説明

有機EL装置および電子機器

【課題】複数の発光素子の発光層の厚さのバラツキを低減することが可能な有機EL装置を提供する。
【課題手段】有機EL装置10は、複数の発光素子20と、複数の発光素子20を囲む共通バンク32と、共通バンク32の内側における多数の発光素子20が配置された素子領域の両端に形成されて両端にある複数の発光素子を囲む端部バンクとしての第2の共通バンク34を備える。発光素子20の発光層24を例えばインクジェット法のような液体供給方法で形成する場合、共通バンク32の内側において、溶液が乾燥するとき、溶液自体および溶液中の溶質は収縮しながら共通バンク32の中央に集まろうとする。しかし、素子領域の端部では、第2の共通バンク34があるので、これに囲まれた発光素子20における溶液自体の移動および溶液中の溶質つまり固形分の移動が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting diode)、つまり有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機EL素子は、画像表示装置および照明装置として使用されるほか、電子写真方式を利用した画像印刷装置に静電潜像を書き込む露光ヘッドとしても使用されうる。有機薄膜の形成方法の一つであるインクジェット法では、有機薄膜の材料(例えば機能性高分子)と溶媒とを含む溶液、すなわちインクを基板上に滴下し、これを乾燥させる。
【0003】
多数の有機EL素子を備える有機EL装置において、これらの有機EL素子の有機薄膜の膜厚にムラが生じると、輝度ムラを招くため、これらの有機EL素子の有機薄膜は同じ膜厚であることが好ましい。そこで、特許文献1に記載の技術では、多数の有機EL素子が設けられた素子領域の周囲に共通バンクを設け、共通バンク内に溶液を供給することによって、これらの有機EL素子について同一の溶液の状態を実現し、溶液の乾燥バラツキを低減させて発光材料の膜厚均一性ひいては発光輝度の均一性を確保しようとしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007-141472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、共通バンクの内部において、溶液が乾燥するに連れて収縮しながら共通バンクの中央に集まってゆき、この結果、発光素子群の両端での有機薄膜の厚さが、発光素子群の中央での有機薄膜の厚さよりも小さくなる。また、溶液が乾燥するに連れて、溶液中の溶質つまり固形分も共通バンクの中央に集まってゆき、この結果、やはり発光素子群の両端での有機薄膜の厚さが、発光素子群の中央での有機薄膜の厚さよりも小さくなる。
【0006】
そこで、本発明は、複数の発光素子の発光層の厚さのバラツキを低減することが可能な有機EL装置および電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る有機EL装置は、各々が陽極と陰極とこれらの間に配置された発光層を有する複数の発光素子と、前記複数の発光素子を囲む共通バンクと、前記共通バンクの内側における前記複数の発光素子が配置された素子領域の端部に形成されて前記発光素子の少なくとも一つを囲む端部バンクとを備えることを特徴とする。
【0008】
共通バンクの内側において、溶液が乾燥するとき、溶液には収縮しながら共通バンクの中央に集まろうとする力が発生し、溶液中の溶質つまり固形分も共通バンクの中央に集まろうとする。しかし、本発明では、共通バンクの内側における素子領域の端部に発光素子の少なくとも一つを囲む端部バンクを設けることによって、端部バンクで囲まれた発光素子における溶液自体の移動および溶液中の溶質つまり固形分の移動を端部バンクが抑制する。より正確には、端部バンク内では、端部バンクの外にある溶液と独立して、溶液が乾燥する。従って、複数の発光素子の発光層の厚さのバラツキを低減することが可能である。
【0009】
前記端部バンクとして、前記素子領域の端部にある複数の前記発光素子を囲む第2の共通バンクを備えてもよい。
【0010】
前記端部バンクとして、前記素子領域の端部にある複数の前記発光素子をそれぞれ囲む複数の個別バンクを備えてもよい。
【0011】
本発明に係る電子機器は、前記の有機EL装置を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異なる。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る有機EL装置10を示す平面図であり、図2は図1のII−II線に沿って見た断面図であり、図3は図1のIII−III線に沿って見た断面図である。
【0013】
図2および図3に示すように、この有機EL装置10は、基板12と、基板12上に配置された例えば酸化珪素または窒化珪素から形成された絶縁体の層14とを備える。絶縁体の層14内には、複数の発光素子(有機EL素子)20にそれぞれ給電するための複数のTFT(薄膜トランジスタ)16および図示しない配線が埋設されている。
【0014】
絶縁体の層14の上には、複数の発光素子20が配置されている。各発光素子20は、陽極と陰極とこれらの間に配置された発光層(有機薄膜)を有する。より具体的には、各発光素子20は、個別の画素電極22を備える。また複数の発光素子20の画素電極22を共通に覆うように発光層24が設けられている。さらに、発光層24の画素電極22とは反対側には、複数の画素電極22と共通に重なる領域に、共通電極としての対向電極26が設けられている。図1において、仮想線は対向電極26が少なくとも配置されるべき領域を示すが、対向電極26はこれよりも広く配置されていてもよい。この実施の形態では、画素電極22が陽極、対向電極26が陰極であるが、画素電極22が陰極、対向電極26が陽極であってもよい。この実施の形態では、画素電極22と対向電極26の間に発光層24だけが挟まれているが、発光層24での発光特性を向上させる他の層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層などが画素電極22と対向電極26の間に配置されていてもよい。
【0015】
この有機EL装置は、ボトムエミッションタイプでもトップエミッションタイプでもデュアルエミッションタイプでもよい。基板12、画素電極22、対向電極26の材料は、エミッションタイプに応じて適宜選択される。
【0016】
絶縁体の層14には複数の貫通孔18が形成されている。貫通孔18の内部には導電体が配置され、この導電体により、TFT16と画素電極22が電気的に接続されている。
【0017】
