説明

有限要素法において8ノード六面体エレメントの剪断ロッキングを低減する方法

【課題】有限要素法において剪断ロッキングを低減するよう構成された、改善8ノード六面体エレメントを提供する。
【解決手段】一の面では、アスペクト比に基づいたスケール係数が、アイソパラメトリック寸法に関して六面体エレメントのアイソパラメトリック形状関数の偏導関数を修正するよう、それぞれ、導入される。修正導関数は、ヤコビアンマトリックスを、したがって歪み割合を、計算するために用いられる。スケール係数は、完全な立方体のソリッドエレメントに対して変化はないが、アスペクト比が悪いエレメントに対しては大きく変化するよう、構成される。他の面では、ローカルヤコビ行列における非対角成分は、擬似的な剪断変形モードと関係する項をキャンセルすることによって直接修正される。この測度は、完全に形成されたエレメントに対しても剪断ロッキング効果を完全に緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、コンピュータ支援工学解析(例えば有限要素法に基づいた解析)に関し、より詳細には、ユーザが工業製品(例えば車、飛行機、部品)の設計の改良に関する判断を行うことを支援するのに用いることができる有限要素法において、剪断ロッキングを低減するよう構成された完全積分型六面体エレメントすなわちブリックエレメントの剪断ロッキングを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有限要素法(FEM)(有限要素解析法(FEA)ともいう)は、積分方程式(integral equations)だけでなく偏微分方程式(partial differential equations:PDE)の近似解をも見つけるための数値的手法である。ソリューション(解法)アプローチは、微分方程式の完全な排除(定常状態問題(steady state problems))、あるいはオイラーの方法やRunge−Kuttaなどの標準手法を用いて数値的に積分される常微分方程式の近似システムへのPDEの表現に基づいている。
【0003】
構造力学をシミュレートする際には、工学構造あるいは工業製品(例えば車、携帯電話、飛行機など)を、ノーダルポイントあるいはノードを通じて互いに接続される1セットの有限要素を用いてモデル化することができる。それぞれの有限要素は、形状と、密度、ヤング率、剛性率およびポアッソン比などの物理的特性と、を有するように構成される。有限要素は、一次元、二次元あるいは三次元とできる。一般に、三次元のエレメントは、ソリッドエレメント(つまり体積を有する有限要素)と呼ばれる。最も一般的なソリッドエレメントのうちの1つは、図1Aに示す8ノードの六面体エレメント100すなわちブリック(レンガ状)エレメントである。8ノードの六面体エレメント100は、8つのコーナーノードを有する第1順位有限要素である。図1Aの8ノードの六面体エレメントの一側面から見た二次元図を図1Bに示す。
【0004】
有限要素結果(例えばエレメント内の応力によって生成されているノードの力)を評価するために、それぞれの六面体エレメントは、数値積分法(例えばガウス−ルジャンドル求積法数値積分法スキーム(Gauss−Legendre quadrature numerical integration scheme))に対して1つ以上の積分点(integration points)を用いて構成される。六面体エレメントの数値積分は、単一のガウス−ルジャンドル積分点を用いて行うことができる。そのようなエレメントを、積分下エレメントあるいはランク不足エレメント(under−integrated or rank deficient element)という(図示せず)。あるいは、六面体エレメント100は、それぞれの空間的方向において2つのガウス−ルジャンドル積分点102、合計8つの点を用いる。そのようなエレメントは、十分な積分(full integration)あるいはランク足りている積分(rank sufficient integration)を持つと言われる。十分な積分は、すべての可能なモードの変形がエレメントに応力を生じさせることを保証する。
【0005】
さらに、有限要素法は、それぞれのエレメントに対して1セットの形状関数Nを用いて、エレメント内のどの場所でも、近似の変位uhを以下の式で構成する。

