説明

有糸分裂進行を阻害するための化合物

本発明は式(I)の化合物および癌の処置のための方法に関する。本発明は、特に、オーロラAキナーゼの強力なインヒビター、上記化合物を含む薬学的組成物、および癌の処置のためにこの化合物を使用する方法を提供する。本願化合物は、インビトロおよびインビボにおいてオーロラAキナーゼ活性を阻害するのに有用であり、特に、種々の細胞増殖性疾患の処置に有用である。一実施形態において、式(I)の化合物は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸、または薬学的に受容可能なその塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(優先権主張)
本願は、2006年11月16日に出願した米国仮特許出願第60/859,340号に基づく優先権を主張しており、上記出願の全体が、本明細書に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、癌の処置のための化合物および方法に関する。本発明は、特に、オーロラキナーゼ酵素を阻害する化合物、上記化合物を含む薬学的組成物、および癌の処置のために上記化合物を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
米国癌学会によると、2004年に新たに癌と診断された米国人は、140万人と推定され、約560,000人の罹病者がこの疾患で亡くなった。医学の進歩により癌生存率は改善したが、新たなより効果的な処置が、継続的に必要とされている。
【0004】
癌は、無制御の細胞繁殖により特徴付けられる。有糸分裂は、細胞周期における一段階であり、この段階においては一連の複雑な事象により、2個の娘細胞への染色体分離の正確さが確保される。いくつかの現行の癌治療(タキサンおよびビンカアルカロイドを含む)は、有糸分裂機構を阻害するように作用する。有糸分裂の進行は、有糸分裂キナーゼにより媒介されるタンパク質分解およびリン酸化事象により主に調節される。オーロラキナーゼファミリーのメンバー(例えば、オーロラA、オーロラB、オーロラC)は、中心体分離、紡錘体動態、紡錘体集合チェックポイント、染色体整列および細胞質分裂の調整を通じて有糸分裂の進行を調節する(非特許文献1;非特許文献2)。オーロラキナーゼの過剰発現および/または増幅が、いくつかの腫瘍型(結腸腫瘍および乳房腫瘍を含む)における腫瘍形成と関連づけられた(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。さらに、腫瘍細胞におけるオーロラキナーゼ阻害は、有糸分裂停止およびアポトーシスをもたらし、これらのキナーゼが癌治療にとって重要な標的であることが示唆される(非特許文献6;非特許文献7)。実質的に全ての悪性腫瘍の進行における有糸分裂の中心的役割を考慮すると、オーロラキナーゼのインヒビターは、広範なヒト腫瘍にわたり、用途を有するものと期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dutertre et al.,Oncogene,21:6175(2002)
【非特許文献2】Berdnik et al.,Curr.Biol.,12:640(2002)
【非特許文献3】Warner et al.,Mol.Cancer Ther.,2:589(2003)
【非特許文献4】Bischoff et al.,EMBO,17:3062(1998)
【非特許文献5】Sen et al.,Cancer Res.,94:1320(2002)
【非特許文献6】Ditchfield,J.Cell Biol.,161:267(2003)
【非特許文献7】Harrington et al.,Nature Med.,1(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、新規なオーロラキナーゼインヒビターが必要性とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の説明)
Claiborne et al.による国際特許公開第05/111039号は、オーロラキナーゼ阻害活性を有するピリミドベンズアゼピン化合物を開示している。本発明者らは、オーロラAキナーゼに対して予期せぬほど優れた効力を有するピリミドベンズアゼピン化合物を新たに発見した。本願化合物は、インビトロおよびインビボにおいてオーロラAキナーゼ活性を阻害するのに有用であり、特に、種々の細胞増殖性疾患の処置に有用である。
【0008】
したがって、一局面において、本発明は、式(I)によって表される化合物、または薬学的に受容可能なその塩を提供する:
【0009】
【化1】

【0010】
ここで、
は、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−R、−T−R、−Rおよび−T−Rからなる群より選択され;
Tは、フルオロで必要に応じて置換されているC1〜3アルキレン鎖であり;
は、必要に応じて置換されている、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロシクリル基であり;
は、ハロ、−C≡C−R、−CH=CH−R、−N(Rおよび−ORからなる群より選択され;
は、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり;
は、各々独立して、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか;あるいは、同じ窒素原子上の2つのRが、この窒素原子と一緒になって、この窒素原子に加えてN、OおよびSより選択される0個〜2個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、5員〜6員のヘテロアリール環または4員〜8員のヘテロシクリル環を形成し;
は、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり;そして
は、フルオロ、クロロ、−CH、−CF、−OH、−OCH、−OCF、−OCHCHおよび−OCHCFからなる群より選択される。
【0011】
一部の実施形態において、Rは、ハロ、C1〜3脂肪族およびC1〜3フルオロ脂肪族からなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換されている、5員または6員のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環である。特定の実施形態において、Rは、ハロ、C1〜3脂肪族およびC1〜3フルオロ脂肪族からなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換されている、フェニル環、フリル環、ピロリジニル環またはチエニル環である。
【0012】
一部の実施形態において、Rは、水素、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族または−CH−OCHである。
【0013】
一部の実施形態において、Rは、水素、C1〜3脂肪族またはC1〜3フルオロ脂肪族である。
【0014】
特定の実施形態において、Rは、ハロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OH、−O(C1〜3脂肪族)、−O(C1〜3フルオロ脂肪族)、−C≡C−R、−CH=CH−R、または必要に応じて置換されている、ピロリジニル環、チエニル環、フリル環もしくはフェニル環であり、ここで、Rは、水素、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族または−CH−OCHである。ある特定の実施形態において、Rは、クロロ、フルオロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OCH、−OCF、−C≡C−H、−C≡C−CH、−C≡C−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、N−メチルピロリジニル、チエニル、メチルチエニル、フリル、メチルフリル、フェニル、フルオロフェニルおよびトリルからなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
表1は、式(I)の化合物の具体例を示す。
【0016】
【表1−1】

【0017】
【表1−2】

【0018】
【表1−3】

【0019】
上記表1の化合物は、以下の化学名によっても特定され得る。
【0020】
【化2】

【0021】
一実施形態において、式(I)の化合物は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸、または薬学的に受容可能なその塩である。特定の実施形態において、式(I)の化合物は、4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウムである。
【0022】
他に指定のない限り、本明細書に記される構造は、1つ以上の同位体濃縮原子の存在についてのみ異なる化合物を包含することが意図される。例えば、ジュウテリウムもしくはトリウムによる水素原子の置換または13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素原子の置換以外は本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0023】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書で使用される場合、置換または非置換の、直鎖状、分枝状または環状のC1〜12炭化水素であって、完全に飽和しているかまたは1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではないものを意味する。例えば、適切な脂肪族基としては、置換または非置換の、直鎖状、分枝状または環状の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびそれらのハイブリッド(例えば、(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニル)が挙げられる。
【0024】
