説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器

【課題】従来の有機EL装置では、発光品位を向上させることが困難である。
【解決手段】電極面125を有する画素電極29と、電極面125に対向する第2電極と、隔壁71と、正孔注入層105と、を有し、正孔注入層105は、表面において、底面121と、湾曲面123と、を含んでおり、法線135方向に沿って切断したときの断面において、電極面125に平行な面131を法線135方向に底面121まで平行移動させ、面131と湾曲面123との交点を第1点137とし、面131と壁面127との交点を第2点139とし、第1点137と第2点139との間の中点を第3点141とし、第3点141を通る法線135と湾曲面123との交点を第4点143としたときに、第1点137と第4点143とを結んだ線と面131とがなす角度が、50度以下である、ことを特徴とする有機EL装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気光学装置の1つとして、一対の電極と、一対の電極間に介在する発光層とを有する有機EL(Electro Luminescence)装置がある。有機EL装置では、一対の電極間に、発光層を含む有機層が介在している。
このような有機EL装置では、従来、画素を区画する隔壁と、隔壁で囲まれた発光領域内に蒸着された有機層と、有機層上に蒸着された電極と、を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−192477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隔壁と、蒸着された有機層と、蒸着された電極とを有する有機EL装置としては、例えば、図16に示す有機EL装置800の構成が考えられる。有機EL装置800では、画素電極801と、共通電極803との間に、図示しない発光層を含む有機層805が介在している。有機EL装置800においては、画素電極801と共通電極803とが一対の電極に相当している。
有機EL装置800において、画素の領域807は、隔壁809によって画素ごとに区画されている。1つの画素の領域807は、隔壁809によって囲まれている。共通電極803は、複数の画素間にわたって設けられており、複数の画素間にわたって共通して機能する。
【0005】
ところで、隔壁809上に蒸着で形成する共通電極803では、図16中のQ部の拡大図である図17に示すように、角部811で共通電極803が途切れやすい。これは、蒸着した有機層805に、隔壁809の壁面と画素電極801との間の角部813の形状が反映されやすいためである。
共通電極803が途切れた状態では、発光層の発光状態が画素間でばらつきやすくなる。
つまり、従来の有機EL装置では、発光品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]平面を有する第1電極と、前記第1電極の前記平面側において、前記第1電極の前記平面に対向する第2電極と、前記第1電極の前記平面よりも前記第2電極側に突出し、且つ、前記平面の少なくとも一部の領域を囲む壁面を有する隔壁と、前記壁面によって囲まれた領域内において、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、を有し、前記有機層は、発光層を含む複数の層を含んでおり、前記第2電極は、前記壁面によって囲まれた前記領域内から、少なくとも前記壁面にかけて設けられており、前記複数の層のうちの少なくとも1つの層は、前記第2電極側の表面において、平面視で前記平面に重なる底面と、前記壁面と前記第1電極との交線に対面し、前記交線側に向かって凹となる方向に湾曲した湾曲面と、を含んでおり、前記第1電極、前記第2電極、前記隔壁及び前記有機層を、前記平面の法線方向に沿って切断したときの断面において、前記平面に平行な面を前記法線方向に前記底面まで平行移動させ、前記面と前記湾曲面との交点を第1点とし、前記面と前記壁面との交点を第2点とし、前記第1点と前記第2点との間の中点を第3点とし、前記第3点を通る前記法線と前記湾曲面との交点を第4点としたときに、前記第1点と前記第4点とを結んだ線と前記面とがなす角度が、50度以下である、ことを特徴とする有機EL装置。
【0008】
この適用例の有機EL装置は、第1電極と、第2電極と、隔壁と、有機層と、を有している。第1電極は、平面を有している。第2電極は、第1電極の平面側において、第1電極の平面に対向している。隔壁は、第1電極の平面よりも第2電極側に突出している。隔壁は、壁面を有している。壁面は、第1電極の平面の少なくとも一部の領域を囲んでいる。有機層は、壁面によって囲まれた領域内において、第1電極と第2電極との間に介在している。有機層は、発光層を含む複数の層を含んでいる。第2電極は、壁面によって囲まれた領域内から、少なくとも壁面にかけて設けられている。
有機層に含まれる複数の層のうちの少なくとも1つの層は、第2電極側の表面において、底面と、湾曲面と、を含んでいる。底面は、平面視で第1電極の平面に重なっている。湾曲面は、壁面と第1電極との交線に対面している。湾曲面は、交線側に向かって凹となる方向に湾曲している。
上記の構成により、湾曲面を有する層の第1電極側とは反対側に位置する第2電極に、湾曲面が反映しやすい。つまり、第2電極には、壁面によって囲まれた領域内から壁面にかかる領域において、湾曲した面が形成され得る。これにより、例えば、角部をまたいで第2電極を設ける場合に比較して、第2電極が途切れてしまうことを低く抑えやすくすることができる。
この有機EL装置では、第1電極、第2電極、隔壁及び有機層を、平面の法線方向に沿って切断したときの断面において、平面に平行な面を法線方向に底面まで平行移動させ、面と湾曲面との交点を第1点とし、面と壁面との交点を第2点とし、第1点と第2点との間の中点を第3点とし、第3点を通る法線と湾曲面との交点を第4点としたときに、第1点と第4点とを結んだ線と面とがなす角度が、50度以下である。
これにより、第2電極が途切れてしまうことを低く抑えることができ、発光品位を向上させやすくすることができる。
【0009】
[適用例2]第1電極と、前記第1電極に対向する第2電極と、前記第1電極よりも前記第2電極側に突出し、且つ、前記第1電極の少なくとも一部の領域を囲む壁面を有する隔壁と、発光層を含む複数の層を含み、前記壁面によって囲まれた領域内において、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、を有する有機EL装置の製造方法であって、前記壁面によって囲まれた前記領域内に、前記有機層を、前記複数の層の前記層ごとに形成する有機層形成工程と、前記有機層形成工程の後に、前記第2電極を形成する工程と、を含み、前記有機層形成工程は、前記複数の層のうちの一部の前記層を、蒸着法で形成する蒸着層形成工程と、前記複数の層のうちの他の前記層を、塗布法で形成する塗布層形成工程と、を含み、前記塗布層形成工程は、前記壁面によって囲まれた領域内に、有機材料を含有する液状体を配置する配置工程と、前記液状体に含まれる液体の少なくとも一部を除去することにより、前記有機材料で前記層を形成する層形成工程と、を含み、前記層形成工程では、前記層形成工程で形成する前記層の前記第1電極側とは反対側の表面において、前記壁面と前記第1電極との交線に対面し、且つ前記交線側に向かって凹となる方向に湾曲する湾曲面を形成する、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0010】
この適用例の製造方法が適用され得る有機EL装置は、第1電極と、第2電極と、隔壁と、有機層と、を有している。第2電極は、第1電極に対向している。隔壁は、第1電極よりも第2電極側に突出している。隔壁は、壁面を有している。壁面は、第1電極の少なくとも一部の領域を囲んでいる。有機層は、発光層を含む複数の層を含んでいる。有機層は、壁面によって囲まれた領域内において、第1電極と第2電極との間に介在している。
そして、この適用例の製造方法は、有機層形成工程と、第2電極を形成する工程と、を含む。有機層形成工程では、壁面によって囲まれた領域内に有機層を形成する。このとき、有機層を、複数の層の層ごとに形成する。有機層形成工程の後に、第2電極を形成する。
有機層形成工程は、蒸着層形成工程と、塗布層形成工程と、を含む。蒸着層形成工程では、有機層における複数の層のうちの一部の層を、蒸着法で形成する。塗布層形成工程では、有機層における複数の層のうちの他の層を、塗布法で形成する。
塗布層形成工程は、配置工程と、層形成工程と、を含む。配置工程では、壁面によって囲まれた領域内に、有機材料を含有する液状体を配置する。層形成工程では、液状体に含まれる液体の少なくとも一部を除去することにより、有機材料で層を形成する。
また、層形成工程では、この層形成工程で形成する層の第1電極側とは反対側の表面に、湾曲面を形成する。湾曲面は、壁面と第1電極との交線に対面し、且つこの交線側に向かって凹となる方向に湾曲する。
