説明

木材ベースの製品のための防腐剤における改善

接着された木材ベースの製品を微生物による攻撃および分解に対して保護するための防腐剤としてのトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールの使用法。この方法は、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを、接着された木材ベースの製品を製造する工程において適用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は接着された木材ベースの製品のための抗真菌性の防腐剤に関する。
【0002】
発明の背景
木材は生物学的な材料であり、真菌および昆虫による攻撃を受けやすい。これらの有機体は木材の外観を損ない、かつ木材はその構造的な強度を著しく減じる。木材および木材ベースの製品は、殺真菌剤または殺虫剤または両者を適用することにより、木材を破壊する有機体の作用から保護することができる。このような処理は、特に自然な耐久性が低い材木、たとえばラジアタマツ(radiata pine)およびその他の軟材種に関して、木材製品の寿命を著しく改善することができる。
【0003】
いくつかの木材ベースの製品にとって、防腐剤を適用する通常の方法は不適切である。たとえば銅・クロム・ヒ素(CCA)のような水性の処理は、著しい劣化および製品の損失を生じることなく、積層木材製品、パーティクルベースの製品または繊維ベースの製品に適用することができない。これらの製品のためのその他のポスト製造処理、たとえば軽有機溶剤防腐剤(light organic solvent preservative:LOSP)は高価であり、かつ処理を行うために付加的なプロセス工程を必要とし、余分なコストを生じる。
【0004】
いくつかの木材ベースの製品の製造業者により好まれている1つの方法は、製造中に接着剤へ添加することによって防腐剤を適用することである。このアプローチは、比較的薄いか、または小さい粒子、たとえば木繊維、木材チップもしくはフレークおよび薄い単板から構成される任意の木材製品のために使用することができる。合板、単板積層材(LVL)、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF)、ウェハボード/ストランドボード/配向性ストランドボード(OSB)およびパーティクルボードはこの範疇に該当する。
【0005】
この適用方法の重大な欠点は、製造工程において使用される接着剤の性質および処理のために使用される配合物のタイプである。
【0006】
一般に木材ベースの製品のための接着剤系は高いpH(9〜12)を有するか、または高度に反応性である(たとえばイソシアネートベースの接着剤)。
【0007】
従って配合物をこのような環境に添加することは、分子の迅速な分解を生じうる。添加された配合物の耐久性に対するもう1つの挑戦は、接着剤のための硬化条件である。これらはしばしば高圧プレス装置中での高い温度(〜170℃)である。
【0008】
これらの条件は添加された防腐剤がいずれも、製品の寿命の間はその活性の少なくともいくらかは効果を維持するために十分な耐久性を有することを必要とする。
【0009】
従来技術においては、トリアゾールが一般的に、木材の腐食を生じることで知られている真菌である担子菌類に対して効果的であることが公知である。硬材(solid wood)を腐食から保護するために最も一般的に使用されるトリアゾールはテブコナゾールおよびプロピコナゾールである。腐食から保護するために木材中で必要とされる活性成分の量は、テブコナゾールに関しては50g/m木材〜300g/m木材、プロピコナゾールに関しては220g/m木材〜490g/m木材の範囲であることが判明している。これらの2種類のトリアゾールはいくつかのケースでは相乗作用することができることも開示されている。
【0010】
さらに、接着剤系の性質に基づいて、硬質木材の適用において活性を示す上記のトリアゾールは、グルーライン処理において使用される場合、プロセス中でのその後の分解に基づいて、または木材ベースの製品中での不均一な分布に基づいて接着剤混合物中へ大量に添加しなくてはならないことも公知である。
【0011】
従って木材ベースの製品の製造において適用することができる、木材ベースの製品のための防腐剤に対する要求は存在する。
【0012】
出願人は意外にも、微生物、特に真菌による攻撃および分解に対して木材ベースの製品を保護するための防腐剤として、トリアジメフォンおよびトリアジメノールを使用することができることを見出した。
【0013】
トリアジメフォンおよびトリアジメノールは意外にも、グルーライン処理の条件下で安定しており、従って接着された木材ベースの製品の製造における防腐剤として使用することができる。いくつかのケースではアルカリ性条件下で、トリアジメフォンを、これらの条件下で安定しており、かつ要求された生物学的な特性を示すトリアジメノールへと変換する。
【0014】
発明の対象
トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを木材ベースの接着された製品のための抗微生物性防腐剤として使用する方法を提供することが本発明の第一の対象である。
【0015】
木材ベースの接着された製品の製造において使用するための防腐剤として改善された抗菌性を有する組成物を提供することが本発明の第二の対象である。
【0016】
発明の概要
1.本発明の1実施態様によれば、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを、接着された木材ベースの製品の製造工程中に適用することを特徴とする、接着された木材ベースの製品を微生物による攻撃および分解に対して保護するための防腐剤としてトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを使用する方法を提供する。
【0017】
2.本発明のもう1つの実施態様によれば、接着剤、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを含有する、微生物による攻撃および分解に対して、接着された木材ベースの製品を保護するための組成物を提供する。
【0018】
発明の詳細な説明
(±)1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オン(トリアジメフォン)が、殺真菌剤として、特に担子菌類を駆除するために農業において使用されている公知のトリアゾール化合物である。トリアジメフォンはアルコール類似体(±)1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール(トリアジメノール)を有しており、これは類似の活性を示し、かつ同じ目的のために使用される。これらの公知の化合物は農業のために使用において、低量での高い活性より、新しいトリアゾール化合物、たとえばプロピコナゾールおよびテブコナゾールに取って代わられている。
【0019】
【表1】

