説明

木材乾燥に関する改良

生の木材の内腔から水分や溶質を除去し、木材中の細胞壁を一様に充分に膨らんだままにする方法は、生の木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界二酸化炭素を用いて木材から水分や溶質を選択的に除去する方法に関する。特に、しかし排他的にではなく、本発明は、細胞壁を充分に膨らんだ生の状態に保ったまま、生の木材(グリーン材)(「生材」ともいう。)の内腔から水分や溶質を除去するための超臨界二酸化炭素の使用に関する。本発明はまた、実用的目的のための木材の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然な状態での木材は、たとえば生きている木でも新たに切断した製材品でも、高い含水率を有することが多く、含水率はその木材の特定の種類や場所およびその木の種類や状態に依存する。水分は結合水、すなわち、細胞壁内で結合し、細胞壁の成分である炭水化物やリグニンポリマーに結合した水と、自由水、すなわち、内腔内の水とでできている。内腔は樹液や他の溶質をその自由水中に含むことが多い。木の種の間には大きな違いがあるが、含水率が160%〜200%(木材のオーブン乾燥重量に対する)近辺であることは普通である。
【0003】
実用的目的のためには、乾燥(シーズニングとして知られるプロセス)されない限り、高含水率の木材、本書では「生材(生の木材)」は、乾燥中の不安定性や劣化を受けやすいことを含め、好ましくない特性を有する。含水率の変化による木材の寸法変化は、建設に用いられた場合に、大きな問題を引き起こす。そこで、安定して実用的な材料を得てその有用性を最大化するように、生材を乾燥するのは普通の方法である。木材の非均質性と高含水率のために、木材の乾燥が木材のゆがみを生じたり、そりや内部および表面の割れ目などのダメージを木材に生ずることは珍しいことではない。
【0004】
生材を乾燥するのに用いられる2つの一般的な方法は、空気乾燥と、オーブンあるいはキルン乾燥である。
【0005】
空気乾燥では、生材は外気で受動的に乾燥するがままになされる。この方法は、天候に依存し、一般的にゆっくりなプロセスである。受動的な空気乾燥の利点は、簡単であることと、キルン乾燥で生ずる高温や高強制内部湿度勾配応力に木材が曝されず(キルン乾燥に比べて)マイルドなプロセスということである。オーブンあるいはキルン乾燥では、生材は、加熱空気が循環する断熱されたチャンバ内に置かれる。この方法は空気乾燥の欠点、つまりゆっくりであることを克服するが、木材に形成される暗い色の領域であるキルン染みや、木材の割れ目やゆがみを高い率で生ずる高強制内部湿度勾配応力(たとえば、木材の外側が乾燥し、内側が湿ったままである)などの別の好ましくない結果を生じることがある。これらの結果は木材品質、生産量および価値を損なう。
【0006】
木材の細胞壁が結合水を失うと、木材の寸法、強度および柔軟性に変化を生ずる。木材の一部(空気乾燥やキルン乾燥で表面に近い木材で多い)が、木材の他の部分の内腔や細胞壁から水が失われるよりも速い速度で、内腔や細胞壁から湿度を失うと、従来の乾燥においても湿度勾配応力を生ずることが多い。空気乾燥あるいはキルン乾燥のときの乾燥プロセス中の木材の画像によれば、木材は乾燥した端部と湿潤の中心部を有することが示される。結果として、木材のある部分の寸法と強度の変化が、木材の他の部分の変化とある比率および範囲で異なることになる。その結果として、木材構造への損傷やゆがみとなることが多い。
【0007】
受動的空気乾燥やキルン乾燥以外の方法が、木材を乾燥するのに用いられている。それらの方法は、除湿、水の沸点以下の温度で木材から水分を蒸留する共沸混合物の使用、および、生材中の水分を凍結しその後昇華プロセスにより除去するフリーズドライを含む。しかし、これらの方法は、湿度勾配応力(湿度分布はときどき別のパターンではあるが)をも生じ、細胞壁や木材に損傷を与える。
【0008】
無線周波数乾燥やマイクロ波乾燥のような電磁気放射乾燥により木材を乾燥することも知られている。特に、無線周波数真空(「RFV」)乾燥は、空気乾燥やキルン乾燥より少ない湿度勾配応力を生ずるが、これらの方法は時間がかかり、特に木材が高い湿度を有すると大きな入力エネルギが必要となる。しかし、それらは、たとえば、繊維飽和点あるいはそれに近い木材のような、湿度を低減した木材に使用されると、よりエネルギ的に実行可能であり、速い。
【0009】
超臨界流体とは、その流体の臨界点以上の温度・圧力を受けると気体と液体の両方の特性を示す流体である。よって、超臨界状態の流体は、液体の溶媒和能力を有するが、気体のような拡散性を持つ。
【0010】
木材を乾燥する目的以外の木材処理における超臨界流体の使用は知られている。米国特許第6,638,574号では、超臨界流体を保存料を木材中に含浸するのに用いるが、米国特許第4,308,200号では、超臨界流体を木材から有機物を抽出するのに用いる。先行技術で説明する既知の方法では、超臨界二酸化炭素の溶媒和する性質を利用し、材木処理材(殺虫剤など)を従来の予乾燥材木、MDFボード(中密度繊維板)、積層材等に入れたり、予乾燥微粉化木材から有機物を取り出すのに用いてきた。
【0011】
米国特許第5,041,192号では、特に第4欄14〜18行に、超臨界流体を特別用途で木材乾燥に用いることができることが記載されている。特別用途として考えられるのは、スコットランド・ファイフのセントアンドリュース大学で開発された考古学試料の乾燥のプロセスで、考古学的木材中の水分をメタノールで置き換え、その後に超臨界二酸化炭素を使ってメタノールを抽出することにより考古学的木材を乾燥させることを含む。
【0012】
米国特許第4,995,943号では、数気圧の超大気圧(super atmospheric pressure)下で二酸化炭素を用い、自然に(空気)乾燥した原材料(枝、茎)から手に入れた微粉化セルロース材をさらに前処理し乾燥して、さらに化学処理/変換するために微粉を用意しあるいは微粉化を高める。
【0013】
当業者は、超臨界二酸化炭素の使用と用途(たとえば溶媒として)はヘキサンケミストリ(hexane chemistry)と類似もしくは同等と見る。したがって、ドライケミストリとして見られる。結果として、木材に関する超臨界二酸化炭素の使用は、含有水はメタノールのような有機溶媒に置換されている木材あるいは予め乾燥した木材に一様に関連していた。
【0014】
本発明の目的は、生材の内腔から水分と溶質を除去するための改良方法を提供すること、あるいは、木材の内腔から水分と溶質が排出されるが細胞壁は未乾燥のままで、木材中での湿度勾配の変化が少ない木材製品を提供すること、あるいは、木材の乾燥および/または処理のための、あるいは少なくとも公衆に有用な選択肢を与える、改良方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0015】
本明細書では、用語「空気乾燥法またはキルン乾燥法またはオーブン乾燥法」とその派生語は、木材から水分を抽出する既知の方法を指し、その方法には、空気による受動的乾燥と、オーブンあるいはキルン乾燥、および除湿乾燥等のいずれかの空気による能動的乾燥とを含む。
【0016】
本明細書では、用語「キルン乾燥」と「オーブン乾燥」は同義語として用いられ、典型的にはファン等による空気移動を伴う、加熱空気により乾燥することを指す。用語「木材のオーブン乾燥重量」は、オーブンで行われてもキルンで行われても加熱空気乾燥後の充分に乾燥した木材の重量を指す技術用語である。
【0017】
本明細書では、用語「生材(生の木材)」は、高い含水量あるいは湿度を含む木材を指す。生材は通常、生きている状態で自然に生ずるような材料と同じあるいは類似の木材から成る。この用語は、切断したばかりの木材と未だ乾燥されていない木材とを含むが、これらには限定されない。この用語「生材」はまた、伐採と本書で説明するプロセスの開始との間の遅れの結果、ある程度水分を失った木材あるいは大まかな処置あるいは処理をされたが繊維飽和点での含水率よりかなり高い含水率が残っている木材をも含むことが意図される。典型的には、生材は、その木材のオーブン乾燥重量の約180%と150%の間の含水率を有するが、この値は木材の種類や処理されあるいは取り扱われた方法により変化する。
【0018】
本明細書では、「充分に膨らんだ」は、木材細胞壁が実質的に生の状態のままで、水が細胞壁への結合を維持している木材細胞壁の状態を指す。
【0019】
本明細書では、「一様に充分に膨らんだ」は、木材の別の領域中でも実質的な状態の変動がなく充分に膨らんだ木材の細胞壁を指す。この用語は、一片の木材のある領域では充分に膨らんだ細胞壁を含むが、その木材の他の領域の細胞壁はある程度乾燥している従来の乾燥方法から本発明を区別するために用いられる。
【0020】
本明細書では、「製材品」は、製材された大角材、典型的には丸太から製材され、たとえば、断面が100×50mmの材木フレーム構造用途に適した寸法の木材長さ、梁材および板材を含み、どれもかんなをかけれても、かけられなくてもよい(非構造材あるいは仕上げ用途用の丸太とは対照的に)。
【0021】
第1の態様では、広義に本発明は、生材に超臨界二酸化炭素を接触させることにより、木材中の細胞壁を一様に充分に膨らんだままにしながら、生材の内腔から水分や溶質除去するプロセスにある。
【0022】
好ましくは、水分や溶質は、木材の含水率が約30〜80%になるまで除去される。
【0023】
好ましくは、水分や溶質は、木材の含水率が繊維飽和点あるいはその近くになるまで除去される。
【0024】
好ましくは、二酸化炭素は、超臨界圧に未臨界圧が続く周期で用いられる。
【0025】
第2の態様では、広義に本発明は、一様に充分に膨らんだ細胞壁からなり、約30〜80%の含水率を有する木材にある。
【0026】
第3の態様では、広義に本発明は、実質的に水のない内腔を有する一様に充分に膨らんだ細胞壁を備える木材にある。
【0027】
好ましくは、木材の内腔は、「キルン染みの形成」の原因となり、または、そこに含まれる、溶質が存在しない。
【0028】
第4の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:超臨界二酸化炭素を用いて生材の内腔から水分や溶質を除去し、木材を約30〜80%の含水率にする工程と;約12〜20%の含水率まで木材をさらに乾燥する工程とを備える。
【0029】
好ましくは、空気乾燥、共沸乾燥、フリーズドライ、無線周波数やマイクロ波などの電磁気放射乾燥、あるいはキルン乾燥、若しくは追加の超臨界流体処理のうちの1つあるいは複数を用いて、さらに木材を乾燥する。