この製造方法によれば、壁面によって囲まれた領域内から壁面にかかる領域において、第2電極に湾曲した面を形成することができる。これにより、例えば、角部をまたいで第2電極を設ける場合に比較して、第2電極が途切れてしまうことを低く抑えやすくすることができる。この結果、有機EL装置における発光品位を向上させやすくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記層形成工程は、前記液体の少なくとも一部を乾燥させることによって、前記液体の少なくとも一部を除去する乾燥工程を含んでいる、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0012】
この適用例では、層形成工程は、乾燥工程を含んでいる。乾燥工程では、液体の少なくとも一部を乾燥させることによって、液体の少なくとも一部を除去する。これにより、層を形成することができる。
【0013】
[適用例4]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記乾燥工程は、大気圧よりも低い圧力に減圧された減圧環境下で、前記液体の少なくとも一部を乾燥させる減圧乾燥工程を含んでいる、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0014】
この適用例では、乾燥工程は、減圧乾燥工程を含んでいる。減圧乾燥工程では、大気圧よりも低い圧力に減圧された減圧環境下で、液体の少なくとも一部を乾燥させる。これにより、液状体に含まれる液体の少なくとも一部を乾燥させることができる。
【0015】
[適用例5]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記層形成工程では、前記減圧乾燥工程において前記湾曲面を形成する、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0016】
[適用例6]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記減圧乾燥工程は、第1のポンプを用いて、前記圧力を大気圧よりも低い第1の圧力に減圧する第1減圧工程と、前記第1減圧工程に続いて、前記第1のポンプと第2のポンプとを併用して、前記第1の圧力を、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧する第2減圧工程と、を含んでいる、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0017】
この適用例では、減圧乾燥工程は、第1減圧工程と、第2減圧工程と、を含んでいる。第1減圧工程では、第1のポンプを用いて、圧力を大気圧よりも低い第1の圧力に減圧する。第1減圧工程に続いて、第2減圧工程では、第1のポンプと第2のポンプとを併用して、第1の圧力を、第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧する。これにより、層に湾曲面を形成することができる。
【0018】
[適用例7]上記の有機EL装置の製造方法であって、前記有機層形成工程では、前記塗布層形成工程の後に前記蒸着層形成工程を実施する、ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0019】
この適用例では、有機層形成工程において、塗布層形成工程の後に蒸着層形成工程を実施する。
例えば、蒸着層形成工程の後に塗布層形成工程を実施すると、蒸着法で形成した層に液状体を配置することになる。このとき、蒸着法で形成した層が液状体に溶けることがある。つまり、蒸着層形成工程の後に塗布層形成工程を実施すると、各層を安定して形成することが困難になることがある。
これに対し、この適用例では、塗布層形成工程の後に蒸着層形成工程を実施するので、複数の層のそれぞれを安定して形成しやすくすることができる。この結果、有機EL装置における発光品位を一層向上させやすくすることができる。
【0020】
[適用例8]上記の有機EL装置を有する、ことを特徴とする電子機器。
【0021】
この適用例の電子機器は、有機EL装置を有している。この有機EL装置は、第1電極と、第2電極と、隔壁と、有機層と、を有している。第1電極は、平面を有している。第2電極は、第1電極の平面側において、第1電極の平面に対向している。隔壁は、第1電極の平面よりも第2電極側に突出している。隔壁は、壁面を有している。壁面は、第1電極の平面の少なくとも一部の領域を囲んでいる。有機層は、壁面によって囲まれた領域内において、第1電極と第2電極との間に介在している。有機層は、発光層を含む複数の層を含んでいる。第2電極は、壁面によって囲まれた領域内から、少なくとも壁面にかけて設けられている。
有機層に含まれる複数の層のうちの少なくとも1つの層は、第2電極側の表面において、底面と、湾曲面と、を含んでいる。底面は、平面視で第1電極の平面に重なっている。湾曲面は、壁面と第1電極との交線に対面している。湾曲面は、交線側に向かって凹となる方向に湾曲している。
上記の構成により、湾曲面を有する層の第1電極側とは反対側に位置する第2電極に、湾曲面が反映しやすい。つまり、第2電極には、壁面によって囲まれた領域内から壁面にかかる領域において、湾曲した面が形成され得る。これにより、例えば、角部をまたいで第2電極を設ける場合に比較して、第2電極が途切れてしまうことを低く抑えやすくすることができる。
この有機EL装置では、第1電極、第2電極、隔壁及び有機層を、平面の法線方向に沿って切断したときの断面において、平面に平行な面を法線方向に底面まで平行移動させ、面と湾曲面との交点を第1点とし、面と壁面との交点を第2点とし、第1点と第2点との間の中点を第3点とし、第3点を通る法線と湾曲面との交点を第4点としたときに、第1点と第4点とを結んだ線と面とがなす角度が、50度以下である。
これにより、第2電極が途切れてしまうことを低く抑えることができ、発光品位を向上させやすくすることができる。
そして、適用例の電子機器は、この有機EL装置を有しているので、この有機EL装置における発光品位を向上させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における表示装置を示す平面図。
【図2】図1中のA−A線における断面図。
【図3】本実施形態における複数の画素の一部を示す平面図。
【図4】本実施形態における表示装置の回路構成を示す図。
【図5】図3中のC−C線における断面図。
【図6】図5中の有機EL素子の拡大図。
【図7】本実施形態における正孔注入層を示す断面図。
【図8】図7中のF部の拡大図。
【図9】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図10】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図11】本実施形態での素子基板の製造工程を説明する図。
【図12】実施例における基板の種類を説明する断面図。
【図13】本実施形態での減圧乾燥に適用される乾燥装置の主要構成を説明する図。
【図14】比較例における正孔注入層を示す断面図。
【図15】本実施形態における表示装置を適用した電子機器の斜視図。
【図16】従来技術における課題を説明する図。
【図17】図16中のQ部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態について、有機EL装置を利用した表示装置を例に、図面を参照しながら説明する。
実施形態における表示装置1は、図1に示すように、表示面3を有している。
【0024】
ここで、表示装置1には、複数の画素5が設定されている。複数の画素5は、表示領域7内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリクスMを構成している。
本実施形態では、X方向は、図4に示すように、後述する走査線GTが延在する方向である。Y方向は、X方向とは直交(交差)する方向である。なお、本実施形態では、後述するデータ線SIがY方向に沿って延在している。このため、Y方向は、データ線SIが延在する方向でもある。
【0025】
表示装置1は、図1に示す複数の画素5から選択的に表示面3を介して表示装置1の外に光を射出することで、表示面3に画像を表示することができる。なお、表示領域7とは、画像が表示され得る領域である。図1では、構成をわかりやすく示すため、画素5が誇張され、且つ画素5の個数が減じられている。
【0026】
表示装置1は、図1中のA−A線における断面図である図2に示すように、素子基板11と、封止基板13とを有している。
素子基板11には、表示面3側すなわち封止基板13側に、複数の画素5のそれぞれに対応して、後述する有機EL素子などが設けられている。なお、素子基板11の表示面3側とは反対側の面15は、表示装置1の底面として設定されている。以下において、面15は、底面15と表記される。
