説明

木製コーン及び木製コーンの製造方法

【課題】木粉のみを原料粉として使用するにもかかわらず、薄肉異形形状を容易に一体成形することができ、かつ、全体として100%エコ材料からなる製品とすることができ、更に、十分な防水性や耐水性をも付与することができるようにする。
【解決手段】木製コーンは、原料粉として大径木粉及び小径木粉のみを使用する。また、大径木粉及び小径木粉にバインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、大径木粉間の微小間隙に小径木粉を均一に充填した混合物とする。そして、当該混合物を加熱プレスして、大径木粉及び小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって粉状のバインダーを湿潤化及び溶解して大径木粉及び小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、バインダーを介して大径木粉及び小径木粉からなる原料粉をコーン形状に一体成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木粉を主原料として製造された木粉成形体からなるコーン(ロードコーンまたはパイロンともいう。)及びコーンの製造方法に関し、特に、木粉のみを結合剤(バインダー)により結合してプレス成形することにより略錐形状に形成した木製コーン及び木製コーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や工事現場で交通規制や区分け等を目的として設置されるコーンは、略円錐形をなすプラスチック製であり、石油を主原料として製造されたものである。なお、コーンのプラスチック(合成樹脂)としては、一般的に、PE(ポリエチレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等が使用されている。しかし、従来のコーンは、主に石油を主原料として製造された合成樹脂材料からなるプラスチックコーンであり、かかる合成樹脂材料は、地球生態系で循環しない(生分解性のない)材料であるため、合成樹脂材料を使用することが大気中の二酸化炭素濃度の増加を促進し、ひいては地球温暖化を引き起こす要因となりうる。ここで、近年、コーンの材料としての提案ではないが、環境への配慮や二酸化炭素濃度の増加による地球温暖化の防止等の観点から、石油由来のプラスチックの代わりに、地球生態系で循環する天然資源材料、例えば、生分解性プラスチックや木質系材料(木質チップ材料や木粉材料等)を使用した成形品が提案されている。また、天然資源材料を使用した建築材料用の複合材料の製造方法として、例えば、特許文献1に記載の発明が提案されている。
【特許文献1】特開2006−062326号公報
【0003】
特許文献1は、木質チップを結合剤で結合してなる単板積層材(LVL)やパーティクルボード等の木質系複合材料において、使用される木質チップは植物資源からなり再生可能な資源材料であるが、結合剤は一般にフェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂等の石油系材料であり、再生が困難で再利用がし難くい点、及び、それらの材料からVOC(揮発性有機化合物)が発生する点、及び、石油系材料からなる上記接着剤よりも人体への安全性に優れたタンニン系接着剤を含む結合剤を使用した場合でも、硬化剤として使用されるホルムアルデヒドからVOCが発生する可能性がある点を指摘して、タンニン系接着剤を用いてしかも有害な揮発性物質を発生させることがなく、かつ生産性に優れた木質系複合材料の製造方法を提供することを課題としている(同文献の段落0002〜0011)。そして、特許文献1は、かかる課題を達成するために、木質系成形材料と、タンニン及びヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)からなりpH7〜13に調整したタンニン系接着剤よりなる結合剤とを混和して混和物とし、この混和物を積層して木質積層マットを形成し、木質積層マット内に高温水蒸気を浸透させて加熱及び加圧して結合剤を硬化させることにより、木質系成形材料が硬化した結合剤で結合された木質複合材料を得るようにしている(要約)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明は、パーティクルボード等の厚肉平板状の複合材料を製造するための技術を開示するものであり、建築板材よりも複雑形状となり、かつ、板圧も非常に小さいものとなるコーンの製造には直ちに適用することはできない。即ち、まず、木質系成形材料として長さが20mm〜150mmを好適範囲とする木質チップを使用するため(同文献の段落0029)、建築用板材等の厚肉平板状の複合材料を製造することはできるが、コーンのような薄肉異形形状(平板より複雑な形状)の成形体を製造することは困難である。また、かかる木質チップは、内部に多数の細孔(連続空隙)を有する多孔構造となっているため、成形後の製品の表面が多孔構造によって吸湿しやすい構造となることから、屋外使用による雨天時等の防水性や耐水性が要求されるコーンにはやはり不適当となる。更に、バインダーとしてVOCの発生がないタンニンを利用するものの、その硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)を使用するため(0023)、タンニンとの反応のためにヘキサメチレンテトラミンを水溶したときに、ヘキサメチレンテトラミンがアンモニアとホルマリン(ホルムアルデヒドの水溶液)となり、やはり、製品の成形後にホルムアルデヒドが残留してVOCの発生源となる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来の石油系材料である合成樹脂材料の代わりに、再利用可能で循環(生分解)可能な天然材料である木粉のみを原料粉として使用するにもかかわらず、薄肉異形形状を容易に一体成形することができると共に、バインダーやその他の材料(防水材、塗料等)として循環(生分解)可能な天然材料のみを使用して、全体として100%エコ材料からなる製品とすることができ、更に、十分な防水性や耐水性をも付与することができる木製コーン及び木製コーンの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る木製コーンは、木粉のみからなる原料粉をコーン形状に成形してなる。木製コーンは、大径木粉、小径木粉及びバインダーから構成される。