ここで、uiはノードの変位である。それぞれのノードには3つの並進変位があり、したがって、8ノードの六面体エレメントでは、iは24である(つまり、8つのノードに、それぞれ3つの変位がある)。
【0006】
完全積分型(fully integrated)8ノードの六面体エレメントは、積分点の配置によるある変形モードに対する組み込まれた擬似的剪断強度(built−in artificial shear stiffness)を意味する剪断ロッキング効果と呼ばれるものを受ける。この擬似的な強度は、アスペクト比が悪いエレメント(つまり空間的寸法のうちの1つが他の寸法より相当に大きいエレメント)で、さらに顕著である。例えば、図2Aに示す細長い六面体エレメント200は、アスペクト比が悪い(つまり、1から相当離れている)という。よりわかりやすく積分点202とエレメント200との関係を見るために、エレメントの二次元図を図2Bに示す。アスペクト比は、図2Bにおける2つの辺W212およびH214のそれぞれの長さの比として定義される。三次元においては、3つのアスペクトがあり、それぞれ空間的寸法に対して1つの比がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
時に、工業製品あるいは工学構造のジオメトリによりアスペクト比が悪いソリッドエレメント(例えば薄壁構造)を有する有限要素解析法モデルを生成するほうが有用であることがある。その有用さには、少なくとも以下のものが含まれる。1)モデルを生成しやすい。2)モデルにおけるエレメントの数が少ないので計算がより効率的である。
【0008】
一般に、完全積分型8ノードのソリッドエレメントには、純粋な曲げのシミュレートにおいて、横剪断ロッキング(transverse shear locking)とよばれる数値的な欠陥がある。そして、ソリッドエレメントのアスペクト比が悪い場合、剪断ロッキング効果は増幅される。図3Aは、8ノードのソリッドエレメントの剪断ロッキング効果を示す二次元側面図である。図3Aの略図310は、角柱あるいは長い構造体の現実的な純粋な曲げを示す。一方、図3Bの略図320は、同じ曲げモーメント300のときの、アスペクト比が悪い8ノードのソリッドエレメントを示す。8ノードの六面体エレメントにはノード間の曲率があらわれていないことは明白であろう。したがって、この8ノードの六面体エレメントは、仮定したシミュレートの現実の構造的挙動と比較して、数値的に剛性がありすぎる。完全積分型8ノードのソリッドエレメントに対して、積分点(図2Aの202)は、ソリッドエレメントの質量中心に位置しておらず、そのためこの剪断ロッキング効果が生じる。
【0009】
この剪断ロッキング問題を解決するある従来技術アプローチでは、より高度なエレメントを、例えば20ノードのエレメント(1辺当たり1つのノードを追加(図示せず))を、用いている。しかしながら、より高度なエレメントに伴う計算コストのために、現実世界の製造状況においては実用上使用できない。したがって、有限要素法における剪断ロッキングを低減するよう構成される8ノードの六面体エレメントの改良が望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
有限要素法において剪断ロッキングを低減するよう構成された、改善8ノード六面体エレメントを開示する。完全積分型六面体エレメントが、8つのコーナーノードおよび8つの積分点に対して構成される。
【0011】
本発明の一の面では、アスペクト比に基づいたスケール係数が、アイソパラメトリック寸法に関して8ノード六面体エレメントのアイソパラメトリック形状関数の偏導関数を修正するよう、それぞれ、導入される。修正導関数は、ヤコビマトリックスを、したがって歪み割合(rate−of−strain)を、計算するために用いられる。スケール係数は、完全な立方体のソリッドエレメント(つまりすべての3つの空間的寸法においてアスペクト比が1であるエレメント)に対して変化はないが、アスペクト比が悪いエレメントに対しては大きく変化するよう、構成される。言いかえれば、アスペクト比が悪いエレメントを、アスペクト比に基づいたスケール係数を用いて、完全な立方体のエレメントとの対応関係を定義する(マップする)。
【0012】
その結果、擬似的な数値的横剪断ロッキング効果は、上述したようなアプローチを用いて、有限要素解析法によって得られる構造的応答において、低減される。
【0013】