【0027】
封止基板13は、素子基板11よりも表示面3側で素子基板11に対向した状態で設けられている。素子基板11と封止基板13とは、接着剤16を介して接合されている。表示装置1では、有機EL素子は、接着剤16によって表示面3側から覆われている。
また、素子基板11と封止基板13との間は、表示装置1の周縁よりも内側で表示領域7を囲むシール材17によって封止されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子と接着剤16とが、素子基板11及び封止基板13並びにシール材17によって封止されている。
【0028】
ここで、表示装置1における複数の画素5は、それぞれ、表示面3から射出する光の色が、図3に示すように、赤系(R)、緑系(G)及び青系(B)のうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMを構成する複数の画素5は、Rの光を射出する画素5Rと、Gの光を射出する画素5Gと、Bの光を射出する画素5Bとを含んでいる。
なお、以下においては、画素5という表記と、画素5R、5G及び5Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0029】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑等を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。また、Gの色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0030】
マトリクスMでは、Y方向に沿って一列に並ぶ複数の画素5が、1つの画素列18を構成している。また、X方向に沿って一列に並ぶ複数の画素5が、1つの画素行19を構成している。
1つの画素列18内の各画素5は、光の色がR、G及びBのうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMは、複数の画素5RがY方向に配列した画素列18Rと、複数の画素5GがY方向に配列した画素列18Gと、複数の画素5BがY方向に配列した画素列18Bとを有している。そして、表示装置1では、画素列18R、画素列18G及び画素列18Bが、この順でX方向に沿って反復して並んでいる。
なお、以下においては、画素列18という表記と、画素列18R、画素列18G及び画素列18Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0031】
表示装置1は、回路構成を示す図である図4に示すように、画素5ごとに、選択トランジスター21と、駆動トランジスター23と、容量素子25と、有機EL素子27とを有している。有機EL素子27は、画素電極29と、機能層31と、共通電極33とを有している。選択トランジスター21及び駆動トランジスター23は、それぞれ、TFT(Thin Film Transistor)素子で構成されており、スイッチング素子としての機能を有する。
また、表示装置1は、走査線駆動回路37と、データ線駆動回路38と、複数の走査線GTと、複数のデータ線SIと、複数の電源線PWとを有している。
【0032】
複数の走査線GTは、それぞれ走査線駆動回路37につながっており、Y方向に互いに間隔をあけた状態でX方向に延びている。
複数のデータ線SIは、それぞれデータ線駆動回路38につながっており、X方向に互いに間隔をあけた状態でY方向に延びている。
複数の電源線PWは、Y方向に互いに間隔をあけた状態で、且つ各電源線PWと各走査線GTとがY方向に間隔をあけた状態でX方向に延びている。
【0033】
各画素5は、各走査線GTと各データ線SIとの交差に対応して設定されている。各走査線GT及び各電源線PWは、それぞれ、図3に示す各画素行19に対応している。各データ線SIは、図3に示す各画素列18に対応している。
図4に示す各選択トランジスター21のゲート電極は、対応する各走査線GTに電気的につながっている。各選択トランジスター21のソース電極は、対応する各データ線SIに電気的につながっている。各選択トランジスター21のドレイン電極は、各駆動トランジスター23のゲート電極及び各容量素子25の一方の電極に電気的につながっている。
【0034】
容量素子25の他方の電極と、駆動トランジスター23のソース電極は、それぞれ、対応する各電源線PWに電気的につながっている。
各駆動トランジスター23のドレイン電極は、各画素電極29に電気的につながっている。各画素電極29と共通電極33とは、画素電極29を陽極とし、共通電極33を陰極とする一対の電極を構成している。
ここで、共通電極33は、マトリクスMを構成する複数の画素5間にわたって一連した状態で設けられており、複数の画素5間にわたって共通して機能する。
各画素電極29と共通電極33との間に介在する機能層31は、後述する発光層を含んでいる。機能層31では、画素電極29と共通電極33との間に発生する電流によって、発光層が発光する。
【0035】
選択トランジスター21は、この選択トランジスター21につながる走査線GTに選択信号が供給されるとON状態となる。このとき、この選択トランジスター21につながるデータ線SIからデータ信号が供給され、駆動トランジスター23がON状態になる。駆動トランジスター23のゲート電位は、データ信号の電位が容量素子25に一定の期間だけ保持されることによって、一定の期間だけ保持される。これにより、駆動トランジスター23のON状態が一定の期間だけ保持される。なお、各データ信号は、階調表示に応じた電位に生成される。
【0036】
駆動トランジスター23のON状態が保持されているときに、駆動トランジスター23のゲート電位に応じた電流が、電源線PWから画素電極29と機能層31を経て共通電極33に流れる。そして、機能層31に含まれる発光層が、機能層31を流れる電流量に応じた輝度で発光する。これにより、表示装置1では、階調表示が行われ得る。
表示装置1は、機能層31に含まれる発光層が発光し、発光層からの光が封止基板13を介して表示面3から射出されるトップエミッション型の有機EL装置の1つである。なお、表示装置1では、表示面3側という表現が上側とも表現され、底面15側という表現が下側とも表現される。
【0037】
ここで、素子基板11及び封止基板13のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
素子基板11は、図3中のC−C線における断面図である図5に示すように、第1基板41と、素子層42と、を有している。なお、図5では、構成をわかりやすく示すため、選択トランジスター21、容量素子25、データ線SI及び電源線PWが省略されている。
第1基板41は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた第1面43aと、底面15側に向けられた第2面43bとを有している。
【0038】
素子層42は、第1基板41の第1面43aに設けられている。素子層42には、ゲート絶縁膜44と、絶縁膜45と、絶縁膜47と、隔壁71と、機能層31と、補助電極75と、共通電極33と、が含まれている。また、素子層42には、画素5ごとに設けられた駆動トランジスター23と、画素電極29と、ソース電極55と、反射膜61と、が含まれている。
なお、図示しない選択トランジスター21、容量素子25、データ線SI及び電源線PWも素子層42に含まれる。
【0039】
ゲート絶縁膜44は、第1基板41の第1面43aに設けられている。絶縁膜45は、ゲート絶縁膜44の表示面3側に設けられている。絶縁膜47は、絶縁膜45の表示面3側に設けられている。
また、第1基板41の第1面43aには、各画素5の駆動トランジスター23に対応して、半導体層51が設けられている。半導体層51は、ゲート絶縁膜44によって表示面3側から覆われている。なお、ゲート絶縁膜44の材料としては、例えば酸化シリコンなどの材料が採用され得る。
【0040】
ゲート絶縁膜44の表示面3側には、平面視で半導体層51に重なる領域にゲート電極53が設けられている。ゲート電極53の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ゲート電極53は、絶縁膜45によって表示面3側から覆われている。
【0041】
絶縁膜45の表示面3側には、平面視で半導体層51のソース領域(図示せず)に重なる領域にソース電極55が設けられている。ソース電極55は、絶縁膜45及びゲート絶縁膜44に設けられたコンタクトホール57を介して半導体層51のソース領域(図示せず)につながっている。ソース電極55の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、モリブデン、タングステン、クロムなどの金属や、これらを含む合金などが採用され得る。ソース電極55は、絶縁膜47によって表示面3側から覆われている。
