有機EL素子
【課題】素子の駆動時の駆動電圧上昇や輝度の低下、電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長を抑え、高耐熱性等の信頼性が高く、かつ高輝度な有機EL素子を提供する。
【解決手段】有機EL素子は、有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する。
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。R01、ないしR04は、それぞれ、
を表わす。)
【解決手段】有機EL素子は、有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する。
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。R01、ないしR04は、それぞれ、
を表わす。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(電界発光)素子に関し、詳しくは、有機化合物からなる積層構造薄膜に電界を印加して光を放出する素子に関する。さらに詳しくは、ホール注入層に特定なトリアリールアミン多量体を用いることで、低駆動電圧、安定な発光、高表示品位、高耐熱性を持つ有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を、電子注入電極(陰極)とホール注入電極(陽極)とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子およびホールを注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子である。
【0003】
有機EL素子の特徴は、10V以下の低電圧で数100〜数10000cd/m2程度の高輝度の面発光が可能であり、また蛍光物質の種類を選択することにより青色から赤色までの発光が可能なことである。
【0004】
一方、有機ELの問題点は、発光寿命が短く、保存耐久性、信頼性が低いことであり、この原因としては、
(1)有機化合物の物理的変化(結晶ドメインの成長などにより界面の不均一化が生じ、素子のホール注入能の劣化・短絡・絶縁破壊の原因となる。特に分子量500以下の低分子化合物を用いると結晶粒の出現・成長が起こり、膜性が著しく低下する。また、ITO等の界面が荒れていても、顕著な結晶粒の出現・成長が起こり、発光効率の低下や、電流のリークを起こし、発光しなくなる。また、部分的非発光部であるダークスポットの原因にもなる。)
(2)電子注入電極の酸化・剥離(電子の注入を容易にするために仕事関数の小さな金属としてNa・K・Li・Mg・Ca・Al等を用いて来たが、これらの金属は大気中の水分や酸素と反応したり、有機層と電子注入電極の剥離が起こり、ホール注入出来なくなる。特に高分子化合物などを用い、スピンコートなどで成膜した場合、成膜時の残留溶媒・水分や分解物が電極の酸化反応を促進し、電極の剥離が起こり部分的な非発光部を生じさせる。)
(3)発光効率が低く、発熱量が多い事。
(有機化合物中に電流を流すので、高い電界強度下に有機化合物を置かねばならず、発熱からは逃れられない。その熱のため、有機化合物の溶融・結晶化・熱分解などにより素子の劣化・破壊が起こる。)
(4)有機化合物層の光化学的変化・電気化学的変化(有機物に電流を流すことで有機物が劣化し、電流トラップ・励起子トラップ等の欠陥を生じ、駆動電圧の上昇、輝度の低下等の素子劣化が起こる。)
などが挙げられる。
【0005】
また、実用の発光デバイスでは色々な環境下で用いられるが、特に高温の環境では、有機化合物の物理的変化である結晶化・有機物の移動・拡散等の有機分子の再配列を起こし、表示品位の低下や、素子の破壊を引き起こす。
【0006】
また、有機材料と無機材料の界面であるホール注入電極や電子注入電極界面、特にホール注入電極界面は成膜時の有機物層の膜性に大きな影響を及ぼし、状態によってはホール注入電極上に有機物層が不均一に成膜されたり、良好な界面が形成できない等の不具合を生じる。
【0007】
このため従来、有機EL発光素子のホール注入電極界面に、フタロシアニン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン蒸着膜、アミン多量体等の材料を用いることが報告されている。しかしながら、フタロシアニン(特許文献1あるいは特許文献2)を用いるとフタロシアニン自身が微結晶性で、上に載せる材料の結晶化を促進するため、初期状態では良好でも長期的にはダークスポットや、発光ムラ等の原因となり好ましくない。また、ポリフェニレンビニレンはスピンコート等のウエットプロセスを用いるため、水分等空気中の不純物を巻き込んだり、前駆体から変換する際の脱離基等のイオン性不純物が混入するため、電極の酸化が速く、著しい輝度劣化や駆動電圧の上昇の原因となる。
【0008】
また、ポリチオフェン蒸着膜はポリチオフェンの重合度や蒸着時ののばらつきが大きく、良好な素子作製の再現性が低い事や、ポリチオフェン自身が可視光領域に光吸収を持っているため膜厚を厚くすることが困難であり、ITOの表面状態を十分に改質出来ない等の不具合が生じる。また、アミン系多量体としては、デンドリマー材料(特許文献3)やテトラアミン材料(特許文献4)やトリアミン材料(特許文献5)等が報告されているが、十分な耐熱性、特に高温保存状態においてホール注入電極上での膜の均一性・安定性は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4720432号明細書
【特許文献2】特開昭63−295695号公報
【特許文献3】特開平4-308688号公報
【特許文献4】米国特許第439627号明細書
【特許文献5】特開平8-193191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に物理的変化や光化学的変化、電気化学的変化の少ない光・電子機能材料を用い、信頼性および発光効率の高い種々の発光色を持った、有機EL素子を提供することである。
また、アモルファス性が高く、ホール注入電極との相性が高い化合物を蒸着法で形成した有機薄膜を用い、素子の駆動時の駆動電圧上昇や輝度の低下、電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長を抑え、輝度の低下が小さく、高耐熱性等の信頼性が高く、かつ高輝度な有機EL素子を提供することである。
また、多層膜を用いた有機EL素子において、ホール注入電極や組み合わせる有機材料に最適な仕事関数をもたせ、かつ耐熱性の高い有機EL素子を提供することである。
また、ホール移動度が高く、より多くの電流密度を得ることの可能な有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1)有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する有機EL素子。
【0012】
【化1】
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、およびR04 は、それぞれ、
【化2】
を表わす。ここで、R11およびR12は、置換または非置換のアリール基を表わす。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ、0〜5員の整数であるがr1+r2+r3+r4 は1以上である。)
【0013】
(2)前記L0で表されるフェニレン基群が、4,4’−ビフェニレン基である(1)の有機EL素子。
(3)少なくとも2層以上の有機化合物層を有し、(1)または(2)の有機化合物層がホール注入輸送機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
(4)少なくともホール注入機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層とを含有する3層以上の有機化合物層を有し、(1)または(2)の有機化合物層が前記ホール注入機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
(5)前記有機化合物層の少なくとも1層に発光層を有し、この発光層はホール輸送性化合物と電子輸送性化合物とを含有する(3)または(4)の有機EL素子。
(6)前記発光層は、ホール注入機能を有する有機化合物層および/またはホール輸送機能を有する有機化合物層と、電子輸送機能を有する有機化合物層および/または電子注入機能を有する有機化合物層との間に存在する(5)の有機EL素子。
(7)ホール注入電極上に、少なくとも(3)のホール注入輸送機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
(8)ホール注入電極上に、少なくとも(4)のホール注入機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
(9)前記ホール注入機能を有する有機化合物層の膜厚が100nm以上である(3)〜(8)のいずれかの有機EL素子。
(10)前記化合物を含有する層は、ホール移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上である(5)〜(9)のいずれかの有機EL素子。
(11)前記化合物を含有する層のホールの移動度は、発光層のホール移動度の1/2以下である(5)〜(10)のいずれかの有機EL素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機EL素子は上記式(I)で表される化合物をホール(ホール)注入層もしくはホール注入輸送層に用いるため、薄膜性が良好となりムラが無く均一な発光が可能である。また、大気下で一年以上安定であり結晶化を起こさない。また、ホール注入効率を最適化するため、分子構造にフェニレンジアミン骨格と、ホール移動度を向上させるためベンジジン骨格(ビフェニルジアミン)や、複数のフェニレンに対しジアミンを持つ骨格を共に有することを特徴とする。また、高温駆動にも耐えられ、低駆動電圧・低駆動電流で効率よく発光する。さらに、本発明の有機EL素子は、連続駆動時に駆動電圧の上昇が小さい。なお、本発明のEL素子の発光極大波長は、400〜700nm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示した概略構成図である。
【図2】合成例1の1H−NMRスペクトル図である。
【図3】合成例1の13C−NMRスペクトル図である。
【図4】合成例1の赤外吸収スペクトル図である。
【図5】合成例2の1H−NMRスペクトル図である。
【図6】合成例2の13C−NMRスペクトル図である。
【図7】合成例2の赤外吸収スペクトル図である。
【図8】合成例3の1H−NMRスペクトル図である。
【図9】合成例3の13C−NMRスペクトル図である。
【図10】合成例3の赤外吸収スペクトル図である。
【図11】合成例5の1H−NMRスペクトル図である。
【図12】合成例5の13C−NMRスペクトル図である。
【図13】合成例5の赤外吸収スペクトル図である。
【図14】合成例6の1H−NMRスペクトル図である。
【図15】合成例6の13C−NMRスペクトル図である。
【図16】合成例6の赤外吸収スペクトル図である。
【図17】合成例7の1H−NMRスペクトル図である。
【図18】合成例7の13C−NMRスペクトル図である。
【図19】合成例7の赤外吸収スペクトル図である。
【図20】本発明のホール注入輸送性材料であるHIM34と、従来のMTDATAとの、電圧対電流密度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機EL素子は、有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が上記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する。
【0017】
上記式(I)について説明すると、式(I)において、L0はフェニレン基群を表す。L0で表されるフェニレン基群は、o−,p−,m−のいずれでもよく、これらが混在していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。例えば、2環のフェニレン基として表されるビフェニレン基としては、4,4’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基のいずれであってもよいが、特に4,4’−ビフェニレン基が好ましい。3環のフェニレン基として表されるターフェニレン基としてはo−,p−,m−ターフェニレン基のいずれであってもよいが、特にp−ターフェニレン基(4,4’、4’’−ターフェニレン基)が好ましい。4環のフェニレン基として表されるクアテルフェニレン基としてはo−,p−,m−のいずれのフェニレン基を含有していてもよいが、特にp−フェニレン基からなる4,4’、4’’、4’’’−クアテルフェニレン基が好ましい。また、4環のフェニレン基を有する場合、その中間に置換または非置換のフェニルアミノ基を有していてもよい。
この場合の置換基としては、下記R11,R12と同様である。
【0018】
R01,R02,R03およびR04はそれぞれ、
【化3】
のいずれかを表す。R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17はそれぞれ非置換または置換基を有するアリール基を表す。R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、非置換または置換基を有するアリール基またはアルコキシ基、アリーロキシ基および
【化4】
基等が挙げられる。ここで、R21およびR22はそれぞれ、非置換または置換基を有するアリール基を表す。
【0019】
R21およびR22で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、非置換または置換基を有するアリール基を表す。また、前記アルキル基としては好ましくはメチル基が挙げられ、前記アリール基としては好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0020】
また、r1, r2,r3およびr4はそれぞれ0〜5、特に0〜2の整数を表すが、特に0または1であることが好ましい。そして、r1+r2+r3+r4は、1以上、特に1〜4、さらには2〜4が好ましい。前記R01,R02,R03およびR04は、Nの結合位置に対してメタ位あるいはパラ位に結合し、R01,R02,R03およびR04の全てがメタ位、R01,R02,R03およびR04の全てがパラ位あるいはR01,R02,R03およびR04がメタ位あるいはパラ位に結合しても、これらが混在していてもよい。r1,r2,r3またはr4が2以上である場合、R01,R02,R03またはR04は同一でも異なっていてもよい。
【0021】
このような、化合物の好ましい具体例を下記の式(II)〜(VII)に示す。
【化5】
【0022】
また、前記R01,R02,R03およびR04の好ましい具体例を以下の表1〜表78に示す。なお、表中R01,R02,R03およびR04は、それぞれR1,R2,R3およびR4と、フェニレン基が4環であってその中間にフェニルアミノ基を有する式(VII)の置換基R05をR5と表す。また、上記式(II)〜(VII)を一般式として表す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
【表9】
【0032】
【表10】
【0033】
【表11】
【0034】
【表12】
【0035】
【表13】
【0036】
【表14】
【0037】
【表15】
【0038】
【表16】
【0039】
【表17】
【0040】
【表18】
【0041】
【表19】
【0042】
【表20】
【0043】
【表21】
【0044】
【表22】
【0045】
【表23】
【0046】
【表24】
【0047】
【表25】
【0048】
【表26】
【0049】
【表27】
【0050】
【表28】
【0051】
【表29】
【0052】
【表30】
【0053】
【表31】
【0054】
【表32】
【0055】
【表33】
【0056】
【表34】
【0057】
【表35】
【0058】
【表36】
【0059】
【表37】
【0060】
【表38】
【0061】
【表39】
【0062】
【表40】
【0063】
【表41】
【0064】
【表42】
【0065】
【表43】
【0066】
【表44】
【0067】
【表45】
【0068】
【表46】
【0069】
【表47】
【0070】
【表48】
【0071】
【表49】
【0072】
【表50】
【0073】
【表51】
【0074】
【表52】
【0075】
【表53】
【0076】
【表54】
【0077】
【表55】
【0078】
【表56】
【0079】
【表57】
【0080】
【表58】
【0081】
【表59】
【0082】
【表60】
【0083】
【表61】
【0084】
【表62】
【0085】
【表63】
【0086】
【表64】
【0087】
【表65】
【0088】
【表66】
【0089】
【表67】
【0090】
【表68】
【0091】
【表69】
【0092】
【表70】
【0093】
【表71】
【0094】
【表72】
【0095】
【表73】
【0096】
【表74】
【0097】
【表75】
【0098】
【表76】
【0099】
【表77】
【0100】
【表78】
【0101】
また、本発明の化合物は、下記に示すような構造を有していてもよい。
【化6】
【0102】
【化7】
【0103】
【化8】
【0104】
本発明の化合物は、例えば1級または2級の芳香族アミンと、芳香族ヨウ化物とを銅などの触媒を用いて縮合するウルマン反応で合成することができる。また、R01,R02とR03,R04が非対称の場合(ビフェニルの両側が非対称)には、R01,R02と、R03,R04とが、それぞれ対応するアミンを合成し、ビフェニル部を最後にカップリングしてもよい(グアニンカップリング、Ni(dppp)Cl2等)。
