説明

有機EL素子及びこれの製造方法

【課題】駆動電圧を低下でき、また、効率を向上できる有機EL素子及びこれの製造方法を提供する。
【解決手段】複数の発光層を含む有機EL素子において、複数の発光層の間に無機酸化物層を少なくとも1層以上挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL素子(Organic Electroluminescent Device、またはOrganic Light Emitting Diode、以下OLED)に関するものであって、より詳しくは複数の発光層の間に少なくとも1層以上の無機酸化物層(inorganic interlayer)を挿入することによって駆動電圧を低下させ、効率を向上させることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
OLEDは、陰極と陽極との間に蛍光またはりん光発光層が含まれた素子に電流を流すと、電子と正孔が発光層で結合しながら自ら発光する現象を利用した自発光型素子であって、その構造が単純であり、製作工程が簡単ながらも、高画質及び光視野角の実現が可能である。また、動画を完璧に具現することができ、高色純度の実現が可能であり、低消費電力、低電圧駆動で携帯用電子機器に適合な特徴を持っている。
【0003】
前記OLEDは現在素子の寿命と関係のある効率向上及び駆動電圧を低下させるために2つの電極の間に発光層のみを使わず多層構造を有しているが、例えば、正孔(Hole)注入及び伝達層と電子注入及び伝達層、正孔阻止層などのような多層構造を有することが一般的である。OLEDは陰極及び陽極からそれぞれ注入された電子と正孔が発光層で再結合して励起子(Exciton)を形成し、この励起子がエネルギーを失いながら発生する光を利用する。前記素子において有機物各層の厚さは普通100nm前後であり、10V未満の低い電圧下で高輝度発光が可能であり、蛍光或いはりん光の自発光を利用するため入力信号に対し速い応答速度を得ることができる。
【0004】
OLEDを低い駆動電圧で作動させるためには、電極と有機物との間のエネルギー障壁(Energy Barrier)を低下させなければならず、発光効率を増加させるためには印加された電圧で多くの電子と正孔が同じだけ注入されるほどよく、これらの再結合の確率も増加させなければならない。有機物の場合、高い電圧が加えられれば高いエネルギーのため弱い分子構造を有する有機発光層が損傷して素子特性が低下し寿命も低下する。したがって、低い電圧で十分な数の正孔と電子の注入を可能にすることが非常に重要である。
【0005】
一般的に、発光層に使われる有機物の場合、正孔によって劣化する特性があり、このような現象を防止するために正孔阻止層及び/または電子阻止層を挿入することにより解決している。例えば、正孔伝達層と発光層との間に3‐フェニルインドリル基を含んだ有機化合物からなる層を備えたOLEDが開示されており(特許文献1参照)、発光層と正孔阻止層との間にSe、Te、ZnSeなどの無機物層を導入した内容が開示されており(特許文献2参照)、正孔注入層と正孔伝達層との間にLiF、NaFなどの無機物層を挿入した内容が開示されているが(特許文献3参照)、まだ発光層の内部に無機酸化物層を導入した例は探しにくい。なお、無機物の中間層を使った従来のOLED構造では満足できる効率及び寿命を得ることに限界があった。
【0006】
したがって、本発明はこのようなOLEDの多くの問題点を解決しようといつも研究した結果、成功した結果を導出するようになった。即ち、本発明は無機酸化物層を複数の発光層の間に少なくとも1層以上形成する簡単な方法であって、OLEDの駆動電圧を大きく低下させ、効率を向上させることができる方法を提供しており、特に、既存の蒸着工程のみならず大面積化に適した溶液工程(solution process)でも容易にこれを適用することができるという特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許 第6670053号
【特許文献2】韓国特許 第2006‐0012120号
【特許文献3】韓国特許 第2006‐0078358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、前述した従来のOLED素子の特性改善のために複数の発光層の間に無機酸化物層を1層以上形成することによって陽極及び陰極からそれぞれ注入される正孔と電子が発光層内で再結合する確率を増加させ、結局OLED素子の駆動電圧を低下させて効率を向上させることにより窮極的に長寿命が期待されるOLED構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記本発明の課題を成すための手段で、OLED素子を製作することにおいて、発光層の間に無機酸化物層を形成して製造する方法としては、本発明の特徴に付合する場合別に制限する必要はないが、例えば、スピン(spin)コーティング、ロール(roll)コーティング、スプレーコーティング、ディップ(dip)コーティング、フロー(flow)コーティング、ドクターブレード(doctor blade)とディスペンシング(dispensing)、インクジェットプリンティング、オフセットプリンティング、スクリーンプリンティング、パッド(pad)プリンティング、グラビアプリンティング、フレキソ(flexography)プリンティング、ステンシルプリンティング、インプリンティング(imprinting)、ゼログラフィー(xerography)、リソグラフィー(lithography)、熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着、スパッタリング方法などを選択して使用することが可能である。