大径木粉は、木材チップを蒸気加熱処理して含水させると共に粉砕処理して所定粒径の粉状体とすることにより、当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊して当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させてなる。小径木粉は、木材チップを蒸気加熱処理して含水させると共に粉砕処理して、前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体とすることにより、当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊して当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させ、かつ、前記大径木粉間の不定形の間隙に密に充填してなる。バインダーは、前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化する少なくともタンニンを含有する。木製コーンは、原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化及び溶解して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダーを介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉をコーン形状に一体成形している。
【0007】
請求項2に係る木製コーンは、請求項1の構成において、前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉を全体重量の約99重量%含有し、かつ、前記大径木粉及び小径木粉を約1対1の割合で混合している。また、前記バインダーとして、主剤としてのタンニン粉に水酸化ナトリウム粉を添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を使用すると共に、当該混合バインダー粉を全体重量の約1〜2重量%の範囲で前記前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉に添加している。
【0008】
請求項3に係る木製コーンは、請求項1または2の構成において、更に、前記コーン形状の根元部に上方から着脱自在に嵌合されるリング形状となるよう一体成形したウエイトを備えている。前記ウエイトは、原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉を前記リング形状に一体成形してなる。
【0009】
請求項4に係る木製コーンの製造方法は、蒸気加熱工程、大径木粉調製工程、小径木粉調製工程、粉体混合工程及び加熱プレス工程を備える。蒸気加熱工程では、木材チップを当該木材チップの分解温度未満の所定温度条件下で蒸気加熱処理して前記木材チップに蒸気を含水させて所定含水率とする一方、蒸気熱によって前記木材チップ内部の細孔の少なくとも一部が破壊されるまで蒸気加熱処理を継続する。大径木粉調製工程では、前記所定含水率とした木材チップを所定粒径の粉状体となるよう粉砕すると共に、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた大径木粉を調製する。小径木粉調製工程では、前記所定含水率とした木材チップを前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体となるよう粉砕すると共に、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔構造を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた小径木粉を調製する。粉体混合工程では、主剤としてのタンニン粉に水酸化ナトリウム粉を添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を、前記大径木粉及び前記小径木粉に混合して、前記大径木粉、前記小径木粉及び前記バインダー粉を均一となるまで撹拌して混合粉体を調製する。加熱プレス工程では、前記混合粉体を所定形状の成形空間内に充填して加熱プレスし、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分及び同水分が蒸発してなる蒸気によって前記混合バインダー粉を湿潤化及び溶解して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記混合バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記所定形状に一体成形する。
【0010】
請求項5に係る木製コーンの製造方法は、請求項4の構成において、前記加熱プレス工程が、第1の加熱プレス工程と第2のか熱プレス工程とを含む。第1の加熱プレス工程では、円錐形状を軸を中心として対称となるよう二分割した半円錐形状の成形空間を有する第1のプレス金型を使用し、前記第1のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記半円錐形状に一体成形して半円錐片を製造する。第2の加熱プレス工程では、前記円錐形状の底面より大径の円盤形状またはトレー状をなす成形空間を有する第2のプレス金型を使用し、前記第2のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記円盤形状に一体成形してベース部を製造する。木製コーンの製造方法は、更に、円錐部形成工程とコーン部形成工程とを備える。円錐部形成工程では、高度分岐環状デキストリンからなる多糖類系接着剤を一対の前記半円錐片の接合面である側面側の端面に塗布し、当該一対の半円錐片を相互に接着して円錐形状の円錐部を形成する。コーン部形成工程では、前記円錐部を前記ベース部上に同軸状となるよう配置すると共に、前記多糖類系接着剤を前記円錐部の底面側の端面または前記ベース部において当該円錐部の底面側の端面との接合面部分に塗布し、前記円錐部を前記ベース部上に同軸状となるよう接着して最終コーン形状となるコーン部を形成する。
【0011】