本発明の他の面では、ローカルヤコビアンマトリックスにおける非対角(対角から外れた)成分は、擬似的な剪断変形モードと関係する項をキャンセルすることによって直接修正される。この測度(measure)は、完全に形成されたエレメント(つまりアスペクト比が1である立方体のエレメント)に対しても擬似的剪断ロッキング効果を完全に緩和する。
【0014】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付した図面を参照し、以下の本発明の実施の形態の詳細な説明を考察することによって明らかとなろう。
【0015】
本発明のこれらおよび他の特徴、面および利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲および添付した図面を考慮してより理解されよう。図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】例示的な8ノードの六面体すなわちソリッドエレメントを示す斜視図である。
【図1B】図1Aのソリッドエレメントの一側面を示す二次元図である。
【図2A】アスペクト比が悪い例示的な8ノードの六面体エレメントを示す斜視図である。
【図2B】図2Aのソリッドエレメントの一側面を示す二次元図である。
【図3A】純粋な曲げモーメント下にある長い構造体の変形形状を示す二次元の側面図である。
【図3B】図3Aの同じ曲げモーメント下にある長い構造体のシミュレートするよう構成された8ノードの六面体エレメントの一側面を示す図である。
【図4A】本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法において用いられる8ノードの六面体エレメントの横剪断ロッキング効果を低減する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図4B】本発明の他の実施形態にかかる、横剪断ロッキング効果を低減する他の例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図5A】本発明の一の実施形態にかかる、8ノードの六面体エレメントの例示的な三次元アイソパラメトリック座標系を示す図である。
【図5B】本発明の一の実施形態にかかる、8ノードの六面体エレメントに対して用いられる種々の座標系を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態を実現可能である演算処理装置の主要な部品を示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図4Aを参照して、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法における8ノードの六面体エレメントの横剪断ロッキング効果を低減する例示的なプロセスを示すフローチャート400を示す。プロセス400は、好ましくはソフトウェアで実行される。有限要素解析法は、工業製品(例えば車、飛行機、構造、家庭用製品)の構造挙動のシミュレートのために用いられ、これにより、有限要素解析法のユーザ(例えば技術者、科学者など)が、製品をいかに改善するかに関してより優れた設計を判断できる。
【0018】
プロセス400は、ステップ402において、有限要素解析法を行なうために構成されたコンピュータシステムにおいて、有限要素解析法(FEA)モデルを定義することによって、スタートする。FEAモデルは、設計すべきあるいは改善すべき工業製品を、例えば自動車、構造、家庭用製品などを、定義する。FEAを用いる時間進行工学シミュレーションは、設計荷重下での工業製品の構造的応答あるいは挙動を評価するために行なわれる。時間進行シミュレーションは、多数の時間ステップあるいはソリューションサイクルを有する。FEAモデルは、少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメント(例えば図1Aおよび図2Aに示すエレメント)を有する。
【0019】
第1実施形態では、ステップ404において、8ノードの六面体エレメントのそれぞれに対して、一つ一つがそれぞれの空間的方向に対応している3つのアスペクト比に基づいたスケール係数が、図5Aに示す8ノードのソリッドエレメント501のアイソパラメトリック(isoparametric)座標系500において計算される。ξ1、ξ2およびξ3は、8ノードのソリッドエレメントを定義するように構成された3つのアイソパラメトリック座標である。アスペクト比に基づいたスケール係数

