説明

有機EL表示装置

【課題】上面発光型の有機EL表示装置で中空封止を行った場合に、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラが生じるのを防止すること。
【解決手段】本発明の有機EL表示装置1は、上面発光型であって、絶縁基板10とその一主面上で配列した複数の有機EL素子40とを備えたアレイ基板2と、前記複数の有機EL素子40と向き合うと共にそれら有機EL素子40から離間した封止基板3とを具備し、前記アレイ基板2と前記封止基板3との間の空間は、前記有機EL素子40の前面電極43と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記有機EL素子40から前記封止基板3までの距離dのばらつきΔdと、前記アレイ基板2と前記封止基板3との間の前記空間の屈折率nとは、不等式:n×Δd≦1μmに示す関係を満足している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、水分や酸素などと接触すると、容易に劣化する。したがって、有機EL表示装置では、有機EL素子を封止して、有機EL素子と水分や酸素などとの接触を防止している。
【0003】
有機EL素子の封止方法としては、中空封止と薄膜封止とがある。中空封止では、例えば、ガラス等の封止基板を、アレイ基板の有機EL素子が形成された面と向き合うように及びアレイ基板から離間するように配置する。そして、それら基板の対向面周縁部同士を接着剤で貼り合わせて、中空体を形成する。この中空体の内部空間は、例えば、不活性ガスで満たすか又は真空とする。この場合、典型的には、有機EL表示装置に下面発光型を採用すると共に、先の内部空間に乾燥剤をさらに配置する。
【0004】
このように、中空封止を行う場合には、有機EL表示装置に下面発光型を採用するのが一般的である。本発明者らは、これに反し、上面発光型の有機EL表示装置で上記の中空封止を行った。その結果、本発明者らは、上面発光型の有機EL表示装置で中空封止を行うと、表示画像に縞状の表示ムラが生じる可能性があることを見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上面発光型の有機EL表示装置で中空封止を行った場合に、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラが生じるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記有機EL素子から前記封止基板までの距離dのばらつきΔdと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとは、不等式:n×Δd≦1μmに示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記有機EL素子から前記封止基板までの距離dと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとは、不等式:n×d≧20μmに示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置が提供される。
【0008】
本発明の第3側面によると、絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面のうち、前記複数の有機EL素子と向き合っている第1領域の中央は、前記接着剤層と接触している第2領域に対して凹んでおり、前記第1領域の前記第2領域との境界近傍において、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面は前記絶縁基板の前記主面に対して傾斜し、この傾斜部の少なくとも一部では、勾配δd/δLと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとが、不等式:n×δd/δL≧1/2000に示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、上面発光型の有機EL表示装置で中空封止を行った場合に、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラが生じるのを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の第1態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図である。図2は、図1の有機EL表示装置を拡大して示す部分断面図である。なお、図1及び図2では、有機EL表示装置を、その表示面,すなわち前面または光出射面,が上方を向き、背面が下方を向くように描いている。
【0012】
図1に示す有機EL表示装置1は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した上面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置1は、アレイ基板2と封止基板3とを含んでいる。
【0013】
アレイ基板2と封止基板3とは、互いに向き合うように配置されている。また、アレイ基板2と封止基板3との対向面周縁部間には、接着剤層4が介在している。接着剤層4は枠形状を有しており、アレイ基板2及び封止基板3との間に気密空間を形成している。この気密空間は、例えば窒素ガスなどの不活性ガスが充填されているか又は真空である。
【0014】
アレイ基板2と封止基板3との結合には、接着剤層4を利用する代わりに、フリットシールなどを利用してもよい。また、アレイ基板2及び封止基板3との間の空間は、例えば透明樹脂などの低屈折率材料を充填してもよい。
【0015】
アレイ基板2は、例えば、ガラス基板などの絶縁基板10を含んでいる。絶縁基板10上では、複数の画素がマトリクス状に配列している。
【0016】