【0042】
反射膜61は、画素5ごとに、絶縁膜47の表示面3側に設けられている。反射膜61の材料としては、例えば、銀、白金、アルミニウム、銅などの光反射性が高い金属や、これらを含む合金などが採用され得る。
反射膜61の表示面3側には、画素電極29が設けられている。画素電極29は、絶縁膜47、絶縁膜45及びゲート絶縁膜44に設けられたコンタクトホール63を介して半導体層51のドレイン領域(図示せず)につながっている。
【0043】
画素電極29の材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)やインジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide)などが採用され得る。本実施形態では、画素電極29の材料としてITOが採用されている。
また、絶縁膜45及び47の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、アクリル系の樹脂などの材料が採用され得る。
【0044】
隣り合う画素電極29同士の間には、隔壁71が領域72にわたって設けられている。隔壁71は、例えば、カーボンブラックやクロムなどの光吸収性が高い材料を含有するアクリル系の樹脂やポリイミド樹脂などの有機材料で構成されている。本実施形態では、隔壁71の材料としてアクリル系の樹脂が採用されている。
隔壁71は、平面視で、表示領域7(図1)にわたって格子状に設けられている。隔壁71は、画素5ごとに、発光領域73を囲んでいる。このため、発光領域73は、図5に示すように、隔壁71によって区画されている。
表示領域7は、隔壁71によって画素5ごとに発光領域73が区画されている。1つの画素5に着目すると、隔壁71は、平面視で環状に設けられている。なお、画素電極29は、隔壁71によって囲まれた発光領域73に平面視で重なっている。
【0045】
画素電極29の表示面3側には、機能層31が設けられている。機能層31は、複数の層を有している。機能層31において、複数の層のうちの一部の層は、領域72をまたいで、複数の発光領域73にわたっている。
発光領域73において、機能層31の表示面3側には、共通電極33が設けられている。共通電極33は、複数の発光領域73にわたって一連した状態で設けられている。共通電極33の材料としては、例えば、マグネシウムと銀とを含む合金や、カルシウムなどが採用され得る。本実施形態では、共通電極33の材料として、マグネシウムと銀とを含む合金(以下、MgAgと呼ぶ)が採用されている。
【0046】
ここで、領域72において、機能層31と共通電極33との間には、補助電極75が介在している。補助電極75は、共通電極33の電気伝導を補助する機能を有している。補助電極75の材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウムなどの電気伝導性が高い金属や、これらのうちの1つ又は2つ以上を含有する合金などが採用され得る。本実施形態では、補助電極75の材料として、アルミニウムを含有する合金が採用されている。
【0047】
なお、表示装置1では、各画素5において発光に有効な領域は、平面視で画素電極29と機能層31と共通電極33とが重なる領域であると定義され得る。また、各画素5において、発光機能を発揮させる要素の一群が1つの有機EL素子27であると定義され得る。表示装置1では、1つの有機EL素子27は、1つの画素電極29と、この1つの画素電極29に対応する機能層31と、この1つの画素電極29に対応する共通電極33と、を含んでいる。
【0048】
封止基板13は、第2基板81と、対向層82と、を有している。第2基板81は、例えばガラスや石英などの光透過性を有する材料で構成されており、表示面3側に向けられた外向面83aと、底面15側に向けられた対向面83bとを有している。
対向層82は、第2基板81の対向面83bに設けられている。対向層82は、遮光層85と、カラーフィルター87と、オーバーコート層89と、を含んでいる。
【0049】
遮光層85は、対向面83bにおいて、領域91にわたって設けられている。領域91は、平面視で、領域72に重なる領域である。つまり、遮光層85は、隔壁71と同様に、平面視で、表示領域7(図1)にわたって格子状に設けられている。遮光層85は、画素5ごとに、フィルター領域93を囲んでいる。このため、フィルター領域93は、図5に示すように、遮光層85によって区画されている。フィルター領域93は、平面視で、発光領域73に重なっている。
遮光層85としては、例えば、カーボンブラックやクロムなどの光吸収性が高い材料を含有するアクリル系の樹脂やポリイミド樹脂などの有機材料などが採用され得る。
【0050】
第2基板81の対向面83bには、フィルター領域93ごとに、フィルター領域93を底面15側から覆うカラーフィルター87が設けられている。
ここで、カラーフィルター87は、入射された光のうち所定の波長域の光を透過させることができる。カラーフィルター87は、画素5R、画素5G及び画素5Bごとに異なる色に着色された樹脂などで構成されている。画素5Rに対応するカラーフィルター87は、Rの光を透過させることができる。画素5Gに対応するカラーフィルター87はGの光を透過させ、画素5Bに対応するカラーフィルター87はBの光を透過させることができる。なお、以下において、各カラーフィルター87に対してR、G及びBが識別される場合に、カラーフィルター87R,87G及び87Bという表記が用いられる。
【0051】
遮光層85及びカラーフィルター87の底面15側には、オーバーコート層89が設けられている。オーバーコート層89は、光透過性を有する樹脂などで構成されており、遮光層85及びカラーフィルター87を底面15側から覆っている。
上記の構成を有する素子基板11及び封止基板13は、素子基板11の共通電極33と封止基板13のオーバーコート層89との間が、接着剤16を介して接合されている。
表示装置1では、図2に示すシール材17は、図5に示す第1基板41の第1面43aと、第2基板81の対向面83bとによって挟持されている。つまり、表示装置1では、有機EL素子27及び接着剤16が、第1基板41及び第2基板81並びにシール材17によって封止されている。なお、シール材17は、対向面83b及び共通電極33の間に設けられていてもよい。この場合、有機EL素子27及び接着剤16は、素子基板11及び封止基板13並びにシール材17によって封止されているとみなされ得る。
【0052】
ところで、本実施形態では、機能層31は、図5中の有機EL素子27の拡大図である図6に示すように、有機層101と、電子注入層103と、を含んでいる。
有機層101は、画素電極29の表示面3側に設けられている。電子注入層103は、有機層101の表示面3側に設けられている。
有機層101は、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、中間層111と、発光層113と、発光層117と、を含んでいる。
【0053】
正孔注入層105は、有機材料を含む材料で構成されており、平面視で隔壁71によって囲まれた領域内で、画素電極29の表示面3側に設けられている。
正孔注入層105の有機材料としては、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体と、ポリスチレンスルホン酸(PSS)等との混合物が採用され得る。正孔注入層105の有機材料としては、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやこれらの誘導体なども採用され得る。
【0054】
正孔輸送層107は、有機材料を含む材料で構成されており、正孔注入層105の表示面3側に設けられている。正孔輸送層107の材料としては、例えば、HT320(出光興産株式会社製)が採用され得る。そして、正孔輸送層107は、蒸着技術を活用して、HT320を配置することによって設けられ得る。なお、蒸着技術を活用した材料の配置は、蒸着法と呼ばれる。本実施形態では、蒸着法で正孔輸送層107を、表示領域7(図1)にわたって形成する方法が採用されている。これにより、正孔輸送層107は、複数の画素5間にまたがって形成される。このため、隔壁71の表示面3側にも、正孔輸送層107が形成されている。
【0055】
発光層109は、有機材料を含む材料で構成されており、正孔輸送層107の表示面3側に設けられている。
発光層109の材料としては、導電性を担保するホスト材料に、電子と正孔との結合により発光する機能を有するドーパントを混入したものが採用され得る。そして、本実施形態では、発光層109は、蒸着法によって形成されている。
発光層109は、Rの光を発する層である。Rの光を発する発光層109の材料としては、例えば、ホスト材料としてのNPBに、ドーパントとしてのRD001(出光興産株式会社製)を混入した構成が採用され得る。
【0056】
