説明

有機EL表示装置

【課題】外部からの水分流入抑制可能な有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】上面発光型の有機EL表示装置1において、中空部13内部が大気圧より高い陽圧に保持され、封止部材の厚さが0.40mm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は、有機EL(Electroluminescence,エレクトロルミネセンス)表示装置が実用化され、携帯電話の表示装置などに用いられている。
【0003】
この有機EL表示装置の構造は、アレイ基板と封止部材とが中空部を介して取り付けられ、アレイ基板にマトリクス状に複数の有機EL発光層を有する発光画素が設けられている。
【0004】
この有機EL表示装置は、発光画素を形成する有機ELが湿度に弱いため、中空部に乾燥剤を配置し、また、中空部は、大気圧よりも低い陰圧に保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−342432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、有機EL表示装置の中空部を陰圧に保持しているため、中空部へ空気が吸い込まれやすく、より湿度を含んだ空気が入りやすいという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、外部からの水分流入を低減する有機EL表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の発光画素が設けられたアレイ基板と、中空部を介して前記アレイ基板と対向して配され、光透過性を有する封止部材とを有し、前記中空部がシール部材によって封止され、前記封止部材側から表示を行う上面発光型の有機EL表示装置において、前記中空部が大気圧より高い陽圧に保持されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【0008】
本発明は、複数の発光画素が設けられたアレイ基板と、中空部を介して前記アレイ基板と対向して配された封止部材とを有し、前記中空部がシール部材によって封止された有機EL表示装置において、前記封止部材の厚さが0.40mm以上であり、前記中空部内部が大気圧より高い陽圧に保持されていることを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機EL表示装置においては、外部からの水分流入を抑制し、有機EL発光素子を良好な状態で保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置1について図1から図4に基づいて説明する。
【0011】
図1は、有機EL表示装置1の縦断面図である。有機EL表示装置1は、アレイ基板10と、封止部材11とを有し、アレイ基板10と封止部材11とは、中空部13を介して対向して貼り合わされている。この有機EL表示装置1は、封止部材11側から表示を行ういわゆる上面発光型の有機EL表示装置1である。
【0012】
図2は、有機EL表示装置の一部構造を概略的に示す縦断面図であり、ここでは特に一画素分の縦断面図を示している。
【0013】
アレイ基板10上には、走査線と、この走査線に直交するように配置された信号線と、信号線と走査線との交点付近に配置されたスイッチング素子である画素TFTと、画素TFTを介して信号線に接続された駆動トランジスタ14と、駆動トランジスタ14より供給される駆動信号に応じて表示動作をする画素20をマトリクス状に有している。
【0014】
図1に示すように、例えばガラス基板でなる支持基板12上には画素TFT(薄膜トランジスタ)、駆動トランジスタ14等が形成されている。これら画素TFT、駆動トランジスタ14は、支持基板12上に形成されたポリシリコン半導体層Pと、このポリシリコン半導体層Pと第1絶縁膜16を介して配置されたゲート電極Gと、第1絶縁膜16と第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのソース領域にコンタクトしたソース電極Sと、第1絶縁膜16及び第2絶縁膜18を介してポリシリコン半導体層Pのドレイン領域にコンタクトしたドレイン電極Dを備えている。画素TFTのソース電極には信号線が接続され、ゲート電極には走査線が接続されている。また、駆動トランジスタ14のゲート電極Gには画素TFTのドレイン電極が接続され、ソース電極Sには高電位端子、ドレイン電極Dには画素20を介して低電位端子が接続される。
【0015】
画素20は、第2絶縁膜18の上に配置された第3絶縁膜22の上に配置されている。
【0016】
各画素20は、下部電極(画素電極ともいう)26と、下部電極26上に配置され少なくとも発光層32を含む活性層と、活性層を挟んで下部電極26と対向配置される対向電極36とから構成される。
【0017】
詳しくは、画素20の下部電極(ここでは陽極)26が第3絶縁膜22の上層にマトリクス状に形成され、第3絶縁膜22に設けられているコンタクトホール38によって駆動トランジスタ14のドレイン電極Dと接続されている。下部電極26は、光透過性導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0018】
この下部電極26の上層にはアクリル樹脂よりなる隔壁24が形成されている。隔壁24はマトリクス状に配置された画素電極の行方向に隣接する画素配置され、画素電極の列方向に沿って帯状に形成される。このアクリル樹脂で形成された隔壁24を形成するには、UV光でマスク露光する。ここでは、隔壁24は、高さ3μm、底面ほ幅35μm、その断面形状が台形状に形成される。
【0019】
図2に示すように、隣接する隔壁24間に位置する画素20の下部電極26の上には、少なくとも発光層32を含む活性層が積層されている。この活性層は、下部電極26に対向配置された上部電極(対向電極)との間に挟持されるものである。ここでは、上部電極は陰極として機能する。この活性層は、RGB各色共通に形成されるホール輸送層、エレクトロン輸送層、及び各色毎に形成される有機発光層の多層構造で構成されるか、または、機能的に複合された層構造で構成されている。本実施形態では、ホール輸送層30と有機発光層32の二層構造で説明する。
【0020】
ホール輸送層30は、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体より形成され、有機発光層は赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する有機化合物によって形成されている。この有機発光層32は、例えば高分子系材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などを積層して構成されている。
【0021】
アレイ基板10と対向して配される封止部材11は、光透過性を有するガラス基板より構成されその厚みが0.40mm以上であり、かつ、支持基板12よりも薄く構成されている。アレイ基板10の支持基板12よりも薄くすることにより、支持基板12側が撓むのを抑制できる。
【0022】
この封止部材11とアレイ基板10とは、額縁状のシール部材38によって接着されている。このシール部材38は、額縁状の融着ガラスよりなり、熱融着して封止部材11とアレイ基板10とを固定する。
【0023】
また、このシール部材38によって中空部13を封止する場合に、中空部13内部には不活性ガス(例えば、窒素ガス)が封入されている。中空部13内部には、従来設けられている乾燥剤は設けられていない。さらに、このシール部材38を形成する場合に、中空部13内部の圧力を、大気圧(760Torr)以上の陽圧、例えば、大気圧以上850Torr以下の陽圧に保持する。
【0024】
上記構成の有機EL表示装置1であると、中空部13内部が陽圧に保持されているため、外部から湿気を含んだ空気が侵入することがなく、従来のような乾燥剤を必要とせず、画素劣化を防止し、良好な状態で保持すること封止部材11とアレイ基板10ができる。
【0025】
中空部13をシールするシール部材38が融着ガラスであるため、中空部13内部が陽圧であっても、シール部材38が破壊されたりすることがない。特に、有機EL表示装置1が減圧環境下、例えば山頂や飛行機の輸送時においても、このシール部材38の部分から壊れたりすることがない。なお、減圧環境下における飛行機の輸送時とは、有機EL表示装置1を貨物として運ぶ場合であって客室のように与圧されていない状態をいう。
【0026】
また、減圧環境下においても、封止部材11が0.40mm以上の厚みを有するため、中空部13の陽圧によって封止部材11が図1の点線に示すような上方に膨らみ有機EL表示装置1が破壊されることがない。この封止部材11が0.40mm以上で破壊されない理由を次に説明する。
【0027】
封止部材11は上記したように透明なガラス板で構成されているため、封止部材11の撓み量δcに基づく不良発生率を(1)式に基づいて計算する。
【0028】