請求項6に係る木製コーンの製造方法は、請求項5の構成において、前記加熱プレス工程が、更に、第3の加熱プレス工程を含む。第3の加熱プレス工程では、前記円錐部の根元部に外嵌される直径のリング形状をなす成形空間を有する第3のプレス金型を使用し、前記第3のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記リング形状に一体成形して、前記円錐部の根元部に上方から着脱自在に嵌合されるリング形状のウエイトを製造する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る木製コーンは、従来の石油系材料である合成樹脂材料の代わりに、再利用可能で循環(生分解)可能な天然材料である木粉のみを原料粉として使用するにもかかわらず、薄肉異形形状を容易に一体成形することができると共に、バインダーやその他の材料(防水材、塗料等)として循環(生分解)可能な天然材料のみを使用して、全体として100%エコ材料からなる製品とすることができ、更に、十分な防水性や耐水性をも付与することができる。特に、蒸気加熱処理による細孔破壊作用に加え、粉砕処理による細孔破壊作用によって、それぞれ、大径木粉及び小径木粉の各々の内部に存在する細孔構造がほぼ全て破壊されて実質的に消失する。即ち、大径木粉及び小径木粉のいずれの場合も、木粉内部の細孔構造に対して、蒸気加熱による熱的破壊作用(構造軟化・溶解等)と粉砕による機械的破壊作用(構造の圧潰等)とを加重的に加えることで、木材チップの蒸気加熱処理によって破壊されない細孔が内部に残存していたとしても、粉砕処理で木材チップを木粉とするときに当該残存細孔を破壊することができるため、木粉内部の細孔をほぼ完全に(木粉内部の細孔による呼吸作用及び調湿作用が行われなくなる程度まで)破壊することができる。更に、大径木粉と小径木粉との混合物の加熱プレス成形時に、小径木粉を満遍なく、かつ、均一に、大径木粉間の微小間隙や大径木粉自体の凹凸形状(毛羽、溝等)内に、容易に形状追従させて密に充填することができ、大径木粉間における隙間(空間)の発生や大径木粉と小径木粉との間における隙間(空間)の発生、更に、小径木粉間における隙間(空間)の発生を確実に阻止して、当該隙間による呼吸作用や調湿作用を確実に防止することができる。
【0013】
請求項2に係る木製コーンは、更に、一般的な木材チップを使用した場合に、小径木粉による大径木粉間の間隙充填効果によって相互の結合力を増大したり、空隙発生を最大限に防止していわゆる木の呼吸作用を防止したりする利点を最大限に発揮することができる。また、非常に少ない混合割合乃至添加量で大径木粉及び小径木粉を相互に結合することができ、特に、最終製品を再チップ化して再利用することが容易となり、また、木粉に比較して効果となるバインダーの使用量を大幅に低減して全体の製造コストを低減することができる。
【0014】
請求項3に係る木製コーンは、更に、ウエイトを円錐部に嵌合装着することにより、全体を使用条件に応じて重量として、風等による位置ずれや転倒といった不具合を防止することができる。また、かかるウエイトは、コーン形状部分と同様の構成であるため、同様の作用効果を発揮する。
【0015】
請求項4に係る木製コーンの製造方法は、請求項1と同様の作用効果を発揮する。特に、蒸気加熱処理工程での蒸気加熱処理による細孔破壊作用に加え、粉砕処理工程での粉砕処理による細孔破壊作用によって、それぞれ、大径木粉及び小径木粉の各々の内部に存在する細孔構造がほぼ全て破壊されて実質的に消失する。即ち、大径木粉及び小径木粉のいずれの場合も、木粉内部の細孔構造に対して、蒸気加熱による熱的破壊作用(構造軟化・溶解等)と粉砕による機械的破壊作用(構造の圧潰等)とを加重的に加えることで、木材チップの蒸気加熱処理によって破壊されない細孔が内部に残存していたとしても、粉砕処理工程で木材チップを木粉とするときに当該残存細孔を破壊することができるため、木粉内部の細孔をほぼ完全に(木粉内部の細孔による呼吸作用及び調湿作用が行われなくなる程度まで)破壊することができる。更に、加熱プレス工程における大径木粉と小径木粉との混合物の加熱プレス成形時に、小径木粉を満遍なく、かつ、均一に、大径木粉間の微小間隙や大径木粉自体の凹凸形状(毛羽、溝等)内に、容易に形状追従させて密に充填することができ、大径木粉間における隙間(空間)の発生や大径木粉と小径木粉との間における隙間(空間)の発生、更に、小径木粉間における隙間(空間)の発生を確実に阻止して、当該隙間による呼吸作用や調湿作用を確実に防止することができる。
【0016】
請求項5に係る木製コーンの製造方法は、更に、別個の加熱プレス工程により構成部品としての半円錐片及びベース部を成形し、それらを合体するため、木粉材料のみを使用して複雑な異形形状となるコーン形状を確実に成形することができる。
【0017】
請求項6に係る木製コーンの製造方法は、更に、別個の加熱プレス工程によりウエイトを成形するため、必要に応じて異なる材料密度の木材チップを使用してウエイト自体の重量調整を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの製造方法を示す製造工程図である。図2は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの各部品から完成品を製造するまでの製造工程、及び、完成品としての木製コーンの使用方法をそれぞれ概略的に示す説明図である。図3は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す正面図である。図4は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す平面図である。図5は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す断面図であり、その一部を拡大して示す。
【0019】
[木製コーン]
本発明の木製コーンは、木粉のみからなる原料粉をコーン形状に成形してなる木製コーンであって、大径木粉、小径木粉及びバインダーからなる。即ち、大径木粉は、原料としての木材チップを蒸気加熱処理(蒸煮)して蒸気を含水させると共に、その後、粉砕処理(叩解等)して所定粒径の粉状体とすることにより、蒸気加熱処理及び粉砕処理の両方によって当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊(加熱崩壊、圧潰等)して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させてなる所定長さ及び所定直径のものである。また、小径木粉は、大径木粉と同一または異なる種類の木材チップを蒸気加熱処理して蒸気を含水させると共に粉砕処理して、前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体とすることにより、蒸気加熱処理及び粉砕処理の両方によって当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊して当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させ、かつ、前記大径木粉間の不定形の間隙に密に充填してなる所定長さ及び所定直径のものである。さらに、バインダーは、前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化する少なくともタンニンを含有するものである。そして、本発明の木製コーンは、原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化及び溶解(液状化)して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダーを介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉をコーン形状に一体成形したものである。
