説明

有機EL表示装置

【課題】高精細なフルカラー表示を可能とする有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】発光色が互いに異なる第1乃至第3有機EL素子の各々に配置された画素電極と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、各々の前記画素電極の上に配置された第1発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層の上に配置された第2発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第2発光層の上に配置された第3発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第3発光層の上に配置された対向電極と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層と前記第2発光層との間、及び、前記第2発光層と前記第3発光層との間の少なくとも一方に配置されたエキシトンブロック層と、を具備したことを特徴とする有機EL表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型で、高速応答、広視野角、高コントラストの特徴を有し、かつ、更に薄型軽量化が可能な有機エレクトロルミネセンス(EL)素子を用いた表示装置の開発が盛んに行われている。
【0003】
この有機EL素子は、正孔注入電極(陽極)から正孔を注入するとともに、電子注入電極(陰極)から電子を注入し、発光層で正孔と電子とを再結合させて発光を得るものである。フルカラー表示を得るためには、赤(R)、緑(G)、青(B)にそれぞれ発光する画素を構成する必要がある。赤、緑、青の各画素を構成する有機EL素子の発光層には、赤色、緑色、青色といったそれぞれ異なる発光スペクトルで発光する発光材料を塗り分ける必要がある。このような発光材料を塗り分ける方法として、真空蒸着法がある。このような真空蒸着法によって低分子系の有機EL材料を成膜する場合、各色の画素毎に開口した金属性のファインマスクを用いてそれぞれ独立にマスク蒸着する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、この金属製のファインマスクを用いたマスク蒸着法では、表示装置として高い精細度(解像度)が要求される場合には、画素が極めて細かくなる。このため、各色の発光材料が交じり合ってしまう、所謂、混色不良が多発して、高精細なフルカラー表示を実現することが困難となる。
【0005】
一方で、発光層と接する正孔阻止層、電子阻止層、エキシトンブロック層などが、特定構造の金属錯体化合物を含有する構成の有機EL素子が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−157973号公報
【特許文献2】特開2008−147424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高精細なフルカラー表示を可能とする有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、発光色が互いに異なる第1乃至第3有機EL素子の各々に配置された画素電極と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、各々の前記画素電極の上に配置された第1発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層の上に配置された第2発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第2発光層の上に配置された第3発光層と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第3発光層の上に配置された対向電極と、第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層と前記第2発光層との間、及び、前記第2発光層と前記第3発光層との間の少なくとも一方に配置されたエキシトンブロック層と、を具備したことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、発光色が互いに異なる複数の有機EL素子の各々に配置された画素電極と、前記複数の有機EL素子に亘って延在し、各々の前記画素電極の上に配置された第1発光層と、前記複数の有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層の上に配置され、前記第1発光層より大きなバンドギャップの第2発光層と、前記複数の有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置され、前記第2発光層より大きなバンドギャップのエキシトンブロック層と、を具備したことを特徴とする有機EL表示装置が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、発光色が互いに異なる複数の有機EL素子の各々に対応して画素電極を形成する工程と、前記複数の有機EL素子に亘って延在した第1発光層を前記画素電極の上に形成する工程と、前記複数の有機EL素子に亘って延在したエキシトンブロック層を前記第1発光層の上に形成する工程と、前記複数の有機EL素子に亘って延在した第2発光層を前記エキシトンブロック層の上に形成する工程と、前記複数の有機EL素子に亘って延在した対向電極を前記第2発光層の上に形成する工程と、を具備することを特徴とする有機EL表示装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精細なフルカラー表示を可能とする有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一態様に係る有機EL表示装置に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示した有機EL表示装置が有する第1乃至第3有機EL素子に採用可能な構成の一例を概略的に示す図である。
【図3】図3は、図2に示した第1乃至第3有機EL素子を備えた表示パネルの断面図である。
【図4】図4は、図2に示した第1乃至第3有機EL素子の有機層における各層のエネルギー準位の関係を説明するための図である。
【図5】図5は、図2に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】図6は、図5に示した露光工程PHOTO1及びPHOTO2を説明するための図である。
【図7】図7は、図2に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する他の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、発光層における消光を説明するための図である。
【図9】図9は、図1に示した表示パネルが採用可能な他の構成の一例を概略的に示す図である。
