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有機EL装置
説明

有機EL装置

【課題】高いガスバリア性を備え、フィルムを屈曲させたときにもガスバリア性が低下しにくく、簡易な工程で短時間で形成することが可能なフィルムを備える有機EL装置を提供する。
【解決手段】有機EL素子と、第1のフィルムと、有機EL素子から放射される光が出射する位置に配置される光取出し構造体とを有する有機EL装置であって、前記第1のフィルムは、珪素、酸素及び炭素を含有するガスバリア層を有しており、前記ガスバリア層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)、酸素原子の量の比率(酸素の原子比)及び炭素原子の量の比率(炭素の原子比)と、膜厚方向における前記ガスバリア層の一方の表面からの距離との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が条件(i)〜(iii)を満たす、有機EL装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL装置、照明装置、面状光源、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子は複数の薄膜が積層されて構成されており、各薄膜の厚さや材料などを適宜設定することによって、素子自体に可撓性を付与することができる。このような有機EL素子をフレキシブルなフィルム上に設けた場合、有機EL素子が搭載された装置全体をフレキシブルな装置とすることもできる。
【0003】
有機EL素子は外気に曝されることによって劣化するため、通常は、酸素や水分などを透過しにくい、ガスバリア性の高いフィルム上に設けられる。このようなガスバリア性の高いフィルムとして、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素および酸化アルミニウムなどの無機酸化物からなる薄膜をプラスチック基材上に成膜したものが提案されている。
【0004】
無機酸化物からなる薄膜をプラスチック基材上に成膜する方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)、減圧化学気相成長法、プラズマ化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD)が知られている。このような成膜方法を用いたガスバリア性の高いフィルムとして、たとえば特開平4−89236号公報(特許文献1)には、ケイ素酸化物の蒸着膜を2層以上積層した積層蒸着膜層が設けられたフィルムが開示されている。
【0005】
しかしながら特許文献1に記載のフィルムはガスバリア性が不十分である上に、フィルムを屈曲させることによって、ガスバリア性が低下するという問題があった。
【0006】
そこでガスバリア性を高めるとともに、屈曲させたときのガスバリア性の低化を抑制することが可能なバリアフィルムとして、たとえばセラミック系の無機バリア膜とポリマー膜とを交互に積層したガスバリア性の高いフィルムが特表2002−532850号(特許文献2)に開示されている。しかしながら特許文献2記載のフィルムは無機バリア膜とポリマー膜とを交互に積層するものであり、製造工程が複雑で製造時間が長いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−89236号公報
【特許文献2】特表2002−532850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように有機EL装置は高いガスバリア性等を備える必要があるが、それに加えて、光取出し効率の高いものが求められている。
【0009】
したがって本発明の目的は、高いガスバリア性を備え、フィルムを屈曲させたときにもガスバリア性が低下しにくく、簡易な工程で短時間で形成することが可能なフィルムを備える有機EL装置を提供することである。
【0010】
また本発明の目的は光取出し効率の高い有機EL装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、有機EL素子と、
第1のフィルムと、
有機EL素子から放射される光が出射する位置に配置される光取出し構造体とを有する有機EL装置であって、
前記第1のフィルムは、珪素、酸素及び炭素を含有するガスバリア層を有しており、
前記ガスバリア層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)、酸素原子の量の比率(酸素の原子比)及び炭素原子の量の比率(炭素の原子比)と、膜厚方向における前記ガスバリア層の一方の表面からの距離との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が下記条件(i)〜(iii)を満たす、有機EL装置に関する。
(i)ガスバリア層の膜厚方向の90%以上の領域において、珪素、酸素および炭素の原子比のうちで、珪素の原子比が2番目の値であること
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること
また本発明は前記光取出し構造体は、当該該構造体に入射し、光取り出し側の表面から出射する光の強度を、光取り出し側の表面が平面状の仮想構造体の光の取り出し側の表面から出射する光の強度と比較したときに、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となる凹凸構造である、前記有機EL装置に関する。
【0012】
また本発明は前記有機EL装置を有する照明装置に関する。
【0013】
また本発明は前記有機EL装置を有する面光源装置に関する。
【0014】
また本発明は前記有機EL装置を有する表示装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の有機EL装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の有機EL装置を示す図である。
【図3】本発明の有機EL装置を製造するための装置の概念図である。
【図4】第1のフィルムを製造する装置の一実施形態を示す模式図である。
【図5】I(θ°)を説明するための図である。
【図6】仮想構造体110を模式的に示す図である。
【図7】I(θ°)を説明するための図である。
【図8】参考例A1で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図9】参考例A1で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【図10】参考例A2で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【図11】参考例A2で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【図12】参考例A3で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図13】参考例A3で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【図14】参考比較例A1で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線を示すグラフである。
【図15】参考比較例A1で得られた第1のフィルムにおける珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を示すグラフである。
【図16】UTE12の断面の顕微鏡写真。
【図17】UTE12の表面の顕微鏡写真。
【図18】I(θ°)の測定方法について示す図である。
【図19】UTE21の表面の顕微鏡写真。
【図20】WF80の表面の顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の有機EL装置は、有機EL素子と、第1のフィルムと、有機EL素子から放射される光が出射する位置に配置される光取出し構造体とを有する。
【0017】
有機EL装置は通常支持基材に設けられる。また有機EL装置は、有機EL素子を介在させて、支持基材と貼合される封止部材をさらに備えることがある。本発明の第1のフィルムは、有機EL素子が設けられる支持基材として用いられても、支持基材と貼合される封止部材として用いられてもよい。以下では、支持基材としてさらに第2のフィルムを備える有機EL素子であって、かつ第1のフィルムが封止部材として設けられる形態について説明する。
【0018】
有機EL装置に搭載される有機EL素子は、つぎの3つの型の素子に大別することができる。すなわち(I)当該有機EL素子が搭載される支持基材に向けて光を出射するいわボトムエミッション型の素子、(II)支持基材とは反対側に向けて光を出射するいわゆるトップエミッション型の素子、(III)支持基材に向けて光を出射するとともに、支持基材とは反対側に向けて光を出射する両面発光型の素子とに大別することができる。本発明はいずれの型の素子にも適用することが可能である。以下では一例としてまず図1を参照してトップエミッション型の素子が設けられた有機EL装置について説明し、つぎに図2を参照してボトムエミッション型の素子が設けられた有機EL装置について説明する。
【0019】
図1は本実施形態の有機EL装置を模式的に示す断面図である。図1に示す実施形態の有機EL装置13は、第2のフィルム1上に有機EL素子2が搭載されている。第1のフィルム11は、この有機EL素子2を介在させて第2のフィルム1上に配置されており、前記第2のフィルム1とともに前記有機EL素子2を封止する。第2のフィルム1と第1のフィルム11とは、接着層4を介して貼り合わされている。また有機EL素子2は必要に応じて保護層3によって覆われる。この保護層3を設けることによって、接着層4から有機EL素子2を保護することができる。
【0020】
有機EL装置はさらに光取出し構造体14を備える。この光取出し構造体14は、有機EL素子2から放射される光が出射する位置に配置される。図1に示す本実施形態の有機EL素子2はトップエミッション型の素子であり、光を第1のフィルム11に向けて放射するため、光が出射する位置とは、有機EL素子2を基準にして第1のフィルム11側の最表面に相当する。したがって図1に示す実施形態では光取出し構造体14は有機EL素子2を基準にして第1のフィルム11側の最外層に設けられる。
【0021】
光取出し構造体14は第1のフィルム11に直接形成されていてもよいが、本実施形態では光取出し構造体14は接着層15によって貼り合わされている。
【0022】
光取出し構造体14の詳細については後述するが、このような光取出し構造体14を、光が出射する位置に配置に配置することによって、光取出し効率が向上し、その結果として有機EL装置全体の発光効率が向上する。
【0023】
本実施形態の有機EL素子2はトップエミッション型の素子であるため、第1のフィルム11、および光取出し構造体14は光を透過する部材によって構成する必要がある。他方、本実施形態において支持基板に相当する第2のフィルム1は光を透過しない不透明な部材によって構成してもよい。
【0024】
第2のフィルム1にはプラスチックフィルムや金属フィルムを使用することができ、金属フィルムを用いることが好ましい。金属フィルムはプラスチックフィルムなどに比べるとガスバリア性が高いため、有機EL装置のガスバリア性を高めることができる。金属フィルムの材料としては、たとえばAl、Cu、Feなどからなる薄板やステンレス鋼などの合金からなる薄板を用いることができる。
【0025】
第1のフィルム11は、珪素、酸素及び炭素を含有するガスバリア層5を有する。本実施形態では第1のフィルム11は、基材6と、この基材6上に設けられるガスバリア層5から構成される。ガスバリア層5は、後述するが、後述の条件(i)〜(iii)を満たすことによって、高いガスバリア性を備え、さらに屈曲したさいのガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0026】
このような第1のフィルムと第2のフィルムとによって有機EL素子2を封止することにより、フレキシブルで、十分な耐久性とガスバリア性を兼ね備えた有機EL装置を実現することができる。とくに第2のフィルムに金属フィルムを用いた場合には、第2のフィルムと第1のフィルム11の両方が高いガスバリア性を示すので、より高い耐久性とガスバリア性を兼ね備えた有機EL装置を実現することができる。
【0027】
図2は本発明の他の実施形態の有機EL装置13を模式的に示す断面図である。図2に示す実施形態の有機EL装置13は、図1に示す実施形態とは有機EL素子2と、第2のフィルム1とが異なり、さらに光取出し構造体14の配置される位置が異なる。