【0020】
また、本発明の木製コーンは、前記大径木粉及び小径木粉からなる原料粉を全体重量の約99重量%含有し、かつ、前記大径木粉及び小径木粉を約1対1の割合で混合し、前記バインダーとして、主剤としてのタンニン粉にタンニンを溶解する水酸化ナトリウム粉を微量添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を使用すると共に、当該混合バインダー粉を全体重量の約1〜3重量%の範囲で前記前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉に添加したものとすることができる。
【0021】
更に、本発明の木製コーンは、前記コーン形状の根元部に上方から着脱自在に嵌合されるリング形状となるよう一体成形したウエイトを備えるものとして構成することができる。このウエイトは、原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉を前記リング形状に一体成形してなるものである。
【0022】
[木製コーンの製造方法]
図1に示すように、本実施の形態の木製コーンの製造方法は、間伐材や廃棄木材等の木材を破砕装置等の木材チップ製造装置によりチップ化した木材チップを用意し、この木材チップを蒸気加熱工程としての木材チップ蒸煮工程(STEP1)で蒸気加熱処理する。詳細には、木材チップ蒸煮工程は、蒸気タブ中で前記木材チップを当該木材チップの熱分解温度(木材の種類に夜が一般的には270℃以上)未満の所定温度条件下、かつ、非加圧状態で蒸気加熱処理し、前記木材チップに蒸気を含水させて所定含水率とする。これにより、木材チップが軟化し、次の木材チップ粉砕工程による木粉製造を容易化する。また、木材チップ中に相当量の水分が含有され、次の木材チップ粉砕工程により製造した木粉中に十分な量の水分を含有維持することができる。一方、木材チップ蒸煮工程での蒸気加熱処理は、蒸気加熱時に発生する蒸気の蒸気熱によって前記木材チップ内部の細孔構造(連続空隙構造)の少なくとも一部が破壊されるまでの時間継続する。なお、蒸気加熱処理時間を増加して蒸気熱によって木材チップ内部の細孔構造の殆ど全部を破壊するようにしてもよい。また、蒸気タブ中を大気圧を超える高圧状態として100℃以上の温度条件、例えば、約150℃の温度条件で木質チップの蒸気加熱処理を行い、内部の細孔構造の破壊作用を増大させてもよいが、非加圧状態であっても、蒸気加熱を継続することにより木質チップ内部の細孔構造の破壊は進行する。このように、木材チップ蒸煮工程では、熱分解温度未満の温度であっても、木材チップの蒸気加熱処理を所定時間継続することにより、木材チップの細胞壁中のヘミセルロース等が少なくとも一部分解して、細孔構造が破壊されるものと推定される。
【0023】
次に、木材チップ分別粉砕工程(STEP2)は、大径木粉調製工程と小径木粉調製工程とからなり、粒径の異なる2種類の木粉を製造する。まず、大径木粉調製工程では、木材チップ蒸煮工程で所定含水率とした木材チップを、ハンマーミル等の木材粉砕機により所定粒径の粉状体となるよう粉砕する。このとき、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔乃至細孔構造(連続空隙)を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた大径木粉を調製する。これにより、前記蒸気加熱処理工程での細孔破壊作用に加え、粉砕処理工程での細孔破壊作用によって、大径木粉の内部に存在する細孔構造がほぼ全て破壊されて実質的に消失する。一方、大径木粉調製工程では、大径木粉の粒径が約1mm〜5mmmの範囲、好ましくは、約1mm〜3mmの範囲、更に好ましくは約0.3mmとなるよう木材チップを粉砕して大径木粉を調製する。大径木粉の粒径をこの範囲内とすると、大径木粉内部の細孔構造を粉砕による物理的圧力により確実に破壊して消失させることができる。
【0024】
次に、小径木粉調製工程では、木材チップ蒸煮工程で所定含水率とした前記木材チップを、大径木粉調整工程と同様、ハンマーミル等の木材粉砕機により所定粒径の粉状体となるよう粉砕する。(なお、このときの木材チップは、前記大径木粉と同様の木材チップを私用してもよく、別個の種類の木材チップを使用してもよい。)詳細には、小径木粉調製工程では、前記所定含水率とした木材チップを前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体となるよう粉砕する。このとき、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔構造を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた小径木粉を調製する。これにより、大径木粉調製工程の場合と同様、前記蒸気加熱処理工程での細孔破壊作用に加え、粉砕処理工程での細孔破壊作用によって、小径木粉の内部に存在する細孔構造がほぼ全て破壊されて実質的に消失する。即ち、本実施の形態では、大径木粉及び小径木粉のいずれの場合も、木粉内部の細孔構造に対して、蒸気加熱による熱的破壊作用(構造軟化・溶解等)と粉砕による機械的破壊作用(構造の圧潰等)とを加重的に加えることで、木材チップの蒸気加熱処理によって破壊されない細孔が内部に残存していたとしても、粉砕処理工程で木材チップを木粉とするときに当該残存細孔を破壊することができるため、木粉内部の細孔をほぼ完全に(木粉内部の細孔による呼吸作用及び調湿作用が行われなくなる程度まで)破壊することができる。一方、小径木粉調製工程では、小径木粉の粒径が、大径木粉の約1/10の粒径、即ち、粒径約0.1mm〜0.5mmmの範囲、好ましくは、約0.1mm〜0.3mmの範囲となるよう木材チップを粉砕して小径木粉を調製する。小径木粉の粒径をこの範囲内とすると、大径木粉の場合以上に小径木粉内部の細孔構造を粉砕による物理的圧力により確実に破壊して消失させることができるのは無論のこと、小径木粉自体の微細化(微小粒径化)によって、内部の細孔構造による呼吸作用及び調湿作用自体を無視できる程度に低減することができると考えられる。また、小径木粉の粒径を上記のように大径木粉の約1/10の粒径とすると、後述する加熱プレス工程における大径木粉と小径木粉との混合物の加熱プレス成形時に、小径木粉を満遍なく、かつ、均一に、大径木粉間の微小間隙や大径木粉自体の凹凸形状(毛羽、溝等)内に、容易に形状追従させて密に充填することができ、大径木粉間における隙間(空間)の発生や大径木粉と小径木粉との間における隙間(空間)の発生、更に、小径木粉間における隙間(空間)の発生を確実に阻止して、当該隙間による呼吸作用や調湿作用を確実に防止することができる。