【図10】図10は、図9に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】図11は、図9に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する他の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、図1に示した表示パネルが採用可能な他の構成の一例を概略的に示す図である。
【図13】図13は、図12に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図14】図14は、図12に示した第1乃至第3有機EL素子を製造する他の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1には、有機EL表示装置の一例として、アクティブマトリクス駆動方式を採用した上面発光型の有機EL表示装置を示している。
【0015】
この有機EL表示装置は、スイッチングトランジスタSWa及び第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含む表示パネルDPを備えている。
【0016】
基板SUB上には、スイッチングトランジスタSWaの半導体層SCが配置されている。この半導体層SCは、例えばポリシリコンによって形成されている。この半導体層SCには、チャネル領域SCCを挟んでソース領域SCS及びドレイン領域SCDが形成されている。
【0017】
半導体層SCは、ゲート絶縁膜GIによって被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばtetraethyl orthosilicate(TEOS)などを用いて形成されている。ゲート絶縁膜GIの上には、チャネル領域SCCの直上にスイッチングトランジスタSWaのゲートGが配置されている。このゲートGは、例えばモリブデン・タングステン(MoW)によって形成されている。
【0018】
この例では、スイッチングトランジスタSWaは、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタである。
【0019】
ゲート絶縁膜GI及びゲートGは、層間絶縁膜IIによって被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマ化学蒸着(CVD)法により堆積させたシリコン酸化物(SiOx)などを用いて形成されている。
【0020】
層間絶縁膜IIの上には、スイッチングトランジスタSWaのソース電極SE及びドレイン電極DEが配置されている。ソース電極SEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに形成されたコンタクトホールを介して半導体層SCのソース領域SCSに接続されている。ドレイン電極DEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに形成されたコンタクトホールを介して半導体層SCのドレイン領域SCDに接続されている。
【0021】
これらのソース電極SE及びドレイン電極DEは、例えば、モリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)の三層を積層した構造を有しており、同一の工程で形成することができる。これらのソース電極SE及びドレイン電極DEとは、パッシベーション膜PSによって被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばシリコン窒化物(SiNx)などを用いて形成されている。
【0022】
画素電極PEは、パッシベーション膜PSの上において、画素PX1乃至3に対応してそれぞれ配置されている。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに形成されたコンタクトホールを介してスイッチングトランジスタSWaのドレイン電極DEに接続されている。この画素電極PEは、この例では陽極に相当する。
【0023】
パッシベーション膜PSの上には、隔壁PIが配置されている。隔壁PIは、画素電極PEの全周を囲むように格子状に配置されている。なお、この隔壁PIは、画素電極PEの間のY方向に延びたストライプ状に配置されても良い。このような隔壁PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0024】
各画素電極PEの上には、有機層ORGが配置されている。有機層ORGは、全ての画素PX1乃至3を含む表示領域に亘って延在した連続膜を少なくとも1層含んでいる。すなわち、有機層ORGは、画素電極PE及び隔壁PIを被覆している。詳細については後述する。
【0025】
有機層ORGは、対向電極CEによって被覆されている。この例では、対向電極CEは、陰極に相当する。この対向電極CEは、全ての画素PX1乃至3を含む表示領域に亘って延在した連続膜である。つまり、対向電極CEは、画素PX1乃至3で共用する共通電極である。
【0026】
画素電極PEと有機層ORGと対向電極CEとは、画素PX1乃至3に対応してそれぞれ配置された第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を形成している。
【0027】
すなわち、画素PX1は第1有機EL素子OLED1を備え、画素PX2は第2有機EL素子OLED2を備え、画素PX3は第3有機EL素子OLED3を備えている。なお、図1においては、画素PX1の第1有機EL素子OLED1、画素PX2の第2有機EL素子OLED2、画素PX3の第3有機EL素子OLED3がそれぞれ1つずつ図示されているが、X方向にこれらが繰り返し配置されている。つまり、図中の右側の第3有機EL素子OLED3に隣接して第1有機EL素子OLED1が配置されている。同様に、図中の左側の第1有機EL素子OLED1に隣接して第3有機EL素子OLED3が配置されている。
【0028】
隔壁PIは、第1有機EL素子OLED1と第2有機EL素子OLED2との間に配置され、両者を分離している。また、この隔壁PIは、第2有機EL素子OLED2と第3有機EL素子OLED3との間に配置され、両者を分離している。また、この隔壁PIは、第3有機EL素子OLED3と第1有機EL素子OLED1との間に配置され、両者を分離している。
【0029】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の封止は、乾燥剤(図示せず)を付けた封止ガラス基板SUB2を表示領域の周辺に塗布したシール材で貼り合わせて実施しても良いし、封止ガラス基板SUB2をフリットガラスで貼り合わせて実施(フリット封止)しても良いし、さらに、封止ガラス基板SUB2と有機EL素子OLEDとの間に有機樹脂層を充填して実施(固体封止)しても良い。フリット封止の場合、乾燥剤を不要とすることができる。固体封止の場合、有機樹脂層に加えて対向電極CEとの間に無機系材料からなる絶縁膜が介在していても良い。
【0030】
本実施の形態においては、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の発光色は、互いに異なるように構成されている。
【0031】
