説明

木工沈床

【課題】木工沈床のための木枠の保管に大きなスペースを必要とせず、木工沈床の施工現場への木枠の運搬を容易に行うことができ、しかも施工現場での木枠の組立作業を短時間のうちに簡単に行うことができるようにする。
【解決手段】木枠を構成する上下の井桁13C、13Bが、連結部材15によって連結されることで、上下の井桁13C、13Bの縦桁11と横桁12とが互いに側方にずれて重ならないようになったうえで上下方向に沿って互いに接近した姿勢と、これら縦桁11と横桁12とが上下方向に沿って互いに離間した姿勢とに姿勢変更可能である。上下の井桁13C、13Bが互いに離間した状態から、連結部材15と井桁13Cとの接続部の遊びの範囲で上下の井桁13C、13Bの縦桁11と横桁12とが互いに相対的に接近したときに、一方の井桁の凸部17が他方の井桁の凹部25にはまり込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の護岸や洗掘防止のために用いられる木工沈床に関する。
【背景技術】
【0002】
木工沈床は、木材によって川底にたとえば井桁状の枠を形成し、その中に石材を詰めるようにしたものである(特許文献1)。
川底への木工沈床の施工に際しては、施工現場の近傍における陸上で一対の木製の縦桁と一対の木製の横桁とを用いて一つの井桁を構成し、複数の井桁を上下に積み上げて互いに固定するとともに、適当な底部材を設けることによって、枡形の木枠を形成する。そして、この木枠を川床に並べるように敷設して、その中に石材を詰める。
【特許文献1】特開平10−317350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、木工沈床の施工現場の近傍の陸上で木枠の組立を行っていたのでは、その間は本来の川底への木工沈床の施工工事を休止せざるを得ず、非能率的である。
このような問題点を解消するためには、たとえば木枠を工場で生産したうえで木工沈床の施工現場に運搬して用いればよいのであるが、工場で枡形に組み立ててしまうと、嵩高になり、したがって大きな保管スペースを必要とし、また木工沈床の施工現場への運搬も行いにくくなる。
【0004】
そこで本発明は、木工沈床のための木枠の保管に大きなスペースを必要とせず、木工沈床の施工現場への木枠の運搬を容易に行うことができ、しかも施工現場での木枠の組立作業を短時間のうちに簡単に行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため本発明の木工沈床は、
一対の木製の縦桁と一対の木製の横桁とで構成される井桁が複数段に積み重ねられた構成の木枠を有し、
前記木枠は、上段側の井桁と下段側の井桁とが連結部材によって互いに連結された構成であり、
前記連結部材は、その一端部および他端部が上下の井桁の一方および他方に接続された状態でそれぞれの接続部を中心として上下方向に旋回自在とされることで、上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに側方にずれて重ならないようになったうえでこれら上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢と、上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した姿勢とに姿勢変更を可能とするものであるとともに、前記接続部に遊びを有することで、上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した状態から互いの相対的な接近動を許容可能であり、
上下の井桁は、一方の縦桁または横桁に凸部を有するとともに他方の横桁または縦桁に凹部を有し、
前記凸部および凹部は、上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した状態から上下方向に沿って互いに離間した状態に変化するときに、一方の井桁の凸部が他方の井桁と干渉しないように互いに距離をおくものであるとともに、上下の井桁が互いに離間した状態から前記遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに相対的に接近し、かつその接近により凸部が凹部にはまり込むものであることを特徴とする。
【0006】
本発明の木工沈床によれば、木枠は、上段側の井桁を力の作用点として吊り下げられることで、上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢から、自重により上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した姿勢に姿勢変更されるものであるとともに、この吊り下げられた状態から地面上に降ろされることで、遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに相対的に接近して凸部が凹部にはまり込むものであることが好適である。
【0007】