用語「脂環式」は、単独またはより大きな部分の一部として使用される場合、3員〜約14員を有し、飽和しているかまたは一部が不飽和の環式脂肪族環系であって、環式脂肪族環系が必要に応じて置換されているものをいう。一部の実施形態において、脂環式は、3個〜8個または3個〜6個の環炭素原子を有する単環式炭化水素である。非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロへプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニルおよびシクロオクタジエニルが挙げられる。一部の実施形態において、脂環式は、6個〜12個、6個〜10個または6個〜8個の環炭素原子を有する架橋または縮合した二環式炭化水素であり、この二環式環系中のいずれの個々の環も3員〜8員を有している。
【0025】
一部の実施形態において、脂環式環上の2つの隣接する置換基は、間にある環原子と一緒になって、O、NおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、縮合した5員〜6員の芳香族環または3員〜8員の非芳香族環を形成する。したがって、用語「脂環式」は、1つ以上のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環と縮合している脂肪族環を包含する。非限定的な例としては、ラジカルまたは結合点が脂肪族環上にある、インダニル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルが挙げられる。用語「脂環式」は、用語「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」または「炭素環式」と相互交換可能に使用され得る。
【0026】
用語「アリール」および「アラ−、アリ−(ar−)」は、単独またはより大きな部分(例えば、「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」)の一部として使用される場合、1個〜3個の環を含むC〜C14の芳香族炭化水素であって、各環が必要に応じて置換されているものをいう。好ましくは、アリール基は、C6〜10アリール基である。アリール基としては、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、アリール環上の2つの隣接する置換基は、間にある環原子と一緒になって、O、NおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、縮合した5員〜6員の芳香族環または4員〜8員の非芳香族環を形成する。したがって、用語「アリール」は、本明細書で使用される場合、芳香族環が1つ以上のヘテロアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環と縮合しており、ラジカルまたは結合点が芳香族環上にある基を包含する。このような縮合環系の非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、フルオレニル、インダニル、フェナントリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、フェノキサジニル、ベンゾジオキサニルおよびベンゾジオキソリルが挙げられる。アリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得、好ましくは、単環式、二環式または三環式であり、より好ましくは、単環式または二環式である。用語「アリール」は、用語「アリール基」、「アリール部分」および「アリール環」と相互交換可能に用いられ得る。
【0027】
「アラルキル」基または「アリールアルキル」基は、アルキル基と共有結合しているアリール基を含み、これらは各々独立して、必要に応じて置換されている。好ましくは、アラルキル基は、C6〜10アリール(C1〜6)アルキル、C6〜10アリール(C1〜4)アルキルまたはC6〜10アリール(C1〜3)アルキルであり、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルを含むが、これらに限定されない。
【0028】
用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ−、ヘテロアリ−(heteroar−)」は、単独またはより大きな部分(例えば、ヘテロアラルキルまたは「ヘテロアラルコキシ」)の一部として使用される場合、5個〜14個の環原子、好ましくは、5個、6個、9個または10個の環原子を有し;環状配置(cyclic array)で共有される6π、10πまたは14πの電子を有し;かつ、炭素原子に加え、1個〜4個のヘテロ原子を有する基をいう。用語「ヘテロ原子」は、窒素、酸素または硫黄をいい、窒素または硫黄のあらゆる酸化形態および塩基性窒素のあらゆる四級化形態を包含する。ヘテロアリール基としては、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、ヘテロアリール上の2つの隣接する置換基は、間にある環原子と一緒になって、O、NおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、縮合した5員〜6員の芳香族環または4員〜8員の非芳香族環を形成する。したがって、用語「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ−、ヘテロアリ−(heteroar−)」は、本明細書で使用される場合、芳香族複素環式環が、1つ以上のアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環に縮合している基であって、ラジカルまたは結合点が芳香族複素環式環上にあるものも包含する。非限定的な例としては、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得、好ましくは、単環式、二環式または三環式であり、より好ましくは、単環式または二環式である。用語「ヘテロアリール」は、用語「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「芳香族複素環式」と、相互交換可能に使用され得、いずれの用語も、必要に応じて置換されている環を包含する。用語「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリールにより置換されているアルキル基であって、アルキル部分およびヘテロアリール部分が、独立して、必要に応じて置換されているものをいう。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」は相互交換可能に使用され、飽和しているか一部が不飽和の、安定な3員〜7員の単環式複素環部分、または縮合した7員〜10員の二環式複素環部分もしくは架橋した6員〜10員の二環式複素環部分をいい、炭素原子に加え、1つ以上(好ましくは、1個〜4個)の上記で規定される通りのヘテロ原子を有するものをいう。複素環の環原子に関して使用される場合、用語「窒素」は、置換された窒素を包含する。一例として、酸素、硫黄または窒素から選択される1個〜3個のヘテロ原子を有する複素環式環において、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおいてのように)、NH(ピロリジニルにおいてのように)またはNR(N−置換ピロリジニルにおいてのように)であり得る。複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子にてそのペンダント基に結合され得、いずれの環原子も必要に応じて置換され得る。そのような飽和しているかまたは一部が不飽和の複素環式ラジカルの例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
一部の実施形態において、複素環式環上の2つの隣接する置換基は、間にある環原子と一緒になって、O、NおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、縮合した5員〜6員の芳香族環または3員〜8員の非芳香族環を形成する。したがって、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」および「複素環式ラジカル」は、本明細書において相互交換可能に使用され、ヘテロシクリル環が1個以上のアリール、ヘテロアリールまたは脂環式環と縮合している基(例えば、インドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニル)であって、ラジカルまたは結合点がヘテロシクリル環上にあるものを包含する。複素環式基は、単環式、二環式、三環式または多環式であり得、好ましくは、単環式、二環式または三環式であり、より好ましくは、単環式または二環式である。用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ヘテロシクリルにより置換されているアルキル基であって、アルキル部分およびヘテロシクリル部分が、独立して、必要に応じて置換されている基を包含する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「一部が不飽和の」は、環原子同士の間に少なくとも1つの二重結合または三重結合を含む環部分をいう。この用語「一部が不飽和の」は、複数の不飽和部位を有する環を包含することが意図されているが、本明細書において規定されるようなアリール部分またはヘテロアリール部分を包含することは意図されていない。
【0032】
用語「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」は、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であって、場合により、1つ以上のハロゲン原子で置換されているものをいう。本明細書で使用される場合、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、F、Cl、BrまたはIを意味する。用語「フルオロ脂肪族」は、ハロゲンがフルオロであるハロ脂肪族をいう。
【0033】
