説明

木クレオソート含有固形製剤

【課題】 本発明は、油状薬物を高濃度含有しながらも、優れた成形性、及び崩壊性を両立し、なおかつ加熱、造粒、及び乾燥といった工程が必要ない簡便な方法で製造可能な内服固形製剤を提供すること。
【解決手段】(A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、(B)結晶セルロースとを含有し、かつ、(A)粒子中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの質量比が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4であることを特徴とする内服固形製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木クレオソートを含有する内服固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
木クレオソートは、いわゆる「食あたり、水あたり」に対する症状の緩和、治療の薬剤、即ち、腸内殺菌剤又は腸内殺菌に基づく止瀉薬として用いられている。木クレオソートは、ブナなどを乾留して得られるフェノール系化合物を主成分とする油状薬物である。この木クレオソートは、強烈な臭気を有し皮膚刺激性が強い薬物であることから、安全かつ効果的に摂取するためにはコーティング錠剤のような剤型が適していると考えられる。
【0003】
従来、油性物質含有固形製剤の製法としては、油性物質を多孔質又は比表面積の大きい吸着剤に吸着させ、これを2次原料として散剤、顆粒剤、及び錠剤を製造する方法が知られている(特許文献1、及び非特許文献1参照)。しかしながら、この方法は本来疎水性で難溶性の物質を吸着能の高い吸着剤に吸着させるため、水又は消化液への拡散性が低下し、薬物の有効性、及び即効性が低減する傾向が強いことが問題であった。特に木クレオソートのような皮膚刺激性の強い油状物質を錠剤化する際には、活性成分が消化器官の特定の部位に長時間滞留することで局所刺激を引き起こす可能性もあることから、即効性の面だけではなく安全性の面からも崩壊性、及び分散性に優れた錠剤であることが望まれる。
【0004】
また、油状物質を吸着した吸着剤は、見かけ上は固形であっても実際には吸着剤の表面に油状物質が付着しているにすぎないので、吸着剤自体の表面が親油性となり個々の粒子間の結合性が低下し、顆粒剤、錠剤の成形に支障をきたしやすいこと、特に適当な賦形剤を添加混合し錠剤化する場合、吸着剤表面に付着している油状物質が隣接する賦形剤粒子に浸透、拡散するために混合物の圧縮成形性が低下し、キャッピングなどの打錠障害を起しやすいといった種々の問題があった。
【0005】
崩壊性に優れた錠剤の処方にはいくつか報告があるが、これらは水溶性の化合物や、易溶性薬物を使用した錠剤(特許文献2〜3参照)や、活性成分が粉体に限られている錠剤(特許文献4参照)であり、木クレオソートのような油状物質を活性成分とする錠剤の処方には適していない点で問題であった。
【0006】
このような油状物質の錠剤化における問題を解決する方法として、油状物質を非イオン性界面活性剤と混和した後、吸着剤に吸着させ、これをポリエチレングリコールで溶融被覆して得られる粉末を2次原料として錠剤化する方法(特許文献5参照)が知られている。また、油性物質を水溶性高分子水溶液中に乳化し、得られた乳化液を添加剤に噴霧し、吸着、及び造粒を行う方法(特許文献6参照)も知られている。しかしながら、これら方法では製造の過程で加熱や練合といった工程や、造粒工程を必要とするため、これらの方法を用いて、強烈な臭気を有する木クレオソートを取り扱うことは困難である。
したがって、木クレオソートの揮発を抑えるためにも、加熱、乾燥、造粒などの必要ない簡便な製造プロセスが望まれているのが現状である。
【0007】
以上のように、木クレオソートのような油状薬物を高濃度含有しながらも、優れた成形性、及び崩壊性を両立し、なおかつ加熱、造粒、及び乾燥といった工程が必要ない簡便な方法で錠剤化することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−40714号公報
【特許文献2】特開2006−052167号公報
【特許文献3】特開2001−253818号公報
【特許文献4】特許3996626号公報
【特許文献5】特公平1−29764号公報
【特許文献6】特開平08−157362号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Spireas. SS, Jarowski. CI, Rohera. BD., Pharm. Res., 9(10), 1992, p.1351−1358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、油状薬物を高濃度含有しながらも、優れた成形性、及び崩壊性を両立し、なおかつ加熱、造粒、及び乾燥といった工程が必要ない簡便な方法で製造可能な内服固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを木クレオソートの含浸基剤とし、該含浸基剤と結晶セルロースとを一定の割合で配合することで、成形性、及び崩壊性に優れ、かつ加熱、造粒、乾燥などを必要としない簡便な工程で内服固形製剤が製造可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、(B)結晶セルロースとを含有し、かつ、(A)粒子中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの質量比が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4であることを特徴とする内服固形製剤である。