【0010】
本発明のOLED素子構造を構成する方法は、ただ複数の発光層の間に無機酸化物層を少なくとも1層以上形成すること以外には既存の素子構成方法をそのまま使っても良い。
【0011】
以下、本発明の一例を添付した図面を参照しながら、より詳しく説明すると次のようである。
【0012】
即ち、本発明によるOLEDは図1のようにガラス基板またはプラスチック基板の上にITO陽電極(10)をコーティングしてその上に正孔注入層(20)、発光層1(31)、無機酸化物層(41)、発光層2(32)、正孔阻止層(50)、陰電極(60)を順次に層を作って素子を製作した。一方、発光層1(31)と発光層2(32)に使われる発光物質は、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)、黄色(Yellow)、白色(White)など別に制限する必要がなくて、互いに同じかまたは違う色とすることができる。例えば、発光層1が青色発光層である場合、発光層2は青色であってもよく緑色、及び/または赤色の発光層であってもよく、その反対の場合も該当する。発光形態も構わないが、例えば、蛍光またはりん光をそれぞれまたは混合した形態で発光層1及び/または発光層2に使ってもよく、また色相にかかわらずホストとドーパントを使う場合これを分離して発光層1及び/または発光層2で使うことができる。また、必要によっては図2のように2層以上の無機酸化物層(42、43)と1種類以上の発光物質を使ってOLED素子を製作することができ、このような発光層内に無機酸化物層を複数で形成させる構成は図2のように2層だけで限定されず多様な形態で採択することができる。
【0013】
本発明の特徴は、図1及び図2に関連して説明する工程で複数の発光層の間に無機酸化物層を形成することであるが、これに限定されない。本発明の無機酸化物は、適切な条件で発光有機物の表面で反応して網構造(net structure)を形成するものと考えられる。無機酸化物が有機物の上でよく整えられた網構造を形成すれば、その特性も最大化される。無機酸化物層は電子と正孔の一定の移動速度を維持する役割を有しており、そのために再結合の領域で電子と正孔の移動速度が遅くなるため電子と正孔の密度が高くなり、再結合の確率を増加させると解釈することができる。
【0014】
本発明によるOLEDの無機酸化物層の材料は、例えば、 Zr、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、As、Se、Eu、Sm、Th、Ac、Ce若しくはPrの酸化物、または前記元素の中の少なくとも2つからなる複合酸化物から選択される1種以上であり、具体的な例として ZrO、LiO、NaO、RbO、BeO、CaO、SrO、BaO、SiO、TiO、Ti、TiO、V、V、V、Mn、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、ZnO、ZnOMgO、SnO、In、CrO、CuO、CuO、HfO、Fe、CoO、Co、NiO、NiO、CeO、Y、NbO、NbO、Nb、MoO、MoO、RuO、Rh、RhO、PdO、AgO、AgO、CdO、Ta、WO、WO、ReO、OsO、IrO、PtO、Au、HgO、Ga、GeO、SnO、PbO、PbO、PbO、Sb、Sb、Sb、Bi、As、As、SeO、またはEuのような単元素酸化物、または ZrSiO、RbTiO、RbSeO、FeLiO、FeMoO、FeOTi、FeZn、FeTi、Fe12、Fe1219Sr、NiFeO、NbPb、NbOZn、MoOPb、MoOSr、MoOZn、AgOV、AgORe、AgCrO、AgO、AgW、CdOZr、GaGd12、TIreO、PbSeO、PbTiO、PbZrO、BiTiまたはCe12のような複合酸化物も本発明の特徴に付合する限り使うことができるし、本発明による無機酸化物は前記単元素酸化物及び複合酸化物の混合物であることができる。また、本発明の好ましい実施例において前記無機酸化物はZr、Si、Al、Ti、またはZnの酸化物、または前記元素の中で2以上の複合酸化物から選択される1種以上であることができる。
【0015】
また、本発明による無機酸化物層の材料は形状や状態、大きさ、模様などを制限する必要はない。即ち、本発明に付合する場合、溶液、ゾール、コロイド、または固体粒子状態などいずれの形態も構わなくて熱、酸、塩基処理などのように物理的または化学的処理の後、最終的に前記無機酸化物層を形成させることができる前駆体の場合も使用可能である。
【0016】
前記無機酸化物層を溶液工程で形成する場合には発光有機物層が損傷されない溶剤を選択して使うことが好ましい。例を挙げて説明すれば、発光層形成溶液に使われる溶剤が有機溶剤である場合、無機酸化物の溶剤は発光層が損傷されない有機溶剤に分散されたものを使い、または水系またはアルコール系の溶剤使用が好ましい。具体的な例を挙げれば、発光層材料がクロロホルムやテトラヒドロフランンのような極性有機溶剤を使うと無機酸化物層溶液の溶剤はヘキサンやヘプタンのような非極性溶剤であるオイル類の溶剤やエタノール、ブタノールのようなアルコール類または水を主成分とする水系溶剤系を使うことが好ましい。