【0025】
次に、調製した大径木粉及び小径木粉を、木粉移送工程(STEP3)で貯留搬送装置(キャリングボックス等)にシュート等により移送して貯留しておき、貯留した大径木粉及び小径木粉を次の粉体混合工程(STEP4)用の粉体混合装置(粉体ミキサー)に移送する。粉体混合工程では、大径木粉と小径木粉との混合物に、更に、バインダー粉を混合する。詳細には、バインダー粉としては、主剤としてのタンニン粉に、タンニンの溶解等の目的で水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)粉を所定量(微量)添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を使用する。タンニン粉の原料としては、茶葉に含有されるタンニン、柿に含有されるタンニン、ガラナに含有されるタンニン、ヌルデに含有されるタンニン等、各種のタンニンを使用することができる。また、水酸化ナトリウム粉は、水酸化ナトリウム(NaOH)をパウダー状またはフレーク状としたものであり、水中に溶解してその水溶液をアルカリ水溶液(強アルカリ)とするものである。本実施の形態のタンニン系バインダー粉は、タンニン粉に対して水酸化ナトリウム粉を、好ましくは約1重量%〜3重量%の範囲、更に好ましくは、約2重量%の割合で添加している。なお、タンニン系バインダーは、従来のようにタンニンを硬化させる硬化剤としてのホルムアルデヒドは含有していない。一方、多糖類系バインダー粉を構成する高度分岐環状デキストリンとは、特許第3107358号(特願平7−195647号)に開示されている環状グルカンであり、たとえば澱粉(アミロペクチン)に酵素、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、枝切り酵素の1種以上を作用させて生産した環状構造を有するデキストリンをいう。即ち、この高度分岐環状デキストリンは、α−1,4−グルコシド結合およびα−1,6−グルコシド結合を有する糖類に糖転移酵素を作用させ生成させた環状構造を有する環状デキストリンであり、平均分子量約16万、ブドウ糖が900残基重合したグルカンである。高度分岐環状デキストリンは、通常のデキストリンと比較して、分子量分布が狭い、水に対する溶解性が非常に高い、溶液の安定性が高い、浸透圧が低い、乾燥しやすく吸湿しにく、高い皮膜形成能を持つ等の種々の有用な性質を有している。なお、高度分岐環状デキストリンとしては、江崎グリコ株式会社製の商品名「クラスターデキストリン」(登録商標)を使用することができる。前記多糖類系バインダー粉は、この高度分岐環状デキストリンを粉状化(微粉末化)したものである。
【0026】
そして、粉体混合工程では、このタンニン系バインダー粉と多糖類系バインダー粉とからなる混合バインダー粉を、前記大径木粉及び小径木粉に添加混合して、前記大径木粉、小径木粉及び混合バインダー粉を均一となるまで撹拌して混合粉体を調製する。このとき、混合粉中に大径木粉と小径木粉との混合割合は、約1:1、約2:3、約3:2、約1:2、約2:1、約1:3、約3:1等、相互に1対3から3対1の範囲内で設定することができるが、通常は、約1:1の割合とすることが好ましい。こうすると、一般的な木材チップを使用した場合に、小径木粉による大径木粉間の間隙充填効果によって相互の結合力を増大したり、空隙発生を最大限に防止していわゆる木の呼吸作用を防止したりする利点を最大限に発揮することができる。また、混合バインダー粉の添加量は、混合粉体全体の重量に対して、約0.5重量%〜5重量%の範囲とし、約1重量%〜3重量%の範囲とすることが好ましく、約2重量%とすることが更に好ましい。混合粉体中の混合バインダー粉の添加量をこの範囲乃至この値とすると、非常に少ない混合割合乃至添加量で大径木粉及び小径木粉を相互に結合することができ、特に、最終製品を再チップ化して再利用することが容易となり、また、木粉に比較して効果となるバインダーの使用量を大幅に低減して全体の製造コストを低減することができる。したがって、混合バインダー粉の添加量の例にそれぞれ対応して、混合粉体中における大径木粉及び小径木粉の配合割合は、混合粉体の全体重量に対して、それぞれ、約99.5重量%〜95重量%の範囲、約99重量%〜97重量%の範囲、約98重量%の値となる。なお、混合バインダー粉中におけるタンニン系バインダー粉と多糖類系バインダー粉との混合割合は、約1:1、約2:3、約3:2、約1:2、約2:1、約1:3、約3:1等、相互に1対3から3対1の範囲内で設定することができるが、結合強度を大きくしたい場合、従来の木工ボンドと同等の結合強度乃至接着力を発揮する多糖類系バインダーの混合割合を大きくする。
【0027】
ここで、粉体混合工程の前にバインダー調製工程を設けて、タンニン系バインダー粉と多糖類系バインダー粉とを予め所定量ずつ混合した混合バインダー粉を調製しておき、その混合バインダー粉を粉体混合工程で粉体混合装置に投入して大径木粉及び小径木粉に添加混合してもよい。或いは、粉体混合工程でタンニン系バインダー粉及び多糖類系バインダー粉をそれぞれ所定量ずつ別々に粉体混合装置に投入して大径木粉及び小径木粉に添加混合してもよい。また、タンニン系バインダー粉及び多糖類系バインダー粉バインダー粉は、それぞれ、次の加熱プレス工程において隣接する大径木粉間の間隙に充填された小径木粉が、当該大径木粉との間に形成する微小隙間に充填される微小粉径とすることが好ましい。こうすると、加熱プレス工程において、混合バインダー粉が、大径木粉と小径木粉との間、小径木粉間、大径木粉間にそれぞれ円滑に配置され、加熱プレス時に大径木粉及び小径木粉から発生する蒸気によって確実に湿潤化乃至溶解して、大径木粉及び小径木粉を強固に接着乃至結合する。
【0028】