ここに示した例では、第1有機EL素子OLED1の発光色は赤色であり、第2有機EL素子OLED2の発光色は緑色であり、第3有機EL素子OLED3の発光色は青色である。
【0032】
なお、波長が400nm乃至435nmの範囲内にある光の色を紫、波長が435nm乃至480nmの範囲内にある光の色を青、波長が480nm乃至490nmの範囲内にある光の色を緑青、波長が490nm乃至500nmの範囲内にある光の色を青緑、波長が500nm乃至560nmの範囲内にある光の色を緑、波長が560nm乃至580nmの範囲内にある光の色を黄緑、波長が580nm乃至595nmの範囲内にある光の色を黄、波長が595nm乃至610nmの範囲内にある光の色を橙、波長が610nm乃至750nmの範囲内にある光の色を赤、波長が750nm乃至800nmの範囲内にある光の色を赤紫と定義するのが一般的であるが、ここでは、主波長が400nm乃至490nmの範囲内にある色を青色、主波長が490nmより長く且つ595nmよりも短い範囲内にある色を緑色、主波長が595nm乃至800nmの範囲内にある色を赤色と定義する。
【0033】
図2には、実施例1における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の構造が模式的に示されている。この図2に示すように、画素PX1の第1有機EL素子OLED1、画素PX2の第2有機EL素子OLED2、及び、画素PX3の第3有機EL素子OLED3は、それぞれパッシベーション膜PSの上に配置されている。第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々は、画素電極PEと、この画素電極PEと向き合った対向電極CEと、画素電極PEと対向電極CEとの間に介在した有機層ORGと、を有している。
【0034】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、以下のように構成されている。
【0035】
すなわち、画素電極PEは、パッシベーション膜PSの上に配置されている。有機層ORGは、画素電極PEの上に配置されている。この有機層ORGは、画素電極PEの上に配置された第1発光層である赤色発光層EMR、赤色発光層EMRの上に配置された第1エキシトンブロック層EBL1、第1エキシトンブロック層EBL1の上に配置された第2発光層である緑色発光層EMG、緑色発光層EMGの上に配置された第2エキシトンブロック層EBL2、第2エキシトンブロック層EBL2の上に配置された第3発光層である青色発光層EMBを有している。対向電極CEは、有機層ORGの上に配置されている。
【0036】
赤色発光層EMRは、赤色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる赤色ドーパント材料を有している。例えば、赤色発光層EMRは、ホスト材料として、例えばトリス(8−ヒドロキシキノラート)アルミニウム(略称;Alq)を使用し、赤色ドーパント材料として、例えば4−(ジシアノメチレン)−2−テルト−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称;DCJTB)を使用することによって形成されているが、他の材料を使用しても良い。
【0037】
緑色発光層EMGは、緑色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる緑色ドーパント材料を有している。例えば、緑色発光層EMGは、ホスト材料として、例えば4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(略称;CBP)を使用し、緑色ドーパント材料として、例えばトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称;Ir(ppy)3)を使用することによって形成されているが、他の材料を使用しても良い。
【0038】
青色発光層EMBは、青色波長に発光中心を有するルミネセンス性有機化合物又は組成物からなる青色ドーパント材料を有している。例えば、青色発光層EMBは、ホスト材料として、例えば4,4’−ビス(2,2’−ジフェニル−エテン−1−イル)−ジフェニル(略称;BPVBI)を使用し、青色ドーパント材料として、例えばペリレンを使用することによって形成されているが、他の材料を使用しても良い。
【0039】
例えば、赤色ドーパント材料、緑色ドーパント材料、及び、青色ドーパント材料は、金属錯体化合物を含有する燐光材料であっても良い。
【0040】
第1エキシトンブロック層EBL1及び第2エキシトンブロック層EBL2は、ホスト材料として使用されるCBPなどの非金属元素によって形成されている。
【0041】
図3には、実施例1における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含む表示パネルDPの断面構造が概略的に示されている。なお、この図3には、スイッチングトランジスタを含まない断面構造を図示している。
【0042】
この図3に示すように、基板SUBと第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとの間には、ゲート絶縁膜GI、層間絶縁膜II、及び、パッシベーション膜PSが介在している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSの上に配置されており、これらは全て同一構造である。
【0043】
赤色発光層EMRは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の画素電極PEの上にそれぞれ配置されている。このような赤色発光層EMRは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在している。
【0044】
つまり、この赤色発光層EMRは、表示領域に亘って広がった連続膜であって、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に共通に配置されている。また、赤色発光層EMRは、第1有機EL素子OLED1と第2有機EL素子OLED2との間、第2有機EL素子OLED2と第3有機EL素子OLED3との間、及び、第3有機EL素子OLED3と第1有機EL素子OLED1との間にそれぞれ配置された隔壁PIの上に配置されている。
【0045】
第1エキシトンブロック層EBL1は、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、赤色発光層EMRの上に配置されている。つまり、この第1エキシトンブロック層EBL1は、表示領域に亘って広がった連続膜である。
【0046】
緑色発光層EMGは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、第1エキシトンブロック層EBL1の上に配置されている。つまり、この緑色発光層EMGは、表示領域に亘って広がった連続膜である。
【0047】
第2エキシトンブロック層EBL1は、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、緑色発光層EMGの上に配置されている。つまり、この第2エキシトンブロック層EBL2は、表示領域に亘って広がった連続膜である。