【0028】
本実施形態ではボトムエミッション型の有機EL素子2が設けられる。前述の実施形態と同様に光取出し構造体14は、有機EL素子2から放射される光が出射する位置に配置される。図2に示す本実施形態の有機EL素子2はボトムエミッション型の素子であり、光を第2のフィルム1に向けて放射するため、光が出射する位置とは、有機EL素子2を基準にして第2のフィルム1側の最表面に相当する。したがって図2に示す実施形態では光取出し構造体14は、有機EL素子2を基準にして第2のフィルム1側の最外層に設けられ、具体的には接着層15を介して第2のフィルム1に貼合される。
【0029】
光取出し構造体14の詳細については後述するが、このような光取出し構造体14を、光が出射する位置に配置に配置することによって、光取出し効率が向上し、その結果として有機EL装置全体の発光効率が向上する。
【0030】
本実施形態の有機EL素子2は、支持基板に相当する第2のフィルム1に向けて光を出射するため、第2のフィルムは光透過性を示すフィルムである必要がある。
【0031】
本実施形態の第2のフィルム1は光透過性を示すフィルムであればとくに制限はないが、ガスバリア性の観点から、第1のフィルム11と同様に、珪素、酸素及び炭素を含有する第2のガスバリア層8を有することが好ましい。本実施形態では第2のフィルム1は、基材7と、この基材7上に設けられる第2のガスバリア層8から構成される。この第2のガスバリア層8は、後述するが、第2のフィルム1のガスバリア層5と同様に、後述の条件(i)〜(iii)を満たすことによって、高いガスバリア性を備え、さらに屈曲したさいのガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0032】
このような第2のフィルムと第1のフィルムとによって有機EL素子2を封止することにより、フレキシブルで、十分な耐久性とガスバリア性を兼ね備えた有機EL装置を実現することができる。
【0033】
なお図2に示す実施形態の有機EL装置において、ボトムエミッション型の有機EL素子にかえて、両面発光型の有機EL素子を設けてもよい。この場合、光取出し構造体14がさらに設けられることがある。すなわち第1のフィルム11上にも光取出し構造体14が設けられることがある。
【0034】
さらに、第2のフィルムを封止部材として用い、ガスバリア層を有する第1のフィルムを支持基板として用い、この第1のフィルムと第2のフィルムとによって有機EL素子を封止した有機EL装置を構成してもよい。
【0035】
またたとえば図1および図2に示す実施形態において、第1のフィルムおよび/または第2のフィルムに付加的なフィルムをさらに貼合してもよい。付加的なフィルムとしては、有機EL装置の表面を保護する保護フィルム、有機EL装置に入射する外光の反射を防止する反射防止フィルム、光の位相や偏光を調整するための光学機能性フィルムや、これらを積層した光学フィルムなどが挙げられる。
【0036】
(接着層)
接着層4は、有機EL素子を介して第1のフィルムと第2のフィルムとを接着する層である。また光取出し構造体14が第1のフィルム11および/または第2のフィルム1に貼り合わされる形態では、接着層は、光取出し構造体14と第1のフィルム11および/または第2のフィルム1とを接着する接着層15としても用いられる。接着層に用いられる接着剤には、ガスバリア性の高いものを用いることが好ましい。また図1に示すような、有機EL素子2から放射される光が接着層4を通って外界に出射する構成の有機EL装置では、接着層4も光透過率が高いことが好ましい。この場合、光取出し効率の観点からは、接着層4に接する層と、接着層4との屈折率の差の絶対値は小さいほうが好ましい。
【0037】
接着層に利用可能な接着剤としては、熱硬化性接着剤または光硬化性接着剤などの硬化性接着剤が好適に用いられる。
【0038】
熱硬化性樹脂接着剤としては、エポキシ系接着剤、アクリレート系接着剤などをあげることができる。
【0039】
エポキシ系接着剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂接着剤、ビスフェノールF型エポキシ樹脂接着剤、およびフェノキシ樹脂接着剤などをあげることができる。
【0040】
アクリレート系接着剤としてはアクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分とし、該主成分に該主成分と共重合可能なモノマーを共重合したポリマーなどを挙げることができる。
【0041】
光硬化性接着剤としては、ラジカル系接着剤、カチオン系接着剤などを挙げることができる。
【0042】
ラジカル系接着剤としては、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、およびエステルアクリレートなどを挙げることができる。
【0043】
カチオン系接着剤としては、エポキシ系樹脂、ビニルエーテル系樹脂などを挙げることができる。
【0044】
(保護層)
保護層は、有機EL素子を覆うように設けられる。この保護層を設けることによって有機EL素子を接着層から保護することができる。
【0045】
有機EL素子を構成する電子注入層や陰極は通常、大気中で不安定な材料を主成分として含むため、有機EL素子を形成した後、第1のフィルムを貼合して、当該有機EL素子を封止するまでの間に、電子注入層や陰極が雰囲気中の水分や酸素などによって劣化するおそれがある。そのため保護層は、第1のフィルムによって有機EL素子が封止されるまでの間に、雰囲気中の水分や酸素などを遮断し、これらから有機EL素子を保護する機能を有することが好ましい。
【0046】
保護層に用いられる材料としては、大気中で安定な金属材料、バリア性の優れた無機絶縁性材料、有機絶縁性材料などがあげられる。金属材料としては、Al、Cu、Ag、Au、Pt、Ti、Cr、CoおよびNiなどが用いられる。無機絶縁材料としては、SiO、SiN、SiOxNy、SiOxCyなどが用いられる。有機絶縁材料としては、パリレンなどが用いられる。
【0047】
保護層は、金属材料を用いる場合、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって形成され、無機絶縁材料を用いる場合、スパッタリング法、CVD法、レーザーアブレーション法などによって形成され、有機絶縁材料を用いる場合、モノマーガスの真空蒸着と被コーティング表面での重合による製膜法によって形成される。
【0048】
(有機EL装置の製造方法)
以下、図3を参照して有機EL装置の製造方法について説明する。図3は有機EL装置を製造する装置を概略的に示す図である。図3に示す実施形態では、有機EL素子がその上に形成された第2のフィルムと、第1のフィルム11とを貼り合わせ、さらに、光取出し構造体14を第1のフィルム11に貼り合わせている。
【0049】
巻き出しロール500は、有機EL素子が予めそのうえに形成された第2のフィルムを送りだす。巻き出しロール510は第1のフィルム11を送り出す。巻き出しロール500から送りだされた第2のフィルム上には、第1接着層塗布装置610によって第1接着層が塗布形成される。その後、第1貼り合せロール511,512によって、第2のフィルムと第1のフィルム11とが第1接着層を介して貼り合わされ、さらに第1接着剤硬化装置611によって、第1接着層が固化させる。
【0050】
本実施形態では、第1のフィルム11上に、さらに第2接着層塗布装置610によって第2接着層が塗布形成されるとともに、巻き出しロール520からは光取出し構造体14が送り出される。そして第2貼り合わせロール521,522によって、第1のフィルム11と光取出し構造体14とが第2接着層を介して貼り合わされ、さらに第2接着剤効果装置621によって、第2接着層が固化され、有機EL装置が作製されることになる。その後、有機EL装置は巻取りロール530によって巻きとられる。
【0051】
なお3枚以上のフィルムを貼り合せる場合、貼り合せる順序は有機EL装置の積層順に応じて適宜変更される。
【0052】
(第1のフィルム)
つぎに第1のフィルム11について説明する。本発明の有機EL装置の特徴は第1のフィルムにあり、とくにその構成要素であるガスバリア層5にある。
【0053】
第1のフィルムは、珪素、酸素及び炭素を含有するガスバリア層を有する。このガスバリア層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)、酸素原子の量の比率(酸素の原子比)及び炭素原子の量の比率(炭素の原子比)と、前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の一方の表面からの距離との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が下記条件(i)〜(iii)を満たす。
(i)ガスバリア層の膜厚方向の90%以上の領域において、珪素、酸素および炭素の原子比のうちで、珪素の原子比が2番目の値であること
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること
なお(i)の条件は、換言すると、ガスバリア層の膜厚方向の90%以上の領域において、下記式(1)または下記式(2)を満たすことを意味する。
【0054】
(酸素の原子比)>(珪素の原子比)>(炭素の原子比)・・・(1)
(炭素の原子比)>(珪素の原子比)>(酸素の原子比)・・・(2)
<第1のフィルムの基材>
上述のガスバリア層は通常、基材上に形成される。すなわち第1のフィルムは、基材と、この基材上に形成されるガスバリア層を含んで構成される。第1のフィルムの基材としては、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも耐熱性が高く線膨張率が小さく製造コストが低いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、PET、PENがとくに好ましい。またこれらの樹脂は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
第1のフィルムの基材の厚みは、本発明の第1のフィルムを製造する際の安定性を考慮して適宜に設定することができる。前記第1のフィルムの基材の厚みとしては、真空中においてもフィルムの搬送が可能であるという観点から、5〜500μmの範囲であることが好ましく。さらに、プラズマCVD法によりガスバリア層を形成する場合には、前記第1のフィルムの基材を通して放電しつつ本発明にかかるガスバリア層を形成することから、前記第1のフィルムの基材の厚みが50〜200μmの範囲であることがより好ましく、50〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
【0056】
また前記第1のフィルムの基材には、後述するガスバリア層との密着性の観点から、第1のフィルムの基材の表面を清浄するための表面活性処理を施すことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、およびフレーム処理が挙げられる。
【0057】
<ガスバリア層>
【0058】
本発明にかかるガスバリア層は、前記基材の少なくとも片面に形成される層である。第1のフィルムは、珪素、酸素及び炭素を含有し、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層を少なくとも一層備えていればよい。たとえば第1のフィルムは上記条件(i)〜(iii)の少なくともいずれかを満たさない他の層を有していてもよく、前記ガスバリア層または他の層は、窒素、アルミニウムを更に含有していてもよい。
【0059】
ガスバリア層は上記条件(i)〜(iii)の全てを満たす。
珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が前記条件(i)を満たさない場合には、得られる第1のフィルムのガスバリア性が不十分となる。上記(1)(2)式を満たす領域が、ガスバリア層の膜厚の90%以上を占めることが好ましく、より好ましくは95%以上であり特に好ましくは100%である。
【0060】