中間層111は、有機材料を含む材料で構成されており、発光層109の表示面3側に設けられている。中間層111を構成する材料としては、例えば、NPBなどが採用され得る。
発光層113は、有機材料を含む材料で構成されており、中間層111の表示面3側に設けられている。
発光層113の材料としては、導電性を担保するホスト材料に、電子と正孔との結合により発光する機能を有するドーパントを混入したものが採用され得る。そして、本実施形態では、発光層113は、蒸着法によって形成されている。
発光層113は、Bの光を発する層である。Bの光を発する発光層113の材料としては、例えば、ホスト材料としてのBH215(出光興産株式会社製)に、ドーパントとしてのBD052(出光興産株式会社製)を混入した構成が採用され得る。
【0057】
発光層117は、有機材料を含む材料で構成されており、発光層113の表示面3側に設けられている。
発光層117の材料としては、導電性を担保するホスト材料に、電子と正孔との結合により発光する機能を有するドーパントを混入したものが採用され得る。そして、本実施形態では、発光層117は、蒸着法によって形成されている。
発光層117は、Gの光を発する層である。Gの光を発する発光層117の材料としては、例えば、Alq3に、ドーパントとしてのキナクリドンを混入した構成が採用され得る。
【0058】
なお、中間層111は、電子及び正孔の移動度を調整する機能を有している。中間層111によって、発光層109、発光層113及び発光層117のそれぞれにおける発光機能が保たれる。
電子注入層103は、発光層117の表示面3側に設けられている。電子注入層103の材料としては、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウムなどが採用され得る。本実施形態では、電子注入層103の材料として、フッ化リチウムが採用されている。
【0059】
ところで、本実施形態では、画素5ごとに、有機EL素子27は、図5に示すように、カラーフィルター87R,87G及び87Bのそれぞれに対応している。カラーフィルター87Rに対応する有機EL素子27は、有機EL素子27Rと呼ばれる。同様に、カラーフィルター87Gに対応する有機EL素子27が有機EL素子27Gと呼ばれ、カラーフィルター87Bに対応する有機EL素子27が有機EL素子27Bと呼ばれる。
【0060】
有機EL素子27Rは、平面視でカラーフィルター87Rに重なっている。有機EL素子27Gは、平面視でカラーフィルター87Gに重なっている。有機EL素子27Bは、平面視でカラーフィルター87Bに重なっている。このため、有機EL素子27Rとカラーフィルター87Rとは、互いに対応する関係にある。同様に、有機EL素子27Gとカラーフィルター87Gとが対応関係にあり、有機EL素子27Bとカラーフィルター87Bとが対応関係にある。
【0061】
そして、本実施形態では、反射膜61と共通電極33との間の距離が、有機EL素子27R,27G及び27Bの間で相互に異なる距離に設定されている。
有機EL素子27Rでは、反射膜61と共通電極33との間の距離が、D1の距離に設定されている。有機EL素子27Gでは、反射膜61と共通電極33との間の距離が、D2の距離に設定されている。有機EL素子27Bでは、反射膜61と共通電極33との間の距離が、D3の距離に設定されている。
本実施形態では、D1と、D2と、D3とは、D1>D2>D3の関係を満たしている。
そして、本実施形態では、D1>D2>D3の関係は、画素電極29の厚みを有機EL素子27R,27G及び27Bの間で相互に異なる厚みに設定することによって実現されている。
【0062】
表示装置1では、画素電極29を陽極とし、共通電極33を陰極として、画素電極29と共通電極33との間に電圧を印加すると、有機層101(図6)を電流が流れる。このとき、発光層109、発光層113及び発光層117のそれぞれにおいて発光現象が発現する。このとき、有機層101からの光には、発光層109からのRの光と、発光層113からのBの光と、発光層117からのGの光と、が含まれている。
【0063】
有機層101から共通電極33側に向かう光の一部は、共通電極33を透過してカラーフィルター87(図5)に入射する。
また、有機層101から画素電極29側に向かう光の一部は、画素電極29を透過してから、反射膜61で共通電極33側に反射する。反射膜61で反射して共通電極33側に向かう光の一部は、共通電極33を透過してカラーフィルター87に入射する。
有機層101からカラーフィルター87に入射する光は、カラーフィルター87R,87G及び87Bのそれぞれに対応した色の光として、第2基板81から表示面3側に射出される。
【0064】
有機層101から共通電極33側に向かう光の残りの一部は、共通電極33で反射して、画素電極29側に向かう。共通電極33で反射して画素電極29側に向かう光の一部は、画素電極29を透過してから、反射膜61で共通電極33側に反射する。
このとき、有機EL素子27Rでは、反射膜61で共通電極33側に反射する光のうちでRの光が共振現象によって強められる。有機EL素子27Gでは、反射膜61で共通電極33側に反射する光のうちでGの光が共振現象によって強められる。また、有機EL素子27Bでは、反射膜61で共通電極33側に反射する光のうちでBの光が共振現象によって強められる。
【0065】
本実施形態では、有機EL素子27R(図5)において、共通電極33と反射膜61との間の距離が、Rの光を強めるD1の距離に設定されている。また、有機EL素子27Gでは、共通電極33と反射膜61との間の距離が、Gの光を強めるD2の距離に設定されている。有機EL素子27Bでは、共通電極33と反射膜61との間の距離が、Bの光を強めるD3の距離に設定されている。
これらのD1、D2及びD3の距離の設定により、画素5R,5G及び5Bのそれぞれにおいて、光の色純度が高められる。これにより、表示装置1の表示における表示品位の向上が図られる。
【0066】
ところで、本実施形態では、正孔注入層105は、図7に示すように、共通電極33側の表面に、底面121と、湾曲面123と、を有している。
底面121は、平面視で、画素電極29の電極面125に重なっている。電極面125は、平面に形成されている。
湾曲面123は、底面121につながっている。湾曲面123は、底面121から、隔壁71の壁面127にかかっている。湾曲面123は、電極面125と壁面127との交線128に対面している。本実施形態では、湾曲面123は、平面視で交線128に重なっている。湾曲面123は、交線128に向かって凹となる方向に湾曲している。
【0067】
本実施形態では、正孔注入層105は、図6に示すように、有機層101に含まれる複数の層において、画素電極29側から共通電極33側に向かって順に数えていったときの第1層目に相当する。第2層目の正孔輸送層107を含め、正孔輸送層107から表示面3側の各層には、正孔注入層105の湾曲面123(図7)の形状が反映されている。
この結果、共通電極33は、図6に示すように、湾曲部129を有している。
本実施形態では、正孔注入層105において、湾曲面123の湾曲の程度が規定されている。湾曲面123の湾曲の程度は、図7中のF部の拡大図である図8に示すように、角度θによって規定されている。
【0068】
角度θは、面131と線133との間の角度である。
面131は、電極面125に平行な面である。面131は、電極面125に平行な面を、電極面125の法線135に沿って正孔注入層105の底面121まで移動させたときの仮想的な面である。
ここで、面131と湾曲面123との交点を第1点137とし、面131と壁面127との交点を第2点139とし、第1点137と第2点139との中点を第3点141とする。また、第3点141を通る法線135と湾曲面123との交点を第4点143とする。
そして、第1点137と第4点143とを結ぶ線が線133である。
【0069】
本実施形態では、角度θは、50度以下に設定されている。これにより、共通電極33が、湾曲部129(図6)で途切れてしまうことを低く抑えることができる。
ここで、表示装置1の製造方法について説明する。
表示装置1の製造方法は、素子基板11を製造する工程と、封止基板13を製造する工程と、表示装置1を組み立てる工程と、に大別される。
【0070】
素子基板11を製造する工程では、図9(a)に示すように、まず、第1基板41の第1面43aに駆動素子層151を形成する。この駆動素子層151には、前述した選択トランジスター21(図4)、駆動トランジスター23、容量素子25(図4)、電源線PW(図4)、反射膜61、画素電極29、ゲート絶縁膜44、絶縁膜45、絶縁膜47などが含まれている。
【0071】
次いで、図9(b)に示すように、平面視で画素電極29の周縁及び絶縁膜47に重なる領域(図5に示す領域72)に隔壁71を形成する。
隔壁71の形成では、まず、感光性を有するアクリル系の樹脂で、平面視で画素電極29及び絶縁膜47を覆う樹脂膜を形成する。この樹脂膜の形成では、スピンコート技術や印刷技術などが活用され得る。