【0048】
青色発光層EMBは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、第2エキシトンブロック層EBL2の上に配置されている。つまり、この青色発光層EMBは、表示領域に亘って広がった連続膜である。
【0049】
対向電極CEは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、青色発光層EMBの上に配置されている。つまり、この対向電極CEは、表示領域に亘って広がった連続膜である。
【0050】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、封止ガラス基板SUB2を用いて封止されている。
【0051】
次に、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3において発光色を制御する原理について説明する。
【0052】
図4には、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3における有機層ORGのエネルギー準位を説明するための図が示されている。
【0053】
なお、図4においては、赤色発光層EMRのバンドギャップは赤色ドーパント材料のバンドギャップに相当し、緑色発光層EMGのバンドギャップは緑色ドーパント材料のバンドギャップに相当し、青色発光層EMBのバンドギャップは青色ドーパント材料のバンドギャップに相当する。このバンドギャップとは、最低空分子軌道(LUMO)と最高被占軌道(HOMO)との間のエネルギー差に相当する。
【0054】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各々の有機層ORGが含む各層のバンドギャップの一例を以下に示す。
【0055】
赤色発光層EMRのバンドギャップは2.0eVであり、第1エキシトンブロック層EBL1のバンドギャップは2.5eVであり、緑色発光層EMGのバンドギャップは2.4eVであり、第2エキシトンブロック層EBL2のバンドギャップは2.7eVであり、青色発光層EMBのバンドギャップは2.64eVである。
【0056】
第1有機EL素子OLED1では、有機層ORGが含む各層に対して、電子輸送性がホール輸送性より高い材料を選定する、もしくは、赤色発光層EMRのみ他の層と比較してホール輸送性が非常に低い材料を選定することにより、赤色発光層EMRで電子と正孔とが結合するようにキャリアバランスを調整している。赤色発光層EMRのエネルギー準位が最も低いので、他の層へのエネルギー遷移は発生しない。それ故、第1有機EL素子OLED1は、赤色に発光し、緑色発光層EMG及び青色発光層EMBは発光しない。
【0057】
第2有機EL素子OLED2では、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が消光している。この消光とは、後に詳述するが、ドーパント材料が紫外光を吸収することにより分解または重合または分子構造の変化が生じることにより、発光しなくなる状態、または、発光しにくい状態を言う。第2有機EL素子OLED2の赤色発光層EMRでは、赤色ドーパント材料が発光しなくなっている。なお、赤色ドーパント材料が消光していても、赤色発光層EMRにおけるバンドギャップは消光前と略同等の2.0eVである。もしくは、赤色発光層EMRにおけるバンドギャップは、赤色ドーパント材料の消光前と比較して低下する可能性もある。
【0058】
このとき、第2有機EL素子OLED2の赤色発光層EMRでは、赤色ドーパント材料の消光のための紫外光照射によって、赤色発光層EMRのホール注入性またはホール輸送性が増し、紫外光照射前と比較してホール移動度が上昇している。このため、第2有機EL素子OLED2では、電子と正孔とのバランスが変化することにより、発光位置が緑色発光層EMGにシフトする。それ故、第2有機EL素子OLED2は、緑色に発光し、青色発光層EMBは発光しない。
【0059】
また、第1エキシトンブロック層EBL1のバンドギャップは、緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料のバンドギャップより高い。それ故、第1エキシトンブロック層EBL1は、緑色発光層EMGで生成したエキシトンのエネルギーが赤色発光層EMRに遷移するのを阻止する。
【0060】
なお、第1エキシトンブロック層EBL1は、緑色発光層EMGから赤色発光層EMRへのエキシトンのエネルギー遷移を効果的に遮蔽する厚みであればよいので、一般的な発光層の厚み例えば30nmと比べて、第1エキシトンブロック層EBL1の厚みは5nm程度と非常に薄い。それ故、キャリアバランスに対する影響が非常に小さいので、第2有機EL素子OLED2において、発光位置の緑色発光層EMGへのシフトを阻害することはない。
【0061】
第3有機EL素子OLED3では、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料、及び、緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が消光している。赤色発光層EMRにおけるバンドギャップは、赤色ドーパント材料の消光前と略同等の2.0eVである。また、緑色発光層EMGにおけるバンドギャップは、緑色ドーパント材料の消光前と略同等の2.4eVである。
【0062】
このとき、第3有機EL素子OLED3の赤色発光層EMRでは、第2有機EL素子OLED2と同様に、そのホール注入性またはホール輸送性が増している。また、第3有機EL素子OLED3の緑色発光層EMGでも同様に、緑色ドーパント材料の消光のための紫外光照射によって、緑色発光層EMGのホール注入性またはホール輸送性が増し、紫外光照射前と比較してホール移動度が上昇している。
【0063】
このため、第3有機EL素子OLED3では、電子と正孔とのバランスがさらに変化することにより、発光位置が青色発光層EMBにシフトする。それ故、第3有機EL素子OLED3は、青色に発光する。
【0064】
また、第2エキシトンブロック層EBL2のバンドギャップは、青色発光層EMBの青色ドーパント材料のバンドギャップより高い。このため、第2エキシトンブロック層EBL2は、青色発光層EMBで生成したエキシトンのエネルギーが緑色発光層EMGに遷移するのを阻止する。
【0065】
なお、第1エキシトンブロック層EBL1と同様に、第2エキシトンブロック層EBL2も、青色発光層EMBから緑色発光層EMGへのエキシトンのエネルギー遷移を効果的に遮蔽する厚みであればよいので、厚みは5nm程度と非常に薄い。それ故、キャリアバランスに対する影響が非常に小さいので、第3有機EL素子OLED3において、発光位置の青色発光層EMBへのシフトを阻害することはない。
【0066】
次に、実施例1における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の製造方法の一例について、図5に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0067】
まず、アレイ工程では、パッシベーション膜の上に画素電極PEを形成する。
【0068】