【0030】
好ましくは、超臨界二酸化炭素を生材に接触させて、生材の含水率を約30〜60%に減少させる。
【0031】
第5の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは、超臨界二酸化炭素を生材に接触させて内腔から水分や溶質を除去して木材を繊維飽和点にする工程と;約12〜20%の含水率まで木材をさらに乾燥する工程とを備える。
【0032】
好ましくは、空気乾燥、共沸乾燥、フリーズドライ、無線周波数やマイクロ波などの電磁気放射乾燥、あるいはキルン乾燥、若しくは追加の超臨界流体処理のうちの1つあるいは複数を用いて、さらに木材を乾燥する。
【0033】
好ましくは、二酸化炭素は周期的に用いられる。
【0034】
好ましくは、超臨界二酸化炭素を接触させる各周期は、加圧工程を有し、その後に減圧工程となる。
【0035】
好ましくは、超臨界二酸化炭素を接触させる各周期は、加圧の後、減圧の前に、保持時間工程を含む。
【0036】
好ましくは、周期の加圧、保持時間および減圧工程の数、期間、温度および圧力は、水分減少速度が最大となるように最適化される。
【0037】
好ましくは、空気乾燥、無線周波数やマイクロ波などの電磁気放射乾燥、共沸乾燥、フリーズドライ、あるいはキルン乾燥により木材を乾燥する工程は、約12〜20%の環境平衡含水率に達するまで木材を環境中に保持する工程を含むか、その工程が後に続く。
【0038】
好ましくは、木材を乾燥するプロセスは、空気乾燥あるいはオーブン乾燥の前か後に、水溶液または非水溶液中で変性ケミカルあるいは変性材で木材を処理する工程をさらに備える。
【0039】
好ましくは、木材を処理する工程は、1つあるいは複数の水溶液あるいは水相溶性溶液で木材を処理する工程を備える。
【0040】
好ましくは、水溶液で処理した木材に、次に超臨界二酸化炭素を接触させ、内腔から残留水溶液を除去する。
【0041】
好ましくは、水溶液で処理し次に超臨界二酸化炭素を接触させた木材を、次に、従来の乾燥法あるいは無線周波数やマイクロ波の電磁気放射乾燥法を用いて12〜20%の含水率まで乾燥する。
【0042】
本発明の別の好適な形では、木材を処理する工程は、水ではなく水混和性溶媒中の変性ケミカルや変性材を備える。
【0043】
好ましくは、溶媒はエタノールなどの有機溶媒である。
【0044】
好適な形として、木材処理の性質を有する変性ケミカルや変性材は、木材の生物学的耐久性を改良するエタノール中のホウ酸である。
【0045】
好ましくは、水混和性有機溶媒中で変性ケミカルや変性材を用いて処理をした後、含水率が12〜20%に減少するまで木材に超臨界二酸化炭素をさらに接触させる。
【0046】
あるいは、水混和性有機溶媒中で変性ケミカルや変性材を用いて処理をした後、木材を従来の方法で乾燥し、あるいは超臨界二酸化炭素を用いた乾燥と従来の方法または無線周波数やマイクロ波のような電磁気放射乾燥で木材を12〜20%の含水率まで乾燥してもよい。
【0047】
第6の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:生材をチャンバに置く工程と;チャンバ内で超臨界二酸化炭素を形成するようにチャンバ内に二酸化炭素を導入する工程と;生材の含水率を約30〜80%に低減するように、32℃より高い温度において一連の圧力周期(たとえば、7.2〜20MPa(72〜200bar)から0.1〜7.2MPa(1〜72bar))により生材に超臨界二酸化炭素を接触させる工程と;多数の圧力周期が終わった後に木材をチャンバから取り出す工程と;生材の含水率を約12〜20%にさらに低減する工程とを備える。
【0048】
第7の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:生材をチャンバに置く工程と;チャンバ内で超臨界二酸化炭素を形成するようにチャンバ内に二酸化炭素を導入する工程と;生材の含水率を繊維飽和点に低減するように、32℃より高い温度において一連の圧力周期(たとえば、7.2〜20MPa(72〜200bar)から0.1〜7.2MPa(1〜72bar))により生材に超臨界二酸化炭素を接触させる工程と;多数の圧力周期が終わった後に木材をチャンバから取り出す工程と;生材の含水率を約12〜20%にさらに低減する工程とを備える。
【0049】
第8の態様において、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:生材をチャンバに置く工程と;超臨界二酸化炭素を導入して生材の含水率を約30〜80%に減少するように、32℃より高い温度において一連の圧力周期(たとえば、7.2〜20MPa(72〜200bar)から0.1〜7.2MPa(1〜72bar))を実施する工程と;チャンバの圧力を下げる工程と;木材をチャンバから持ち出す工程と;生材の含水率を約12〜20%に減少するようにさらに木材を処理する工程とを備える。好ましくは、超臨界二酸化炭素を生材に接触させて生材の含水率を約40〜60%に減少する。
【0050】
第9の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:生材をチャンバに置く工程と;超臨界二酸化炭素を導入して生材の含水率を繊維飽和点に低減するように、32℃より高い温度において一連の圧力周期(たとえば、7.2〜20MPa(72〜200bar)から0.1〜7.2MPa(1〜72bar))を実施する工程と;チャンバの圧力を下げる工程と;木材をチャンバから取り出す工程と;生材の含水率を約12〜20%に低減するようにさらに木材を処理する工程とを備える。
【0051】
好ましくは、超臨界二酸化炭素は水分除去の速度を最大とするために一定期間の周期で接触させる。好ましくは、特定の温度と圧力における各超臨界二酸化炭素接触の周期に加圧工程が先行し、減圧工程が後になる。
【0052】
好ましくは、圧力周期はコントロールされた速度での加圧工程と減圧工程とから成る。
【0053】
好ましくは、減圧工程は、チャンバから二酸化炭素を除去し、それを並行して稼動する第2乾燥チャンバにポンプで圧送する。
【0054】
好ましくは、空気乾燥、無線周波数やマイクロ波などの電磁気放射乾燥、オーブン乾燥により木材を乾燥する工程は、約12〜20%の環境平衡含水率に達するまで木材を環境中に保持する工程を含むか、その工程が後にくる。
【0055】
好ましくは、利用価値のある乾燥木材を製造するプロセスは、空気乾燥、共沸乾燥、無線周波数やマイクロ波などの電磁気放射乾燥、フリーズドライ、あるいはキルン乾燥、もしくは他の超臨界プロセスの前か後に、水溶液または非水溶液中で変性ケミカルあるいは変性材で木材を処理する工程をさらに備えてもよい。
【0056】
第10の態様では、広義に本発明は、木材の繊維飽和点を測定するプロセスにあり、そのプロセスでは、含水率が僅少になるまで超臨界CO処理サイクルを適用し、重量を量り、乾燥するまで木材をキルン乾燥、無線周波数乾燥あるいはマイクロ波乾燥し、再度重量を量り、繊維飽和点を計算する。
【0057】
第11の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:生材をチャンバに置く工程と;チャンバ内で超臨界二酸化炭素を形成するようにチャンバ内に二酸化炭素を導入する工程と;生材の含水率が繊維飽和点に低減するように、32℃より高い温度において一連の圧力周期(たとえば、7.2〜20MPa(72〜200bar)から0.1〜7.2MPa(1〜72bar))により生材に超臨界二酸化炭素を接触させる工程と;水混和性溶媒中において変性ケミカルで木材を処理する工程と;木材の含水率が12〜20%になるまで処理された木材を超臨界二酸化炭素に再度曝し圧力周期をさらにかける工程とを備える。
【0058】
好ましくは、水混和性溶媒はエタノールである。
【0059】
第12の態様では、本発明は、木材を乾燥するプロセスを備え、そのプロセスは:木材のオーブン乾燥重量を約30%から約80%の範囲の含水率にまで低減するように木材を超臨界二酸化炭素に曝して木材から水分を除去する工程と;木材のオーブン乾燥重量が約12%から約20%の範囲の含水率にまで木材をさらに乾燥する工程とを備える。
【0060】
第13の態様では、本発明は、木材を処理するプロセスを備え、そのプロセスは:木材のオーブン乾燥重量を約30%から約80%の範囲の含水率にまで低減するように木材を超臨界二酸化炭素に曝して木材から水分を除去する工程と;木材の物理的耐久性または生物学的耐久性を向上するのに効果的な液剤で木材を処理する工程とを備える。
【0061】
好ましくは、そのプロセスは木材中に前記液剤を含浸させる工程を備える。
【0062】
液剤は、木材の物理的耐久性または生物学的耐久性を向上するのに効果的な水溶液または水相溶性溶液でもよい。
【0063】
液剤は、溶液中に1つまたは複数の変性ケミカルまたは変性材を備え、溶液は、木材の生物学的耐久性または物理的耐久性を向上するのに効果的な、水ではなく水混和性溶媒を備える。溶媒は有機溶媒であってもよい。
【0064】
第14の態様では、広義に本発明は、生材を乾燥するプロセスにあり、そのプロセスは:木材を約30〜80%の含水率にするように超臨界二酸化炭素を用いて生材の内腔から水分や溶質を除去する工程と;マイクロ波または無線周波数乾燥を用いて約2〜12%の含水率まで木材をさらに乾燥する工程とを備える。
【0065】
第15の態様では、広義に本発明は、リグノセルロース物質を超臨界二酸化炭素に曝すことにより、リグノセルロース物質中の細胞壁を一様に充分に膨らんだままにしつつ、リグノセルロース物質から水分や溶質を除去するプロセスにある。
【0066】
第16の態様では、広義に本発明は、繊維飽和点より大きな含水率を有する木材または他のリグノセルロース物質を乾燥し、超臨界二酸化炭素を用いて木材または他のリグノセルロース物質の含水率を繊維飽和点に減少するプロセスにある。
【0067】
上記の各態様における本発明のプロセスでは、プロセスは約24時間より少ないあるいは18時間より少ない時間でプロセスを実施することを含んでもよい。
【0068】
上記の各態様における本発明のプロセスでは、木材は製材品であってもよい。
【0069】
上記で無線周波数乾燥と称されるときは、好適な形では、乾燥は無線周波数真空乾燥である。
【0070】
本明細書で用いる用語「備える」は、「少なくとも部分的には存在する」ことを意味し、すなわちその用語を含む本明細書の文章を解釈するときは、各文章でその用語で始まる特徴は全て存在しなければならないが、他の特徴があってもよい。
【0071】
本発明は、広義に言うと、本出願の明細書で参照されあるいは示唆される部分、要素および特徴にあり、個別にあるいは集合的に、その部分、要素および特徴の2つ以上のいかなる、そして、全ての組み合わせにある。本明細書で特定の整数を記述し、本発明に関係する技術で等価物が知られているときは、そのような既知の等価物は、あたかも個別に説明されたように本明細書に組み込まれる。
【0072】
ここで、本発明の好適な形を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、オーブン乾燥での生材の含水率の減少を示すグラフで、生材原料はニュージーランドマツ(代表的な柔らかい木材の種)の辺材である。
【図2】図2は、空気乾燥での生材の含水率の減少を示すグラフで、生材原料はニュージーランドマツの辺材である。
【図3】図3は、超臨界二酸化炭素脱水での生材の含水率の減少を示すグラフで、生材原料はニュージーランドマツの辺材である。
【図4】図4は、生材の細胞構造を示す概略図である。
【図5】図5は、本発明の一例としてのプロセスのフローチャートである。
【図6】図6は、本発明の別の例としてのプロセスのフローチャートである。
【図7】図7は、200atm、50℃での超臨界二酸化炭素脱水による、超臨界流体の出来上がりと大気圧への圧力減少による放出との間に時間を置かない、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図8】図8は、200atm、50℃での超臨界二酸化炭素脱水による、超臨界流体の出来上がりと放出との間に2分の間隔を置き、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフであり、この時間間隔は「保持時間」と定義される。
【図9】図9は、200atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、4分の保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図10】図10は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、ゼロ保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図11】図11は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、2分の保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図12】図12は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、4分の保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図13】図13は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、8分の保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図14】図14は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、16分の保持時間での、ニュージーランドマツ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図15】図15は、200atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、2分の保持時間での、ユーカリ(ユーカリプツス・ニテン)(代表的な堅い木材の種)生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図16】図16は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、2分の保持時間での、ユーカリ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図17】図17は、200atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、2分の保持時間での、ユーカリ生材の心材の含水率の減少を示すグラフである。
【図18】図18は、400atm、50℃での超臨界二酸化炭素による、2分の保持時間での、ユーカリ生材の心材の含水率の減少を示すグラフである。
【図19】図19は、空気乾燥による、ユーカリ生材の辺材の含水率の減少を示すグラフである。
【図20】図20は、空気乾燥による、ユーカリ生材の心材の含水率の減少を示すグラフである。
【図21】図21は、超臨界二酸化炭素により繊維飽和点まで脱水した3例のニュージーランドマツ板材へのホウ酸水溶液の受動的(大気圧、20℃)摂取を示すグラフである。
【図22】図22は、細胞壁に拡散したホウ酸水溶液だけを残す、処理された木材の細胞内腔からホウ酸水溶液を除去する第2段階の超臨界二酸化炭素プロセスを示すグラフである。
【図23】図23は、超臨界二酸化炭素プロセスに生材ニュージーランドマツ辺材の木材(100×50×1400mm)を約40%含水率の繊維飽和点まで脱水させるのに、20MPa(200bar)の超臨界二酸化炭素と45℃、4.2MPa(42bar)の気体二酸化炭素との間の圧力周期(および時間)を示すグラフである。板材試料は、生材で7.36kg、3.95kgの木材樹液水の回収があった繊維飽和点で3.69kgと計測された
【図24】図24は、超臨界二酸化炭素処理サイクルを用いた後にマイクロ波乾燥をしたニュージーランドマツ辺材における含水率の減少のグラフ表示である。
【図25】図25(a)〜(d)は、生材の生辺材内腔から自由水を除去したところで、超臨界二酸化炭素を接触させる各サイクルの後を示す一連のNMR(核磁気共鳴)分光画像である。
【図26】図26(a)〜(e)は一連のNMR(核磁気共鳴)分光画像で、生材からの生材内腔から自由水を除去し(26(a))、超臨界二酸化炭素を接触させた後の各周期の後(26(b)〜(e))を示し、木材試料は2つの晩材境界と圧縮材領域とを含む。
【図27】図27は、図25のNMR画像で示した辺材の陽子密度と含水率のグラフ表示であり、一番濃い線は完全に生の(処理前)状態の木材を示し、次に明るい線、その次に明るい線、一番明るい線は、超臨界二酸化炭素処理の3周期後の陽子密度を示す。
【図28】図28は、図25のNMR画像で示された辺材の含水率の減少のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明の好適な形は、木材を乾燥する、あるいは木材を変性したり処理したりする準備のために木材を乾燥するプロセスを備える。これまでに述べたように、生材は、典型的には約200%(オーブン乾燥重量の)あるいは200%までという高い含水率を有することが多い。木材の特性や市場価値を高めるため、含水率は12〜20%程度にまで低減されるのがよいことは当業者に周知である。
【0075】
本発明のプロセスでは、超臨界二酸化炭素すなわちCO2を用いて、木材、典型的には生材の内腔から水分や溶質を除去する。二酸化炭素の臨界温度は31.1℃で、臨界圧力は72.8atmすなわち7.27MPaである。二酸化炭素がこれらの臨界値を超える温度と圧力に曝されると、二酸化炭素は超臨界状態で流れるようになる。
【0076】
超臨界二酸化炭素は、水分の物理化学的除去の理論に基づいて、木材から水分を抽出する。二酸化炭素は、ヘンリーの法則に従ってある範囲の温度および圧力において、水に溶ける。二酸化炭素はまた、水と化学反応をして炭酸、重炭酸および炭酸アニオンを形成する。二酸化炭素が水と反応すると、炭酸、重炭酸および炭酸アニオンの平衡混合物は下式で示されるようになる。
【式1】
【0077】

【0078】
超臨界流体の特性を得て、二酸化炭素と水の化学平衡を得て、超臨界二酸化炭素は、ル・シャトリエの原理を適用して上記のように化学平衡を操作することで、従来の乾燥プロセスよりも大いに速い速度で生材から水分を抽出することができる。オーブン乾燥および空気乾燥の水分抽出速度と超臨界二酸化炭素の抽出速度との比較は図1〜3に示される。
【0079】
それはまた、ある領域では他の領域よりも迅速に、そしてより大きな程度で乾燥する従来の乾燥方法よりも、木材の体積中で遥かに均一に水分を抽出する。
【0080】
乾燥プロセスで細胞壁の結合水が抽出され始めると、細胞壁で、強度と柔軟性が低下し、寸法が変化することは知られている。一片の木材のある領域の細胞壁が近接する領域よりも迅速に乾燥すると、これは従来の乾燥方法ではしばしば生じていることであるが、それに伴う寸法や強度の変化により木材にゆがみや損傷を引き起こす可能性が高まる。従来の乾燥プロセスで細胞壁が脱水する速度は、その細胞壁が木材の特定の一片のどこにあるのかということだけではなく、その細胞壁に近接する領域での含水率に依存する。重要な要素は、その細胞および周辺細胞の内腔の含水率である。
【0081】
本発明は、木材を乾燥する手段を提供し、その手段には、従来の乾燥方法のほとんどでなされるよりも均一で迅速な方法で内腔から自由水を除去する手段を含む。細胞壁を充分に膨らんだ生材の状態のままにしておくので、このことはさらに影響を受ける。このことは、細胞壁を処理の影響を受けやすくするだけではなく、生材の状態で少なくとも最初は細胞壁ピットを開いたままにしていることにより、繊維飽和点以下へさらに乾燥するときに細胞壁により一様な環境を提供する結果となる。このことは次に、さらに乾燥する間に木材の至るところで差を生じているキルン乾燥と比べたときに湿度の勾配を小さくし、よって木材への損傷とゆがみの可能性を低減し、利用価値のある木材の生産量を向上する。細胞壁が実質的に一様に充分に膨らんだ状態で、繊維飽和点で適用されるある化学処理は、その摂取はこのプロセスの使用を通じて概してよりよいが、木材の物理的あるいは生物学的耐久性をさらに高め、木材の細胞壁は損傷の可能性をさらに減少し、産出量をさらに向上する。
【0082】
本明細書のために、向上した「耐久性」は、向上した強度、剛性、硬さ、柔軟性、密度、寸法安定性、ゆがみや劣化への抵抗、あるいはこれらのいかなる組み合わせを意味する。
【0083】
図1は、オーブン乾燥でのニュージーランドマツの生辺材の含水率の減少を示す。2つのプロットが示され、1つは70℃でのオーブン乾燥で、もう1つは105℃でのオーブン乾燥である。70℃オーブン乾燥では、174%の含水率の生辺材板(約100mm幅、50mm厚)は、80%含水率になるのに23時間かかり、40%含水率になるのに37時間かかった。105℃オーブン乾燥では、192%の含水率の同様の生辺材板は、80%含水率になるのに11時間かかり、40%含水率になるのに17時間かかった。
【0084】
図2は、空気乾燥による同様の生辺材板の含水率の減少を示す。159%の含水率の辺材板は、80%含水率になるのに6日間かかり、40%含水率になるのに9.5日間かかったことが分かる。
【0085】
図3は、超臨界二酸化炭素の使用による同様の生辺材板の含水率の減少を示す。図示のプロットでは、5分周期の超臨界二酸化炭素が200atmの圧力、45℃の温度で生材に接触させた。2〜5という少ない周期で、あるいは10〜25分の保持時間で、あるいは1〜3時間の超臨界二酸化炭素の構築(加圧)ならびに低減および/または開放(減圧)時間で、生材の含水率は150〜180%程度から約40〜80%へと急速に減少することが分かる。
【0086】
木材から水分や溶質を除去して30〜80%の含水率に下げるのに超臨界二酸化炭素を用いることは、木材の細胞壁構造を生材の状態に維持するという利点もある。生材構造の概略図を全体的に40として図4に示す。生材の水分は、細胞壁42および細胞内腔44にある。細胞内腔44内の水分は、本明細書で説明する超臨界二酸化炭素プロセスを用いて、細胞壁に結合する水分を除去することなく、よって、木材の細胞壁構造に影響を与えることなく除去される。
【0087】
木材は、木材細胞壁の水和性と多孔性により示される生の状態に留まる。このことは、木材の性質を変性するための木材処理に有利である。繊維飽和点あるいはその近傍で、木材をケミカルの水溶液(あるいは、エタノールのように、溶媒がある程度の水との混和性を有する非水溶液)で処理し、そのケミカルは、限定はされないが、たとえば、木材料に耐久性を与える殺生物剤、あるいは、弾性率、密度、硬さなどの木材の機械的工学的特性を変性するモノマー、オリゴマーあるいはポリマーなどのような木材を変性するのに用いることができる。内腔の溶液と細胞壁の湿度との間でのケミカルの交換の後の残留物のような溶液は、その後超臨界流体脱水を用いて木材から除去され、細胞内腔内に残留物を残さずに変性ケミカルを木材細胞壁に供給する。脱水され、変性され、その後に脱水された木材料は、従来の手段で容易に充分に乾燥され、限定はされないが、強化された耐久性、安定性、剛性などのような特性と共に、利用価値のある天然のあるいは変性された木材料を与える。
【0088】
エタノールのような水混和性有機溶媒中の木材変性材で処理された木材は、従来の乾燥プロセスを用いずに、超臨界二酸化炭素の接触だけで、12〜20%の含水率まで乾燥でき、木材変性材とエタノールは細胞壁の結合水に取って代わり、次に超臨界二酸化炭素によりエタノールの抽出が行われる。
【0089】
細胞壁42からの水分の大きな除去は、木材の寸法変化、収縮およびゆがみなどの木材構造に好ましくない結果を生ずる。さらに、このような細胞壁からの水分の除去は、たとえばホウ酸、ホウ酸塩、木材硬化剤のようなケミカルの適用による木材化学成分や物理的特性のその後の変性に悪影響を与える。後に詳細に説明するように、空気乾燥、オーブン乾燥あるいは他の方法による細胞壁からの水分の除去は、その後の木材処理や変性プロセスの間に水溶液の摂取に悪影響を及ぼす。したがって、細胞内腔から水分を除去するが、細胞壁の水分は実質的に維持するのが好ましい。全ての細胞内腔水分が押し出され、細胞壁水分だけが残る点は、繊維飽和点(FSP)と呼ばれ、ニュージーランドマツのような柔らかい木材では典型的には30〜60%の含水率である。
【0090】
木材を30〜80%の含水率に脱水するのに貯臨界二酸化炭素を用いると、細胞内腔水分が除去され、細胞壁は充分に膨らんで生材状態のままであるという結果になることが分かった。したがって、超臨界二酸化炭素の使用は、水分減少の迅速性という点だけではなく、生材構造に悪影響を与えることなくそのようにすることができる点でも有利である。さらに、内腔からの水分減少の迅速性のために、内腔水中の樹液や他の溶質はキルン染みを生ずる反応が起こるより速く除去され、すなわち最終製品にはキルン染みがない。迅速性と細胞壁を生の状態に保つことのため、細胞壁の細孔は、従来の乾燥プロセスで起こるようには、少なくともすぐには、閉塞されない。
【0091】
図3を参照して、木材が繊維飽和点、その近くあるいはそのすぐ上である約40〜80%の含水率に達すると、超臨界二酸化炭素を用いた含水率の減少は、150〜180%から40〜80%程度の含水率への減少と比較すると、速くは生じない。実際に、実験結果のいくつかで示されるさらなる乾燥は、超臨界二酸化炭素の作用というよりむしろ実験中に大気状態に曝すこと(すなわち、従来の乾燥)から生ずる乾燥と区別が難しく、あるいは、主として大気状態に曝すことから生ずる乾燥によるようでもある。
【0092】
しかしながら、一般的に商品としての使用には木材の平衡含水率を約12〜20%に減じる必要がある。この理由のため、木材の含水率が約40〜80%に減少すると、超臨界二酸化炭素プロセスを、従来の(空気、オーブンあるいは超臨界流体を含む他の)乾燥方法で補ってもよい。最も好ましいのは、木材が約40〜60%の含水率に達してから、超臨界二酸化炭素プロセスを、従来の乾燥方法で補う。超臨界二酸化炭素プロセスの後ではどんな従来の乾燥方法を使うこともできるが、空気乾燥かキルン乾燥かRFV乾燥のいずれかを使うのが好ましい。
【0093】
本発明の別の形では、木材を40〜80%の含水率に減少するのに超臨界二酸化炭素周期に曝した木材を、エタノールのような水混和性有機溶媒と、オプションとしてホウ酸のような処理剤に浸してもよい。そのエタノールは処理剤を細胞壁に運ぶだけではなく、細胞壁に結合する水と置き換わる。超臨界二酸化炭素サイクルによりさらに処理することは、エタノールを除去し木材の含水率を8〜20%に減少できる。
【0094】
上述のように、超臨界二酸化炭素プロセスは繊維飽和点で水分抽出を止める(あるいは、少なくとも有意ではない速度に顕著に減速する)。既知の科学文献に記録された繊維飽和点の平均は、超臨界二酸化炭素プロセスを用いて到達する含水率%より僅かに低い傾向がある。文献に記録された繊維飽和点は、その計測をするときに用いた乾燥方法のために、真の繊維飽和点より低いかもしれない。全ての自由内腔水が除去される従来の乾燥方法はまた、木材の少なくとも一部で、細胞壁の少なくとも部分的でかつさまざまな程度の脱水を生ずる。木材の一片でいくつかのまたはほとんどの細胞壁で繊維が飽和したとしても、他の細胞壁は結合水を放出し、結果として従来の手段で乾燥した木材を用いた繊維飽和点の測定は、出来るだけ真の繊維飽和点より僅かに低い繊維飽和点となる。さらに、従来の乾燥プロセスは比較的一定の速度(すなわち、超臨界二酸化炭素乾燥で止まるようには、繊維飽和点で止まらない)で連続的に湿度を取り除くので、いつ木片がある点に達し重量を計測するかを判断するのに主観とヒューマンエラーの要素がある。対照的に、超臨界二酸化炭素プロセスは、充分に膨らんだ細胞壁(木材の別の位置から採取した細胞壁サンプルの比重の分析で証明されたように)と乾燥した内腔(NMR画像で証明された)を一様に維持する木材を生じ、さらなる周期の適用には無関係に、さらなる湿度の逸失をデータ収集のために試料の重量を量る間大気状態に曝されることにより生ずる乾燥と区別がつかなくなる程度までに実質的に制限する。湿度の逸失の速度には顕著な勾配の変化があり、超臨界二酸化炭素の接触による乾燥プロセスは特定の木片の繊維飽和点で(あるいはその近傍で)止まることを示す。
【0095】
繊維飽和点での乾燥の停止は、木材を8〜20%の含水率に乾燥するのが目的であれば不利であるように思えるが、本質的な利点もある。細胞壁構造の統合性を保持でき、よって変形の可能性を減ずるだけではなく、前記したように、細胞壁に水分を維持する利点、よって超臨界二酸化炭素を用いて脱水した後の生材構造は、脱水した木材が、木材の化学成分や物理構造の変性のために次の段階である水溶液を摂取しやすいということである。たとえば、脱水した木材を化学溶液で処理し、生物学的、物理的耐久性のような木材特性を向上することは説明されてきた。繊維飽和点に維持された木材で生材の構造を保持することは、たとえば単に木材を処理液に浸す場合でも、その後の処理プロセスの多くを大いに向上しまた容易にすることが分かった。限定しない処理液の例には、木材の生物学的耐久性や硬度を向上するホウ酸やホウ酸塩、あるいは、木材の物理的耐久性を向上するインデュライト(Indurite:登録商標)のような変性剤が含まれる。
【0096】
超臨界二酸化炭素プロセスは迅速で改良した木材構造を提供することに加え、超臨界二酸化炭素プロセスはまた、キルン染みの不都合を回避する。前述のように、キルン染みは、キルン乾燥中に木材の表面あるいは表面直下にできる望ましくない暗い色の領域である。この染みは、木材の品質を、特に家具などの製品の外観で低下させる。超臨界二酸化炭素プロセスの後、かなりの減少した含水率であるが、細胞壁については生のままである木材はキルン染みの兆候もなく淡い色であることが分かった。
【0097】
超臨界二酸化炭素プロセス、迅速で、改良した脱水木材構造、結果として木材品質を可能とすることに加え、超臨界二酸化炭素脱水プロセスはまた、キルン乾燥プロセスを用いて生材を乾燥する最中に生じることがある、メタノール、ホルムアルデヒド、フルフルアルデヒドなどを含有するものなどの有毒空中排出物の不都合を回避する。
【0098】
生材の湿度が蒸気として失われ、キルンの温度や他の要素により変わるキルン乾燥の商業プロセスでは、木材の成分は加水分解と加熱分解の化学反応を受け、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、酢酸、グイアコールなどの小分子を産出し、これらの小分子もまた水蒸気中にて運ばれる。結果として、これらの小分子からの環境汚染となる。対照的に、生材に超臨界二酸化炭素を接触させるプロセスでは容器中に液体状の水分や溶質を収集し、下水処理にて水を廃棄し、あるいは木材蒸気の天然成分を回収することができる。
【0099】
[超臨界二酸化炭素の接触プロセス]
本発明のプロセスの一例を、ここで図5のフローチャートを参照して説明する。そのプロセスは、ステップ500で内腔から水分や溶質を除去するために生材をチャンバに入れることから始められる。チャンバは、二酸化炭素が生材を処理するのに超臨界状態になるのに必要な温度と圧力に耐えるように設計される。
【0100】
生材がチャンバに置かれると、ステップ502で温度を上昇し、その後ステップ504で二酸化炭素を導入し、チャンバの圧力を上昇させる。ステップ502、504での温度および圧力上昇は、チャンバの環境が超臨界二酸化炭素脱水プロセスに使用される二酸化炭素の臨界温度および臨界圧力を超えるようにするものである。ステップ502は、代替としてステップ500に組み込まれてもよく、この場合には生材は予熱されたチャンバに入れられる。実際にはチャンバの温度を維持するために、温度は二酸化炭素の臨界点あるいは臨界点を超えた温度に保たれる。二酸化炭素をチャンバに導入する前に臨界温度以上の温度に加熱し、二酸化炭素の圧力を臨界圧力以上に加圧することも考えられる。この場合、チャンバの温度を上昇する(あるいはチャンバを予熱する)ことは必要ではなく、加圧工程だけが臨界状態に達するのに必要である。二酸化炭素が超臨界状態になるのに、チャンバとチャンバ内の二酸化炭素の温度は31.1℃を超え、チャンバの圧力は72.8atmより高くなる。
【0101】
それから後続する工程で超臨界二酸化炭素を生材に接触させ、ステップ506で示されるように、生材の含水率が約40〜80%に減少するように、二酸化炭素の圧力を72.8気圧より大きな圧力(たとえば、20MPa(200bar))と72.8気圧より小さな圧力(たとえば、5MPa(50bar))との間で循環する。ステップ506は代替としてステップ504に組み込まれてもよく、その場合、二酸化炭素はチャンバに導入されるとすぐに超臨界二酸化炭素を形成し、生材に接触させられる。
【0102】
木材の含水率が30〜80%の範囲に達すると、ステップ508でチャンバ内の圧力(およびオプションとして温度)を低減し、繊維飽和点で木材をチャンバから取り出すことを可能にする。加圧工程でチャンバの圧力だけを上昇した場合には、必要なのは減圧工程だけである。好ましくは、チャンバ内の圧力(およびオプションとして温度)は、木材含水率が約40〜60%に達してから低減される。温度は、室温まで下げられ、圧力は大気圧まで下げられる。それから、ステップ510で、さらなる処理をされたり、生物学的および/または物理的耐久性を高めるために化学的に変性されたりするために、木材はチャンバから取り出され、および/または、ステップ512で空気乾燥、オーブン乾燥あるいはRFV乾燥して、その後約8〜20%含水率と平衡となるようにされる。オプションとして、生材材料は繊維飽和点まで脱水してもよく、チャンバの設計・工学が超臨界二酸化炭素脱水プロセスに加え木材変性化学溶液を導入できるようになされていれば、化学変性のようなさらなるプロセスを脱水工程と同じチャンバで行ってもよい。
【0103】
別のプロセスの例が図6に示される。このプロセスもまた、ステップ600で示されるように、生材をチャンバに入れることから始まる。ステップ602で、温度を上昇し、それからステップ604で二酸化炭素を導入し、チャンバの圧力を上昇する。ステップ602、604での温度および圧力上昇は、チャンバの環境が超臨界二酸化炭素プロセスに使用される二酸化炭素の臨界温度および臨界圧力を超えるようにするものである。ステップ602は、代替として、ステップ600に組み込まれてもよく、その場合生材は予熱されたチャンバに入れられる。実際にはチャンバの温度を維持するために、温度は二酸化炭素の臨界点あるいは臨界点を超えた温度に保たれる。図5を参照して説明したように、二酸化炭素がチャンバ導入前に加熱されるならば、チャンバ温度を上昇する必要はない。ステップ606で超臨界二酸化炭素を生材に接触させる。ステップ602から606までのプロセスは、ステップ608で、所定の保持時間である固定時間継続される。ステップ608が完了すると、ステップ610でチャンバの圧力(およびオプションとして温度)を低減する。含水率が充分に低減したとすると、それは40〜80%含水率程度であるが、プロセスはステップ612に進み、木材をチャンバから取り出す。一旦取り出されると、ステップ614で木材は生物学的および/または物理的耐久性を高めるために化学的に変性され、および/または、ステップ616で空気乾燥またはオーブン乾燥され、その後約8〜20%含水率と平衡となるようにされる。
【0104】
ステップ610の後で含水率が充分に減少していない場合、図中矢印616で示されるように、プロセスはステップ602(あるいはオプションで604)に戻り、そこでは図23に示すように、加圧、超臨界二酸化炭素の接触および減圧が繰り返される。ステップ610の終わりでの含水率を計測し、必要に応じて、ステップ602(あるいはオプションで604)とステップ610との間のプロセス全てを含めて繰り返し、あるいは、約40〜80%の木材含水率を達成するのに前回の予測に基づいて予め決めた回数だけプロセスを繰り返してもよい。このレベルの含水率が達成されたならば、それから木材をチャンバから取り出し(図23で示すように)、ステップ614で木材は生物学的および/または物理的耐久性を高めるために化学的に変性され、および/または、ステップ616で空気乾燥またはオーブン乾燥され、その後約8〜20%含水率と平衡となるようにされる。
【0105】
超臨界二酸化炭素脱水プロセスの終わりでの、木材細胞壁の生材の性質または状態と繊維飽和点またはその直上での含水率を利用して、30〜80%含水率で得られた木材材料は、限定はされないが、ホウ酸や木材の生物学的、物理的耐久性を向上するインデュライト(Indurite:登録商標)のようなケミカルを含む、種々の水性化学剤で処理される。
【0106】
さらに、超臨界二酸化炭素脱水プロセスの終わりでの、木材細胞壁の生材の性質または状態と繊維飽和点またはその直上での含水率を利用して、30〜80%含水率で得られた木材材料は、溶媒が、エタノールやイソプロピルアルコールなどのような低分子量アルコールなどの水と混和性である非水性化学剤で処理してもよい。
【0107】
水性溶液の例には、木材の生物学的耐久性を改良するホウ酸やホウ酸塩および木材の物理的耐久性を改良する木材の硬化溶液が含まれる。非水性溶液の例には、木材の生物学的耐久性を改良する、エタノールに溶解したホウ酸が含まれる。
【0108】
非限定的なさらなる例には、ヘキサンのような水不相溶性溶媒で運ばれる木材処理ケミカルを含み、その溶媒は界面活性剤および/または乳化剤で処方される。
【0109】
さらに、超臨界二酸化炭素脱水プロセスの終わりでの、木材細胞壁の生材の性質または状態と繊維飽和点またはその直上での含水率を利用して、30〜80%含水率で得られた木材材料は、米国特許第6,638,574号で説明されるように超臨界二酸化炭素を用いて木材に供給されるケミカルおよび化学剤で処理してもよい。
【0110】
さらなる用途では、超臨界二酸化炭素を用いて含水率を30〜80%あるいは繊維飽和点に低減し、それからさらにマイクロ波または無線周波数乾燥のような電磁気放射乾燥を用いて木材をさらに乾燥する。
【0111】
電磁気放射乾燥は、木材ポリマーを大部分は非励起状態にしたままで、誘電性水分子の励起を利用して水分を除去する。水分子の励起は、水分子を木材とおよび互いに結合する水素結合のネットワークを破壊し、水分子を蒸発させる。この乾燥方法は、それ以上の励起がなく木材が冷え始めるほどに水分が低くなるまでは、繊維飽和点およびそれ以下で最も効果的である。結果として、超臨界二酸化炭素を用いる繊維飽和点までのあるいはほぼ繊維飽和点の乾燥の組み合わせは、理想的にはマイクロ波または無線周波数乾燥のような電磁気放射乾燥での乾燥を補完する。
【0112】
そのような方法、すなわち超臨界二酸化炭素に続いて電磁気放射脱水する方法を用いて、特に疎水性組成物で処理しあるいは変性するのに適した範囲の下の方に含水率があるときに、最終製品で含水率は繊維飽和点から2〜12%に数分で低減される
【0113】
本発明のプロセスは、以下の4実施例にてさらに説明され、実施例1は生材のニュージーランドマツの辺材(柔らかい木材)を乾燥するための本発明の使用に関し、実施例2は生材のユーカリの辺材(硬い木材)を乾燥するための本発明の使用に関する。実施例3はニュージーランドマツの辺材を脱水し、脱水した木材をホウ酸溶液で処理して木材の生物学的耐久性を変性するための本発明の使用に関する。実施例4は超臨界二酸化炭素を用いてニュージーランドマツの辺材を脱水し、その後に、この例ではマイクロ波を用いるが、電磁気放射乾燥する本発明の使用に関する。
【実施例1】
【0114】
生材のニュージーランドマツの辺材を小片(8mm×8mm×140mm)に切断した。各生材片の、重量を量り、各生材片をその後実験室の高圧チャンバに置き、超臨界二酸化炭素プロセスに曝した。典型的には、容器を加圧するか、減圧するのに1分必要である。保持時間は、0分から16分まで変化させた。容器の末端に出口バルブを付けて、割り当てた保持時間後に早く減圧できるようにした。
【0115】
プロセスの完了では、全ての木材試料を12%含水率の部屋に置き、平衡に達するようにした。重量と寸法を記録し、予想オーブン乾燥値を用いて含水率を計算した。
【0116】
このプロセスの結果を、図7〜図14に示す。下記の表1は、超臨界二酸化炭素脱水プロセスを用いて40%と46%の間の平均含水率に達するまでの合計時間を示す。
【表1】

【実施例2】
【0117】
ユーカリから伐採した丸太は、満足に乾燥するのが難しい。平引きと角引き両方のユーカリ板材では、乾燥中に割れ、ゆがみと崩壊を生ずる。ユーカリ種では注意深く空気乾燥するのが必須であることが分かっている。
【0118】
小サイズ(8mm×8mm×140mm)の生材ユーカリ辺材試料および心材試料を、ゆがみのない乾燥木材の製造プロセスの利点を示すのに、超臨界二酸化炭素を用いて脱水した。
【0119】
木片の重量を量り、それから50℃、200atmか400atmのいずれかで、複数の2分の周期で、超臨界二酸化炭素を用いて脱水した。プロセスの完了時に、全ての木材試料を12%含水率の部屋に置き、平衡に達するようにした。重量を記録し、予想オーブン乾燥値を用いて含水率を計算した。結果を図15〜図18にプロットして示す。比較として、空気乾燥による結果を図19と図20に示す。
【0120】
図15および図16を参照すると、辺材試料はばらつき、試料の半分だけが満足に脱水された。反対に、図17と図18を参照すると、生材から46%と78%の間の含水率に心材試料を脱水するのに、7回と12回の間のサイクルが必要であった。
【0121】
図19を参照すると、心材試料の大気乾燥では生材から49%と73%の間の含水率にするのに、18時間かかった。含水率を約12〜16%にするのに、さらに20時間かかった。したがって、木材を生材から12〜16%含水率に空気乾燥するのに、合計38時間が必要だった。
【0122】
前記の実験室スケール実験は、二酸化炭素処理の後さらに乾燥する速度は、二酸化炭素処理されていない木材と同じであることを示した。もし初期の空気乾燥時間(18時間)を最長の超臨界二酸化炭素脱水時間(48分=12×2分保持+12×1分加圧+12×1分減圧)と置き換えると、生材からほぼ40〜80%に含水率を低減するのに掛かる時間は48分になるであろう。もし空気乾燥プロセスをその後に用いて12〜16%の含水率に低減すると、この2回目の乾燥段階は、上記のように20時間掛かるであろう。合計で、超臨界二酸化炭素脱水と空気乾燥との組合せを用いて生材から12〜16%の含水率に木材を乾燥するのに概算21時間が必要となる。ユーカリ心材に適用されたこの組み合わせプロセスは、空気乾燥だけに必要な時間をほぼ半減することになる。
【実施例3】
【0123】
生物学的耐久性強化のための木材変性。
【0124】
ニュージーランドマツ板材(公称100mm×50mm、1.5m長)を、上記実施例で説明した二酸化炭素の複数回の圧力サイクルを用いて脱水した。圧力容器に入れる前に、各板材の重量を量った。200atm、45℃で5回の圧力サイクルを適用し、各二酸化炭素圧力サイクルの後に板材の重量を量った。記録された重量逸失の変化の速度がゼロ(0)に近づき最小となったときに、脱水プロセスを止めた。サイクルが完了すると、板材は直ちに最終木材材料に目標濃度を与えるのに必要な濃度のホウ酸水溶液中に浸され、ホウ酸水溶液の濃度は、たとえば、密度500kg/mの木材にホウ酸0.4重量%(%w/w)保持を達成するのに0.33重量%(%w/w)のホウ酸溶液が必要である。板材は、大気圧、大気温度で浸されてもよいし、木材処理プロセスで周知である真空圧サイクル、高温のような、他の温度、圧力で浸されてもよい。板材は周期的に取り去られ、ホウ酸溶液の受動的摂取の計測として重量が記録された。ニュージーランドマツの脱水した辺材にホウ酸水溶液を摂取する速度の例を図21に示す。
【0125】
その後、処置された板材を受動的に乾燥(あるいはキルン乾燥)させても、一定時間、たとえば12時間、大気温度または高温、大気圧に保って、細胞処理溶液を含む木材細胞内腔から細胞壁へホウ酸溶液を内部拡散させてもよい。このプロセスでは細胞壁の残留木材水分は、木材内腔の処理溶液と交換される。この時間の後、処理された板材は、上記のように、最初の脱水で用いられた条件で二酸化炭素を用いて2回目の時間超臨界二酸化炭素脱水される。第1段階の脱水と第2段階の脱水に同じ条件を用いることは重要ではない。細胞内腔の残留ホウ酸溶液の除去速度を図22に示す。この速度は、第1の超臨界二酸化炭素脱水工程より速く、この迅速な第2段階の脱水は、材料の生物学的耐久性を変性するための乾燥化学処理木材を製造する2段階超臨界二酸化炭素脱水プロセスの全てで一貫している。このように、得られた処理済木材材料は、最終需要者に要求される木材の初期含水率に応じて、受動的に乾燥されても、完全にキルン乾燥されてもよい。上記の方法で製造されたホウ酸処理木材材料は10〜15%の平衡含水率を有する。上記で説明した方法で脱水し処理したニュージーランドマツ材の機械的性質は、従来の方法で乾燥処理した木材量の機械的性質、たとえば、50MPaの平均破壊係数(MoR)と9GPaの弾性係数(MoE)と、類似している。本プロセスで用いられた高圧は細胞壁を破壊せず、強度や剛性特性を損なわないことが、その他の観察可能な損傷である層間剥離を示していない細胞壁の顕微鏡観察でサポートされる。
【0126】
超臨界二酸化炭素脱水プロセスを用いた処理木材にホウ酸を用いる上記の実施例は、範囲を限定するものではないが、殺生物剤を用いて行う多くのプロセスの1つであり、殺生物剤は水溶性、あるいは、たとえば第4級アンモニウム化合物である乳化剤およびたとえばN−メチルピロリドンである水相溶性共溶媒を用いて水溶液にしたものである。
【実施例4】
【0127】
生材状態のニュージーランドマツ辺材の試料の重量を量り、その後50℃の温度に予熱された122mL(ミリリットル)の反応容器に置いた。その容器を超臨界二酸化炭素で200atmに加圧し、この圧力を2分間保持した。容器を加圧するのに平均1分27秒掛かり、減圧するのに平均29秒掛かった。試料を容器から取り出し、木材の重量を記録した。記録された重量逸失が極小となるまで、この操作を繰り返した。二酸化炭素の圧力サイクルが完了すると、試料をフルパワー(出力650ワット、周波数2,450MHz)のマイクロ波オーブンでさらに乾燥した。ほとんど一定の重量になるまで、周期的に重量を記録した。
【0128】
図24は、各二酸化炭素圧力サイクルの脱水速度と、マイクロ波オーブンでのさらなる乾燥速度とを示す。ほぼ一定の含水率に達するのに必要なサイクル数は典型的には3〜7であったことが見て取れる。たとえば、試料DM1では7サイクル、DM5では5サイクル、DM6では4サイクル、DM4では3サイクル実行された。2分での各圧力サイクルには、加圧と減圧の両方用に2分の余裕代も含まれた。木材の乾燥だけには、5連の超臨界二酸化炭素の接触(ガス状二酸化炭素のサイクル)であってマイクロ波乾燥が続くもので、満足に乾燥した木材材料を製造するのに充分であることをデータは示している。
【0129】
図25(a)〜(d)は、45℃、20MPa(200bar)で超臨界二酸化炭素のサイクルを接触させることで乾燥されている生材ニュージーランドマツ辺材のNMR画像を示す。NMR画像は、木材内腔内の自由水を事実上示す陽子密度を明るい領域として示す。4サイクルの後、木材の含水率は、最初の158%〜144%から127%〜67%に減少した(画像25(d))。画像(d)はほとんど黒くて、木材の内腔に自由水がないことを示す。67%の含水率で残留水の全ては細胞壁に結合する。実質的に均質な性質の木材試料で超臨界二酸化炭素による自由水の除去がきわめて一様であることを、画像は示す。全ての自由水を除去した木材の含水率は通常の繊維飽和点の推定値より僅かに高いが、自由水がないことは確かであり、よって、ばらつきはFSPを計測する確立された方法の限度の結果であり、木材の小片ごとの特有の性質によるものであろう。本明細書で説明した実施例で分かるように(たとえば図11〜14を参照)、さらにサイクルを行っても、超臨界二酸化炭素の作用によるさらなる湿度の実質的な低減はない。
【0130】
図26(a)〜(e)は、晩材年輪(晩材帯も辺材画像(図25)の上部と下部に見える)を含む木材小片に適用した超臨界乾燥プロセスと圧縮材のNMR画像を示す。面白いことに、この試料での晩材は、完全に生材のときでさえ事実上自由水がないように見える。さらに、圧縮材の自由水(画像(c)および(d)に残る明るい領域)は除去するのに抵抗を示すことは明らかであり、圧縮材から自由水を除去するのには周囲の木材から除去するのより2サイクル余計に掛かる。超臨界二酸化炭素乾燥を用いることにより、圧縮材の自由水を除去するが、周囲の木材の細胞壁を生材状態のままとすることができる。従来の乾燥では、圧縮材から自由水が除去されるときまでに、周囲の木材の細胞壁は程度の差はあれ乾燥するであろう。結果として、圧縮材の細胞壁は充分に膨らんで生材のままであり、一方同時に、周囲の木材の細胞壁はFSP未満であり、細胞壁の乾燥に伴って生ずる構造、強度、寸法の変化をするであろう。その結果、そりや割れを生じやすくなるであろう。
【0131】
内腔の水がないことのために、従来の乾燥方法に曝されると、晩材が細胞壁のより進んだ乾燥や劣化を受けやすくなる可能性がある。このことにより、割れも生じうる。
【0132】
木材の至る所で生材の細胞壁状態を維持し、木材の至る所で湿度勾配を減じること(従来の乾燥方法と比べて)は、従来の乾燥方法で行われたより超臨界二酸化炭素を用いると低いゆがみ率となる。
【0133】
超臨界二酸化炭素を用いて脱水し、脱水した木材材料を水ベースの殺生物剤で処理し、超臨界二酸化炭素を用いた第2段階の脱水工程を用いる、生材の組み合わせプロセスにより、市場価値のある処理木材材料がより迅速に、そして従来のキルン乾燥、化学剤による処理と再乾燥により得られるよりもよりよい最終材料の品質で得られる。
【0134】
以上の記述では、乾燥木材材料を製造し、もしくは繊維飽和点またはそれ以上の木材材料を製造し、生物学的耐久性強化のための殺生物剤での処理や、物理的耐久性強化のためのポリマーによる処理などの、さらなる木材の変性を容易にすることを説明した。当業者にとって明らかである代替や改変は、添付の特許請求の範囲で画定されるように本書の範囲内に含まれることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生の木材の内腔から水分や溶質を除去する方法であって、前記木材の至る所の細胞壁を一様に充分に膨らんだままにし、前記生の木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを備える;
方法。
【請求項2】
前記木材は、前記木材の繊維飽和点を超える含水率を有する;
請求項1の方法。
【請求項3】
前記木材は、前記木材のオーブン乾燥重量の約180%から約150%の範囲の含水率を有する;
請求項1の方法。
【請求項4】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲になるまで前記生の木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約60%の範囲になるまで前記生の木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記木材の含水率が前記木材の繊維飽和点かほぼ繊維飽和点になるまで前記生の木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項1ないし請求項3のいずれか1項の方法。
【請求項7】
前記生の木材を超臨界二酸化炭素に周期的に曝すことを含む;
請求項1ないし請求項6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
前記生の木材を加圧とその後の減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項7の方法。
【請求項9】
前記生の木材を超臨界圧への加圧とその後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項8の方法。
【請求項10】
前記生の木材を超臨界圧への加圧と、その後の加圧した超臨界圧での保持時間と、その後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項9の方法。
【請求項11】
加圧と減圧の周期の数および/または期間および/または温度および/または圧力およびオプションで保持時間を変化させ、前記木材の湿度の減少速度を最大にする;
請求項7ないし請求項10のいずれか1項の方法。
【請求項12】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での約10分から約25分の間の保持時間と、その後の未臨界圧への減圧との周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項10の方法。
【請求項13】
前記木材が製材品である;
請求項1ないし請求項12のいずれか1項の方法。
【請求項14】
生の木材を乾燥する方法であって:
前記木材を超臨界二酸化炭素に曝して前記生の木材の内腔から水分や溶質を除去し、前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲の前記木材の含水率を低減する工程と;
前記木材のオーブン乾燥重量の約12%から約20%の範囲の含水率に前記木材をさらに乾燥する工程とを備える;
方法。
【請求項15】
前記木材を空気乾燥、共沸混合乾燥、フリーズドライ、無線周波数乾燥やマイクロ波乾燥の電磁気放射乾燥、キルン乾燥、あるいは、さらなる超臨界流体処理のうちの1つあるいは複数に曝すことにより前記さらに乾燥することを備える;
請求項14の方法。
【請求項16】
前記水分を除去する後で前記さらに乾燥する前に、生物学的耐久性あるいは物理的耐久性を向上するのに効果的な液剤でその木材を処理することを備える;
請求項14または請求項15の方法。
【請求項17】
前記水分を除去する後で前記さらに乾燥する前に、生物学的耐久性あるいは物理的耐久性を向上するのに効果的な、水性あるいは水相溶性剤中の1つあるいは複数の変性ケミカルあるいは変性材で前記木材を処理することを備える;
請求項14または請求項15の方法。
【請求項18】
前記水分を除去する後で前記さらに乾燥する前に、生物学的耐久性あるいは物理的耐久性を向上するのに効果的な、非水性ではあるが水相溶性溶媒中の1つあるいは複数の変性ケミカルあるいは変性材で前記木材を処理することを備える;
請求項14または請求項15の方法。
【請求項19】
前記溶媒が有機溶媒である;
請求項17の方法。
【請求項20】
エタノール中のホウ酸で前記木材を処理することを備える;
請求項19の方法。
【請求項21】
前記木材は前記木材の繊維飽和点を超えた含水率を有する;
請求項14ないし請求項20のいずれか1項の方法。
【請求項22】
前記木材は前記木材のオーブン乾燥重量の約180%から約150%の範囲の含水率を有する;
請求項14ないし請求項20のいずれか1項の方法。
【請求項23】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲になるまで、前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項14ないし請求項22のいずれか1項の方法。
【請求項24】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約60%の範囲になるまで、前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項14ないし請求項22のいずれか1項の方法。
【請求項25】
前記木材の含水率が前記木材のほぼ繊維飽和点になるまで、前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項14ないし請求項24のいずれか1項の方法。
【請求項26】
前記木材を超臨界二酸化炭素に周期的に曝すことを含む;
請求項14ないし請求項25のいずれか1項の方法。
【請求項27】
前記木材を加圧と減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項26の方法。
【請求項28】
前記木材を超臨界圧への加圧とその後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項27の方法。
【請求項29】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での保持時間と、その後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項28の方法。
【請求項30】
前記周期の数および/または期間および/または温度および/または圧力を変化させ前記木材の湿度の減少速度を最大にすることを含む;
請求項26ないし請求項29のいずれか1項の方法。
【請求項31】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での約10分から約25分の間の保持時間と、その後の未臨界圧への減圧との周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項29の方法。
【請求項32】
前記木材が製材品である;
請求項14ないし請求項31のいずれか1項の方法。
【請求項33】
生の木材を乾燥する方法であって:
超臨界二酸化炭素を生の木材に接触させて、内腔から水分や溶質を除去し、前記木材の含水率をほぼ繊維飽和点に低減する工程と;
前記木材のオーブン乾燥重量の約12%から約20%の範囲の含水率に前記木材をさらに乾燥する工程とを備える;
方法。
【請求項34】
生の木材を乾燥する方法であって:
生の木材を超臨界二酸化炭素にチャンバ内で曝し、前記生の木材の含水率を前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲に低減するように32℃より高い温度で一連の圧力周期を適用する工程と;
その後に前記木材の含水率を約12%から約20%の範囲にさらに低減する工程とを備える;
方法。
【請求項35】
生の木材を乾燥する方法であって:
生の木材を超臨界二酸化炭素にチャンバ内で曝し、前記生の木材の含水率をほぼ繊維飽和点に低減するように32℃より高い温度で一連の圧力周期を適用する工程と;
その後に前記木材の含水率を約12%から約20%の範囲にさらに低減する工程とを備える;
方法。
【請求項36】
生の木材を乾燥する方法であって:
生の木材をチャンバ内に置く工程と;
超臨界二酸化炭素を導入し、前記生の木材の含水率を約30%から約80%の範囲に低減するように32℃より高い温度で一連の圧力周期を実行する工程と;
前記チャンバ内の圧力を低減し、前記チャンバから前記木材を取り出す工程と;
前記木材の含水率を約12%から約20%の範囲に低減するように前記木材をさらに処理する工程とを備える;
方法。
【請求項37】
生の木材を乾燥する方法であって:
生の木材をチャンバ内に置く工程と;
超臨界二酸化炭素を導入し、前記生の木材の含水率をほぼ繊維飽和点に低減するように32℃より高い温度で一連の圧力周期を実行する工程と;
前記チャンバ内の圧力を低減する工程と;
前記チャンバから前記木材を取り出す工程と;
前記木材の含水率を約12%から約20%の範囲にさらに低減する工程とを備える;
方法。
【請求項38】
前記さらに乾燥する工程またはさらに含有する工程またはさらに処理する工程は、前記木材の空気乾燥、共沸混合乾燥、フリーズドライ、無線周波数乾燥やマイクロ波乾燥などの電磁気放射乾燥、キルン乾燥、あるいは、さらなる超臨界流体処理を含む;
請求項33ないし請求項37のいずれか1項の方法。
【請求項39】
前記一連の圧力周期は、7.2〜20MPaの圧力と0.1〜7.2MPaの圧力との間である;
請求項33ないし請求項38のいずれか1項の方法。
【請求項40】
前記チャンバから二酸化炭素を取り出すことと、並行して運転される第2の乾燥チャンバに前記二酸化炭素を圧送することを含む減圧工程を含む;
請求項33ないし請求項39のいずれか1項の方法。
【請求項41】
前記木材の空気乾燥、無線周波数乾燥およびマイクロ波などの電磁気放射乾燥あるいはキルン乾燥の前記工程は、約12〜20%の大気平衡含水率に達するように前記木材を環境に保持することを含むか、前記木材を環境に保持することが後に行われるかのいずれかである;
請求項33ないし請求項40のいずれか1項の方法。
【請求項42】
前記生の木材は前記木材の繊維飽和点より高い含水率を有する;
請求項33ないし請求項41のいずれか1項の方法。
【請求項43】
前記生の木材は前記木材のオーブン乾燥重量の約180%から約150%の範囲の含水率を有する;
請求項33ないし請求項41のいずれか1項の方法。
【請求項44】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項33ないし請求項43のいずれか1項の方法。
【請求項45】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約60%の範囲になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項33ないし請求項43のいずれか1項の方法。
【請求項46】
前記木材の含水率が前記木材のほぼ繊維飽和点になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項33ないし請求項43のいずれか1項の方法。
【請求項47】
前記木材を周期的に超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項33ないし請求項46のいずれか1項の方法。
【請求項48】
前記木材を加圧と減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項47の方法。
【請求項49】
前記木材を超臨界圧への加圧とその後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項48の方法。
【請求項50】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での保持時間と、その後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項49の方法。
【請求項51】
前記周期の数および/または期間および/または温度および/または圧力を変化させ前記木材の湿度の減少速度を最大にすることを含む;
請求項47ないし請求項50のいずれか1項の方法。
【請求項52】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での約10分から約25分の間の保持時間と、その後の未臨界圧への減圧との周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項50の方法。
【請求項53】
木材を乾燥する方法であって:
前記木材を超臨界二酸化炭素に曝して前記木材から水分を除去することと、その後に前記木材を空気乾燥、共沸混合乾燥、フリーズドライ、無線周波数乾燥やマイクロ波乾燥などの電磁気放射乾燥、あるいは、キルン乾燥を用いてさらに乾燥することを含む;
方法。
【請求項54】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことと、その後、前記さらに乾燥することを行い、前記木材の含水率を約12%から約20%の範囲に低減することを含む;
請求項53の方法。
【請求項55】
前記木材が製材品である;
請求項33ないし請求項54のいずれか1項の方法。
【請求項56】
木材を乾燥する方法であって:
前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲の含水率に低減するのに前記木材を超臨界二酸化炭素に曝して前記木材から水分を除去する工程と;
前記木材のオーブン乾燥重量の約12%から約20%の範囲の含水率に前記木材をさらに乾燥する工程とを含む;
方法。
【請求項57】
前記さらに乾燥する工程を、前記木材を空気乾燥、共沸混合乾燥、フリーズドライ、無線周波数乾燥やマイクロ波乾燥などの電磁気放射乾燥、およびキルン乾燥の1つまたは複数に曝すことにより実行することを備える;
請求項56の方法。
【請求項58】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約60%の範囲になるまで、前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項53ないし請求項57のいずれか1項の方法。
【請求項59】
前記木材を周期的に超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項53ないし請求項57のいずれか1項の方法。
【請求項60】
前記木材を加圧と減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項59の方法。
【請求項61】
前記木材を超臨界圧への加圧とその後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項60の方法。
【請求項62】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での保持時間と、その後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項61の方法。
【請求項63】
前記周期の数および/または期間および/または温度および/または圧力を変化させ前記木材の湿度の減少速度を最大にすることを含む;
請求項59ないし請求項62のいずれか1項の方法。
【請求項64】
前記木材を超臨界二酸化炭素に超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での約10分から約25分の間の保持時間と、その後の未臨界圧への減圧との周期で曝すことを含む;
請求項62の方法。
【請求項65】
前記水分を除去する工程と前記さらに乾燥する工程とを約24時間未満で行う;
請求項56ないし請求項64のいずれか1項の方法。
【請求項66】
前記水分を除去する工程と前記さらに乾燥する工程とを約15時間未満で行う;
請求項56ないし請求項64のいずれか1項の方法。
【請求項67】
前記木材が製材品である;
請求項53ないし請求項66のいずれか1項の方法。
【請求項68】
木材を乾燥する方法であって:
前記木材を超臨界二酸化炭素に曝して前記木材から水分を除去することと、その後に前記木材を前記木材の生物学的耐久性を向上するのに有効な液剤に浸すことを備える;
方法。
【請求項69】
木材を乾燥する方法であって:
前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲の含水率に低減するのに前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことにより前記木材から水分を除去する工程と;
前記木材の生物学的耐久性または物理的耐久性を向上するのに有効な液剤で前記木材を処理する工程とを含む;
方法。
【請求項70】
前記液剤を前記木材に浸透させることを備える;
請求項69の方法。
【請求項71】
前記木材を、前記木材の生物学的耐久性または物理的耐久性を向上するのに効果的な水溶液または水相溶性溶液である液剤で処理することを備える;
請求項68または請求項69の方法。
【請求項72】
前記木材を、前記木材の生物学的耐久性または物理的耐久性を向上するのに効果的な非水性だが水混和性溶媒を備える溶液中の変性ケミカルまたは変性材の1つまたは複数で処理することを備える;
請求項68または請求項69の方法。
【請求項73】
前記溶媒は有機溶媒である;
請求項72の方法。
【請求項74】
前記木材をエタノール中のホウ酸で処理することを備える;
請求項72の方法。
【請求項75】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約80%の範囲になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項68ないし請求項74のいずれか1項の方法。
【請求項76】
前記木材の含水率が前記木材のオーブン乾燥重量の約30%から約60%の範囲になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項68ないし請求項74のいずれか1項の方法。
【請求項77】
前記木材の含水率が前記木材のほぼ繊維飽和点か繊維飽和点以下になるまで前記木材を超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項68ないし請求項76のいずれか1項の方法。
【請求項78】
前記木材を周期的に超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項68ないし請求項77のいずれか1項の方法。
【請求項79】
前記木材を加圧と減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項78の方法。
【請求項80】
前記木材を超臨界圧への加圧とその後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項79の方法。
【請求項81】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での保持時間と、その後の未臨界圧への減圧の周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項80の方法。
【請求項82】
前記周期の数および/または期間および/または温度および/または圧力を変化させ前記木材の湿度の減少速度を最大にすることを含む;
請求項78ないし請求項80のいずれか1項の方法。
【請求項83】
前記木材を超臨界圧への加圧と、その後の超臨界圧での約10分から約25分の間の保持時間と、その後の未臨界圧への減圧との周期で超臨界二酸化炭素に曝すことを含む;
請求項81の方法。
【請求項84】
前記水分を除去することとさらに乾燥することとを約24時間未満で行うことを含む;
請求項68ないし請求項83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
前記水分を除去することとさらに乾燥することとを約18時間未満で行うことを含む;
請求項68ないし請求項83のいずれか1項の方法。
【請求項86】
前記木材が製材品である;
請求項68ないし請求項85のいずれか1項の方法。
【請求項87】
生の木材を乾燥する方法であって:
前記木材を約30%〜80%の含水率にするように超臨界二酸化炭素を用いて前記生の木材の内腔から水分や溶質を除去する工程と;
マイクロ波乾燥や無線周波数乾燥などの電磁気放射乾燥を用いて前記木材を約2%〜12%の含水率にさらに乾燥する工程とを備える;
方法。
【請求項88】
グノセルロース物質中の細胞壁を一様に充分に膨らんだままにし、前記グノセルロース物質を超臨界二酸化炭素に曝すことによって、リグノセルロース物質から水分や溶質を除去する方法。
【請求項89】
超臨界二酸化炭素を用いて、繊維飽和点より大きな含水率を有する木材あるいは他のリグのセール物質を乾燥し、前記木材あるいは他のリグノセール物質の含水率を低減する方法。
【請求項90】
超臨界二酸化炭素を用いて、繊維飽和点より大きな含水率を有する木材あるいは他のリグのセール物質を乾燥し、前記木材あるいは他のリグノセール物質の含水率を繊維飽和点まで低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図25c】
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【図25d】
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【図26a】
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【図26b】
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【図26c】
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【図26d】
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【図26e】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2010−509562(P2010−509562A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536188(P2009−536188)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【国際出願番号】PCT/NZ2007/000326
【国際公開番号】WO2008/091163
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500554759)ニュージーランド フォレスト リサーチ インスティテュート リミテッド (4)
【Fターム(参考)】