説明

木材製品、木材製品の製造方法

【課題】簡易に製造でき、変形の少ない木材製品を提供する。
【解決手段】断面矩形形状の角材113は、互いに平行な第1側面116と第2側面117とからなる側面対114に平行に切断される。切断されて得られた第1の部分材121は、いずれも、第1側面116側にある第1接合面122と、第2側面117側にある第2接合面123とを有する。第1の部分材121は、第1側面116同士もしくは第2側面117同士を接合させて、元の角材113と同じ断面形状に形成され、接合済角材111となる。ビリヤードキュー101等の木材製品は、この接合済角材111を用いて作られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材製品、及び、木材製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、一般に、経年変化によって変形する。木材の変形は、一般に、「狂い(クルイ)」と呼ばれ、その変形の状態によって「曲がり」、「反り」、「捩れ」に分類される。
【0003】
図6は、木材901の模式図な断面図である。図7は、木材901から得られた材木905の模式的な断面図である。図6及び図7に基づいて、木材の変形について説明する。木材901は、一般に、伐採された樹木の幹の部分をいう。木材901の断面を見ると、樹心902と、複数の年輪903とを視認できる。また、木材901の断面の外縁は、樹皮904に囲まれている。年輪903は、樹心902を中心とする同心円状に並ぶ。なお、年輪903は、樹木の成長に応じて、非円形の閉じた図形となる場合もある。
【0004】
材木905は、木材901から切削して得られた生材をさらに乾燥することにより得られ、建材や道具類の材料となる。ここで、木材901から図6の一点鎖線に沿って切り出した生材を基に、材木905を得る場合を考える。材木905における樹心902側の面を、木裏906という。また、材木905における樹皮904側の面を、木表907という。この場合、図7に示すように、生材が乾燥して材木905となると、木表907側(樹皮904側)が狭まるように反る。
【0005】
このような木材の性質のため、木材製品を作る際には将来変形しうることを念頭におかなければならない。ところが、木材製品には、変形することが望ましくないものがある。例えば、木製のビリヤードキューは、変形すると競技場に多大な影響を及ぼす。この点、曲がり発生させないよう作られたビリヤード用キューの発明が、特許文献1に開示されている。
【0006】
特許文献1に記載のビリヤード用キューは、原木10から角材20を製材して、製材された角材20の中央で直角に交差し、末端が角材の縁に接するように十字型断面形状を持つ中心部材21のみを残し、周辺部材22,23,24,25を角材の長さ方向にカッティングし、この周辺部材22,23,24,25を中心部材21の年輪と相反する方向に中心部材21に再接合して作られる。特許文献1によれば、接合された角材20’は、元の角材20が持っていた変形力、すなわち、年輪の方向性による中心部材21の変形力と複数個の周辺部材22,23,24,25の変形力が互いに相殺されて変形が発生せず、真っ直ぐ状態を維持することができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−528020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のビリヤード用キューでは、骨格をなす断面十字形の中心部材21が、周辺部材22,23,24,25に比して、ビリヤード用キューの断面の多くの部分を占めている。このため、中心部材21の変形力は、周辺部材22,23,24,25の変形力に比して大きくなり、周辺部材22,23,24,25が曲がってしまう。
【0009】
また、周辺部材22,23,24,25は、いずれも、中心部材21のみに接触している。つまり、周辺部材22,23,24,25の変形は、中心部材21のみにしか防がれない。
【0010】
そして、角材20の断面形状の隅部を取り除くように角材20から周辺部材22,23,24,25を切り出すことは、作業者の熟練が必要となる。作業者は、作業上のミスや熟練度によって、周辺部材22,23,24,25を切り出すときに中心部材21の側面の谷部分に意図しない切れ込みを形成してしまい、中心部材21の強度を弱めてしまうことも考えられる。
【0011】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、簡易に製造でき、変形が少ない木材製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の木材製品は、断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に前記角材を切断して得られ前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面とをそれぞれ有する複数の部分材同士を接合し、前記角材と同じ断面形状に形成される接合済角材を備え、前記部分材同士のいずれの接合箇所も、前記第1側面同士もしくは前記第2側面同士を接合させたものである。