続いて、EL工程では、まず、画素電極PEの上に、表示領域に対応した開口が形成されたラフマスクを使用して真空蒸着法により赤色ドーパント材料を有する赤色発光層EMRを形成する。この工程を図5中に、EMR蒸着と示す。
【0069】
その後、第2有機EL素子OLED2が形成される画素PX2及び第3有機EL素子OLED3が形成される画素PX3に対応した領域に、波長が概略200〜400nmの紫外光を、0.001〜1mW・mm−2・nm−1の範囲の強度で照射する。ここでは、紫外光の強度を概略0.1mW・mm−2・nm−1とした。この工程を図5に、PHOTO1露光と示す。
【0070】
続いて、赤色発光層EMRの上に、表示領域に対応した開口が形成されたラフマスクを使用して真空蒸着法により第1エキシトンブロック層EBL1を形成する。この工程を図5中に、EBL1蒸着と示す。
【0071】
続いて、第1エキシトンブロック層EBL1の上に、表示領域に対応した開口が形成されたラフマスクを使用して真空蒸着法により緑色ドーパント材料を有する緑色発光層EMGを形成する。この工程を図5中に、EMG蒸着と示す。
【0072】
その後、画素PX3に対応した領域に、波長が概略200〜400nmの紫外光を、0.001〜1.0mW・mm−2・nm−1の範囲の強度で照射する。ここでは、紫外光の強度を概略0.1mW・mm−2・nm−1とした。この工程を図5に、PHOTO2露光と示す。なお、PHOTO1露光とPHOTO2露光とで互いに波長の異なる紫外光を照射しても良い。
【0073】
続いて、緑色発光層EMGの上に、表示領域に対応した開口が形成されたラフマスクを使用して真空蒸着法により第2エキシトンブロック層EBL2を形成する。この工程を図5中に、EBL2蒸着と示す。
【0074】
続いて、第2エキシトンブロック層EBL2の上に、表示領域に対応した開口が形成されたラフマスクを使用して真空蒸着法により青色ドーパント材料を有する青色発光層EMBを形成する。この工程を図5中に、EMB蒸着と示す。
【0075】
続いて、青色発光層EMBの上に、対向電極CEを形成する。この工程を図5中に、CE蒸着と示す。
【0076】
その後、封止ガラス基板SUB2による封止工程を行う。
【0077】
図6に示すように、PHOTO1で示した露光工程では、画素PX1を遮光するとともに画素PX2及びPX3に対向する開口を有したフォトマスクMASK1を用いて、紫外光を照射する。これにより、前の工程で形成された赤色発光層EMRのうち、画素PX2及びPX3に形成された赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が紫外光を吸収して消光する。
【0078】
また、その後のPHOTO2で示した露光工程では、画素PX1及び画素PX2を遮光するとともに画素PX3に対向する開口を有したフォトマスクMASK2を用いて、紫外光を照射する。これにより、先の工程で形成された緑色発光層EMGのうち、画素PX3に形成された緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が紫外光を吸収して消光する。
【0079】
図7には、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の他の製造方法のフローチャートが示されている。
【0080】
すなわち、アレイ工程の後、EL工程として、赤色発光層EMRを形成するEMR蒸着、第1エキシトンブロック層EBL1を形成するEBL1蒸着、赤色発光層EMRを露光するPHOTO1、緑色発光層EMGを形成するEMG蒸着、第2エキシトンブロック層EBL2を形成するEBL2蒸着、緑色発光層EMGを露光するPHOTO2、青色発光層EMBを形成するEMB蒸着、対向電極CEを形成するCE蒸着の後、封止工程を行っても良い。
【0081】
次に、ドーパント材料の消光について説明する。
【0082】
図8には、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の発光スペクトルの一例が示されている。なお、図8では、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3のそれぞれの発光スペクトルは、各々の最大ピーク強度で規格化している。
【0083】
第1有機EL素子OLED1では、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が発光している。このため、第1有機EL素子OLED1の発光スペクトルは、図中のOLED1で示したように、波長625nm付近に最大ピーク強度を有している。
【0084】
第2有機EL素子OLED2では、緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が発光している。このため、第2有機EL素子OLED2の発光スペクトルは、波長525nm付近に最大ピーク強度を有している。
【0085】
図中のOLED2(OK)は、第2有機EL素子OLED2において、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が消光した状態での発光スペクトルである。この第2有機EL素子OLED2の発光スペクトルにおいて、第1有機EL素子OLED1において最大ピーク強度となる波長625nm付近では、スペクトル強度が20%以下となっている。また、赤色ドーパント材料が消光した状態では、第2有機EL素子OLED2の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近にはスペクトルピークが出現しない。
【0086】
一方、図中のOLED2(NG)は、第2有機EL素子OLED2において、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が消光していない状態あるいは消光処理が不十分である場合の発光スペクトルである。この第2有機EL素子OLED2の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近では、スペクトル強度が20%を超え、約50%となっている。また、この第2有機EL素子OLED2の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近にスペクトルピークが出現している。
【0087】
本実施形態では、赤色ドーパント材料が消光している状態とは、OLED2(OK)で示したように、赤色の主波長付近でのスペクトル強度が20%以下である状態、あるいは、赤色の主波長付近でスペクトルピークが出現しない状態と定義する。
【0088】
第3有機EL素子OLED3では、青色発光層EMBの青色ドーパント材料が発光している。このため、第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルは、波長460nm付近に最大ピーク強度を有している。
【0089】