<2> (A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、(B)結晶セルロースとの質量比が、(B)/(A)=0.1〜2である前記<1>に記載の内服固形製剤である。
<3> (A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、(B)結晶セルロースとの質量比が、(B)/(A)=0.25〜1である前記<1>から<2>のいずれかに記載の内服固形製剤である。
<4> 生薬を含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の内服固形製剤である。
<5> 生薬がロートエキスである前記<4>に記載の内服固形製剤である。
<6> 崩壊剤を含有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の内服固形製剤である。
<7> 崩壊剤がカルメロース、及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースの少なくともいずれかである前記<6>に記載の内服固形製剤である。
<8> (A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子の配合比率が、35質量%〜85質量%である前記<1>から<7>のいずれかに記載の内服固形製剤である。
<9> (A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子の配合比率が、45質量%〜80質量%である前記<1>から<8>のいずれかに記載の内服固形製剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、油状薬物を高濃度含有しながらも、優れた成形性、及び崩壊性を両立し、なおかつ加熱、造粒、及び乾燥といった工程が必要ない簡便な方法で製造可能な内服固形製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(内服固形製剤)
本発明の内服固形製剤は、(A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子(以下、「(A)粒子」と称することがある。)と、(B)結晶セルロース(以下、「(B)成分」と称することがある。)とを含有し、かつ、(A)粒子中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの質量比が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4であり、更に必要に応じて、適宜その他の成分を含有する。
【0015】
<(A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子>
前記(A)粒子は、少なくともメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと、木クレオソートとを含有する。更に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜その他の成分を含有することができる。
【0016】
−メタケイ酸アルミン酸マグネシウム−
前記(A)粒子中に含有されるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、主に前記(A)粒子中に含有される木クレオソートの含浸基剤として配合される。前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、多孔質で吸液性が高い上に、粒子径が球状に近く流動性が良い。そのため、前記(A)粒子に、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有することで、打錠障害を起こさない打錠用粉末を得ることができる点で有利である。
【0017】
−木クレオソート−
クレオソートは、クレゾール類(グアヤコール、4−エチルグアヤコール、クレオゾール、オルトクレゾール、パラクレゾールなど)、キシレノール類、及びフェノールなどのフェノール誘導体を含有する。前記クレオソートは、第15日本薬局方、及び米国のナショナル フォーミュラリー(National Formulary)XIIなどに収載されている。本発明の内服固形製剤に含有されるクレオソートは、ブナ、カシ、モミジ、マツなどの樹木、特に広葉樹から得られる木タールを蒸留して得られる、いわゆるウッドクレオソート(木クレオソート)であり、石炭タールから得られるクレオソートとは明確に区別されているものである。
前記木クレオソートは、強烈な臭気を有し、皮膚刺激性が強い薬物であるが、後述する本発明の内服固形製剤の処方を用いることで、安全性が高く、崩壊性、及び成形性に優れた錠剤を得ることができることから、前記木クレオソートを有効成分とした本発明の内服固形製剤は、腸内殺菌剤又は腸内殺菌に基づく止瀉薬として、安全かつ効果的に摂取できる点で有利である。
前記木クレオソートの1日あたりの有効量としては、250mg〜500mgが好ましく、250mg〜400mgがより好ましい。
【0018】
−その他の成分((A)粒子中に配合可能な任意成分)−
前記(A)粒子中に含有してもよい前記その他の成分としては、例えば、胃腸薬や止瀉薬に使用される他の薬物を挙げることができる。
前記他の薬物としては、例えば、生薬エキスなどの液状薬物が好ましい。
また、前記(A)粒子中の、前記その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、各薬物の有効量を鑑み、決定することができる。
【0019】