【0017】
前記無機酸化物層の厚さや位置は大きく制限する必要はないが、好ましいのは厚さが0.1nmないし500nm、好ましくは1nmないし100nm、より好ましくは2nmないし50nmの厚さを有することが良いが、無機物中間層の厚さが非常に薄いまたは非常に厚ければ、駆動電圧が上昇するかまたは発光効率が減少するという問題点が発生する可能性がある。また、位置は発光層内のいずれの位置においても本発明の特徴に付合する場合構わない。
【0018】
溶液工程に使われる前記無機酸化物溶液の含量は、別に限定する必要はないが全体組成物に対し重量比で0.01〜10%、よりよくは0.1〜5%の範囲が好ましい。
【0019】
前記無機酸化物層の製造方法をスピンコーティングの例を挙げて説明すれば、陽電極の上にPEDOT/PSS(Bayer社、Baytron P4083; Poly(3、4‐ethylenedioxythiophene)/Poly(styrene sulfonic acid))水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成してその上に有機発光層を40nmの厚さにスピンコーティングし、有機発光層上に無機酸化物溶液を滴下し、600rpmで20秒間コーティングした後、rpmを2000に上げて1分間スピンコーティングして無機酸化物中間層を形成する。その後、無機酸化物層上に有機発光層を40nmの厚さにスピンコーティングし、正孔阻止層をスピンコーティングした後陰電極を蒸着器を使って蒸着して素子を製作することができる。前記無機酸化物中間層の乾燥条件は摂氏150℃で30分ないし1時間、好ましくは170℃で30分ないし1時間であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
前記無機酸化物層の製造方法をインクジェット方式の例を挙げて説明すれば、陽電極の上にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスペクトラSX‐128ヘッドを利用して吐出させ40nmの厚さの正孔注入層を形成してその上に順次に発光層、無機酸化物層、正孔阻止層をインクジェットプリンティングで層を製造した後陰電極は蒸着器を利用して蒸着すれば素子を製作することができる。また、グラビア、フレキソ、オフセットのようなロールトゥーロール(RolltoRoll)コーティング方式でも使うことができる。
【0021】
前記無機酸化物層を発光層の間に形成するOLED製造方法は前記の方法以外にも、最終OLEDの構造が本発明に付合する場合、公知のいずれの方法を使っても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による無機酸化物層が1つである一例を示す有機EL素子の構造で ある。
【図2】本発明による無機酸化物層が2つである一例を示す有機EL素子の構造で ある。
【図3】本発明の実施例1と比較例1による有機EL素子の駆動電圧、効率を示したグラフである。
【図4】本発明の実施例2と比較例2による有機EL素子の駆動電圧、効率を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例9と比較例4による有機EL素子の色座標を示したグラフである。
【図6】本発明の実施例9と比較例4による有機EL素子の駆動電圧、効率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明は実施例によって、より詳しく説明されるが、実施例は本発明の例示に過ぎないだけで、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0024】
[実施例1]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品;Poly(3,4‐ethylenedioxythiophene)/Poly(styrene sulfonic acid))水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に青色りん光発光物質であるPVK(Poly(9‐vinylcarbazole)、Aldrich社)とFlrpic(Iridium(III)bis[(4,6‐difluorophenyl)pyridinato‐N,C2’]picolinate)の95:5重量%の混合物を40nmの厚さで発光層を形成した後、前記発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤で溶解したジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして10nmの厚さのジルコニウムオキシド中間層を形成して、またここに青色りん光発光物質であるPVKとFlrpicの95:5重量%の混合物をスピンコーティングで40nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlq(Aluminum(III)bis(2‐methyl‐8‐quinolinato)‐4‐phenylphenolato)を30nmの厚さで蒸着させた後LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0025】
[実施例2]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に緑色りん光発光物質であるPVKと Ir(ppy)(fac‐tris(2‐phenylpyridinato)Iridium)の95:5重量%の混合物をスピンコーティングで40nmの厚さで発光層を形成した後、前記発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤で溶解したジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして10nmの厚さのジルコニウムオキシド中間体を形成した後、また緑色りん光発光物質であるPVKとIr(ppy)の95:5重量%の混合物をスピンコーティングで40nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0026】
[実施例3]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に赤色りん光発光物質であるPVKとBtpIr(acac)(Iridium(III)bis(2‐(2’‐benzothienyl)pyridinato‐N,C3’)(acetylacetonate)の95:5重量%の混合物をスピンコーティングで40nmの厚さで発光層を形成した後、前記発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤で溶解したジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして10nmの厚さのジルコニウムオキシド中間体を形成した後、また赤色りん光発光物質であるPVKとBtpIr(acac)の95:5重量%の混合物をスピンコーティングで40nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0027】
[実施例4]
中間層にシリコーンダイオキシドを使ったことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0028】
[実施例5]
中間層としてアルミニウムオキシドを使ったことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0029】
[実施例6]
中間層としてチタニウムオキシドを使ったことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0030】
[実施例7]
中間層としてジンクオキシドを使ったことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0031】
[実施例8]
中間層としてジルコニウムシリケートを使ったことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0032】
[実施例9]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に青色りん光発光物質であるPVKとFlrpicの95:5重量%の混合物を40nmの厚さで発光層を形成し、前記発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤で溶解したジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして10nmの厚さのジルコニウムオキシド中間層を形成した後、また赤色りん光発光物質であるPVKとBtpIr(acac)の95:5重量%の混合物を40nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0033】
[実施例10]
ガラス基板上にITO電極を形成した後、この上部に真空蒸着器を利用して正孔注入層である2‐TNATA(4,4’,4”‐tris(N‐(1‐naphthyl)‐N‐phenylamino)triphenylamine)を蒸着して150Åの厚さで形成し、次に、前記正孔注入層上部に正孔伝達層であるNPD(N,N’‐di(1‐naphthyl)‐N,N’‐diphenylbenzidine)を350Åの厚さで蒸着した。その後発光層であるDPVBi(1,4‐bis(2,2‐diphenylvinyl)biphenyl)を175Åの厚さで蒸着した後、E‐beam蒸着器を使ってジルコニウムオキシドを50Åの厚さに蒸着してまた発光層DPVBiを175Å、Alq3 50Å、LiF10Å、Al2000Åの厚さで順次に蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0034】
[実施例11]
中間層としてチタニウムオキシドを使ったことを除いては実施例10と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0035】