用語「アルキレン」は、二価のアルキル基をいう。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基(すなわち、−(CH−であり、ここで、nは、正の整数であり、好ましくは、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2または2〜3である)である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。適切な置換基は、置換脂肪族基について以下に記載される置換基を包含する。アルキレン鎖はまた、脂肪族基または置換脂肪族基で1つ以上の位置にて置換され得る。
【0034】
用語「置換(されている)」は、本明細書で使用される場合、指定された部分の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルで置換されているがただし、この置換が、安定な化合物または化学的に実施可能な化合物を生ずることを意味する。語句「1つ以上の置換基」は、本明細書で使用される場合、1から利用可能な結合部位の数に基づいて可能な置換基の最大数までに等しい数の置換基であるがただし、安定性および化学的実施可能性の上記の条件は満たされているものをいう。他に指摘のない限り、必要に応じて置換されている基は、その基の各置換可能な位置に置換基を有し得、それら置換基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどのアリール部分を含む)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルコキシなどのヘテロアリール部分を含む)基は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適した置換基の例としては、−ハロ、−NO、−CN、−R、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−O−CO、−OC(O)N(R、−O−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、−C(=NR)−N(R、−C(=NR)−OR、−N(R)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−NRSO、−NRSON(R、−P(O)(R、−P(O)(OR、−O−P(O)−OR、および−P(O)(NR)−N(Rが挙げられるか、または、2つの隣接する置換基は、それらを間にある原子と一緒になって、N、OおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環原子を有し、5員〜6員の不飽和または一部が不飽和の環を形成する。
【0036】
アリール(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルなどのアリール部分を含む)基またはヘテロアリール(ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルコキシなどのヘテロアリール部分を含む)基は、1つ以上の置換基を含み得る。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子上の適した置換基の例としては、−ハロ、−NO、−CN、−R、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−O−CO、−OC(O)N(R、−O−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、−C(=NR)−N(R、−C(=NR)−OR、−N(R)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−NRSO、−NRSON(R、−P(O)(R、−P(O)(OR、−O−P(O)−OR、および−P(O)(NR)−N(Rが挙げられるか、または、2つの隣接する置換基は、それらを間にある原子と一緒になって、N、OおよびSからなる群より選択される0個〜3個の環原子を有し、5員〜6員の不飽和または一部が不飽和の環を形成する。
【0037】
は、各々独立して、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、あるいは、同じ窒素原子上の2つのRがその窒素原子と一緒になって、当該窒素原子に加え、N、OおよびSから選択される0個〜2個の環ヘテロ原子を有する、5員〜8員の芳香族環または非芳香族環を形成する。Rは、各々独立して、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基である。Rは、各々必要に応じて置換されている、脂肪族基またはアリール基である。
【0038】
脂肪族基または非芳香族複素環式環は、1つ以上の置換基で置換され得る。脂肪族基または非芳香族複素環式環の飽和炭素上の適した置換基の例としては、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素について上記に列挙されるもの、および以下の置換基が挙げられるが、これらに限定されない:=O、=S、=C(R、=N−N(R、=N−OR、=N−NHC(O)R、=N−NHCO、=N−NHSO、または=N−R、ここで、各Rおよび各Rは、上記に規定する通りである。
【0039】
非芳香族複素環式環の窒素原子上の適した置換基としては、以下の置換基が挙げられる:−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(R、および−NRSO、ここで、各Rは、上記に規定する通りである。
【0040】
式(I)の化合物は、オーロラキナーゼのインヒビターである。これらの化合物は、オーロラキナーゼに結合する能力および/またはオーロラキナーゼを阻害する能力について、インビトロまたはインビボでアッセイされ得る。インビトロアッセイとしては、オーロラキナーゼの基質タンパク質または基質ペプチドのリン酸化能力の阻害を決定するためのアッセイが挙げられる。代替的なインビトロアッセイは、上記化合物のオーロラキナーゼ結合能力を定量する。インヒビターの結合は、結合前にインヒビターを放射標識し、インヒビター/オーロラキナーゼ複合体を単離し、結合した放射標識の量を決定することにより測定され得る。あるいは、インヒビターの結合は、公知の放射性リガンドに結合したオーロラキナーゼと共に新規インヒビターをインキュベートする競合試験を実施することにより決定され得る。本発明の化合物は、オーロラキナーゼ活性により媒介される細胞機能または生理機能に影響を及ぼす能力についてもアッセイされ得る。これらの活性の各々についてのアッセイは、実施例に記載され、かつ/または、当該技術分野において公知である。
【0041】
したがって、別の局面において、本発明は、細胞におけるオーロラキナーゼ活性を阻害するための方法であって、オーロラキナーゼの阻害が所望される細胞を、式(I)のオーロラキナーゼインヒビターまたは薬学的に受容可能なその塩と接触させる工程を包含する方法を提供する。
【0042】
好ましくは、本発明のこの局面に従う方法は、接触させた細胞の細胞増殖の阻害を引き起こす。語句「細胞増殖を阻害する」は、オーロラキナーゼのインヒビターと接触させていない細胞と比較した場合の、接触させた細胞における細胞数または細胞増殖を阻害する、このインヒビターの能力を示すために用いられる。細胞増殖評価は、細胞カウンタを用いて細胞を数えることにより、または細胞生存率アッセイ(例えば、BrdUアッセイ、MTTアッセイ、XTTアッセイまたはWSTアッセイ)によりなされ得る。細胞が固形増殖物(例えば、固形腫瘍または固形臓器)中にある場合、そのような細胞増殖評価は、その増殖物を(例えば、カリパスを用いて)測定し、接触させた細胞の増殖物のサイズを接触させていない細胞のものと比較することによりなされ得る。
【0043】
好ましくは、上記インヒビターと接触させた細胞の増殖は、接触させていない細胞の増殖と比較して、少なくとも約50%遅れる。種々の実施形態において、接触させた細胞の細胞増殖は、接触させていない細胞と比較して、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%阻害される。一部の実施形態において、語句「細胞増殖を阻害する」は、接触させていない細胞と比較した場合の、接触させた細胞の数の減少を包含する。したがって、接触させた細胞における細胞増殖を阻害するオーロラキナーゼのインヒビターは、接触させた細胞が増殖遅延、増殖停止、プログラム細胞死(すなわち、アポトーシス)または壊死性細胞死を受けるのを誘発し得る。
【0044】
本発明者らは、環Cのカルボン酸置換基に対してオルト位にあるメトキシ置換基および環Bの非水素置換基Rにより特徴付けられる式(I)の化合物が、構造的に類似する化合物と比較した場合に、細胞に基づくアッセイにおいて驚くべき効力を示すことを見出した。
【0045】
例えば、表2は、Claiborneらによる国際特許公開第05/111039号に開示される化合物i、iiおよびiiiと化合物1との比較を示している。化合物1および化合物i〜iiiは、以下の3つの細胞アッセイにおいて試験された:(1)pT288オーロラA自己リン酸化アッセイ;(2)HCT116細胞におけるBrdU細胞増殖アッセイ;および(3)SW480細胞におけるBrdU細胞増殖アッセイ。これらのアッセイについてのプロトコルは、当該技術分野において公知であり、実施例6に記載されている。化合物iおよびiiは、3つのアッセイ全てにおいて非常に類似した効力を示した。このことは、環Cのカルボン酸置換基に対してオルト位でのメトキシ置換基の付加が、細胞効力に対する効果をほとんど、全く有さないことを示唆している。それに対し、化合物iiiは、化合物iiと比較した場合に、3つのアッセイ全てにおいて格別に向上した効力を示した。このことは、環Bにおけるさらなる置換基が、効力を改善することを示唆している。これらのデータを考慮すると、化合物1は化合物iおよびiiよりも効力があるという事実は、予期せぬことではなかった。しかしながら、驚くことに、化合物1は、化合物iiiと比較しても、2倍〜4倍の顕著な効力の向上を示す。これらのデータが示すように、カルボン酸置換基に対してオルト位にあるメトキシ置換基と、環Bの非水素置換基Rとの組み合わせは、予期せぬ効力の向上を提供する。
【0046】
【表2】

【0047】
マウスHCT116ヒト結腸癌異種移植モデルにおいて立証されるように(実施例7を参照されたい)、化合物1は、インビボにおいても化合物iiiより効力がある。式(I)の化合物の改善されたインビボ効力は、目的外の副作用に関して改善された治療指数をもたらすものと期待される。