発光素子20を相互に区分するために、親液性バンク層30が絶縁体の層14の上に形成されている。親液性バンク層30は、発光層24の材料となる液体に対する親液性が高い材料、例えば酸化珪素または窒化珪素などの無機絶縁体で形成され、一様な厚さを有する。親液性バンク層30には複数の画素開口31が形成されている。画素開口31の各々には画素電極22が重なっているとともに、画素開口31の各々の内部には発光層24が配置されている。そして、発光層24は、画素開口31以外の部分、つまり親液性バンク層30の図中の上面にも広がっている。
【0018】
図1に示すように、発光素子20は千鳥状に二列に配列されているが、発光素子20の配列バターンは図示の形態に限定されない。これらの複数の発光素子20を囲むように、共通バンク32が親液性バンク層30上に形成されている。共通バンク32は、発光層24の材料となる液体の範囲を規制する。つまり発光層24を例えばインクジェット法のような液体供給方法で形成するとき、その材料液体は共通バンク32の内側に供給され、共通バンク32よりも外側にはあふれない。
【0019】
さらに、共通バンク32の内側における多数の発光素子20が配置された素子領域の両端には、両端にある複数の発光素子20の画素開口31を囲む第2の共通バンク(端部バンク)34が親液性バンク層30上に形成されている。発光素子20の発光層24を例えばインクジェット法のような液体供給方法で形成するとき、第2の共通バンク34自体の内側にも液体が供給される。従って、第2の共通バンク34で囲まれた発光素子20については、共通バンク32の中央への溶液の移動を第2の共通バンク34が抑制し、共通バンク32の中央への溶液中の溶質つまり固形分の移動も第2の共通バンク34が抑制する。
【0020】
共通バンク32および第2の共通バンク34は、発光層24の材料となる液体に対する親液性が低い材料、例えばアクリル、エポキシまたはポリイミドなどの絶縁性の樹脂材料で形成されている。図2および図3では、共通バンク32および第2の共通バンク34は同じ高さであるが、これらの高さが異なっていてもよい。
【0021】
第2の共通バンク34は、共通バンク32の内面の長手方向の端部からLe(約20mm)までの発光素子20の画素開口31を囲むと好ましい。つまり、共通バンク32の内面の図1の右側の端部からその端部に近い第2の共通バンク34の左側の端部までの距離Leは約20mmであり、共通バンク32の内面の図1の左側の端部からその端部に近い第2の共通バンク34の右側の端部までの距離Leは約20mmである。なお、Leは、共通バンク32の長手方向の内面間距離Lの約7.5%である。
【0022】
次に、この有機EL装置を製造する方法を説明する。まず、図4および図5に示す中間製品を製造する。図4は、図2と同様に図1のII−II線に沿って見た断面図であり、図5は図3と同様に図1のIII−III線に沿って見た断面図である。具体的には、公知の手法によって、基板12上に図示しない配線、TFT16および絶縁体の層14を形成し、層14上に画素電極22をパターニングする。次に、例えば、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート、CVD、またはスパッタ等の公知の手法によって、親液性バンク層30を一様な厚さで形成し、フォトリソグラフィ法などにより、開口31を形成して、画素電極22の中央部を露出させる。エッチングはドライエッチングとウェットエッチングのどちらでもよい。
【0023】
さらに例えばフォトリソグラフィ法または凹版、平版、凸版等の印刷法で、共通バンク32および第2の共通バンク34を形成する。
さらに例えばスピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等の公知の手法によって共通バンク32および第2の共通バンク34を一様な厚さで形成し、フォトリソグラフィ法などにより、そのパターニングを行う。この際に、画素電極22の中央部を露出させる。
【0024】
このようにして図4および図5に示す中間製品が完成する。
【0025】
この後、酸素プラズマによる親液化処理とCFプラズマによる撥液化処理を行なってもよい。親液化処理により、発光層24の材料となる液体に対する親液性バンク層30の親液性を向上させることができる。また、撥液化処理により、発光層24の材料となる液体に対する共通バンク32および第2の共通バンク34の撥液性を向上させることができる。このようにすれば、共通バンク32および第2の共通バンク34の材料が元々撥液性を有していない材料の場合でも、上記のプラズマ処理により、親液性バンク層30の親液性を維持したまま、共通バンク32および第2の共通バンク34に撥液性を付与することができる。
【0026】
次に、図6および図7に示すように、共通バンク32および第2の共通バンク34の内部に発光層24の材料となる液体24aを供給する。図6は、図2と同様に図1のII−II線に沿って見た断面図であり、図7は図3と同様に図1のIII−III線に沿って見た断面図である。液体24aは、例えば、水または有機溶媒を溶媒とするインクである。溶媒中には、発光層24の材料である共役系高分子または低分子材料が溶質として分散している。液体24aの供給方法としては、例えばインクジェット法、ジェットディスペンサ法、またはディスペンサ法を利用できる。
【0027】
次に、共通バンク32および第2の共通バンク34の内部に供給された液体24aを真空下で乾燥させ、図8および図9に示すように、発光層24を形成する。図8は、図2と同様に図1のII−II線に沿って見た断面図であり、図9は図3と同様に図1のIII−III線に沿って見た断面図である。さらに、乾燥の程度を高めるために、基板12をアニールしてもよい。この乾燥工程では、液体24a中の溶媒(水または有機溶媒)が揮発する。
【0028】
この後、公知の手法で、図2および図3に示す対向電極26を形成する。図示しないが、好ましくは、この後、封止工程で図1の構造に封止膜または封止キャップが設けられる。
【0029】
共通バンク32の内側において、液体24aが乾燥するとき、液体24aには収縮しながら共通バンク32の中央に集まろうとする力が発生し、液体24a中の溶質つまり固形分も共通バンク32の中央に集まろうとする。しかし、この実施の形態では、共通バンク32の内側における素子領域の端部に第2の共通バンク34を設けることによって、第2の共通バンク34で囲まれた発光素子20における液体24a自体の移動および液体24a中の溶質つまり固形分の移動を第2の共通バンク34が抑制する。より正確には、第2の共通バンク34内では、第2の共通バンク34の外にある液体24aと独立して、液体24aが乾燥する。従って、複数の発光素子20の発光層24の厚さのバラツキを低減することが可能である。