は、以下のように計算される。
【0020】
【数1】

1,L2およびL3は、それぞれ、3つのアイソパラメトリック方向におけるソリッドエレメントの対応する長さである。図による例示を、図5Aに示す。min(a,b)の結果が「a」あるいは「b」のどちらか小さい方であるので、アスペクト比に基づいたスケール係数は常に1以下である。
【0021】
次に、ステップ406において、アスペクト比に基づいたスケール係数が、ヤコビアンマトリックスの計算において用いられる8ノードのソリッドエレメントのアイソパラメトリック形状関数NIの偏導関数

を修正するよう、以下のように代入される。
【0022】
【数2】

【0023】
そして、導関数

は、擬似的な数値的剪断ロッキング効果を低減するよう、ヤコビアンマトリックスの非対角項の関連する成分を修正するように用いられる。この修正を説明するには、3つの座標系が必要であり、図5Bに示す。わかりやすく例示するために、座標系を二次元(2−D)で示す。当業者には、二次元座標系から三次元座標系に簡単に拡張できることは理解されよう。まず、エレメント512(三次元では8ノードのソリッドエレメントである)を、グローバル座標システム(X−Y)510およびローカル空間的座標系(xL−yL)520に示す。グローバル座標系とローカル座標系との関係は、変換(矢印515として示す)によって表わすことができる。グローバル座標システム510は、一般に、有限要素解析法モデル全体を定義するよう、構成される。ローカル空間的座標系520は、アスペクト比を計算するよう、そして同じく適切にヤコビマトリックスを修正するよう、構成される。ローカル空間的座標系520の原点は、どこに設定してもよい(図5Bではエレメントの中心にある)。
【0024】
エレメント512を、また、アイソパラメトリック座標系(ξ1−ξ2)530において表わすことができる(図5Aのものと同様に)。4つのコーナーノード531〜534のアイソパラメトリック座標は、それぞれ、(1,1)、(1,−1)、(−1,−1)および(−1,1)である。同様に、変換(矢印525として示す)は、アイソパラメトリック座標系530とローカル空間的座標系520との関係を表わす。この変換は次のように表現されたローカルヤコビアンマトリックス

である。
【0025】
【数3】

ここで、

はローカル空間的座標(例えば2−Dにおける(xL,yL))であり、はアイソパラメトリック座標(例えば2−Dにおける(ξ1,ξ2))である。数式3の最後の表現は、数式2を用いることによって得られる。
【0026】
図4Bに示す第2実施形態において、本発明は、ローカルヤコビアンマトリックスの関連する非対角成分を0に設定することによって、擬似的な剪断ロッキング効果を解消するという目的を達成する。成分形式において、ローカルヤコビアンマトリックスはアイソパラメトリック座標によって多項形式で書くことができる。
【0027】
【数4】


のi番目の行に対してはno sumであり(no sum for ith row of

)、i≠jであり、ある

はローカル空間的座標系の一つに依存する。疑似的な横剪断ロッキング効果は、項

によって生じる。ある項は、そのような剪断ロッキング効果を解消するよう、この定数を単に0と設定する(

=0)ことができる(図4Bのステップ424)。
【0028】
ヤコビアンマトリックスの計算は、ヤコビアン−座標変換マトリックス

を用いて行うことができる。指標表記法および指標(indicial notation)にわたって繰り返しとる和(summation over repeated indeces)を用いて、完全積分型8ノードのソリッドエレメントのヤコビアンマトリックスを以下のように書くことができる。
【0029】
【数5】

ここで、qikはローカル座標系とグローバル座標システムとの間の変換を表わし、

はローカル空間的座標系におけるヤコビアン−座標変換マトリックスである。マトリックス

は216(9x24)個の項を含んでいる。9つの項は3x3ヤコビアンマトリックスにおける成分であり、24個の項は8積分点に対する空間的な項(つまり1つの点当たり3つの空間的変位)を表わす。
【0030】
実際上、項

を0に設定することによって、ヤコビアンアン−座標変換マトリックス

が216の項を有する十分に密なマトリックス(フル・デンス・マトリックス(full dense matrix))となる。これは計算上望ましくない。なぜなら、元の方法ではFEAにおける明示的求解器(explict solver)に対してわずか72の項しか必要としないからである(つまり、およそ3倍計算コストがかかる)。しかしながら、このスキームは、計算コストの大部分が方程式求解器(equation solver)にある暗黙求解器(implicit solver)において用いることができる。フル・デンス・マトリックスとなる理由は、標準アイソパラメトリック・アプローチにおけるマトリックス