図中のOLED3(OK)は、第3有機EL素子OLED3において、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料及び緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が消光した状態での発光スペクトルである。この第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルにおいて、第1有機EL素子OLED1において最大ピーク強度となる波長625nm付近、及び、第2有機EL素子OLED2において最大ピーク強度となる波長525nm付近では、ともにスペクトル強度が20%以下となっている。また、赤色ドーパント材料が消光した状態では、第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近にはスペクトルピークが出現しない。同様に、緑色ドーパント材料が消光した状態では、第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルにおいて、波長525nm付近にはスペクトルピークが出現しない。
【0090】
一方、図中のOLED3(NG)は、第3有機EL素子OLED3において、赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料及び緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が消光していない状態あるいは消光処理が不十分である場合の発光スペクトルである。この第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近ではスペクトル強度が20%を超え、約30%となっており、波長525nm付近ではスペクトル強度が20%を超え、約40%となっている。また、この第3有機EL素子OLED3の発光スペクトルにおいて、波長625nm付近にスペクトルピークが出現している。
【0091】
本実施形態では、赤色ドーパント材料及び緑色ドーパント材料が消光している状態とは、OLED3(OK)で示したように、赤色及び緑色の主波長付近でのスペクトル強度がともに20%以下である状態、あるいは、赤色及び緑色の主波長付近でスペクトルピークが出現しない状態と定義する。
【0092】
上述したように、赤色発光層EMR、緑色発光層EMG、及び、青色発光層EMBは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在した連続膜である。加えて、第1エキシトンブロック層EBL1、第2エキシトンブロック層EBL2、及び、対向電極CEも同様に、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在した連続膜である。このため、これらを蒸着法によって形成する際に、微細な開口を形成したファインマスクが不要であり、マスクの製造コストを低減できる。また、これらを形成する際にマスクに堆積する材料が減少し、これらを形成する材料の利用効率を向上できる。また、発光材料を塗り分ける必要がないため、混色不良を防止できる。
【0093】
加えて、第2有機EL素子OLED2では赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料が消光しているため、緑色に発光する。また、第3有機EL素子OLED3では赤色発光層EMRの赤色ドーパント材料及び緑色発光層EMGの緑色ドーパント材料が消光しているため、青色に発光する。したがって、高精細なフルカラー表示を実現できる。
【0094】
さらに、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3において、赤色発光層EMRと緑色発光層EMGとの間に第1エキシトンブロック層EBL1が配置されている。この第1エキシトンブロック層EBL1は、緑色発光層EMGより大きなバンドギャップを有している。このため、第2有機EL素子OLED2において、第1エキシトンブロック層EBL1は、緑色発光層EMGで生成したエキシトンのエネルギーの一部が緑色発光層EMGより小さなバンドギャップの赤色発光層EMRに遷移するのを阻止する。このため、第2有機EL素子OLED2における緑色の発光効率の低減が抑制できる。
【0095】
同様に、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3において、緑色発光層EMGと青色発光層EMBとの間に第2エキシトンブロック層EBL2が配置されている。この第2エキシトンブロック層EBL2は、青色発光層EMBより大きなバンドギャップを有している。このため、第3有機EL素子OLED2において、第2エキシトンブロック層EBL2は、青色発光層EMBで生成したエキシトンのエネルギーの一部が緑色発光層EMGに遷移するのを阻止する。このため、第3有機EL素子OLED2における青色の発光効率の低減が抑制できる。
【0096】
なお、本実施形態において、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の採り得る素子バリエーションの一例を以下に説明する。
【0097】
例えば、画素電極PEは、反射層及び透過層が積層された2層構造であっても良いし、透過層単層構造、または、反射層単層構造であっても良い。反射層は、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)などの光反射性を有する導電材料によって形成可能である。透過層は、例えば、インジウム・ティン・オキサイド(ITO)、インジウム・ジンク・オキサイド(IZO)などの光透過性を有する導電材料によって形成可能である。
【0098】
また、有機層ORGは、画素電極側にホール注入層、ホール輸送層を有していても良い。また、有機層ORGは、対向電極側に電子注入層、電子輸送層を有していても良い。
【0099】
また、対向電極CEは、半透過層及び透過層が積層された2層構造であっても良いし、透過層単層構造、または、半透過層単層構造であっても良い。半透過層は、例えば、マグネシウム・銀などの導電材料によって形成可能である。透過層は、例えば、ITOやIZOなどの光透過性を有する導電材料によって形成可能である。
【0100】
また、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、反射層を有する画素電極と、半透過層を有する対向電極CEとにより、マイクロキャビティ構造を採用しても良い。
【0101】
また、マイクロキャビティ構造を採用した場合、対向電極CEの上には、光透過性を有する絶縁膜、例えばシリコン酸窒化物(SiON)を配置しても良い。このような絶縁膜は、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を保護する保護膜として利用可能であるのに加えて、光学干渉を最適化するための光路長を調整するための光学マッチング層として利用可能である。さらに、反射層と半透過層との間に、光透過性を有する絶縁膜、例えばシリコン窒化物(SiN)を配置しても良い。このような絶縁膜は、光学干渉条件を調整するための調整層として利用可能である。このような調整層の光路長は、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各発光波長の1/4の最小公倍数と同等に設定される。調整層の膜厚は、例えば410nmである。また、このような調整層は、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2のみに配置しても良い。この場合の調整層の膜厚は、例えば390nmである。