【0048】
したがって、別の局面において、本発明は、式(I)の化合物または薬学的に受容可能なその塩および薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0049】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩がこれらの組成物において利用される場合、この塩は、無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基に由来することが好ましい。適切な塩の概説については、例えば、Berge et al.,J.Pharm.Sci.66:1−19(1977)およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,ed.A.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000を参照されたい。
【0050】
適切な酸付加塩の非限定的な例としては、以下が挙げられる:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(lucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチン酸塩(pectinate)、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラートおよびウンデカン酸塩。
【0051】
適切な塩基付加塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミンおよびコリン)との塩およびアミノ酸(例えば、アルギニン、リジンなど)との塩が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、式(1)の化合物は、対応するナトリウム塩として処方され得る。
【0052】
また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルおよびヨウ化ブチル);硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル);長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ミリスチル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ミリスチルおよびヨウ化ステアリル);アラルキルハロゲン化物(例えば、臭化ベンジルおよび臭化フェネチル)などといった因子で四級化され得、それにより、水溶性生成物もしくは油溶性生成物または分散性生成物が得られる。
【0053】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、本明細書において、レシピエント被験体(好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト)と適合性があり、活性因子の活性を終わらせることなくこの因子を標的部位に送達するのに適した物質を指して使用される。キャリアに関連する毒性または有害な作用は、もしあれば、上記活性因子の意図される使用についての合理的なリスク/便益比に相応であることが望ましい。
【0054】
用語「キャリア」、「アジュバント」または「ビヒクル」は、本明細書において相互交換可能に使用され、所望される特定の投薬形態に適するような、あらゆる全ての溶媒、希釈剤および他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを包含する。Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.ed.A.Gennaro,Lippincott Williams & Wilkins,2000は、薬学的に受容可能な組成物を処方する際に使用される種々のキャリアおよびその調製のための公知技術を開示している。何らかの従来のキャリア媒体が本発明の化合物と(例えば、何らかの望ましくない生物学的効果を生じるか、またはそうでなければ薬学的に受容可能な組成物の他のいずれかの成分と有害な様式で相互作用することにより)不適合である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であることが企図される。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る物質の一部の例としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム)、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、発熱物質非含有水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウムおよび亜鉛塩)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、糖(例えば、ラクトース、グルコース、スクロース、デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン)、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース))、粉末化トラガカント;麦芽、ゼラチン、滑石、賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤蝋)、油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、グリコール(例えば、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール)、エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル)、寒天、アルギン酸、等張生理食塩水、リンゲル液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサデシルアルコールおよびグリセロール)、シクロデキストリン、滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)、石油炭化水素(例えば、鉱油およびペトロラタム)が挙げられるが、これらに限定されない。着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤(perfuming agent)、保存剤および酸化防止剤もまた、処方者の判断に従い、組成物内に存在し得る。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、当該技術分野において周知の方法(例えば、とりわけ、従来の顆粒化プロセス、混合プロセス、溶解プロセス、カプセル化プロセス、凍結乾燥プロセスまたは乳化プロセス)により製造され得る。組成物は多様な形態(顆粒剤、沈殿物、粒状物、散剤(凍結乾燥散剤、回転乾燥散剤または噴霧乾燥散剤を含む)、非結晶性粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注入剤、エマルジョン、エリキシル剤、懸濁剤または液剤を含む)で生成され得る。処方物は、所望される特定の投与形態に適するような、溶媒、希釈剤および他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、pH調節剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、安定剤および保存剤、固体結合剤、滑沢剤などを、必要に応じて含み得る。
【0056】
好ましい実施形態に従い、本発明の組成物は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)への薬学的投与のために処方される。本発明のこのような薬学的組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーにより、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、経頬的に、経膣的に、または移植されたレザバーを介して投与され得る。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄膜内、肝臓内、病巣内および頭蓋内への注射技術または注入技術を包含する。好ましくは、上記組成物は、経口的に、静脈内に、または皮下に投与される。本発明の処方物は、短時間作用性、速放性または長時間作用性であるように設計され得る。さらに、化合物は、全身的手段よりもむしろ局所的手段(例えば、腫瘍部位における投与(例えば、注入による投与))により投与され得る。
【0057】
経口投与用の液体投薬形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性化合物に加え、液体投薬形態は、当該技術分野において一般に用いられている不活性な希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤、および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、シクロデキストリン、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物)を含み得る。不活性な希釈剤に加え、経口組成物は、アジュバント(例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤)、甘味料、矯味矯臭剤および芳香剤も含み得る。
【0058】