【0105】
以下の(1)〜(4)に具体的な合成例を挙げる。(1)では、4,4'- ジヨードビフェニルと式(A)で表される化合物を用い、(2)では式(B)と式(C)
で表される化合物を用い、銅を触媒としてカップリングして、それぞれ式(D)で表される非対称化合物を得ている。(3)では、式(E)で表される化合物と式(F)で表される化合物とをNi(dppp)Cl2を用いてカップリングし、式(G)で表される非対称化合物を得ている。(4)では、式(H)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を経て、これと式(J)で表される化合物とから、式(K)で表される非対称化合物を得ている。ここで、下記(A)〜(K)におけるR30,R41,R45およびR50は、それぞれ式(I)におけるR01,R02,R03およびR04と同義であり、R32,R33,R42,R43,R46,R47,R52およびR53は、それぞれ式(I)におけるR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17と同義である。
【0106】
【化9】
【0107】
【化10】
【0108】
【化11】
【0109】
本発明の化合物は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、1H,13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0110】
これらの本発明の化合物は、640〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点を有し、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等により透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜として得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。なお、本発明の化合物のなかには融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するものもある。従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で安定で均一な薄膜を得ることができる。
【0111】
本発明の化合物を用いることにより、ホール移動度が向上し、素子の電流密度が増大する。本発明の化合物により得られる好ましいホール移動度としては、1.0×10-3cm2/Vs以上、特に1.1×10-3〜100×10-3cm2/Vs、さらには1.1×10-3〜20.0×10-3cm2/Vsである。また、発光層におけるホール移動度が本発明化合物の1/2以下、特に1/4〜1/1000、さらには1/4〜1/100程度であることが好ましい。このようにホール移動度が優れているため、本発明の化合物によりホール注入層を形成した場合、その膜厚が100nm以上、特に200nm以上であっても素子を問題なく動作させることができる。なお、その上限は特に限定されるものではないが、通常、5000nm程度である。実際には、各層の光学的屈折率を考慮し、光取り出しが最適で、視野角等にも問題がない用に膜厚を設定すればよい。
本発明の化合物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0112】
本発明のEL素子は、少なくとも1層の有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が本発明の化合物を含有する。本発明の有機EL素子の構成例を図1に示す。同図に示される有機EL素子は、ホール注入電極3、ホール注入・輸送層4、発光層5、電子注入輸送層6、電子注入電極7を順次有し、さらにガラス基板2上に、カラーフィルター8、蛍光変換フィルター9、前記有機EL素子、封止層10、カバー11を順次積層、形成することにより有機ELカラーディスプレイとなる。
【0113】
発光層は、ホールおよび電子の注入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。ホール注入輸送層は、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子の輸送を妨げる機能を有し、電子注入輸送層は、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールの輸送を妨げる機能を有するものであり、これらの層は、発光層へ注入されるホールや電子を増大・閉じ込めるさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。電子注入輸送層およびホール注入輸送層は、発光層に用いる化合物の電子注入、電子輸送、ホール注入、ホール輸送の各機能の高さを考慮し、必要に応じて設けられる。例えば、発光層に用いる化合物のホール注入輸送機能または電子注入輸送機能が高い場合には、ホール注入輸送層または電子注入輸送層を設けずに、発光層がホール注入輸送層または電子注入輸送層を兼ねる構成とすることができる。また、場合によってはホール注入輸送層および電子注入輸送層のいずれも設けなくてよい。また、ホール注入輸送層および電子注入輸送層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0114】
また、組み合わせる発光層や、電子注入輸送層や、ホール注入輸送層などのキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設定することが可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にできる。
【0115】
本発明の化合物は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層あるいはホール注入輸送層のいずれにも適用可能であるが、ホール注入性が良好であるので、ホール注入層あるいはホール注入輸送層、特にホール注入層に用いることが好ましい。
【0116】
本発明の化合物は、フェニレンジアミン骨格と、ベンジジン骨格等の複数のフェニレンを持つジアミン骨格を共に有することで耐熱性を犠牲にせず、イオン化ポテンシャルやキャリア移動度を自由にコントロールでき、組み合わせる材料に応じてホール注入効率を最適化できる。
【0117】
本発明の化合物をホール注入輸送層に用いる場合について説明する。ホール注入輸送層は、本発明の化合物を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングして形成すればよい。特に蒸着を行えば良好なアモルファス膜が得られる。
【0118】
本発明の化合物をホール注入輸送層に用いる場合、発光層に用いる蛍光性物質は、より長波長の蛍光をもつものから選択すればよく、例えば、上記した、発光層において本発明の化合物と併用される蛍光性物質の1種以上から適宜選択すればよい。なお、このような場合、発光層にも本発明の化合物を用いることができる。
【0119】
この場合、本発明の化合物を用いることもできるが、本発明の化合物はフェニレンジアミン骨格を有するため、ドナー性が非常に強く、発光材料とエキサイプレックス等の蛍光強度の低下を招く相互作用を起こしやすい。そのため、発光光率の低下や、発光スペクトルのブロード化による色純度の低下等の弊害が生じるため好ましくはない。しかしながら、相互作用の無い発光材料を用いたときにはホール輸送材料として用いることができる。
【0120】
またホール注入輸送層には、一種以上のホール注入輸送材料を組み合わせてもよい。特に好ましいのは、組み合わせるホール輸送材料をイオン化ポテンシャルの小さい順にITO上に、例えば、ホール注入層、ホール輸送層と積層することが好ましく、ITO表面には、薄膜性が良好で、親水性にバラツキのあるITO表面上でも均一な薄膜を形成することのできるホール注入材料を用いることが好ましい。素子化する場合、蒸着を用いる事ができるので、1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフリーとする事が出来る。また、膜厚、屈折率などを調整することで、発光色や発光輝度、発光の空間分布等の干渉光効果を利用して効率の低下を防ぐことが出来る。
【0121】
また、発光層に面するホール輸送層には、特開昭63−295695号公報、特開平5−234681号公報、同7−43564号公報に開示されている発光材料と相互作用し難い、ベンジジン骨格のみを持つトリアリールアミン多量体を用いることが好ましい。
【0122】
本発明では、発光層に蛍光物質を含有させてもよい。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。さらには、特願平6−110569号のフェニルアントラセン誘導体、特願平6−114456号のテトラアリールエテン誘導体等も挙げられる。
【0123】
また、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントとしての使用が好ましい。このような場合の発光層における化合物の含有量は0.01〜10wt%、さらには0.1〜5wt%であることが好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
【0124】
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号、特開平3−255190号、特開平5−70733号、特開平5−258859号、特開平6−215874号等に開示されているものを挙げることができる。
【0125】
具体的には、まず、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]、等がある。
【0126】
また、8−キノリノールないしその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)等がある。
【0127】
このほか、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)等であってもよい。
【0128】
このほかのホスト物質としては、特願平6−110569号に記載のフェニルアントラセン誘導体や特願平6−114456号に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
【0129】
フェニルアントラセン誘導体は、下記式(VIII)で表されるものである。
A1 −L1 −A2 (VIII)
式(VIII)において、A1およびA2は、各々モノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
A1、A2で表されるモノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基は、無置換でも置換基を有するものであってもよく、置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、このような置換基の置換位置は特に限定されないが、アントラセン環ではなく、アントラセン環に結合したフェニル基であることが好ましい。また、アントラセン環におけるフェニル基の結合位置はアントラセン環の9位、10位であることが好ましい。
【0130】
式(VIII)において、L1は単結合またはアリーレン基を表す。L1で表されるアリーレン基としては、無置換であることが好ましく、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等の通常のアリーレン基の他、2個ないしそれ以上のアリーレン基が直接連結したものが挙げられる。L1としては、単結合、p−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基等が好ましい。
【0131】
また、L1で表されるアリーレン基は、2個ないしそれ以上のアリーレン基が、アルキレン基、−O−、−S−または−NR−が介在して連結するものであってもよい。ここで、Rはアルキル基またはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましく、上記のフェニル基のほか、A1、A2であってもよく、さらにはフェニル基にA1またはA2が置換したものであってもよい。また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等がこの好ましい。このようなアリーレン基の具体例を以下に示す。
【0132】
また、テトラアリールエテン誘導体は下記式(IX)で表されるものである。
【化12】
式(IX)において、Ar1、Ar2およびAr3は、各々芳香族残基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0133】
Ar1〜Ar3で表される芳香族残基としては、芳香族炭化水素基(アリール基)、芳香族複素環基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、単環もしくは多環の芳香族炭化水素基であってよく、縮合環や環集合も含まれる。芳香族炭化水素基は、総炭素数が6〜30のものが好ましく、置換基を有するものであってもよい。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アリールフェニル基、アリーロキシフェニル基、アミノフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基などが挙げられる。
【0134】
また、芳香族複素環基としては、ヘテロ原子としてO、N、Sを含むものが好ましく、5員環であっても6員環であってもよい。具体的には、チエニル基、フリル基、ピローリル基、ピリジル基などが挙げられる。
Ar1〜Ar3で表される芳香族基としては、特にフェニル基が好ましい。
nは2〜6の整数であり、特に2〜4の整数であることが好ましい。
【0135】
L2はn価の芳香族残基を表すが、特に芳香族炭化水素、芳香族複素環、芳香族エーテルまたは芳香族アミンから誘導される2〜6価、特に2〜4価の残基であることが好ましい。これらの芳香族残基は、さらに置換基を有するものであってもよいが、無置換のものが好ましい。
【0136】
式(IX)の化合物を用いる発光層としては、上記のホスト物質と組み合わせるものとする他、少なくとも一種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、この混合層中にドーパントを含有させることが好ましい。このような混合層における化合物の含有量は、0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とすることが好ましい。
【0137】
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびるという利点がある。そして、更に式(IX)の化合物をこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ素子の安定性が向上する。
【0138】
混合層に用いられるホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物は、各々、ホール注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物の中から選択することもできる。なかでも、混合する電子注入輸送性の化合物としては、キノリン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好ましい。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラアリールアミン誘導体を用いるのも好ましい。
【0139】
ホール注入輸送層用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送材料であるテトラフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0140】
この場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/1、さらには10/90〜90/10、特には20/80〜80/20程度)となるようにすることが好ましい。
【0141】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
【0142】
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
【0143】
本発明では、電子注入輸送層を設けてもよい。電子注入輸送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電子注入輸送層の形成は発光層と同様に蒸着等によればよい。
【0144】
本発明の化合物を発光層に用いる場合、ホール注入輸送層および電子注入輸送層には、通常の有機EL素子に用いられている各種有機化合物、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、ホール注入輸送層には、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、インドール誘導体等を用いることができ、また、電子注入輸送層には、アルミキノリノールなどの有機金属錯体誘導体・オキサジアゾール誘導体・ピリジン誘導体・ピリミジン誘導体・キノリン誘導体・キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体等を用いることができる。
【0145】
本発明の化合物を発光層に用いる場合、相互作用により消光し難い上記発光物質と組み合わせて用いることが好ましい。本発明の化合物は、青の蛍光が強いので、相互作用の少ない材料との組み合わせで高輝度の発光素子を実現することができる。
【0146】