【0013】
別の面から見た本発明の木材製品は、断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に、かつ、互いに平行な第3側面と第4側面とからなる他方の側面対に平行に前記角材を切断して得られ前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面と前記第3側面側にある第3接合面と前記第4側面側にある第4接合面とをそれぞれ有する複数の部分材同士を接合し、前記角材と同じ断面形状に形成される接合済角材を備え、前記部分材同士のいずれの接合箇所も、前記第1側面同士、前記第2側面同士、前記第3側面同士もしくは前記第4側面同士を接合させたものである。
【0014】
本発明の木材製品の製造方法は、接合済角材を備えてなる木材製品の製造方法であって、断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に前記角材を切断して、前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面とをそれぞれ有する複数の部分材を得る工程と、前記第1側面同士もしくは前記第2側面同士を接合させ、複数の前記部分材同士を前記角材と同じ断面形状に形成して前記接合済角材を得る工程と、を備える。
【0015】
別の面から見た本発明の木材製品の製造方法は、接合済角材を備えてなる木材製品の製造方法であって、断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に、かつ、互いに平行な第3側面と第4側面とからなる他方の側面対に平行に前記角材を切断して、前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面と前記第3側面側にある第3接合面と前記第4側面側にある第4接合面とをそれぞれ有する複数の部分材を得る工程と、前記第1側面同士、前記第2側面同士、前記第3側面同士もしくは前記第4側面同士を接合させ、複数の前記部分材同士を前記角材と同じ断面形状に形成して前記接合済角材を得る工程と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、角材をその側面に平行な切り口で切断するので、木材製品を簡易に製造できる。そして、相反する反り方をする側面同士が接合して、隣り合う部分材同士の反りが相殺されるので、木材製品の変形が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ビリヤードキュー(木材製品)の正面図である。
【図2】バットの断面構造を説明するための斜視図である。
【図3】バットの断面図である。
【図4】(a)から(d)は、角材から接合済角材を形成する流れを示す断面図である。
【図5】角材の別の分割方法を示す断面図である。
【図6】木材の模式図な断面図である。
【図7】木材から得られた材木の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の一形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態では、木材製品の一例として木製のビリヤードキュー101を採り挙げ、このビリヤードキュー101への適用例について説明する。
【0019】
図1は、ビリヤードキュー(木材製品)101の正面図である。ビリヤードキュー101は、シャフト102とバット103とを有し、長尺で、先端に向かうほど細くなる。
【0020】
シャフト102は、ビリヤードキュー101の先端側に位置する。シャフト102の長さは、ビリヤードキュー101の長さの略半分である。シャフト102の先端には、フェラル104及びティップ105が取り付けられる。
【0021】
バット103は、ビリヤードキュー101の後端側に位置する。バット103の長さは、ビリヤードキュー101の長さの略半分である。バット103の中腹の外周には、グリップ106が設けられる。バット103の後端には、バットキャップ107及びバンパー108が設けられる。
【0022】
シャフト102とバット103とは、連結部109により連結される。連結部109には、ジョイントピンと、ジョイントインサートと、ジョイントカラーと、ジョイントリングとが含まれる。
【0023】
以下、図2ないし図4に基づいて、バット103の構造について説明する。図2は、バット103の断面構造を説明するための斜視図である。図3は、バット103の断面図である。バット103は、接合済角材111をテーパ状に削って形成される。この接合済角材111は、複数の部分材112の側面同士を接着剤で接合して形成されるものである。複数の部分材112は、断面矩形形状の一本の角材113(図4(a)から図4(d)参照)を切断して形成される。ここで重要なのは、複数の部分材112は、乾燥して反ってしまう木材の変形(図6及び図7に基づいて前述)を相殺させるような向きに接合されるという点である。