次に、前記混合粉体を粉体分配移送工程(STEP5)で3種類の加熱プレス装置までシュート等により移送して、3種類の加熱プレス工程用に供給する。加熱プレス工程は、前記混合粉体を3種類の所定形状の成形空間内に充填して加熱プレスし、混合粉体の大径径木粉及び小径木粉のそれぞれが含有する水分及び同水分が蒸発してなる蒸気によって前記混合バインダー粉を湿潤化及び溶解(液状化)して大径木粉及び小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、混合バインダー粉を介して大径木粉及び小径木粉を前記3種類の所定形状にそれぞれ一体成形する。詳細には、加熱プレス工程は、第1の加熱プレス工程としての半円錐片形成工程(STEP6A)と、第2の加熱プレス工程としてのベース部成形工程(STEP6B)と、第3の加熱プレス工程としてのウエイト成形工程(STP6C)とからなる。
【0029】
半円錐片形成工程では、底部を円形に開口する中空の円錐形状を軸を中心として対称となるよう二分割した中空の半円錐形状(同一肉厚)の成形空間(キャビティ空間)を有する第1の加熱プレス金型(半円錐ヒートプレス金型)を使用し、前記第1のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して、所定温度及び所定圧力で加熱プレスする。これにより、混合バインダー粉を介して大径木粉及び小径木粉を前記半円錐形状に一体成形して、図2の半円錐片成形工程として示すように、底部を半円形に開口すると共に中心軸側を三角形状に開口した均一肉厚の半円錐片11,12を製造することができる。なお、製造される半円錐片11,12は同一の半円錐形状となるため、同一形状の一対の半円錐片11,12を使用して、後述する合体成形工程で1個の(底面を円形に開口した)中空円錐形状の円錐部10を形成する。したがって、図2中では左右の半円錐片11,12が成形されるよう図示されているが、半円錐片形成工程では、1個以上の半円錐形状の成形空間を有する第1の加熱プレス金型を使用して、1回の半円錐片形成工程につき1個以上の同一形状の半円錐片を製造すればよい。
【0030】
ベース部成形工程では、前記円錐形状を有する円錐部10の円形の底面より大径の円盤形状をなす成形空間(キャビティ空間)を有する第2のプレス金型(円盤ヒートプレス金型)を使用し、第2のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記混合バインダー粉を介して大径木粉及び小径木粉を前記円盤形状に一体成形して、図2のベース部成形工程として示すように、均一肉厚の円盤形状をなすベース部21を製造する。なお、ベース部21は、単純円盤形状とする以外に、図5の断面図に示すように、底部側の全体を円形に開口したトレー状に成形することもできる。また、この場合、図5に示すように、トレー状の上部の円盤部の中央に、前記円錐部10の底部外周縁に対応する直径の円形孔を貫通形成してもよいが、かかる円形孔を形成せず、単なるトレー状(上部を孔を有しない単純円盤部としたもの)としてもよい。即ち、この場合、第2のプレス金型の成形空間は、かかるトレー状のベース部21に対応する形状となる。
【0031】
一方、ウエイト成形工程では、前記円錐形状の円錐部10の根元部(下端部)に外嵌される直径のリング形状をなす成形空間(キャビティ空間)を有する第3のプレス金型(ウエイトヒートプレス金型)を使用し、第3のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記混合バインダー粉を介して大径木粉及び小径木粉を前記リング形状に一体成形してリング形状のウエイト31を製造する。ウエイト31は、中央に大径円形(その肉厚だけ除いた直径の円形)をなす貫通孔31aを有し、前記円錐形状乃至コーン形状をなす円錐部10の根元部に上方から着脱自在に嵌合される。
【0032】
前記第1〜第3加熱プレス工程の各々では、加熱温度を約120℃〜200℃の範囲とすることができるが、(使用する木材チップの種類にもよるが)、約135℃±15℃(約120℃〜150℃)の温度範囲、或いは、約165℃±15℃(約150℃〜180℃)の温度範囲のいずれかの温度範囲とすると共に、プレス圧力を約80kN〜150kNの範囲、好ましくは約100kN〜130kNの範囲として加熱プレス処理を行う。また、加熱プレス時間は1ショットにつき約30秒〜90秒の範囲とすることができるが、好ましくは、約1分とする。ここで、上記各加熱プレス工程では、前記蒸気加熱処理及び粉砕処理により、大径木粉及び小径木粉のそれぞれは、内部の細孔構造が実質的に全て破壊乃至圧潰され、いわゆる木の呼吸作用や調湿作用を発揮しない、即ち、呼吸しない状態となっている。したがって、加熱プレス工程で大径木粉及び小径木粉が相互にバインダーを介して結合しやすい状態となっており、結果として、バインダーの使用量を通常(細孔を破壊していない場合)より大幅に減少して全体の製造コストを低減することができる。
【0033】
また、加熱プレス処理時に大径木粉と小径木粉とを結合する混合バインダー粉中、前記高度分岐環状デキストリンは、本来、食品素材として使用されるものであるが、本実施の形態では、その接着機能乃至分子間結合機能に着目し、高度分岐環状デキストリンを粉状化した高度分岐環状デキストリン粉をバインダーとしてタンニン系バインダー粉に追加して使用する。即ち、上記各加熱プレス工程において、前記タンニン系バインダー粉による結合作用(バインダー作用)に加え、高度分岐環状デキストリン粉による結合作用(バインダー作用)を発揮させることで、大径木粉及び小径木粉相互を強固に結合するようになっている。このとき、タンニン系バインダー粉中の水酸化ナトリウム粉は、後述する加熱プレス工程において大径木粉及び小径木粉に含有される水分(加熱時の水蒸気)により溶解してアルカリ環境を作り、湿潤化乃至液状化したタンニン粉の溶解を促進してタンニンによる結合作用(バインダー作用)を強化する。一方、混合バインダー粉中に混合された水酸化ナトリウム粉は、多糖類バインダー粉に対してもそのアルカリ作用によって溶解を促進し、その結合作用を強化する。
【0034】
次に、前記半円錐片11,12及びベース部21を合体成形装置までシュート等により移送して、合体成形工程(STEP7)用に供給する。合体成形工程は、円錐部形成工程と、コーン部形成工程とからなる。円錐部形成工程では、前記多糖類系バインダー粉として使用した高度分岐環状デキストリンからなる多糖類系接着剤を使用する。即ち、前記高度分岐環状デキストリンからなる多糖類系接着剤(液状乃至水溶液)を、一対の半円錐片11,12の接合面である側面側の端面(少なくとも一方の半円錐片11,12の側端面)に塗布し、当該一対の半円錐片11,12を互いに向かい合う方向(側面側の端面に向かう方向)に押圧し、多糖類系接着剤を介して相互に接着して円錐形状の円錐部10を形成する。このとき、手作業による円錐部10の形成も可能であるが、円錐部10に対応する円錐形状の成形空間を有する成形金型(プレス金型)を使用し、多糖類系接着材を塗布した一対の半円錐片11,12をその成形空間に収容配置して一対の半円錐片11,12の接合面を接合し、成形金型により当該一対の半円錐片11,12を互いに向かい合う方向に押圧し、多糖類系接着剤を介して相互に接着して円錐形状の円錐部10を形成することが好ましい。