を以下のように書くことができるからである。
【0031】
【数6】

ここで、δikはクロネッカーデルタ関数であり、

は次の通りである。
【0032】
【数7】

Iはアイソパラメトリック座標系における形状関数である。項

を0に設定することによって、数式6における

の希薄さ(sparsity)が消え(希薄な行列(sparse matrix)でなくなり)、またマトリックス

における希薄さも消える。
【0033】
第1実施形態に戻って、数式1のスケール係数および数式2の修正偏導関数は、完全積分型8ノードの六面体エレメントの擬似的な横剪断ロッキング効果を低減するよう構成される。この修正により、計算効率を保ちながら、アスペクト比が悪いソリッドエレメントの特性を変える。完全な立方体のソリッドエレメントについては、スケール係数は数式1に基づいたものと等しい。その結果、元の形状関数の偏導関数(数式7)は保たれている(つまり、数式2および数式7は正確に同じである)。アスペクト比が大きいエレメントのヤコビアンマトリックスは、数式1および数式2にかかるスケール係数によって大きく修正され、したがって、横剪断ロッキング効果が低減される。
【0034】
次に、プロセス400のステップ408において、修正ヤコビアンマトリックスが有限要素解析法モデルにおけるそれぞれの8ノードのソリッドエレメントに対して計算された後、有限要素解析法が、時間進行シミュレーションにおいて工業製品の構造的応答を得るよう、行なわれる。シミュレーションの結果すなわち構造的応答を用いて、ユーザ(例えば技術者、科学者)が工業製品の改良に関する設計判断を行うことを支援する。
【0035】
次に、図4Bを参照して、本発明の他の実施形態にかかる、完全積分型8ノードの六面体エレメントの剪断ロッキング効果を低減する他の例示的なプロセスを示すフローチャート420を示す。プロセス400と同様に、プロセス400は、好ましくはソフトウェアで実行される。
【0036】
プロセス420は、プロセス400のステップと同様あるいは同一のステップを備える。例えば、ステップ422はプロセス400のステップ402と同一であり、ステップ428はステップ408と同一である。ステップ424は、修正ヤコビアンマトリックスの計算を備える。計算は、関連する非対角成分を0に設定することによって達成される。これらの関連する項は、擬似的な剪断ロッキング効果の原因である。関連する項の位置は、数式4に定義されている。
【0037】
一の側面において、本発明は、ここで説明した機能を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム600の一例を、図6に示す。コンピュータシステム600は、プロセッサ604など1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ604は、コンピュータシステム内部通信バス602に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムの点から説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピューターアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟している者には明らかになるであろう。
【0038】
コンピュータシステム600は、また、メインメモリ608好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を有しており、そして二次メモリ610を有することもできる。二次メモリ610は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ612、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどを表わす1つ以上のリムーバブルストレージドライブ614を有することができる。リムーバブルストレージドライブ614は、よく知られている方法で、リムーバブルストレージユニット618を読み取りおよび/またはリムーバブルストレージユニット618に書き込む。リムーバブルストレージユニット618は、リムーバブルストレージドライブ614によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット618は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータ可読媒体を有している。
【0039】
代替的な実施形態において、二次メモリ610は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム600にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。そのような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット622とインタフェース620とを有することができる。そのようなものの例には、プログラムカートリッジおよびカートリッジのインタフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)と、リムーバブルメモリチップ(消去可能なプログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリ、あるいはPROMなど)および関連するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット622からコンピュータシステム600に転送することを可能にする他のリムーバブルストレージユニット620およびインタフェース622と、が含まれうる。一般に、コンピュータシステム600は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーク管理およびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって、制御され連係される。
【0040】
通信用インタフェース624も、また、バス602に接続することができる。通信用インタフェース624は、ソフトウェアおよびデータをコンピュータシステム600と外部装置との間で転送することを可能にする。通信用インタフェース624の例には、モデム、ネットワークインターフェイス(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュニケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)スロットおよびカードなど、が含まれうる。
【0041】
コンピュータ600は、専用のセットの規則(つまりプロトコル)を実行してデータを送受信する。一般的なプロトコルのうちの1つは、インターネットにおいて一般的に用いられているTCP/IP(伝送コントロール・プロトコル/インターネット・プロトコル)である。一般的に、通信インタフェース624は、データファイルをデータネットワーク上で伝達される小さいパケットへ分割し、あるいは受信したパケットを元のデータファイルへと組立てる(再構築する)、いわゆるパケットのアセンブル・リアセンブル管理を行う。さらに、通信インタフェース624は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいはコンピュータ600が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく受信する。