【0030】
<第2の実施の形態>
図10は、本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置40を示す平面図である。図10において第1の実施の形態と共通する構成要素を示すには同一の符号を使用し、それらを詳細には説明しない。
【0031】
第1の実施の形態に係る有機EL装置10では、共通バンク32の内面の長手方向の端部からLe(約20mm)までの範囲にあるすべての発光素子20の画素開口31を第2の共通バンク34が囲む。しかし、本発明は第1の実施の形態に限定されない。第2の実施の形態では、図10に示すように、共通バンク32の内側の素子領域の両端において一部の発光素子20(一つの発光素子20でもよいし複数の発光素子20でもよい)は第2の共通バンク34で囲まれていない。
【0032】
この実施の形態でも、少なくとも第2の共通バンク34で囲まれた発光素子20における液体24a自体の移動および液体24a中の溶質つまり固形分の移動を第2の共通バンク34が抑制する。より正確には、第2の共通バンク34内では、第2の共通バンク34の外にある液体24aと独立して、液体24aが乾燥する。従って、複数の発光素子20の発光層24の厚さのバラツキを低減することが可能である。
【0033】
また、第2の共通バンク34の外壁が、共通バンク32の内部かつ第2の共通バンク34の外部の液体24aの移動およびそこの液体24a中の溶質の移動を抑制することもありうる。このような場合には、素子領域の両端における第2の共通バンク34で囲まれていない発光素子20についても、他の発光素子20と同様な厚さを持つことが期待される。
【0034】
<第3の実施の形態>
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る有機EL装置50を示す平面図である。図11において第1の実施の形態と共通する構成要素を示すには同一の符号を使用し、それらを詳細には説明しない。
【0035】
第3の実施の形態では、共通バンク32の内部の素子領域の端部にある複数の発光素子20の画素開口31をそれぞれ囲む複数の個別バンク(端部バンク)54が設けられている。共通バンク32と同様に、個別バンク54は、発光層24の材料となる液体に対する親液性が低い材料、例えばアクリル、エポキシまたはポリイミドなどの絶縁性の樹脂材料で形成されている。
【0036】
断面図は省略するが、個別バンク54は、第1の実施の形態の第2の共通バンク34と同様に、親液性バンク層30上に形成されている。個別バンク54は、共通バンク32と同じ高さでもよいし異なる高さでもよい。
【0037】
共通バンク32の内面の長手方向の端部からLe(約20mm)までの範囲にあるすべての発光素子20の画素開口31をそれぞれ個別バンク54が囲んでもよい。但し、図11に示すように、共通バンク32の内側の素子領域の両端において一部の発光素子20(一つの発光素子20でもよいし複数の発光素子20でもよい)は個別バンク54で囲まなくてもよい。
【0038】
この実施の形態では、少なくとも個別バンク54で囲まれた発光素子20における液体24a自体の移動および液体24a中の溶質つまり固形分の移動を個別バンク54が抑制する。より正確には、個別バンク54の各々内では、個別バンク54の外にある液体24aと独立して、液体24aが乾燥する。従って、複数の発光素子20の発光層24の厚さのバラツキを低減することが可能である。
【0039】
また、個別バンク54の外壁が、共通バンク32の内部かつ個別バンク54の外部の液体24aの移動およびそこの液体24a中の溶質の移動を抑制することもありうる。このような場合には、素子領域の両端における個別バンク54で囲まれていない発光素子20についても、他の発光素子20と同様な厚さを持つことが期待される。
【0040】
他の変形として、共通バンク32の内側における素子領域の端部にある一つの発光素子20の画素開口31だけを個別バンクで囲むようにしてもよい。
【0041】
<画像印刷装置>
図12は、本発明の実施の形態に係る電子機器である画像印刷装置の縦断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像印刷装置である。
【0042】
この画像印刷装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,110C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C,10M,10Yは、上述したいずれかの有機EL装置である。
【0043】
図12に示すように、この画像印刷装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回されて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0044】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用されることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,110C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0045】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,M,Y)と、有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。各有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数の発光素子14の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する。
【0046】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム110(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0047】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によって、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カセット上へ排出される。
【0048】
図13は、本発明の実施の形態に係る電子機器である他の画像印刷装置の縦断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像印刷装置である。図13に示す画像印刷装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ露光ヘッド167、中間転写ベルト169が設けられている。