【0035】
一方、コーン部形成工程では、円錐部10をベース部21上に同軸状となるよう配置すると共に、前記多糖類系接着剤を円錐部10の底面側の端面またはベース部21において当該円錐部10の底面側の端面との接合面部分に塗布し、円錐部10及びベース部21を互いに向かい合う方向(軸方向に対向する方向)に押圧し、円錐部10をベース部21上に同軸状となるよう接着して最終コーン形状(円錐部10の下端にベース部21が同軸状に固着された形状)となるコーン部を形成する。このとき、手作業によるコーン部の形成も可能であるが、コーン部に対応するコーン形状の成形空間を有する成形金型(プレス金型)を使用し、多糖類系接着材を塗布した円錐部10及びベース部21をその成形空間に収容配置してそれらの接合面を接合し、成形金型により円錐部10及びベース部21を互いに向かい合う方向に押圧し、多糖類系接着剤を介して相互に接着してコーン形状のコーン部を形成することが好ましい。
【0036】
上記合体成形工程の円錐部形成工程及びコーン部形成工程では、それぞれ、加熱プレス工程時の加熱による余熱を利用して、半円錐片11,12の相互接着による円錐部10の形成、及び、円錐部10へのベース部21の接着によるコーン部の形成を円滑に行うことができる。即ち、通常、加熱プレス工程から合体成形工程への移送直後は、半円錐片11,12及びベース部21の温度が、それぞれ、約40℃〜50℃の範囲にあるため、半円錐片11,12やベース部21の接合面に塗布した多糖類系接着剤の接着力が向上し、半円錐片11,12の接着強度や円錐部10へのベース部21の接着強度を増大することができる。しかし、半円錐片11,12及びベース部21の温度が常温(室温)であり余熱が残存していない場合でも、前記多糖類系接着剤によれば、半円錐片11,12の相互接着及び円錐部10へのベース部21の接着を確実に行うことができる。
【0037】
次に、合体成形したコーン部と、これとは別個にモノコック品として成形されたウエイト31とは、トンネル乾燥工程(STEP8)で乾燥される。即ち、コーン部とウエイト31とは、トンネル乾燥機のトンネル状の乾燥空間内を所定時間移送される間に乾燥(温風加熱や輻射熱等による強制乾燥)され、内部の含水を外部に飛散させて乾燥状態とされる。
【0038】
次に、乾燥されたコーン部及びウエイト31は、それぞれ、防水塗布装置に移送され、防水被膜塗布工程(STEP9)で表面(少なくとも外面全体)に防水被膜を均一に塗布形成される。このときの防水塗膜形成用の防水剤としては、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をアルコール(エタノール)に溶解したものを好適に使用することができる。この中鎖脂肪酸トリグリセライドは、本来、食品素材として使用されるものであるが、本実施の形態では、その防水機能乃至撥水機能に着目し、あるコールに溶解して防水剤として使用している。なお、中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、例えば、花王株式会社製の商品名「ココナードMT(C8・C10酸トリグリセライド)」を使用することができ、アルコールとしては、例えば、奥野製薬工業株式会社製の商品名「トップコールA(アルコール製剤)」を使用することができる。次に、防水塗膜を塗布形成したコーン部及びウエイト31は、それぞれ、塗料塗布装置に移送され、塗料塗布工程(STEP10)で表面(少なくとも外面全体)に塗料層を均一に塗布形成されて着色される。このときの塗料としては天然素材塗料を使用する。
【0039】
このようにして、一連の工程(STEP1〜STEP10)により、表面に防水処理及び着色処理を施した最終製品としての(円錐部10及びベース部21からなる)コーン部並びにウエイト31を製造することができる。本発明の木製コーンは、上記のようにして製造したコーン部とウエイト31とを備えるものである。最終製品としてのコーン部は、通常のコーンと同等の寸法(高さ、直径)とした場合、約1.5kgの重量となり、従来のプラスチックコーンよりも大きな重量となる。また、ウエイト31は、コーン部に嵌合してコーン部が風等により位置ずれしたり転倒したりするのを防止するためのものであり、使用予定場所等の使用条件に応じた重量とする。即ち、ウエイト31は、その厚み(直径方向寸法、図3中の上下方向寸法)を増減調整することにより重量調整することができ、通常の使用条件で、約2〜3kgの重量となるよう厚みを設定される。これにより、本発明の木製コーンは、コーン部にウエイト31を勘合した状態で、全体重量が約3.5〜4.5kgとなる。なお、木製コーンの非使用時(保管時や運送時等)には、ウエイト31をコーン部から取り外して別個に保管することができる。
【0040】
[木製コーンの例]
上記製造方法で製造した木製コーンは、図3〜図5に示すように、円錐部10の上端を切除して円錐台形状として実施することもできる。また、ベース部21は、円盤状ではなく、図示の例のように、コーナー部にアールを付けた角丸正方形板状乃至トレー状として形成することもできる。なお、図示の例では、ベース部21は、円錐部10の下端内周縁に対応する直径の円形孔21aを形成したトレー状となっている。ここで、図5に示すように、円錐部10は、一対の円錐片11,12を接着して形成されるため、一対の円錐片11,12の接合面に接合線13が存在するが、円錐部10の少なくとも外表面全体には、前記防水塗膜及び塗料層が形成されるため、接合線13が外部から見えて意匠性を損なうことはない。また、円錐部10は、大径木粉及び小径木粉をバインダーで結合して一体化した基材層10aと、基材層10aの外表面全体に塗布形成された防水塗膜10bと、防水塗膜10bの全面に塗布形成された塗料層10cとからなる。一方、ベース部21と円錐部10との間の接合面にも接合線が存在するが、ベース部21及び円錐部10の少なくとも外表面全体には、前記防水塗膜0b及び塗料層10cが形成されるため、接合線が外部から見えて意匠性を損なうことはない。また、ベース部10は、円錐部10と同様、大径木粉及び小径木粉をバインダーで結合して一体化した基材層と、基材層の外表面全体に塗布形成された防水塗膜と、防水塗膜の全面に塗布形成された塗料層とからなる(いずれも図示略)。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの製造方法を示す製造工程図である。