【0042】
この書類において、「コンピュータが記録可能な記憶媒体」、「コンピュータが記録可能な媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は、リムーバブルストレージドライブ614および/またはハードディスクドライブ612に組み込まれたハードディスクなどの媒体を概ね意味して用いられている。これらのコンピュータプログラム製品は、コンピュータシステム600にソフトウェアを提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0043】
コンピュータシステム600は、また、コンピュータシステム600をアクセスモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッタなどに提供する入出力(I/O)インターフェース630を有することができる。
【0044】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ608および/または二次メモリ610にアプリケーションモジュール606として記憶される。コンピュータプログラムを、通信用インタフェース624を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム600がここに説明した本発明の特徴を実行することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ604が本発明の特徴を実行することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム600のコントローラを表わしている。
【0045】
ソフトウェアを用いて発明が実行されるある実施形態において、当該ソフトウェアはコンピュータプログラム製品に記憶され、リムーバブルストレージドライブ614、ハードドライブ612あるいは通信用インタフェース624を用いてコンピュータシステム600へとロードすることができる。アプリケーションモジュール606は、プロセッサ604によって実行された時、アプリケーションモジュール606によって、プロセッサ604がここに説明した本発明の機能を実行する。
【0046】
所望のタスクを達成するために、I/Oインタフェース630を介したユーザ入力によってあるいはよることなしに、1つ以上のプロセッサ604によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール606を、メインメモリ608に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ604がアプリケーションモジュール606のうちの1つが実行されると、結果が演算されて二次メモリ610(つまりハードディスクドライブ612)に記憶される。有限要素解析法方法を用いた時間進行工学シミュレーションの状況(例えば、変形したエレメント、8ノードのソリッドエレメントの応答など)は、テキストあるいはグラフィックの表現で、I/Oインタフェース630を介してユーザに報告される。
【0047】
本発明を具体的な実施形態を参照しながら説明したが、これらの実施形態は単なる例示であって、本発明を限定するものではない。開示した例示的な実施形態に対する種々の変更あるいは変形を、当業者は思いつくであろう。例えば、座標系およびエレメントの例示を二次元図において示したが、本発明は、より一般的な三次元エレメントに対してなされる。つまり、発明の範囲は、ここで開示した具体的で例示的な実施形態に限定されず、当業者が容易に想到するあらゆる変更が、本願の精神および認識範囲そして添付の特許請求の範囲の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
100 8ノードの六面体エレメント
102 積分点
200 細長い六面体エレメント
202 積分点
300 曲げモーメント
310 略図
320 略図
500 アイソパラメトリック座標系
501 8ノードのソリッドエレメント
510 グローバル座標システム
512 エレメント
515 変換
520 ローカル空間的座標系
525 変換
530 アイソパラメトリック座標系
531〜534 コーナーノード
600 コンピュータシステム
602 バス
604 プロセッサ
606 アプリケーションモジュール
608 メインメモリ
610 二次メモリ
612 ハードディスクドライブ
614 リムーバブルストレージドライブ
618 リムーバブルストレージユニット
620 インタフェース
622 リムーバブルストレージユニット
624 通信インタフェース
630 I/Oインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有限要素解析法において、完全積分型(fully-integrated)8ノードの六面体エレメントの横剪断ロッキング効果を低減する方法であって、
有限要素解析法モデル定義ステップであって、コンピュータシステムにおけるアプリケーションモジュールによって、少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントを有する改善するべき工業製品を定義するステップと、
前記アプリケーションモジュールによって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントのそれぞれに対して1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数を計算するステップと、
前記アプリケーションモジュールによって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの横剪断ロッキング効果が低減されるよう、それぞれがアスペクト比に基づいたスケール係数を有するアイソパラメトリック形状関数の偏導関数を修正することによって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを作成するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントおよび修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを有する有限要素解析法モデルを用いて、前記コンピュータシステムにおいて有限要素解析法を用いて工学シミュレーションを行うステップであって、工学シミュレーションの結果を用いて、ユーザが前記工業製品の改良に関する設計判断を行うことを支援するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれは、3つのローカル空間的寸法を有する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数は次式によって定義される