また本発明の木工沈床によれば、連結部材は、凸部が凹部にはまり込んだ状態で上下の井桁が互いに積み重ねられたときに、上段側の井桁と下段側の井桁とにそれぞれ固定可能とされていることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連結部材の旋回によって、上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに側方にずれて重ならないようになったうえでこれら上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢とすることができ、これにより木枠をコンパクトにたたむことができるため、木枠の保管時に大きなスペースを必要とすることがなく、また、たとえば木枠の製造工場から木工沈床の敷設現場への木枠の運搬時に、小さなスペースだけで足りるとともに、その運搬を容易に行うことができる。
【0009】
木工沈床の敷設現場では、上下の井桁を上下方向に沿って互いに離間した姿勢に姿勢変更したうえで、連結部材の遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とを互いに相対的に接近させて凸部を凹部にはまり込ませるだけで、木枠本来の形態を容易に作り上げることができ、木工沈床の敷設現場での木枠の組立作業を短時間のうちに簡単に行うことができる。
【0010】
また本発明によれば、木枠は、上段側の井桁を力の作用点として吊り下げられることで、上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢から、自重により上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した姿勢に姿勢変更されるものであるとともに、この吊り下げられた状態から地面上に降ろされることで、遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに相対的に接近して凸部が凹部にはまり込むものであることにより、コンパクトにたたまれた状態の木枠を吊り上げたのちに地面上に降ろすだけで、このたたまれた状態の木枠を容易に本来の形に組み上げることができる。
【0011】
また本発明によれば、連結部材が、凸部が凹部にはまり込んだ状態で上下の井桁が互いに積み重ねられたときに、上段側の井桁と下段側の井桁とにそれぞれ固定可能であることで、この連結部材を用いて上下の井桁を一体化することができ、したがって、すぐれた強度を有する木枠を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態の木工沈床のための木枠を示す。この木枠は、縦桁11と横桁12とを有した井桁が複数段に積み重ねられた構成である。図示の例では、井桁13A、13B、13Cが3段に積み重ねられている。すなわち、下段の井桁13Aと、中段の井桁13Bと、上段の井桁13Cとが積み重ねられた構成である。なお、縦桁11と横桁12とは、便宜的に縦および横と称したが、特に区別はなく、いずれが縦であっても横であっても差し支えない。また図示の例では、丸太を粗く製材した丸みのある材木によって、縦桁11と横桁12とをそれぞれ構成している。
【0013】
また図示の例では、最も下段の井桁13Aの横桁12同士の間に、縦桁11と同方向の一対の縦桟14がわたされた構成となっている。この縦桟14も、同様の材木によって構成されている。
【0014】
図示は省略するが、木枠の底部は、たとえば樹脂製のネットで覆われることにより、塞がれた構成となるようにされる。
上下の井桁どうしは、連結部材15によって互いに連結されている。連結部材15の詳細は後述するが、この連結部材15が各井桁13A、13B、13Cに対して緩く接続されていることで、木枠は、図1に示すように枡形に組み立てられた姿勢と、図2に示すようにたたまれた姿勢とに姿勢変更可能である。
【0015】
図1に示される、組み立てられた姿勢では、上下の井桁13A、13B、13Cの縦桁11と横桁12とが、それぞれの端部においた互いに上下に重なった状態で配置されている。したがって、上下の縦桁11、11同士の間、および上下の横桁12、12同士の間には、それぞれ空間16が形成されている。
【0016】
これに対し、図2に示される、たたまれた姿勢では、上下の井桁13A、13B、13Cにおける縦桁11と横桁12とが横桁12の長さ方向に沿って互いに側方にずれた状態となっている。これにより、縦桁11と横桁12との重なり状態が解除されて、上下の横桁12、12同士が互いに接近あるいは接した状態となっている。
【0017】
図示の例では、各井桁13A、13B、13Cは、図3に示すように構成されている。すなわち、下段の井桁13Aは、一対の横桁12、12と、これら横桁12、12同士の間にわたされた一対の縦桟14、14と、一対の横桁12、12における一方の端部同士の間にわたってその上側に乗せられた単一の縦桁11とを有した構成である。横桁12、12と縦桟14、14との接合はコーチボルト10によって行われており、横桁12、12と縦桁11との接合はボルト・ナット17によって行われている。