【0024】
図4(a)から図4(d)は、角材113から接合済角材111を形成する流れを示す断面図である。角材113は、例えば、メープル、コクタン(エボニー)、シタン等の堅い木材から作られる。角材113は、二対の側面対114,115を有する。各側面対114,115において、この側面対114,115を構成する二つの側面は、互いに平行である。ここで、一方の側面対114を構成する二つの側面を、第1側面116及び第2側面117と呼ぶ。また、他方の側面対115を構成する二つの側面を、第3側面118及び第4側面119と呼ぶ。
【0025】
まず、図4(a)を参照する。角材113は、第1側面116と第2側面117とからなる一方の側面対114に平行な二つの分割線C1で切断される。これにより、三つの第1の部分材121(図4(b)参照)が得られる。
【0026】
次いで、図4(b)を参照する。各第1の部分材121は、それぞれ、第1側面116側にある第1接合面122と、第2側面117側にある第2接合面123とを有する。三つの第1の部分材121は、乾燥による反りを相殺させる向きに、角材113と同じ断面形状に接合される。より詳細には、第1の部分材121同士のいずれの接合箇所も、第1接合面122同士もしくは第2接合面123同士を対面させ、これらを接着剤で接合させる。第1接合面122同士もしくは第2接合面123同士を対面させるために、第3側面118の位置と第4側面119の位置とを入れ替えるよう、第1の部分材121を一つおきに回転させる。
【0027】
次いで、図4(c)を参照する。上記のように接合して得られたものを、中間体124と呼ぶ。中間体124の一の側面には、第3側面118であった部分と第4側面119であった部分とが交互に並ぶ。中間体124は、第3側面と第4側面119とからなる他方の側面対115に平行な二つの分割線C2で切断される。これにより、三つの第2の部分材125(図4(d)参照)が得られる。
【0028】
次いで、図4(d)を参照する。各第2の部分材125は、それぞれ、角材113において第3側面118側に向いていた第3接合面126と、角材113において第4側面119側に向いていた第4接合面127とを有する。三つの第2の部分材125は、乾燥による反りを相殺させるよう、角材113と同じ断面形状に接合される。より詳細には、第2の部分材125同士のいずれの接合箇所も、第3接合面126同士もしくは第4接合面127同士を対面させ、これらを接着剤で接合させる。第3接合面126同士もしくは第4接合面127同士を対面させるために、第1接合面122の位置と第2接合面123の位置とを入れ替えるよう、第2の部分材125を一つおきに回転させる。
【0029】
上記のような接合により、接合済角材111が得られる(図3参照)。接合済角材111の断面には、角材113を分割線C1及び分割線C2で分割することにより得られた部分材112が縦三行横三列に並ぶ。また、接合済角材111の一の側面には、第1側面116であった部分と第2側面117であった部分とが交互に並ぶ。
【0030】
バット103は、このようにして一本の角材113から作られた接合済角材111をテーパ状に削って形成される。バット103を形成する場合に用いる接合済角材111は、断面形状が上下及び左右のいずれについても対称であることが、重量バランスの点で望ましい。さらに望ましくは、接合済角材111は、断面形状の縦が24mm、横が24mmの正方形形状である角材113を、断面形状における各辺について、9mm、6mm、9mmと区切るように分割して(図4(a)においてa1=9mm、a2=6mm、a3=9mmとし、図4(c)においてb1=9mm、b2=6mm、b3=9mmとして)形成したものがよい。
【0031】
シャフト102は、接合済角材111をバット103よりも細くテーパ状に削って形成される。シャフト102を形成する場合に用いる接合済角材111の構造は、バット103を形成する場合に用いる接合済角材111の構造と同じであり、その説明を省略する。ここで、上記のように、シャフト102に用いる接合済角材111を、断面形状における各辺について、9mm、6mm、9mmと区切るよう分割して形成すると、フェラル104(図1参照)及びティップ105(図1参照)の取り付けや、ビリヤードキュー101全体の重量バランスの点て有利となる。
【0032】
ビリヤードキュー101は、このようにして形成されたシャフト102とバット103とを繋ぎあわせて形成される。このビリヤードキュー101では、複数の部分材112が一本の角材113から作られているため、各部分材112は同じ曲率で曲がろうとする。ここで、部分材112の接合箇所では、第1接合面122同士、第2接合面123同士、第3接合面126同士もしくは第4接合面127同士のいずれかで接合している。このため、複数の部分材112の変形は、いずれも、隣り合う別の部分材112によって相殺される。結果として、ビリヤードキュー101の変形が小さくなる。また、ビリヤードキュー101の基となる接合済角材111は、角材113をその側面に平行な切り口で切断して得られるものなので、製造が容易になる。
