説明

有機EL素子および有機EL照明装置

【課題】スペクトルの角度依存性を軽減することが可能な有機EL素子および有機EL照明装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子10は、透明基材20と、透明基材20上に設けられ、陽極31、有機層32および陰極33を含む有機EL層30とを備えている。透明基材20のうち、有機EL層側の面(光進入面21)に波形パターン23が形成されている。これにより、有機EL層30の有機層32からの発光光が、拡散光として透明基材20の光放出面22に向かうようにし、有機EL素子10におけるスペクトルの角度依存性を軽減している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子およびこのような有機EL素子を備えた有機EL照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、EL素子は、対向する2つの電極から注入された正孔および電子が発光層内で結合し、そのエネルギーで発光層中の蛍光物質を励起し、蛍光物質に応じた色の発光を行うものであり、自発光の面状表示素子として注目されている。その中でも、有機物質を発光材料として用いた有機EL素子は、有機化合物を発光材料とする自己発光型素子であり、高速度での発光が可能であるため、動画の表示に好適である。
【0003】
このような優れた特性を有していることから、有機EL素子は、携帯電話や車載用ディスプレイとして、日常生活において普及しつつある。さらに、近年では、上記のような薄型面発光という特長を活かして、次世代の照明としても注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−5277号公報
【特許文献2】特開2008−517431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、有機EL素子は、平坦な電極基板の上に素子を形成することにより作製されるのが一般的である。しかしながら、有機EL素子を、通常発光面積が大きい照明の用途に用いた場合、発光スペクトルが角度によって変化してしまうという問題がある。発光スペクトルが角度によって変化した場合、見る角度によって照明装置からの光の色が変化してしまい、かつ照明装置からの光が暗くなってしまう。
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、スペクトルの角度依存性を軽減することが可能な有機EL素子および有機EL照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明基材と、透明基材上に設けられ、陽極、有機層および陰極を含む有機EL層とを備え、透明基材のうち、有機EL層側の面に波形パターンを形成し、有機EL層からの発光光が拡散光として透明基材の光放出面に向かうようにしたことを特徴とする有機EL素子である。
【0008】
本発明は、透明基材の光放出面側に、透明基材からの光を拡散する拡散板が設けられていることを特徴とする有機EL素子である。
【0009】
本発明は、透明基材内に、有機EL層からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子が分散されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0010】
本発明は、透明基材は、平板状の基材本体と、基材本体上に形成され、波形パターンを有する拡散層とを有することを特徴とする有機EL素子である。
【0011】
本発明は、透明基材のうち拡散層に、有機EL層からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子が分散されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0012】
本発明は、基材本体と拡散層とは、互いに異なる材料からなることを特徴とする有機EL素子である。
【0013】
本発明は、透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の同心円から構成されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0014】
本発明は、透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の多角形から構成されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0015】
本発明は、透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の矩形から構成されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0016】
本発明は、透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の平行線から構成されていることを特徴とする有機EL素子である。
【0017】
本発明は、波形パターンのピッチは、2.0mm〜100mmとなっていることを特徴とする有機EL素子である。
【0018】
本発明は、波形パターンの高さは、0.05mm〜2.0mmとなっていることを特徴とする有機EL素子である。
【0019】
本発明は、有機EL素子と、有機EL素子を覆うキャップガラスとを備えたことを特徴とする有機EL照明装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、透明基材のうち、有機EL層側の面に波形パターンが形成されているので、有機層からの発光光は、透明基材に向かって光放出面に対して予め所定の角度をもって発光される。したがって、有機層からの発光光が拡散光として透明基材の光放出面に向かい、光が様々な角度をもって光放出面から放出されるので、スペクトルの角度依存性を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態による有機EL素子を示す断面図。
【図2】本発明の一実施の形態による有機EL素子のうち透明基材を示す平面図。
【図3】本発明の一実施の形態による有機EL照明装置を示す断面図。
【図4】本発明の一実施の形態による有機EL素子の製造方法を示す断面図。
【図5】本発明の一実施の形態による有機EL素子の作用を示す断面図。
【図6】本発明の変形例による有機EL素子を示す断面図。
【図7】本発明の変形例による有機EL素子を示す断面図。
【図8】本発明の変形例による有機EL素子を示す断面図。
【図9】本発明の変形例による有機EL素子を示す断面図。
【図10】本発明の変形例による有機EL素子を示す断面図。
【図11】透明基材の変形例を示す平面図。
【図12】透明基材の変形例を示す平面図。
【図13】透明基材の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態について、図1乃至図13を参照して説明する。
【0023】
有機EL素子および有機EL照明装置の構成
まず、図1および図2により、本発明の一実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態による有機EL素子を示す断面図であり、図2は、本実施の形態による有機EL素子のうち透明基材を示す平面図である。
【0024】
図1に示すように、有機EL素子10は、透明基材20と、透明基材20上に設けられた有機EL層30とを備えている。このうち有機EL層30は、陽極31、有機層32および陰極33を含んでおり、これら陽極31、有機層32および陰極33は、透明基材20側からこの順番に積層されている。
【0025】
また、透明基材20は、有機EL層30の陽極31側に位置する面(光進入面21)と、光進入面21の反対側に位置し、外方に光を放出する面である光放出面22とを有している。本実施の形態において、透明基材20の光進入面21には波形パターン23が形成されており、有機EL層30からの発光光が、拡散光として透明基材20の光放出面22に向かうようになっている。なお、波形パターン23は、必ずしも光進入面21の全域に設ける必要はなく、その一部のみに設けても良い。
【0026】
図1に示すように、透明基材20の波形パターン23は、その断面で見た場合、水平方向に沿って連続的に配置された複数の波部24を有している。これら複数の波部24は、それぞれ曲線形状からなっている。
【0027】
この場合、波形パターン23のピッチ(波長)Lは、2.0mm〜100mmとすることが好ましく、2.0mm〜50mmとすることが更に好ましい。波形パターン23のピッチLを2.0mm未満とした場合、光の干渉の影響が強くなり、波形パターン23のピッチLが100mmを超える場合、発光スペクトルの角度依存の改善効果が小さくなる。
【0028】
また、波形パターン23の高さ(波高)Hは、0.05mm〜2.0mmとすることが好ましく、0.1mm〜1.0mmとすることが更に好ましい。波形パターン23の高さHを0.05mm未満とした場合、発光スペクトルの角度依存の改善効果が小さくなり、波形パターン23の高さHが2.0mmを超える場合、光の干渉の影響が強くなる。
【0029】
図2に示すように、透明基材20の波形パターン23は、平面から見て多数の同心円から構成されている。この場合、波形パターン23を構成する多数の同心円は、中心から外周に向けて同一の間隔でその径が増加するようになっている。しかしながら、これに限らず、中心から外周に向けて異なる間隔でその径が増加するようになっていても良い。また、透明基材20の外形は、平面矩形形状からなっているが、これに限らず、後述する有機EL照明装置40の用途に合わせて平面円形状または平面多角形形状等としても良い。
【0030】
また、図1に示すように、有機EL層30を構成する陽極31、有機層32および陰極33は、それぞれ透明基材20の波形パターン23に沿って形成されており、断面から見た場合、各々波形パターン23に対応する波形状を有している。
【0031】
以下、このような有機EL素子10を構成する各構成部材について、順次説明する。
【0032】
透明基材20としては、透明性の高い材料であれば特に限定されるものではなく、ガラス等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料を用いることができる。透明樹脂としては、具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニル(PFV)、ポリアクリレート(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、非晶質ポリオレフィン、またはフッ素系樹脂等が挙げられる。透明基材20の厚みは、例えば0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0033】
陽極31は、透明または半透明である必要がある。また、陽極31としては、正孔が注入されやすいように仕事関数の大きい導電性材料からなることが好ましい。陽極31の材料としては、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛等が挙げられる。陽極31はその透明性を向上させ、あるいは抵抗率を低下させる目的で、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の方法により形成されても良い。陽極31の厚みは、例えば100nm〜200nm程度とすることができる。
【0034】
有機層32は、少なくとも発光層を含んでおり、このほか、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層のうち1つまたは複数の層を含んでいても良い。有機層32の具体的な層構成としては、発光層のみ、正孔注入層/発光層、正孔注入層/発光層/電子注入層、正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層、正孔注入層/発光層/電子輸送層などを例示することができる。
【0035】
有機層32に含まれる発光層は、主として蛍光または燐光を発光する有機化合物と、これを補助するドーパントから通常構成される。このような有機化合物としては低分子化合物のものであっても高分子化合物のものであってもよい。発光層に好適に使用される有機化合物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等が挙げられる。
【0036】
また、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば、アリールアミン類、フタロシアニン類、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンおよびこれらの誘導体等の導電性高分子などを挙げることができる。
【0037】
正孔輸送層に用いられる材料としては、例えば、アリールアミン類;フタロシアニン類;酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物;アモルファスカーボン;ポリアニリン、ポリフェニレンビニレンおよびこれらの誘導体等の導電性高分子;などを挙げることができる。
【0038】
電子輸送層に用いられる材料としては、例えば、オキサジアゾール類、トリアゾール類、バソキュプロイン、バソフェナントロリン等のフェナントロリン類、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等のアルミキノリノール錯体などが挙げられる。
【0039】
電子注入層に用いられる材料としては、例えば、アルミリチウム合金、リチウム、セシウム等のアルカリ金属やその合金;フッ化リチウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属のハロゲン化物;ストロンチウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム等の酸化物などが挙げられる。
【0040】
なお、有機層32全体の厚みとしては、その機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、例えば100nm〜500nm程度とすることができる。
【0041】
陰極33としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さな導電性材料であることが好ましい。また、複数の材料を混合させてもよい。好ましい陰極33の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金(Al−Li、Al―Ca、Al―Mg等)、マグネシウム合金(Mg−Ag等)、金属カルシウム、および仕事関数の小さい金属等が挙げられる。陰極33の厚みは、例えば100nm〜500nm程度とすることができる。
【0042】
さらに本実施の形態において、図3に示すように、有機EL素子10を備えた有機EL照明装置40も提供する。図3は、本発明の一実施の形態による有機EL照明装置を示す断面図である。図3において、有機EL照明装置40は、有機EL素子10と、有機EL素子10の透明基材20に連結され、有機EL素子10を覆うキャップガラス41とを備えている。なお、図3において、図1および図2と同一部分には同一の符号を付してある。
【0043】
有機EL素子の製造方法
次に、図1に示す有機EL素子10の製造方法について、図4(a)−(e)を用いて説明する。
【0044】
まず図4(a)に示すように、光進入面21に波形パターン23が形成された透明基材20を準備する。なお、波形パターン23が形成された透明基材20を作製する方法としては、透明基材20がガラスからなる場合、フォトエッチングおよび研磨等を挙げることができる。また透明基材20が透明樹脂からなる場合、フォトリソ、研磨、およびプレス加工(型押し)を挙げることができる。
【0045】
次いで、この透明基材20上に、透明基材20の波形パターン23に沿って、ITO等の導電性材料からなる陽極31を波形状に形成する(図4(b))。陽極31の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0046】
続いて、透明基材20に形成された陽極31上に有機層32を形成する(図4(c))。このとき有機層32は、陽極31の形状に沿って波形状に形成される。有機層32が正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層のうちのいくつかの層を含む場合、これら各層を順次陽極31上に形成することにより、有機層32を作製する。有機層32を構成する各層の形成方法としては、真空蒸着法等の蒸着法のほか、ノズルから塗布液を塗布するノズル塗布法、インクジェット等の印刷法を挙げることができる。
【0047】
次に、有機層32上に、アルミニウム等の導電性材料からなる陰極33を形成する(図4(d))。このとき陰極33は、有機層32の形状に沿って波形状に形成される。陰極33の形成方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0048】
このようにして、図1に示す有機EL素子10を得ることができる(図4(e))。
【0049】
本実施の形態の作用効果
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について、図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態による有機EL素子の作用を示す断面図である。
【0050】
図5に示すように、本実施の形態による有機EL素子10を電源15に接続し、陽極31と陰極33との間に電圧を加え、それぞれ正孔と電子とを注入する。この場合、有機層32内で正孔と電子とが再結合し、有機層32が発光する。有機層32からの発光光は、陽極31および透明基材20内部を通過して、光放出面22から放出される。
【0051】
本実施の形態においては、上述したように透明基材20の光進入面21には波形パターン23が形成され、有機層32は波形状を有している。このため、有機層32からの発光光は、透明基材20に向かって光放出面22に対して予め所定角度をもって発光される。この有機層32からの発光光は、光放出面22に垂直な方向のみならず、光放出面22に対して様々な角度をもって進行する(図5の矢印参照)。このようにして、有機層32からの発光光は、拡散光として透明基材20内部を通過して光放出面22に向かい、光放出面22から様々な角度をもって放出される。この結果、光放出面22からの光が拡散し、有機EL素子10におけるスペクトルの角度依存性を軽減することができる。
【0052】
以上説明したように本実施の形態によれば、透明基材20のうち、有機EL層30側の面に波形パターン23を形成し、有機層32からの発光光が拡散光として透明基材20の光放出面22に向かうようにしたので、スペクトルの角度依存性を軽減することができる。これにより、有機EL素子10の視野角を広げ、見る方向によって有機EL素子10からの光の色が変化してしまうことを防止することができる。同時に、有機EL素子10からの光が暗くなることを防止することができる。
【0053】
また本実施の形態によれば、透明基材20上で、有機層32がうねるように形成されているので、透明基材20の光放出面22における単位面積あたりの光の明るさを増大することができる。
【0054】
有機EL素子の変形例
次に、図6乃至図10により、本実施の形態による有機EL素子の各種変形例について説明する。図6乃至図10において、図1乃至図5に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
図6および図7は、本実施の形態の一変形例による有機EL素子10Aを示している。図6は、有機EL素子10Aの断面図であり、図7は、有機EL素子10Aの作用を示す断面図である。
【0056】
図6および図7に示す有機EL素子10Aにおいて、透明基材20の光放出面22側に、透明基材20の光放出面22からの光を拡散する拡散板17が設けられている。このような拡散板17としては、例えば、凹凸処理が施された高分子フィルムや、拡散剤を含有した高分子フィルム、あるいはガラス内に光拡散物質を分散させたものが用いられる。このように構成した場合、拡散板17により透明基材20の光放出面22からの光を更に様々な方向に拡散することができ(図7の矢印参照)、スペクトルの角度依存性をより一層軽減することができる。
【0057】
図8は、他の変形例による有機EL素子10Bを示している。図8は、有機EL素子10Bの断面図である。
【0058】
図8に示す有機EL素子10Bにおいて、透明基材20内には、有機EL層30の有機層32からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子25が分散されている。このような散乱粒子25としては、シリカゲルを挙げることができる。また、散乱粒子25の径は、例えば0.8μm〜3.0μm程度とすることができる。このように構成した場合、散乱粒子25によって透明基材20の光放出面22からの光を更に拡散することができ、スペクトルの角度依存性をより一層軽減することができる。
【0059】
図9は、他の変形例による有機EL素子10Cを示している。図9は、有機EL素子10Cの断面図である。
【0060】
図9に示す有機EL素子10Cにおいて、透明基材20は、平板状の基材本体26と、基材本体26上に形成され、波形パターン23を有する拡散層27とを有している。この場合、拡散層27は、基材本体26に対して例えば接着剤等を用いることにより固定されている。なお、基材本体26と拡散層27とは、互いに異なる材料からなっていてもよい。例えば、基材本体26をガラスから構成するとともに、拡散層27をドライフィルム等の合成樹脂から構成しても良い。このように構成した場合、上述した実施の形態による効果に加え、透明基材20のうち波形パターン23が形成される部分(拡散層27)のみを別材料(例えば合成樹脂)から構成することができるので、波形パターン23を作製する作業が容易となり、有機EL素子10Cの製造コストを低減することができる。
【0061】
図10は、さらに他の変形例による有機EL素子10Dを示している。図10は、有機EL素子10Dの断面図である。
【0062】
図10に示す有機EL素子10Dにおいて、図9に示す有機EL素子10Cと同様、透明基材20は、平板状の基材本体26と、基材本体26上に形成され、波形パターン23を有する拡散層27とを有している。この場合、透明基材20のうち、拡散層27のみに、有機EL層30の有機層32からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子25が分散されている。この散乱粒子25としては、上述した図8に示すものと同様のものを用いることができる。このように構成した場合、有機EL素子10Dの製造コストを低減できるとともに、散乱粒子25によって透明基材20の光放出面22からの光を更に拡散することができ、スペクトルの角度依存性をより一層軽減することができる。
【0063】
なお、図8乃至図10に示す各変形例において、図6および図7に示す構成と同様に、透明基材20の光放出面22側に拡散板17を設けても良い。
【0064】
透明基材の変形例
次に、図11乃至図13により、透明基材の各種変形例について説明する。すなわち、上述した図2に示す実施の形態において、透明基材20の波形パターン23は、平面から見て多数の同心円から構成されている。しかしながら、これに限らず、波形パターン23の形状として、図11乃至図13に示す各種形状を採用することもできる。
【0065】
図11に示す透明基材20Aにおいて、波形パターン23は、平面から見て、互いに大きさの異なる多数の正六角形から構成されている。また、図12に示す透明基材20Bにおいて、波形パターン23は、平面から見て、互いに大きさの異なる多数の矩形から構成されている。なお、これらの例に限らず、波形パターン23は、多数の多角形(例えば三角形、五角形等)から構成されていても良い。
【0066】
また、図13に示す透明基材20Cにおいて、波形パターン23は、平面から見て多数の平行線から構成されている。この場合、平行線の間隔は均等であっても良く、中央から外側に向けて異なるようにしても良い。また、図13において、多数の平行線は透明基材20Cの一辺に平行に配置されているが、これに限らず、透明基材20Cの一辺に平行にしなくても良い。
【0067】
なお、図11乃至図13に示す透明基材の変形例については、上述した図1乃至図10に示す全ての実施の形態や変形例に対して適用することができる。
【実施例】
【0068】
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0069】
(実施例)
図1に示す構成からなる、有機EL素子10(実施例)を作製した。この場合、透明基材20はガラスからなり、その波形パターン23のピッチLは10.0mm(一定)とした。また、波形パターン23の高さHは0.4mmとした。さらに、透明基材20の厚みは1.0mmであった。一方、有機EL層30は、ITOからなる陽極31と、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および電子注入層を含む有機層32と、アルミニウムからなる陰極33とから構成した。この有機EL層30全体の厚みは、400nmであった。
【0070】
この有機EL素子10(実施例)を電源15に接続し、発光させた際のスペクトルの角度依存性を測定した。このとき、有機EL素子10の輝度が1000cd/mとなるようにした。スペクトルの角度依存性を測定する際、具体的には、発光面の垂直方向に対して0°〜80°の間で分光放射計SR−3(トプコン製)を用いて色度を測定し、それぞれの角度ごとに色度の変化を確認した。この結果を表1に示す。
【0071】
(比較例)
透明基材が平坦な基板からなり、波形パターンを有していないこと、以外は、上述した実施例と同様にして、有機EL素子(比較例)を作製した。この有機EL素子(比較例)を電源に接続し、上述した実施例と同様にスペクトルの角度依存性を測定した。この結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
この結果、実施例による有機EL素子10は、比較例による有機EL素子と比べて、いずれの角度においても色度に変化が見られず、明らかにスペクトルの角度依存性が軽減していることが分かった。
【符号の説明】
【0074】
10 有機EL素子
15 電源
17 拡散板
20 透明基材
21 光進入面
22 光放出面
23 波形パターン
24 波部
25 散乱粒子
26 基材本体
27 拡散層
30 有機EL層
31 陽極
32 有機層
33 陰極
40 有機EL照明装置
41 キャップガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
透明基材上に設けられ、陽極、有機層および陰極を含む有機EL層とを備え、
透明基材のうち、有機EL層側の面に波形パターンを形成し、有機EL層からの発光光が拡散光として透明基材の光放出面に向かうようにしたことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
透明基材の光放出面側に、透明基材からの光を拡散する拡散板が設けられていることを特徴とする請求項1記載の有機EL素子。
【請求項3】
透明基材内に、有機EL層からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子が分散されていることを特徴とする請求項1または2記載の有機EL素子。
【請求項4】
透明基材は、平板状の基材本体と、基材本体上に形成され、波形パターンを有する拡散層とを有することを特徴とする請求項1または2記載の有機EL素子。
【請求項5】
透明基材のうち拡散層に、有機EL層からの発光光を拡散させる多数の散乱粒子が分散されていることを特徴とする請求項4記載の有機EL素子。
【請求項6】
基材本体と拡散層とは、互いに異なる材料からなることを特徴とする請求項4または5記載の有機EL素子。
【請求項7】
透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の同心円から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の有機EL素子。
【請求項8】
透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の多角形から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の有機EL素子。
【請求項9】
透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の矩形から構成されていることを特徴とする請求項8記載の有機EL素子。
【請求項10】
透明基材の波形パターンは、平面から見て多数の平行線から構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項記載の有機EL素子。
【請求項11】
波形パターンのピッチは、2.0mm〜100mmとなっていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項記載の有機EL素子。
【請求項12】
波形パターンの高さは、0.05mm〜2.0mmとなっていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項記載の有機EL素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項記載の有機EL素子と、
有機EL素子を覆うキャップガラスとを備えたことを特徴とする有機EL照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−84391(P2012−84391A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229774(P2010−229774)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】