【0018】
中断の井桁13Bは、一対の横桁12、12と一対の縦桁11、11とを有し、縦桁11、11のうちの一方は横桁12、12の一端において横桁12、12の上側に配置され、縦桁11、11のうちの他方は横桁12、12の他端において横桁12、12の下側に配置されている。横桁12、12と縦桁11、11との接合は、同様にボルト・ナット17によって行われている。
【0019】
上段の井桁13Cは、一対の横桁12、12と、3本の縦桁11、11、11とによって構成されている。すなわち、横桁12、12同士は、同一レベルに配置されている。1本の縦桁11は、横桁12、12の一端において横桁12、12の上側に配置されている。他の2本の縦桁11、11は、横桁12、12の他端において、横桁12、12の上側と下側とにそれぞれ配置されている。同様のボルト・ナット17によって、横桁12、12の一端ではこれら横桁12、12と1本の縦桁11とが接合されており、横桁12、12の他端ではこれら横桁12、12と2本の縦桁11、11とが接合されている。
【0020】
上段、中断、下段の井桁13A、13B、13Cをこのように構成することで、図1に示すように木枠を立体的に形成することが可能であるとともに、図2に示すように、たたんだ姿勢とすることが可能である。
【0021】
図4は、図2と同様のたたんだ姿勢における、各井桁13A、13B、13Cと連結部材15との位置関係を示す図である。連結部材15は、図4に示すように上下方向に沿った斜めの方向に配置されており、図5に示すような短冊状の金属板によって構成されている。その下部にはボルト通し孔18が貫通状態で形成され、その上部には、図5において「コ」の字の上側の辺が右上がりに強く傾斜するとともに下側の辺が右上がりに緩く傾斜したような形状を呈した、ボルトを通すことができるガイド孔19が貫通状態で形成されている。
【0022】
ガイド孔19は、「コ」の字の上側の辺の書き始めの位置に相当する、木枠たたみこみ時のガイド部21と、「コ」の字の上側の辺の書き終わりの位置に相当する、吊り下げ時のガイド部22と、「コ」の字の下側の辺の書き始めの位置に相当する、木枠組立時のガイド部23とを有した構成である。
【0023】
図4に詳しく示すように、下段の井桁13Aにおける一方の横桁12と、この横桁12よりも上側に配置される、中断の井桁13Bにおける一方の横桁12とは、一対の連結部材15、15によって互いに連結されている。連結部材15と上下の横桁12、12との接合部は、ボルト24を締めないかあるいは緩く締めた状態で通した構成となっている。
【0024】
これにより、上下一対の横桁12、12と一対の連結部材15、15とによって平行リンクが構成されている。そして、下段および中段の井桁13A、13Bにおける他方の横桁12、12についても同様の平行リンクが構成されており、結局、一対の平行リンクによって、下段および中段の井桁13A、13Bが互いに連結されている。
【0025】
中段の井桁13Bと上段の井桁13Cも、同様に一対の平行リンクによって互いに連結されている。これら中段の井桁13Bと上段の井桁13Cとを連結する連結部材15は、下段の井桁13Aと中断の井桁13Bと連結する連結部材15が設けられている位置を避けた位置に設けられている。
【0026】
平行リンクを構成する連結部材15、15が上下の横桁12、12におけるボルト24、24のまわりにおいて上下方向に旋回するように各部材を変位させることによって、上下の横桁12、12どうしを互いに近づけたり遠ざけたりすることができる。
【0027】
図4に示す、井桁13A、13B、13Cがたたまれた姿勢では、連結部材15は図示のように傾斜した状態にあり、そのガイド孔19における、たたみ込み時のガイド部21にボルト24が通った状態で、このボルト24によって緩く締められている。
【0028】
この状態の要部の詳細を図6に示す。ここでは、連結部材15による中段の井桁13Bと上段の井桁13Cとの連結部が示されている。この部分では、図示のように横桁12のうえに縦桁11が乗せられた構成であり、横桁12の下部に形成された座ぐり部25から縦桁11の上面に向けて、ボルト・ナット17を構成するボルト26が貫通状態で配置されている。縦桁11の上面において、ボルト26にナット27がねじ合わされることで、下側の横桁12と上側の縦桁11とが互いに固定されている。28はボルト26の頭部で、座ぐり部25の内部に収容されている。下段の井桁13Aにおける横桁12と縦桁11との固定構造も、同様の構成である。
【0029】
中段の井桁13Bにおける横桁12の下側に縦桁11が固定されている部分では、図4に示すように下側の縦桁11には座ぐり部は形成されておらず、ボルト26の頭部28が下側の縦桁11の下面から下向きに突出している。下段の井桁13Aにおける縦桁11が設けられていない部分には、座ぐり部25が形成されている。そして、上側の横桁12の上面でナット27がボルト26にねじ合わされている。上段の井桁13Cにおける横桁12の下面には、図4に示す、たたまれた姿勢のときに、中段の井桁13Bにおける横桁12の上面に存在するナット27とボルト26とのねじ合わせ部を収容するための座ぐり部25が形成されている。