【0102】
また、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、発光した光を対向電極側から取り出す上面発光型を採用しても良い。
【0103】
また、上述した例では、赤色発光層EMR及び緑色発光層EMGを消光させるための紫外光照射により、赤色発光層EMR及び緑色発光層EMGのホール注入性またはホール輸送性が増加する場合を記載したが、紫外光照射によって赤色発光層EMR及び緑色発光層EMGの電子注入性または電子輸送性が低下することでも同様の効果を得ることができる。
【0104】
次に、本実施形態の他の実施例について説明する。
【0105】
図9には、実施例2における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含む表示パネルDPの断面構造が概略的に示されている。なお、この図9には、スイッチングトランジスタを含まない断面構造を図示している。この図9に示した実施例2は、図3に示した実施例1と比較して、赤色発光層EMRと緑色発光層EMGとの間のエレクトロンブロッキング層を省略した点で異なる。
【0106】
基板SUBと第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとの間には、ゲート絶縁膜GI、層間絶縁膜II、及び、パッシベーション膜PSが介在している。赤色発光層EMRは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、各々の画素電極PEの上に配置されている。第2有機EL素子OLED2及び第3有機EL素子OLED3の赤色発光層EMRでは、赤色ドーパント材料が消光している。
【0107】
緑色発光層EMGは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、赤色発光層EMRの上に配置されている。第3有機EL素子OLED3の緑色発光層EMGでは、緑色ドーパント材料が消光している。
【0108】
エキシトンブロック層EBLは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、緑色発光層EMGの上に配置されている。エキシトンブロック層EBLは、青色発光層EMBのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している。
【0109】
青色発光層EMBは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、エキシトンブロック層EBLの上に配置されている。対向電極CEは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、青色発光層EMBの上に配置されている。
【0110】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、封止ガラス基板SUB2を用いて封止されている。
【0111】
次に、実施例2における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の製造方法の一例について、図10に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0112】
すなわち、アレイ工程の後、EL工程として、赤色発光層EMRを形成するEMR蒸着、赤色発光層EMRを露光するPHOTO1、緑色発光層EMGを形成するEMG蒸着、緑色発光層EMGを露光するPHOTO2、エキシトンブロック層EBLを形成するEBL蒸着、青色発光層EMBを形成するEMB蒸着、対向電極CEを形成するCE蒸着の後、封止工程を行う。
【0113】
図11には、実施例2における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の他の製造方法のフローチャートが示されている。
【0114】
すなわち、アレイ工程の後、EL工程として、赤色発光層EMRを形成するEMR蒸着、赤色発光層EMRを露光するPHOTO1、緑色発光層EMGを形成するEMG蒸着、エキシトンブロック層EBLを形成するEBL蒸着、緑色発光層EMGを露光するPHOTO2、青色発光層EMBを形成するEMB蒸着、対向電極CEを形成するCE蒸着の後に、封止工程を行っても良い。
【0115】
このような実施例2においても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0116】
すなわち、発光層で生成したエキシトンのエネルギーの他の発光層への遷移すなわちフェルスター遷移が起こりうる距離は、一般的に10nm以下である。第2有機EL素子OLED2において、第2発光層として緑色ドーパント材料を有する緑色発光層EMGでのキャリア結合が、第1発光層として赤色ドーパント材料を有する赤色発光層EMRとの界面から15nm離れた位置で起こる場合、緑色発光層EMGで生成したエキシトンのエネルギーが赤色発光層EMRへ遷移する可能性は低い。それ故、赤色発光層EMRと緑色発光層EMGとの間にエキシトンブロック層を形成する必要性は無い。
【0117】
これにより、実施例1と比較して、成膜回数を低減できるので、生産性が向上する。また、エキシトンブロック層を形成する材料の使用量を低減できるとともに、材料費を低減できる。
【0118】
なお、この実施例2は、上述した実施例1で説明した素子バリエーションのいずれも採用できる。
【0119】
図12には、実施例3における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3を含む表示パネルDPの断面構造が概略的に示されている。なお、この図12には、スイッチングトランジスタを含まない断面構造を図示している。この図12に示した実施例3は、図3に示した実施例1と比較して、緑色発光層EMGと青色発光層EMBとの間のエレクトロンブロッキング層を省略した点で異なる。
【0120】
基板SUBと第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の各画素電極PEとの間には、ゲート絶縁膜GI、層間絶縁膜II、及び、パッシベーション膜PSが介在している。赤色発光層EMRは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、各々の画素電極PEの上に配置されている。第2有機EL素子OLED2及び第3有機EL素子OLED3の赤色発光層EMRでは、赤色ドーパント材料が消光している。
【0121】
エキシトンブロック層EBLは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、赤色発光層EMRの上に配置されている。エキシトンブロック層EBLは、緑色発光層EMGのバンドギャップよりも大きなバンドギャップを有している。
【0122】
緑色発光層EMGは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、エキシトンブロック層EBLの上に配置されている。第3有機EL素子OLED3の緑色発光層EMGでは、緑色ドーパント材料が消光している。