またこのようなガスバリア層は、上記条件(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが必要である。このようなガスバリア層においては、前記炭素分布曲線が2つの極値を有することがより好ましく、3つ以上の極値を有することが特に好ましい。前記炭素分布曲線が極値を有さない場合には、得られる第1のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる。またこのように少なくとも3つの極値を有する場合において、前記炭素分布曲線の隣接する極値間の膜厚方向における距離が200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。なお本発明において極値とは、ガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離に対する元素の原子比の極大値又は極小値のことをいう。また本発明において極大値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が増加から減少に変わる点であって且つその点の元素の原子比の値よりも、該点からガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。さらに本発明において極小値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、且つその点の元素の原子比の値よりも、該点からガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離を更に20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。
【0061】
またこのようなガスバリア層は、上記条件(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが必要である。またこのようなガスバリア層においては、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が5at%未満では、得られる第1のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が不十分となる。
【0062】
(酸素分布曲線、極値)
本発明においては、前記ガスバリア層の前記酸素分布曲線が少なくとも1つの極値を有することが好ましく、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することが特に好ましい。前記酸素分布曲線が極値を有さない場合には、得られる第1のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が低下する傾向にある。また、このように少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。
【0063】
(酸素分布曲線、最大と最小の差)
また本発明においては、前記ガスバリア層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることが特に好ましい。前記絶対値が前記下限未満では、得られる第1のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が低下する傾向にある。
【0064】
本発明においては、前記ガスバリア層の前記珪素分布曲線における珪素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が前記上限を超えると、得られる第1のフィルムのガスバリア性が低下する傾向にある。
【0065】
(酸素炭素分布曲線、最大と最小の差)
また、本発明においては、前記ガスバリア層の膜厚方向における該層の表面からの距離と珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の原子比)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子比の合計の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることが特に好ましい。前記絶対値が前記上限を超えると、得られる第1のフィルムのガスバリア性が低下する傾向にある。
【0066】
前記珪素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記ガスバリア層の膜厚方向における前記ガスバリア層の表面からの距離に概ね相関することから、「ガスバリア層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリア層の表面からの距離を採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、エッチングイオン種としてアルゴン(Ar)を用いた希ガスイオンスパッタ法を採用し、そのエッチング速度(エッチングレート)を0.05nm/sec(SiO熱酸化膜換算値)とすることが好ましい。
【0067】
また、本発明においては、膜面全体において均一で且つ優れたガスバリア性を有するガスバリア層を形成するという観点から、前記ガスバリア層が膜面方向(ガスバリア層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。本明細書において、ガスバリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
【0068】
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。
本明細書において、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記ガスバリア層の膜厚方向における該層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(c、単位:at%)との関係において、下記数式(F1):
−1.0 ≦(dc/dx)≦ 1.0 ・・・(F1)
で表される条件を満たすことをいう。
【0069】
本発明における第1のフィルムは、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層を少なくとも1層備えることが必要であるが、第1のフィルムは、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層をさらに備えていてもよい。さらにこのようなガスバリア層を2層以上備える場合には、複数のガスバリア層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、このようなガスバリア層を2層以上備える場合には、このようなガスバリア層は前記基材の一方の表面上に形成されていてもよく、前記基材の両方の表面上に形成されていてもよい。また第1のフィルムは、ガスバリア性を必ずしも有しない薄膜層を含んでいてもよい。
【0070】
また、前記珪素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線において、珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が、前記式(1)で表される条件を満たす場合には、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、25〜45at%であることが好ましく、30〜40at%であることがより好ましい。また、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、33〜67at%であることが好ましく、45〜67at%であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、3〜33at%であることが好ましく、3〜25at%であることがより好ましい。
【0071】
さらに、前記珪素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線において、珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が、前記式(2)で表される条件を満たす場合には、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の含有量の原子比率は、25〜45at%であることが好ましく、30〜40at%であることがより好ましい。また、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、1〜33at%であることが好ましく、10〜27at%であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリア層中における珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、33〜66at%であることが好ましく、40〜57at%であることがより好ましい。
【0072】
また、前記ガスバリア層の厚みは、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。ガスバリア層の厚みが前記下限未満では、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が劣る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、屈曲によりガスバリア性が低下しやすくなる傾向にある。
【0073】
また、本発明の第1のフィルムが複数のガスバリア層を備える場合には、それらのガスバリア層の厚みの合計値は、通常10〜10000nmの範囲であり、10〜5000nmの範囲であることが好ましく、100〜3000nmの範囲であることより好ましく、200〜2000nmの範囲であることが特に好ましい。ガスバリア層の厚みの合計値が前記下限未満では、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性が劣る傾向にあり、他方、前記上限を超えると、屈曲によりガスバリア性が低下しやすくなる傾向にある。
【0074】
本発明における第1のフィルムは、前記第1のフィルムの基材及び前記ガスバリア層を備えるものであるが、必要に応じて、更にプライマーコート層、ヒートシール性樹脂層、接着剤層等を備えていてもよい。このようなプライマーコート層は、前記基材及び前記ガスバリア層との接着性を向上させることが可能な公知のプライマーコート剤を用いて形成することができる。また、このようなヒートシール性樹脂層は、適宜公知のヒートシール性樹脂を用いて形成することができる。さらに、このような接着剤層は、適宜公知の接着剤を用いて形成することができ、このような接着剤層により複数の第1のフィルム同士を接着させてもよい。
【0075】
また、本発明における第1のフィルムにおいては、前記ガスバリア層がプラズマ化学気相成長法により形成される層であることが好ましい。このようなプラズマ化学気相成長法により形成されるガスバリア層としては、前記第1のフィルムの基材を前記一対の成膜ロール上に配置し、前記一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させるプラズマ化学気相成長法により形成される層であることがより好ましい。また、このようにして一対の成膜ロール間に放電する際には、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが好ましい。更に、このようなプラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。また、本発明の第1のフィルムにおいては、前記ガスバリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。なお、このようなプラズマ化学気相成長法を利用してガスバリア層を形成する方法は、後述の本発明の第1のフィルムを製造する方法において説明する。
【0076】
<第1のフィルムの製造方法>
【0077】
次に、第1のフィルムを製造する方法について説明する。第1のフィルムは、前記第1のフィルムの基材の表面上に前記ガスバリア層を形成させることにより製造することができる。このような本発明にかかるガスバリア層を前記第1のフィルムの基材の表面上に形成させる方法としては、ガスバリア性の観点から、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD)を採用することが好ましい。なお、前記プラズマ化学気相成長法はペニング放電プラズマ方式のプラズマ化学気相成長法であってもよい。
【0078】