−木クレオソートとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとの配合比率−
前記(A)粒子中の木クレオソートと、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとの配合比率としては、質量比で、前記木クレオソートに対する前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの割合(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート)が、1〜4が好ましい。この割合が1未満であると、打錠後に含浸させた木クレオソートが染み出してしまうことがあり、4を超えると、木クレオソート有効量を服用するための製剤服用量が多くなり、服用性の面で適当でない。また、錠剤が大きくなりすぎ、製剤化が難しい。
【0020】
<内服固形製剤中の(A)粒子の配合比率>
前記内服固形製剤中の前記(A)粒子の配合比率としては、前記(A)粒子中の木クレオソート、及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウムのそれぞれの1日最大配合量を超えない限りは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%〜95質量%が好ましく、35質量%〜85質量%がより好ましく、40質量%〜80質量%が更に好ましく、45質量%〜80質量%が特に好ましい。前記内服固形製剤中の前記(A)粒子の配合比率が95質量%を超えると、崩壊性が悪くなる。前記(A)粒子の配合比率が低いと、錠剤中の木クレオソートの含有量が少なくなり、有効量を服用するための製剤服用量が多くなってしまうことから、医薬製剤設計上適当でない。
【0021】
<(B)結晶セルロース>
前記(B)成分は主に、前記内服固形製剤の成形性、及び崩壊性を両立する目的で配合される。
ここで(B)成分は、一般に医薬内服固形製剤の賦形剤として用いられる結晶セルロースを用いることができる。前記(B)成分が結晶セルロースでないと、錠剤は打錠障害を有し、十分な成形性、及び崩壊性を両立することができないなどの問題がある。
【0022】
<(A)粒子と(B)成分との配合比率>
前記内服固形製剤中の(A)粒子と、(B)成分との配合比率としては、質量比で、前記(A)粒子に対する前記(B)成分の割合((B)成分/(A)粒子)が、0.1〜2が好ましく、0.25〜1.5がより好ましく、0.25〜1が特に好ましい。この割合が、0.1未満であると、崩壊性が悪くなり、逆にこの割合が高くなると、錠剤中の木クレオソートの含有量が少なくなり有効量を服用するための製剤服用量が多くなってしまうことから、医薬製剤設計上適当でない。
【0023】
<その他の成分>
前記(A)粒子、及び前記(B)成分の他に、本発明の内服固形製剤に配合できる前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、胃腸薬や止瀉薬に使用される他の薬物などを、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
前記他の薬物としては、例えば、タンニン酸、リン酸水素カルシウム、ゲンノショウコエキス、エンゴサクエキス、アカメガシワエキス、シャクヤクエキス、ロートエキス、カンゾウエキス、オウバクエキスなどの生薬が挙げられる。
前記その他の成分は、乾燥粉末や造粒物の状態が好ましい。
また、前記その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、各薬物の有効量を鑑み、決定することができる。
【0024】
<使用>
前記内服固形製剤は、1種単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記内服固形製剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に配合された状態で使用されてもよい。
前記併せて使用する医薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、生薬などが挙げられる。
前記生薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ロートエキスが好ましい。木クレオソートの主成分であるフェノール系化合物は、細胞障害性を有し、消化管内で高濃度になると前記フェノール系化合物の局所刺激作用により細胞を広範囲に傷害するため、潰瘍ができる可能性があるが、前記ロートエキスは、胃炎や胃潰瘍などの腹痛に有効な生薬であるためである。
【0025】
<剤型>
前記内服固形製剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、コーティング錠剤、丸剤などが挙げられるが、これらの中でも、コーティング錠剤が、前記内服固形製剤中の木クレオソートを安全かつ効果的に摂取できる点で好ましい。また、前記内服固形製剤は、医薬品、医薬部外品、食品などの区分に制限されるものではなく、これらのいずれにも適用が可能である。
前記経口固形剤の製造方法としては、特に制限はなく、常法を使用することができ、例えば、前記(A)粒子に、賦形剤である前記(B)成分を添加し、更に必要に応じて、前記その他の成分、各種添加剤を加えることにより製造することができる。
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味/矯臭剤などが挙げられる。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルメロース、クロスカルメロース、クロスポビドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられる。これらの中でも、カルメロース、クロスカルメロース、クロスポビドン、及び低置換ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
前記滑沢剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸マグネシウム、精製タルク、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。
前記矯味/矯臭剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
【0026】
<投与>
前記内服固形製剤の投与方法としては、経口投与が好ましい。前記内服固形製剤の有効成分である木クレオソートは、腸管上皮細胞に直接作用することにより効果を発揮するためである。
前記内服固形製剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の薬剤の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
前記内服固形製剤の個体への投与時期についても、特に制限はなく、症状などに応じて適宜選択することができる。
前記内服固形製剤の投与対象となる動物種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、トリ、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどが挙げられる。
【0027】
<製造方法>
前記内服固形製剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、木クレオソートを含浸基剤に含浸することにより木クレオソート含浸粉末を得た後、前記木クレオソート含浸粉末、及び賦形剤、更に必要に応じて崩壊剤、及びその他の成分などを配合した粉体を打錠することにより、錠剤を製造することができる。
【0028】
−木クレオソートの含浸−
木クレオソートを含浸する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に含浸基剤であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを投入し、攪拌羽、及びチョッパーで攪拌しながら、木クレオソートを添加する方法などが挙げられる。含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いることにより、流動性の良い打錠用粉末を得ることができる。
例えば、前記高速攪拌造粒機を使用した場合、前記含浸基剤の量としては、特に制限はなく、製造機械の種類や大きさに応じて適宜選択することができるが、25g〜75gが好ましい。また、前記攪拌羽の回転する速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200rpm〜600rpmが好ましい。前記チョッパーの回転する速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500rpm〜1,500rpmが好ましい。前記木クレオソートを添加する速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間あたり20mL〜60mLが好ましい。
【0029】
−打錠−
前記打錠する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製)を用いて打錠することができる。
錠剤径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6mm〜9mmが好ましい。
前記粉体の充填量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、145mg〜165mgが好ましい。
圧縮形成する際の打錠圧としても、特に制限はなく、錠剤硬度に応じて適宜選択することができるが、200kgf〜1,500kgfが好ましい。
【0030】
<木クレオソート含浸粉末の粉体物性の評価>
前記内服固形製剤中の木クレオソート含浸粉末の粉体物性を評価する方法としては、前記木クレオソート含浸粉末の流動性を評価する方法、保液力を評価する方法などが挙げられる。
【0031】
−流動性の評価−
木クレオソート含浸粉末の流動性を評価する方法としては、安息角を測定する方法などが挙げられる。
前記安息角とは、粉末を平面に堆積させたとき、平面と粉末との稜線の作る角度をいう。安息角の大きい粉末は、流動性が悪いと評価される。
前記安息角を測定する方法としては、注入法(JIS R9301−2−2)が好ましい。
前記安息角としては、35°〜50°が好ましく、35°未満がより好ましい。
なお、粉末の流動性が悪いと、粉体が臼内に均一に充填されにくくなり、製造性、生産性が低下する点で問題である。
【0032】
−保液力の評価−
木クレオソート含浸粉末の保液力の評価は、打錠後の木クレオソート含浸粉末から木クレオソートが染み出すか否かを評価することにより行う。木クレオソートは強烈な臭気を有し、皮膚刺激性が強いことから、木クレオソートが染み出すと、安全性の面で問題である。また、打錠時に杵付着などの打錠障害が起こる点や、錠剤の保存中に変質、及び変色などが生じ品質が低下する点でも問題である。
木クレオソート含浸粉末の保液力を評価する方法としては、タブレッティングテスター(三協パイオテック(株)製)を用いて木クレオソート含浸粉末の打錠を行い、打錠後の木クレオソートの染み出しの有無を、目視で確認することにより確認する方法が挙げられる。
錠剤径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10mmが好ましい。
前記木クレオソート含浸粉末の充填量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、250mgが好ましい。
打錠圧としても、特に制限はなく、錠剤硬度に応じて適宜選択することができるが、50kNが好ましい。
【0033】
<内服固形製剤の錠剤物性の評価>
前記内服固形製剤の錠剤物性を評価する方法としては、崩壊性を評価する方法、摩損度を評価する方法、打錠障害を評価する方法などが挙げられる。
【0034】
−崩壊性の評価−
前記崩壊性を評価する方法としては、第15日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定し、その平均値を求める方法が挙げられる。
崩壊する時間としては、3分間以上5分間未満が好ましく、3分間以内がより好ましい。
【0035】
−摩損度の評価−
前記摩損度を評価する方法としては、第15日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法に準じて試験する方法が挙げられる。
前記摩損度としては、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0036】
−打錠適性の評価−
前記打錠適性を評価する方法としては、打錠直後の錠剤を目視にて観察する方法などが挙げられる。
打錠障害は、充填不良やスティッキングがある錠剤を、打錠障害がある錠剤と判断することができる。
【0037】
<用途>
前記内服固形製剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前述したように、前記内服固形製剤の有効成分である木クレオソートは「食あたり、水あたり」に対する症状の緩和乃至治療に有効であることから、腸内殺菌剤又は腸内殺菌に基づく止瀉薬として好適に用いることができる。
また、本発明で示した処方は、製剤化において加熱、造粒、及び乾燥といった工程を必要としないことから、木クレオソートのような強烈な臭気を有し、取り扱いの難しい油状薬物の錠剤化に好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下、処方例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の処方例、実施例、及び比較例において、特に明記のない限り、「%」はいずれも「質量%」を表す。
【0039】
(処方例A−1〜A−14:木クレオソート含浸粉末)
<木クレオソート含浸粉末の作製>
下記表1〜2に示す配合比率(質量%)に従い、処方例A−1〜A−14の内服固形製剤を下記に示す製造方法にて調製した。即ち、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に、含浸基剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUS2:富士化学工業(株)製)、軽質無水ケイ酸(サイリシア350:富士シリシア化学(株)製)、合成ヒドロタルサイト(アルカマックSN:協和化学工業(株)製)、及び結晶セルロース(セオラスPH302:旭化成(株)製)のいずれかを各々50g投入し、攪拌羽を400rpm、チョッパーを1,000rpmの速度で攪拌し、1分間あたり40mLの液速で木クレオソート(ダイト(株)製)を添加することにより、前記含浸基剤に前記木クレオソートを含浸させ、木クレオソート含浸粉末を得た。
得られた各木クレオソート含浸粉末について、下記の方法で、粉体物性の評価として、流動性、及び保液力の評価を行った。結果を表1〜2に併せて示す。
【0040】
<粉体物性の評価>
−流動性の評価−
前記木クレオソート含浸粉末の流動性は、安息角にて評価した。前記安息角は、注入法(JIS R9301−2−2)により測定した。
【0041】
「流動性」の評価は、下記評価基準に基づいて評価した。
−流動性の評価基準−
◎:安息角 35°未満
○:安息角 35°〜50°
×:安息角 50°以上
【0042】
−木クレオソート保液力の評価−
タブレッティングテスター(三協パイオテック(株)製)を用いて前記木クレオソート含浸粉末の打錠を行い、打錠後の木クレオソートの染み出しの有無を、目視により確認した。前記タブレッティングテスターは、錠剤径10mm、粉体充填量250mg、打錠圧50kNと設定した。
【0043】
木クレオソート保液力の評価は、目視にて評価した。
−保液力の評価基準−
○:木クレオソートの染み出しは認められない
×:木クレオソートの染み出しが認められる
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表1〜2の結果より、木クレオソートの含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用い、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4(質量比)としたときに粉体流動性が優れ、かつ打錠後に染み出しのない含浸粉体を得ることができた(表1:A−1〜A−4)。
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの木クレオソートに対する割合が1未満である場合は、打錠後に木クレオソートの染み出しが確認された(表1:A−5)。
木クレオソートの含浸基剤として、軽質無水ケイ酸(表1:A−6〜A−8)、合成ヒドロタルサイト(表2:A−9〜A−11)、及び結晶セルロース(表2:A−12〜A−14)のいずれかを用いた場合には、打錠後の木クレオソートの染み出しを抑え、かつ優れた粉体流動性を有する含浸粉末を作製することはできなかった。
以上の結果から、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4(質量比)とすることで、打錠適正の良い含浸粉末を得ることができると認められた。
【0047】
(実施例1〜15、比較例1〜11:内服固形製剤)
<錠剤物性の評価>
−実施例1〜9、比較例1:賦形剤の配合比率の検討−
上記A−1〜A−4で良好な粉体物性であった、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4(質量比)で配合した木クレオソート含浸粉末(以下、「(A)粒子」と称することがある。)に、賦形剤として結晶セルロース(セオラスPH302:旭化成(株)製)(以下、「(B)成分」と称することがある。)、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(太平工業(株)製)を、下記表3〜4に示す配合比率(質量%)に従い配合し、実施例1〜9、及び比較例1の内服固形製剤を下記に示す製造方法にて調製した。即ち、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に、含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUS2:富士化学工業(株)製)を50g投入し、攪拌羽を400rpm、チョッパーを1,000rpmの速度で攪拌し、1分間あたり40mLの液速で木クレオソート(ダイト(株)製)を添加することにより、前記含浸基剤に前記木クレオソートを含浸させ、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)を得た。
次いで、得られた(A)粒子と、前記(B)成分と、前記ステアリン酸マグネシウムとを配合し、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製)を用いて錠剤を作製した。錠剤径は7mm、粉体充填量は155mg、打錠圧は錠剤硬度が200kgf〜1,500kgfとなる圧力を加え圧縮成形した。
得られた錠剤について、下記の方法で、崩壊性、摩損度、及び打錠適正の評価を行った。結果を表3〜4に併せて示す。
【0048】
−崩壊性の評価−
錠剤の崩壊性の評価は、第十五日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定し、その平均値を求めることにより行った。
【0049】
「崩壊性」の評価は、下記評価基準に基づいて評価した。
−−崩壊性の評価基準−−
◎:3分間以内に崩壊する
○:3分間以上5分間未満で崩壊する
△:5分間以上10分間未満で崩壊する
×:10分間以上経っても崩壊しない
【0050】
−摩損度の評価−
錠剤の摩損度の評価は、第十五日本薬局方に収載される錠剤の摩損度試験法に準じて行った。試験は40錠で行った。
【0051】
「摩損度」の評価は、下記評価基準に基づいて評価した。
−−摩損度の評価基準−−
○:摩損度0.1質量%未満
△:摩損度0.1質量%以上
−:割れ、欠けが著しく、評価できない
【0052】
−打錠適性の評価−
錠剤の打錠適性の評価は、打錠直後の錠剤を目視にて観察し、打錠障害の有無を確認することにより行った。
【0053】
「打錠障害」の評価は、下記評価基準に基づいて評価した。
−−打錠障害の評価基準−−
○:打錠障害は認められない
S:スティッキング
J:充填不良
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
表3〜4の結果より、結晶セルロース((B)成分)/木クレオソート含浸粉末((A)粒子)=0.1〜2(質量比)とすることで、優れた崩壊性と成形性を有し、打錠障害なども認められない良好な錠剤を得ることができた(表3〜4:実施例1〜9)。特に、結晶セルロース((B)成分)/木クレオソート含浸粉末((A)粒子)=0.25〜1(質量比)とすることで、更に良好な崩壊性を示した(表3〜4:実施例3〜6、及び8〜9)。
なお、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)のみで、結晶セルロース((B)成分)を配合しない場合は、十分な成形性を有するものの、良好な崩壊性を示さなかった(表4:比較例1)。
また、内服固形製剤中の木クレオソート含浸粉末((A)粒子)の配合比率を、33.3質量%〜90.7質量%としたものは、良好な崩壊性を示した(表3〜4:実施例1〜9)。特に、内服固形製剤中木クレオソート含浸粉末((A)粒子)の配合比率が39.9質量%〜79.8質量%としたものは、更に良好な崩壊性を示した(表3〜4:実施例2〜6、及び8〜9)。
【0057】
−比較例2〜8:賦形剤の検討−
比較例2〜8として、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの配合比率が、適当な配合比率(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1(質量比))である場合に、賦形剤を結晶セルロース((B)成分)以外のものに変えた場合の、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の検討を行った。
また、比較例8として、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの配合比率が適当でない配合比率、即ち、1未満(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=0.67(質量比))であり、更に賦形剤を結晶セルロース((B)成分)以外のものに変えた場合の、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の検討を行った。
下記表5に示す配合比率(質量%)に従い配合し、比較例2〜8の内服固形製剤を下記に示す製造方法にて調製した。即ち、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に、含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(ノイシリンUS2:富士化学工業(株)製)を50g投入し、攪拌羽を400rpm、チョッパーを1,000rpmの速度で攪拌し、1分間あたり40mLの液速で木クレオソート(ダイト(株)製)を添加することにより、前記含浸基剤に前記木クレオソートを含浸させ、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)を得た。
次いで、得られた(A)粒子と、前記(B)成分以外の賦形剤として乳糖(乳糖G:フロイント産業(株)製)又はD−マンニトール(ペアリトール:ロケットジャパン(株)製)と、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(太平工業(株)製)とを配合し、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製)を用いて錠剤を作製した。錠剤径は7mm、粉体充填量は155mg、打錠圧は錠剤硬度が200kgf〜1,500kgfとなる圧力を加え圧縮成形した。
得られた各錠剤について、前記実施例1〜9と同様の方法で、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の評価を行った。結果を表5に併せて示す。
【0058】
【表5】

表5に、賦形剤として、乳糖(比較例2〜4、及び8)又はD−マンニトール(比較例5〜7)を用いた場合の結果を示した。この結果が示す通り、賦形剤として結晶セルロース((B)成分)以外のものを用いた場合は、打錠障害もなく、十分な成形性と崩壊性を両立する錠剤を作製することはできなかった(比較例2〜8)。
また、賦形剤として結晶セルロース((B)成分)以外のものを用い、更に木クレオソート含浸粉末((A)粒子)中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの配合比率が適当でない配合比率、即ち、1未満(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=0.67(質量比))とした場合、処方例A−5(表1)と同様に、液状成分がややオーバーフロー気味となり、打錠後に染み出しが認められ、スティッキングが生じた。
【0059】
−比較例9〜11:含浸基剤の検討−
木クレオソートの含浸基剤を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム以外のものに変えた場合の、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の検討を行った。
下記表6に示す配合比率(質量%)に従い配合し、比較例9〜11の内服固形製剤を下記に示す製造方法にて調製した。即ち、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に、前記メタケイ酸アルミン酸マグネシウム以外の含浸基剤として、軽質無水ケイ酸(サイリシア350:富士シリシア化学(株)製)、合成ヒドロタルサイト(アルカマックSN:協和化学工業(株)製)、及び結晶セルロース(セオラスPH302:旭化成(株)製)の少なくともいずれかを合計50g投入し、攪拌羽を400rpm、チョッパーを1,000rpmの速度で攪拌し、1分間あたり40mLの液速で木クレオソート(ダイト(株)製)を添加することにより、前記含浸基剤に前記木クレオソートを含浸させ、木クレオソート含浸粉末を得た。
次いで、得られた各木クレオソート含浸粉末と、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(太平工業(株)製)とを配合し、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製)を用いて錠剤を作製した。錠剤径は7mm、粉体充填量は155mg、打錠圧は錠剤硬度が200kgf〜1,500kgfとなる圧力を加え圧縮成形した。
得られた錠剤について、前記実施例1〜9と同様の方法で、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の評価を行った。結果を表6に併せて示す。
【0060】
【表6】

表6に、含浸基剤として軽質無水ケイ酸、合成ヒドロタルサイト、及び結晶セルロースの少なくともいずれかを用いた場合の結果を示した。この結果が示す通り、木クレオソートに対する含浸基剤の割合は、処方例A−1で示したように適当な割合(含浸基剤/木クレオソート=4(質量比))であるものの、含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウム以外のものを用いた場合は、成形性と崩壊性を両立し、更に打錠適性も良好な錠剤を作製することはできなかった(比較例9〜11)。
【0061】
以上の結果(表3〜6)から、木クレオソートの含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用い、更に賦形剤として結晶セルロース((B)成分)を用い、これらの配合比率を結晶セルロース((B)成分)/木クレオソート含浸粉末((A)粒子)=0.1〜2(質量比)とすることにより、優れた崩壊性と成形性を両立し、更に製造製も優れた錠剤を作製することができると認められた。
【0062】
−実施例10〜15:崩壊剤、及びその他の有効成分との併用の検討−
木クレオソート含浸粉末((A)粒子)中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの配合比率が、適当な割合(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1(質量比))であり、かつ、賦形剤である結晶セルロース((B)成分)と、前記木クレオソート含浸粉末((A)粒子)との配合比率も適当な範囲内((B)成分/(A)粒子=0.1〜2(質量比))である場合に、その他の成分として、各種崩壊剤、及びロートエキス末(コーンスターチ倍散物)の少なくともいずれかを配合した場合の崩壊性、摩損度、及び打錠障害の検討を行った。
前記ロートエキス末は、内臓の平滑筋の痙攣の抑制や、胃酸の分泌抑制などの作用を有することが知られている生薬であり、木クレオソートの作用を補完することで、本発明の内服固形製剤の有効成分として働くことが期待される。
下記表7に示す配合比率(質量%)に従い配合し、実施例10〜15の内服固形製剤を下記に示す製造方法にて調製した。即ち、高速攪拌造粒機(FUKAE POWTEX社製)内に、含浸基剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを50g投入し、攪拌羽を400rpm、チョッパーを1,000rpmの速度で攪拌し、1分間あたり40mLの液速で木クレオソート(ダイト(株)製)を添加することにより、前記含浸基剤に前記木クレオソートを含浸させ、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)を得た。
次いで、得られた(A)粒子、前記(B)成分、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(太平工業(株)製)、及びロートエキス末(ロートエキス3倍散C:アルプス薬品工業(株)製)を配合したもの(実施例10〜11)、若しくは、前記実施例10〜11に、更に崩壊剤としてカルメロース(NS−300:五徳薬品(株)製)又は低置換ヒドロキシプロピルセルロース(LH3:信越化学工業(株)製)を配合したもの(実施例12〜15)について、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製)を用いて錠剤を作製した。錠剤径は7mm、粉体充填量は155mg、打錠圧は錠剤硬度が200kgf〜1,500kgfとなる圧力を加え圧縮成形した。
得られた錠剤について、前記実施例1〜9と同様の方法で、崩壊性、摩損度、及び打錠障害の評価を行った。結果を表7に併せて示す。
【0063】
【表7】

表7に、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)、及び結晶セルロース((B)成分)の他にロートエキス末(コーンスターチ倍散物)を配合した結果(実施例10〜11)、及び前記実施例10〜11に更に各種崩壊剤を配合した結果(実施例12〜15)を示した。これらの結果より、本発明で見出された木クレオソート含浸粉末((A)粒子)と結晶セルロース((B)成分)とを含有する内服固形製剤は、生薬(実施例10〜11)やその他各種崩壊剤(実施例12〜15)と共に配合しても、良好な錠剤物性を有していることを確認した(実施例10〜15)。
【0064】
本発明の内服固形製剤は、木クレオソートの含浸基剤としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを選択し、その配合比率を、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4(質量比)とすることで、打錠障害を起こさない打錠用粉末を得ることができる。更に、木クレオソート含浸粉末((A)粒子)と結晶セルロース((B)成分)とを(B)成分/(A)粒子=0.1〜2(質量比)で配合することで、適度な成形性と崩壊性を両立する錠剤を得ることができる。
また、本発明で示した処方は、製剤化において造粒、加熱、及び乾燥工程を必要としないことから、木クレオソートのような強烈な臭気を有し、取り扱いの難しい油状薬物の錠剤化に適していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の内服固形製剤は、油状薬物を高濃度含有しながらも、優れた成形性、及び崩壊性を両立する錠剤を得ることができる。更に、本発明で示した処方は、製剤化において加熱、造粒、及び乾燥といった工程を必要としないことから、木クレオソートのような強烈な臭気を有し、取り扱いの難しい油状薬物の錠剤化に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、
(B)結晶セルロースと
を含有し、かつ、(A)粒子中のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとの質量比が、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム/木クレオソート=1〜4であることを特徴とする内服固形製剤。
【請求項2】
(A)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムと木クレオソートとを含有する粒子と、
(B)結晶セルロースとの質量比が、
(B)/(A)=0.1〜2である請求項1に記載の内服固形製剤。

【公開番号】特開2010−241767(P2010−241767A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94946(P2009−94946)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】