[実施例12]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に緑色りん光発光物質であるPVKとIr(ppy)の95:5重量%の混合物を27nmの厚さで発光層を形成し、前記発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤に溶かしてジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして5nmの厚さのジルコニウムオキシド中間体を形成した後、また緑色りん光発光物質であるPVKとIr(ppy)の95:5重量%の混合物を27nmの厚さで発光層を形成した。その後、続いて発光層上部にD40(EXXON社製品)溶剤で溶解したジルコニウムオキシド溶液をスピンコーティングして5nmの厚さのジルコニウムオキシド中間体を形成した後、また緑色りん光発光物質であるPVKと Ir(ppy)の95:5重量%の混合物を27nmの厚さで発光層を形成した。発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0036】
[実施例13]
ジルコニウムオキシド溶液をスペクトラSX‐128ヘッドを利用して、インクジェット方法でジルコニウム中間層を形成することを除いては実施例1と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0037】
[実施例14]
ジルコニウムオキシド中間層の厚さを40nmとしたことを除いては実施例3と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0038】
[実施例15]
中間層としてジルコニウムオキシドとチタニウムオキシドを重量%比で99:1で混合したことを除いては実施例2と同一の方法でOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0039】
[比較例1]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に青色りん光発光物質であるPVKとFlrpicの95:5重量%の混合物を80nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0040】
[比較例2]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に緑色りん光発光物質であるPVKとIr(ppy)の95:5重量%の混合物を80nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0041】
[比較例3]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に赤色りん光発光物質であるPVKとBtpIr(acac)の95:5重量%の混合物を80nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0042】
[比較例4]
陽電極としてのコニング社の15Ω/cm(120nm)ITOガラス基板を適当な大きさに切って、イソプロピルアルコールと純粋な水の中で各10分間超音波洗浄した後、20分間UV又はオゾンを用いた洗浄を行った。前記基板上部にPEDOT/PSS(Bayer社製品の正孔注入物質)水溶液をスピンコーティングして40nmの厚さの正孔注入層を形成した。次に、前記正孔注入層上に青色りん光発光物質であるPVKとFlrpicの95:5重量%の混合物を40nmの厚さで発光層を形成した後、赤色りん光物質であるPVKとBtpIr(acac)の95:5重量%の混合物を40nmの厚さで発光層を形成した。次に、発光層上部にBAlqを30nmの厚さで蒸着させた後、LiF1nm、Al100nmの厚さで陰電極を蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0043】
[比較例5]
ガラス基板上にITO電極を形成した後、この上部に真空蒸着器を利用して正孔注入層である2‐TNATAを蒸着して15nmの厚さで形成し、次に、前記正孔注入層上部に正孔伝達層であるNPDを35nmの厚さで蒸着した。その後、発光層であるDPVBiを35nmの厚さに蒸着してAlq35nm、LiF1nm、Al200nmの厚さで順次に蒸着してOLEDを製造した。製造されたOLEDの駆動電圧及び効率特性を評価した結果を表1に収録した。
【0044】
以下は、前記実施例1ないし15、及び比較例1ないし5によって製造されるOLEDを効率をI‐V‐L測定器keithley2400で測定して表1に整理した。
【0045】
【表1】

【0046】
前記のように、実施例1ないし9によるOLEDは、無機酸化物層を除いては、全て同一の条件で製造されたそれぞれの比較例1ないし4によって製造されるOLEDに比べて駆動電圧が大きく減少し、効率が増加した。また、同一の駆動電圧で比べると輝度が大きく上昇したことが分かる。
【0047】
一方、実施例1と比較例1によって製造されるOLEDの駆動電圧と効率を比べたグラフを図3に、実施例2と比較例2によって製造されるOLEDの駆動電圧と効率を比べたグラフを図4に図示し(図3及び4において、丸パターンが実施例によるものであり、四角パターンが比較例によるものである)、実施例9と比較例4によって製造されるOLEDの色座標を比べたグラフを図5に、これらの駆動電圧と効率を図6に図示した(図5及び6において、四角パターンが実施例によるものであり、丸パターンが比較例によるものである)。