【0049】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き込む。有機ELアレイ露光ヘッド167は、上述したいずれかの有機EL装置であり、複数の発光素子14の配列方向が感光体ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数の発光素子14により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0050】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0051】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベルト169に顕像を転写する。
【0052】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によりシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中間転写ベルト169上で得る。
【0053】
画像印刷装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出され、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接した中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ローラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引することにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッチにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171から離される。
【0054】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向きに進行する。両面印刷の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面印刷用搬送路175に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される。
【0055】
以上、上述したいずれかの有機EL装置を応用可能な画像印刷装置を例示したが、他の電子写真方式の画像印刷装置にも応用することが可能であり、そのような画像印刷装置は本発明の範囲内にある。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに顕像を転写するタイプの画像印刷装置や、モノクロの画像を形成する画像印刷装置にも応用することが可能である。
【0056】
本発明に係る電子機器としては、コンピュータ、携帯電話機、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの機器で、本発明に係る有機EL装置は表示装置として使用される。さらに、本発明に係る有機EL装置は、各種の照明装置としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿って見た断面図である。
【図4】図1の有機EL装置の中間製品を図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【図5】図1の有機EL装置の中間製品を図1のIII−III線に沿って見た断面図である。
【図6】図4および図5の中間製品から第1の実施の形態の有機EL装置を製造する方法の一工程を示す、図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【図7】図4および図5の中間製品から第1の実施の形態の有機EL装置を製造する方法の一工程を示す、図1のIII−III線に沿って見た断面図である。
【図8】図6の次の工程を示す、図1のII−II線に沿って見た断面図である。
【図9】図7の次の工程を示す、図1のIII−III線に沿って見た断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る有機EL装置を示す平面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る有機EL装置を備える電子機器の一例を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る有機EL装置を備える電子機器の他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10,40,50 有機EL装置、12 基板、20 発光素子(有機EL素子)、22 画素電極、24 発光層、26 対向電極、30 親液性バンク層、31 画素開口、32 共通バンク、34 第2の共通バンク(端部バンク)、54 個別バンク(端部バンク)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が陽極と陰極とこれらの間に配置された発光層を有する複数の発光素子と、
前記複数の発光素子を囲む共通バンクと、
前記共通バンクの内側における前記複数の発光素子が配置された素子領域の端部に形成されて前記発光素子の少なくとも一つを囲む端部バンクとを備えることを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
前記端部バンクとして、前記素子領域の端部にある複数の前記発光素子を囲む第2の共通バンクを備えることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置
【請求項3】
前記端部バンクとして、前記素子領域の端部にある複数の前記発光素子をそれぞれ囲む複数の個別バンクを備えることを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置
【請求項4】
請求項1に記載の有機EL装置を備える電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−70762(P2009−70762A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240529(P2007−240529)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】