各画素は、画素回路と有機EL素子40とを含んでいる。画素回路は、例えば、一対の電源端子間で有機EL素子40と直列に接続された駆動制御素子(図示せず)及び出力制御スイッチ20と、画素スイッチ(図示せず)とを含んでいる。駆動制御素子は、その制御端子が画素スイッチを介して映像信号線(図示せず)に接続されており、映像信号線から供給される映像信号に対応した大きさの電流を出力制御スイッチ20を介して有機EL素子40へ出力する。また、画素スイッチの制御端子は走査信号線(図示せず)に接続されており、走査信号線から供給される走査信号によりスイッチング動作が制御される。なお、これら画素には、他の構造を採用することも可能である。
【0017】
基板10上には、アンダーコート層12として、例えば、SiNx層とSiOx層とが順次積層されている。アンダーコート層12上には、例えばチャネル及びソース・ドレインが形成されたポリシリコン層である半導体層13、例えばTEOS(TetraEthyl OrthoSilicate)などを用いて形成され得るゲート絶縁膜14、及び例えばMoWなどからなるゲート電極15が順次積層されており、それらはトップゲート型の薄膜トランジスタ(以下、TFTという)を構成している。この例では、これらTFTは、画素スイッチ、出力制御スイッチ20、駆動制御素子のTFTとして利用している。また、ゲート絶縁膜14上には、ゲート電極15と同一の工程で形成可能な走査信号線(図示せず)がさらに配置されている。
【0018】
ゲート絶縁膜14及びゲート電極15は、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる層間絶縁膜17で被覆されている。層間絶縁膜17上にはソース・ドレイン電極21が配置されており、それらは、例えばSiNxなどからなるパッシベーション膜18で埋め込まれている。ソース・ドレイン電極21は、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有しており、層間絶縁膜17に設けられたコンタクトホールを介してTFTのソース・ドレインに電気的に接続されている。また、層間絶縁膜17上には、ソース・ドレイン電極21と同一の工程で形成可能な映像信号線(図示せず)がさらに配置されている。
【0019】
パッシベーション膜18上には、平坦化層19が形成されている。平坦化層19上には、反射層70が配置されている。平坦化層19の材料としては、例えば、硬質樹脂を使用することができる。反射層70の材料としては、例えば、Alなどの金属材料を使用することができる。
【0020】
平坦化層19及び反射層70は、光取り出し層30で被覆されている。この光取り出し層30は必ずしも設けなくてもよいが、光取り出し層30を設けると、有機EL素子40の内部で反射を繰り返しながら膜面方向に伝播する光の進行方向を変えることができる。こうすると、有機EL素子40の発光層が放出する光を有機EL素子40の外部へと高い効率で取り出すことを可能とする。光取り出し層30としては、例えば、光散乱層や回折格子などを使用することができる。
【0021】
光取り出し層30上には、背面電極として、光透過性の第1電極41が互いから離間して並置されている。各第1電極41は、反射層70と向き合うように配置されている。また、各第1電極41は、パッシベーション膜18と平坦化層19と光取り出し層30とに設けた貫通孔を介して、ドレイン電極21に接続されている。
【0022】
第1電極41は、この例では陽極である。第1電極41の材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)のような透明導電性酸化物を使用することができる。
【0023】
光取り出し層30上には、さらに、隔壁絶縁層50が配置されている。この隔壁絶縁層50には、第1電極41に対応した位置に貫通孔が設けられている。隔壁絶縁層50は、例えば、有機絶縁層であり、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0024】
隔壁絶縁層50の貫通孔内で露出した第1電極41上には、発光層を含んだ有機物層42が配置されている。発光層は、例えば、発光色が赤色、緑色、または青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層42は、発光層以外の層をさらに含むことができる。例えば、有機物層42は、第1電極41から発光層への正孔の注入を媒介する役割を果たすバッファ層をさらに含むことができる。また、有機物層42は、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層などもさらに含むことができる。
【0025】
隔壁絶縁層50及び有機物層42は、前面電極である光透過性の第2電極43で被覆されている。第2電極43は、この例では、各画素共通に連続して設けられた陰極である。第2電極43は、パッシベーション膜18と平坦化層19と光取り出し層30と隔壁絶縁層50とに設けられたコンタクトホール(図示せず)を介して、映像信号線と同一の層上に形成された電極配線に電気的に接続されている。それぞれの有機EL素子40は、これら第1電極41、有機物層42及び第2電極43で構成されている。
【0026】
さて、上記の通り、上面発光型の有機EL表示装置で中空封止を行うと、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラが生じることがある。本発明者らは、これについて詳細に調査した結果、この縞状の表示ムラは、アレイ基板2と封止基板3との間の距離のばらつきに起因した干渉縞であることを見出した。
【0027】
本態様では、有機EL素子40から封止基板3までの距離dのばらつきΔd(3σ)と、アレイ基板2と封止基板3との間の空間の屈折率nとを、それらが下記不等式(1)に示す関係を満足するように定める。
n×Δd≦1μm…(1)
こうすると、干渉縞の発生自体を防止するか又は干渉縞の縞の間隔を十分に広げることができ、したがって、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止することが可能となる。
