有機EL発光装置
【課題】高精細画素においても高輝度でかつ光の混色が生じない有機EL発光装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子21の光取り出し側に、色変換部材(カラーフィルタ24)と、低屈折率層25と、マイクロレンズ11と、をこの順に設け、低屈折率層25の屈折率が、前記色変換部材及びマイクロレンズ11の屈折率よりも小さいことを特徴とする、有機EL発光装置1。
【解決手段】有機EL素子21の光取り出し側に、色変換部材(カラーフィルタ24)と、低屈折率層25と、マイクロレンズ11と、をこの順に設け、低屈折率層25の屈折率が、前記色変換部材及びマイクロレンズ11の屈折率よりも小さいことを特徴とする、有機EL発光装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光装置は、薄膜状であって自発光であることを特徴とした有機EL素子を有する発光装置であり、新方式のフラットパネルディスプレイとして様々な応用がなされている。ここで有機EL発光装置の構成部材である有機EL素子は、陰極から電子を、陽極からホール(正孔)を、それぞれ有機化合物層に注入し、有機化合物層中の発光層にて励起子を生成させ、これら励起子が基底状態に戻る際に光が放出される原理を利用している。ここで有機化合物層に含まれる発光層は、蛍光性有機化合物若しくは燐光性有機化合物、量子ドット等の発光性材料からなる薄膜状の層である。
【0003】
カラー表示をする有機EL発光装置は、各画素に赤色、緑色、青色のいずれかを発光する有機EL素子を形成し、各画素の発光輝度を制御して所望の色や画像を表示させるのが一般的である。この有機EL素子の作製方法としては、マスク成膜による真空蒸着法や、有機EL材料を溶媒中に溶かして得たインクを滴下して薄膜を形成するインクジェット法が知られている。
【0004】
しかしこれらの方法では、画素ピッチが小さい有機EL発光装置を製造するのは困難である。困難である理由としては、マスク成膜による真空蒸着法の場合では、高精細マスクの作製精度や成膜時のアライメント誤差の影響を受けやすくなるからである。またインクジェット法による成膜の場合は、ごく小さな液滴を所定の領域に吐出し着滴させるための制御が難しいからである。
【0005】
これに対して、最近では、白色発光する有機EL材料を有する白色有機EL素子及びカラーフィルタあるいは色変換フィルタを使用してカラー表示をする有機EL発光装置が提案されている。この有機EL発光装置では、各画素に設けられる有機EL素子を画素毎に区分・区画することなく一括に形成できるという特徴を有する。このため、微小エリアを対象として性質が異なる複数種類の薄膜を選択的に成膜する必要がなくなる。またこの有機EL発光装置において画素ピッチを支配するのは、カラーフィルタあるいは色変換フィルタ作製時の精度(フォトリソグラフィー精度)となる。このためカラーフィルタ、色変換フィルタといった色変換部材の大きさ(広さ)を小さくすればその分だけ画素ピッチをより小さくすることが可能である。
【0006】
ただし画素ピッチが小さくなると、その分だけ隣接する画素への特定画素の発光の影響が大きくなる。具体的には、特定画素(に含まれる有機EL素子)が発光すると当該特定画素に隣接する画素において偽色や漏れ光が発生しやすくなる。ここで偽色や漏れ光が発生すると、色純度やコントラストの低下につながり、画質の劣化を招くことがある。
【0007】
ここで上述した課題の解決に向けて様々な提案がなされている。特許文献1では、パネルの最表面にあるガラスと空気との界面で生じる光の全反射の特性を利用して、隣接する画素領域に侵入する光をパネルの外に出さないように設計された有機EL表示装置が提案されている。
【0008】
また白色有機EL素子と色変換部材(カラーフィルタ、色変換フィルタ)とを組み合わせる方式では、白色有機EL素子から出力された白色光のうち一部の波長領域の光のみを取り出すための構成を必然的に設けることになる。ただしこの構成を設けると、赤色、緑色、青色等のカラー発光を装置の外部へ出力する際に必然的に発光効率が低くなる。この発光効率の低下による輝度の不足を補うために、発光素子上にマイクロレンズを形成することがよく知られている。ここで発光素子上にマイクロレンズを形成する際には、隣接画素間とのクロストークを防ぐために、特許文献2にて提案されているように、マイクロレンズの下層に低屈折率層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−34591公報
【特許文献2】特開2009−51200公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1及び2にて提案された構成では、隣接する画素での発光による影響を抑えるには不十分である。まず特許文献1にて提案された構成では、あくまでパネルの最表層であるガラス面から空気界面へ光が出射する時の全反射特性を利用して、隣接画素から出力される光を抑えることで混色を防止している。そのためガラス基板の内側にマイクロレンズを形成した場合、マイクロレンズ内に侵入してくる隣接する画素での発光の影響を低減させることはできない。このため、結果として混色した光がパネルの外へ出射してしまうことになる。
【0011】
一方、特許文献2にて提案された構成では、発光素子とマイクロレンズとの間に低屈折率層を設けているため、マイクロレンズに侵入する隣接する画素から出力された光を、低屈折率層の全反射特性を用いることで低減させることができる。しかし特許文献2にて提案された構成は、あくまで単色であり、フルカラー表示装置に適用するための手段までは開示されていない。また特許文献2にて提案された構成は、低屈折率層で全反射した光が迷光となり、場合によっては迷光が再出射することがありこれにより画質の劣化を招く可能性が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高精細画素においても高輝度でかつ光の混色が生じない有機EL発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有機EL発光装置は、第一の態様として、有機EL発光素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記低屈折率層の屈折率が、前記色変換部材及び前記マイクロレンズの屈折率よりも小さいことを特徴とする態様がある。
【0014】
また本発明の有機発光装置は、第二の態様として、有機EL発光素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記色変換部材の屈折率が前記マイクロレンズの屈折率よりも大きいことを特徴とする態様がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高精細画素においても高輝度でかつ光の混色が生じない有機EL発光装置を提供することができる。
【0016】
即ち、本発明の有機EL発光装置においては、特定の画素(発光画素)から出力された光がこの特定の画素に隣接する画素のマイクロレンズに入射しにくい入射角が大きい光を全反射させることができる。ここで全反射した光は迷光となるが、一旦色変換部材(カラーフィルタ)を通過して着色した光は、異なる色の色変換部材を透過する場合は消光し、同色の色変換部材を透過する場合は斜め導波する距離長から効果的に減衰する。結果として迷光の再出射量を大幅に抑えることができる。
【0017】
以上により本発明の有機EL発光装置は、従来の有機EL発光装置に比べ高精細、高輝度であると共に、隣接画素とのクロストークを低減させた有機EL発光装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有機EL発光装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。
【図2】図1の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。
【図3】低屈折率層を配置しない場合における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図4】図2の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図5】本発明の有機EL発光装置における第二の実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明の有機EL発光装置における第三の実施形態を示す平面模式図である。
【図7】図6の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。
【図8】本発明の有機EL発光装置における第四の実施形態を示す断面模式図である。
【図9】図8の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図10】本発明の有機EL発光装置における第五の実施形態を示す断面模式図である。
【図11】本発明の有機EL発光装置における第六の実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機EL発光装置は、以下に説明する2つの態様に大別される。
【0020】
第一の態様は、有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設ける態様がある。ここで第一の態様においては、低屈折率層の屈折率は、色変換部材及びマイクロレンズの屈折率よりも小さいという特徴を有する。
【0021】
また第二の態様は、有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設ける態様がある。ここで第二の態様においては、色変換部材の屈折率がマイクロレンズの屈折率よりも大きいという特徴を有する。
【0022】
いずれの態様においても、有機EL素子の光取り出し側と色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層である態様が好ましい。また本発明の有機EL発光装置を構成する色変換部材の外周には遮光膜がさらに設けられていることが好ましい。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機EL発光装置の実施形態について説明する。ただし本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【0024】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の有機EL発光装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。尚、図1の有機EL発光装置1は、画素単位(画素1個あたり)における平面的な装置構成を示している。つまり、本発明の有機EL発光装置は、図1に示される構成を複数備える装置である。
【0025】
ここで図1の有機EL発光装置1は、三種類の副画素、即ち、赤色副画素2Rと、緑色副画素2Gと、青色副画素2Bと、を有している。ただし本発明において副画素の種類は三種類に限定されるものではない。
【0026】
ここでこの三種類の副画素(2R、2G、2B)は、それぞれ所定の副画素領域10(10R、10G、10B)に含まれている。また図1の有機EL発光装置1は、三種類の副画素(2R、2G、2B)の設置位置に対応する位置に、それぞれマイクロレンズ11が1個ずつ設けられている。ここで副画素1個につきマイクロレンズ11を1個設ける必要があるため、マイクロレンズ11同士が接触しないように各副画素(2R、2G、2B)の配置位置を決めるのが望ましい。逆に言うと、マイクロレンズ11同士が接触しないように各副画素(2R、2G、2B)の配置位置が決められていれば、図1の有機EL発光装置1に含まれる三種類の副画素(2R、2G、2B)を設ける領域は、特に限定されるものではない。
【0027】
また図1の有機EL発光装置1において、各副画素領域(10R、10G、10B)は、ストライプ状に配列されている。ただし本発明において副画素領域10の配列様式は図1に示されるストライプ状に限定されるものではない。ストライプ状に配列する代わりに、デルタ状、ダイアゴナル状、レクタングル状等に配列してもよいし、これらの配列方法を組み合わせたものであっても構わない。
【0028】
図2は、図1の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。図2にて示される有機EL発光装置1には、基板20と、有機EL素子21(白色有機EL素子)と、ガスバリア層22と、緩衝層23と、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)と、低屈折率層25と、マイクロレンズ11と、がこの順に積層されている。尚、図2の有機EL発光装置1には、有機EL素子21として白色発光する白色有機EL素子を使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
図2の有機EL発光装置1において、基板20は、例えば、基材上にトランジスタを含む回路が形成されている回路基板である。尚、以下の説明において、この回路基板を単に基板20ということがある。図2の有機EL発光装置1を構成する基板20としては、ガラス基板、合成樹脂等からなる絶縁性基板、表面に酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁層を形成した導電性基板若しくは半導体基板等が挙げられる。ここで基板20は、透明であってもよいし不透明であってもよい。
【0030】
基板20として回路基板を使用する場合、基板20を構成する回路には、トランジスタが含まれている。トランジスタとして、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、半導体基板に形成されたトランジスタ等が挙げられる。ここで上記回路としてTFTを含んだ回路を採用すると、各副画素に含まれる有機EL発光素子に対して所望のタイミング、強度で給電を行うことができるので、好ましい。
【0031】
また基板20を構成する回路上には、一般的にアクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる平坦化膜(不図示)がフォトリソグラフィー技術等によって所望のパターンにて形成されている。ここで平坦化層は、基材上に回路を設けることで生じる凹凸を平坦化するための層である。また平坦化層の、材料や製法は特に限定されるものではない。尚、平坦化層と回路との間に、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等の無機材料からなる絶縁層を形成してもよい。また画素・副画素のサイズやプロセス工程において一定の制約を受ける場合には、樹脂ベースで平坦化層を形成する代わりに、CMP(化学機械研磨)による平坦化処理を行ってもよい。配線形成と配線間絶縁膜形成に合わせてこの平坦化処理を繰り返し実施することで、複数層に跨る配線層を形成することができる。特に画素サイズが小さい場合は回路を設ける領域を充分確保できないことがあるので、有効な作製方法となる。
【0032】
基板20上に設けられる有機EL素子21は、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、から構成される。
【0033】
下部電極は、基板20に含まれる回路の一部と電気接続する電極層である。ここで下部電極は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。下部電極が透明電極である場合、下部電極の構成材料として、ITO、In2O3等の光透過性の導電材料(透明導電材料)が挙げられる。下部電極が反射電極である場合、その構成材料として、Au、Ag、Al、Pt、Cr、Pd、Se、Ir、Ti等の金属単体、これら金属単体を複数種組み合わせた合金、ヨウ化銅等の金属化合物等が挙げられる。下部電極の膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1μmである。基板20の表面から光を取り出す場合、下部電極は反射電極とする。尚、この反射電極には、上述した金属単体、合金、金属化合物のいずれかからなる反射電極層と、透明導電材料からなる透明電極層と、をこの順で積層した積層電極を使用することができる。
【0034】
有機化合物層は、下部電極上に設けられる有機化合物からなる層である。有機EL素子21として白色有機EL素子を採用する場合、有機化合物層は、白色光を出力させるための発光層を有していれば、一層(発光層)のみで構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。有機EL素子21(白色有機EL素子)の発光機能を考慮して適宜選ぶことができる。有機化合物層を構成する発光層以外の層として、具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、電子障壁層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。また有機化合物層を構成する各層の構成材料として、公知の化合物を使用することができる。
【0035】
ところで発光層を白色に発光させるためには、一般的にCyan発光層とYellow発光層を組み合わせることが知られているが、本発明の有機EL発光装置においては適用可能である。尚、本発明において発光層を白色に発光させる方法は、これ(Cyan発光層とYellow発光層との組み合わせ)に限定されるものではない。
【0036】
尚、有機化合物層は発光する領域は、発光層等の特定の層内であってもよいし、隣接する層同士の界面であってもよい。また有機化合物層を構成する各層は、真空蒸着法、インクジェット法等により形成することができる。
【0037】
有機化合物層上に形成される上部電極は、光の取り出し方向に応じて透明導電材料からなる透明電極であってもよいし、光を反射する材料からなる反射電極であってもよいし、透明電極と反射電極とを組み合わせたものであってもよい。ここで図2の有機EL発光装置は基板20の反対側から光を取り出すため、上部電極は透明電極であるのが好ましい。上部電極の構成材料は、下部電極の構成材料と同様の材料を使用することもできる。尚、上部電極を形成することにより基板20上に有機EL素子21(白色有機EL素子)が形成される。
【0038】
ところで、本発明の有機EL発光装置において、装置に含まれる有機EL素子として、白色有機EL素子を採用すると、全画素において統一された発光素子を一括して形成することができる。このため各画素において画素の種類に応じて発光層を選択的に形成する工程を省略することができると共に、従来下部電極の周縁部に設けられていた隔壁を省略することができる。下部電極の周縁部に隔壁を設ける場合は、その構成材料として、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁層やアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。
【0039】
ガスバリア層22は、大気中の酸素や水蒸気から白色有機EL素子21を保護するために設けられる。ここでガスバリア層22としては、窒化珪素を主成分とする無機薄膜が好適である。ここで窒化珪素を主成分とする無機薄膜は、緻密で耐酸化性があるため、防湿性の高い膜として広く知られている。ガスバリア層22となる薄膜の成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法等が挙げられる。ここでスパッタ法やプラズマCVD法は、低温での成膜が可能なため好適である。
【0040】
緩衝層23は、ガスバリア層22とカラーフィルタ24との間に設けられる層であり、ガスバリア層22とカラーフィルタ24との間の屈折率差を緩やかにするために設けられる。緩衝層23の構成材料として、例えば、SiON等が用いられる。また緩衝層23となる薄膜の成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法等が挙げられる。
【0041】
本発明の有機EL発光装置において、装置に含まれる有機EL素子21として、白色有機EL素子を採用した場合、カラー表示を行う際には、白色有機EL素子上にカラーフィルタ24(24R、24G、24B)等の色変換部材を副画素単位で設けておく。ここで白色有機EL素子(有機EL素子21)から出力される白色光を色変換部材で異なる色の光に変換する場合、白色有機EL素子に印加される電流・電圧を制御するだけでは特定色の最大輝度が不足する場合がある。係る場合は、各副画素(2R、2G、2B)の面積を、必要に応じて適宜調整するのが望ましい。例えば、上述した最大輝度を考慮して赤副画素2R、緑副画素2G及び青副画素2Bの面積比を1:1:2(=2R:2G:2B)となるように設定して1つの画素を構成してもよい。
【0042】
カラーフィルタ24等の色変換部材を形成する方法としては、公知の方法、具体的には、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を採用することができる。特に画素ピッチが小さい場合は、高精度で位置ずれの小さいフォトリソグラフィー法を利用して色変換部材を形成するのが好ましい。尚、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)をそれぞれ形成するにあたり、下地層(不図示)を形成してもよい。下地層の機能としては、カラーフィルタ形成時の濡れ性安定化や平坦化等がある。またカラーフィルタ形成後に、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)を保護する層を設けてもよい。保護する層としては、以下に述べる低屈折率層25を併用しても構わない。
【0043】
低屈折率層25は、屈折率が小さい材料(低屈折率材料)からなる層である。例えば、酸化ケイ素(屈折率1.45)、フッ化マグネシウム(屈折率1.38)、シリカエアロゲル、若しくはフッ素樹脂の何れかを適用することが可能である。特に、低屈折率の樹脂は、現在盛んに開発されており、上述した材料以外の材料も適用できるものがあれば使用しても構わない。例えば、現在市販されている低屈折率のフッ素系樹脂として、屈折率1.34、内部透過率95%のものがある。これらの材料からなる低屈折率層25は、真空成膜若しくはスピナー塗布等により、基板20の全面に均一に形成することが可能となる。
【0044】
カラーフィルタ24を透過して出力される光の輝度を向上させる一手段として、図2の有機EL発光装置1には、カラーフィルタ24上に、各副画素(2R、2G、2B)に対応する領域にマイクロレンズ11が設けられている。尚、図2の有機EL発光装置1において、マイクロレンズ11は副画素1個につき1個設けられている。
【0045】
ここでマイクロレンズ11を用いて輝度を向上させるには、カラーフィルタ24を透過した光を屈折・集光させる必要がある。ここで光を集光させるには、マイクロレンズ11は、高い屈折率(1.65〜)を有する凸型レンズ形状であることが求められる。
【0046】
マイクロレンズの作製方法としては、感光性材料からなる薄膜を形成した後、この薄膜の所定の領域について局所的に露光・現像を行ったのち、加熱処理することで形状が変化し(リフロー)、凸型のレンズ形状を形成することができる。また上述したリフローによって凸型レンズ形状を作製した後、さらに当該凸型レンズ形状をエッチングマスクにして下層をエッチング加工することで当該凸型レンズ形状を下層に転写する方法等によっても作製することができる。ここでマイクロレンズ11は、必ずしも球レンズ状に限定されるものではなく、矩形状の構造のレンズであっても類似の光学的な効果を得ることができる。
【0047】
ところで、マイクロレンズ11が形成されていることで所定の副画素から当該副画素に隣接する副画素に侵入した光は、カラーフィルタと空気との界面で全反射されず、より屈折率の高いマイクロレンズ側へ侵入することがある。これにより当該副画素から隣接する副画素に侵入した光の一部が装置の外へ出射し、この光が混色の原因となる。本発明の第一の態様としては、この混色を防ぐための方法論として、カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に、カラーフィルタ24よりも屈折率が小さい低屈折率層25を設ける方法がある。この方法によりカラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差による全反射特性を利用することができる。また上記全反射特性を利用することができることから、所定の副画素から隣接する副画素に侵入した光を反射し、カラーフィルタ24の上にあるマイクロレンズ11へ光が侵入するのを防ぐことができる。上述したように、低屈折率層25は、その屈折率がカラーフィルタ24の屈折率(1.55〜1.65)よりも小さい層である。本発明においては、低屈折率層25とカラーフィルタ24との屈折率差は、できるだけ大きくすることが好ましい。
【0048】
次に、本実施形態の有機EL発光装置の作用効果について説明する。本実施形態の有機EL発光装置の作用効果については、具体的には、光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で確認することができる。
【0049】
図3は、低屈折率層を配置しない場合における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。図4は、図2の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【0050】
ところで図3及び図4に示されるように、特定の副画素(発光副画素)に設けられている光源30から出力された光は大きく分けて下記(A)乃至(C)に示される三種類に分類される。尚、図3及び図4中の光源30は、図2の有機EL素子21に対応する。
(A)当該副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光31(以下、単に「光31」という場合がある。)
(B)当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光32(以下、単に「光32」という場合がある。)
(C)各層の界面(カラーフィルタ24と空気との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面)で全反射され装置内部へ戻される出射光33(以下、単に「光33」という場合がある。)
【0051】
カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に低屈折率層を設けない場合(図3)、光源30から出力された光の一部は、当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズに侵入する(光32)ことが確認できる。一方、カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に低屈折率層25を設ける場合(図4)、光源30から出力された光のうち、当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズに侵入する光32を図3の場合と比較して半分以下に抑えられる。
【0052】
ここで互いに隣接する副画素間における各副画素に設けられる各光源30の設置間隔及び光源30からマイクロレンズ11までの距離を適宜調整する。そして特定の副画素に設けられる光源30から当該副画素に隣接する副画素へ侵入する光において、この光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11への入射するときの角度(入射角)を全反射角以上に設定する。そうすると、隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズからの光の出射を略無にすることも可能である。尚、この場合では、画素ピッチ、ガスバリア層の膜厚、プロセス歩留まり等を考慮して設定する必要がある。
【0053】
本実施形態において、スネル則で計算した入射層(カラーフィルタ24)と低屈折率層25との全反射角度の関係は、下記表1に示される通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示されるように、屈折率の大きい媒体から屈折率の小さい媒体に光が侵入する際に、両媒体の屈折率差が大きいほど全反射角度は小さくなる。即ち、カラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差が大きくなると、特定の副画素からこの副画素に隣接する副画素へ侵入する光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11にさらに進入する光が少なくなってくる。ここでカラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差が0.15以上であると、約65°以上で入射した光はカラーフィルタ24と低屈折率層25との界面で全反射させることができ、実用的な効果を奏することができる。
【0056】
尚、本発明においては、光源30から出力された光のうち図4中の光31以外の光に関しては、カラーフィルタ24を通過させてから全反射させることが好ましい。というのも仮にカラーフィルタ24よりも下層で光の全反射を生じさせると、全反射によって迷光となった光は装置の内部を伝搬し、十分に減衰する前に装置の外部へ再出射してしまう可能性があるからである。これに対して、少なくともカラーフィルタ24を通過させてから光の全反射を生じさせるようにすれば、迷光を効果的に減衰させることができる。
【0057】
例えば、特定の副画素に含まれるカラーフィルタ24を透過して着色した光は、当該特定の画素に隣接する画素に含まれる異なる色のカラーフィルタ24に侵入した場合、着色した光がこのカラーフィルタにて吸収されるので消光する。またカラーフィルタ24に斜め方向に入射した光の透過距離は、垂直方法に入射して透過する場合の透過距離と比べて数倍以上になるためカラーフィルタ24を透過した後の光の減衰量が大きくなる。例えば、内部透過率70%のカラーフィルタにおいて、光の透過距離が例えば3.5倍(60°で入射した場合の入射距離と反射距離との合計)になるとカラーフィルタと透過した後の光の強度は29%に減衰する。
【0058】
以上より、光源30とマイクロレンズ11との間に設けられる複数の層、例えば、図2に示されるガスバリア層22、緩衝層23、カラーフィルタ24、低屈折率層25において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。そして本発明の第一の態様では、上記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差は、カラーフィルタ24(色変換部材)と低屈折率層25との間で最大にするのが特に好ましい。例えば、有機EL素子の光取り出し側において、上部電極から低屈折率層25に至るまでの層について、下記表2のように屈折率を設定するのが好ましい。
【0059】
【表2】
【0060】
[第二の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第二の実施形態について説明する。図5は、本発明の有機EL発光装置における第二の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第一の実施形態との相違点を中心に説明し、第一の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図5は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一の実施形態と同様の方法で形成される。
【0061】
本実施形態においては、第一の実施形態と比較して、ガスバリア層22及び緩衝層23を、層内において屈折率が段階的に変化する層となっている点で異なる。具体的には、光の出射方向に沿って屈折率が段階的に減少するように設定されている。これにより、上部電極からカラーフィルタ24に至るまでの層の屈折率を滑らかにすることができる。またこうすることでカラーフィルタ24より下層において生じ得る光の全反射の量を減らし、より多くの光をカラーフィルタ24まで導くことができる。尚、ここでいう屈折率を滑らかにするとは、隣接する層間の屈折率差を小さくすることをいう。
【0062】
本実施形態の具体例としては、下記表3のように屈折率が設定されている有機EL発光装置がある。
【0063】
【表3】
【0064】
本実施形態において、ガスバリア層22及び緩衝層23をそれぞれ成膜・形成する際には、P−CVD法等を採用することができる。ここでP−CVDによりガスバリア層22及び緩衝層23を成膜する場合は、ガス混合比を調整することで、層内の屈折率が連続的に変化するようにガスバリア層22及び緩衝層23を形成することが可能である。
【0065】
本実施形態の有機EL発光装置についても第一の実施形態と同様に光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で、光源から出力された光の光路のシミュレーションを行った。その結果、図3及び図4と同様の結果が得られた。即ち、カラーフィルタ24上に低屈折率層25を設けずにマイクロレンズ11を設けた場合では、発光画素から出力された光の一部が隣接する画素に対応して設けられるマイクロレンズへ侵入する様子が確認できた。一方、カラーフィルタ24上に低屈折率層25を設けた場合では、発光画素から隣接する画素のマイクロレンズ11に侵入する光線を半分以下に抑えられることを確認できた。
【0066】
さらに本実施形態では各層(特に、ガスバリア層22、緩衝層23)の屈折率を緩やかに変化するようにした。これにより、有機EL素子21(白色有機EL素子)から出力された光が、有機EL素子21とガスバリア層22との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面で全反射する光の量がいずれも減少する。従って、カラーフィルタ24により多くの光を侵入させることができる。また本実施形態においては、低屈折率層25で全反射される光(即ち、迷光)を、効果的に減衰することができ、迷光の再出射量をより抑えることができる。
【0067】
[第三の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第三の実施形態について説明する。図6は、本発明の有機EL発光装置における第三の実施形態を示す平面模式図である。また図7は、図6の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第一及び第二の実施形態との相違点を中心に説明し、第一又は第二の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一及び第二の実施形態と同様の方法で形成される。
【0068】
図6及び図7の有機EL発光装置4は、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)の外周に遮光膜40が形成されている。言い換えると、遮光膜40は、互いに隣接する副画素にそれぞれ設けられている2枚のカラーフィルタの境界部近傍においてこれらカラーフィルタに挟まれるように形成されている。
【0069】
このように、遮光膜40を形成することで、隣接する副画素への侵入する光や迷光をより効果的に減衰させることができる。但し、副画素のピッチが小さくなると、遮光膜を形成するプロセス精度等から、装置自体の開口率や視野角に影響が出る場合があるため、これらを考慮して遮光膜40の配置を決める必要がある。遮光膜40は、例えば、ブラックレジストをフォトリソプロセスによるパターニングによって形成することによって高精度に形成することが可能である。
【0070】
[第四の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第四の実施形態について説明する。図8は、本発明の有機EL発光装置における第四の実施形態を示す平面模式図である。尚、本実施形態においては、第一乃至第三の実施形態との相違点を中心に説明し、第一乃至第三の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図8は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一乃至第三の実施形態と同様の方法で形成される。
【0071】
図8の有機EL発光装置5は、図1及び図2の有機EL発光装置1と比較して、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)とマイクロレンズとの間に低屈折率層25が設けられていない。その代わり図8の有機EL発光装置5では、カラーフィルタ24の屈折率がマイクロレンズの屈折率よりも大きくなるように設定されている。このような簡易な構成によっても、本発明の作用効果を奏することができる。
【0072】
本実施形態において、スネル則で計算した入射層(カラーフィルタ24)とマイクロレンズ11との全反射角度の関係は、下記表4に示される通りである。
【0073】
【表4】
【0074】
ただしカラーフィルタ24の屈折率は、最大でも樹脂材料の屈折率程度までであり、およそ1.7程度である。そのためマイクロレンズ11の屈折率を小さくするならば、例えば、およそ1.40程度に設定する。ただしマイクロレンズ11の屈折率が低くなると、マイクロレンズ11自体の集光性能が低下することがある。そのため本実施形態においては、マイクロレンズ11の性能、製造コスト、製造プロセス等の制約を考慮しながらマイクロレンズ11の材料を決める必要がある。
【0075】
本実施形態の有機EL発光装置についても第一の実施形態と同様に光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で、光源から出力された光の光路のシミュレーションを行った。
【0076】
図9は、図8の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。ところで図9に示されるように、特定の副画素(発光副画素)に設けられている光源30から出力された光は大きく分けて下記(A)乃至(C)に示される三種類に分類される。尚、図9中の光源30は、図8の有機EL素子21に対応する。
(A)当該副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光31(以下、単に「光31」という場合がある。)
(B)当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光32(以下、単に「光32」という場合がある。)
(C)各層の界面(カラーフィルタ24と空気との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面)で全反射され装置内部へ戻される出射光33(以下、単に「光33」という場合がある。)
尚、低屈折率層を設けていない有機EL発光装置では、図9に示されるように隣接する副画素に対応して設けられているマイクロレンズから光源30から出射された光が装置の外へ出射していくことがある(出射光32)。ここで本実施形態のように、カラーフィルタ24の屈折率をマイクロレンズ11の屈折率よりも大きくなるように設定する。こうすることで、図9に示されるように特定の副画素から当該副画素に隣接する画素のマイクロレンズに侵入する光32の光量を図3と比較して半分以下に抑えられることを確認できる。
【0077】
ここで互いに隣接する副画素間における各副画素に設けられる各光源30の設置間隔及び光源30からマイクロレンズ11までの距離を適宜調整する。そして特定の副画素に設けられる光源30から当該副画素に隣接する副画素へ侵入する光において、この光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11への入射するときの角度(入射角)を全反射角以上に設定する。そうすると、隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズからの光の出射を略無にすることも可能である。尚、この場合では、画素ピッチ、ガスバリア層の膜厚、プロセス歩留まり等を考慮して設定する必要がある。
【0078】
また有機EL素子の光取り出し側の上に設けられている複数の部材において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。本実施形態では、光源30とマイクロレンズ11との間に設けられる層、例えば、図8に示されるガスバリア層22、緩衝層23、カラーフィルタ24、マイクロレンズ11において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。そして本発明の第二の態様では、上記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差は、カラーフィルタ24(色変換部材)とマイクロレンズ11との間で最大にするのが特に好ましい。
【0079】
[第五の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第五の実施形態について説明する。図10は、本発明の有機EL発光装置における第五の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第四の実施形態との相違点を中心に説明し、第四の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図10は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21は、第一の実施形態と同様の方法で形成される。
【0080】
本実施形態においては、第四の実施形態と比較して、ガスバリア層22及び緩衝層23を、層内において屈折率が段階的に変化する層となっている点で異なる。具体的には、光の出射方向に沿って屈折率が段階的に減少するように設定されている。これにより、上部電極からカラーフィルタ24に至るまでの層の屈折率を滑らかにすることができる。またこうすることでカラーフィルタ24より下層において生じ得る光の全反射の量を減らし、より多くの光をカラーフィルタ24まで導くことができる。尚、ここでいう屈折率を滑らかにするとは、隣接する層間の屈折率差を小さくすることをいう。
【0081】
本実施形態の具体例としては、下記表5のように屈折率が設定されている有機EL発光装置がある。
【0082】
【表5】
【0083】
本実施形態において、ガスバリア層22及び緩衝層23をそれぞれ成膜・形成する際には、P−CVD法等を採用することができる。ここでP−CVDによりガスバリア層22及び緩衝層23を成膜する場合は、ガス混合比を調整することで、層内の屈折率が連続的に変化するようにガスバリア層22及び緩衝層23を形成することが可能である。
【0084】
[第六の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第六の実施形態について説明する。図11は、本発明の有機EL発光装置における第六の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第四及び第五の実施形態との相違点を中心に説明し、第四又は第五の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図11は、図5と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される白色有機EL素子21は、第四及び第五の実施形態と同様の方法で形成される。
【0085】
図11の有機EL発光装置7は、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)の外周に遮光膜40が形成されている。言い換えると、遮光膜40は、互いに隣接する画素にそれぞれ設けられている2枚のカラーフィルタに挟まれるように形成されている。
【0086】
このように、遮光膜40を形成することで、隣接する画素への侵入する光や迷光をより効果的に減衰させることができる。但し、副画素のピッチが小さくなると、遮光膜を形成するプロセス精度等から、開口率や視野角に影響が出る場合があるため、これらを考慮して遮光膜40の配置を決める必要がある。遮光膜40は、例えば、ブラックレジストをフォトリソプロセスによるパターニングによって形成することによって高精度に形成することが可能である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例にて本発明の有機EL発光装置を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
図2に示される有機EL発光装置を、以下に示す方法で作製した。
【0089】
まず下地層がCrであり、表面がAl合金で形成されている下部電極を配設した回路基板(基板20)を、UV/オゾンにて洗浄処理を行った。尚、この回路基板上の画素領域には、反射膜であるAlSi膜と、Anode電極として機能するITO膜とが、この順で、フォトリソグラフィー技術により積層体として形成されている。また副画素領域(10R、10G、10B)のサイズは、それぞれ約4.2μ×約12.6μm程度である。さらに各副画素領域(10R、10G、10B)には、赤副画素2Rと、緑副画素2Gと、青副画素2Bと、のうちのいずれかの副画素が含まれており、これら三種類の副画素を1つずつ合わせることで1つの画素が構成されている。一方、本実施例において、最隣接画素間の距離は、図1のAB線上において約6μmである。
【0090】
次に、真空蒸着法により、有機化合物層を構成する正孔注入層、正孔輸送層、電子障壁層、Cyan発光層、Yellow発光層、正孔障壁層、電子輸送層及び電子注入層を、この順で形成した。そして電子注入層上に、スパッタリング法でIZOを成膜し上部電極を形成し有機EL素子21)白色有機EL素子)を作製した。
【0091】
次に、有機EL素子21が形成されている基板10を、大気中に解放せず、かつ露点状況を維持しながらPECVD装置に搬入した。次に、SiN(屈折率:1.85)を成膜してガスバリア層22を形成した。このときガスバリア層22の膜厚は2μmであった。次に、連続してSiON(屈折率:1.70)を成膜して緩衝層23を形成した。このとき緩衝層23の膜厚は0.2μmであった。
【0092】
次に、緩衝層23まで形成した基板20を大気中に解放した後、濡れ性及び平坦化性を上げるための薄膜(屈折率:1.6、不図示)を形成した。このとき当該薄膜の膜厚は0.2μmであった。尚、この薄膜は、次の工程で形成するカラーフィルタ(24R、24G、24B)の下地層として機能する。
【0093】
次に、各副画素領域(10R、10G、10B)に対応する位置に、フォトリソグラフィー技術により、カラーフィルタ(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した。このときカラーフィルタの膜厚は1μmであった。次に、カラーフィルタ(24R、24G、24B)の上に、屈折率が低い樹脂材料(屈折率1.35)を塗布成膜して低屈折率層25を形成した。このとき低屈折率層25の膜厚は0.2μmであった。
【0094】
次に、感光性樹脂(屈折率1.65)からなる薄膜を成膜した後、フォトリソグラフィー技術で露光・現像して、リフロー処理することで、複数のレンズ形状(マイクロレンズ11)を、各副画素に対応する位置に配置されるように作製した。このときマイクロレンズ11の形状は、直径5μmの半球形状の凸形状のレンズであった。以上により、有機EL発光装置を得た。
【0095】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、低屈折率層25を設けないで作製した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0096】
[実施例2]
図5に示される有機EL発光装置3を、以下に説明する方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1と同様の部分については説明を省略することがある。また本実施例において副画素領域(10R、10G、10B)のサイズは、それぞれ約5.3μm×約15.9μm程度である。さらに各副画素領域(10R、10G、10B)には、赤副画素2Rと、緑副画素2Gと、青副画素2Bと、のうちのいずれかの副画素が含まれており、これら三種類の副画素を1つずつ合わせることで1つの画素が構成されている。一方、本実施例において、最隣接画素間の距離は、図1のAB線上において約7.5μmである。
【0097】
本実施例では、実施例1において、ガスバリア層22及び緩衝層23の形成方法を変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。以下に、本実施例におけるガスバリア層22及び緩衝層23の形成方法を説明する。
【0098】
(ガスバリア層の形成方法)
PECVD装置を用いてガスバリア層22の成膜を行った。具体的には、ガスバリア層22を構成するSi及びNの各原料ガスの流量を調整して、膜中のSi/N比率が段階的に変化するように成膜した。これにより、屈折率が1.95から1.80まで徐々に変化するガスバリア層22を形成した。
【0099】
(緩衝層の形成方法)
PECVD装置を用いて緩衝層23の成膜を行った。具体的には、緩衝層23を構成するSi、N及びOの各原料ガスの流量を調整して、膜中のSi/N/Oの比率が段階的に変化するように成膜した。これにより、屈折率が1.75から1.60まで徐々に変化する緩衝層23を形成した。
【0100】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また実施例1と同様の比較評価を行ったところ、実施例1と同様に、約60°以上の高視野角から観察したときに偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認できた。尚、本実施例の有機EL発光装置は、隣接する画素へ侵入する光の大部分を全反射できる構成であるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例1よりも抑えることができた。
【0101】
[実施例3]
図7に示される有機EL発光装置4を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例2との相違点を中心に説明し、実施例2と同様の部分については説明を省略することがある。
【0102】
本実施例においては、実施例2において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成する前に、フォトリソプロセスにより、副画素領域10の境界部の近傍を囲むようにブラックレジストをパターニング形成した。これを除いては、実施例2と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0103】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また実施例1と同様の比較評価を行ったところ、実施例1と同様に、約60°以上の高視野角から観察したときに偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認できた。尚、本実施例では、遮光膜40にて隣接する画素への侵入する光や迷光を遮断することができるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例1よりも抑えることができた。
【0104】
[実施例4]
図8に示される有機EL発光装置5を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1と同様の部分については説明を省略することがある。
【0105】
本実施例においては、実施例1において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例1と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0106】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0107】
[実施例5]
図10に示される有機EL発光装置6を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例2との相違点を中心に説明し、実施例2と同様の部分については説明を省略することがある。
【0108】
本実施例においては、実施例2において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例2と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0109】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0110】
[実施例6]
図11に示される有機EL発光装置7を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例3との相違点を中心に説明し、実施例3と同様の部分については説明を省略することがある。
【0111】
本実施例においては、実施例3において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)それぞれを形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例3と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0112】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。尚、本実施例では、遮光膜40にて隣接する画素への侵入する光や迷光を遮断することができるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例4や実施例5よりも抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、白色発光する白色有機EL素子と、マイクロレンズと、を備える有機EL発光装置において、隣接する画素との混色防止のための技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1(3,4,5,6,7):有機EL発光装置、2R(2G、2B):画素、10:副画素領域、11:マイクロレンズ、20:基板、21:有機EL素子(白色有機EL素子)、22:ガスバリア層、23:緩衝層、24(24R、24G、24B):カラーフィルタ、25:低屈折率層、30:光源、31(32,33):出射光、40:遮光膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL発光装置は、薄膜状であって自発光であることを特徴とした有機EL素子を有する発光装置であり、新方式のフラットパネルディスプレイとして様々な応用がなされている。ここで有機EL発光装置の構成部材である有機EL素子は、陰極から電子を、陽極からホール(正孔)を、それぞれ有機化合物層に注入し、有機化合物層中の発光層にて励起子を生成させ、これら励起子が基底状態に戻る際に光が放出される原理を利用している。ここで有機化合物層に含まれる発光層は、蛍光性有機化合物若しくは燐光性有機化合物、量子ドット等の発光性材料からなる薄膜状の層である。
【0003】
カラー表示をする有機EL発光装置は、各画素に赤色、緑色、青色のいずれかを発光する有機EL素子を形成し、各画素の発光輝度を制御して所望の色や画像を表示させるのが一般的である。この有機EL素子の作製方法としては、マスク成膜による真空蒸着法や、有機EL材料を溶媒中に溶かして得たインクを滴下して薄膜を形成するインクジェット法が知られている。
【0004】
しかしこれらの方法では、画素ピッチが小さい有機EL発光装置を製造するのは困難である。困難である理由としては、マスク成膜による真空蒸着法の場合では、高精細マスクの作製精度や成膜時のアライメント誤差の影響を受けやすくなるからである。またインクジェット法による成膜の場合は、ごく小さな液滴を所定の領域に吐出し着滴させるための制御が難しいからである。
【0005】
これに対して、最近では、白色発光する有機EL材料を有する白色有機EL素子及びカラーフィルタあるいは色変換フィルタを使用してカラー表示をする有機EL発光装置が提案されている。この有機EL発光装置では、各画素に設けられる有機EL素子を画素毎に区分・区画することなく一括に形成できるという特徴を有する。このため、微小エリアを対象として性質が異なる複数種類の薄膜を選択的に成膜する必要がなくなる。またこの有機EL発光装置において画素ピッチを支配するのは、カラーフィルタあるいは色変換フィルタ作製時の精度(フォトリソグラフィー精度)となる。このためカラーフィルタ、色変換フィルタといった色変換部材の大きさ(広さ)を小さくすればその分だけ画素ピッチをより小さくすることが可能である。
【0006】
ただし画素ピッチが小さくなると、その分だけ隣接する画素への特定画素の発光の影響が大きくなる。具体的には、特定画素(に含まれる有機EL素子)が発光すると当該特定画素に隣接する画素において偽色や漏れ光が発生しやすくなる。ここで偽色や漏れ光が発生すると、色純度やコントラストの低下につながり、画質の劣化を招くことがある。
【0007】
ここで上述した課題の解決に向けて様々な提案がなされている。特許文献1では、パネルの最表面にあるガラスと空気との界面で生じる光の全反射の特性を利用して、隣接する画素領域に侵入する光をパネルの外に出さないように設計された有機EL表示装置が提案されている。
【0008】
また白色有機EL素子と色変換部材(カラーフィルタ、色変換フィルタ)とを組み合わせる方式では、白色有機EL素子から出力された白色光のうち一部の波長領域の光のみを取り出すための構成を必然的に設けることになる。ただしこの構成を設けると、赤色、緑色、青色等のカラー発光を装置の外部へ出力する際に必然的に発光効率が低くなる。この発光効率の低下による輝度の不足を補うために、発光素子上にマイクロレンズを形成することがよく知られている。ここで発光素子上にマイクロレンズを形成する際には、隣接画素間とのクロストークを防ぐために、特許文献2にて提案されているように、マイクロレンズの下層に低屈折率層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−34591公報
【特許文献2】特開2009−51200公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献1及び2にて提案された構成では、隣接する画素での発光による影響を抑えるには不十分である。まず特許文献1にて提案された構成では、あくまでパネルの最表層であるガラス面から空気界面へ光が出射する時の全反射特性を利用して、隣接画素から出力される光を抑えることで混色を防止している。そのためガラス基板の内側にマイクロレンズを形成した場合、マイクロレンズ内に侵入してくる隣接する画素での発光の影響を低減させることはできない。このため、結果として混色した光がパネルの外へ出射してしまうことになる。
【0011】
一方、特許文献2にて提案された構成では、発光素子とマイクロレンズとの間に低屈折率層を設けているため、マイクロレンズに侵入する隣接する画素から出力された光を、低屈折率層の全反射特性を用いることで低減させることができる。しかし特許文献2にて提案された構成は、あくまで単色であり、フルカラー表示装置に適用するための手段までは開示されていない。また特許文献2にて提案された構成は、低屈折率層で全反射した光が迷光となり、場合によっては迷光が再出射することがありこれにより画質の劣化を招く可能性が生じる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高精細画素においても高輝度でかつ光の混色が生じない有機EL発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有機EL発光装置は、第一の態様として、有機EL発光素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記低屈折率層の屈折率が、前記色変換部材及び前記マイクロレンズの屈折率よりも小さいことを特徴とする態様がある。
【0014】
また本発明の有機発光装置は、第二の態様として、有機EL発光素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記色変換部材の屈折率が前記マイクロレンズの屈折率よりも大きいことを特徴とする態様がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高精細画素においても高輝度でかつ光の混色が生じない有機EL発光装置を提供することができる。
【0016】
即ち、本発明の有機EL発光装置においては、特定の画素(発光画素)から出力された光がこの特定の画素に隣接する画素のマイクロレンズに入射しにくい入射角が大きい光を全反射させることができる。ここで全反射した光は迷光となるが、一旦色変換部材(カラーフィルタ)を通過して着色した光は、異なる色の色変換部材を透過する場合は消光し、同色の色変換部材を透過する場合は斜め導波する距離長から効果的に減衰する。結果として迷光の再出射量を大幅に抑えることができる。
【0017】
以上により本発明の有機EL発光装置は、従来の有機EL発光装置に比べ高精細、高輝度であると共に、隣接画素とのクロストークを低減させた有機EL発光装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有機EL発光装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。
【図2】図1の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。
【図3】低屈折率層を配置しない場合における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図4】図2の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図5】本発明の有機EL発光装置における第二の実施形態を示す断面模式図である。
【図6】本発明の有機EL発光装置における第三の実施形態を示す平面模式図である。
【図7】図6の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。
【図8】本発明の有機EL発光装置における第四の実施形態を示す断面模式図である。
【図9】図8の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【図10】本発明の有機EL発光装置における第五の実施形態を示す断面模式図である。
【図11】本発明の有機EL発光装置における第六の実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機EL発光装置は、以下に説明する2つの態様に大別される。
【0020】
第一の態様は、有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設ける態様がある。ここで第一の態様においては、低屈折率層の屈折率は、色変換部材及びマイクロレンズの屈折率よりも小さいという特徴を有する。
【0021】
また第二の態様は、有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設ける態様がある。ここで第二の態様においては、色変換部材の屈折率がマイクロレンズの屈折率よりも大きいという特徴を有する。
【0022】
いずれの態様においても、有機EL素子の光取り出し側と色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層である態様が好ましい。また本発明の有機EL発光装置を構成する色変換部材の外周には遮光膜がさらに設けられていることが好ましい。
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の有機EL発光装置の実施形態について説明する。ただし本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。
【0024】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の有機EL発光装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。尚、図1の有機EL発光装置1は、画素単位(画素1個あたり)における平面的な装置構成を示している。つまり、本発明の有機EL発光装置は、図1に示される構成を複数備える装置である。
【0025】
ここで図1の有機EL発光装置1は、三種類の副画素、即ち、赤色副画素2Rと、緑色副画素2Gと、青色副画素2Bと、を有している。ただし本発明において副画素の種類は三種類に限定されるものではない。
【0026】
ここでこの三種類の副画素(2R、2G、2B)は、それぞれ所定の副画素領域10(10R、10G、10B)に含まれている。また図1の有機EL発光装置1は、三種類の副画素(2R、2G、2B)の設置位置に対応する位置に、それぞれマイクロレンズ11が1個ずつ設けられている。ここで副画素1個につきマイクロレンズ11を1個設ける必要があるため、マイクロレンズ11同士が接触しないように各副画素(2R、2G、2B)の配置位置を決めるのが望ましい。逆に言うと、マイクロレンズ11同士が接触しないように各副画素(2R、2G、2B)の配置位置が決められていれば、図1の有機EL発光装置1に含まれる三種類の副画素(2R、2G、2B)を設ける領域は、特に限定されるものではない。
【0027】
また図1の有機EL発光装置1において、各副画素領域(10R、10G、10B)は、ストライプ状に配列されている。ただし本発明において副画素領域10の配列様式は図1に示されるストライプ状に限定されるものではない。ストライプ状に配列する代わりに、デルタ状、ダイアゴナル状、レクタングル状等に配列してもよいし、これらの配列方法を組み合わせたものであっても構わない。
【0028】
図2は、図1の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。図2にて示される有機EL発光装置1には、基板20と、有機EL素子21(白色有機EL素子)と、ガスバリア層22と、緩衝層23と、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)と、低屈折率層25と、マイクロレンズ11と、がこの順に積層されている。尚、図2の有機EL発光装置1には、有機EL素子21として白色発光する白色有機EL素子を使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
図2の有機EL発光装置1において、基板20は、例えば、基材上にトランジスタを含む回路が形成されている回路基板である。尚、以下の説明において、この回路基板を単に基板20ということがある。図2の有機EL発光装置1を構成する基板20としては、ガラス基板、合成樹脂等からなる絶縁性基板、表面に酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁層を形成した導電性基板若しくは半導体基板等が挙げられる。ここで基板20は、透明であってもよいし不透明であってもよい。
【0030】
基板20として回路基板を使用する場合、基板20を構成する回路には、トランジスタが含まれている。トランジスタとして、例えば、TFT(薄膜トランジスタ)、半導体基板に形成されたトランジスタ等が挙げられる。ここで上記回路としてTFTを含んだ回路を採用すると、各副画素に含まれる有機EL発光素子に対して所望のタイミング、強度で給電を行うことができるので、好ましい。
【0031】
また基板20を構成する回路上には、一般的にアクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等からなる平坦化膜(不図示)がフォトリソグラフィー技術等によって所望のパターンにて形成されている。ここで平坦化層は、基材上に回路を設けることで生じる凹凸を平坦化するための層である。また平坦化層の、材料や製法は特に限定されるものではない。尚、平坦化層と回路との間に、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等の無機材料からなる絶縁層を形成してもよい。また画素・副画素のサイズやプロセス工程において一定の制約を受ける場合には、樹脂ベースで平坦化層を形成する代わりに、CMP(化学機械研磨)による平坦化処理を行ってもよい。配線形成と配線間絶縁膜形成に合わせてこの平坦化処理を繰り返し実施することで、複数層に跨る配線層を形成することができる。特に画素サイズが小さい場合は回路を設ける領域を充分確保できないことがあるので、有効な作製方法となる。
【0032】
基板20上に設けられる有機EL素子21は、下部電極と、有機化合物層と、上部電極と、から構成される。
【0033】
下部電極は、基板20に含まれる回路の一部と電気接続する電極層である。ここで下部電極は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。下部電極が透明電極である場合、下部電極の構成材料として、ITO、In2O3等の光透過性の導電材料(透明導電材料)が挙げられる。下部電極が反射電極である場合、その構成材料として、Au、Ag、Al、Pt、Cr、Pd、Se、Ir、Ti等の金属単体、これら金属単体を複数種組み合わせた合金、ヨウ化銅等の金属化合物等が挙げられる。下部電極の膜厚は、好ましくは、0.1μm〜1μmである。基板20の表面から光を取り出す場合、下部電極は反射電極とする。尚、この反射電極には、上述した金属単体、合金、金属化合物のいずれかからなる反射電極層と、透明導電材料からなる透明電極層と、をこの順で積層した積層電極を使用することができる。
【0034】
有機化合物層は、下部電極上に設けられる有機化合物からなる層である。有機EL素子21として白色有機EL素子を採用する場合、有機化合物層は、白色光を出力させるための発光層を有していれば、一層(発光層)のみで構成されていてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。有機EL素子21(白色有機EL素子)の発光機能を考慮して適宜選ぶことができる。有機化合物層を構成する発光層以外の層として、具体的には、ホール注入層、ホール輸送層、電子障壁層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。また有機化合物層を構成する各層の構成材料として、公知の化合物を使用することができる。
【0035】
ところで発光層を白色に発光させるためには、一般的にCyan発光層とYellow発光層を組み合わせることが知られているが、本発明の有機EL発光装置においては適用可能である。尚、本発明において発光層を白色に発光させる方法は、これ(Cyan発光層とYellow発光層との組み合わせ)に限定されるものではない。
【0036】
尚、有機化合物層は発光する領域は、発光層等の特定の層内であってもよいし、隣接する層同士の界面であってもよい。また有機化合物層を構成する各層は、真空蒸着法、インクジェット法等により形成することができる。
【0037】
有機化合物層上に形成される上部電極は、光の取り出し方向に応じて透明導電材料からなる透明電極であってもよいし、光を反射する材料からなる反射電極であってもよいし、透明電極と反射電極とを組み合わせたものであってもよい。ここで図2の有機EL発光装置は基板20の反対側から光を取り出すため、上部電極は透明電極であるのが好ましい。上部電極の構成材料は、下部電極の構成材料と同様の材料を使用することもできる。尚、上部電極を形成することにより基板20上に有機EL素子21(白色有機EL素子)が形成される。
【0038】
ところで、本発明の有機EL発光装置において、装置に含まれる有機EL素子として、白色有機EL素子を採用すると、全画素において統一された発光素子を一括して形成することができる。このため各画素において画素の種類に応じて発光層を選択的に形成する工程を省略することができると共に、従来下部電極の周縁部に設けられていた隔壁を省略することができる。下部電極の周縁部に隔壁を設ける場合は、その構成材料として、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁層やアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。
【0039】
ガスバリア層22は、大気中の酸素や水蒸気から白色有機EL素子21を保護するために設けられる。ここでガスバリア層22としては、窒化珪素を主成分とする無機薄膜が好適である。ここで窒化珪素を主成分とする無機薄膜は、緻密で耐酸化性があるため、防湿性の高い膜として広く知られている。ガスバリア層22となる薄膜の成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法等が挙げられる。ここでスパッタ法やプラズマCVD法は、低温での成膜が可能なため好適である。
【0040】
緩衝層23は、ガスバリア層22とカラーフィルタ24との間に設けられる層であり、ガスバリア層22とカラーフィルタ24との間の屈折率差を緩やかにするために設けられる。緩衝層23の構成材料として、例えば、SiON等が用いられる。また緩衝層23となる薄膜の成膜方法としては、スパッタ法、プラズマCVD法等が挙げられる。
【0041】
本発明の有機EL発光装置において、装置に含まれる有機EL素子21として、白色有機EL素子を採用した場合、カラー表示を行う際には、白色有機EL素子上にカラーフィルタ24(24R、24G、24B)等の色変換部材を副画素単位で設けておく。ここで白色有機EL素子(有機EL素子21)から出力される白色光を色変換部材で異なる色の光に変換する場合、白色有機EL素子に印加される電流・電圧を制御するだけでは特定色の最大輝度が不足する場合がある。係る場合は、各副画素(2R、2G、2B)の面積を、必要に応じて適宜調整するのが望ましい。例えば、上述した最大輝度を考慮して赤副画素2R、緑副画素2G及び青副画素2Bの面積比を1:1:2(=2R:2G:2B)となるように設定して1つの画素を構成してもよい。
【0042】
カラーフィルタ24等の色変換部材を形成する方法としては、公知の方法、具体的には、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を採用することができる。特に画素ピッチが小さい場合は、高精度で位置ずれの小さいフォトリソグラフィー法を利用して色変換部材を形成するのが好ましい。尚、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)をそれぞれ形成するにあたり、下地層(不図示)を形成してもよい。下地層の機能としては、カラーフィルタ形成時の濡れ性安定化や平坦化等がある。またカラーフィルタ形成後に、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)を保護する層を設けてもよい。保護する層としては、以下に述べる低屈折率層25を併用しても構わない。
【0043】
低屈折率層25は、屈折率が小さい材料(低屈折率材料)からなる層である。例えば、酸化ケイ素(屈折率1.45)、フッ化マグネシウム(屈折率1.38)、シリカエアロゲル、若しくはフッ素樹脂の何れかを適用することが可能である。特に、低屈折率の樹脂は、現在盛んに開発されており、上述した材料以外の材料も適用できるものがあれば使用しても構わない。例えば、現在市販されている低屈折率のフッ素系樹脂として、屈折率1.34、内部透過率95%のものがある。これらの材料からなる低屈折率層25は、真空成膜若しくはスピナー塗布等により、基板20の全面に均一に形成することが可能となる。
【0044】
カラーフィルタ24を透過して出力される光の輝度を向上させる一手段として、図2の有機EL発光装置1には、カラーフィルタ24上に、各副画素(2R、2G、2B)に対応する領域にマイクロレンズ11が設けられている。尚、図2の有機EL発光装置1において、マイクロレンズ11は副画素1個につき1個設けられている。
【0045】
ここでマイクロレンズ11を用いて輝度を向上させるには、カラーフィルタ24を透過した光を屈折・集光させる必要がある。ここで光を集光させるには、マイクロレンズ11は、高い屈折率(1.65〜)を有する凸型レンズ形状であることが求められる。
【0046】
マイクロレンズの作製方法としては、感光性材料からなる薄膜を形成した後、この薄膜の所定の領域について局所的に露光・現像を行ったのち、加熱処理することで形状が変化し(リフロー)、凸型のレンズ形状を形成することができる。また上述したリフローによって凸型レンズ形状を作製した後、さらに当該凸型レンズ形状をエッチングマスクにして下層をエッチング加工することで当該凸型レンズ形状を下層に転写する方法等によっても作製することができる。ここでマイクロレンズ11は、必ずしも球レンズ状に限定されるものではなく、矩形状の構造のレンズであっても類似の光学的な効果を得ることができる。
【0047】
ところで、マイクロレンズ11が形成されていることで所定の副画素から当該副画素に隣接する副画素に侵入した光は、カラーフィルタと空気との界面で全反射されず、より屈折率の高いマイクロレンズ側へ侵入することがある。これにより当該副画素から隣接する副画素に侵入した光の一部が装置の外へ出射し、この光が混色の原因となる。本発明の第一の態様としては、この混色を防ぐための方法論として、カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に、カラーフィルタ24よりも屈折率が小さい低屈折率層25を設ける方法がある。この方法によりカラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差による全反射特性を利用することができる。また上記全反射特性を利用することができることから、所定の副画素から隣接する副画素に侵入した光を反射し、カラーフィルタ24の上にあるマイクロレンズ11へ光が侵入するのを防ぐことができる。上述したように、低屈折率層25は、その屈折率がカラーフィルタ24の屈折率(1.55〜1.65)よりも小さい層である。本発明においては、低屈折率層25とカラーフィルタ24との屈折率差は、できるだけ大きくすることが好ましい。
【0048】
次に、本実施形態の有機EL発光装置の作用効果について説明する。本実施形態の有機EL発光装置の作用効果については、具体的には、光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で確認することができる。
【0049】
図3は、低屈折率層を配置しない場合における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。図4は、図2の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。
【0050】
ところで図3及び図4に示されるように、特定の副画素(発光副画素)に設けられている光源30から出力された光は大きく分けて下記(A)乃至(C)に示される三種類に分類される。尚、図3及び図4中の光源30は、図2の有機EL素子21に対応する。
(A)当該副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光31(以下、単に「光31」という場合がある。)
(B)当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光32(以下、単に「光32」という場合がある。)
(C)各層の界面(カラーフィルタ24と空気との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面)で全反射され装置内部へ戻される出射光33(以下、単に「光33」という場合がある。)
【0051】
カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に低屈折率層を設けない場合(図3)、光源30から出力された光の一部は、当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズに侵入する(光32)ことが確認できる。一方、カラーフィルタ24とマイクロレンズ11との間に低屈折率層25を設ける場合(図4)、光源30から出力された光のうち、当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズに侵入する光32を図3の場合と比較して半分以下に抑えられる。
【0052】
ここで互いに隣接する副画素間における各副画素に設けられる各光源30の設置間隔及び光源30からマイクロレンズ11までの距離を適宜調整する。そして特定の副画素に設けられる光源30から当該副画素に隣接する副画素へ侵入する光において、この光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11への入射するときの角度(入射角)を全反射角以上に設定する。そうすると、隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズからの光の出射を略無にすることも可能である。尚、この場合では、画素ピッチ、ガスバリア層の膜厚、プロセス歩留まり等を考慮して設定する必要がある。
【0053】
本実施形態において、スネル則で計算した入射層(カラーフィルタ24)と低屈折率層25との全反射角度の関係は、下記表1に示される通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示されるように、屈折率の大きい媒体から屈折率の小さい媒体に光が侵入する際に、両媒体の屈折率差が大きいほど全反射角度は小さくなる。即ち、カラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差が大きくなると、特定の副画素からこの副画素に隣接する副画素へ侵入する光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11にさらに進入する光が少なくなってくる。ここでカラーフィルタ24と低屈折率層25との屈折率差が0.15以上であると、約65°以上で入射した光はカラーフィルタ24と低屈折率層25との界面で全反射させることができ、実用的な効果を奏することができる。
【0056】
尚、本発明においては、光源30から出力された光のうち図4中の光31以外の光に関しては、カラーフィルタ24を通過させてから全反射させることが好ましい。というのも仮にカラーフィルタ24よりも下層で光の全反射を生じさせると、全反射によって迷光となった光は装置の内部を伝搬し、十分に減衰する前に装置の外部へ再出射してしまう可能性があるからである。これに対して、少なくともカラーフィルタ24を通過させてから光の全反射を生じさせるようにすれば、迷光を効果的に減衰させることができる。
【0057】
例えば、特定の副画素に含まれるカラーフィルタ24を透過して着色した光は、当該特定の画素に隣接する画素に含まれる異なる色のカラーフィルタ24に侵入した場合、着色した光がこのカラーフィルタにて吸収されるので消光する。またカラーフィルタ24に斜め方向に入射した光の透過距離は、垂直方法に入射して透過する場合の透過距離と比べて数倍以上になるためカラーフィルタ24を透過した後の光の減衰量が大きくなる。例えば、内部透過率70%のカラーフィルタにおいて、光の透過距離が例えば3.5倍(60°で入射した場合の入射距離と反射距離との合計)になるとカラーフィルタと透過した後の光の強度は29%に減衰する。
【0058】
以上より、光源30とマイクロレンズ11との間に設けられる複数の層、例えば、図2に示されるガスバリア層22、緩衝層23、カラーフィルタ24、低屈折率層25において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。そして本発明の第一の態様では、上記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差は、カラーフィルタ24(色変換部材)と低屈折率層25との間で最大にするのが特に好ましい。例えば、有機EL素子の光取り出し側において、上部電極から低屈折率層25に至るまでの層について、下記表2のように屈折率を設定するのが好ましい。
【0059】
【表2】
【0060】
[第二の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第二の実施形態について説明する。図5は、本発明の有機EL発光装置における第二の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第一の実施形態との相違点を中心に説明し、第一の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図5は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一の実施形態と同様の方法で形成される。
【0061】
本実施形態においては、第一の実施形態と比較して、ガスバリア層22及び緩衝層23を、層内において屈折率が段階的に変化する層となっている点で異なる。具体的には、光の出射方向に沿って屈折率が段階的に減少するように設定されている。これにより、上部電極からカラーフィルタ24に至るまでの層の屈折率を滑らかにすることができる。またこうすることでカラーフィルタ24より下層において生じ得る光の全反射の量を減らし、より多くの光をカラーフィルタ24まで導くことができる。尚、ここでいう屈折率を滑らかにするとは、隣接する層間の屈折率差を小さくすることをいう。
【0062】
本実施形態の具体例としては、下記表3のように屈折率が設定されている有機EL発光装置がある。
【0063】
【表3】
【0064】
本実施形態において、ガスバリア層22及び緩衝層23をそれぞれ成膜・形成する際には、P−CVD法等を採用することができる。ここでP−CVDによりガスバリア層22及び緩衝層23を成膜する場合は、ガス混合比を調整することで、層内の屈折率が連続的に変化するようにガスバリア層22及び緩衝層23を形成することが可能である。
【0065】
本実施形態の有機EL発光装置についても第一の実施形態と同様に光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で、光源から出力された光の光路のシミュレーションを行った。その結果、図3及び図4と同様の結果が得られた。即ち、カラーフィルタ24上に低屈折率層25を設けずにマイクロレンズ11を設けた場合では、発光画素から出力された光の一部が隣接する画素に対応して設けられるマイクロレンズへ侵入する様子が確認できた。一方、カラーフィルタ24上に低屈折率層25を設けた場合では、発光画素から隣接する画素のマイクロレンズ11に侵入する光線を半分以下に抑えられることを確認できた。
【0066】
さらに本実施形態では各層(特に、ガスバリア層22、緩衝層23)の屈折率を緩やかに変化するようにした。これにより、有機EL素子21(白色有機EL素子)から出力された光が、有機EL素子21とガスバリア層22との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面で全反射する光の量がいずれも減少する。従って、カラーフィルタ24により多くの光を侵入させることができる。また本実施形態においては、低屈折率層25で全反射される光(即ち、迷光)を、効果的に減衰することができ、迷光の再出射量をより抑えることができる。
【0067】
[第三の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第三の実施形態について説明する。図6は、本発明の有機EL発光装置における第三の実施形態を示す平面模式図である。また図7は、図6の有機EL表示装置のAB断面を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第一及び第二の実施形態との相違点を中心に説明し、第一又は第二の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一及び第二の実施形態と同様の方法で形成される。
【0068】
図6及び図7の有機EL発光装置4は、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)の外周に遮光膜40が形成されている。言い換えると、遮光膜40は、互いに隣接する副画素にそれぞれ設けられている2枚のカラーフィルタの境界部近傍においてこれらカラーフィルタに挟まれるように形成されている。
【0069】
このように、遮光膜40を形成することで、隣接する副画素への侵入する光や迷光をより効果的に減衰させることができる。但し、副画素のピッチが小さくなると、遮光膜を形成するプロセス精度等から、装置自体の開口率や視野角に影響が出る場合があるため、これらを考慮して遮光膜40の配置を決める必要がある。遮光膜40は、例えば、ブラックレジストをフォトリソプロセスによるパターニングによって形成することによって高精度に形成することが可能である。
【0070】
[第四の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第四の実施形態について説明する。図8は、本発明の有機EL発光装置における第四の実施形態を示す平面模式図である。尚、本実施形態においては、第一乃至第三の実施形態との相違点を中心に説明し、第一乃至第三の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図8は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21(白色有機EL素子)は、第一乃至第三の実施形態と同様の方法で形成される。
【0071】
図8の有機EL発光装置5は、図1及び図2の有機EL発光装置1と比較して、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)とマイクロレンズとの間に低屈折率層25が設けられていない。その代わり図8の有機EL発光装置5では、カラーフィルタ24の屈折率がマイクロレンズの屈折率よりも大きくなるように設定されている。このような簡易な構成によっても、本発明の作用効果を奏することができる。
【0072】
本実施形態において、スネル則で計算した入射層(カラーフィルタ24)とマイクロレンズ11との全反射角度の関係は、下記表4に示される通りである。
【0073】
【表4】
【0074】
ただしカラーフィルタ24の屈折率は、最大でも樹脂材料の屈折率程度までであり、およそ1.7程度である。そのためマイクロレンズ11の屈折率を小さくするならば、例えば、およそ1.40程度に設定する。ただしマイクロレンズ11の屈折率が低くなると、マイクロレンズ11自体の集光性能が低下することがある。そのため本実施形態においては、マイクロレンズ11の性能、製造コスト、製造プロセス等の制約を考慮しながらマイクロレンズ11の材料を決める必要がある。
【0075】
本実施形態の有機EL発光装置についても第一の実施形態と同様に光線追跡シミュレーション(商用名:ZEMAX)で、光源から出力された光の光路のシミュレーションを行った。
【0076】
図9は、図8の有機EL発光装置における光線追跡の計算結果を示す断面概略図である。ところで図9に示されるように、特定の副画素(発光副画素)に設けられている光源30から出力された光は大きく分けて下記(A)乃至(C)に示される三種類に分類される。尚、図9中の光源30は、図8の有機EL素子21に対応する。
(A)当該副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光31(以下、単に「光31」という場合がある。)
(B)当該副画素に隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズを経由して装置外部へ出射する出射光32(以下、単に「光32」という場合がある。)
(C)各層の界面(カラーフィルタ24と空気との界面、緩衝層23とカラーフィルタ24との界面、ガスバリア層22と緩衝層23との界面)で全反射され装置内部へ戻される出射光33(以下、単に「光33」という場合がある。)
尚、低屈折率層を設けていない有機EL発光装置では、図9に示されるように隣接する副画素に対応して設けられているマイクロレンズから光源30から出射された光が装置の外へ出射していくことがある(出射光32)。ここで本実施形態のように、カラーフィルタ24の屈折率をマイクロレンズ11の屈折率よりも大きくなるように設定する。こうすることで、図9に示されるように特定の副画素から当該副画素に隣接する画素のマイクロレンズに侵入する光32の光量を図3と比較して半分以下に抑えられることを確認できる。
【0077】
ここで互いに隣接する副画素間における各副画素に設けられる各光源30の設置間隔及び光源30からマイクロレンズ11までの距離を適宜調整する。そして特定の副画素に設けられる光源30から当該副画素に隣接する副画素へ侵入する光において、この光が当該隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズ11への入射するときの角度(入射角)を全反射角以上に設定する。そうすると、隣接する副画素に対応して設けられるマイクロレンズからの光の出射を略無にすることも可能である。尚、この場合では、画素ピッチ、ガスバリア層の膜厚、プロセス歩留まり等を考慮して設定する必要がある。
【0078】
また有機EL素子の光取り出し側の上に設けられている複数の部材において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。本実施形態では、光源30とマイクロレンズ11との間に設けられる層、例えば、図8に示されるガスバリア層22、緩衝層23、カラーフィルタ24、マイクロレンズ11において、各層の屈折率は光の出射方向に沿って小さくなるように設定するのが好ましい。そして本発明の第二の態様では、上記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差は、カラーフィルタ24(色変換部材)とマイクロレンズ11との間で最大にするのが特に好ましい。
【0079】
[第五の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第五の実施形態について説明する。図10は、本発明の有機EL発光装置における第五の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第四の実施形態との相違点を中心に説明し、第四の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図10は、図1と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される有機EL素子21は、第一の実施形態と同様の方法で形成される。
【0080】
本実施形態においては、第四の実施形態と比較して、ガスバリア層22及び緩衝層23を、層内において屈折率が段階的に変化する層となっている点で異なる。具体的には、光の出射方向に沿って屈折率が段階的に減少するように設定されている。これにより、上部電極からカラーフィルタ24に至るまでの層の屈折率を滑らかにすることができる。またこうすることでカラーフィルタ24より下層において生じ得る光の全反射の量を減らし、より多くの光をカラーフィルタ24まで導くことができる。尚、ここでいう屈折率を滑らかにするとは、隣接する層間の屈折率差を小さくすることをいう。
【0081】
本実施形態の具体例としては、下記表5のように屈折率が設定されている有機EL発光装置がある。
【0082】
【表5】
【0083】
本実施形態において、ガスバリア層22及び緩衝層23をそれぞれ成膜・形成する際には、P−CVD法等を採用することができる。ここでP−CVDによりガスバリア層22及び緩衝層23を成膜する場合は、ガス混合比を調整することで、層内の屈折率が連続的に変化するようにガスバリア層22及び緩衝層23を形成することが可能である。
【0084】
[第六の実施形態]
次に、図面を参照しながら本発明の第六の実施形態について説明する。図11は、本発明の有機EL発光装置における第六の実施形態を示す断面模式図である。尚、本実施形態においては、第四及び第五の実施形態との相違点を中心に説明し、第四又は第五の実施形態と同様のものについては同一の符号を付けるなりして説明を省略することがある。また図11は、図5と同様の平面構成の有機EL発光装置のAB断面を表す断面模式図である。さらに、本実施形態において、基板20上に形成される白色有機EL素子21は、第四及び第五の実施形態と同様の方法で形成される。
【0085】
図11の有機EL発光装置7は、各カラーフィルタ(24R、24G、24B)の外周に遮光膜40が形成されている。言い換えると、遮光膜40は、互いに隣接する画素にそれぞれ設けられている2枚のカラーフィルタに挟まれるように形成されている。
【0086】
このように、遮光膜40を形成することで、隣接する画素への侵入する光や迷光をより効果的に減衰させることができる。但し、副画素のピッチが小さくなると、遮光膜を形成するプロセス精度等から、開口率や視野角に影響が出る場合があるため、これらを考慮して遮光膜40の配置を決める必要がある。遮光膜40は、例えば、ブラックレジストをフォトリソプロセスによるパターニングによって形成することによって高精度に形成することが可能である。
【実施例】
【0087】
以下、実施例にて本発明の有機EL発光装置を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
図2に示される有機EL発光装置を、以下に示す方法で作製した。
【0089】
まず下地層がCrであり、表面がAl合金で形成されている下部電極を配設した回路基板(基板20)を、UV/オゾンにて洗浄処理を行った。尚、この回路基板上の画素領域には、反射膜であるAlSi膜と、Anode電極として機能するITO膜とが、この順で、フォトリソグラフィー技術により積層体として形成されている。また副画素領域(10R、10G、10B)のサイズは、それぞれ約4.2μ×約12.6μm程度である。さらに各副画素領域(10R、10G、10B)には、赤副画素2Rと、緑副画素2Gと、青副画素2Bと、のうちのいずれかの副画素が含まれており、これら三種類の副画素を1つずつ合わせることで1つの画素が構成されている。一方、本実施例において、最隣接画素間の距離は、図1のAB線上において約6μmである。
【0090】
次に、真空蒸着法により、有機化合物層を構成する正孔注入層、正孔輸送層、電子障壁層、Cyan発光層、Yellow発光層、正孔障壁層、電子輸送層及び電子注入層を、この順で形成した。そして電子注入層上に、スパッタリング法でIZOを成膜し上部電極を形成し有機EL素子21)白色有機EL素子)を作製した。
【0091】
次に、有機EL素子21が形成されている基板10を、大気中に解放せず、かつ露点状況を維持しながらPECVD装置に搬入した。次に、SiN(屈折率:1.85)を成膜してガスバリア層22を形成した。このときガスバリア層22の膜厚は2μmであった。次に、連続してSiON(屈折率:1.70)を成膜して緩衝層23を形成した。このとき緩衝層23の膜厚は0.2μmであった。