次いで、この樹脂膜にプレベーク処理を施す。プレベーク処理の条件としては、例えば、温度範囲を70℃〜90℃とし、処理時間を1分〜3分とする条件が採用され得る。
次いで、例えばフォトリソグラフィー技術を活用することによって、樹脂膜をパターニングする。
次いで、パターニングした樹脂にポストベーク処理を施す。ポストベーク処理の条件としては、例えば、温度範囲を110℃〜170℃とし、処理時間を1分〜3分とする条件が採用され得る。
次いで、ポストベーク処理を施した樹脂にベーク処理を施す。ベーク処理の条件としては、例えば、温度範囲を210℃〜250℃とし、処理時間を20分〜40分とする条件が採用され得る。これにより、隔壁71が形成され得る。
なお、駆動素子層151から隔壁71までの構成が形成された第1基板41は、以下において基板153と呼ばれる。
【0072】
隔壁71の形成に次いで、図10(a)に示すように、基板153に酸素プラズマ処理を施す。これにより、画素電極29に、後述する液状体105aに対する親液性が付与される。
次いで、図10(b)に示すように、基板153にCF4プラズマ処理を施す。これにより、隔壁71に、後述する液状体105aに対する撥液性が付与される。
【0073】
次いで、図11(a)に示すように、隔壁71によって囲まれた各領域(図5に示す発光領域73)内に液状体105aを配置する。液状体105aには、正孔注入層105を構成する有機材料が含まれている。
液状体105aの配置には、液滴吐出ヘッド155を利用したインクジェット法が活用され得る。インクジェット法では、液状体105aが液滴105bとして吐出される。
液滴吐出ヘッド155から液状体105aなどを液滴105bとして吐出する技術は、インクジェット技術と呼ばれる。そして、インクジェット技術を活用して液状体105aなどを所定の位置に配置する方法は、インクジェット法と呼ばれる。このインクジェット法は、塗布法の1つである。
【0074】
隔壁71によって囲まれた領域内に配置された液状体105aを減圧乾燥法で乾燥させることによって、図11(b)に示す正孔注入層105が形成され得る。このとき、正孔注入層105には、図7に示すように、底面121と、湾曲面123とが形成され得る。
なお、正孔注入層105を構成する有機材料が含まれた液状体105aは、PEDOTとPSSとの混合物を、溶媒に溶解させた構成が採用され得る。溶媒としては、例えば、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノールなどが採用され得る。
なお、減圧乾燥法は、減圧環境下で行う乾燥方法であり、真空乾燥法とも呼ばれる。本実施形態では、減圧乾燥法による乾燥(以下、減圧乾燥と呼ぶ)において、ドライポンプとターボ分子ポンプとが減圧に併用される。
【0075】
正孔注入層105の形成に次いで、図6に示すように、正孔注入層105の表示面3側に正孔輸送層107を形成する。正孔輸送層107は、正孔輸送層107の材料を蒸着法で配置することによって形成される。
次いで、正孔輸送層107の表示面3側に発光層109を蒸着法で形成する。
同様に、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、蒸着法で形成することによって、機能層31が形成される。
【0076】
次いで、図6に示すように、電子注入層103の表示面3側において、電子注入層103と隔壁71とが重なる領域に補助電極75を形成する。補助電極75の形成では、例えばスパッタリング技術や真空蒸着技術などの成膜技術や、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術などのパターニング技術が活用され得る。
次いで、電子注入層103及び補助電極75の表示面3側に、共通電極33を形成する。共通電極33の形成では、例えばスパッタリング技術や真空蒸着技術などの成膜技術が活用され得る。本実施形態では、真空蒸着技術を活用することにより、電子注入層103及び補助電極75の表示面3側にMgAgの膜を形成する。これにより、共通電極33が形成され得る。
上記の方法により、素子基板11が製造され得る。
【0077】
封止基板13を製造する工程では、図5に示すように、まず、第2基板81の対向面83bに、遮光層85を、平面視で格子状に形成する。遮光層85は、カーボンブラックやクロムなどを含有する樹脂膜を形成してから、この樹脂膜を、例えば、フォトリソグラフィー技術を活用してパターニングすることによって形成され得る。
【0078】
次いで、遮光層85によって囲まれる各フィルター領域93内に、カラーフィルター87を形成する。カラーフィルター87は、R、G及びBの各光に対応する着色剤が含有された樹脂を、各フィルター領域93内に配置することによって形成され得る。なお、各フィルター領域93内への樹脂の配置は、例えば、インクジェット技術や蒸着技術を活用することにより行われ得る。
次いで、遮光層85及びカラーフィルター87上にオーバーコート層89を形成する。オーバーコート層89は、例えばスピンコート技術を活用して、光透過性を有する樹脂で形成され得る。
上記の方法により、封止基板13が製造され得る。
【0079】
表示装置1を組み立てる工程では、図2に示すように、素子基板11及び封止基板13を、接着剤16及びシール材17を介して接合する。
このとき、素子基板11及び封止基板13は、図5に示すように、第1基板41の第1面43aと、封止基板13の対向面83bとが向き合った状態で接合される。これにより、表示装置1が製造され得る。
【0080】
本実施形態において、画素電極29が第1電極に対応し、共通電極33が第2電極に対応し、ドライポンプが第1のポンプに対応し、ターボ分子ポンプが第2のポンプに対応している。また、正孔注入層105の形成が塗布層形成工程に対応し、減圧乾燥による液状体105aの乾燥が層形成工程における乾燥工程に対応している。また、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113及び発光層117の形成が蒸着層形成工程に対応している。
本実施形態では、図8に示す角度θが50度以下に設定されている。これにより、共通電極33が、湾曲部129(図6)で途切れてしまうことを低く抑えることができる。この結果、表示装置1の表示における表示品位を向上させやすくすることができる。
【0081】
また、本実施形態では、有機層101を構成する各層のうち、底面15側から数えて1層目である正孔注入層105が、塗布法で形成されている。
例えば、1層目を蒸着法で形成し、2層目を塗布法で形成しても共通電極33に湾曲部129を形成することができる。しかしながら、1層目を蒸着法で形成し、2層目を塗布法で形成する場合、2層目の有機材料を含む液状体における溶媒が、1層目を溶解してしまうことがある。この結果、表示品位が損なわれることがある。
これに対し、1層目を塗布法で形成する本実施形態では、1層目及び2層目が互いに損傷しあうことを低く抑えることができる。この点で、1層目を塗布法で形成することは好ましい。
【0082】
ここで、実施例及び比較例について説明する。
以下に説明する実施例及び比較例では、それぞれ、図9(b)に示す基板153として、2種類の試料が用いられている。2種類の試料は、図12に示すように、隔壁71と画素電極29との間の角度θ2の値が互いに異なっている。角度θ2として、50度と、60度との2種類が採用されている。
以下において、角度θ2が50度である基板153は、基板153aと呼ばれる。また、角度θ2が60度である基板153は、基板153bと呼ばれる。
なお、基板153aと基板153bとは、前述した隔壁71の形成において、ポストベーク処理の条件が異なっている。
基板153aでは、ポストベーク処理の条件として、処理温度を160℃とし、処理時間を約2分間とした。
基板153bでは、ポストベーク処理の条件として、処理温度を120℃とし、処理時間を約2分間とした。
ポストベーク処理の条件を異ならせることにより、基板153aと基板153bとで、角度θ2の値を異ならせることができる。
【0083】
(実施例1)
角度θ2が50度である基板153aに、酸素プラズマ処理、CF4プラズマ処理を施した。これらの処理の順序及び条件は、前述した順序及び条件と同等にした。
次に、この基板153aに、正孔注入層105を形成した。この実施例では、正孔注入層105の形成に、インクジェット法と減圧乾燥法を活用した。正孔注入層105の形成は、前述した方法が採用されている。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0084】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この実施例における表示装置1は、試料1と呼ばれる。
【0085】
ここで、正孔注入層105の形成における減圧乾燥では、図13に示す乾燥装置161を使用した。乾燥装置161は、処理室163と、ターボ分子ポンプ165と、ドライポンプ167と、バルブ169と、バルブ171と、バルブ173と、排気系統175と、排気系統177と、を有している。