【0028】
このように、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止するには、ばらつきΔdを小さくすればよい。ばらつきΔdは、例えば、以下の構造を採用することにより小さくすることができる。
【0029】
図3は、本発明の第1態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。図4は、図3の構造を拡大して示す部分断面図である。なお、図3及び図4では、有機EL表示装置を、その表示面,すなわち前面または光出射面,が上方を向き、背面が下方を向くように描いている。
【0030】
図3及び図4に示す構造では、アレイ基板2と封止基板3とは、隔壁絶縁層50の上面に対応した位置で互いに接触している。こうすると、ばらつきΔdを小さくすることができ、したがって、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止することが可能となる。
【0031】
なお、この構造では、封止基板3のアレイ基板2との対向面のうち、有機EL素子40と向き合っている第1領域は、接着剤層4と接触している第2領域に対して隆起している。ここでは、一例として、封止基板3として、透明基板80上に光透過層90を配置したものを使用している。光透過層90は、透明基板80のアレイ基板2との対向面のうち略中央部のみを被覆している。また、透明基板80は例えばガラス基板であり、光透過層90は例えばSiO2層などのように透明基板80と比較して屈折率がほぼ等しいか又は小さい層である。
【0032】
このような封止基板3は、以下の点で有利である。
封止基板3のアレイ基板2との対向面が平坦である場合、アレイ基板2及び封止基板3の対向面同士を接触させるためには、接着剤層4を非常に薄くしなければならない。しかしながら、接着剤層4を薄くするべく、アレイ基板2と封止基板3との貼り合わせの際にそれら基板に加える圧力を高めると、接着剤層4の幅が不均一になり易い。
【0033】
図3及び図4の構造では、上記の通り、封止基板3のアレイ基板2との対向面のうち、有機EL素子40と向き合っている第1領域は、接着剤層4と接触している第2領域に対して隆起している。そのため、接着剤層4を薄くしなくとも、アレイ基板2及び封止基板3の対向面同士を接触させることができ、したがって、接着剤層4の幅が不均一になるのを防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第2態様について説明する。
図5は、本発明の第2態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図である。
【0035】
本態様では、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止すべく、第1態様で説明した距離dと屈折率nとを、それらが下記不等式(2)に示す関係を満足するように定める。
n×d≧20μm…(2)
すなわち、距離dを十分に長くする。これ以外は、第2態様は、第1態様と同様である。
【0036】
距離dを長くすると、干渉縞のコントラストが低下する。したがって、距離dを十分に短くすれば、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止することが可能となる。
【0037】
距離dは、例えば、約100μm以下としてもよい。距離dが長いと、有機EL表示装置1が厚くなると共に、その製造が難しくなる。
【0038】
ところで、封止基板3のアレイ基板2との対向面が平坦である場合、距離dを長くするのに対応して、接着剤層4を厚くしなければならない。この場合、距離dの正確な制御が難しくなることがある。
【0039】
図6乃至図8は、本発明の第2態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の例を概略的に示す断面図である。なお、図6乃至図8では、絶縁基板10と第1電極41との間に介在した構成要素を省略している。
【0040】
図6乃至図8の構造では、アレイ基板2と封止基板3との間に、スペーサ100を配置している。より具体的には、アレイ基板2と封止基板3との間であって隔壁絶縁層50の上面に対応した位置にスペーサ100を配置している。また、アレイ基板2と封止基板3とに挟まれた空間の圧力は、有機EL表示装置1の外部の圧力,例えば大気圧,よりも小さい。このような構造を採用すると、距離dを長くした場合であっても、そのばらつきΔdを小さくすることができる。
【0041】
図6の構造では、スペーサ100として粒状スペーサを使用し、これらスペーサ100は、接着剤110により、封止基板3のアレイ基板2との対向面に接着している。封止基板3へのスペーサ100の接着には、例えば、接着剤110で表面処理した粒状スペーサ100を封止基板3上に散布すること、接着剤110と粒状スペーサ100とを含有した塗工液を封止基板上に塗布すること、封止基板3上に接着剤110を薄膜として形成し、その上に粒状スペーサ100を散布することなどを利用することができる。なお、これら粒状スペーサ100及び接着剤100の材料としては、典型的には、透明材料を使用する。
【0042】
図7の構造では、スペーサ100として柱状スペーサを使用している。加えて、図7の構造では、これらスペーサ100は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用して、封止基板3のアレイ基板2との対向面上に形成している。柱状スペーサ100を封止基板3上に形成する場合、高い柱状スペーサ100を比較的容易に形成することができる。
【0043】
図8の構造では、図7の構造と同様、スペーサ100として柱状スペーサを使用している。但し、図8の構造では、これらスペーサ100は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用して、アレイ基板2の封止基板3との対向面上に形成している。柱状スペーサ100をアレイ基板2上に形成する場合、アレイ基板2の封止基板3との貼り合わせに高い位置精度が要求されることはない。
