説明

有機EL表示装置

【課題】アレイ基板を構成した隔壁などの材料からの残存水分を均等に乾燥剤によって吸収することにより、輝度にムラが生じない有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置1の封止部材11に設けられている乾燥剤40の表面に、アレイ基板10の第2電極36と同じ材料であるアルミニウムにより被覆材44を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近は、有機EL(Electroluminescence,エレクトロルミネセンス)表示装置が実用化され、携帯電話の表示装置などに用いられている。
【0003】
この有機EL表示装置の構造は、アレイ基板と封止部材とが中空部を介して取り付けられ、アレイ基板にマトリクス状に複数の有機材料からなる発光層を有する画素が設けられている。
【0004】
ところが、画素の上層に設けれられた陰極は、Alで形成されているため、陰極に欠陥が発生しやすく、その欠陥部分からは水分が侵入しやすい。そのため、陰極の上層に保護膜を設けた有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、封止部材とアレイ基板との間に透明乾燥剤膜を設けて水分を吸収する有機EL表示装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、陰極の上層に保護膜を設けたり、透明乾燥剤膜を設けたものは、アレイ基板の製造工程が増加するため、より簡単に有機材料を湿度から保護するために、中空部に乾燥剤を設けて、水分を吸収するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−338368公報
【特許文献2】特開2003−338366公報
【特許文献3】特開2003−317942公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような封止部材に乾燥剤を有した有機EL表示装置において、製造後に目視確認を行うと表示ムラが発生している場合があった。この発生の原因を調査すると、下記の二つの原因が判明した。
【0008】
第1の原因は、アレイ基板と封止部材を貼り合わせるときに、乾燥剤でアレイ基板上の画素の陰極に傷が発生することである。
【0009】
すなわち、上記傷を通じて隣接する画素同士を区切る隔壁中の残存水分が蒸発し、この蒸発した水分を乾燥剤が吸収する。このときに、発生する傷は不均一であるため、この吸収された水分が起因となって画素毎に異なる輝度劣化が発生し、輝度にバラつきが発生するからである。したがって、目視確認をした場合に表示ムラが発生する。
【0010】
第2の原因は、各画素において、RGBの3色に発光層を塗り分ける場合にファインマスクを用いることであることが判明した。すなわち、このファインマスクの使用により隔壁に凹凸が発生し、その凹凸が隔壁の上層にある金属製の陰極上に傷を形成することがある。そしてこの傷を通じて前記隔壁中の残存水分が蒸発し、上記と同様に表示ムラが発生する。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、輝度にムラが生じない有機EL表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
マトリクス状に配置され、第1電極と、前記第1電極に対向配置される第2電極と、前記第1及び第2電極間に少なくとも発光層を備えた複数の画素を備えてなるアレイ基板と、前記画素に対向する面に乾燥剤を備え、前記アレイ基板に間隙をもって封止される封止部材と、を備えた有機EL表示装置であって、前記乾燥剤の表面の全部、または、一部を、前記第2電極と同じ硬度、または、それより柔らかい硬度の材料よりなる被覆材で覆ったことを特徴とする有機EL表示装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明であると、封止部材に設けられた乾燥剤の表面に被覆材が設けられ、その被覆材がアレイ基板の最上層の材料と同じ硬度またはそれより柔らかい硬度の材料よりなるため、乾燥剤の表面がアレイ基板の最上層に接触しても、最上層を傷つけることがなく、従って、従来のように傷ついた部分から残存水分が蒸発したりすることがないので、輝度ムラがなく表示不良を起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態の有機EL表示装置1について図1、図2に基づいて説明する。
【0015】
図1は、有機EL表示装置1の縦断面図である。有機EL表示装置1は、アレイ基板10と、封止部材11とを有し、アレイ基板10と封止部材11とは、中空部13を介して対向して貼り合わされている。
【0016】
図2は、有機EL表示装置の一部構造を概略的に示す縦断面図であり、ここでは特に一画素分を示している。
【0017】
アレイ基板10上には、走査線と、この走査線に直交するように配置された信号線と、信号線と走査線との交点付近に配置されたスイッチング素子である画素TFT(薄膜トランジスタ)と、画素TFTを介して信号線に接続する駆動トランジスタ14と、駆動トランジスタ14に接続された画素20を有している。すなわち、ガラス基板から構成された支持基板12上には画素TFT、駆動トランジスタ14、走査線、信号線等が形成されている。支持基板12は、その厚みが0.7mm〜1.0mmである。これら画素TFT及び駆動トランジスタ14は、支持基板12上に形成されたポリシリコン半導体層Pと、このポリシリコン半導体層Pと第1絶縁膜16を介して配置されたゲート電極Gと、第1絶縁膜16と第2絶縁膜18を貫通してポリシリコン半導体層Pのソース領域にコンタクトしたソース電極Sと、第1絶縁膜16及び第2絶縁膜18を貫通してポリシリコン半導体層Pのドレイン領域にコンタクトしたドレイン電極Dを備えている。また、画素TFTのソース電極Sと一体に信号線が形成され、画素TFTのゲート電極Gには走査線が接続されている。
【0018】
画素20は、第2絶縁膜18の上に配置された第3絶縁膜22の上に配置されている。すなわち、画素20の第1電極26が第3絶縁膜22の上層に形成され、第3絶縁膜22に設けられているコンタクトホール28によって駆動トランジスタ14のドレイン電極Dと接続されている。第1電極26は、ここでは陽極として機能し、光透過性導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)で形成されている。
【0019】
この第1電極26の上層にはアクリル樹脂よりなる隔壁24が形成されている。隔壁24は隣接する画素20を区画し、第1電極間を電気的に分離する。このアクリル樹脂で形成された隔壁24を形成するには、UV光でマスク露光する。
【0020】
隔壁24に囲まれた画素20の凹部の下面に位置する第1電極26の上に、少なくとも発光層を含む光活性層が積層される。この光活性層は、RGB各色共通に形成されるホール注入層、ホール輸送層、エレクトロン輸送層、エレクトロン注入層、及び各色毎に形成される有機発光層を積層してもよく、または、機能的に複合された層構造で構成されている。図2では、光活性層としてホール輸送層30と有機発光層32の二層構造の例示をしている。ホール輸送層30は、例えば、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体より形成され、有機発光層32は赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する有機化合物によって形成されている。この有機発光層32は、例えば高分子系材料を採用する場合には、TPT(N,N'-Bis(4-diphenylamino-4-biphenyl)-N,N'-diphenylbenzidine)、PPV(ポリパラフェニデンビニデン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などを積層して構成されている。上記ホール輸送層30と有機発光層32とは、それぞれインクジェット方式によって塗布形成される。
【0021】
上記のように、画素20を縦横にマトリックス状に設けた後、これら画素20の上層の全面にAlを用いて第2電極36を形成する。この第2電極の膜厚は、陰極として機能し、約1500オングストロームである。
【0022】
一方、図1に示すように、封止部材11のアレイ基板10の画素20と対向する面(図1の下面側)の面には凹部38が設けられ、この凹部38にシート状の乾燥剤40が設けられている。この凹部38に乾燥剤40を貼り付けた状態で、乾燥剤40の表面を第2電極36と同じ材料であるAlによって金属蒸着する。この場合に、金属蒸着する部分は、水分を吸収するための複数の孔部46を残して乾燥剤40の全面に金属蒸着する。この被覆材44の厚みは、第2電極36の厚みの2倍以上の3000オングストロームで蒸着する。
【0023】
上記のようにして乾燥剤40を設けた封止部材11と、アレイ基板10とを、額縁状のシール材42によって貼り合わせ、アレイ基板10と封止部材11との間に中空部13を設ける。この中空部13には、窒素などの不活性ガスが封入され、また、中空部の圧力は大気圧よりも低い状態にしておく。
【0024】
上記構成の有機EL表示装置1であると、封止部材11をアレイ基板10に貼り付ける際に、乾燥剤40が接触しても、乾燥剤40の表面には第2電極36と同じ材料であるアルミニウムによって被覆材44が設けられているため、従来のように乾燥剤40によって第2電極36が傷つくことがない。そのため、隔壁24などの残存水分が蒸発したりすることがなく、輝度にムラが発生しない。
【0025】
(変更例)
本発明は上記各実施形態に限らず、その主旨を逸脱しない限り種々に変更することができる。
【0026】
例えば、上記実施形態では、乾燥剤40の表面を被覆材44で全て覆い、孔部46から水分を吸収させたが、これに代えて乾燥剤40の下面のみ被覆材44で覆い、側面を露出させてもよい。即ち、第2電極36に接触するのは、乾燥剤40の下面及びエッジ部分のみであるため、側面に乾燥剤40が露出していても第2電極36に接触しないからである。
【0027】
また、上記実施形態では被覆材44を第2電極36と同じアルミニウムで金属蒸着したが、これに代えて、アルミニウムより柔らかい硬度の金属を蒸着してもよい。
【0028】
また、上記実施形態では第2電極36と同じ材料を被覆材44として用いたが、これに代えて発光層32と同じ有機材料を用いてもよい。例えば、TPTを乾燥剤40の表面に蒸着してもよい。この場合には、発光層32の膜厚が1400オングストローム程度であるため、被覆材44はその2倍以上の膜厚2800オングストロームで蒸着薄膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す有機EL表示装置の縦断面図である。
【図2】画素部分の縦断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 有機EL表示装置
10 アレイ基板
11 封止部材
36 第2電極
40 乾燥剤
44 被覆材
46 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置され、第1電極と、前記第1電極に対向配置される第2電極と、前記第1及び第2電極間に少なくとも発光層を備えた複数の画素を備えてなるアレイ基板と、
前記画素に対向する面に乾燥剤を備え、前記アレイ基板に間隙をもって封止される封止部材と、を備えた有機EL表示装置であって、
前記乾燥剤の表面の全部、または、一部を、前記第2電極と同じ硬度、または、それより柔らかい硬度の材料よりなる被覆材で覆った
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記被覆材は、前記第2電極と同じ金属材料である
ことを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記被覆材の厚みは、前記第2電極の厚みの2倍以上である
ことを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記被覆材は、アルミニウムである
ことを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記被覆材は、前記発光層と同じ材料である
ことを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記被覆材の厚みは、前記発光層の厚みの2倍以上である
ことを特徴とする請求項5記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記被覆材は、TPTである
ことを特徴とする請求項5記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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