し、かつ前記管の延びる方向に沿って配置された引き出し電極をさらに備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項5】
前記第1電極層と前記有機物層と前記第2電極層とを含む発光素子は、前記管内に複数形成され、
前記発光素子が相互に直列接続されている、請求項1〜4のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項6】
前記第2電極層の内側に前記管の延びる方向に沿って形成され、前記第1電極層と同じ電極の第3電極層と、
前記第3電極層の内側に前記管の延びる方向に沿って形成され、電圧が印加されることにより発光する第2有機物層と、
前記第2有機物層の内側に前記管の延びる方向に沿って形成され、前記第2電極層と同じ電極の第4電極層とをさらに備え、
前記第3電極層の電気抵抗値と前記第4電極層の電気抵抗値とは同じであり、
前記有機物層と前記第2有機物層との極性が同一方向であり、
前記第1電極層と前記第4電極層とが電気的に接続されている、請求項1〜5のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項7】
前記管の内側で、かつ前記第1電極層の外側に前記管の延びる方向に沿って形成され、曲げることが可能な透光性を有する基板をさらに備えた、請求項1〜6のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項8】
前記基板と前記第1電極層と前記有機物層と前記第2電極層とを有する積層体を複数含み、複数の前記積層体は筒状に重なるように巻かれ、
前記第1電極層同士、および前記第2電極層同士を接続する帯状の補助電極をさらに備えた、請求項7に記載の有機EL発光装置。
【請求項9】
前記第1電極層に接続され、かつ前記第1電極層の電気抵抗を減らすための直線または金網状の金属電極をさらに備えた、請求項1〜8のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の複数の有機EL発光装置と、
前記複数の有機EL発光装置を接続する連結器とを備えた、有機EL照明装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の有機EL発光装置に電流を注入する方法であって、
前記陽極に電流を供給する工程と、
前記管の延びる方向に沿って電流を流して、前記陰極から電流を取り出す工程とを備えた、有機EL発光装置の電流注入方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2009−289742(P2009−289742A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90083(P2009−90083)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(508016664)フジテック・インターナショナル株式会社 (7)
【出願人】(599048661)有限会社マイクロシステム (9)
【Fターム(参考)】