排気系統175は、処理室163からバルブ169を経てドライポンプ167に至っている。バルブ169は、排気系統175において、処理室163とドライポンプ167との間に設けられている。
排気系統177は、処理室163からバルブ171、ターボ分子ポンプ165及びバルブ173をこの順に経てドライポンプ167に至っている。バルブ171は、排気系統177において、処理室163とターボ分子ポンプ165との間に設けられている。バルブ173は、排気系統177において、ターボ分子ポンプ165とドライポンプ167との間に設けられている。
【0086】
試料1では、正孔注入層105の形成における減圧乾燥の減圧に、ドライポンプ167とターボ分子ポンプ165とを併用した。
試料1では、減圧乾燥の条件として、以下に記す減圧条件が採用されている。
試料1では、バルブ169を開状態とし、バルブ171及びバルブ173を閉状態として、105Paから約50Paまでの減圧を、ドライポンプ167を用いて約0.8分間で行った。そして、約50Paまで減圧したときに、バルブ169を閉状態とし、バルブ171及びバルブ173を開状態として、ドライポンプ167での排気とターボ分子ポンプ165での排気とを併用して、約0.1Paまでの減圧を約1.5分間で行った。
以下において、この減圧乾燥の条件は、乾燥条件1と呼ばれる。この実施例では、この乾燥条件1を採用することによって正孔注入層105の形成を行った。
【0087】
(実施例2)
角度θ2が50度である基板153aに、酸素プラズマ処理、CF4プラズマ処理を施した。これらの処理の順序及び条件は、前述した順序及び条件と同等にした。
次に、この基板153aに、正孔注入層105を形成した。この実施例では、正孔注入層105の形成に、インクジェット法と減圧乾燥法を活用した。正孔注入層105の形成は、前述した方法が採用されている。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0088】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この実施例における表示装置1は、試料2と呼ばれる。
【0089】
試料2では、正孔注入層105の形成における減圧乾燥の減圧に、ドライポンプ167とターボ分子ポンプ165とを併用した。
試料2では、減圧乾燥の条件として、以下に記す減圧条件が採用されている。
試料2では、バルブ169を開状態とし、バルブ171及びバルブ173を閉状態として、105Paから約103Paまでの減圧を、ドライポンプ167を用いて約1分間で行った。そして、約103Paまで減圧したときに、バルブ169を閉状態とし、バルブ171及びバルブ173を開状態として、ドライポンプ167での排気とターボ分子ポンプ165での排気とを併用して、約0.1Paまでの減圧を約0.3分間で行った。
以下において、この減圧乾燥の条件は、乾燥条件2と呼ばれる。この実施例では、この乾燥条件2を採用することによって正孔注入層105の形成を行った。
【0090】
(実施例3)
角度θ2が60度である基板153bに、酸素プラズマ処理、CF4プラズマ処理を施した。これらの処理の順序及び条件は、前述した順序及び条件と同等にした。
次に、この基板153bに、正孔注入層105を形成した。この実施例では、正孔注入層105の形成に、インクジェット法と減圧乾燥法を活用した。正孔注入層105の形成は、前述した方法が採用されている。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0091】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この実施例における表示装置1は、試料3と呼ばれる。
【0092】
試料3では、正孔注入層105の形成における減圧乾燥の減圧に、ドライポンプ167とターボ分子ポンプ165とを併用した。
また、減圧乾燥の条件として、上述した乾燥条件2を採用した。この実施例では、この乾燥条件2を採用することによって正孔注入層105の形成を行った。
【0093】
(比較例1)
角度θ2が50度である基板153aに、酸素プラズマ処理、CF4プラズマ処理を施した。これらの処理の順序及び条件は、前述した順序及び条件と同等にした。
次に、この基板153aに、正孔注入層105を形成した。この比較例では、正孔注入層105の形成に、インクジェット法と減圧乾燥法を活用した。正孔注入層105の形成は、前述した方法が採用されている。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0094】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この比較例における表示装置1は、試料4と呼ばれる。
【0095】
試料4では、正孔注入層105の形成における減圧乾燥の減圧に、ドライポンプ167だけを使用した。
試料4では、減圧乾燥の条件として、以下に記す減圧条件が採用されている。
試料4では、バルブ169を開状態とし、バルブ171及びバルブ173を閉状態として、105Paから約2Paまでの減圧を、ドライポンプ167を用いて約10分間で達成した。
以下において、この減圧乾燥の条件は、乾燥条件3と呼ばれる。この比較例では、この乾燥条件3を採用することによって正孔注入層105の形成を行った。
【0096】
(比較例2)
角度θ2が50度である基板153aに、正孔注入層105を形成した。この比較例では、正孔注入層105の形成に、蒸着法を活用した。なお、正孔注入層105の材料として、HI406(出光興産株式会社製)を採用した。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0097】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この比較例における表示装置1は、試料5と呼ばれる。
【0098】
(比較例3)
角度θ2が60度である基板153bに、正孔注入層105を形成した。この比較例では、正孔注入層105の形成に、蒸着法を活用した。なお、正孔注入層105の材料として、HI406(出光興産株式会社製)を採用した。
次に、この基板に、正孔輸送層107、発光層109、中間層111、発光層113、発光層117、及び電子注入層103のそれぞれを、順次に蒸着法で形成した。
【0099】
次に、この基板に補助電極75及び共通電極33を順次に形成することによって、素子基板11を形成した。
次に、この素子基板11と封止基板13とを、接着剤16及びシール材17を介して接合することによって、表示装置1を組み立てた。以下において、この比較例における表示装置1は、試料6と呼ばれる。
【0100】
実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3のそれぞれにおいて、角度θの測定結果と不良の発生結果とを下記表1に示す。
なお、所定の発光輝度が得られなかった画素5を暗点としたときの暗点の発生個数を、不良の発生結果として採用した。この結果は、暗点の発生個数が多いほど、不良の発生が多いことを示している。
【0101】
【表1】

実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例3の結果から、角度θの値が50度以下であると、不良の発生を低く抑えやすくすることができることがわかる。
なお、比較例1の試料4においては、角度θを特定することができなかった。これは、試料4において、正孔注入層105が、図14に示すように、交線128に平面的に重なる領域に、表示面3側に向かって凸となる凸部181を有しているためである。試料4では、正孔注入層105において、図7に示す湾曲面123が形成されなかったため、角度θを特定することができなかった。
これに対し、試料1〜試料3では、正孔注入層105に湾曲面123が形成された。
【0102】
上記の表1に示される結果から、角度θの値が30度以下であると、不良の発生を一層低く抑えやすくすることができることがわかる。
さらに、角度θの値が20度以下であると、不良の発生を極めて低く抑えやすくすることができることがわかる。
上記の結果から、有機層101を構成する各層のうちの少なくとも1つを塗布法で形成することは好ましい。
また、有機層101を構成する各層のうちの少なくとも1つを塗布法で形成する場合に、塗布法で形成する層の減圧乾燥では、互いに異なる2種類のポンプを減圧に併用することが好ましい。特に、この場合、減圧乾燥における減圧では、2種類のポンプのうちの1つだけを用いる第1減圧工程と、第1減圧工程の後に2種類のポンプの双方を併用する第2減圧工程とによって減圧することが好ましい。
【0103】
上述した乾燥条件1では、ドライポンプを用いて、105Paから約50Paまでの減圧を約0.8分間で行うことが第1減圧工程に相当する。また、乾燥条件1において、約50Paまで減圧したときにドライポンプでの排気とターボ分子ポンプでの排気とを併用して、約0.1Paまでの減圧を約1.5分間で行うことが第2減圧工程に相当する。