【0033】
本実施の形態では、木材製品の一例としてビリヤードキュー101を採り挙げて説明したが、接合済角材111は、様々な木材製品に適用できる。例えば、断面形状が数十cm四方の角材を図4(a)から図4(d)に示す手順で分割及び接合して変形の少ない建造物用の柱材とすることができる。また、このよう断面形状が数cm四方の角材を同様に分割及び接合して、机や椅子、棚等の脚柱とすることができる。
【0034】
図5は、角材113の別の分割方法を示す断面図である。図4(a)から図4(d)では、角材113を3×3に分割する方法を示したが、接合済角材111を形成するために角材113を分割する方法は、これに限られることはない。一例として、角材113の分割数を、2×2、4×4、5×5、…としてもよい。別の一例として、図5に示すように、角材113を分割線C3で分割して、角材113の分割数を縦と横とで違えるようにしても良い。
【0035】
また、図4(c)及び図4(d)に示すように中間体124を側面対115(第3側面118、第4側面119)と平行に分割することなく、中間体124を接合済角材111として扱ってこの中間体124を加工してビリヤードキュー101等の木材製品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
101 ビリヤードキュー(木材製品)
111 接合済角材
112 部分材
113 角材
116 第1側面
117 第2側面
118 第3側面
119 第4側面
122 第1接合面
123 第2接合面
126 第3接合面
127 第4接合面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に前記角材を切断して得られ前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面とをそれぞれ有する複数の部分材同士を接合し、前記角材と同じ断面形状に形成される接合済角材を備え、
前記部分材同士のいずれの接合箇所も、前記第1側面同士もしくは前記第2側面同士を接合させたものである、
木材製品。
【請求項2】
断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に、かつ、互いに平行な第3側面と第4側面とからなる他方の側面対に平行に前記角材を切断して得られ前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面と前記第3側面側にある第3接合面と前記第4側面側にある第4接合面とをそれぞれ有する複数の部分材同士を接合し、前記角材と同じ断面形状に形成される接合済角材を備え、
前記部分材同士のいずれの接合箇所も、前記第1側面同士、前記第2側面同士、前記第3側面同士もしくは前記第4側面同士を接合させたものである、
木材製品。
【請求項3】
接合済角材を備えてなる木材製品の製造方法であって、
断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に前記角材を切断して、前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面とをそれぞれ有する複数の部分材を得る工程と、
前記第1側面同士もしくは前記第2側面同士を接合させ、複数の前記部分材同士を前記角材と同じ断面形状に形成して前記接合済角材を得る工程と、
を備える木材製品の製造方法。
【請求項4】
接合済角材を備えてなる木材製品の製造方法であって、
断面矩形形状の角材における互いに平行な第1側面と第2側面とからなる一方の側面対に平行に、かつ、互いに平行な第3側面と第4側面とからなる他方の側面対に平行に前記角材を切断して、前記第1側面側にある第1接合面と前記第2側面側にある第2接合面と前記第3側面側にある第3接合面と前記第4側面側にある第4接合面とをそれぞれ有する複数の部分材を得る工程と、
前記第1側面同士、前記第2側面同士、前記第3側面同士もしくは前記第4側面同士を接合させ、複数の前記部分材同士を前記角材と同じ断面形状に形成して前記接合済角材を得る工程と、
を備える木材製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−841(P2012−841A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137527(P2010−137527)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(508101270)株式会社アダムジャパン (2)
【Fターム(参考)】