また、前記プラズマ化学気相成長法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ロールの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロールのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ロール間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ロールを用い、その一対の成膜ロール上に基材を配置して、かかる一対の成膜ロール間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ロール上に存在する基材上にガスバリア層を成膜しつつ、もう一方の成膜ロール上に存在する基材上にも同時にガスバリア層を成膜することが可能となって効率よくガスバリア層を製造できるばかりか、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層を形成することが可能となる。また、本発明における第1のフィルムは、生産性の観点から、ロールツーロール方式で前記第1のフィルムの基材の表面上に前記ガスバリア層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマ化学気相成長法により第1のフィルムを製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ロールと、プラスマ電源とを備え且つ前記一対の成膜ロール間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図4に示す製造装置を用いた場合には、プラズマ化学気相成長法を利用しながらロールツーロール方式で製造することも可能となる。
【0079】
以下、図4を参照しながら、本発明の第1のフィルムを製造する方法についてより詳細に説明する。なお、図4は、本発明の第1のフィルムを製造するのに好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0080】
図4に示す製造装置は、送り出しロール701と、搬送ロール21、22、23、24と、成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、成膜ロール31及び32の内部に設置された磁場発生装置61、62と、巻取りロール702とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ロール31、32と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源51と、磁場発生装置61、62とは、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。更に、このような製造装置において前記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
【0081】
このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ロールがそれぞれプラズマ発生用電源51に接続されている。そのため、このような製造装置においては、プラズマ発生用電源51により電力を供給することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ロール31と成膜ロール32との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ロール31と成膜ロール32を電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。また、このような製造装置においては、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値の数を少なくとも倍増させることが可能となる。そして、このような製造装置によれば、CVD法により基材6の表面上にガスバリア層を形成することが可能であり、成膜ロール31上において基材6の表面上に膜成分を堆積させつつ、更に成膜ロール32上においても基材6の表面上に膜成分を堆積させることもできるため、基材6の表面上に前記ガスバリア層を効率よく形成することができる。
【0082】
また、成膜ロール31及び成膜ロール32の内部には、磁場発生装置61及び62が設けられている。この磁場発生装置61及び62は、たとえ成膜ロールが回転したとしても、自身は回転しないようにして固定されている。
【0083】
さらに成膜ロール31及び成膜ロール32としては適宜公知のロールを用いることができる。このような成膜ロール31及び32としては、より効率よく薄膜を形成せしめるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ロール31及び32の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、5〜100cmの範囲とすることが好ましい。
【0084】
また、このような製造装置においては、基材6の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ロール(成膜ロール31と成膜ロール32)上に、基材6が配置されている。このようにして基材6を配置することにより、成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ロール間に存在する基材6のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置によれば、CVD法により、成膜ロール31上にて基材6の表面上に膜成分を堆積させ、更に成膜ロール32上にて膜成分を堆積させることができるため、基材6の表面上に前記ガスバリア層を効率よく形成することが可能となる。
【0085】
また、このような製造装置に用いる送り出しロール701及び搬送ロール21、22、23、24としては適宜公知のロールを用いることができる。また、巻取りロール702としても、ガスバリア層を形成した基材6を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のロールを用いることができる。
【0086】
また、ガス供給管41としては原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源51は、これに接続された成膜ロール31と成膜ロール32に電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の成膜ロールの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源51としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ且つ交流の周波数を50Hz〜500kHzとすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61、62としては適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材6としては、前記本発明に用いる第1のフィルムの基材の他に、前記ガスバリア層を予め形成させたものを用いることができる。このように、基材6として前記ガスバリア層を予め形成させたものを用いることにより、前記ガスバリア層の厚みを厚くすることも可能である。
【0087】
このような図4に示す製造装置を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、成膜ロールの直径、並びに、フィルムの搬送速度を適宜調整することにより、本発明の第1のフィルムを製造することができる。すなわち、図4に示す製造装置を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の成膜ロール(成膜ロール31及び32)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ロール31上の基材6の表面上並びに成膜ロール32上の基材6の表面上に、前記ガスバリア層がプラズマCVD法により形成される。なお、このような成膜に際しては、基材6が送り出しロール701や成膜ロール31等により、それぞれ搬送されることにより、ロールツーロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材6の表面上に前記ガスバリア層が形成される。
【0088】
このようなガスバリア層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリア層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えばケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることができ、さらに有機ケイ素化合物のほかにモノシランを含有させ、形成する膜のケイ素源として使用してもよい。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるガスバリア層のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0089】
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0090】
前記成膜ガスとしては、前記原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、前記成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス;水素を用いることができる。
【0091】
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合には、原料ガスと反応ガスの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にし過ぎてしまうと、上記条件(i)〜(iii)を全て満たす薄膜が得られなくなってしまう。この場合には、形成されるガスバリア層によって、優れたバリア性や耐屈曲性を得ることができなくなる。また、前記成膜ガスが前記有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
【0092】
以下、前記成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ケイ素化合物:HMDSO:(CHSiO:)と反応ガスとしての酸素(O)を含有するものを用い、ケイ素−酸素系のガスバリア層を製造する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスの好適な比率等についてより詳細に説明する。
【0093】
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系のガスバリア層を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(3):
(CHSiO+12O→6CO+9HO+2SiO (3)
に記載のような反応が起こり、二酸化ケイ素が製造される。このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまうため、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明において、ガスバリア層を形成する際には、上記(3)式の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくする必要がある。なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素は、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍量以下(より好ましくは、10倍以下)の量であることが好ましい。このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がガスバリア層中に取り込まれ、上記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリア層を形成することが可能となって、得られる第1のフィルムに優れたバリア性及び耐屈曲性を発揮させることが可能となる。なお、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)が少なすぎると、酸化されなかった炭素原子や水素原子がガスバリア層中に過剰に取り込まれるため、この場合はバリア膜の透明性が低下して、バリアフィルムは有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板には利用できなくなってしまう。このような観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
【0094】
また、真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.1Pa〜50Paの範囲とすることが好ましい。
【0095】
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ロール31及び32間に放電するために、プラズマ発生用電源51に接続された電極ドラム(本実施形態においては成膜ロール31及び32に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概に言えるものでないが、0.1〜10kWの範囲とすることが好ましい。このような印加電力が前記下限未満ではパーティクルが発生し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜時に発生する熱量が多くなり、成膜時の基材表面の温度が上昇する。温度が上昇しすぎると、基材が熱によって損傷し、成膜時に皺が発生したり、場合によっては熱によってフィルムが溶け、成膜ロールが露出し、成膜ロール間に大電流の放電が発生して成膜ロール自体を損傷するおそれがある。
【0096】
基材6の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。ライン速度が前記下限未満では、フィルムに熱に起因する皺の発生しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、形成されるガスバリア層の厚みが薄くなる傾向にある。
【0097】
(第2のフィルム)
前述したように第2のフィルムは、有機EL素子から出射される光が第2のフィルムを通って外界に出射する場合、光透過性を示す部材によって構成する必要があり、その際には、第2のフィルムと同様に、第2のガスバリア層を有することが好ましい。この第2のガスバリア層は、珪素、酸素及び炭素を含有しており、当該第2のガスバリア層における前記珪素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線が前記条件(i)〜(iii)を満たす。そのため、上述の第1のフィルムにおけるガスバリア層と同様にして形成することができる。なお第2のガスバリア層は、第1のフィルムのガスバリア層と全く同じ構成であってもよいが、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線が前記条件(i)〜(iii)を満たす限りにおいて、第1のフィルムのガスバリア層とは異なっていてもよい。
【0098】
(光取出し構造体)
つぎに光取出し構造体について説明する。
【0099】
本発明の有機EL装置に用いられる光取出し構造体14は有機EL装置の最も外側に設けられるが、この有機EL装置がさらに他の装置や筐体に組み込まれることもある。
【0100】
光取出し構造体は、光取出し効率を高める作用を有する限り、その構造はとくに限定されないが、つぎのような特性を有していることが好ましい。すなわち光取出し構造体は、光取出し構造体に入射し、光取出し側の表面から出射する光の強度を、光取出し側の表面が平面状の仮想構造体の光の取出し側の表面から出射する光の強度と比較したときに、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となる凹凸構造を、光取出し側の表面に有するものが好ましい。
【0101】
図5は光取出し構造体14の一例を模式的に示す図である。図5(1)は側面図であり、図5(2)は平面図である。
【0102】
光取出し構造体14はその表面部に凹凸構造を有する。この凹凸構造は、当該光取出し構造体14に入射し、光取出し側の表面から出射する光の強度を、光取出し側の表面が平面状の仮想構造体の光の取出し側の表面から出射する光の強度と比較したときに、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となるような構造である。
【0103】
図6に本発明の光取出し構造体14と比較される仮想構造体110を模式的に示す。図6(1)は仮想構造体110の側面図であり、図6(2)は仮想構造体110の平面図である。図6に示すように仮想構造体110は一対の対向する表面の両方が平面状である。すなわち仮想構造体110は凹凸構造を有しない。なお仮想構造体110は、表面の形状が異なること以外は光取出し構造体14と同じ構成である。
【0104】
凹凸構造を有する光取出し構造体14と、凹凸構造を有さない仮想構造体110とに、同じ光を入射したときに、凹凸構造を有する光取出し構造体14から出射する光の正面強度は、凹凸構造を有さない仮想構造体110から出射する光の正面強度の1.3倍以上となる。また凹凸構造を有する光取出し構造体14と、凹凸構造を有さない仮想構造体110とに、同じ光を入射したときに、凹凸構造を有する光取出し構造体14から出射する光の積分強度は、凹凸構造を有さない仮想構造体110から出射する光の積分強度の1.3倍以上となる。なお正面強度および積分強度は1.3倍以上であればよく、その上限は特にないが、正面強度のみが強くなりすぎると適当でない場合もあるため、正面強度の倍率は例えば5倍以下であり、積分強度の倍率は例えば5倍以下である。
【0105】
出射光の正面強度は光取出し構造体14の厚み方向の光の強度を表す。なお光取出し構造体14は凹凸構造を有するが、この凹凸構造を巨視的に平均化した平面を仮定したときの、当該平面の法線方向と光取出し構造体14の厚み方向とは一致する。そのため巨視的にみたときに、出射光の正面強度は光取出し構造体14の表面の法線方向の光強度を表す。
【0106】
これに対して出射光の積分強度は、光源から入射する光が光取出し構造体を透過して出射する光に関し、法線方向のみならず全方向に出射する光の強度を積算した値である。
【0107】
有機EL素子は種々の装置の光源として利用されるが、その特性として求められるものも、搭載される装置によって様々である。たとえば法線方向の輝度の高さが求められる装置がある一方で、全方向に均一に光を放射するものが求められる装置もある。すなわち法線方向のみが突出して輝度の高いものは適当ではない装置もある。たとえば一般照明のように均一発光が求められる光源では、拡散性の高い光取出し構造体が求められている。そのため従来では、法線方向以外の方向(いわゆる斜め方向)の光強度を犠牲にしても、正面強度を向上させることを目指した研究開発や、正面強度を犠牲にして、全方向への均一な発光を目指した研究開発がそれぞれ行われてきた。このような状況の中で本発明者等は、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となるような光取出し構造体14を有機EL素子に適用すれば、発光装置としてとくに有用であることを見出した。たとえば有機EL素子を照明装置の光源として利用する場合、出射光の正面強度が高く且つ室内等を隈なく照らすことが可能な照明装置が好ましいが、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となるような光取出し構造体14を有機EL素子に適用することによって、このような照明装置を実現することができる。これは素子自体を面状な光源(二次元)とすることができるという、有機EL素子に特有な性質を利用するものである。
【0108】
たとえば無機LEDや蛍光灯などは点状(零次元)または線状(一次元)の光源であるため、これを照明装置として利用する際には、正面強度よりも拡散性が重要となる。そのため積分強度が高くなるような光取出し構造体の適用が検討されてきた。しかしながら有機EL素子は素子自体を面状な光源(二次元)とすることができるため、正面強度と積分強度の両方が高くなるような光取出し構造体14を適用することにより、照明装置としての性能を向上することができる。
【0109】
光取出し構造体14は、以下に説明するI(θ°)の比が下記式(4)を満たし、ヘイズ値が60%以上、且つ全光線透過率が60%以上であることが好ましい。
【0110】
I(35)/I(70)>5 式(4)
なおI(θ°)の比を拡散パラメータということがある。I(θ°)とは、光取出し構造体と平行に配置される面状光源から光取出し構造体に光を照射したときに、法線方向と角度θ°をなす方向に出射する光の強度を意味する。
【0111】
ヘイズ値が60%未満であれば、十分な光散乱効果が得られないことがあり、全光線透過率が60%未満であれば、十分な光を取り出すことができないことがあるので、有機EL素子が搭載される発光装置にこのような光取出し構造体14を用いた場合、十分な光取出し効率を実現できないおそれがあるが、ヘイズ値が60%以上、かつ全光線透過率が60%以上の光取出し構造体14を用いることによって、高い取出し効率を示す発光装置を実現することができる。
【0112】
ヘイズ値は以下の式で表される。なおヘイズ値はJIS K 7136「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に記載の方法で測定することができる。
【0113】
ヘイズ値(曇価)=(拡散透過率(%)/全光線透過率(%))×100(%)。
【0114】
また全光線透過率は、JIS K 7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に記載の方法で測定することができる。
【0115】
図7はI(θ°)を説明するための図である。法線方向に出射する光の強度をI(0)と定義する。面状光源210は、その発光面が光取出し構造体14の表面と平行となるように、光取出し構造体14と平行に配置される。前述したように有機EL素子は自体が面状光源となるため、この面状光源210は有機EL素子を模擬するものである。I(θ°)の具体的な測定方法は実施例の項において説明する。
【0116】
I(35)は法線方向から35°傾いた方向の光の強度を表し、I(70)は法線方向から70°傾いた方向の光の強度を表す。I(35)/I(70)は、高いほどより正面方向に光が出射するため、I(35)/I(70)が5を超える場合には、この光取出し構造体14をたとえば照明装置に好適に用いることができる。なおI(35)/I(70)は高すぎると正面方向の光強度のみが高くなりすぎるので、広い範囲を照らすためには30以下が好ましい。
【0117】
光取出し構造体14はさらに下記式(5)を満たすことが好ましい。
【0118】
I(0)/I(35)>1.5 式(5)
I(0)/I(35)は、高いほどより正面方向に光が出射するため、1.5を超える場合には、この光取出し構造体14をたとえば照明装置に好適に用いることができる。なおI(0)/I(35)は、高すぎると正面方向の光強度のみが高くなりすぎるので、広い範囲を照らすためには10以下が好ましい。
【0119】
光取出し構造体14の凹凸構造は、複数の粒状構造物が表面上に分散して配置されて構成されていることが好ましい。なお粒状構造物は、表面上に付着していてもよく、光取出し側の表面部に一体形成されていてもよい。粒状構造物は周期的に配置されていてもよく、非周期的に配置されていてもよい。非周期的に粒状構造物を配置した場合には、粒状構造物に起因する光の干渉を抑制することができるため、モアレなどの発生を防ぐことができる。なお複数の粒状構造物が表面上に分散して配置された光取出し構造体の一例については図17,図19,図20に示す。
【0120】
凹凸構造を構成する各凹構造または各凸構造の幅および高さは、光取出し効率が向上するような構造であればよい。なお各凹構造または各凸構造の幅は、光取出し構造体14表面に平行な方向の大きさを意味し、各凹構造または各凸構造の高さは、光取出し構造体14表面の法線方向の高さを意味する。各凹構造または各凸構造の幅は、大きすぎると光取出し構造体14表面での輝度が不均一になり、小さすぎると光取出し構造体14の作製コストが高くなるので、好ましくは0.5μm〜100μmであり、さらに好ましくは1μm〜50μmである。また各凹構造または各凸構造の高さは、通常各凹構造または各凸構造の幅や、各凹構造または各凸構造が設けられる周期により決定され、通常は各凹構造または各凸構造の幅以下、または各凹構造または各凸構造が形成される周期以下が好ましく、0.25μm〜70μmであり、好ましくは0.5μm〜50μmである。
【0121】
各凹構造または各凸構造の形状は特に限定されないが、曲面を有するものが好ましく、たとえば半球形状が好ましい。各凹構造または各凸構造は非周期的に配置された方が前述と同様にモアレなどを防ぐことができるため好ましい。また光取出し構造体14の表面の法線方向の一方から見たときに、光取出し構造体14の表面のうちで、各凹構造または各凸構造が形成される領域の面積の合計は、光取出し構造体14の表面の面積の60%以上が好ましい。
【0122】
光取出し構造体14を構成する材料は、透明材料であればよく、たとえばガラスなどの無機物や、有機物(低分子化合物または高分子化合物)が用いられる。光取出し構造体14に用いられる高分子化合物としては、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンスルホン酸、およびポリエチレンテレフタレートなどを挙げることができる。光取出し構造体14の厚みは特に限定されないが、薄すぎると取り扱いが難しくなり、厚すぎると全光線透過率が低くなるので、50μm〜2mmが好ましく、さらに好ましくは80μm〜1.5mmである。
【0123】
ガラスなどの無機材料から成る光取出し構造体は、無機材料から成る平板状の基台をエッチングすることにより得られる。たとえば平板状の基台表面のうちで、凹凸形状を形成する部位を選択的にエッチングすることにより得られる。具体的には無機材料から成る基台表面に保護膜をパターン形成し、液相エッチングまたは気相エッチングなどを施すことによって凹凸構造を形成することができる。保護膜は例えばフォトレジストを用いてパターン形成することができる。
【0124】
有機材料から成る光取出し構造体は、たとえば以下の(1)〜(5)の方法によって形成することができる。(1)表面が凹凸状の金属板を加熱されたフィルムに押し付けることによって、金属板の凹凸形状をフィルムに転写する方法。(2)表面が凹凸状のロールを用いて、フィルムを圧延する方法。(3)有機材料を含む溶液または分散液を、表面が凹凸形状の基台上に滴下して、成膜する方法。(4)重合可能なモノマーから成る膜を形成した後に、該膜の一部を選択的に光重合し、未重合部分を除去する方法。(5)高湿度条件下で高分子溶液を基台にキャストし、水滴構造を表面に転写する方法。
【0125】
なお光取出し構造体14は、たとえば図1に示す第1のフィルム上に直接形成するか、または第1のフィルムの表面部を加工することによって、第1のフィルムの表面部に一体的に形成してもよい。
【0126】
光取出し構造体14を第1のフィルムまたは第2のフィルムに貼り合せるさいに、光取出し構造体14と第1のフィルムまたは第2のフィルムとの間に空気の層が形成されると、この空気の層の界面で光の反射が生じるので、光取出し効率が低下する。そのため光取出し構造体14と第1のフィルムまたは第2のフィルムとは、その間に空気の層が形成されないように、接着層を介して貼り合わせることが好ましい。
【0127】
光取出し構造体14の屈折率nf、接着層の屈折率na、および第1のフィルムまたは第2のフィルムの屈折率nsのうちの最大値と、最小値との差の絶対値は0.2未満であることが好ましい。このような屈折率の関係を有することで、光取出し構造体14と第1のフィルムまたは第2のフィルムとの間で生じる反射を抑制することができ、光取出し効率を向上することができる。
【0128】
光取出し構造体14と第1のフィルムまたは第2のフィルムとの厚みは特に限定されないが、接着層を介在を含めた光取出し構造体14と第1のフィルムまたは第2のフィルムとの合計の厚みは、50μm〜2mmが好ましく、さらに好ましくは80μm〜1.5mmである。
【0129】
(有機EL素子)
つぎに有機EL素子の構成について説明する。有機EL素子は、第1のフィルムと第2のフィルムとが貼合される工程の前に、第1のフィルムまたは第2のフィルム上に形成される。
【0130】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられる発光層とから構成される。なお一対の電極間には、発光層に加えて、必要に応じて所定の層が設けられることがある。また発光層は1層に限らず複数層設けられることがある。
【0131】
陰極と発光層との間に設けられる層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に接する層を電子注入層といい、この電子注入層を除く層を電子輸送層という。
【0132】
電子注入層は、陰極からの電子注入効率を改善する機能を有する。電子輸送層は陰極側の表面に接する層からの電子注入を改善する機能を有する。正孔ブロック層は、正孔の輸送を堰き止める機能を有する。なお電子注入層、及び/又は電子輸送層が正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が正孔ブロック層を兼ねることがある。
【0133】
正孔ブロック層が正孔の輸送を堰き止める機能を有することは、例えばホール電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0134】
陽極と発光層との間に設けられる層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。陽極と発光層との間に、正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に接する層を正孔注入層といい、この正孔注入層を除く層を正孔輸送層という。
【0135】
正孔注入層は、陽極からの正孔注入効率を改善する機能を有する。正孔輸送層は陽極側の表面に接する層からの正孔注入を改善する機能を有する。電子ブロック層は、電子の輸送を堰き止める機能を有する。なお正孔注入層、及び/又は正孔輸送層が電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの層が電子ブロック層を兼ねることがある。
【0136】
電子ブロック層が電子の輸送を堰き止める機能を有することは、例えば、電子電流のみを流す素子を作製し、その電流値の減少で堰き止める効果を確認することが可能である。
【0137】
なお、電子注入層および正孔注入層を総称して電荷注入層ということがあり、電子輸送層および正孔輸送層を総称して電荷輸送層ということがある。
【0138】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
f)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
g)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
h)陽極/発光層/電子注入層/陰極
i)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
以下同じ。)
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜i)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記j)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
j)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記k)に示す層構成を挙げることができる。
k)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0139】
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、例えば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0140】
積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0141】
次に有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法について、より具体的に説明する。
【0142】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0143】
陽極の膜厚は、要求される特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0144】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0145】
正孔注入層の成膜方法としては、例えば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。例えば正孔注入材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0146】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水を挙げることができる。
【0147】
塗布法としてはスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法などを挙げることができる。
【0148】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0149】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0150】
これらの中で正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミン化合物基を有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などの高分子正孔輸送材料が好ましく、さらに好ましくはポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体である。低分子の正孔輸送材料の場合には、高分子バインダーに分散させて用いることが好ましい。
【0151】
正孔輸送層の成膜方法としては、特に制限はないが、低分子の正孔輸送材料では、高分子バインダーと正孔輸送材料とを含む混合液からの成膜を挙げることができ、高分子の正孔輸送材料では、正孔輸送材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。
【0152】
溶液からの成膜に用いられる溶媒としては、正孔輸送材料を溶解させるものであれば特に制限はなく、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒などを挙げることができる。
【0153】
溶液からの成膜方法としては、前述した正孔注入層の成膜法と同様の塗布法を挙げることができる。
【0154】
混合する高分子バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収の弱いものが好適に用いられ、例えばポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサンなどを挙げることができる。
【0155】
正孔輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚は、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0156】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、例えば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層に含まれる有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。一般的に低分子よりも溶媒への溶解性の高い高分子化合物は塗布法に好適に用いられるため、発光層は高分子化合物を含むことが好ましく、高分子化合物としてポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10の化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する発光材料としては、例えば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0157】
(色素系材料)
色素系材料としては、例えば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0158】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、例えばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、例えばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0159】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0160】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0161】
また緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0162】
また赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを挙げることができる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0163】
また白色に発光する材料としては、上述の青色、緑色、赤色の各色に発光する材料を混合したものや、各色に発光する材料となる成分をモノマーとして、これを重合したポリマーをその材料として用いてもよい。また各色に発光する材料をそれぞれ用いて形成される発光層を積層して、全体として白色を発光する素子を実現してもよい。
(ドーパント材料)
ドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾンなどを挙げることができる。なお、このような発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0164】
<発光層の成膜方法>
発光層の成膜方法としては、発光材料を含む溶液を塗布する方法、真空蒸着法、転写法などを用いることができる。溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する際に用いられる溶媒と同様の溶媒を挙げることができる。
【0165】
発光材料を含む溶液を塗布する方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法およびノズルコート法などのコート法、並びにグラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの塗布法を挙げることができる。パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法などの印刷法が好ましい。また、昇華性を示す低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いることができる。さらには、レーザーによる転写や熱転写により、所望のところのみに発光層を形成する方法も用いることができる。
【0166】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0167】
これらのうち、電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましく、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、ベンゾキノン、アントラキノン、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ポリキノリンがさらに好ましい。
【0168】
電子輸送層の成膜法としては特に制限はないが、低分子の電子輸送材料では、粉末からの真空蒸着法、または溶液若しくは溶融状態からの成膜を挙げることができ、高分子の電子輸送材料では溶液または溶融状態からの成膜を挙げることができる。なお溶液または溶融状態からの成膜する場合には、高分子バインダーを併用してもよい。溶液から電子輸送層を成膜する方法としては、前述の溶液から正孔注入層を成膜する方法と同様の成膜法を挙げることができる。
【0169】
電子輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜設定され、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、あまり厚いと、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0170】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、例えばLiF/Caなどを挙げることができる。電子注入層は、蒸着法、スパッタリング法、印刷法などにより形成される。電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0171】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取り出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光反射率の高い材料が好ましい。陰極には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また、陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられる場合もある。
【0172】
陰極の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設計され、例えば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0173】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0174】
以上の有機EL装置は、所定の構成要素を追加することによって、照明装置、面光源装置、表示装置として用いることができる。
【実施例】
【0175】
(参考例A1)
前述の図4に示す製造装置を用いて第1のフィルムを製造した。すなわち、2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を基材(基材6)として用い、これを送り出しロール701に装着した。そして、成膜ロール31と成膜ロール32との間に磁場を印加すると共に、成膜ロール31と成膜ロール32にそれぞれ電力を供給して、成膜ロール31と成膜ロール32との間に放電してプラズマを発生させ、このような放電領域に、成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)の混合ガス)を供給して、下記条件にてプラズマCVD法による薄膜形成を行い、第1のフィルムを得た。
【0176】
〈成膜条件〉
原料ガスの供給量:50(零度、1atmに換算したStandard Cubic Centimeter per Minute。以下同じ。)
酸素ガスの供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度;0.5m/min。
【0177】
得られた第1のフィルムにおけるガスバリア層の厚みは0.3μmであった。また、得られた第1のフィルムにおいて、温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は3.1×10−4g/(m・day)であり、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であった。さらに、曲率半径8mmの条件で屈曲させた後の温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であり、得られた第1のフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することができることが確認された。
【0178】
また、得られた第1のフィルムについて、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
【0179】
得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線をそれぞれ図8に示し、且つ、得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線に関して、原子比とエッチング時間の関係とともに、原子比とガスバリア層の表面からの距離(nm)との関係を併せて示すグラフを図9に示す。なお、図9に記載のグラフの横軸に記載の「距離(nm)」はエッチング時間とエッチング速度とから計算して求められた値である。
【0180】
図8及び図9に示す結果からも明らかなように、得られた炭素分布曲線が複数の明確な極値を有していること、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、並びに珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が前記式(1)で示された条件を満たしていることが確認された。
【0181】
(参考例A2)
先ず、参考例A1で得られたガスバリア層の厚みが0.3μmの第1のフィルムを基材6として用いて送り出しロール701に装着し、前記ガスバリア層の表面上に新たにガスバリア層を形成した以外は、参考例A1と同様にして、第1のフィルム(A)を得た。なお、得られた第1のフィルム(A)における基材(PENフィルム)上のガスバリア層の厚みは0.6μmであった。
【0182】
その後、得られた第1のフィルム(A)を基材6として用いて送り出しロール701に装着し、前記ガスバリア層の表面上に新たにガスバリア層を形成した以外は参考例A1と同様にして、第1のフィルム(B)を得た。
【0183】
得られた第1のフィルム(B)におけるガスバリア層の厚みは0.9μmであった。また、得られた第1のフィルム(B)において、温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は6.9×10−4g/(m・day)であり、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であった。さらに、曲率半径8mmの条件で屈曲させた後の温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であり、得られた第1のフィルム(B)を屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することができることが確認された。
【0184】
また、得られた第1のフィルム(B)について、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を参考例A1における方法と同様の方法により作成した。得られた結果を図10に示す。また、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線に関して、原子比とエッチング時間の関係とともに、原子比とガスバリア層の表面からの距離(nm)との関係を併せて示すグラフを図11に示す。なお、図11のグラフの横軸に記載の「距離(nm)」はエッチング時間とエッチング速度とから計算して求められた値である。
【0185】
図10及び図11に示す結果からも明らかなように、得られた炭素分布曲線が複数の明確な極値を有していること、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、並びに珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が前記式(1)で示された条件を満たしていることが確認された。
【0186】
(参考例A3)
原料ガスの供給量を100sccmとした以外は参考例A1と同様にして第1のフィルムを得た。
【0187】
得られた第1のフィルムにおけるガスバリア層の厚みは0.6μmであった。また、得られた第1のフィルムにおいて、温度40℃、低湿度側の湿度0%RH、高湿度側の湿度90%RHの条件における水蒸気透過度は3.2×10−4g/(m・day)であり、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であった。さらに、曲率半径8mmの条件で屈曲させた後の温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は検出限界以下の値であり、得られた第1のフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することができることが確認された。
【0188】
また、得られた第1のフィルムについて、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を参考例A1における方法と同様の方法により作成した。得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線を図12に示す。また、得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線に関して、原子比とエッチング時間の関係とともに、原子比とガスバリア層の表面からの距離(nm)との関係を併せて示すグラフを図13に示す。なお、図13のグラフの横軸に記載の「距離(nm)」はエッチング時間とエッチング速度とから計算して求められた値である。
【0189】
図12及び図13に示す結果からも明らかなように、得られた炭素分布曲線が複数の明確な極値を有していること、炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること、並びに珪素の原子比、酸素の原子比及び炭素の原子比が前記式(1)で示された条件を満たしていることが確認された。