【0044】
次に、本発明の第3態様について説明する。
図9は、本発明の第3態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図である。
【0045】
本態様では、図9に示すように、封止基板3のアレイ基板2との対向面のうち、有機EL素子40と向き合っている第1領域A1の中央を、接着剤層4と接触している第2領域A2に対して凹ませる。加えて、本態様では、第1領域A1の第2領域A2との境界近傍において、封止基板3のアレイ基板2との対向面を絶縁基板10の主面に対して傾斜させ、この傾斜部の少なくとも一部において、勾配δd/δLと、アレイ基板2と封止基板3との間の空間の屈折率nとを、それらが下記不等式(3)に示す関係を満足するように定める。
n×δd/δL≧1/2000…(3)
これ以外は、第3態様は、第1態様と同様である。
【0046】
勾配δd/δLが大きい場合、第1領域A1の第2領域A2との境界近傍に生じる干渉縞の縞の幅及び間隔が狭くなる。勾配δd/δLが十分に大きくすれば、干渉縞の縞の幅及び間隔を、個々の縞を識別できないほどに狭くすることができる。したがって、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止することが可能となる。
【0047】
勾配δd/δLの最大値は、例えば、約1/100以下としてもよい。勾配δd/δLを大きくすると、ガラス強度やシール強度が不十分となる可能性がある。
【0048】
本態様では、第1領域A1の中央部に対応した位置において、上記の距離dと屈折率nとは、第2態様で説明したのと同様、それらが不等式:n×d≧20μmに示す関係を満足するように定めてもよい。こうすると、第1領域A1の中央部に対応した位置で、表示画像中に縞状の表示ムラが視認されるのを防止することができる。
【0049】
本態様では、第1領域A1の中央を第2領域A2に対して凹ませるために、例えば、第2態様で説明したスペーサ100を利用してもよい。すなわち、アレイ基板2と封止基板3との間であって第1領域A1の中央に対応した位置のみにスペーサ100を配置する。加えて、接着剤層4は十分に薄くする。こうすると、図9に示すように、第1領域A1の中央を第2領域A2に対して凹ませることができる。
【0050】
次に、上記の不等式(1)乃至(3)に関連した試験について説明する。
まず、有機EL表示装置1を複数作製した。ここでは、各有機EL表示装置1の対角寸法を5インチとし、封止基板3としてガラス基板を使用し、アレイ基板2と封止基板3とに挟まれた空間は真空とした。以下、これら有機EL表示装置1を、サンプル(A)乃至(I)と呼ぶ。
【0051】
サンプル(A)乃至(D)及び(F)乃至(I)は、例えば図1及び図5に示すように、封止基板3は撓ませず、略平坦なままとした。他方、サンプル(E)は、例えば図9に示すように、封止基板3を撓ませた。
【0052】
次に、これらサンプル(A)乃至(I)で画像を表示し、目視により、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラが生じるか調べた。さらに、これらサンプル(A)乃至(I)に対し、封止基板3側から表面検査ランプにより光を照射し、視認され得る干渉縞が生じるか調べた。
【0053】
これら結果並びにサンプル(A)乃至(I)のばらつきΔd、距離d及び勾配δd/δLを、以下の表に纏める。
【表1】

【0054】
なお、上記表において、「表示ムラ」及び「干渉縞」の欄に記載した記号「○」、「△」、「×」は、それぞれ、表示ムラ又は干渉縞が全く視認されなかったこと、注意して観察した場合にのみ表示ムラ又は干渉縞が視認されたこと、明らかな表示ムラ又は干渉縞が視認されたことを示している。また、サンプル(E)の欄には、各種データを2行に分けて記載している。第1行目には、図9に示す第1領域A1の中央に対応した位置に関するデータを記載しており、第2行目には、第1領域A1の第2領域A2との境界近傍に対応した位置に関するデータを記載している。
【0055】
上記表に示すように、ばらつきΔdが約1μm以下であるサンプル(A)、(B)、(F)及び(H)、並びに、距離dが約20μm以上であるサンプル(H)及び(I)では、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラは生じなかった。また、サンプル(E)では、勾配δd/δLが1/50000未満の領域で表示画像中に縞状の表示ムラが視認されたが、勾配δd/δLが1/2000以上の領域では、表示画像中に視認され得る縞状の表示ムラは生じなかった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図。
【図2】図1の有機EL表示装置を拡大して示す部分断面図。
【図3】本発明の第1態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図4】図3の構造を拡大して示す部分断面図。
【図5】本発明の第2態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図。
【図6】本発明の第2態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の例を概略的に示す断面図。
【図7】本発明の第2態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の例を概略的に示す断面図。
【図8】本発明の第2態様に係る有機EL表示装置で採用可能な構造の例を概略的に示す断面図。
【図9】本発明の第3態様に係る有機EL表示装置を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0057】