発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、再結合領域・発光領域の設計や形成方法によっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に10〜200nmとすることが好ましい。
【0147】
ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすればよい。
【0148】
電子もしくはホールの、注入層と輸送層を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上、特に20nm以上とするのが好ましい。
このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で500nm、特に100nm程度、輸送層で500nm程度である。このような膜厚については注入輸送層を2層設けるときも同じである。
【0149】
また、組み合わせる発光層や電子注入輸送層やホール注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設設する事が可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能に出来る。
【0150】
電子注入電極には、仕事関数の小さい材料、例えば、Li、Na、K、Mg、Al、Ag、Inあるいはこれらの1種以上を含む合金、もしくは酸化物、ハロゲン化物を用いることが好ましい。また、電子注入電極は結晶粒が細かいことが好ましく、特に、アモルファス状態であることが好ましい。電子注入電極の厚さは10〜1000nm程度とすることが好ましい。
また、電極形成の最後にAlや、フッ素系化合物を蒸着・スパッタする事で封止効化が向上し、Alの場合配線抵抗も低くなる。
【0151】
EL素子を面発光させるためには、少なくとも一方の電極が透明ないし半透明である必要があり、上記したように電子注入電極の材料には制限があるので、好ましくは発光光の透過率が80%以上となるようにホール注入電極の材料および厚さを決定することが好ましい。具体的には、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、SnO2、Ni、Au、Pt、Pd、ポリピロールなどをホール注入電極に用いることが好ましい。また、ホール注入電極の厚さは10〜500nm程度とすることが好ましい。また、素子の信頼性を向上するために駆動電圧が低い事が必要であるが、好ましいものとして10〜30Ω/□(厚み80〜300nm)のITOが挙げられる。実際には、ITO界面での反射による干渉効果が、高い光取り出し効率・高い色純度を満足できるようにITOの膜厚・光学定数を設計してやればよい。
また、ディスプレイの様な大きいデバイスにおいては、ITOの抵抗が大きくなるのでAl配線をしても良い。
【0152】
基板材料に特に制限はないが、図示例では基板側から発光光を取り出すため、ガラスや樹脂等の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板にカラーフィルター膜や、蛍光変換フィルター膜、誘電体反射膜を用いたり、基板自身に着色したりして発光色をコントロールしても良い なお、基板に不透明な材料を用いる場合には、図1に示される積層順序を逆にしてもよい。
【0153】
カラーフィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いてもれば良いが、有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0154】
また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向上する。
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0155】
蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
【0156】
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いことが望ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系化合物等を用いればよい。
【0157】
バインダーは基本的に蛍光を消光しないような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0158】
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べば良い。
【0159】
次に、本発明のEL素子の製造方法を説明する。
電子注入電極およびホール注入電極は、蒸着法やスパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0160】
ホール注入輸送層、発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、ホールの注入効率も著しく低下する。
【0161】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10-5Torr(10-4Pa)以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりすることができる。
【0162】
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましい。
【0163】
本発明のEL素子は、通常、直流駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパルス駆動することもできる。印加電圧は、通常、2〜20V 程度とされる。
【実施例】
【0164】
以下、本発明の具体的合成例および実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0165】
<合成例1>
N,N'- ジフェニル-N,N'-ビス〔N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)〕ベンジジン(HIM33:化合物 No.3)の合成。
【0166】
200mlの反応容器にN,N-ジフェニル-1,4- フェニレンジアミン26gと3-ヨードトルエン22gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n- ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-1,4-フェニレンジアミン17gを得た。
【0167】
次に、200mlの反応容器に、上記で得たN,N'-ジフェニル-N-3-トリル-1,4- フェニレンジアミン10gに、4,4'−ジヨードビフェニル4.6gと活性銅粉0.3gと炭酸カリウム8.0gとデカリン100mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度220℃で40時間加熱した。反応終了後、トルエンを200ml加え、不溶物を濾過して取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を4回シリカゲルカラム精製(展開溶媒n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N,N-ビス〔N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)〕ベンジジン7gを得た。このうち、2gを昇華精製し、1.8gのわずかに淡黄色を示したガラス状で強い青色蛍光を示す化合物を得た。この化合物は下記HIM33に示す構造を有する。
【0168】
【化13】
【0169】
質量分析:m/e 850(M+)
1H−NMRスペクトルを図2に示す。
13C−NMRスペクトルを図3に示す。
赤外吸収スペクトルを図4に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 234℃ (一部アモルファス)
ガラス転移温度(DSC) 99℃
【0170】
<合成例2>
N,N'- ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)の合成。
【0171】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに4-ヨードトルエンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM34に示す構造の、N.N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0172】
【化14】
【0173】
質量分析:m/e 850(M+)
1H−NMRスペクトルを図5に示す。
13C−NMRスペクトルを図6に示す。
赤外吸収スペクトルを図7に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 107℃
【0174】
<合成例3>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38:化合物 No.16)の合成。
【0175】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに1-ヨードナフタレンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM38に示す構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0176】
【化15】
【0177】
質量分析:m/e 922(M+)
1H−NMRスペクトルを図8に示す。
13C−NMRスペクトルを図9に示す。
赤外吸収スペクトルを図10に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 125℃
【0178】
<合成例4>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM35:化合物 No.10)の合成。
【0179】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに3-ヨードビフェニルを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM35に示す構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0180】
【化16】
【0181】
質量分析:m/e 974(M+)
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 120℃
【0182】
<合成例5>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM73:化合物No.26)の合成。
【0183】
合成例1と同様にして、N,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-1,4-フェニレンジアミンを得た。
【0184】
200mlの反応容器にN,N'-ジフェニル-N-3-トリルフェニレンジアミン17.5gと1,4-ジヨードベンゼン32gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査をアセトンで洗浄後、この残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n- ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N-3-トリル-N'-4-(ヨードフェニル)-1,4-フェニレンジアミン20gを得た。
【0185】
次いで、200mlの反応容器にN,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-N'-(4-ヨードフェニル)-1,4-フェニレンジアミン13.8gとN,N'-ジフェニルベンジジン4.28gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム26gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン8gを得た。このうち、2gを昇華精製し、1.8gのわずかに淡黄色を示したガラス状で強い青色蛍光を示す化合物を得た。この化合物は下記HIM73で示される構造を有する。
【0186】
【化17】
【0187】
質量分析:m/e 1184(M+)
1H−NMRスペクトルを図11に示す。
13C−NMRスペクトルを図12に示す。
赤外吸収スペクトルを図13に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 122℃
【0188】
<合成例6>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM74:化合物No.25)の合成。
【0189】
合成例5において、3-ヨードトルエンの代わりに4-ヨードトルエンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM74で示される構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-(N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)ベンジジンを得た。
【0190】
【化18】
【0191】
質量分析:m/e 1184(M+)
1H−NMRスペクトルを図14に示す。
13C−NMRスペクトルを図15に示す。
赤外吸収スペクトルを図16に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 126℃
【0192】
<合成例7>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM78:化合物 No.40)の合成。
【0193】
合成例5において、3-ヨードトルエンの代わりに1-ヨードナフタレンを用いたほかは合成例5と同様にして、下記HIM78で示される構造の、N,N'-ジフェニル-N,N-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジンを得た。
【0194】
【化19】
【0195】
質量分析:m/e 1256(M+)
1H−NMRスペクトルを図17に示す。
13C−NMRスペクトルを図18に示す。
赤外吸収スペクトルを図19に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 138℃
【0196】
<合成例8>
N,N''-ジフェニル-N,N''-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]-1.1''-ターフェニル-4,4''-ジアミン(HTL103:化合物 No.359)の合成。
【0197】
1000mlの反応容器に、26gの4,4''-ジアミノ-p-ターフェニルと、純水200mlと、濃塩酸100mlを投入し、懸濁状態のまま撹拌し、容器を氷浴に浸けた。5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウム15gを純水200mlに溶かした水溶液をゆっくり滴下し、室温に戻して2時間撹拌した。この反応溶液から有機層を酢酸エチルで抽出し、洗浄し、乾燥した。得られた褐色液を、3回シリカゲルカラム精製し、4,4''-ジヨード-p-ターフェニル30gを得た。
【0198】
200mlの反応溶器に、N,N'-ジフェニル-N-3-トリルフェニレンジアミン21gと4,4''-ジヨード-p-ターフェニル10gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、下記HTL103で示される構造のN,N''-ジフェニル-N,N''-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]-1,1''-ターフェニル-4,4''-ジアミン15gを得た。
【0199】
【化20】
質量分析:m/e 926(M+)
【0200】
<合成例9>
N,N''-ジフェニル-N,N''-ビス(N,N-ジフェニルアミノフェニル)ベンジジン(HIM30:化合物 No.1)の合成その2。
【0201】
合成例1において、3−ヨードトルエンの代わりにヨードベンゼンを用いた。
質量分析:m/e 822(M+)
示差走査熱量測定
融点 246℃
ガラス転移温度(DSC) 107℃
結晶化温度 212℃
合成例1から合成例8の化合物に比べ、多少結晶性が高くなっているが、蒸着時の膜物性はアモルファス状態であった。
【0202】
<実施例1>
厚さ100nmのITO透明電極(ホール注入電極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UVオゾン洗浄後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10-6Torr(10-4Pa)まで減圧した。
【0203】
次いで、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM33:化合物 No.3)を蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着し、ホール注入層とした。
【0204】
下記に示す構造の、N,N,N',N'-テトラキスビス-(-3-ビフェニル-1-イル)ベンジジン(TPD)と、ルブレンとを重量比10:1、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、ホール輸送性発光層とした。
【0205】
【化21】
【0206】
次いで、減圧状態を保ったまま、電子注入輸送層として、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着した。
【0207】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.