k・δc=αw・a/(E・t) ・・・(1)

但し、α=ガラス辺比による撓み係数を示し、wは等分布荷重[MPa]を示し、aは短辺の長さ[mm]を示し、Eはガラスのヤング率である7.16×10[MPa]を示し、tはガラスの厚み(mm)を示し、kは不良発生係数[1/mm]を示している。
【0029】
3.46型の有機EL表示装置1を用いて山頂(10000フィートの高さ)及び飛行機(50000フィート上空)の中の減圧環境下での不良発生率を(1)式に基づいて求めると図3及び図4に示すようになった。但し、3.46型の有機EL表示装置1においては、長辺と短辺の比率は1.45であり、α=0.08517である。
【0030】
図3及び図4に示すように、山頂及び飛行機の中においては、不良発生率が1以下にするには0.4mm以上の封止部材11の厚みが必要となる。使用環境に応じて適宜最適な封止部材11の厚みを選択するのが望ましく、したがって、この例においては、より好ましくは、山頂利用用には0.41mm以上、飛行機内利用がある場合には0.59mm以上の厚みの封止部材11を選択することにより、不良発生を防止することができる。
【0031】
上記実施形態ではシール部材38として、融着ガラスを用いたが、減圧環境下で用いられないような有機EL表示装置1においては、エポキシ樹脂などを用いてもよい。
【0032】
上記実施形態では、乾燥剤を中空部13内部に設けていないが、例えば透明な乾燥剤を中空部13に設けることにより中空部13内部の湿度を除去することができるため、有機EL表示装置1の寿命を長くすることができる。
【0033】
上記実施形態では上面型の有機EL表示装置1について説明したが、これに代えて、アレイ基板側から表示を行う下面発光型の有機EL表示装置1においても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置の縦断面図である。
【図2】有機EL表示装置の回路図である。
【図3】山頂における封止部材の厚みと不良発生率のグラフである。
【図4】飛行機の輸送時における封止部材の厚みと不良発生率を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1 有機EL表示装置
10 アレイ基板
11 封止部材
16 中空部
20 画素
24 隔壁
38 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光画素が設けられたアレイ基板と、中空部を介して前記アレイ基板と対向して配され、光透過性を有する封止部材とを有し、
前記中空部がシール部材によって封止され、
前記封止部材側から表示を行う上面発光型の有機EL表示装置において、
前記中空部が大気圧より高い陽圧に保持されている
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
複数の発光画素が設けられたアレイ基板と、中空部を介して前記アレイ基板と対向して配された封止部材とを有し、
前記中空部がシール部材によって封止された有機EL表示装置において、
前記封止部材の厚さが0.40mm以上であり、
前記中空部内部が大気圧より高い陽圧に保持されている
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項3】
前記中空部内部に乾燥剤を有さない
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記シール部材が融着ガラスである
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記封止部材が前記アレイ基板より薄い
ことを特徴とする請求項1または2記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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