1…有機EL表示装置、2…アレイ基板、3…封止基板、4…接着剤層、10…絶縁基板、12…アンダーコート層、13…半導体層、14…ゲート絶縁膜、15…ゲート電極、17…層間絶縁膜、18…パッシベーション膜、19…平坦化層、20…出力制御スイッチ、21…ソース・ドレイン電極、30…光取り出し層、40…有機EL素子、41…第1電極、42…有機物層、43…第2電極、50…隔壁絶縁層、70…反射層、80…透明基板、90…光透過層、100…スペーサ、110…接着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、
前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、
前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記有機EL素子から前記封止基板までの距離dのばらつきΔdと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとは、不等式:n×Δd≦1μmに示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置。
【請求項2】
前記アレイ基板は、前記複数の有機EL素子間に介在した隔壁絶縁層をさらに備え、前記アレイ基板と前記封止基板とは前記隔壁絶縁層の上面に対応した位置で互いに接触していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記アレイ基板と前記封止基板との間に配置されると共に前記複数の有機EL素子を取り囲んだ枠状の接着剤層をさらに具備し、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面のうち、前記複数の有機EL素子と向き合っている第1領域は、前記接着剤層と接触している第2領域に対して隆起していることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、
前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、
前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記有機EL素子から前記封止基板までの距離dと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとは、不等式:n×d≧20μmに示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記アレイ基板と前記封止基板との間にスペーサをさらに具備し、前記アレイ基板は、前記複数の有機EL素子間に介在した隔壁絶縁層をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
絶縁基板とその一主面上で配列した複数の有機EL素子とを備えたアレイ基板と、
前記複数の有機EL素子と向き合うと共にそれら有機EL素子から離間した封止基板とを具備し、
前記アレイ基板と前記封止基板との間の空間は、前記有機EL素子の前面電極と比較して屈折率がより小さな材料が充填されているか又は真空であり、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面のうち、前記複数の有機EL素子と向き合っている第1領域の中央は、前記接着剤層と接触している第2領域に対して凹んでおり、前記第1領域の前記第2領域との境界近傍において、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面は前記絶縁基板の前記主面に対して傾斜し、この傾斜部の少なくとも一部では、勾配δd/δLと、前記アレイ基板と前記封止基板との間の前記空間の屈折率nとが、不等式:n×δd/δL≧1/2000に示す関係を満足していることを特徴とする上面発光型の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記アレイ基板と前記封止基板との間であって前記第1領域の中央に対応した位置にスペーサをさらに具備したことを特徴とする請求項1、5又は6に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記アレイ基板は、前記複数の有機EL素子間に介在した隔壁絶縁層をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記第1領域の中央に対応した位置で、前記有機EL素子から前記封止基板までの距離dと、前記屈折率nとは、不等式:n×d≧20μmに示す関係を満足していることを特徴とする請求項6に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記スペーサは、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面に支持された粒状スペーサであることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記スペーサは、前記封止基板の前記アレイ基板との対向面上に形成された柱状スペーサであることを特徴とする請求項7に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
前記スペーサは、前記隔壁絶縁層上に形成された柱状スペーサであることを特徴とする請求項8に記載の有機EL表示装置。
【請求項13】
前記空間は不活性ガスが充填されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項14】
前記アレイ基板は、前記絶縁基板と前記封止基板との間に配置されるとともに前記複数の有機EL素子と向き合った光取り出し層をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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