【0030】
上段の井桁13Cにおける上下に縦桁11、11を固定した部分では、下側の縦桁11に座ぐり部25が形成され、ボルト26は下側の縦桁11と横桁12と上側の縦桁11との三者を貫通したうえで、上側の縦桁11の上部でナット27にねじ合わされている。
【0031】
上記の座ぐり部25によって凹部が形成されており、上段の井桁13Cの縦桁11以外では、ボルト26とナット27とのねじ合わせ部によって凸部が形成されている。また中段の井桁13Bにおける横桁12の下側に縦桁11が固定されている部分では、ボルト26の頭部28が縦桁11の下面から下向きに突出することで、凸部が形成されている。上段の井桁13Cの縦桁11では、適当な座ぐり部を形成することで、ボルト26とナット27とのねじ合わせ部は、木工沈床を構成したときに異物が当たることによる損傷や摩耗の発生を防止するために、縦桁11の内部に埋没した状態で設けられている。
【0032】
なお、上記においては、上段と中段と下段の井桁13A、13B、13Cを備えた3段の木枠について説明したが、中段の井桁13Bの数を増減させることによって、2段あるいは4段以上の木枠を構成することも可能である。
【0033】
木枠は、図4に示される、たたまれた姿勢となるように、工場で生産され、図示を省略した樹脂製のネットによってその底部が塞がれる。そして、そのままの姿勢で保管されるか、あるいはそのままの姿勢で木工沈床の敷設場所まで運搬される。そのとき、上記のようにたたまれた姿勢で保管あるいは運搬されるために、保管のための大きなスペースを必要とせず、また容易に運搬することができる。
【0034】
木工沈床の敷設現場では、たたまれた姿勢の木枠における一番上の縦桁11に、図7に示すようにベルト30を掛けて、この縦桁11を吊り上げる。
これによって、図6に示す状態から上段の井桁13Cが持ち上げられる。すると、図8に示すように、一対のボルト24、24のまわりで板状の連結部材15が上方へ旋回される。詳細には、図6において連結部材15のガイド孔19のたたみ込み時のガイド部21に通されていたボルト24が、上段の井桁13Cの持ち上げに伴って上方へ移動し、ガイド孔19の吊り下げ時のガイド部22に達する。
【0035】
すると、連結部材15の旋回にともなって上段の井桁13Cも図8において矢印で示すように旋回動を行う。このとき、上段の井桁13Cは、中段の井桁13Bにおける、特に縦桁11や、縦桁11から上方へ突出したボルト26の先端部およびナット27と干渉することなく、その横桁12の端部が中段の井桁13Bの縦桁11の上方に位置することになる。このとき、図8および図7に示すように、上段の井桁13Cの横桁12と中段の井桁13Bの縦桁11との間には、中段の井桁13Bのボルト26の先端部およびナット27が存在することができる隙間31が形成される。またこのとき、上段の井桁13Cの横桁12の座ぐり部25と、中段の井桁13Bのボルト26の先端部およびナット27とは、互いに上下方向に距離をおいて位置する。
【0036】
この状態でさらに上段の井桁13Cが持ち上げられると、中段の井桁13Bが、吊り下げ時のガイド部22が上段の井桁13Cのボルト24に掛けられている連結部材15を介して、上段の井桁13Cから吊り下げられる。
【0037】
さらに、同様にして、下段の井桁13Aが中段の井桁13Bから吊り下げられ、結局、上段の井桁13Cから中段の井桁13Bが吊り下げられ、中段の井桁13Bから下段の井桁13Aが吊り下げられる。
【0038】
そこで、この状態の木枠を、木工沈床の敷設工事現場に降ろす。すると、まず下段の井桁13Aが地面の上に降ろされ、この下段の井桁13Aの上に中段の井桁13Bが降ろされ、この中段の井桁13Bの上に上段の井桁13Cが降ろされる。
【0039】
中段の井桁13Bの上に上段の井桁13Cが降ろされるときの状況を、図9を参照して説明する。このとき、中段の井桁13Bはすでに下段の井桁13Aの上に降ろされて支持されているが、この中段の井桁13Bに連結された連結部材15に対し、上段の井桁13Cのボルト24が下向きに移動する。すると、ボルト24は、ガイド孔19の吊り下げ時のガイド部22から、それよりも下側の、木枠組立時のガイド部23に向けて移動し、この木枠組立時のガイド部23に収められる。すなわち、ガイド孔19に設けられた遊びの範囲で、中段の井桁13Bに対して上段の井桁13Cが接近する。
【0040】
これによって、上段の井桁13Cの横桁12が中段の井桁13Bの縦桁11に乗って支持される。そして、このとき、中段の井桁13Bの縦桁11から上方へ突出していたボルト26の先端部およびナット27は、いずれも上段の井桁13Cの横桁12の座ぐり部25の内部に収容される。
【0041】
そして、この状態で各ボルト24をしっかりと締結すれば、図10および図1に示すように木枠の組立を完成することができる。すなわち、上述のように、たたまれていた井桁13A、13B、13Cにおける上段の井形13Cを力の作用点としてこれら井桁13A、13B、13Cを吊り上げたうえで地面の上に降ろすだけで、木枠を仮の組立状態とすることができ、そのうえでボルト24を締結するだけで組立を完成することができる。
【0042】
組立完成状態においては、上記のように中段の井桁13Bの縦桁11から上方へ突出していたボルト26の先端部およびナット27が上段の井桁13Cの横桁12の座ぐり部25の内部に収容されるため、上段の井桁13Cと中段の井桁13Bとか互いに側方へ位置ずれすることを防止できる。また、ボルト24が貫通している連結部材15のガイド孔19のガイド部23は、上述のように「コ」の字の下側の辺の書き始めの位置に存在し、図9に示すようにガイド部23の上下にはガイド孔19すなわち空間は存在せず連結部材15の肉部32が存在するため、上段の井桁13Cと中段の井桁13Bとが互いに上下方向に位置ずれすることを防止できる。
【0043】
つまり、木枠を組立式としたにもかかわらず、組立完了後は一体化を達成することができてその形がくずれることを確実に防止でき、強度上の問題のない木枠を構成することができる。このため、この木枠の内部に石材を詰め込んで所期の性能を有する木工沈床を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の木工沈床のための木枠の立体図である。
【図2】同木枠のたたまれた姿勢を示す図である。
【図3】同木枠の各井桁を示す立体図である。
【図4】たたまれた姿勢の木枠における各井桁と連結部材との位置関係を示す図である。
【図5】連結部材を示す図である。
【図6】図4の要部の詳細を示す図である。
【図7】たたまれていた木枠を吊り上げた状態を示す図である。
【図8】図7の状態における要部の詳細を示す図である。
【図9】図8の状態から上段の井桁を降ろしたときの様子を示す図である。
【図10】木枠の組立完成状態を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
11 縦桁
12 横桁
13A 下段の井桁
13B 中段の井桁
13C 上段の井桁
15 連結部材
17 ボルト・ナット
21 たたみ込み時のガイド部
22 吊り下げ時のガイド部
23 木枠組立時のガイド部
24 ボルト
25 座ぐり部
31 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の木製の縦桁と一対の木製の横桁とで構成される井桁が複数段に積み重ねられた構成の木枠を有し、
前記木枠は、上段側の井桁と下段側の井桁とが連結部材によって互いに連結された構成であり、
前記連結部材は、その一端部および他端部が上下の井桁の一方および他方に接続された状態でそれぞれの接続部を中心として上下方向に旋回自在とされることで、上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに側方にずれて重ならないようになったうえでこれら上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢と、上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した姿勢とに姿勢変更を可能とするものであるとともに、前記接続部に遊びを有することで、上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した状態から互いの相対的な接近動を許容可能であり、
上下の井桁は、一方の縦桁または横桁に凸部を有するとともに他方の横桁または縦桁に凹部を有し、
前記凸部および凹部は、上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した状態から上下方向に沿って互いに離間した状態に変化するときに、一方の井桁の凸部が他方の井桁と干渉しないように互いに距離をおくものであるとともに、上下の井桁が互いに離間した状態から前記遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに相対的に接近し、かつその接近により凸部が凹部にはまり込むものであることを特徴とする木工沈床。
【請求項2】
木枠は、上段側の井桁を力の作用点として吊り下げられることで、上下の井桁が上下方向に沿って互いに接近した姿勢から、自重により上下の井桁が上下方向に沿って互いに離間した姿勢に姿勢変更されるものであるとともに、この吊り下げられた状態から地面上に降ろされることで、遊びの範囲で上下の井桁の縦桁と横桁とが互いに相対的に接近して凸部が凹部にはまり込むものであることを特徴とする請求項1記載の木工沈床。
【請求項3】
連結部材は、凸部が凹部にはまり込んだ状態で上下の井桁が互いに積み重ねられたときに、上段側の井桁と下段側の井桁とにそれぞれ固定可能とされていることを特徴とする請求項1または2記載の木工沈床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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