1,L2およびL3は、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれにおける前記3つのローカル空間的寸法のそれぞれの長さであり、

は前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数のうちの1つを表わしている方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記偏導関数は、



(jは、j=1,2,3)へと修正する
(ここでξ1,ξ2およびξ3はそれぞれ、前記3つアイソパラメトリック寸法におけるアイソパラメトリック座標である)方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスJijは以下のように計算される


(ここで、qmkはローカル座標系とグローバル座標系との間の変換であり、δikはクロネッカーデルタ関数である)方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれは、8つの積分点を有する方法。
【請求項7】
有限要素解析法において、完全積分型8ノードの六面体エレメントの横剪断ロッキング効果を低減するシステムであって、
有限要素解析法アプリケーションモジュールに関するコンピュータ可読コードを記憶しているメインメモリと、
前記メインメモリに連結される少なくとも1つのプロセッサであって、該少なくとも1つのプロセッサが前記メインメモリ内の前記コンピュータ可読コードを実行して、前記有限要素解析法アプリケーションモジュールに、方法に基づいてオペレーションを実行させるシステムであって、該方法が、
少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントを有する改善するべき工業製品を表現する有限要素解析法モデルを定義するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントのそれぞれに対して1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数を計算するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの横剪断ロッキング効果が低減されるよう、それぞれがアスペクト比に基づいたスケール係数を有するアイソパラメトリック形状関数の偏導関数を修正することによって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを作成するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントおよび修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを有する有限要素解析法モデルを用いて、有限要素解析法を用いて工学シミュレーションを行うステップであって、工学シミュレーションの結果を用いて、ユーザが前記工業製品の改良に関する設計判断を行うことを支援するステップと、
を備えているシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれは、3つのアイソパラメトリック寸法を有しており、
前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数は次式によって定義され、

(L1,L2およびL3は、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれにおける前記3つのアイソパラメトリック寸法のそれぞれの長さであり、

は前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数のうちの1つを表わしている)
アイソパラメトリック形状関数の前記導関数は



(jは、j=1,2,3)へと修正する
(ここでξ1,ξ2およびξ3
それぞれ、前記3つアイソパラメトリック寸法におけるアイソパラメトリック座標である)システム。
【請求項9】
方法に基づいて、有限要素解析法において、完全積分型8ノードの六面体エレメントの横剪断ロッキング効果を低減するコンピュータシステムを制御する命令を有するコンピュータ可読媒体であって、該方法が、
少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントを有する有限要素解析法モデルを定義するステップであって、前記有限要素解析法モデルが工業製品を表現しているステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントのそれぞれに対して1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数を計算するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの横剪断ロッキング効果が低減されるよう、それぞれがアスペクト比に基づいたスケール係数を有するアイソパラメトリック形状関数の偏導関数を修正することによって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれの修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを作成するステップと、
前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントおよび修正アイソパラメトリック・ヤコビアンマトリックスを有する有限要素解析法モデルを用いて、前記コンピュータシステムにおいて有限要素解析法を用いて工学シミュレーションを行うステップであって、工学シミュレーションの結果を用いて、ユーザが前記工業製品の改良に関する設計判断を行うことを支援するステップと、
を備えるコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータ可読媒体であって、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれは、3つのアイソパラメトリック寸法を有しており、
前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数は次式によって定義され、

(L1,L2およびL3は、前記少なくとも1つの完全積分型8ノードの六面体エレメントの前記それぞれにおける前記3つのアイソパラメトリック寸法のそれぞれの長さであり、

は前記1セットのアスペクト比に基づいたスケール係数のうちの1つを表わしている)
アイソパラメトリック形状関数の前記導関数は



(jは、j=1,2,3)へと修正する
(ここでξ1,ξ2およびξ3は、それぞれ、前記3つアイソパラメトリック寸法におけるアイソパラメトリック座標である)コンピュータ可読媒体。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate