説明

木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物

【課題】木材の接着に用いられる水性接着剤組成物であり、生分解性を有するポリ乳酸を成分とした、新規な木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物の提供。
【解決手段】ポリ乳酸(A)を含むことを特徴とする新規な木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物である。イ)前記ポリ乳酸(A)がポリ乳酸エマルジョン(B)であり、充填剤含むことが好ましく、さらに、ロ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が酢酸ビニルエマルジョン(C)を含むか、ハ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がアクリル樹脂系エマルジョン(D)と硬化剤(E)を含むか、ニ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が水性高分子(F)とイソシアネート化合物(G)を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、ユリア−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂接着剤等のホルムアルデヒド樹脂系接着剤が知られている。
【0003】
また、ホルムアルデヒド樹脂系接着剤以外では酢酸ビニルエマルジョン接着剤、EVAエマルジョン接着剤、アクリル樹脂系エマルジョン、水溶性樹脂系接着剤、水性高分子―イソシアネート系接着剤が知られている。
【0004】
水性接着剤組成物で接着された木材は建築資材などに用いられるが、木材自体は生分解性があり、木材を接着する水性接着剤組成物も生分解性であれば、接着された木材すべてが生分解される。よって、生分解性を示す環境にやさしい木材用水性接着剤の要望が高まっている。例えば、植物から得られる樹脂の加工品であるタンニンを成分とした接着剤が知られている(特許文献1参照)。しかし、天然物の特徴である生分解性を満足するものではない。
【0005】
一方、天然物である穀物の加工品であるポリ乳酸は生分解性を有し、環境にやさしい材料である事が知られている。
【0006】
前記ポリ乳酸を用いる接着剤として、例えば、ポリ乳酸系樹脂を主成分とし、該樹脂を有機溶媒に溶解した溶剤型接着剤または該樹脂からなるホットメルト型接着剤が知られている(特許文献2参照)。また、前記ポリ乳酸を用いる接着剤として、ポリ乳酸を含有するポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解した溶剤型接着剤が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
近年、前記ポリ乳酸を主成分とするポリ乳酸系エマルジョンが提案されている。例えば、長期貯蔵可能な生分解性ポリエステル化合物が知られている(特許文献4参照)。また、水性エマルジョンが知られている(特許文献5参照)。また、ポリ乳酸水性分散剤が知られている(特許文献6参照)。
【0008】
しかしながら、前記ポリ乳酸またはポリ乳酸系エマルジョンを水性接着剤組成物とするには安定性、塗布性、接着性に不都合がある。
【特許文献1】特開2004−231814号公報
【特許文献2】特開2002−038118号公報
【特許文献3】特開2003−082319号公報
【特許文献4】特開2003−113247号公報
【特許文献5】特開2004−285144号公報
【特許文献6】特開2004−331847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、環境にやさしい生分解性を有する木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の課題を解決するためになされたものであり、本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物はポリ乳酸(A)を含むことを特徴とする木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物である。
【0011】
また、本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物によれば、
前記ポリ乳酸(A)がポリ乳酸エマルジョン(B)であり、ポリ乳酸エマルジョン(B)がポリ乳酸(A)を5〜70重量%の範囲で含むことにより、生分解性を備えることができる。ポリ乳酸(A)が5重量%未満では安定した水性接着剤組成物を得ることができない。さらに、生分解性を示さないことがある。ポリ乳酸(A)が70重量%を超えると凝集沈殿が起き、安定な水性接着剤組成物を得ることができない。
【0012】
イ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が充填剤を5〜55重量%の範囲で含むことにより、塗布性を備えることができる。充填剤が5重量%未満あるいは55重量%を超えると塗布性に問題が生じることがある。
【0013】
ロ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が酢酸ビニルエマルジョン(C)を含むか、
ハ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がアクリル樹脂系エマルジョン(D)と硬化剤(E)を含むか、
ニ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が水性高分子(F)とイソシアネート化合物(G)を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリ乳酸を含むことにより、木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物に生分解性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物はポリ乳酸(A)を必須成分とする。
【0017】
また、本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、
イ)前記ポリ乳酸(A)がポリ乳酸エマルジョン(B)であり、充填剤を含むことが好ましく、さらに、
ロ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が酢酸ビニルエマルジョン(C)を含むか、
ハ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がアクリル樹脂系エマルジョン(D)と硬化剤(E)を含むか、
ニ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が水性高分子(F)とイソシアネート化合物(G)を含むことが好ましい。
【0018】
ただし、前記ポリ乳酸エマルジョン(B)はポリ乳酸(A)を5〜70重量%の範囲で含み、前記ポリ乳酸エマルジョン(B)は充填剤を5〜55重量%の範囲で含む。
【0019】
次に、必須成分であるポリ乳酸(A)及びイ)〜ニ)の配合について、さらに、木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物の形成方法、添加剤について説明する。
【0020】
ポリ乳酸(A)
ポリ乳酸は廃棄時に環境に悪影響与えないように地中で微生物などにより分解されるようになされた生分解性高分子として知られている。通常、ポリ乳酸の末端にカルボン酸基を有している。また、未反応モノマー、オリゴマー、およびポリマーの混合物として存在する。また、ポリ乳酸は原料である乳酸の種類及び重合体の分子量によりガラス転移点や融点が異なる。
【0021】
本発明においてポリ乳酸の種類を限定するものではなく、未反応モノマー、オリゴマー、およびポリマーの混合物でもよい。
【0022】
ポリ乳酸エマルジョンは、ポリ乳酸を高分子分散剤、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、ポリカルボン酸塩系の分散剤、等を用いて水中で分散することで得られる。
【0023】
本発明においてポリ乳酸エマルジョンの製造方法を限定するものではなく、ポリ乳酸エマルジョンの製品中に含まれる、分散剤、可塑剤、水等を含むこともできる。
【0024】
また、ポリ乳酸エマルジョンの製品中に安定剤としてアミン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物等を添加することが知られているが、特に限定するものではない。
【0025】
ポリ乳酸エマルジョンを水性接着剤組成物に使用する場合ポリ乳酸エマルジョン中にポリ乳酸を70重量%以下とする必要がある。70%重量を超えると凝集沈殿する可能性があり、安定性が悪くなる。あるいは安定剤の添加量が増加して高価となる。これらを考慮して、市販されているポリ乳酸エマルジョン中のポリ乳酸は50重量%程度であり、ポリ乳酸エマルジョン中のポリ乳酸は50重量%を超える量とすることは価格的に不利である。
【0026】
また、ポリ乳酸エマルジョン中のポリ乳酸を5重量%以上とする必要がある。ポリ乳酸エマルジョン中のポリ乳酸が5重量%未満であると水性接着剤組成物調製時に安定性を失う。さらに、水性接着剤組成物調製時にポリ乳酸エマルジョンに添加剤を加えるとポリ乳酸濃度がさらに低くなりポリ乳酸の効果が低減し、生分解性を示さないことがある。あるいは添加剤の使用範囲が制限される。さらに、ポリ乳酸濃度が低くなると水性接着剤組成物の水分量が多くなるので、水の蒸発揮散速度が遅くなり硬化時間が長くなるあるいは硬化しない。
【0027】
本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、ポリ乳酸エマルジョン中のポリ乳酸を5〜70重量%の範囲で含むことが好ましく、10〜50重量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0028】
イ)前記ポリ乳酸(A)がポリ乳酸エマルジョン(B)であり、充填剤含む
本発明の第1の実施形態の特徴は、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物としてポリ乳酸エマルジョンを用いることにある。すなわち、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物にポリ乳酸を用いることで生分解性を示す新規な木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物を提供することにある。
【0029】
硬化の機構はポリ乳酸エマルジョンに含まれる水が蒸発揮散して、ポリ乳酸エマルジョンに含まれるその他の成分であるポリ乳酸、分散剤、可塑剤が一体化することで膜を形成して硬化する。硬化したポリ乳酸は生分解性を示す。また、凝集力を増加させるために硬化剤を添加することが出来る。ポリ乳酸は、高分子末端にカルボン酸基を有している。このカルボン酸基と反応する硬化剤を添加することで凝集力を増加させることが出来る。硬化剤としてイソシアネート基、エポキシ基を有す化合物等を挙げることができる。
【0030】
本発明における、木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物の調製方法はポリ乳酸エマルジョンに分散剤を加え攪拌均一状態にして添加剤を加えさらに攪拌して水性接着剤組成物のエマルジョン状態を維持する。エマルジョン状態の水性接着剤組成物は水が蒸発揮散して、水以外の成分が一体化することで硬化する。
【0031】
ポリ乳酸エマルジョンに添加剤を加えエマルジョン状態を崩壊させた組成物は硬化速度が遅いかあるいは硬化せず水性接着剤組成物として使用できない。水性接着剤組成物は安定したエマルジョン状態を維持することが重要である。
【0032】
本発明において、木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物のエマルジョン状態を維持するためには、分散剤、乳化剤、水、充填剤、酢酸ビニルエマルジョン、アクリル樹脂系エマルジョン、硬化剤、水性高分子、イソシアネート化合物等の添加剤の種類と添加量を適切にする必要がある。
【0033】
木材は多孔質で表面のマクロまたはミクロな凸凹があり、浸透する性質がある。木材用の水性接着剤組成物は液状接着剤が木材の微細な孔の中に入り込み、液状接着剤が接着層内で強固な凝集力を持つ固体となり、接着層内での破壊を防ぐとともに、分子間力や投錨効果により、目的の接着強さを持つ。
【0034】
木材の接着剤としてポリ乳酸エマルジョンをそのまま用いると、木材にポリ乳酸エマルジョンが浸透して、接着層を形成しない。
【0035】
そこで、充填剤を添加することで木材への浸透を防ぎ、接着層を形成させ接着層内で強固な凝集力を持たせることができる。すなわち、ポリ乳酸エマルジョンを木材用の水性接着剤とする場合充填剤の添加が必要である。
【0036】
また、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物は、被着体である木材に塗布する必要がある。被着体に塗布された接着剤の接着力は塗布量に影響を受ける。すなわち、安定した接着力を示す水性接着剤組成物を調製する場合、一定した塗布量を塗布できる組成に調整する必要がある。
【0037】
水性接着剤組成物を被着体である木材に塗布する場合、水性接着剤組成物の粘度あるいは見かけ粘度が一時的に低下する現象と定義されているチキソトロピーが重要な因子となる。
接着剤組成物に充填剤を添加することで粘度が上昇し、チキソトロピーに影響を与える。
【0038】
本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、ポリ乳酸エマルジョンが充填剤を5〜55重量%の範囲で含むことが好ましく、10〜50重量%の範囲で含むことがより好ましい。
【0039】
前記充填剤としては、小麦粉、大豆粉、血粉、木粉、クルミ殻粉等の有機系のもの、クレー、カオリン、ゼオライト、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、酸化アルミニウム等の無機系のもの等を挙げることができる。
【0040】
ロ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が酢酸ビニル系エマルジョン(C)を含む
木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤としては酢酸ビニルエマルジョン接着剤、EVAエマルジョン接着剤が挙げることができる。
【0041】
酢酸ビニルエマルジョン接着剤とは酢酸ビニルエマルジョンを成分とする接着剤である。酢酸ビニルエマルジョン接着剤の成分である酢酸ビニルエマルジョンの製造方法をつぎに示す。酢酸ビニルポリマーは酢酸ビニルモノマーを重合することにより製造する。その製造方法は溶液重合、塊状重合、エマルジョン重合などがある。エマルジョン重合は保護コロイド水溶液の中にモノマーと重合開始剤と共に滴下して重合するもので、保護コロイドとしてはポリビニルアルコールが多く使用される。酢酸ビニルエマルジョンの製品中には酢酸ビニルポリマー、保護コロイド、可塑剤、水等が含まれる。
【0042】
また、EVAエマルジョン接着剤とはEVAエマルジョンを成分とする接着剤である。EVAエマルジョンとはエチレン(Ethylene)と酢酸ビニル(Vinyl−Acetate)の共重合体のエマルジョンであり、このEVAエマルジョンの製造方法は前記酢酸ビニルエマルジョンの製造方法と同様であり、酢酸ビニルにエチレンを共存させる物である。
【0043】
本発明の第2の実施形態は、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、酢酸ビニルエマルジョン接着剤、EVAエマルジョン接着剤、に生分解性を付与することであり、本発明において酢酸ビニルエマルジョン及びEVAエマルジョンの製造方法を限定するものではなく、酢酸ビニルエマルジョン及びEVAエマルジョンの製品中に含まれる、分散剤、可塑剤、水等を含むこともできる。
【0044】
本発明の第2の実施形態の特徴は酢酸ビニルエマルジョン及びEVAエマルジョン水性接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することで生分解性を付与した木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物を提供することにある。
【0045】
硬化の機構は酢酸ビニルエマルジョンに含まれる水が蒸発揮散して、その他の酢酸ビニルポリマー、保護コロイド、可塑剤が一体化することで膜を形成して硬化する。事前に酢酸ビニルエマルジョンにポリ乳酸エマルジョンを混合することで、ポリ乳酸を含む酢酸ビニルポリマー、保護コロイド、可塑剤が一体化し、酢酸ビニルエマルジョン水性接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することができる。
【0046】
また、EVAエマルジョンにポリ乳酸エマルジョンを混合することもできる。前記同様、事前にEVAエマルジョンにポリ乳酸エマルジョンを混合することで、ポリ乳酸を含むEVAポリマー、保護コロイド、可塑剤が一体化し、酢酸ビニルエマルジョン水性接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することができる。
【0047】
ハ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がアクリル樹脂系エマルジョン(D)と硬化剤(E)を含む
木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、アクリル樹脂系エマルジョンを主成分とするアクリル樹脂系エマルジョン接着剤、が挙げられる。
【0048】
アクリル樹脂系エマルジョン接着剤とはアクリル樹脂系エマルジョンを主成分とする接着剤である。アクリル樹脂系エマルジョン接着剤の主成分であるアクリル樹脂系エマルジョンの製造方法をつぎに示す。アクリル樹脂はアクリルモノマーを重合することにより製造する。その製造方法は溶液重合、塊状重合、エマルジョン重合などがある。エマルジョンは乳化剤の存在下、水中で乳化重合して得られる。アクリルモノマーとして、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、等が挙げられる。
【0049】
本発明の第3の実施形態は、木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤に生分解性を付与することであり、本発明においてアクリル樹脂系エマルジョンの製造方法を限定するものではなく、アクリル樹脂系エマルジョンの製品中に含まれる、乳化剤、可塑剤、水等を含むこともできる。
【0050】
本発明の第3の実施形態の特徴はアクリル樹脂系エマルジョン接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することで生分解性を付与した木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物を提供することにある。
【0051】
硬化の機構はアクリル樹脂系エマルジョンに含まれる水が蒸発揮散して、その他のアクリル樹脂系エマルジョンに含まれるアクリル樹脂、乳化剤、可塑剤等が一体化することで膜を形成して硬化する。事前にアクリル樹脂系エマルジョンにポリ乳酸エマルジョンを混合することで、ポリ乳酸を含むアクリル樹脂系エマルジョン、乳化剤、可塑剤が一体化し、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することができる。
【0052】
しかし、共存する乳化剤は、凝集力を下げる。その対策として前記アクリルモノマーにカルボキシル基、水酸基、アミド基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、グリシジル基、β−メチルグリシジル基、アミノ基、酸無水物からなる群から選ばれた反応性基の1種または2種以上を備える不飽和単量体を加え乳化重合させてもよい。
【0053】
また、凝集力の低下の対策として硬化剤を加えることが出来る。硬化剤としてはエポキシ化合物、イソシアネート化合物、カップリング剤等が利用でき、硬化促進剤を併用できる。
【0054】
ニ)前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が水性高分子(F)とイソシアネート化合物(G)を含む
木材の接着に用いられる水性接着剤組成物として、水性高分子−イソシアネート系接着剤、が挙げられる。
【0055】
水性高分子−イソシアネート系接着剤とは水溶性高分子水溶液、水性ラテックス、水性エマルジョン等を主剤とし、該主剤にイソシアネート化合物を配合した接着剤である。ここで、水性高分子とは水溶性高分子溶液、水性ラテックスまたは水性エマルジョンである。
【0056】
水溶性高分子溶液としては、ポリビニルアルコール水溶液、澱粉水溶液、蛋白質水溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体水溶液、ポリアクリル酸ソーダ水溶液、ポリアクリルアミド水溶液、マレイン酸イミド共重合体水溶液等を挙げることができる。
【0057】
また、水性ラテックスまたは水性エマルジョンとしては、スチレン、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、クロロプレン、1,3−ヘキサジエン、イソプレン、イソブテン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチルビニルエーテルからなる群から選ばれた1種の化合物の水性ラテックスまたは水性エマルジョン、または前記化合物群から選ばれた共重合可能な2種以上の不飽和単量体からなる水性ラテックスまたは水性エマルジョンを挙げることができる。前記水性ラテックスまたは水性エマルジョンは、カルボキシル基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基、グリシジル基、β−メチルグリシジル基、水酸基、アミノ基、酸無水物からなる群から選ばれた反応性基の1種または2種以上を備える不飽和単量体を乳化重合させた変性ラテックスまたは変性エマルジョンであってもよい。
【0058】
イソシアネート化合物とは分子中にイソシアネート基を有す化合物である。具体的に、イソシアネート基を有す化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添トリメチルキシリレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、4,4−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネートまたはその混合物、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−もしくは1,4−キシリレンジイソシアネートまたはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネートを挙げることができる。
【0059】
さらに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビューレット体、炭酸ガスとポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジリジントリオン環を有するポリイソシアネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の低分子量ポリオールとポリイソシアネートとの付加体、或いはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とポリイソシアネートとの高分子ポリオール等との付加体等のNCO末端化合物及び、これらの2種以上の混合物を挙げることができる。
【0060】
本発明の第4の実施形態の特徴は水性高分子−イソシアネート系接着剤を生分解性接着剤とすることにある。すなわち、水性高分子−イソシアネート系接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することで生分解性を付与した木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物を提供できる。
【0061】
次に、水性高分子−イソシアネート系接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入する方法を示す。すなわち、事前に水性高分子にポリ乳酸エマルジョンを混合し、接着剤塗布直前に硬化剤であるイソシアネート化合物を混合し、接着剤組成物を調製、製糊する。接着剤塗布後、ポリ乳酸を含む水性高分子と硬化剤との混合物に含まれる水が蒸発揮散して、残されたポリ乳酸、水性高分子、硬化剤であるイソシアネート化合物が一体化し、イソシアネート化合物と水性高分子との反応及び水とイソシアネート化合物との反応により硬化することで、水性高分子−イソシアネート系接着剤の硬化体にポリ乳酸を導入することができる。
(木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物の形成方法)
本発明では被着体である木材にポリ乳酸エマルジョンを塗布し、ポリ乳酸エマルジョンに含まれる水が蒸発揮散して、ポリ乳酸エマルジョンに含まれるポリ乳酸が膜を形成して硬化する。硬化したポリ乳酸は生分解性を示す。また、安定した接着力を示す組成物とするために充填剤を添加する。また、充填剤を分散させるために分散剤としてヘキサメタリン酸ソーダを添加する。
【0062】
さらに、ポリ乳酸エマルジョンは酢酸ビニルエマルジョンを含むか、アクリル樹脂系エマルジョンと硬化剤を含むか、水性高分子とイソシアネート化合物を含むかの、それぞれの配合ができる。
【0063】
本発明における木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、水性接着剤であり生分解性であるので環境を汚染する虞が無く、ポットライフが長い上、優れた耐水接着力を備え、加熱下、或いは高温多湿の環境下、長期に亘って耐水接着力を維持することができる。従って、本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、合板、LVL、突板、化粧板、集成材、パーティクルボード等の木質繊維板、家具、建具、運動具その他の木工製品製造用の木材用接着剤として好適に用いることができる。
(添加剤)
本実施形態の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、分散剤、消泡剤、防腐剤、防火剤、防蟻剤、防カビ剤、防虫剤、整泡剤、起泡剤、防錆剤、湿潤剤、濡れ性改質剤等の添加剤を添加することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び参考例に基づき説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(例1)「接着剤組成物の主剤の製造例」
ポリ乳酸エマルジョン(ポリ乳酸50%エマルジョン、第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)60重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部を混合して主剤を調製した。
(例2〜8)「接着剤組成物の主剤の製造例」
ポリ乳酸エマルジョン(ポリ乳酸50%エマルジョン、第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)と、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)の配合を80/20重量部(例2)、60/40重量部(例3)、40/60重量部(例4)、20/80重量部(例5)、10/90重量部(例6)、6/94重量部(例7)、2/98重量部(例8)、と変えて、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部を混合して主剤を調製した。
(評価)
前記接着剤組成物の主剤について、目視においてエマルジョンの状態を観察した。安定性についてエマルジョンの状態が均一な状態を○として、分離した状態を×とした。
【0065】
例1〜6を実施例とし、例7,8を比較例として水性接着剤組成物の主剤の試験結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から、例1〜6の各接着剤組成物は、例7,8の接着剤組成物に比較してエマルジョンの状態が均一な状態で安定していることが明らかである。
(例9)「接着剤組成物の主剤の製造例」
ポリ乳酸エマルジョン(ポリ乳酸50%エマルジョン、第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)1重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部を混合して主剤を調製した。
(例10〜18)「接着剤組成物の主剤の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(ポリ乳酸50%エマルジョン、第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)5重量部(例10)、10重量部(例11)、20重量部(例12)、40重量部(例13)、60重量部(例14)、80重量部(例15)、100重量部(例16)、120重量部(例17)、140重量部(例18)、と変えて添加して、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部を混合して主剤を調製した。
(評価)
前記接着剤組成物の主剤について、含水率6〜8%、比重0.72〜0.75の10mm厚のカバ柾目挽板に対し、前記接着剤組成物を250g/m2塗布し、目視において塗布された状態を観察した。塗布性については木材に均一に塗布されている状態を○として、均一に塗布されていない状態を×とした。また、均一に塗布されているが塗布層が薄い状態を△とした。
【0068】
例10〜17を実施例とし、例9,18を比較例として水性接着剤組成物の主剤の試験結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2から、例10〜17の各接着剤組成物の主剤は、例9,18の接着剤組成物に比較して木材に均一に塗布されている状態で塗布性が優れていることが明らかである。
【0071】
(例19)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)60重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部を混合して主剤を調製した。
【0072】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0073】
(例20)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、EVAエマルジョン(住友化学工業株式会社製、商品名:スミカフレックス400HQ)180部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)180重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ1.5重量部を混合して主剤を調製した。
【0074】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0075】
(例21)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、アクリル樹脂エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名:XR−3085)100部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)100重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ1重量部を混合して主剤を調製した。
【0076】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0077】
(例22)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、15%ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製、商品名:PVA217)50重量部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)60重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ0.5重量部、混合して主剤を調製した。
【0078】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0079】
(例23)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、15%ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製、商品名:PVA217)130重量部、EVAエマルジョン(住友化学工業株式会社製、商品名:スミカフレックス400HQ)180部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)180重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ1.5重量部を混合して主剤を調製した。
【0080】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0081】
(例24)「接着剤組成物の製造例」
まず、ポリ乳酸エマルジョン(第一工業製薬株式会社製、商品名:プラセマL110)100重量部、15%ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製、商品名:PVA217)70重量部、アクリル樹脂エマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名:XR−3085)100部、炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、商品名:ホワイトンP−30)100重量部、ヘキサメタリン酸ソーダ1重量部を混合して主剤を調製した。
【0082】
次に、硬化剤であるイソシアネート化合物としてポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:スミジュール44V)15重量部を、前記主剤100重量部に添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0083】
(評価)
前記接着剤組成物について、「JIS K 6806」に基づいて、接着性能を試験した。
【0084】