【0020】
The Pesticide Manual、第12版、British Crop Protection Council、Farnham、Surrey、UK、2000年によるデータ。
【0021】
公知のトリアゾールをグルーラインにより木材ベースの製品、たとえばストランドボード、パーティクルボード、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF)、合板および単板積層材(LVL)へ適用する場合、予測されるであろうとして記載した活性成分含有率では期待される性能の水準に達しない。
【0022】
意外にも、これらの条件下で、トリアジメフォンおよびトリアジメノールは意外なほど低いレベルで顕著で一致した効率を示す。このことは、添加されたトリアジメフォン/トリアジメノールの低い量に対して改善された性能の水準が示されることを意味する。
【0023】
PFタイプの接着剤において見られるようなアルカリ性条件下でグルーラインにおいて使用する場合、トリアジメフォンはアルコール類似体のトリアジメノールへと還元され、これは意外にもトリアジメフォンと同じ効率を示す。
【0024】
【表2】

【0025】
マツの亜種(pinus spp)から、フェノールホルムアルデヒド接着剤を使用して製造された合板のグルーライン中、
日本木材保存協会の標準試験の手順を使用、
軽有機溶剤防腐剤(トリブチルスズオキシド)。
【0026】
この活性の新規の性質は、トリアゾール分子のトリアジメフォンおよびトリアジメノールを、微生物による攻撃から、特に真菌により生じる特定の腐食から、接着された木材ベースの製品を保護するために特に適切なものにする。
【0027】
本発明の方法によりトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールは、接着された木材ベースの製品の製造中に有利に接着剤(グルーライン処理)に添加される。意外にも本発明によりトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールは低量で適用することができ、その一方で木材ベースの製品の高い保護が得られる。
【0028】
本発明の方法は有利に真菌による攻撃および分解に対する、接着された木材ベースの製品の保護を提供する。
【0029】
木材を分解する真菌の例は次のものである:
カエトミウム、たとえばカエトミウム・グロボスムまたは
カエトミウム・アルバ・アレヌルム、
フミコラ・グリセア、
ペトリエラ、たとえばペトリエラ・セチフェラ、
トリクルス、たとえばトリクルス・スピラリス、
バシジオミセテス(担子菌類)、
コニフォラ、たとえばコニフォラ・プテアナ、
コリオルス、たとえばコリオルス・ベルシコロール、
コンキオポリア、たとえばコンキオポリア・エクスパンス、
グレノスポラ、たとえばグレノスポラ・グラフィイ、
グロエオフィルム、たとえばグロエオフィルム・アビエチヌムまたは
グロエオフィルム・アドラツムまたは
グロエオフィルム・ポルタクツムまたは
グロエオフィルム・セピアリウムまたは
グロエオフィルム・トラベウム、
レンチヌス(マツオウジ属)、たとえばレンチヌス・シアチフォルメスまたは
レンチヌス・エドデス(シイタケ)または
レンチヌス・レピデウスまたは
レンチヌス・グリヌスまたは
レンチヌス・スクアロロスス、
パキシルス、たとえばパキシルス・パヌオイデス、
プレウロツス(ヒラタケ属)、たとえばプレウロツス・オストレアツス、
ポリア、たとえばポリア・モンチコーラまたは
ポリア・プラセンタまたは
ポリア・バイランティイまたは
ポリア・バポラリア、
セルプラ、たとえばセルプラ・ヒマントイデスまたは
セルプラ・ラクリマンス、
ステレウム、たとえばステレウム・ヒルスツム、
チロミセス、たとえばチロミセス・パルストリス。
【0030】
接着された木材ベースの製品の製造方法は一般に周知である。この製造方法は一般に、比較的薄いか、または小さいパーティクル、たとえば木繊維、木材チップもしくはフレークおよび薄い単板から構成される任意の木材複合材製品のために使用される。合板、積層木材(LVL)、中密度ファイバーボード(MDF)、ウェハボード/ストランドボード/配向されたストランドボード(OSB)およびパーティクルボードをこの方法により製造することができる。
【0031】
この方法の間に、薄い、もしくは小さい木材パーティクルを圧力の適用下で接着剤または接着剤系を添加することにより相互に組み合わせて木材複合材製品を形成する。製造工程において接着剤または接着剤系に木材防腐剤を添加すること、いわゆるグルーライン処理は公知の実施法である。
【0032】
本発明の方法によれば、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールは有利には木材ベースの製品の製造工程の間に接着剤に添加される。接着剤、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを含有し、かつ場合により接着剤もしくは接着剤系と相容性の1種もしくは複数種の溶剤を含有する組成物をまず製造し、かつ該組成物を製造工程において木材パーティクルに適用することも可能である。
【0033】
本発明の方法において使用することができる溶剤はたとえばN−メチル−ピロリドン、グリコールエーテル、テキサノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、シクロヘキサノンである。
【0034】
多量のグリコールは、接着剤の粘度または硬化時間に影響を与える場合があるので回避すべきである。
【0035】
接着された木材ベースの製品の製造において使用することができる接着剤のための例は次の接着剤または接着剤系である:尿素もしくは尿素フェノールベースの系、たとえばUF=尿素ホルムアルデヒド樹脂、PF=フェノールメラミン(ホルムアルデヒド)樹脂、MUF=メラミン(ホルムアルデヒド)尿素樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)系、pMDI=ポリマーのメチレンジフェニルジイソシアネート。UF、MUF、PFおよびPVA系が有利である。
【0036】
本発明のさらに有利な実施態様では、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを、有利にはテブコナゾールおよびシプロコナゾールから選択される、少なくとも1種の別の殺真菌剤との混合物中で使用する。
【0037】
意外にも、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールは、組合せ製品として適用する場合、接着された木材ベースの製品中のその他のトリアゾール殺真菌剤、つまりテブコナゾールおよびシプロコナゾールの保護効果を強化することが判明した。トリアジメフォンとテブコナゾールとを、有利には5:1〜1:2のモル比で、またはシプロコナゾールと有利には5:1〜1:3の比で組み合わせることにより、腐食を生じる真菌に対する、接着された木材ベースの製品の幅広い保護が得られる。
【0038】
本発明のもう1つの実施態様では、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを、グルーラインにより適用する場合に効果的であることが公知の1以上の殺虫剤と組み合わせて適用する。適切な殺虫剤は合成ピレスロイド、たとえばペルメトリン、シペルメトリン、α−シペルメトリン、デルタメトリン、シフルトリン、ビフェントリン、ネオニコチノイド、たとえばイミダクロプリド、クロチアニジン、アセトアミプリド、チアメトキサム、クロロフェナピルおよびフィプロニルを含む。適切な比率での殺虫剤とトリアジメフォン/トリアジメノールとの、またはトリアジメフォン/トリアジメノールおよびテブコナゾールもしくはシプロコナゾールの組合せとの混合物は、大部分の木材ベースの複合材の工程内処理のための防腐剤および接着剤系の簡易な1工程の適用を提供する。
【0039】
本発明はさらに、微生物による攻撃および分解に対する、接着された木材ベースの製品の保護のための組成物を提供する。このような組成物はトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールおよび接着剤または接着剤系を含有する。有利な接着剤または接着剤系は上記のものである。本発明の組成物はさらに、接着剤または接着剤系と相容性の溶剤のようなその他の添加剤を含有していてもよい。あるいは該組成物は、水が組成物の1成分となるように水中に懸濁していてもよい。本発明の組成物は一般に公知の方法により、たとえば単一の成分を混合することにより製造することができる。該組成物は本発明の方法により、木材ベースの接着された製品の製造工程の間に木材パーティクルに添加することによって使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着された木材ベースの製品を微生物による攻撃および分解に対して保護するための防腐剤としてのトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールの使用法において、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを、接着された木材ベースの製品を製造する工程において適用することを特徴とする、接着された木材ベースの製品を保護するための防腐剤としてのトリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールの使用法。
【請求項2】
木材ベースの製品が、木繊維、木材チップもしくはフレークおよび薄い単板、合板、単板積層材(LVI)、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(MDF)、ウェハボード/ストランドボード/配向性ストランドボード(OSB)およびパーティクルボードから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
木材ベースの製品を製造する際に、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを接着剤に添加する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
接着剤、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールおよび場合により1種以上の溶剤からなる混合物をグルーライン添加により適用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールと、殺真菌剤および殺虫剤の群から選択される少なくとも1種の別の活性物質とからなる混合物を使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールと、テブコナゾールおよびシプロコナゾールから選択される少なくとも1種の化合物とからなる混合物を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
接着剤、トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを含有する、微生物による攻撃および分解に対して、接着された木材ベースの製品を保護するための組成物。
【請求項8】
水中で懸濁または乳化された殺真菌剤および殺虫剤から選択される1種以上の別の活性物質ならびに場合により接着剤と相容性の1種以上の溶剤を含有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
溶剤として水を含有する請求項7記載の組成物。
【請求項10】
トリアジメフォンおよび/またはトリアジメノールを含有する接着された木材ベースの製品。

【公表番号】特表2006−510501(P2006−510501A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560193(P2004−560193)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/NZ2003/000280
【国際公開番号】WO2004/054766
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(504419760)ランクセス ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (58)
【Fターム(参考)】