【0048】
また、実施例10ないし15によって製造されるOLEDも、前記表1のように効率が大きく向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
前記のように、本発明によれば発光層内に無機酸化物を少なくとも1層以上挿入して製作したOLED素子の駆動電圧及び効率特性を見ると、駆動電圧は低くなって効率は大きく増加する結果を見せてくれる。また、同一の駆動電圧で比べても輝度が大きく上昇する結果を得た。このような駆動電圧の減少と効率の増加は窮極的に素子の寿命を大きく改善させるOLEDを提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:陽電極
20:正孔注入層
31、32、33、34、35:発光層
41、42、43:無機酸化物層
50:正孔阻止層
60:陰電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極及び複数の発光層を含む有機EL素子において、
無機酸化物層を前記複数の発光層の間に含むことを特徴とする有機EL素子。
【請求項2】
前記複数の発光層の間に、前記無機酸化物層が2以上形成されていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項3】
前記無機酸化物層が0.1〜500nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項4】
前記無機酸化物はZr、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Al、Ga、In、Tl、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、As、Se、Eu、Sm、Th、Ac、Ce若しくはPrの酸化物、または前記元素の中の少なくとも2つからなる複合酸化物から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
【請求項5】
前記無機酸化物は、ZrO、LiO、NaO、RbO、BeO、CaO、SrO、BaO、SiO、TiO、Ti、TiO、V、V、V、Mn、MnO、Mn、MnO、FeO、Fe、ZnO、ZnOMgO、SnO、In、CrO、CuO、CuO、HfO、Fe、CoO、Co、NiO、NiO、CeO、Y、NbO、NbO、Nb、MoO、MoO、RuO、Rh、RhO、PdO、AgO、AgO、CdO、Ta、WO、WO、ReO、OsO、IrO、PtO、Au、HgO、Ga、GeO、SnO、PbO、PbO、PbO、Sb、Sb、Sb、Bi、As、As、SeO、またはEuから選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記複合酸化物は、ZrSiO、RbTiO、RbSeO、FeLiO、FeMoO、FeOTi、FeZn、FeTi、Fe12、Fe1219Sr、NiFeO、NbPb、NbOZn、MoOPb、MoOSr、MoOZn、AgOV、AgORe、AgCrO、AgO、AgW、CdOZr、GaGd12、TIreO、PbSeO、PbTiO、PbZrO、BiTiまたはCe12から選択される1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の有機EL素子。
【請求項7】
陽極、陰極及び複数の発光層を含む有機EL素子の製造方法において、
無機酸化物層を、前記複数の発光層の間に単層または複数層で形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項8】
前記無機酸化物層の形成方法は、スピン(spin)コーティング、ロール(roll)コーティング、スプレーコーティング、ディップ(dip)コーティング、フロー(flow)コーティング、ドクターブレード(doctor blade)とディスペンシング(dispensing)、インクジェットプリンティング、オフセットプリンティング、スクリーンプリンティング、パッド(pad)プリンティング、グラビアプリンティング、フレキソ(flexography)プリンティング、ステンシルプリンティング、インプリンティング(imprinting)、ゼログラフィー(xerography)、リソグラフィー(lithography)、熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンビーム蒸着またはスパッタリング方法から選択されることを特徴とする請求項7に記載の有機EL素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−80708(P2013−80708A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−266425(P2012−266425)
【出願日】平成24年12月5日(2012.12.5)
【分割の表示】特願2009−524550(P2009−524550)の分割
【原出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(505335441)インクテック カンパニー リミテッド (19)
【Fターム(参考)】