試験では、含水率6〜8%、比重0.72〜0.75の10mm厚のカバ柾目挽板に対し、前記接着剤組成物を250g/m2塗布し、開放堆積時間20℃にて1分以内、閉鎖堆積時間20℃にて10分以内、20℃にて1.2N/cm2の圧力で24時間圧締した後、解圧し、20℃にて7日間養生したものを試験片とした。そして、前記各試験片の圧縮せん断接着強さを、常態、耐温水、煮沸繰り返しの3通りの条件で、測定した。
【0085】
試験結果を表1に示す。試験結果は、「JIS K 6806」に定める試験機により試験片が破断するまでの最大荷重を測定し、実測した接着面積で除した接着強さ(N/cm2)で示す。
【0086】
「JIS K 6806」に基づく、接着性能試験において、「常態」とは試験片作成後、直ちに試験に供するもので、耐水性に関わらない接着力を示す。また、「耐温水」とは試験片を60±3℃の温水中に3時間浸漬した後、室温の水中に冷めるまで浸し、濡れたままの状態で試験に供するもので、耐水性及び耐熱性の指標となるものである。また、「煮沸繰り返し」とは試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、60±3℃の空気中で20時間乾燥し、さらに沸騰水中に4時間浸漬してから、室温の水中に冷めるまで浸し、濡れたままの状態で試験に供するもので、耐久性の指標となるものである。
【0087】
例19〜24を実施例として水性接着剤組成物の試験結果を表3、4に示す。なお表中単位のない数字はブロックせん断強度(N/cm2)を示す。
【0088】
尚、表3中の参考値1は「JIS K 6806」に基づく、酢酸ビニルエマルジョン樹脂木材接着剤の1種に合格する圧縮せん断接着強さを示す。
【0089】
表4中の参考値2は「JIS K 6806」に基づく、水性高分子―イソシアネート系木材接着剤の1種、1号に合格する圧縮せん断接着強さを示す。また、参考値3は「JIS K 6806」に基づく、水性高分子−イソシアネート系木材接着剤の1種、2号に合格する圧縮せん断接着強さを示す。
【0090】
【表3】

【0091】
表3の例19に示すようにポリ乳酸エマルジョンを用いる木材の接着に使用する水性接着剤組成物として良好な接着性を示していることが分かる。
【0092】
また、ポリ乳酸エマルジョンを用いる木材の接着剤の規格はないものの参考値1に合格する圧縮せん断接着強さを示している。
【0093】
同様に、表3の例21に示すようにポリ乳酸エマルジョンにEVAエマルジョンを配合した木材の接着に使用する水性接着剤組成物及び表3の例20に示すようにポリ乳酸エマルジョンにアクリル樹脂系エマルジョンを配合した木材の接着に使用する水性接着剤組成物も良好な接着性を示していて、ともに参考値1に合格する圧縮せん断接着強さを示している。
【0094】
【表4】

【0095】
表4の例22〜24に示すようにポリ乳酸エマルジョンに水性高分子を配合して硬化剤としてイソシアネート化合物を用いる「水性高分子−イソシアネート系接着剤」類似の接着剤組成物は木材の接着に使用する水性接着剤組成物として良好な接着性を示していることが分かる。
【0096】
また、ポリ乳酸エマルジョンを用いる木材の接着剤の規格はないものの例4は参考値3に合格し、例23及び例24は参考値2に合格する圧縮せん断接着強さを示している。
【0097】
以上のことから、生分解性を示すポリ乳酸を用いる新規な木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は木材の接着に用いられることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、木材同士の他、木材と段ボール、紙、布、金属、陶磁器、ガラス、木毛板、プラスチック板(塩化ビニル樹脂板、ABS板、FRP板、スチレン樹脂板等)、無機板(アスベスト、ロックウール等の鉱物質繊維板等)、セメント系無機板(石綿スレート板、パルプセメント板、コンクリート板等)等の異種の素材に対して接着する場合にも適用することができる。
さらに、本発明の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物は、コーティング用、塗料用組成物としても用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(A)を含むことを特徴とする木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリ乳酸(A)がポリ乳酸エマルジョン(B)であることを特徴とする請求項1記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がポリ乳酸(A)を5〜70重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が充填剤を5〜55重量%の範囲で含むことを特徴とする請求項2、3記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が酢酸ビニル系エマルジョン(C)を含むことを特徴とする請求項2〜4記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリ乳酸エマルジョン(B)がアクリル樹脂系エマルジョン(D)と硬化剤(E)を含むことを特徴とする請求項2〜4記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリ乳酸エマルジョン(B)が水性高分子(F)とイソシアネート化合物(G)を含むことを特徴とする請求項2〜4記載の木材用ポリ乳酸系水性接着剤組成物。

【公開番号】特開2007−70423(P2007−70423A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257281(P2005−257281)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000205742)株式会社オーシカ (40)
【Fターム(参考)】