注射可能な調製物(例えば、注射可能な水性または油性の無菌懸濁剤)は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知技術に従って処方され得る。注射可能な無菌調製物はまた、非毒性で非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の注射可能な無菌の溶液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)、懸濁液またはエマルジョンであり得る。使用し得る受容可能なビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来使用されている。合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含め、任意の低刺激性の固定油が、この目的のために使用され得る。加えて、脂肪酸(例えば、オレイン酸)が、注射可能物の調製に用いられる。注射可能処方物は、例えば、細菌捕獲フィルターを通した濾過により、または使用前に無菌水もしくは他の注射可能な無菌媒体に溶解もしくは分散させ得る無菌の固体組成物の形態に滅菌剤を組み込むことにより、滅菌され得る。非経口投与のために処方される組成物は、ボーラス注射またはタイムドプッシュ(timed push)により注射されるか、持続注入により投与され得る。
【0059】
本発明の化合物の効果を延長するために、多くの場合、皮下注射または筋肉内注射からの本化合物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶性または非結晶性物質の懸濁液の使用により達成され得る。その際の本化合物の吸収速度は、本化合物の溶解速度に依存し、次に、その溶解速度は、結晶の大きさおよび結晶の形態に依存し得る。あるいは、非経口投与される化合物形態の遅延吸収は、油性ビヒクル中に本化合物を溶解させるかまたは懸濁させることにより達成される。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド乳酸−ポリグリコリド)中に化合物のマイクロカプセルマトリクスを形成することにより作られる。化合物とポリマーとの比率および使用されるその特定のポリマーの性質に依存して、化合物の放出速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポー処方物は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に本化合物を封入することによっても調製される。
【0060】
経直腸または経膣投与のための組成物は、好ましくは、周囲温度で固体であるが体温では液体であるため直腸または膣腔内で溶けて活性化合物を放出する適切な非刺激性の賦形剤またはキャリア(例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤蝋)を、本発明の化合物と混合することにより調製され得る坐剤である。
【0061】
経口投与のための固体投薬形態としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤が挙げられる。このような固体投薬形態において、活性化合物は、少なくとも一種の不活性な、薬学的に受容可能な賦形剤もしくはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)、ならびに/または、a)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)、b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシア)、c)保湿剤(例えば、グリセロール)、d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム)、e)溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、f)吸収促進剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート、h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイト粘土)およびi)滑沢剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物)と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、これらの投薬形態は、緩衝剤(例えば、ホスフェートまたはカルボネート)も含み得る。
【0062】
同様なタイプの固体組成物を、賦形剤(例えば、ラクトースまたは乳糖)、および高分子量のポリエチレングリコールなどを用いる軟充填ゼラチンカプセル剤および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用し得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤といった固体投薬形態は、コーティングおよび外皮(shell)(例えば、腸溶コーティングおよび製剤処方の技術分野において周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。これらは、必要に応じて不透明化剤を含み得、また、腸管の特定の部分にのみ、または腸管の特定の部分に優先的に、必要に応じて遅延させる様式で、有効成分を放出する組成のものであり得る。使用し得る包埋組成物の例としては、重合体物質および蝋が挙げられる。同様なタイプの固体組成物を、賦形剤(例えば、ラクトースまたは乳糖)、および高分子量のポリエチレングリコールなどを用いる軟充填ゼラチンカプセル剤および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として使用し得る。
【0063】
本活性化合物はまた、一種以上の上述の賦形剤を含むマイクロカプセル化形態であり得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤といった固体投薬形態は、コーティングおよび外皮(例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび製剤処方の技術分野において周知の他のコーティング)を用いて調製され得る。このような固体投薬形態において、本活性化合物は、少なくとも一種の不活性な希釈剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプン)と混合され得る。このような投薬形態はまた、通常行われているように、不活性な希釈剤以外のさらなる物質(例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化助剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、および微結晶性セルロース))を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、これらの投薬形態は、緩衝剤も含み得る。これらは、必要に応じて不透明化剤を含み得、また、腸管の特定の部分にのみ、または腸管の特定の部分に優先的に、必要に応じて遅延させる様式で、有効成分を放出する組成のものであり得る。使用し得る包埋組成物の例としては、重合体物質および蝋が挙げられる。
【0064】
本発明の化合物の局所投与または経皮投与のための投薬形態としては、軟膏、泥膏、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。本活性化合物は、薬学的に受容可能なキャリア、および必要に応じ、任意の必要とされる保存剤または緩衝剤と、無菌条件下で混合される。眼用処方物、点耳剤および点眼剤もまた、本発明の範囲内にあるものとして企図される。さらに、本発明は、化合物の身体への制御送達を提供するというさらなる利点を有する経皮パッチの使用を企図している。そのような投薬形態は、適切な媒体に化合物を溶解または調合することにより作製され得る。吸収エンハンサーもまた、皮膚を横切る化合物の流れを増大させるために使用され得る。その速度は、速度制御膜を提供するか、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させることにより制御され得る。
【0065】
本発明の薬学的組成物は、特に、オーロラキナーゼ媒介性障害に関する治療用途において有用である。本明細書で使用される場合、用語「オーロラキナーゼ媒介性障害」は、オーロラキナーゼの発現もしくは活性の増大により引き起こされるかもしくは特徴付けられるあらゆる障害、疾患もしくは状態、またはオーロラキナーゼ活性を必要とするあらゆる障害、疾患もしくは状態を包含する。用語「オーロラキナーゼ媒介性障害」はまた、オーロラキナーゼ活性の阻害が有益であるあらゆる障害、疾患または状態を包含する。オーロラキナーゼ媒介性障害は、増殖性障害を包含する。増殖性障害の非限定的な例としては、慢性の炎症性増殖性障害(例えば、乾癬および関節リウマチ);増殖性眼障害(例えば、糖尿病網膜症);良性増殖性障害(例えば、血管腫);および癌が挙げられる。
【0066】
好ましくは、本組成物は、オーロラキナーゼ媒介性障害に罹患している患者またはオーロラキナーゼ媒介性障害を発病するかもしくは再発を経験する恐れのある患者に投与するために処方される。用語「患者」は、本明細書で用いられる場合、動物を意味し、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。本発明の好ましい薬学的組成物は、経口投与、静脈内投与または皮下投与のために処方されるものである。しかしながら、治療有効量の本発明の化合物を含む上記投薬形態は、いずれも十分に慣例実験の範囲内にあり、したがって、十分に本発明の範囲内にある。一部の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、他の治療因子を更に含み得る。好ましくは、そのような他の治療因子は、上記疾患または状態の処置を受けている患者に通常投与される治療因子である。
【0067】
「治療有効量」は、オーロラキナーゼ活性の検出可能な低下またはオーロラキナーゼ媒介性障害の重篤度の検出可能な低下を引き起こすのに十分な量を意味する。必要とされるオーロラキナーゼインヒビターの量は、所与の細胞型に対するインヒビターの有効性および障害を処置するのに必要とされる時間の長さに依存する。任意の特定の患者に対する特定の投薬量および処置レジメンは、種々の要因(使用される特定の化合物の活性、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別および食餌、投与時間、排出率、薬物の組合わせ、処置医の判断、ならびに処置しているその特定の疾患の重篤度を含む)に依存することも理解されるべきである。本発明の組成物中に存在するさらなる治療因子の量は、典型的には、唯一の活性薬剤としてその治療因子を含む組成物中で通常投与される量以下である。好ましくは、さらなる治療因子の量は、唯一の治療活性な薬剤としてその薬を含む組成物中に通常存在する量の約50%から約100%の範囲である。
【0068】
本発明の組成物は、投与を容易にし、かつ投薬量を均一にするために、単位投薬形態で処方され得る。「単位投薬形態」との表現は、本明細書で使用される場合、処置されようとする患者に適した物理的に別個の薬剤の単位をいう。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日の全使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるものと理解される。非経口投与のための単位投薬形態は、アンプル中または複数回用量容器中であり得る。
【0069】
別の局面において、本発明は、オーロラキナーゼ媒介性障害に罹患している患者またはオーロラキナーゼ媒介性障害を発病するかもしくは再発を経験する恐れのある患者を処置するための方法を提供する。本方法は、本発明に従う化合物または薬学的組成物を上記患者に投与する工程を包含する。本発明の化合物および薬学的組成物は、上記で検討したように、例えば、増殖性障害の患者において、有益な治療効果または予防効果を達成するために使用され得る。本発明の化合物および薬学的組成物は、癌の処置に特に有用である。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「癌」は、無制御もしくは無統制な細胞増殖、減少した細胞分化、周囲組織を侵す不適切な能力、および/または、異所部位において新たな増殖物を確立する能力により特徴付けられる細胞障害をいう。用語「癌」は、固形腫瘍および血液によって運ばれる腫瘍を包含するが、これらに限定されない。用語「癌」は、皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液および脈管の疾患を包含する。用語「癌」は、原発性癌および転移性癌をさらに包含する。
【0071】
本発明の方法により処置され得る固形腫瘍の非限定的な例としては、膵臓癌;膀胱癌;結腸直腸癌、乳癌(転移性乳癌を含む);前立腺癌(アンドロゲン依存性前立腺癌およびアンドロゲン非依存性前立腺癌を含む);腎臓癌(例えば、転移性腎細胞癌を含む);肝細胞癌;肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、気管支肺胞癌腫(BAC)および肺の腺癌を含む);卵巣癌(例えば、進行性上皮癌および原発性腹膜癌を含む);子宮頸癌;胃癌;食道癌;頭頸部癌(例えば、頭頸部の扁平上皮癌を含む);メラノーマ;神経内分泌癌(転移性神経内分泌腫瘍を含む);脳腫瘍(例えば、神経膠腫、未分化乏突起神経膠腫、成人多形性神経膠芽細胞腫および成人未分化星状膠細胞腫);骨癌;および軟組織肉腫)が挙げられる。
【0072】
一部の他の実施形態において、癌は、血液悪性疾患である。血液悪性疾患の非限定的な例としては、急性骨髄性白血病(AML);慢性骨髄性白血病(CML)(加速期のCML(accelerated CML)およびCMLの急性転化期(CML−BP:CML blast phase)を含む);急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性リンパ性白血病(CLL);ホジキン病(HD);非ホジキンリンパ腫(NHL)(濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫を含む);B細胞リンパ腫;T細胞リンパ腫;多発性骨髄腫(MM);ヴァルデンストレームマクログロブリン血症;骨髄異形成症候群(MDS)(不応性貧血(RA)、環状鉄芽球性不応性貧血(RARS)、芽球増加型不応性貧血(RAEB)および移行期RAEB(RAEB−T:RAEB in transformation)を含む);および骨髄増殖性症候群が挙げられる。
【0073】
一部の実施形態において、本発明の化合物または組成物は、オーロラキナーゼの活性が増幅されている癌を処置するために使用される。一部の実施形態において、本発明の化合物または組成物は、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵臓癌からなる群より選択される癌に罹患している患者またはそのような癌を発病するかもしくは再発を経験する恐れのある患者を処置するために使用される。特定の実施形態において、癌は、乳癌、結腸直腸癌および膵臓癌からなる群より選択される。
【0074】
一部の実施形態において、本発明のオーロラキナーゼインヒビターは、他の治療因子と共に投与される。この他の治療因子はまた、オーロラキナーゼを阻害し得るか、または異なる機序により作用し得る。一部の実施形態において、この他の治療因子は、上記疾患または状態の処置を受けている患者に通常投与される治療因子である。本発明のオーロラキナーゼインヒビターは、単一投薬形態の一部としてか、または別個の投薬形態として、上記他の治療因子と共に投与され得る。別個の投薬形態として投与される場合、上記他の治療因子は、本発明のオーロラキナーゼインヒビターの投与の前に投与されるか、その投与と同時に投与されるか、またはその投与の後に投与され得る。
【0075】
一部の実施形態において、本発明のオーロラキナーゼインヒビターは、細胞毒性薬剤、放射線療法および免疫療法からなる群より選択される治療因子と共に投与される。本発明のオーロラキナーゼインヒビターと共に使用するのに適した細胞毒性薬剤の非限定的な例としては:代謝拮抗物質(例えば、カペシタビン、ゲムシタビン、5−フルオロウラシルまたは5−フルオロウラシル/ロイコボリン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよびメトトレキサートが挙げられる);トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エトポシド、テニポシド、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシンおよびダウノルビシンが挙げられる);ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチンが挙げられる);タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる);白金薬剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンが挙げられる);抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシンC、アドリアマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ドキソルビシンおよびペグ化リポソームドキソルビシンが挙げられる);アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン(decarbazine)およびシクロホスファミド);サリドマイドおよび関連アナログ(例えば、CC−5013およびCC−4047が挙げられる);プロテインチロシンキナーゼインヒビター(例えば、メシル酸イマチニブおよびゲフィチニブが挙げられる);抗体(例えば、トラスツズマブ、リタキシマブ、セツキシマブ(cetuximab)およびベバシズマブ(bevacitumab)が挙げられる);ミトザントロン;デキサメタゾン;プレドニゾン;ならびにテモゾロミドが挙げられる。
【0076】
本発明をより十分に理解するために、以下の調製例および試験例が明記される。これらの実施例は、どのようにして特定の化合物を作製または試験するかを例示しており、決して本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0077】
【表3】

【0078】
融点は、MEL−TEMP IIキャピラリー融点装置を用いて決定されたものであり、未補正である。H NMRスペクトルは、Bruker Avance 400分光計を用いて記録された。質量スペクトルは、Waters ZQ 2000(3.5kVキャピラリー、30Vコーン)分光計を用いて得られた。元素分析は、Atlantic Microlabにより実施された。
【0079】
【化3】

【0080】
(実施例1:4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(1)の調製)
8−クロロ−4−[(ジメチルアミノ)メチレン]−1−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−3,4−ジヒドロ−5H−2−ベンズアゼピン−5−オン(iv)は、Claiborneらによる米国特許公開第2005−256102号に記載される通りに調製され得る。4−{[アミノ(イミノ)メチル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸・HCl(v)は、Sugikiらによる国際特許公開第01/042199号に記載される方法と類似の方法で調製され得る。
【0081】
メタノール(50.0mL)を、攪拌棒(stirbar)および還流凝縮器を備えた100mL丸底フラスコ中のiv(2.39g、6.42mmol)、v(1.77g、7.21mmol)および炭酸カリウム・1.5[HO](2.65g、16.0mmol)に添加した。この反応混合物を、還流にて16時間攪拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、水(450mL)で希釈し、そして1N HClでpH1に酸性化した。ジエチルエーテル(200mL)を加え、この混合物を15分間攪拌した。結果として生じた沈殿物を濾過により回収し、フラッシュシリカゲルクロマトグラフィ(NHOH:MeOH:DCM、0.5:5:94.5〜2:20:78)により精製して黄褐色の固体としてアンモニウム塩を得た。この固体を水(100mL)に懸濁させ、素早く攪拌しながら1NのHClを加えてpH1にした。この混合物を約30分間攪拌し、次いで、ジエチルエーテル(50mL)および酢酸エチル(5mL)を加え、この混合物を室温にて約1時間攪拌した。生成物をフリット漏斗(fritted funnel)(ファイン)上に回収し、水(50mL)およびジエチルエーテル(50mL)で洗浄し、40℃にて真空内で一晩乾燥させて、1.65g(収率50%)の4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(1)を得た。H NMR(DMSO−dTM12.08(s,1H),10.23(s,1H),8.72(s,1H),8.29(d,1H),7.95(br s,1H),7.80(dd,1H),7.70(d,1H),7.4−7.35(m,2H),7.21(br s,1H),6.9(br s,2H),4.9(br s,1H),3.9(br s,1H),3.85(s,3H),3.3(br s,3H);MS m/z 519(M+H,100%)。
【0082】
化合物2〜18を化合物1について記載された方法またはClaiborneらによる国際特許公開第05/111039号に記載される方法と類似の方法により調製した。
【0083】
(実施例2:4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウム多形形態1の調製)
エタノール(2.0L)中の4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸(98.0g、190mmol)の攪拌懸濁液に、水(199mL)中の1.044M水酸化ナトリウムを加えた。結果として生じた均質な溶液を1時間攪拌し、その間に濃い沈殿物が形成された。この生成物を濾過により回収し、エタノール(0.5L)およびジエチルエーテル(1.0L)で洗浄した。結果として生じた固体を60℃〜70℃にて真空内で4日間乾燥させて、融点225℃(分解)の88.6g(86.8%)の4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウムを薄黄褐色の固体として得た。H NMR(DMSO−d)δ9.86(s,1H),8.60(s,1H),8.29(d,1H),7.79(dd,1H),7.60(br s,1H),7.40(dd,1H),7.29(d,1H),7.25−7.15(m,2H),6.9(br s,2H),4.9(br s,1H),3.8(br s,1H),3.70(s,3H),3.35(br s,3H);MS m/z 519(M−Na+H,100%);CHN分析計算値C2719ClFNNaO0.33EtOH1.3HO:C,57.33;H,4.10;N,9.67.実測値:C,57.14;H,3.99;N,9.65。
【0084】
(実施例3:4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウム多形形態2の調製)
4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウム多形形態1(100mg)を、水(0.2mL)およびエタノール(2mL)中に懸濁させ、この混合物を、70℃に加熱しながら6時間攪拌した。この混合物を室温まで冷却し、薄黄色の固体をフリット漏斗上に回収し、70℃にて真空内で3日間乾燥させて、融点265℃の70mgの結晶性多形形態2を得た。H NMR(DMSO−d)δ:9.86(s,1H),8.60(s,1H),8.29(d,1H),7.79(dd,1H),7.60(br s,1H),7.40(dd,1H),7.29(d,1H),7.25−7.15(m,2H),6.9(br s,2H),4.9(br s,1H),3.8(br s,1H),3.70(s,3H),3.35(br s,3H).MS m/z 519(M−Na+H,100%)。
【0085】
(実施例4:プロテインキナーゼ酵素の発現および精製)
(オーロラA酵素の発現および精製)
アミノ末端ヘキサヒスチジンタグを有する組み換えマウスオーロラA(His−オーロラA)を、標準的なバキュロウイルスベクターおよび昆虫細胞発現システム(Bac−to−Bac(登録商標)、Invitrogen)を用いて発現させた。
【0086】
Ni−NTAアガロース(Qiagen)を製造業者により記載される通りに用い、可溶性組み換えマウスオーロラAを昆虫細胞から精製し、S75サイズ排除カラム(Amersham Pharmacia Biotech)で更に精製した。
【0087】
(オーロラB酵素の発現および精製)
アミノ末端ヘキサヒスチジンタグを有する組み換えマウスオーロラB(His−オーロラB)を、標準的なバキュロウイルスベクターおよび昆虫細胞発現システム(Bac−to−Bac(登録商標)、Invitrogen)を用いて発現させた。
【0088】
Ni−NTAアガロース(Qiagen)を製造業者により記載される通りに用い、可溶性組み換えマウスオーロラBを昆虫細胞から精製した。
【0089】
(実施例5:プロテインキナーゼ酵素アッセイ)
(オーロラA DELFIA(登録商標)キナーゼアッセイ)
マウスオーロラA酵素反応物は合計すると25μLになり、25mMのTris−HCl(pH8.5)、2.5mMのMgCl、0.05%Surfact−AMPS−20、5mMのフッ化ナトリウム、5mMのDTT、1mMのATP、3μMのペプチド基質(ビオチン−β−Ala−QTRRKSTGGKAPR−NH)および0.5nMの組み換えマウスオーロラA酵素を含んでいた。この酵素反応混合物を試験化合物と共に、および、この酵素反応混合物を試験化合物なしで、室温にて10分間インキュベートし、その後、100μLの停止緩衝液(1%BSA、0.05%Surfact−AMPS−20および100mMのEDTA)を用いて終了した。合計して100μLのこの酵素反応混合物を、ニュートラビジン(Neutravidin)でコーティングした96ウェルプレート(Pierce)のウェルに移し、30分間室温にてインキュベートした。これらのウェルを、洗浄緩衝液(25mMのTris、150mMの塩化ナトリウムおよび0.1%Tween20)で洗浄し、1%BSA、0.05%Surfact−AMPS−20、抗ホスホ−PKAウサギポリクローナル抗体(1:2000、New England Biolabs)およびユーロピウム標識抗ウサギIgG(1:2000、Perkin Elmer)を含む100μLの抗体反応混合物と共に1時間インキュベートした。これらのウェルを洗浄し、次いで、100μLのEnhancement Solution(Perkin Elmer)を用い、結合しているユーロピウムを遊離させた。ユーロピウムの定量を、WallacTMEnVision(Perkin Elmer)を用いて行った。
【0090】
(オーロラB DELFIA(登録商標)キナーゼアッセイ)
合計25μLになるマウスオーロラB酵素反応物は、25mMのTris−HCl(pH8.5)、2.5mMのMgCl、0.025%Surfact−AMPS−20(Pierce)、1%グリセロール、1mMのDTT、1mMのATP、3μMのペプチド基質(ビオチン−β−Ala−QTRRKSTGGKAPR−NH)および20nMの組み換えマウスオーロラB酵素を含んでいた。この酵素反応混合物を試験化合物と共に、またはこの酵素反応混合物を試験化合物なしで、室温にて3時間インキュベートし、その後、100μLの停止緩衝液(1%BSA、0.05%Surfact−AMPS−20および100mMのEDTA)を用いて終了した。合計して100μLのこの酵素反応混合物を、ニュートラビジンでコーティングした96ウェルプレート(Pierce)のウェルに移し、30分間室温にてインキュベートした。これらのウェルを、洗浄緩衝液(25mMのTris、150mMの塩化ナトリウムおよび0.1%Tween20)で洗浄し、1%BSA、0.05%Surfact−AMPS−20、抗ホスホ−PKAウサギポリクローナル抗体(1:2000、New England Biolabs)およびユーロピウム標識抗ウサギIgG(1:2000、Perkin Elmer)を含む100μLの抗体反応混合物と共に1時間インキュベートした。これらのウェルを洗浄し、次いで、100μLのEnhancement Solution(Perkin Elmer)を用い、結合しているユーロピウムを遊離させた。ユーロピウムの定量を、WallacTMEnVision(Perkin Elmer)を用いて行った。
【0091】
(実施例6:細胞アッセイ)
(pT288オーロラA自己リン酸化アッセイ)
ヒト腫瘍細胞(HCT−116、ATCCから入手)を、10%仔牛血清および200nMのL−グルタミンを補充したMcCoyの5A培地中で96ウェルの皿において増殖させた。インキュベーション後、この増殖培地を75μLの新しい培地と取り換え、25μLの試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中に2倍段階希釈液して細胞に添加して、5μM〜0.010μMの範囲の最終濃度を達成した。各希釈の試験化合物を、皿の横4列に、重複物(replicate)として添加し、DMSO(20nM)を、未処理のコントロールについての縦2列の各ウェルに添加した。これらの細胞を、加湿した細胞培養チャンバにおいて、37℃にて60分間、試験化合物またはDMSOで処理した。次いで、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、PBS中の0.5%Triton X−100を10分間浸透させ、PBSで2回洗浄した。
【0092】
細胞を、ホスホ−オーロラ 2/AIK(T288)ウサギ抗体(1:60)および抗ホスホ−Ser/Thr−Pro,MPM2マウス抗体(1:750)で染色し、続いて、Alexa 488結合ヤギ抗ウサギIgG(1:180)およびAlexa 594結合ニワトリ抗マウスIgG(1:180;Molecular Probes)で染色した。次いで、これらの細胞を、Alexa 488結合ニワトリ抗ヤギIgG(1:180、Molecular Probes)およびHoechst(1:50,000)で染色した。細胞を、Discovery−1 High Content Imaging Systemを用いて可視化した。1ウェル当たり9箇所〜16箇所の画像を、倍率200倍にて獲得した。オーロラAの阻害は、Metamorphソフトウェアを用い、MPM2免疫陽性の(有糸分裂)細胞内のpT288(オーロラA自己リン酸化)蛍光強度を測定することにより決定された。DMSOで処理したコントロールに対する試験化合物で処理した試料におけるpT288の蛍光強度の減少を計算することにより濃度反応曲線を生成し、それらの曲線から増殖阻害(IC50)値を決定した。
【0093】
このアッセイにおいて、化合物1〜28は全て、0.03μM以下のIC50値を示した。このアッセイにおいて、化合物1〜8は、0.01μM以下のIC50値を示した。
【0094】
(BrdU細胞増殖アッセイ)
細胞増殖酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン(BrdU)比色キットを製造業者の推奨に従って用い、各細胞株の細胞増殖を測定した。このアッセイは、複製中のデオキシリボ核酸(DNA)へのBrdUの取り込みを定量することにより、細胞増殖を測定する。簡潔に述べると、各ウェルを、加湿した細胞培養チャンバにおいて、10μLのBrdU標識試薬と共に、37℃にて2時間インキュベートした。標識媒体の吸引後、200μLのエタノールを各ウェルに添加することによりこれらの細胞を固定し、変性させ、室温にて30分間インキュベートした。このエタノールを吸引し、100μLのペルオキシダーゼ結合抗BrdU抗体(抗BrdU−POD;抗体希釈緩衝液中1:100)をこれらの細胞に添加した。これらの細胞を、室温にて90分間、上記抗体と共にインキュベートした。次いで、これらの細胞を、1ウェル当たり250μLの洗浄緩衝液で3回洗浄し、100μLのテトラメチル−ベンジジンを、各ウェルに添加した。これらの細胞を、分光光度分析の前に、室温にて15分〜30分間インキュベートした。
【0095】
SpectraMax Plus 384プレートリーダー(Molecular Devices,Sunny Vale CA)を用いて、370nmにおける各ウェルの吸光度を測定した。DMSOで処理したコントロールに対する試験化合物で処理した試料における光学密度の減少を計算することにより濃度反応曲線を生成した。
【0096】
HCT116細胞におけるこのアッセイにおいて、化合物1〜18は全て、0.1μM以下のLD50値を示した。SW480細胞におけるこのアッセイにおいて、化合物1〜3、5、7〜14、17および18は全て、1.0μM以下のLD50値を示した。化合物4および6は、試験されなかった。
【0097】
(実施例7:インビボアッセイ)
(インビボ腫瘍有効性モデル)
McCoyの5A培地中のHCT−116(1×10)細胞を、23ゲージ針を用い、雌CD−1ヌードマウス(8週齢、Charles River)の右背面脇腹の皮下腔に無菌で注射した。腫瘍体積を、標準的な手順(0.5×(長さ×幅))を用いて計算した。腫瘍が約200mmの体積に達したときに、10%HPbCD+1%NaHCOのビヒクル中の種々の用量の化合物1または化合物iiiを、経口によりマウスに投薬した。用量(0.1mL)を、22ゲージの経口胃管栄養補給針を介して投与した。コントロール動物には、ビヒクルのみを与えた。動物に21日間、1日1回投薬し、各グループ10匹の動物とした。腫瘍の大きさおよび体重を、週に2回測定した。化合物1および化合物iiiは、本研究における全ての用量において、十分に許容された。各用量において、化合物1は、化合物iiiよりも長い腫瘍増殖遅延[TGD=(処置動物が1000mmの平均腫瘍体積に達するための時間)−(コントロール動物が1000mmの平均腫瘍体積に達するための時間)]を生じ、化合物iiiよりも大きな腫瘍増殖阻害[TGI=(コントロール動物の平均腫瘍体積−処置動物の平均腫瘍体積)*100/(コントロール動物の平均腫瘍体積)]を生じた。
【0098】
上述の発明は、明確性および理解を目的としていくらか詳細に記載されたものであり、これらの特定の実施形態は、限定するものではなく、例示するものとして見なされるべきである。本開示を読むことにより、特定の実施形態によってではなく添付の特許請求の範囲により規定される本発明の真の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更がなされ得ることを、当業者は理解する。
【0099】
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立している。他に規定のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野における通常の技術を有する者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において引用される発行された特許、出願および参考文献は、各々、参考として援用されるべきものとして具体的かつ個別的に指摘される場合と同程度に、本明細書により参考として援用される。不一致のある場合は、本開示(定義を含む)が優先する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化4】


の化合物、または薬学的に受容可能なその塩であって、ここで:
は、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−R、−T−R、−Rおよび−T−Rからなる群より選択され;
Tは、フルオロで必要に応じて置換されているC1〜3アルキレン鎖であり;
は、必要に応じて置換されている、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロシクリル基であり;
は、ハロ、−C≡C−R、−CH=CH−R、−N(Rおよび−ORからなる群より選択され;
は、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり;
は、各々独立して、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか;あるいは、同じ窒素原子上の2つのRが、該窒素原子と一緒になって、該窒素原子に加えてN、OおよびSより選択される0個〜2個の環ヘテロ原子を有し、必要に応じて置換されている、5員〜6員のヘテロアリール環または4員〜8員のヘテロシクリル環を形成し;
は、水素、または必要に応じて置換されている、脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であり;そして
は、フルオロ、クロロ、−CH、−CF、−OH、−OCH、−OCF、−OCHCHおよび−OCHCFからなる群より選択される、
化合物、または薬学的に受容可能なその塩。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、ハロ、C1〜3脂肪族およびC1〜3フルオロ脂肪族からなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換されている、5員または6員のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、Rが、ハロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OH、−O(C1〜3脂肪族)、−O(C1〜3フルオロ脂肪族)、−C≡C−Rまたは−CH=CH−Rであり、ここで、Rは、水素、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族または−CH−OCHであるか;あるいは、Rが、ハロ、C1〜3脂肪族およびC1〜3フルオロ脂肪族からなる群より独立して選択される1個または2個の置換基で必要に応じて置換されている、フェニル環、フリル環、ピロリジニル環またはチエニル環である、化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、Rが、クロロ、フルオロ、C1〜3脂肪族、C1〜3フルオロ脂肪族、−OCH、−OCF、−C≡C−H、−C≡C−CH、−C≡C−CHOCH、−CH=CH、−CH=CHCH、N−メチルピロリジニル、チエニル、メチルチエニル、フリル、メチルフリル、フェニル、フルオロフェニルおよびトリルからなる群より選択される、化合物。
【請求項5】
化合物4−{[9−エチニル−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸、または薬学的に受容可能なその塩。
【請求項6】
化合物4−{[7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−9−(1−メチル−1H−ピロール−2−イル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸、または薬学的に受容可能なその塩。
【請求項7】
化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸、または薬学的に受容可能なその塩。
【請求項8】
化合物4−{[9−クロロ−7−(2−フルオロ−6−メトキシフェニル)−5H−ピリミド[5,4−d][2]ベンズアゼピン−2−イル]アミノ}−2−メトキシ安息香酸ナトリウム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項10】
細胞におけるオーロラキナーゼ活性を阻害するための方法であって、オーロラキナーゼの阻害が所望される細胞を、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記オーロラキナーゼが、オーロラAキナーゼである、方法。
【請求項12】
オーロラキナーゼ媒介性障害の処置を必要とする患者におけるオーロラキナーゼ媒介性障害を処置するための方法であって、治療有効量の請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記オーロラキナーゼ媒介性障害が、癌である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記癌が、結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、胃癌、前立腺癌および膵臓癌からなる群より選択される、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記癌が、乳癌、結腸直腸癌および膵臓癌からなる群より選択される、方法。

【公表番号】特表2010−510215(P2010−510215A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537199(P2009−537199)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/023948
【国際公開番号】WO2008/063525
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】