【0123】
青色発光層EMBは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、緑色発光層EMGの上に配置されている。対向電極CEは、第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3に亘って延在し、青色発光層EMBの上に配置されている。
【0124】
第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3は、封止ガラス基板SUB2を用いて封止されている。
【0125】
次に、実施例3における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の製造方法の一例について、図13に示したフローチャートを参照しながら説明する。
【0126】
すなわち、アレイ工程の後、EL工程として、赤色発光層EMRを形成するEMR蒸着、赤色発光層EMRを露光するPHOTO1、エキシトンブロック層EBLを形成するEBL蒸着、緑色発光層EMGを形成するEMG蒸着、緑色発光層EMGを露光するPHOTO2、青色発光層EMBを形成するEMB蒸着、対向電極CEを形成するCE蒸着の後、封止工程を行う。
【0127】
図14には、実施例3における第1乃至第3有機EL素子OLED1乃至3の他の製造方法のフローチャートが示されている。
【0128】
すなわち、アレイ工程の後、EL工程として、赤色発光層EMRを形成するEMR蒸着、エキシトンブロック層EBLを形成するEBL蒸着、赤色発光層EMRを露光するPHOTO1、緑色発光層EMGを形成するEMG蒸着、緑色発光層EMGを露光するPHOTO2、青色発光層EMBを形成するEMB蒸着、対向電極CEを形成するCE蒸着の後、封止工程を行っても良い。
【0129】
このような実施例3においても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0130】
すなわち、第3有機EL素子OLED3において、
第2発光層として青色ドーパント材料を有する青色発光層EMBでのキャリア結合が、第1発光層として緑色ドーパント材料を有する緑色発光層EMGとの界面から15nm離れた位置で起こる場合、青色発光層EMBで生成したエキシトンのエネルギーが緑色発光層EMGへ遷移する可能性は低い。それ故、緑色発光層EMGと青色発光層EMBとの間にエキシトンブロック層を形成する必要性は無い。
【0131】
これにより、実施例1と比較して、成膜回数を低減できるので、生産性が向上する。また、エキシトンブロック層を形成する材料の使用量を低減できるとともに、材料費を低減できる。
【0132】
なお、この実施例3は、上述した実施例1で説明した素子バリエーションのいずれも採用できる。
【0133】
以上説明したように、ファインマスクを使用すること無しに高精細なフルカラー表示を可能とする有機EL表示装置を提供することができる。
【0134】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0135】
上記の各実施例では、有機EL表示装置は、発光色が異なる3種の有機EL素子を含んでいる。有機EL表示装置は、有機EL素子として、発光色が異なる2種の有機EL素子のみを含んでいてもよく、発光色が異なる4種以上の有機EL素子を含んでいてもよい。
【0136】
本実施形態では、ドーパント材料が消光している場合として、完全に発光しない場合について説明したが、ドーパント材料が発光しにくい状態にある場合であっても発明を実施し発明の効果を達成できれば良い。
【符号の説明】
【0137】
DP…表示パネル SUB…基板
OLED1…第1有機EL素子 OLED2…第2有機EL素子 OLED3…第3有機EL素子
PE…画素電極 CE…対向電極
ORG…有機層(EMR…赤色発光層 EMG…緑色発光層 EMB…青色発光層 EBL…エキシトンブロック層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色が互いに異なる第1乃至第3有機EL素子の各々に配置された画素電極と、
第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、各々の前記画素電極の上に配置された第1発光層と、
第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層の上に配置された第2発光層と、
第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第2発光層の上に配置された第3発光層と、
第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第3発光層の上に配置された対向電極と、
第1乃至第3有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層と前記第2発光層との間、及び、前記第2発光層と前記第3発光層との間の少なくとも一方に配置されたエキシトンブロック層と、
を具備したことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第2有機EL素子の前記第1発光層が有するドーパント材料は消光しており、
前記第3有機EL素子の前記第1発光層及び前記第2発光層が有するドーパント材料は消光していることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
発光色が互いに異なる複数の有機EL素子の各々に配置された画素電極と、
前記複数の有機EL素子に亘って延在し、各々の前記画素電極の上に配置された第1発光層と、
前記複数の有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層の上に配置され、前記第1発光層より大きなバンドギャップの第2発光層と、
前記複数の有機EL素子に亘って延在し、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置され、前記第2発光層より大きなバンドギャップのエキシトンブロック層と、
を具備したことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第1発光層及び前記第2発光層は、金属錯体化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記複数の有機EL素子のうち、少なくとも1つの有機EL素子の前記第1発光層が有するドーパント材料は消光していることを特徴とする請求項3に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−165793(P2010−165793A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5927(P2009−5927)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(302020207)東芝モバイルディスプレイ株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】