2nm/sec で200nmの厚さに蒸着して電子注入電極とし、保護層としてAlを100nm蒸着し有機EL素子を得た。
【0208】
この有機EL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・850mA/cm2で25,200cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥アルゴン雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかったいた。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で500hr(初期輝度2,030cd/m2 初期駆動電圧6.55V 駆動電圧上昇3.5V)であった。
【0209】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0210】
<実施例2>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4- トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を用いた。
【0211】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・720mA/cm2で26,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で800hr(2,040cd/m2 初期駆動電圧6.59V 駆動電圧上昇3.0V)であった。
【0212】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0213】
<実施例3>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38:化合物 No.16)を用いた。
【0214】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・825mA/cm2で26,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.48y=0.50)の発光がトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を蒸着確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,600hr(1,923cd/m2 初期駆動電圧6.59V 駆動電圧上昇1.5V)であった。
【0215】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0216】
<実施例4>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM73:化合物No.26)を用いた。
【0217】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・1,155mA/cm2で24,800cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,000hr(1,841cd/m2初期駆動電圧6.76V 駆動電圧上昇2.5V)であった。
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および120℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0218】
<実施例5>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM74:化合物 No.25)を用いた。
【0219】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・1155mA/cm2で24800cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =564nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,000hr(1,841cd/m2 初期駆動電圧6.76V 駆動電圧上昇1.5V)であった。
【0220】
さらに、同様にして作成した素子を85℃および120℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0221】
<実施例6>
実施例1のHIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM35:化合物 No.10)あるいはN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM78:化合物 No.40)を用いたところ実施例1と同等の結果を得た。また、他の例示化合物でも同等の結果を得た。
【0222】
<実施例7>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、実施例1のホール輸送性発光層を、ホール輸送材料のTPDと、下記構造の発光材料のルブレンと、下記構造の電子注入材料のアルミキノリノール(Alq3)を、混合重量比5:5:1で、3源共蒸着で40nm厚の混合層を成膜して混合発光層とし、その後アルミキノリノール(Alq3)を電子注入輸送層として30nm蒸着した。
【0223】
【化22】
【0224】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・980mA/cm2で26,300cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で30,00hr(2,350cd/m2 駆動電圧上昇1.0V)、初期輝度300cd/m2では、10,000hr以上であった。
【0225】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0226】
<実施例8>
実施例1のホール輸送性発光層をTPDのみのホール輸送層とし、Alq3の電子注入輸送層を10nmとし、このホール輸送層と電子注入輸送層との間に、30nmの厚さのテトラフェニルエテンあるいはフェニルアントラセンの発光層を設けたところ、上記と同等の結果を得た。
【0227】
<比較例1>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、HIM33(化合物 No.3)の代わりに、下記構造の、4,4',4''-トリス[-N-(-3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)を用いた。
【0228】
【化23】
【0229】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、14V ・767mA/cm2で21,400cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.48y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で400hr(2,120cd/m2 初期駆動電圧7.9V 駆動電圧上昇4.5V)であった。
【0230】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、10時間で発光面にムラを生じた。また、ダークスポットの発生・成長が著しかった。
【0231】
<比較例2>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、HIM33(化合物 No.3)の代わりに、下記構造の銅フタロシアニンを10nmの厚さで用いた。
【0232】
【化24】
【0233】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、14V ・532mA/cm2で21,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で200hr(1,873cd/m2 初期駆動電圧6.50V 駆動電圧上昇8.0V)まで確認したが、ダークスポットの発生が著しく、正確な輝度の測定はできなかった。
【0234】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、10時0間で発光面にムラを生じた。また、ダークスポットの発生・成長が著しかった。
【0235】
<実施例9>
厚さ100nmのITO透明電極(ホール注入電極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UVオゾン洗浄後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10-6Torr(10-4Pa)まで減圧した。
【0236】
次いで、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに蒸着した。
さらに、減圧状態を保ったまま、Alを蒸着速度2nm/secで200nmの厚さに蒸着して電子注入電極とし、単層の素子を得た。
【0237】
この素子に電圧を印加して電流を流したところ、5Vで100mA/cm2の電流が流れた。この素子を100mA/cm2で定電流駆動したところ、1000時間安定して電流を流し、その間の電圧上昇は0.5V であった。さらに、この素子の電圧対電流密度特性を測定した。結果を図20に示す。
【0238】
また、上記N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を積層した後、タイムオブフライト法によりホール移動度を測定したところ、2.7×10-3cm2/Vsであった。この値は、一般的なホール注入輸送性物質であるTPD〔N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ジフェニル-1,1-ビフェニル-4.4'-ジアミン〕と比較して、2倍以上速い移動度である。
【0239】
<比較例3>
実施例9において、HIM34に代えて上記MTDATAを用いた他は実施例9と同様にして素子を得た。
【0240】
この素子に電圧を印加して電流を流したところ、5v で20mA/cm2の電流しか流れなかった。この素子を100mA/cm2で定電流駆動したところ、1000時間安定して電流を流したが、その間の電圧上昇は3.1V であった。さらに、この素子の電圧対電流密度特性を測定した。結果を図20に示す。
【0241】
図20から明らかなように、本発明の素子は、ホールの供給効率が高いため、同じ電圧でより多くの電流密度が得られることがわかる。
【0242】
<実施例10>
実施例2において、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を含有するホール注入層の膜厚を50nmから300nmに変えた他は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0243】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・800mA/cm2で24,500cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥アルゴン雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1500hr(初期輝度1800cd/m2、初期駆動電圧7.6V、駆動電圧上昇3.0V)であった。
【0244】
さらに、同様にして作製した素子を85℃の恒温槽に放置したところ、500時間後も発光面に発光ムラは確認できなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生、成長は確認されなかった。
【0245】
以上の結果から、本発明の化合物を含有する層を厚くした場合でも、殆ど駆動電圧は上昇しないことがわかる。
【0246】
以上より本発明の化合物を用いた有機EL素子は、素子の駆動時の駆動電圧上昇や輝度の低下、電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長を抑え、輝度の低下が小さく、高輝度で、高耐熱性等の信頼性が高く、ホール注入電極や組み合わせる有機材料に最適な仕事関数を提供可能となり、連続発光信頼性の高い素子が得られる。
また、ホール移動度が高く、より多くの電流密度を得ることの可能な有機EL素子が得られる。
【符号の説明】
【0247】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 正孔注入輸送層
5 発光層
6 電子注入輸送層
7 陰極
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(電界発光)素子に関し、詳しくは、有機化合物からなる積層構造薄膜に電界を印加して光を放出する素子に関する。さらに詳しくは、ホール注入層に特定なトリアリールアミン多量体を用いることで、低駆動電圧、安定な発光、高表示品位、高耐熱性を持つ有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、蛍光性有機化合物を含む薄膜を、電子注入電極(陰極)とホール注入電極(陽極)とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子およびホールを注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光する素子である。
【0003】
有機EL素子の特徴は、10V以下の低電圧で数100〜数10000cd/m2程度の高輝度の面発光が可能であり、また蛍光物質の種類を選択することにより青色から赤色までの発光が可能なことである。
【0004】
一方、有機ELの問題点は、発光寿命が短く、保存耐久性、信頼性が低いことであり、この原因としては、
(1)有機化合物の物理的変化(結晶ドメインの成長などにより界面の不均一化が生じ、素子のホール注入能の劣化・短絡・絶縁破壊の原因となる。特に分子量500以下の低分子化合物を用いると結晶粒の出現・成長が起こり、膜性が著しく低下する。また、ITO等の界面が荒れていても、顕著な結晶粒の出現・成長が起こり、発光効率の低下や、電流のリークを起こし、発光しなくなる。また、部分的非発光部であるダークスポットの原因にもなる。)
(2)電子注入電極の酸化・剥離(電子の注入を容易にするために仕事関数の小さな金属としてNa・K・Li・Mg・Ca・Al等を用いて来たが、これらの金属は大気中の水分や酸素と反応したり、有機層と電子注入電極の剥離が起こり、ホール注入出来なくなる。特に高分子化合物などを用い、スピンコートなどで成膜した場合、成膜時の残留溶媒・水分や分解物が電極の酸化反応を促進し、電極の剥離が起こり部分的な非発光部を生じさせる。)
(3)発光効率が低く、発熱量が多い事。
(有機化合物中に電流を流すので、高い電界強度下に有機化合物を置かねばならず、発熱からは逃れられない。その熱のため、有機化合物の溶融・結晶化・熱分解などにより素子の劣化・破壊が起こる。)
(4)有機化合物層の光化学的変化・電気化学的変化(有機物に電流を流すことで有機物が劣化し、電流トラップ・励起子トラップ等の欠陥を生じ、駆動電圧の上昇、輝度の低下等の素子劣化が起こる。)
などが挙げられる。
【0005】
また、実用の発光デバイスでは色々な環境下で用いられるが、特に高温の環境では、有機化合物の物理的変化である結晶化・有機物の移動・拡散等の有機分子の再配列を起こし、表示品位の低下や、素子の破壊を引き起こす。
【0006】
また、有機材料と無機材料の界面であるホール注入電極や電子注入電極界面、特にホール注入電極界面は成膜時の有機物層の膜性に大きな影響を及ぼし、状態によってはホール注入電極上に有機物層が不均一に成膜されたり、良好な界面が形成できない等の不具合を生じる。
【0007】
このため従来、有機EL発光素子のホール注入電極界面に、フタロシアニン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン蒸着膜、アミン多量体等の材料を用いることが報告されている。しかしながら、フタロシアニン(特許文献1あるいは特許文献2)を用いるとフタロシアニン自身が微結晶性で、上に載せる材料の結晶化を促進するため、初期状態では良好でも長期的にはダークスポットや、発光ムラ等の原因となり好ましくない。また、ポリフェニレンビニレンはスピンコート等のウエットプロセスを用いるため、水分等空気中の不純物を巻き込んだり、前駆体から変換する際の脱離基等のイオン性不純物が混入するため、電極の酸化が速く、著しい輝度劣化や駆動電圧の上昇の原因となる。
【0008】
また、ポリチオフェン蒸着膜はポリチオフェンの重合度や蒸着時ののばらつきが大きく、良好な素子作製の再現性が低い事や、ポリチオフェン自身が可視光領域に光吸収を持っているため膜厚を厚くすることが困難であり、ITOの表面状態を十分に改質出来ない等の不具合が生じる。また、アミン系多量体としては、デンドリマー材料(特許文献3)やテトラアミン材料(特許文献4)やトリアミン材料(特許文献5)等が報告されているが、十分な耐熱性、特に高温保存状態においてホール注入電極上での膜の均一性・安定性は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4720432号明細書
【特許文献2】特開昭63−295695号公報
【特許文献3】特開平4-308688号公報
【特許文献4】米国特許第439627号明細書
【特許文献5】特開平8-193191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に物理的変化や光化学的変化、電気化学的変化の少ない光・電子機能材料を用い、信頼性および発光効率の高い種々の発光色を持った、有機EL素子を提供することである。