【0190】
(参考比較例A1)
2軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚み:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「テオネックスQ65FA」)の表面上に、シリコンターゲットを用い、酸素含有ガス雰囲気中において、反応スパッタ法により酸化ケイ素からなるガスバリア層を形成して、比較のための第1のフィルムを得た。
【0191】
得られた第1のフィルムにおけるガスバリア層の厚みは100nmであった。また、得られた第1のフィルムにおいて、温度40℃、低湿度側の湿度10%RH、高湿度側の湿度100%RHの条件における水蒸気透過度は1.3g/(m・day)であり、ガスバリア性が不十分なものであった。
【0192】
得られた第1のフィルムについて、珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線を参考例A1における方法と同様の方法により作成した。得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線を図14に示す。また、得られた珪素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線に関して、原子比とエッチング時間の関係とともに、原子比とガスバリア層の表面からの距離(nm)との関係を併せて示すグラフを図15に示す。なお、図15のグラフの横軸に記載の「距離(nm)」はエッチング時間とエッチング速度とから計算して求められた値である。図14及び図15に示す結果からも明らかなように、得られた炭素分布曲線は極値を有していないことが確認された。
【0193】
以上説明したように、本発明で利用するフィルムは、十分なガスバリア性を有しており、しかもフィルムを屈曲させた場合においてもガスバリア性の低下を十分に抑制することが可能である。
【0194】
つぎに有機EL素子を作製するとともに、これに光取出し構造体を貼り合せ、光取出し構造体の有無と輝度との関係を測定した。
【0195】
各参考例では、有機EL素子に0.15mAの電流を流し、そのときの法線方向(正面方向)の発光強度の測定と、積分球を用いた積分強度の測定とを行った。なお表面が平坦なガラス基板上に有機EL素子を作製した発光装置を基準の発光装置とし、この基準の発光装置と、各参考例の発光装置との特性を比較した。具体的には各参考例の発光装置の正面方向の発光強度・積分強度を、基準の発光装置の正面方向の発光強度・積分強度でそれぞれ割った値を算出した。なお基準の発光装置において、表面が平坦なガラス基板は、光取出し側の表面が平面状の仮想構造体に相当する。
【0196】
(参考例1)
所定のパターン形状のITO薄膜から成る陽極が形成された基板を用意し、この基板にUV/O洗浄を20分間行った。次にポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液に、2段階のろ過を行った。第1段階目のろ過では0.45μm径のフィルターを用い、第2段階目のろ過では、0.2μm径のフィルターを用いた。ろ過した溶液を、スピンコート法によって陽極上に塗布し、さらに大気雰囲気下においてホットプレート上で200℃、15分間熱処理することによって、厚みが65nmの正孔注入層を形成した。
【0197】
次にLumation WP1330(SUMATION製)の濃度が1.2質量%のキシレン溶液を調整した。この溶液を、スピンコート法によって正孔注入層上に塗布し、さらに窒素雰囲気下においてホットプレート上で130℃、60分間熱処理することによって、厚みが65nmの発光層を形成した。
【0198】
次に発光層が形成された基板を真空蒸着機に導入し、Ba、Alをそれぞれ5nm、80nmの厚みで順次蒸着し、陰極を形成した。なお金属の蒸着は、真空度が1×10−4Pa以下に到達した後に開始した。
【0199】
次に封止ガラスの周辺に光硬化性封止剤をディスペンサーにより塗布し、有機EL素子が形成された基板と封止ガラスとを窒素雰囲気下において貼り合せ、さらに紫外線により光硬化性封止剤を硬化することによって封止を行った。
【0200】
次に複数の粒状構造物が表面上に分散して配置されて構成される凹凸構造を有するMNteck社製フィルムUTE12(屈折率1.5、厚み188μm)を、ノンキャリア粘着剤(屈折率1.5)を用いてガラス基板に貼合した。その際、凹凸構造が最表面に配置されるようにフィルムを貼合した。
【0201】
図16にUTE12の断面の顕微鏡写真を示し、図17に表面の顕微鏡写真を示す。図16、図17に示す通りUTE12は複数の粒状の凹凸構造を有する。
【0202】
UTE12の全光線透過率は68.4%、ヘイズは82.6%であり、拡散パラメータI(35)/I(70)は7.2、I(0)/I(35)は1.7であった。また本参考例の発光装置と、UTE12をガラス基板に貼合していない基準の発光装置とを比較すると、正面輝度は1.43倍であり、積分強度は1.34倍であった。
【0203】
<I(θ°)の測定方法>
I(θ°)の定義は上述の通りであるが、参考例において実際に測定したI(θ°)の測定方法について図18を参照して説明する。図18に示すように、入射角をφ°とする光線を光取出し構造体に入射し、光取出し側の表面から出射する光のうち、法線とのなす角度がθ°の光強度を±80°の範囲で5°おきに測定した。光源には中央精機製のハロゲンランプSPH−100Nを用いた。なお光源として面状光源を用いた場合には、特定の入射角の光が光取出し構造体に入射するのではなく、−90°<φ°<90°の光が同時に入射する。これを模擬的に再現するために、入射光の入射角φ°を−80°≦φ°≦80°の範囲で5°ずつ変え、各入射角において測定されるθ°方向の出射光の強度を積算することにより、I(θ°)を算出した。
【0204】
(参考例2)
参考例1と同様にしてガラス基板上に有機EL素子を形成し、複数の粒状構造物が表面上に分散して配置されて構成される凹凸構造を有するMNteck社製フィルムUTE21(屈折率1.5、厚み188μm)を、ノンキャリア粘着剤(屈折率1.5)を用いてガラス基板に貼合した。その際、フィルムの凹凸構造が最表面に配置されるようにフィルムを貼合した。
【0205】
図19にUTE21の表面の顕微鏡写真を示す。図19に示す通りUTE21は複数の粒状の凹凸構造を有する。
【0206】
UTE21の全光線透過率は63.4%、ヘイズは78.7%であり、拡散パラメータI(35)/I(70)は8.4、I(0)/I(35)は2.0であった。また本参考例の発光装置と、UTE21をガラス基板に貼合していない基準の発光装置とを比較すると、正面輝度は1.45倍であり、積分強度は1.34倍であった。
【0207】
(参考例3)
参考例1と同様にしてガラス基板上に有機EL素子を形成し、複数の粒状構造物が表面上に分散して配置されて構成される凹凸構造を有するWaveFront社製フィルムWF80(屈折率1.5、厚み80μm)を、ノンキャリア粘着剤(屈折率1.5)を用いて基板に貼合した。その際、フィルムの凹凸構造が最表面に配置されるようにフィルムを貼合した。
【0208】
図20にWF80の表面の顕微鏡写真を示す。図20に示す通りWF80は複数の粒状の凹凸構造を有する。
【0209】
WF80の全光線透過率は75.1%、ヘイズは89.3%であり、拡散パラメータI(35)/I(70)は6.5、I(0)/I(35)は1.1であった。また本参考例の発光装置と、WF80をガラス基板に貼合していない基準の発光装置とを比較すると、正面輝度は1.42倍であり、積分強度は1.31倍であった。
【0210】
(参考例4)
参考例1と同様にしてガラス基板上に有機EL素子を形成し、プリズムフィルムである3M社製フィルムBEF100(屈折率1.5、厚み150μm)を、ノンキャリア粘着剤(屈折率1.5)を用いてガラス基板に貼合した。その際、フィルムの凹凸構造が最表面に配置されるようにフィルムを貼合した。
【0211】
本参考例の発光装置と、BEF100ガラス基板に貼合していない基準の発光装置とを比較すると、正面輝度は1.26倍、積分強度は1.25倍であった。
【0212】
(参考例5)
参考例1と同様にしてガラス基板上に有機EL素子を形成し、複数の粒状構造物が表面上に分散して配置されて構成される凹凸構造を有する恵和商工社製フィルムオパルスPCM1(屈折率1.5、厚み120μm)を、ノンキャリア粘着剤(屈折率1.5)を用いてガラス基板に貼合した。その際、フィルムの凹凸構造が最表面に配置されるようにフィルムを貼合した。
【0213】
PCM1の全光線透過率は92.7%、ヘイズは86.0%であり、拡散パラメータI(35)/I(70)は2.0であり、I(0)/I(35)は1.3であった。また本参考例の発光装置と、PCM1ガラス基板に貼合していない基準の発光装置とを比較すると、正面輝度は1.24倍であり、積分強度は1.26倍であった。
【0214】
以上をまとめると、参考例1、2、3は参考例1、2に比較して光取出し効率が高く、正面輝度、積分強度の両方が、基準の発光装置よりも1.3倍以上となった。
【0215】
【表1】

【符号の説明】
【0216】
1 第1のフィルム
2 有機EL素子
3 保護層
4 接着層
5 ガスバリア層
6 第1のフィルムの基材
7 第1のフィルムの基材
8 第2のガスバリア層
11 第1のフィルム
13 有機EL装置
14 光取出し構造体
500、510、520 巻き出しロール
511、512 第1貼り合せロール
521、522 第2貼り合せロール
530 巻取りロール
610、620 接着層塗布装置
611、621 接着層硬化装置
701 送り出しロール
21,22,23,24 搬送ロール
31,32 一対の成膜ロール
41 ガス供給管
51 プラズマ発生用電源
61,62 磁場発生装置
701 送り出しロール
702 巻取りロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子と、
第1のフィルムと、
有機EL素子から放射される光が出射する位置に配置される光取出し構造体とを有する有機EL装置であって、
前記第1のフィルムは、珪素、酸素及び炭素を含有するガスバリア層を有しており、
前記ガスバリア層は、珪素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する珪素原子の量の比率(珪素の原子比)、酸素原子の量の比率(酸素の原子比)及び炭素原子の量の比率(炭素の原子比)と、膜厚方向における前記ガスバリア層の一方の表面からの距離との関係をそれぞれ示す珪素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線が下記条件(i)〜(iii)を満たす、有機EL装置。
(i)ガスバリア層の膜厚方向の90%以上の領域において、珪素、酸素および炭素の原子比のうちで、珪素の原子比が2番目の値であること
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有すること
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値及び最小値の差の絶対値が5at%以上であること
【請求項2】
前記光取出し構造体は、当該該構造体に入射し、光取り出し側の表面から出射する光の強度を、光取り出し側の表面が平面状の仮想構造体の光の取り出し側の表面から出射する光の強度と比較したときに、正面強度および積分強度のいずれもが1.3倍以上となる凹凸構造である、請求項1記載の有機EL装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機EL装置を有する照明装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の有機EL装置を有する面光源装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の有機EL装置を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【図3】
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【図4】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−84307(P2012−84307A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228322(P2010−228322)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】