【0092】
次に、緩衝層23まで形成した基板20を大気中に解放した後、濡れ性及び平坦化性を上げるための薄膜(屈折率:1.6、不図示)を形成した。このとき当該薄膜の膜厚は0.2μmであった。尚、この薄膜は、次の工程で形成するカラーフィルタ(24R、24G、24B)の下地層として機能する。
【0093】
次に、各副画素領域(10R、10G、10B)に対応する位置に、フォトリソグラフィー技術により、カラーフィルタ(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した。このときカラーフィルタの膜厚は1μmであった。次に、カラーフィルタ(24R、24G、24B)の上に、屈折率が低い樹脂材料(屈折率1.35)を塗布成膜して低屈折率層25を形成した。このとき低屈折率層25の膜厚は0.2μmであった。
【0094】
次に、感光性樹脂(屈折率1.65)からなる薄膜を成膜した後、フォトリソグラフィー技術で露光・現像して、リフロー処理することで、複数のレンズ形状(マイクロレンズ11)を、各副画素に対応する位置に配置されるように作製した。このときマイクロレンズ11の形状は、直径5μmの半球形状の凸形状のレンズであった。以上により、有機EL発光装置を得た。
【0095】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、低屈折率層25を設けないで作製した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0096】
[実施例2]
図5に示される有機EL発光装置3を、以下に説明する方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1と同様の部分については説明を省略することがある。また本実施例において副画素領域(10R、10G、10B)のサイズは、それぞれ約5.3μm×約15.9μm程度である。さらに各副画素領域(10R、10G、10B)には、赤副画素2Rと、緑副画素2Gと、青副画素2Bと、のうちのいずれかの副画素が含まれており、これら三種類の副画素を1つずつ合わせることで1つの画素が構成されている。一方、本実施例において、最隣接画素間の距離は、図1のAB線上において約7.5μmである。
【0097】
本実施例では、実施例1において、ガスバリア層22及び緩衝層23の形成方法を変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。以下に、本実施例におけるガスバリア層22及び緩衝層23の形成方法を説明する。
【0098】
(ガスバリア層の形成方法)
PECVD装置を用いてガスバリア層22の成膜を行った。具体的には、ガスバリア層22を構成するSi及びNの各原料ガスの流量を調整して、膜中のSi/N比率が段階的に変化するように成膜した。これにより、屈折率が1.95から1.80まで徐々に変化するガスバリア層22を形成した。
【0099】
(緩衝層の形成方法)
PECVD装置を用いて緩衝層23の成膜を行った。具体的には、緩衝層23を構成するSi、N及びOの各原料ガスの流量を調整して、膜中のSi/N/Oの比率が段階的に変化するように成膜した。これにより、屈折率が1.75から1.60まで徐々に変化する緩衝層23を形成した。
【0100】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また実施例1と同様の比較評価を行ったところ、実施例1と同様に、約60°以上の高視野角から観察したときに偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認できた。尚、本実施例の有機EL発光装置は、隣接する画素へ侵入する光の大部分を全反射できる構成であるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例1よりも抑えることができた。
【0101】
[実施例3]
図7に示される有機EL発光装置4を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例2との相違点を中心に説明し、実施例2と同様の部分については説明を省略することがある。
【0102】
本実施例においては、実施例2において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成する前に、フォトリソプロセスにより、副画素領域10の境界部の近傍を囲むようにブラックレジストをパターニング形成した。これを除いては、実施例2と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0103】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また実施例1と同様の比較評価を行ったところ、実施例1と同様に、約60°以上の高視野角から観察したときに偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認できた。尚、本実施例では、遮光膜40にて隣接する画素への侵入する光や迷光を遮断することができるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例1よりも抑えることができた。
【0104】
[実施例4]
図8に示される有機EL発光装置5を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例1との相違点を中心に説明し、実施例1と同様の部分については説明を省略することがある。
【0105】
本実施例においては、実施例1において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例1と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0106】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0107】
[実施例5]
図10に示される有機EL発光装置6を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例2との相違点を中心に説明し、実施例2と同様の部分については説明を省略することがある。
【0108】
本実施例においては、実施例2において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)をそれぞれ形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例2と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0109】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。
【0110】
[実施例6]
図11に示される有機EL発光装置7を、以下に示す方法により作製した。尚、以下の説明に当たっては、実施例3との相違点を中心に説明し、実施例3と同様の部分については説明を省略することがある。
【0111】
本実施例においては、実施例3において、カラーフィルタ24(24R、24G、24B)それぞれを形成した後、低屈折率層25の形成を省略してマイクロレンズ11をカラーフィルタ24上に形成した。またカラーフィルタ24の屈折率を1.65に設定し、マイクロレンズ11の屈折率を1.45に設定した。これらを除いては、実施例3と同様の方法により、有機EL発光装置を作製した。
【0112】
以上のようにして作製した有機EL発光装置について、駆動回路を通じ給電することで点灯させた。また本実施例の効果を確認するために、カラーフィルタ24及びマイクロレンズの屈折率をそれぞれ1.55、1.65に設定した有機EL発光装置と性能を比較した。その結果、本実施例の有機EL発光装置は、特に、約60°以上の高視野角から観察したときに、偽色、漏れ光の発生が抑えられていることが確認された。尚、本実施例では、遮光膜40にて隣接する画素への侵入する光や迷光を遮断することができるため、高角度側での偽色、漏れ光の発生を実施例4や実施例5よりも抑えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、白色発光する白色有機EL素子と、マイクロレンズと、を備える有機EL発光装置において、隣接する画素との混色防止のための技術として利用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1(3,4,5,6,7):有機EL発光装置、2R(2G、2B):画素、10:副画素領域、11:マイクロレンズ、20:基板、21:有機EL素子(白色有機EL素子)、22:ガスバリア層、23:緩衝層、24(24R、24G、24B):カラーフィルタ、25:低屈折率層、30:光源、31(32,33):出射光、40:遮光膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記低屈折率層の屈折率が、前記色変換部材及び前記マイクロレンズの屈折率よりも小さいことを特徴とする、有機EL発光装置。
【請求項2】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、
前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
前記低屈折率層が、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、シリカエアロゲル又はフッ素樹脂からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記マイクロレンズとの間に設けられている複数の層が、光の出射方向に沿って屈折率の小さい順に設けられており、
前記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差が、前記色変換部材と前記低屈折率層との間で最も大きいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL発光装置。
【請求項5】
有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記色変換部材の屈折率が前記マイクロレンズの屈折率よりも大きいことを特徴とする、有機EL発光装置。
【請求項6】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、
前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層であることを特徴とする、請求項5に記載の有機EL発光装置。
【請求項7】
前記有機EL素子の光取り出し側の上に設けられている複数の部材が、光の出射方向に沿って屈折率の小さい順に設けられており、
前記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差が、前記色変換部材と前記マイクロレンズとの間で最も大きいことを特徴とする、請求項5又は6に記載の有機EL発光装置。
【請求項8】
前記色変換部材の外周に遮光膜がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL発光装置。
【請求項1】
有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、低屈折率層と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記低屈折率層の屈折率が、前記色変換部材及び前記マイクロレンズの屈折率よりも小さいことを特徴とする、有機EL発光装置。
【請求項2】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、
前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
前記低屈折率層が、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、シリカエアロゲル又はフッ素樹脂からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記マイクロレンズとの間に設けられている複数の層が、光の出射方向に沿って屈折率の小さい順に設けられており、
前記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差が、前記色変換部材と前記低屈折率層との間で最も大きいことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL発光装置。
【請求項5】
有機EL素子の光取り出し側に、色変換部材と、マイクロレンズと、をこの順に設け、
前記色変換部材の屈折率が前記マイクロレンズの屈折率よりも大きいことを特徴とする、有機EL発光装置。
【請求項6】
前記有機EL素子の光取り出し側と前記色変換部材との間に、さらにガスバリア層と、緩衝層と、を備え、
前記ガスバリア層及び前記緩衝層が、層内において屈折率が段階的に変化する層であることを特徴とする、請求項5に記載の有機EL発光装置。
【請求項7】
前記有機EL素子の光取り出し側の上に設けられている複数の部材が、光の出射方向に沿って屈折率の小さい順に設けられており、
前記複数の層において、互いに隣接する層間の屈折率差が、前記色変換部材と前記マイクロレンズとの間で最も大きいことを特徴とする、請求項5又は6に記載の有機EL発光装置。
【請求項8】
前記色変換部材の外周に遮光膜がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−58447(P2013−58447A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197281(P2011−197281)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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