また、アモルファス性が高く、ホール注入電極との相性が高い化合物を蒸着法で形成した有機薄膜を用い、素子の駆動時の駆動電圧上昇や輝度の低下、電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長を抑え、輝度の低下が小さく、高耐熱性等の信頼性が高く、かつ高輝度な有機EL素子を提供することである。
また、多層膜を用いた有機EL素子において、ホール注入電極や組み合わせる有機材料に最適な仕事関数をもたせ、かつ耐熱性の高い有機EL素子を提供することである。
また、ホール移動度が高く、より多くの電流密度を得ることの可能な有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。
(1)有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する有機EL素子。
【0012】
【化1】
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、およびR04 は、それぞれ、
【化2】
を表わす。ここで、R11およびR12は、置換または非置換のアリール基を表わす。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ、0〜5員の整数であるがr1+r2+r3+r4 は1以上である。)
【0013】
(2)前記L0で表されるフェニレン基群が、4,4’−ビフェニレン基である(1)の有機EL素子。
(3)少なくとも2層以上の有機化合物層を有し、(1)または(2)の有機化合物層がホール注入輸送機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
(4)少なくともホール注入機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層とを含有する3層以上の有機化合物層を有し、(1)または(2)の有機化合物層が前記ホール注入機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
(5)前記有機化合物層の少なくとも1層に発光層を有し、この発光層はホール輸送性化合物と電子輸送性化合物とを含有する(3)または(4)の有機EL素子。
(6)前記発光層は、ホール注入機能を有する有機化合物層および/またはホール輸送機能を有する有機化合物層と、電子輸送機能を有する有機化合物層および/または電子注入機能を有する有機化合物層との間に存在する(5)の有機EL素子。
(7)ホール注入電極上に、少なくとも(3)のホール注入輸送機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
(8)ホール注入電極上に、少なくとも(4)のホール注入機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
(9)前記ホール注入機能を有する有機化合物層の膜厚が100nm以上である(3)〜(8)のいずれかの有機EL素子。
(10)前記化合物を含有する層は、ホール移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上である(5)〜(9)のいずれかの有機EL素子。
(11)前記化合物を含有する層のホールの移動度は、発光層のホール移動度の1/2以下である(5)〜(10)のいずれかの有機EL素子。
【発明の効果】
【0014】
本発明の有機EL素子は上記式(I)で表される化合物をホール(ホール)注入層もしくはホール注入輸送層に用いるため、薄膜性が良好となりムラが無く均一な発光が可能である。また、大気下で一年以上安定であり結晶化を起こさない。また、ホール注入効率を最適化するため、分子構造にフェニレンジアミン骨格と、ホール移動度を向上させるためベンジジン骨格(ビフェニルジアミン)や、複数のフェニレンに対しジアミンを持つ骨格を共に有することを特徴とする。また、高温駆動にも耐えられ、低駆動電圧・低駆動電流で効率よく発光する。さらに、本発明の有機EL素子は、連続駆動時に駆動電圧の上昇が小さい。なお、本発明のEL素子の発光極大波長は、400〜700nm程度である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の有機EL素子の構成例を示した概略構成図である。
【図2】合成例1の1H−NMRスペクトル図である。
【図3】合成例1の13C−NMRスペクトル図である。
【図4】合成例1の赤外吸収スペクトル図である。
【図5】合成例2の1H−NMRスペクトル図である。
【図6】合成例2の13C−NMRスペクトル図である。
【図7】合成例2の赤外吸収スペクトル図である。
【図8】合成例3の1H−NMRスペクトル図である。
【図9】合成例3の13C−NMRスペクトル図である。
【図10】合成例3の赤外吸収スペクトル図である。
【図11】合成例5の1H−NMRスペクトル図である。
【図12】合成例5の13C−NMRスペクトル図である。
【図13】合成例5の赤外吸収スペクトル図である。
【図14】合成例6の1H−NMRスペクトル図である。
【図15】合成例6の13C−NMRスペクトル図である。
【図16】合成例6の赤外吸収スペクトル図である。
【図17】合成例7の1H−NMRスペクトル図である。
【図18】合成例7の13C−NMRスペクトル図である。
【図19】合成例7の赤外吸収スペクトル図である。
【図20】本発明のホール注入輸送性材料であるHIM34と、従来のMTDATAとの、電圧対電流密度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機EL素子は、有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が上記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する。
【0017】
上記式(I)について説明すると、式(I)において、L0はフェニレン基群を表す。L0で表されるフェニレン基群は、o−,p−,m−のいずれでもよく、これらが混在していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。例えば、2環のフェニレン基として表されるビフェニレン基としては、4,4’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基のいずれであってもよいが、特に4,4’−ビフェニレン基が好ましい。3環のフェニレン基として表されるターフェニレン基としてはo−,p−,m−ターフェニレン基のいずれであってもよいが、特にp−ターフェニレン基(4,4’、4’’−ターフェニレン基)が好ましい。4環のフェニレン基として表されるクアテルフェニレン基としてはo−,p−,m−のいずれのフェニレン基を含有していてもよいが、特にp−フェニレン基からなる4,4’、4’’、4’’’−クアテルフェニレン基が好ましい。また、4環のフェニレン基を有する場合、その中間に置換または非置換のフェニルアミノ基を有していてもよい。
この場合の置換基としては、下記R11,R12と同様である。
【0018】
R01,R02,R03およびR04はそれぞれ、
【化3】
のいずれかを表す。R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17はそれぞれ非置換または置換基を有するアリール基を表す。R11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、非置換または置換基を有するアリール基またはアルコキシ基、アリーロキシ基および
【化4】
基等が挙げられる。ここで、R21およびR22はそれぞれ、非置換または置換基を有するアリール基を表す。
【0019】
R21およびR22で表されるアリール基としては、単環または多環のものであってよく、総炭素数6〜20のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基およびo−,m−またはp−ビフェニル基等が挙げられ、特に好ましくはフェニル基が挙げられる。これらアリール基はさらに置換されていてもよく、このような置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、非置換または置換基を有するアリール基を表す。また、前記アルキル基としては好ましくはメチル基が挙げられ、前記アリール基としては好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0020】
また、r1, r2,r3およびr4はそれぞれ0〜5、特に0〜2の整数を表すが、特に0または1であることが好ましい。そして、r1+r2+r3+r4は、1以上、特に1〜4、さらには2〜4が好ましい。前記R01,R02,R03およびR04は、Nの結合位置に対してメタ位あるいはパラ位に結合し、R01,R02,R03およびR04の全てがメタ位、R01,R02,R03およびR04の全てがパラ位あるいはR01,R02,R03およびR04がメタ位あるいはパラ位に結合しても、これらが混在していてもよい。r1,r2,r3またはr4が2以上である場合、R01,R02,R03またはR04は同一でも異なっていてもよい。
【0021】
このような、化合物の好ましい具体例を下記の式(II)〜(VII)に示す。
【化5】
【0022】
また、前記R01,R02,R03およびR04の好ましい具体例を以下の表1〜表78に示す。なお、表中R01,R02,R03およびR04は、それぞれR1,R2,R3およびR4と、フェニレン基が4環であってその中間にフェニルアミノ基を有する式(VII)の置換基R05をR5と表す。また、上記式(II)〜(VII)を一般式として表す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【表5】
【0028】
【表6】
【0029】
【表7】
【0030】
【表8】
【0031】
【表9】
【0032】
【表10】
【0033】
【表11】
【0034】
【表12】
【0035】
【表13】
【0036】
【表14】
【0037】
【表15】
【0038】
【表16】
【0039】
【表17】
【0040】
【表18】
【0041】
【表19】
【0042】
【表20】
【0043】
【表21】
【0044】
【表22】
【0045】
【表23】
【0046】
【表24】
【0047】
【表25】
【0048】
【表26】
【0049】
【表27】
【0050】
【表28】
【0051】
【表29】
【0052】
【表30】
【0053】
【表31】
【0054】
【表32】
【0055】
【表33】
【0056】
【表34】
【0057】
【表35】
【0058】
【表36】
【0059】
【表37】
【0060】
【表38】
【0061】
【表39】
【0062】
【表40】
【0063】
【表41】
【0064】
【表42】
【0065】
【表43】
【0066】
【表44】
【0067】
【表45】
【0068】
【表46】
【0069】
【表47】
【0070】
【表48】
【0071】
【表49】
【0072】
【表50】
【0073】
【表51】
【0074】
【表52】
【0075】
【表53】
【0076】
【表54】
【0077】
【表55】
【0078】
【表56】
【0079】
【表57】
【0080】
【表58】
【0081】
【表59】
【0082】
【表60】
【0083】
【表61】
【0084】
【表62】
【0085】
【表63】
【0086】
【表64】
【0087】
【表65】
【0088】
【表66】
【0089】
【表67】
【0090】
【表68】
【0091】
【表69】
【0092】
【表70】
【0093】
【表71】
【0094】
【表72】
【0095】
【表73】
【0096】
【表74】
【0097】
【表75】
【0098】
【表76】
【0099】
【表77】
【0100】
【表78】
【0101】
また、本発明の化合物は、下記に示すような構造を有していてもよい。
【化6】
【0102】
【化7】
【0103】
【化8】
【0104】
本発明の化合物は、例えば1級または2級の芳香族アミンと、芳香族ヨウ化物とを銅などの触媒を用いて縮合するウルマン反応で合成することができる。また、R01,R02とR03,R04が非対称の場合(ビフェニルの両側が非対称)には、R01,R02と、R03,R04とが、それぞれ対応するアミンを合成し、ビフェニル部を最後にカップリングしてもよい(グアニンカップリング、Ni(dppp)Cl2等)。
【0105】
以下の(1)〜(4)に具体的な合成例を挙げる。(1)では、4,4'- ジヨードビフェニルと式(A)で表される化合物を用い、(2)では式(B)と式(C)
で表される化合物を用い、銅を触媒としてカップリングして、それぞれ式(D)で表される非対称化合物を得ている。(3)では、式(E)で表される化合物と式(F)で表される化合物とをNi(dppp)Cl2を用いてカップリングし、式(G)で表される非対称化合物を得ている。(4)では、式(H)で表される化合物から、式(I)で表される化合物を経て、これと式(J)で表される化合物とから、式(K)で表される非対称化合物を得ている。ここで、下記(A)〜(K)におけるR30,R41,R45およびR50は、それぞれ式(I)におけるR01,R02,R03およびR04と同義であり、R32,R33,R42,R43,R46,R47,R52およびR53は、それぞれ式(I)におけるR11,R12,R13,R14,R15,R16およびR17と同義である。
【0106】
【化9】
【0107】
【化10】
【0108】
【化11】
【0109】
本発明の化合物は、質量分析、赤外吸収スペクトル(IR)、1H,13C核磁気共鳴スペクトル(NMR)等によって同定することができる。
【0110】
これらの本発明の化合物は、640〜2000程度の分子量をもち、190〜300℃の高融点を有し、80〜200℃の高ガラス転移温度を示し、通常の真空蒸着等により透明で室温以上でも安定なアモルファス状態を形成し、平滑で良好な膜として得られ、しかもそれが長期間に渡って維持される。なお、本発明の化合物のなかには融点を示さず、高温においてもアモルファス状態を呈するものもある。従ってバインダー樹脂を用いることなく、それ自体で安定で均一な薄膜を得ることができる。
【0111】
本発明の化合物を用いることにより、ホール移動度が向上し、素子の電流密度が増大する。本発明の化合物により得られる好ましいホール移動度としては、1.0×10-3cm2/Vs以上、特に1.1×10-3〜100×10-3cm2/Vs、さらには1.1×10-3〜20.0×10-3cm2/Vsである。また、発光層におけるホール移動度が本発明化合物の1/2以下、特に1/4〜1/1000、さらには1/4〜1/100程度であることが好ましい。このようにホール移動度が優れているため、本発明の化合物によりホール注入層を形成した場合、その膜厚が100nm以上、特に200nm以上であっても素子を問題なく動作させることができる。なお、その上限は特に限定されるものではないが、通常、5000nm程度である。実際には、各層の光学的屈折率を考慮し、光取り出しが最適で、視野角等にも問題がない用に膜厚を設定すればよい。
本発明の化合物は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0112】
本発明のEL素子は、少なくとも1層の有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が本発明の化合物を含有する。本発明の有機EL素子の構成例を図1に示す。同図に示される有機EL素子は、ホール注入電極3、ホール注入・輸送層4、発光層5、電子注入輸送層6、電子注入電極7を順次有し、さらにガラス基板2上に、カラーフィルター8、蛍光変換フィルター9、前記有機EL素子、封止層10、カバー11を順次積層、形成することにより有機ELカラーディスプレイとなる。
【0113】
発光層は、ホールおよび電子の注入機能、それらの輸送機能、ホールと電子の再結合により励起子を生成させる機能を有する。ホール注入輸送層は、ホール注入電極からのホールの注入を容易にする機能、ホールを安定に輸送する機能および電子の輸送を妨げる機能を有し、電子注入輸送層は、電子注入電極からの電子の注入を容易にする機能、電子を安定に輸送する機能およびホールの輸送を妨げる機能を有するものであり、これらの層は、発光層へ注入されるホールや電子を増大・閉じ込めるさせ、再結合領域を最適化させ、発光効率を改善する。電子注入輸送層およびホール注入輸送層は、発光層に用いる化合物の電子注入、電子輸送、ホール注入、ホール輸送の各機能の高さを考慮し、必要に応じて設けられる。例えば、発光層に用いる化合物のホール注入輸送機能または電子注入輸送機能が高い場合には、ホール注入輸送層または電子注入輸送層を設けずに、発光層がホール注入輸送層または電子注入輸送層を兼ねる構成とすることができる。また、場合によってはホール注入輸送層および電子注入輸送層のいずれも設けなくてよい。また、ホール注入輸送層および電子注入輸送層は、それぞれにおいて、注入機能を持つ層と輸送機能を持つ層とに別個に設けてもよい。
【0114】
また、組み合わせる発光層や、電子注入輸送層や、ホール注入輸送層などのキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設定することが可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能にできる。
【0115】
本発明の化合物は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層あるいはホール注入輸送層のいずれにも適用可能であるが、ホール注入性が良好であるので、ホール注入層あるいはホール注入輸送層、特にホール注入層に用いることが好ましい。
【0116】
本発明の化合物は、フェニレンジアミン骨格と、ベンジジン骨格等の複数のフェニレンを持つジアミン骨格を共に有することで耐熱性を犠牲にせず、イオン化ポテンシャルやキャリア移動度を自由にコントロールでき、組み合わせる材料に応じてホール注入効率を最適化できる。
【0117】
本発明の化合物をホール注入輸送層に用いる場合について説明する。ホール注入輸送層は、本発明の化合物を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングして形成すればよい。特に蒸着を行えば良好なアモルファス膜が得られる。
【0118】
本発明の化合物をホール注入輸送層に用いる場合、発光層に用いる蛍光性物質は、より長波長の蛍光をもつものから選択すればよく、例えば、上記した、発光層において本発明の化合物と併用される蛍光性物質の1種以上から適宜選択すればよい。なお、このような場合、発光層にも本発明の化合物を用いることができる。
【0119】
この場合、本発明の化合物を用いることもできるが、本発明の化合物はフェニレンジアミン骨格を有するため、ドナー性が非常に強く、発光材料とエキサイプレックス等の蛍光強度の低下を招く相互作用を起こしやすい。そのため、発光光率の低下や、発光スペクトルのブロード化による色純度の低下等の弊害が生じるため好ましくはない。しかしながら、相互作用の無い発光材料を用いたときにはホール輸送材料として用いることができる。
【0120】
またホール注入輸送層には、一種以上のホール注入輸送材料を組み合わせてもよい。特に好ましいのは、組み合わせるホール輸送材料をイオン化ポテンシャルの小さい順にITO上に、例えば、ホール注入層、ホール輸送層と積層することが好ましく、ITO表面には、薄膜性が良好で、親水性にバラツキのあるITO表面上でも均一な薄膜を形成することのできるホール注入材料を用いることが好ましい。素子化する場合、蒸着を用いる事ができるので、1〜10nm程度の薄い膜も、均一かつピンホールフリーとする事が出来る。また、膜厚、屈折率などを調整することで、発光色や発光輝度、発光の空間分布等の干渉光効果を利用して効率の低下を防ぐことが出来る。
【0121】
また、発光層に面するホール輸送層には、特開昭63−295695号公報、特開平5−234681号公報、同7−43564号公報に開示されている発光材料と相互作用し難い、ベンジジン骨格のみを持つトリアリールアミン多量体を用いることが好ましい。
【0122】
本発明では、発光層に蛍光物質を含有させてもよい。このような蛍光性物質としては、例えば、特開昭63−264692号公報に開示されているような化合物、例えばキナクリドン、ルブレン、スチリル系色素等の化合物から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体色素などのキノリン誘導体、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、12−フタロペリノン誘導体等が挙げられる。さらには、特願平6−110569号のフェニルアントラセン誘導体、特願平6−114456号のテトラアリールエテン誘導体等も挙げられる。
【0123】
また、それ自体で発光が可能なホスト物質と組み合わせて使用することが好ましく、ドーパントとしての使用が好ましい。このような場合の発光層における化合物の含有量は0.01〜10wt%、さらには0.1〜5wt%であることが好ましい。ホスト物質と組み合わせて使用することによって、ホスト物質の発光波長特性を変化させることができ、長波長に移行した発光が可能になるとともに、素子の発光効率や安定性が向上する。
【0124】
ホスト物質としては、キノリノラト錯体が好ましく、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とするアルミニウム錯体が好ましい。このようなアルミニウム錯体としては、特開昭63−264692号、特開平3−255190号、特開平5−70733号、特開平5−258859号、特開平6−215874号等に開示されているものを挙げることができる。
【0125】
具体的には、まず、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム、ビス(ベンゾ{f}−8−キノリノラト)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノラト)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム、8−キノリノラトリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノラト)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノラト)カルシウム、5,7−ジクロル−8−キノリノラトアルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−ヒドロキシキノリノラト)アルミニウム、ポリ[亜鉛(II)−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリニル)メタン]、等がある。
【0126】
また、8−キノリノールないしその誘導体のほかに他の配位子を有するアルミニウム錯体であってもよく、このようなものとしては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタークレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,4−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,6−ジフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,4,6−トリフェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,6−トリメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(1−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(オルト−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(メタ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジメチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラト)(パラ−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラト)(パラ−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラト)(オルト−クレゾラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−6−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)(2−ナフトラト)アルミニウム(III)等がある。
【0127】
このほか、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(4−エチル−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシキノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(5−シアノ−2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)等であってもよい。
【0128】
このほかのホスト物質としては、特願平6−110569号に記載のフェニルアントラセン誘導体や特願平6−114456号に記載のテトラアリールエテン誘導体なども好ましい。
【0129】
フェニルアントラセン誘導体は、下記式(VIII)で表されるものである。
A1 −L1 −A2 (VIII)
式(VIII)において、A1およびA2は、各々モノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
A1、A2で表されるモノフェニルアントリル基またはジフェニルアントリル基は、無置換でも置換基を有するものであってもよく、置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。また、このような置換基の置換位置は特に限定されないが、アントラセン環ではなく、アントラセン環に結合したフェニル基であることが好ましい。また、アントラセン環におけるフェニル基の結合位置はアントラセン環の9位、10位であることが好ましい。
【0130】
式(VIII)において、L1は単結合またはアリーレン基を表す。L1で表されるアリーレン基としては、無置換であることが好ましく、具体的にはフェニレン基、ビフェニレン基、アントリレン基等の通常のアリーレン基の他、2個ないしそれ以上のアリーレン基が直接連結したものが挙げられる。L1としては、単結合、p−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基等が好ましい。
【0131】
また、L1で表されるアリーレン基は、2個ないしそれ以上のアリーレン基が、アルキレン基、−O−、−S−または−NR−が介在して連結するものであってもよい。ここで、Rはアルキル基またはアリール基を表す。アルキル基としてはメチル基、エチル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基等が挙げられる。なかでも、アリール基が好ましく、上記のフェニル基のほか、A1、A2であってもよく、さらにはフェニル基にA1またはA2が置換したものであってもよい。また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基等がこの好ましい。このようなアリーレン基の具体例を以下に示す。
【0132】
また、テトラアリールエテン誘導体は下記式(IX)で表されるものである。
【化12】
式(IX)において、Ar1、Ar2およびAr3は、各々芳香族残基を表し、これらは同一でも異なるものであってもよい。
【0133】
Ar1〜Ar3で表される芳香族残基としては、芳香族炭化水素基(アリール基)、芳香族複素環基が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、単環もしくは多環の芳香族炭化水素基であってよく、縮合環や環集合も含まれる。芳香族炭化水素基は、総炭素数が6〜30のものが好ましく、置換基を有するものであってもよい。置換基を有する場合の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アリールフェニル基、アリーロキシフェニル基、アミノフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、ペリレニル基などが挙げられる。
【0134】
また、芳香族複素環基としては、ヘテロ原子としてO、N、Sを含むものが好ましく、5員環であっても6員環であってもよい。具体的には、チエニル基、フリル基、ピローリル基、ピリジル基などが挙げられる。
Ar1〜Ar3で表される芳香族基としては、特にフェニル基が好ましい。
nは2〜6の整数であり、特に2〜4の整数であることが好ましい。
【0135】
L2はn価の芳香族残基を表すが、特に芳香族炭化水素、芳香族複素環、芳香族エーテルまたは芳香族アミンから誘導される2〜6価、特に2〜4価の残基であることが好ましい。これらの芳香族残基は、さらに置換基を有するものであってもよいが、無置換のものが好ましい。
【0136】
式(IX)の化合物を用いる発光層としては、上記のホスト物質と組み合わせるものとする他、少なくとも一種以上のホール注入輸送性化合物と少なくとも1種以上の電子注入輸送性化合物との混合層とすることも好ましく、この混合層中にドーパントを含有させることが好ましい。このような混合層における化合物の含有量は、0.01〜20wt% 、さらには0.1〜15wt% とすることが好ましい。
【0137】
混合層では、キャリアのホッピング伝導パスができるため、各キャリアは極性的に優勢な物質中を移動し、逆の極性のキャリア注入は起こり難くなり、有機化合物がダメージを受け難くなり、素子寿命がのびるという利点がある。そして、更に式(IX)の化合物をこのような混合層に含有させることにより、混合層自体のもつ発光波長特性を変化させることができ、発光波長を長波長に移行させることができるとともに、発光強度を高め、かつ素子の安定性が向上する。
【0138】
混合層に用いられるホール注入輸送性化合物および電子注入輸送性化合物は、各々、ホール注入輸送層用の化合物および電子注入輸送層用の化合物の中から選択することもできる。なかでも、混合する電子注入輸送性の化合物としては、キノリン誘導体、さらには8−キノリノールないしその誘導体を配位子とする金属錯体、特にトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を用いることが好ましい。また、上記のフェニルアントラセン誘導体、テトラアリールアミン誘導体を用いるのも好ましい。
【0139】
ホール注入輸送層用の化合物としては、強い蛍光を持ったアミン誘導体、例えば上記のホール輸送材料であるテトラフェニルジアミン誘導体、さらにはスチリルアミン誘導体、芳香族縮合環を持つアミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0140】
この場合の混合比は、それぞれのキャリア移動度とキャリア濃度を考慮する事で決定するが、一般的には、ホール注入輸送性化合物の化合物/電子注入輸送機能を有する化合物の重量比が、1/99〜99/1、さらには10/90〜90/10、特には20/80〜80/20程度)となるようにすることが好ましい。
【0141】
また、混合層の厚さは、分子層一層に相当する厚みから、有機化合物層の膜厚未満とすることが好ましく、具体的には1〜85nmとすることが好ましく、さらには5〜60nm、特には5〜50nmとすることが好ましい。
【0142】
また、混合層の形成方法としては、異なる蒸着源より蒸発させる共蒸着が好ましいが、蒸気圧(蒸発温度)が同程度あるいは非常に近い場合には、予め同じ蒸着ボード内で混合させておき、蒸着することもできる。混合層は化合物同士が均一に混合している方が好ましいが、場合によっては、化合物が島状に存在するものであってもよい。発光層は、一般的には、有機蛍光物質を蒸着するか、あるいは樹脂バインダー中に分散させてコーティングすることにより、発光層を所定の厚さに形成する。
【0143】
本発明では、電子注入輸送層を設けてもよい。電子注入輸送層には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等を用いることができる。電子注入輸送層は発光層を兼ねたものであってもよく、このような場合はトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等を使用することが好ましい。電子注入輸送層の形成は発光層と同様に蒸着等によればよい。
【0144】
本発明の化合物を発光層に用いる場合、ホール注入輸送層および電子注入輸送層には、通常の有機EL素子に用いられている各種有機化合物、例えば、特開昭63−295695号公報、特開平2−191694号公報、特開平3−792号公報等に記載されている各種有機化合物を用いることができる。例えば、ホール注入輸送層には、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、インドール誘導体等を用いることができ、また、電子注入輸送層には、アルミキノリノールなどの有機金属錯体誘導体・オキサジアゾール誘導体・ピリジン誘導体・ピリミジン誘導体・キノリン誘導体・キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、フルオレン誘導体等を用いることができる。
【0145】
本発明の化合物を発光層に用いる場合、相互作用により消光し難い上記発光物質と組み合わせて用いることが好ましい。本発明の化合物は、青の蛍光が強いので、相互作用の少ない材料との組み合わせで高輝度の発光素子を実現することができる。
【0146】
発光層の厚さ、ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは特に限定されず、再結合領域・発光領域の設計や形成方法によっても異なるが、通常、5〜500nm程度、特に10〜200nmとすることが好ましい。
【0147】
ホール注入輸送層の厚さおよび電子注入輸送層の厚さは、再結合・発光領域の設計によるが、発光層の厚さと同程度もしくは1/10〜10倍程度とすればよい。
【0148】
電子もしくはホールの、注入層と輸送層を分ける場合は、注入層は1nm以上、輸送層は1nm以上、特に20nm以上とするのが好ましい。
このときの注入層、輸送層の厚さの上限は、通常、注入層で500nm、特に100nm程度、輸送層で500nm程度である。このような膜厚については注入輸送層を2層設けるときも同じである。
【0149】
また、組み合わせる発光層や電子注入輸送層やホール注入輸送層のキャリア移動度やキャリア密度(イオン化ポテンシャル・電子親和力により決まる)を考慮しながら、膜厚をコントロールすることで、再結合領域・発光領域を自由に設設する事が可能であり、発光色の設計や、両電極の干渉効果による発光輝度・発光スペクトルの制御や、発光の空間分布の制御を可能に出来る。
【0150】
電子注入電極には、仕事関数の小さい材料、例えば、Li、Na、K、Mg、Al、Ag、Inあるいはこれらの1種以上を含む合金、もしくは酸化物、ハロゲン化物を用いることが好ましい。また、電子注入電極は結晶粒が細かいことが好ましく、特に、アモルファス状態であることが好ましい。電子注入電極の厚さは10〜1000nm程度とすることが好ましい。
また、電極形成の最後にAlや、フッ素系化合物を蒸着・スパッタする事で封止効化が向上し、Alの場合配線抵抗も低くなる。
【0151】
EL素子を面発光させるためには、少なくとも一方の電極が透明ないし半透明である必要があり、上記したように電子注入電極の材料には制限があるので、好ましくは発光光の透過率が80%以上となるようにホール注入電極の材料および厚さを決定することが好ましい。具体的には、例えば、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、IZO(亜鉛ドープ酸化インジウム)、SnO2、Ni、Au、Pt、Pd、ポリピロールなどをホール注入電極に用いることが好ましい。また、ホール注入電極の厚さは10〜500nm程度とすることが好ましい。また、素子の信頼性を向上するために駆動電圧が低い事が必要であるが、好ましいものとして10〜30Ω/□(厚み80〜300nm)のITOが挙げられる。実際には、ITO界面での反射による干渉効果が、高い光取り出し効率・高い色純度を満足できるようにITOの膜厚・光学定数を設計してやればよい。
また、ディスプレイの様な大きいデバイスにおいては、ITOの抵抗が大きくなるのでAl配線をしても良い。
【0152】
基板材料に特に制限はないが、図示例では基板側から発光光を取り出すため、ガラスや樹脂等の透明ないし半透明材料を用いる。また、基板にカラーフィルター膜や、蛍光変換フィルター膜、誘電体反射膜を用いたり、基板自身に着色したりして発光色をコントロールしても良い なお、基板に不透明な材料を用いる場合には、図1に示される積層順序を逆にしてもよい。
【0153】
カラーフィルター膜には、液晶ディスプレイ等で用いられているカラーフィルターを用いてもれば良いが、有機ELの発光する光に合わせてカラーフィルターの特性を調整し、取り出し効率・色純度を最適化すればよい。
【0154】
また、EL素子材料や蛍光変換層が光吸収するような短波長の外光をカットできるカラーフィルターを用いれば、素子の耐光性・表示のコントラストも向上する。
また、誘電体多層膜のような光学薄膜を用いてカラーフィルターの代わりにしても良い。
【0155】
蛍光変換フィルター膜は、EL発光の光を吸収し、蛍光変換膜中の蛍光体から光を放出させることで、発光色の色変換を行うものであるが、組成としては、バインダー、蛍光材料、光吸収材料の三つから形成される。
【0156】
蛍光材料は、基本的には蛍光量子収率が高いものを用いれば良く、EL発光波長域に吸収が強いことが望ましい。実際には、レーザー色素などが適しており、ローダミン系化合物・ペリレン系化合物・シアニン系化合物・フタロシアニン系化合物(サブフタロ等も含む)ナフタロイミド系化合物・縮合環炭化水素系化合物・縮合複素環系化合物・スチリル系化合物・クマリン系化合物等を用いればよい。
【0157】
バインダーは基本的に蛍光を消光しないような材料を選べば良く、フォトリソグラフィー・印刷等で微細なパターニングが出来るようなものが好ましい。また、ITOの成膜時にダメージを受けないような材料が好ましい。
【0158】
光吸収材料は、蛍光材料の光吸収が足りない場合に用いるが、必要の無い場合は用いなくても良い。また、光吸収材料は、蛍光性材料の蛍光を消光しないような材料を選べば良い。
【0159】
次に、本発明のEL素子の製造方法を説明する。
電子注入電極およびホール注入電極は、蒸着法やスパッタ法等の気相成長法により形成することが好ましい。
【0160】
ホール注入輸送層、発光層および電子注入輸送層の形成には、均質な薄膜が形成できることから真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法を用いた場合、アモルファス状態または結晶粒径が0.1μm 以下の均質な薄膜が得られる。結晶粒径が0.1μm を超えていると、不均一な発光となり、素子の駆動電圧を高くしなければならなくなり、ホールの注入効率も著しく低下する。
【0161】
真空蒸着の条件は特に限定されないが、10-5Torr(10-4Pa)以下の真空度とし、蒸着速度は0.01〜1nm/sec 程度とすることが好ましい。また、真空中で連続して各層を形成することが好ましい。真空中で連続して形成すれば、各層の界面に不純物が吸着することを防げるため、高特性が得られる。また、素子の駆動電圧を低くしたり、ダークスポットの成長・発生を抑えたりすることができる。
【0162】
これら各層の形成に真空蒸着法を用いる場合において、1層に複数の化合物を含有させる場合、化合物を入れた各ボートを個別に温度制御して共蒸着することが好ましい。
【0163】
本発明のEL素子は、通常、直流駆動型のEL素子として用いられるが、交流駆動またはパルス駆動することもできる。印加電圧は、通常、2〜20V 程度とされる。
【実施例】
【0164】
以下、本発明の具体的合成例および実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0165】
<合成例1>
N,N'- ジフェニル-N,N'-ビス〔N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)〕ベンジジン(HIM33:化合物 No.3)の合成。
【0166】
200mlの反応容器にN,N-ジフェニル-1,4- フェニレンジアミン26gと3-ヨードトルエン22gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n- ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-1,4-フェニレンジアミン17gを得た。
【0167】
次に、200mlの反応容器に、上記で得たN,N'-ジフェニル-N-3-トリル-1,4- フェニレンジアミン10gに、4,4'−ジヨードビフェニル4.6gと活性銅粉0.3gと炭酸カリウム8.0gとデカリン100mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度220℃で40時間加熱した。反応終了後、トルエンを200ml加え、不溶物を濾過して取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を4回シリカゲルカラム精製(展開溶媒n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N,N-ビス〔N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)〕ベンジジン7gを得た。このうち、2gを昇華精製し、1.8gのわずかに淡黄色を示したガラス状で強い青色蛍光を示す化合物を得た。この化合物は下記HIM33に示す構造を有する。
【0168】
【化13】
【0169】
質量分析:m/e 850(M+)
1H−NMRスペクトルを図2に示す。
13C−NMRスペクトルを図3に示す。
赤外吸収スペクトルを図4に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 234℃ (一部アモルファス)
ガラス転移温度(DSC) 99℃
【0170】
<合成例2>
N,N'- ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)の合成。
【0171】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに4-ヨードトルエンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM34に示す構造の、N.N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0172】
【化14】
【0173】
質量分析:m/e 850(M+)
1H−NMRスペクトルを図5に示す。
13C−NMRスペクトルを図6に示す。
赤外吸収スペクトルを図7に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 107℃
【0174】
<合成例3>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38:化合物 No.16)の合成。
【0175】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに1-ヨードナフタレンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM38に示す構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0176】
【化15】
【0177】
質量分析:m/e 922(M+)
1H−NMRスペクトルを図8に示す。
13C−NMRスペクトルを図9に示す。
赤外吸収スペクトルを図10に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 125℃
【0178】
<合成例4>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM35:化合物 No.10)の合成。
【0179】
合成例1において、3-ヨードトルエンの代わりに3-ヨードビフェニルを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM35に示す構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジンを得た。
【0180】
【化16】
【0181】
質量分析:m/e 974(M+)
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 120℃
【0182】
<合成例5>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM73:化合物No.26)の合成。
【0183】
合成例1と同様にして、N,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-1,4-フェニレンジアミンを得た。
【0184】
200mlの反応容器にN,N'-ジフェニル-N-3-トリルフェニレンジアミン17.5gと1,4-ジヨードベンゼン32gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査をアセトンで洗浄後、この残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n- ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N-3-トリル-N'-4-(ヨードフェニル)-1,4-フェニレンジアミン20gを得た。
【0185】
次いで、200mlの反応容器にN,N'-ジフェニル-N-(3-トリル)-N'-(4-ヨードフェニル)-1,4-フェニレンジアミン13.8gとN,N'-ジフェニルベンジジン4.28gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム26gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン8gを得た。このうち、2gを昇華精製し、1.8gのわずかに淡黄色を示したガラス状で強い青色蛍光を示す化合物を得た。この化合物は下記HIM73で示される構造を有する。
【0186】
【化17】
【0187】
質量分析:m/e 1184(M+)
1H−NMRスペクトルを図11に示す。
13C−NMRスペクトルを図12に示す。
赤外吸収スペクトルを図13に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 122℃
【0188】
<合成例6>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM74:化合物No.25)の合成。
【0189】
合成例5において、3-ヨードトルエンの代わりに4-ヨードトルエンを用いたほかは合成例1と同様にして、下記HIM74で示される構造の、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-(N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)ベンジジンを得た。
【0190】
【化18】
【0191】
質量分析:m/e 1184(M+)
1H−NMRスペクトルを図14に示す。
13C−NMRスペクトルを図15に示す。
赤外吸収スペクトルを図16に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 126℃
【0192】
<合成例7>
N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM78:化合物 No.40)の合成。
【0193】
合成例5において、3-ヨードトルエンの代わりに1-ヨードナフタレンを用いたほかは合成例5と同様にして、下記HIM78で示される構造の、N,N'-ジフェニル-N,N-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジンを得た。
【0194】
【化19】
【0195】
質量分析:m/e 1256(M+)
1H−NMRスペクトルを図17に示す。
13C−NMRスペクトルを図18に示す。
赤外吸収スペクトルを図19に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
融点 アモルファスのため測定不能
ガラス転移温度(DSC) 138℃
【0196】
<合成例8>
N,N''-ジフェニル-N,N''-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]-1.1''-ターフェニル-4,4''-ジアミン(HTL103:化合物 No.359)の合成。
【0197】
1000mlの反応容器に、26gの4,4''-ジアミノ-p-ターフェニルと、純水200mlと、濃塩酸100mlを投入し、懸濁状態のまま撹拌し、容器を氷浴に浸けた。5℃以下に冷却した後、亜硝酸ナトリウム15gを純水200mlに溶かした水溶液をゆっくり滴下し、室温に戻して2時間撹拌した。この反応溶液から有機層を酢酸エチルで抽出し、洗浄し、乾燥した。得られた褐色液を、3回シリカゲルカラム精製し、4,4''-ジヨード-p-ターフェニル30gを得た。
【0198】
200mlの反応溶器に、N,N'-ジフェニル-N-3-トリルフェニレンジアミン21gと4,4''-ジヨード-p-ターフェニル10gと活性銅粉を0.3gと炭酸カリウム50gとデカリン50mlを加え、Ar雰囲気中、オイルバスの温度200℃で24時間加熱した。反応終了後、トルエンを100ml加え、濾過して不溶物を取り除き、濾液を水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後この濾液より溶媒を留去し、残査を2回シリカゲルカラム精製(展開溶媒 n-ヘキサン/トルエン混合溶媒)し、下記HTL103で示される構造のN,N''-ジフェニル-N,N''-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]-1,1''-ターフェニル-4,4''-ジアミン15gを得た。
【0199】
【化20】
質量分析:m/e 926(M+)
【0200】
<合成例9>
N,N''-ジフェニル-N,N''-ビス(N,N-ジフェニルアミノフェニル)ベンジジン(HIM30:化合物 No.1)の合成その2。
【0201】
合成例1において、3−ヨードトルエンの代わりにヨードベンゼンを用いた。
質量分析:m/e 822(M+)
示差走査熱量測定
融点 246℃
ガラス転移温度(DSC) 107℃
結晶化温度 212℃
合成例1から合成例8の化合物に比べ、多少結晶性が高くなっているが、蒸着時の膜物性はアモルファス状態であった。
【0202】
<実施例1>
厚さ100nmのITO透明電極(ホール注入電極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UVオゾン洗浄後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10-6Torr(10-4Pa)まで減圧した。
【0203】
次いで、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-3-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM33:化合物 No.3)を蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着し、ホール注入層とした。
【0204】
下記に示す構造の、N,N,N',N'-テトラキスビス-(-3-ビフェニル-1-イル)ベンジジン(TPD)と、ルブレンとを重量比10:1、蒸着速度0.2nm/sec で20nmの厚さに共蒸着し、ホール輸送性発光層とした。
【0205】
【化21】
【0206】
次いで、減圧状態を保ったまま、電子注入輸送層として、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を蒸着速度0.2nm/sec で50nmの厚さに蒸着した。
【0207】
さらに、減圧状態を保ったまま、MgAg(重量比10:1)を蒸着速度0.
2nm/sec で200nmの厚さに蒸着して電子注入電極とし、保護層としてAlを100nm蒸着し有機EL素子を得た。
【0208】
この有機EL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・850mA/cm2で25,200cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥アルゴン雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかったいた。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で500hr(初期輝度2,030cd/m2 初期駆動電圧6.55V 駆動電圧上昇3.5V)であった。
【0209】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0210】
<実施例2>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4- トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を用いた。
【0211】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・720mA/cm2で26,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で800hr(2,040cd/m2 初期駆動電圧6.59V 駆動電圧上昇3.0V)であった。
【0212】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0213】
<実施例3>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM38:化合物 No.16)を用いた。
【0214】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、12V ・825mA/cm2で26,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.48y=0.50)の発光がトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3 )を蒸着確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,600hr(1,923cd/m2 初期駆動電圧6.59V 駆動電圧上昇1.5V)であった。
【0215】
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および100℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0216】
<実施例4>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-3-トリル-N-フェニル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM73:化合物No.26)を用いた。
【0217】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・1,155mA/cm2で24,800cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,000hr(1,841cd/m2初期駆動電圧6.76V 駆動電圧上昇2.5V)であった。
さらに、同様にして作成した素子を85℃、および120℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0218】
<実施例5>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、上記HIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM74:化合物 No.25)を用いた。
【0219】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・1155mA/cm2で24800cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =564nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1,000hr(1,841cd/m2 初期駆動電圧6.76V 駆動電圧上昇1.5V)であった。
【0220】
さらに、同様にして作成した素子を85℃および120℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0221】
<実施例6>
実施例1のHIM33(化合物 No.3)の代わりに、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM35:化合物 No.10)あるいはN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス{N-フェニル-N-[N-フェニル-N-1-ナフチル(4-アミノフェニル)](4-アミノフェニル)}ベンジジン(HIM78:化合物 No.40)を用いたところ実施例1と同等の結果を得た。また、他の例示化合物でも同等の結果を得た。
【0222】
<実施例7>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、実施例1のホール輸送性発光層を、ホール輸送材料のTPDと、下記構造の発光材料のルブレンと、下記構造の電子注入材料のアルミキノリノール(Alq3)を、混合重量比5:5:1で、3源共蒸着で40nm厚の混合層を成膜して混合発光層とし、その後アルミキノリノール(Alq3)を電子注入輸送層として30nm蒸着した。
【0223】
【化22】
【0224】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・980mA/cm2で26,300cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で30,00hr(2,350cd/m2 駆動電圧上昇1.0V)、初期輝度300cd/m2では、10,000hr以上であった。
【0225】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、500時間後も発光面にムラを生じなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生・成長はなかった。
【0226】
<実施例8>
実施例1のホール輸送性発光層をTPDのみのホール輸送層とし、Alq3の電子注入輸送層を10nmとし、このホール輸送層と電子注入輸送層との間に、30nmの厚さのテトラフェニルエテンあるいはフェニルアントラセンの発光層を設けたところ、上記と同等の結果を得た。
【0227】
<比較例1>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、HIM33(化合物 No.3)の代わりに、下記構造の、4,4',4''-トリス[-N-(-3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)を用いた。
【0228】
【化23】
【0229】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、14V ・767mA/cm2で21,400cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.48y=0.50)の発光が確認され、この発光は乾燥窒素雰囲気中で10,000時間以上安定していた。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で400hr(2,120cd/m2 初期駆動電圧7.9V 駆動電圧上昇4.5V)であった。
【0230】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、10時間で発光面にムラを生じた。また、ダークスポットの発生・成長が著しかった。
【0231】
<比較例2>
実施例1と同様に素子を作製した。ただし、HIM33(化合物 No.3)の代わりに、下記構造の銅フタロシアニンを10nmの厚さで用いた。
【0232】
【化24】
【0233】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、14V ・532mA/cm2で21,000cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.49y=0.50)の発光が確認され、輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で200hr(1,873cd/m2 初期駆動電圧6.50V 駆動電圧上昇8.0V)まで確認したが、ダークスポットの発生が著しく、正確な輝度の測定はできなかった。
【0234】
さらに、同様にして作成した素子を85℃の高温槽に放置したところ、10時0間で発光面にムラを生じた。また、ダークスポットの発生・成長が著しかった。
【0235】
<実施例9>
厚さ100nmのITO透明電極(ホール注入電極)を有するガラス基板を、中性洗剤、アセトン、エタノールを用いて超音波洗浄し、煮沸エタノール中から引き上げて乾燥し、UVオゾン洗浄後、蒸着装置の基板ホルダーに固定して、1×10-6Torr(10-4Pa)まで減圧した。
【0236】
次いで、上記のN,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を蒸着速度0.2nm/secで200nmの厚さに蒸着した。
さらに、減圧状態を保ったまま、Alを蒸着速度2nm/secで200nmの厚さに蒸着して電子注入電極とし、単層の素子を得た。
【0237】
この素子に電圧を印加して電流を流したところ、5Vで100mA/cm2の電流が流れた。この素子を100mA/cm2で定電流駆動したところ、1000時間安定して電流を流し、その間の電圧上昇は0.5V であった。さらに、この素子の電圧対電流密度特性を測定した。結果を図20に示す。
【0238】
また、上記N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を積層した後、タイムオブフライト法によりホール移動度を測定したところ、2.7×10-3cm2/Vsであった。この値は、一般的なホール注入輸送性物質であるTPD〔N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ジフェニル-1,1-ビフェニル-4.4'-ジアミン〕と比較して、2倍以上速い移動度である。
【0239】
<比較例3>
実施例9において、HIM34に代えて上記MTDATAを用いた他は実施例9と同様にして素子を得た。
【0240】
この素子に電圧を印加して電流を流したところ、5v で20mA/cm2の電流しか流れなかった。この素子を100mA/cm2で定電流駆動したところ、1000時間安定して電流を流したが、その間の電圧上昇は3.1V であった。さらに、この素子の電圧対電流密度特性を測定した。結果を図20に示す。
【0241】
図20から明らかなように、本発明の素子は、ホールの供給効率が高いため、同じ電圧でより多くの電流密度が得られることがわかる。
【0242】
<実施例10>
実施例2において、N,N'-ジフェニル-N,N'-ビス[N-フェニル-N-4-トリル(4-アミノフェニル)]ベンジジン(HIM34:化合物 No.2)を含有するホール注入層の膜厚を50nmから300nmに変えた他は実施例2と同様にして有機EL素子を作製した。
【0243】
このEL素子に電圧を印加して電流を流したところ、13V ・800mA/cm2で24,500cd/m2の黄色(発光極大波長λmax =565nm・色度座標x=0.47y=0.51)の発光が確認され、この発光は乾燥アルゴン雰囲気中で10,000時間以上安定していた。部分的非発光部の出現および成長は全くなかった。輝度の半減期は30mA/cm2の定電流駆動駆動で1500hr(初期輝度1800cd/m2、初期駆動電圧7.6V、駆動電圧上昇3.0V)であった。
【0244】
さらに、同様にして作製した素子を85℃の恒温槽に放置したところ、500時間後も発光面に発光ムラは確認できなかった。また、0.1mm以上のダークスポットの発生、成長は確認されなかった。
【0245】
以上の結果から、本発明の化合物を含有する層を厚くした場合でも、殆ど駆動電圧は上昇しないことがわかる。
【0246】
以上より本発明の化合物を用いた有機EL素子は、素子の駆動時の駆動電圧上昇や輝度の低下、電流のリーク、部分的な非発光部の出現・成長を抑え、輝度の低下が小さく、高輝度で、高耐熱性等の信頼性が高く、ホール注入電極や組み合わせる有機材料に最適な仕事関数を提供可能となり、連続発光信頼性の高い素子が得られる。
また、ホール移動度が高く、より多くの電流密度を得ることの可能な有機EL素子が得られる。
【符号の説明】
【0247】
1 有機EL素子
2 基板
3 陽極
4 正孔注入輸送層
5 発光層
6 電子注入輸送層
7 陰極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する有機EL素子。
【化1】
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、およびR04 は、それぞれ、
【化2】
を表わす。ここで、R11およびR12は、置換または非置換のアリール基を表わす。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ、0〜5員の整数であるがr1+r2+r3+r4 は1以上である。)
【請求項2】
前記L0で表されるフェニレン基群が、4,4’−ビフェニレン基である請求の範囲第1項記載の有機EL素子。
【請求項3】
少なくとも2層以上の有機化合物層を有し、請求の範囲第1項または第2項記載の有機化合物層がホール注入輸送機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
【請求項4】
少なくともホール注入機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層とを含有する3層以上の有機化合物層を有し、請求の範囲第1項または第2項記載の有機化合物層が前記ホール注入機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
【請求項5】
前記有機化合物層の少なくとも1層に発光層を有し、この発光層はホール輸送性化合物と電子輸送性化合物とを含有する請求の範囲第3項または第4項記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記発光層は、ホール注入機能を有する有機化合物層および/またはホール輸送機能を有する有機化合物層と、電子輸送機能を有する有機化合物層および/または電子注入機能を有する有機化合物層との間に存在する請求の範囲第5項記載の有機EL素子。
【請求項7】
ホール注入電極上に、少なくとも請求の範囲第3項記載のホール注入輸送機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
【請求項8】
ホール注入電極上に、少なくとも請求の範囲第4項記載のホール注入機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
【請求項9】
前記ホール注入機能を有する有機化合物層の膜厚が100nm以上である請求の範囲第3項〜第8項のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記化合物を含有する層は、ホール移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上である請求の範囲第5項〜第9項のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記化合物を含有する層のホールの移動度は、発光層のホール移動度の1/2以下である請求の範囲第5項〜第10項のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項1】
有機化合物層を有し、少なくとも1層の有機化合物層が下記式(I)で表される骨格を有する化合物を含有する有機EL素子。
【化1】
(上式(I)において、L0は2〜4環のo−,p−,またはm−フェニレン基のいずれかであって、フェニレン基の数が4環の場合にはその中間に非置換または置換基を有するアミノフェニル基を有していてもよい。また、これらのフェニレン基は置換基を有していてもよい。R01、R02、R03、およびR04 は、それぞれ、
【化2】
を表わす。ここで、R11およびR12は、置換または非置換のアリール基を表わす。r1、r2、r3およびr4は、それぞれ、0〜5員の整数であるがr1+r2+r3+r4 は1以上である。)
【請求項2】
前記L0で表されるフェニレン基群が、4,4’−ビフェニレン基である請求の範囲第1項記載の有機EL素子。
【請求項3】
少なくとも2層以上の有機化合物層を有し、請求の範囲第1項または第2項記載の有機化合物層がホール注入輸送機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
【請求項4】
少なくともホール注入機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層とを含有する3層以上の有機化合物層を有し、請求の範囲第1項または第2項記載の有機化合物層が前記ホール注入機能を有する有機化合物層である有機EL素子。
【請求項5】
前記有機化合物層の少なくとも1層に発光層を有し、この発光層はホール輸送性化合物と電子輸送性化合物とを含有する請求の範囲第3項または第4項記載の有機EL素子。
【請求項6】
前記発光層は、ホール注入機能を有する有機化合物層および/またはホール輸送機能を有する有機化合物層と、電子輸送機能を有する有機化合物層および/または電子注入機能を有する有機化合物層との間に存在する請求の範囲第5項記載の有機EL素子。
【請求項7】
ホール注入電極上に、少なくとも請求の範囲第3項記載のホール注入輸送機能を有する有機化合物層と、ホール輸送機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
【請求項8】
ホール注入電極上に、少なくとも請求の範囲第4項記載のホール注入機能を有する有機化合物層と、発光層と、電子注入電極とを順次有する有機EL素子。
【請求項9】
前記ホール注入機能を有する有機化合物層の膜厚が100nm以上である請求の範囲第3項〜第8項のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記化合物を含有する層は、ホール移動度が1.0×10-3cm2/Vs以上である請求の範囲第5項〜第9項のいずれかに記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記化合物を含有する層のホールの移動度は、発光層のホール移動度の1/2以下である請求の範囲第5項〜第10項のいずれかに記載の有機EL素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−260365(P2009−260365A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148123(P2009−148123)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【分割の表示】特願2005−9449(P2005−9449)の分割
【原出願日】平成9年12月26日(1997.12.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【分割の表示】特願2005−9449(P2005−9449)の分割
【原出願日】平成9年12月26日(1997.12.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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