乾燥条件2において、ドライポンプを用いて、105Paから約103Paまでの減圧を約1分間で行うことが第1減圧工程に相当する。また、乾燥条件2において、約103Paまで減圧したときにドライポンプでの排気とターボ分子ポンプでの排気とを併用して、約0.1Paまでの減圧を約0.3分間で行うことが第2減圧工程に相当する。
【0104】
なお、本実施形態では、複数の画素5が設定され、画素5ごとに有機EL素子27を有する表示装置1を例に説明したが、実施の形態はこれに限定されない。実施の形態としては、有機EL素子27を表示領域7にわたって一連した状態で設けた照明装置などの形態もある。このような照明装置では、機能層31からの光は、表示領域7にわたって面状に射出され得る。このため、このような照明装置は、例えば液晶表示装置などの光源に好適である。
【0105】
また、本実施形態では、機能層31からの光を封止基板13を介して表示面3から射出するトップエミッション型の有機EL装置を例に説明したが、有機EL装置はこれに限定されない。有機EL装置は、機能層31からの光を素子基板11を介して底面15から射出するボトムエミッション型も採用され得る。
ボトムエミッション型の場合、機能層31からの光が底面15から射出されるので、底面15側に表示面3が設定される。つまり、ボトムエミッション型では、表示装置1の底面15と表示面3とが入れ替わる。そして、ボトムエミッション型では、底面15側が上側に対応し、表示面3側が下側に対応する。
【0106】
また、ボトムエミッション型の場合には、画素電極29の材料として、ITOやインジウム亜鉛酸化物などが採用され得る。また、電子注入層103の材料として、カルシウムなどが採用され得る。共通電極33の材料として、アルミニウムなどが採用され得る。
【0107】
上述した表示装置1は、例えば、図15に示す電子機器500の表示部510に適用され得る。この電子機器500は、携帯電話機である。この電子機器500は、操作ボタン511を有している。表示部510は、操作ボタン511で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について表示を行うことができる。この電子機器500では、表示部510に表示装置1が適用されている。表示装置1では、共通電極33が、湾曲部129(図6)で途切れてしまうことを低く抑えることができる。このため、電子機器500では、表示部510において、共通電極33が途切れてしまうことを低く抑えることができるので、表示部510における表示品位を向上させやすくすることができる。
【0108】
なお、電子機器500としては、携帯電話機に限られず、モバイルコンピューター、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カーナビゲーションシステム用の表示機器などの車載機器、オーディオ機器等の種々の電子機器が挙げられる。
【符号の説明】
【0109】
1…表示装置、3…表示面、5…画素、7…表示領域、11…素子基板、13…封止基板、15…底面、27…有機EL素子、29…画素電極、31…機能層、33…共通電極、41…第1基板、71…隔壁、73…発光領域、81…第2基板、87…カラーフィルター、101…有機層、103…電子注入層、105…正孔注入層、105a…液状体、105b…液滴、107…正孔輸送層、109…発光層、111…中間層、113…発光層、117…発光層、121…底面、123…湾曲面、125…電極面、127…壁面、128…交線、129…湾曲部、131…面、133…線、135…法線、137…第1点、139…第2点、141…第3点、143…第4点、153…基板、500…電子機器、510…表示部、511…操作ボタン、θ…角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面を有する第1電極と、
前記第1電極の前記平面側において、前記第1電極の前記平面に対向する第2電極と、
前記第1電極の前記平面よりも前記第2電極側に突出し、且つ、前記平面の少なくとも一部の領域を囲む壁面を有する隔壁と、
前記壁面によって囲まれた領域内において、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、
を有し、
前記有機層は、発光層を含む複数の層を含んでおり、
前記第2電極は、前記壁面によって囲まれた前記領域内から、少なくとも前記壁面にかけて設けられており、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの層は、前記第2電極側の表面において、
平面視で前記平面に重なる底面と、
前記壁面と前記第1電極との交線に対面し、前記交線側に向かって凹となる方向に湾曲した湾曲面と、
を含んでおり、
前記第1電極、前記第2電極、前記隔壁及び前記有機層を、前記平面の法線方向に沿って切断したときの断面において、
前記平面に平行な面を前記法線方向に前記底面まで平行移動させ、
前記面と前記湾曲面との交点を第1点とし、
前記面と前記壁面との交点を第2点とし、
前記第1点と前記第2点との間の中点を第3点とし、
前記第3点を通る前記法線と前記湾曲面との交点を第4点としたときに、
前記第1点と前記第4点とを結んだ線と前記面とがなす角度が、50度以下である、ことを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
第1電極と、
前記第1電極に対向する第2電極と、
前記第1電極よりも前記第2電極側に突出し、且つ、前記第1電極の少なくとも一部の領域を囲む壁面を有する隔壁と、
発光層を含む複数の層を含み、前記壁面によって囲まれた領域内において、前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層と、
を有する有機EL装置の製造方法であって、
前記壁面によって囲まれた前記領域内に、前記有機層を、前記複数の層の前記層ごとに形成する有機層形成工程と、
前記有機層形成工程の後に、前記第2電極を形成する工程と、を含み、
前記有機層形成工程は、
前記複数の層のうちの一部の前記層を、蒸着法で形成する蒸着層形成工程と、
前記複数の層のうちの他の前記層を、塗布法で形成する塗布層形成工程と、を含み、
前記塗布層形成工程は、
前記壁面によって囲まれた領域内に、有機材料を含有する液状体を配置する配置工程と、
前記液状体に含まれる液体の少なくとも一部を除去することにより、前記有機材料で前記層を形成する層形成工程と、
を含み、
前記層形成工程では、前記層形成工程で形成する前記層の前記第1電極側とは反対側の表面において、前記壁面と前記第1電極との交線に対面し、且つ前記交線側に向かって凹となる方向に湾曲する湾曲面を形成する、
ことを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項3】
前記層形成工程は、前記液体の少なくとも一部を乾燥させることによって、前記液体の少なくとも一部を除去する乾燥工程を含んでいる、
ことを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程は、大気圧よりも低い圧力に減圧された減圧環境下で、前記液体の少なくとも一部を乾燥させる減圧乾燥工程を含んでいる、
ことを特徴とする請求項3に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項5】
前記層形成工程では、前記減圧乾燥工程において前記湾曲面を形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項6】
前記減圧乾燥工程は、
第1のポンプを用いて、前記圧力を大気圧よりも低い第1の圧力に減圧する第1減圧工程と、
前記第1減圧工程に続いて、前記第1のポンプと第2のポンプとを併用して、前記第1の圧力を、前記第1の圧力よりも低い第2の圧力に減圧する第2減圧工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする請求項5に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機層形成工程では、前記塗布層形成工程の後に前記蒸着層形成工程を実施する、ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の有機EL装置を有する、ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−232269(P2010−232269A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75912(P2009−75912)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】