【図2】図2は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの各部品から完成品を製造するまでの製造工程、及び、完成品としての木製コーンの使用方法をそれぞれ概略的に示す説明図である。
【図3】図3は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す正面図である。
【図4】図4は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す平面図である。
【図5】図5は本発明の一実施の形態に係る木製コーンの一例を示す断面図であり、その一部を拡大して示す。
【符号の説明】
【0042】
10:円錐部、11,12:半円錐片、21:ベース部、31:ウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木粉のみからなる原料粉をコーン形状に成形してなる木製コーンであって、
木材チップを蒸気加熱処理して含水させると共に粉砕処理して所定粒径の粉状体とすることにより、当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊して当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させてなる大径木粉と、
木材チップを蒸気加熱処理して含水させると共に粉砕処理して、前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体とすることにより、当該各粉状体の内部に存在する細孔を破壊して当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させ、かつ、前記大径木粉間の不定形の間隙に密に充填してなる小径木粉と、
前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化する少なくともタンニンを含有するバインダーとから構成され、
原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化及び溶解して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダーを介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉をコーン形状に一体成形したことを特徴とする木製コーン。
【請求項2】
前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉を全体重量の約99重量%含有し、かつ、前記大径木粉及び小径木粉を約1対1の割合で混合し、
前記バインダーとして、主剤としてのタンニン粉に水酸化ナトリウム粉を添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を使用すると共に、当該混合バインダー粉を全体重量の約1〜2重量%の範囲で前記前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉に添加したことを特徴とする請求項1記載の木製コーン。
【請求項3】
更に、前記コーン形状の根元部に上方から着脱自在に嵌合されるリング形状となるよう一体成形したウエイトを備え、
前記ウエイトは、原料粉として前記大径木粉及び前記小径木粉のみを使用し、当該原料粉としての前記大径木粉及び前記小径木粉に前記バインダーを粉状として混合してそれらを均一となるまで撹拌し、前記大径木粉間の微小間隙に前記小径木粉を均一に充填した混合物とし、当該混合物を加熱プレスして、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分の蒸発による発生する蒸気によって前記粉状のバインダーを湿潤化して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉からなる原料粉を前記リング形状に一体成形してなることを特徴とする請求項1または2記載の木製コーン。
【請求項4】
木材チップを当該木材チップの分解温度未満の所定温度条件下で蒸気加熱処理して前記木材チップに蒸気を含水させて所定含水率とする一方、蒸気熱によって前記木材チップ内部の細孔の少なくとも一部が破壊されるまで蒸気加熱処理を継続する蒸気加熱工程と、
前記所定含水率とした木材チップを所定粒径の粉状体となるよう粉砕すると共に、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた大径木粉を調製する大径木粉調製工程と、
前記所定含水率とした木材チップを前記大径木粉より小さい粒径であって前記大径木粉間の不定形の微小間隙に密に充填される粒径の粉状体となるよう粉砕すると共に、前記蒸気加熱工程後に当該各粉状体の内部に残存する細孔構造を破壊して、当該細孔による調湿作用及び呼吸作用が実質的に行われなくなる程度まで当該細孔を消失させた小径木粉を調製する小径木粉調製工程と、
主剤としてのタンニン粉に水酸化ナトリウム粉を添加したタンニン系バインダー粉と、高度分岐環状デキストリン粉からなる多糖類系バインダー粉とを混合した混合バインダー粉を、前記大径木粉及び前記小径木粉に混合して、前記大径木粉、前記小径木粉及び前記バインダー粉を均一となるまで撹拌して混合粉体を調製する粉体混合工程と、
前記混合粉体を所定形状の成形空間内に充填して加熱プレスし、前記大径木粉及び前記小径木粉のそれぞれが含有する水分及び同水分が蒸発してなる蒸気によって前記混合バインダー粉を湿潤化及び溶解して前記大径木粉及び前記小径木粉をそれぞれ相互に結合して一体化し、前記混合バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記所定形状に一体成形する加熱プレス工程と
を備えることを特徴とする木製コーンの製造方法。
【請求項5】
前記加熱プレス工程は、
円錐形状を軸を中心として対称となるよう二分割した半円錐形状の成形空間を有する第1のプレス金型を使用し、前記第1のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記半円錐形状に一体成形して半円錐片を製造する第1の加熱プレス工程と、
前記円錐形状の底面より大径の円盤形状またはトレー状をなす成形空間を有する第2のプレス金型を使用し、前記第2のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記円盤形状に一体成形してベース部を製造する第2の加熱プレス工程とを含み、
更に、
高度分岐環状デキストリンからなる多糖類系接着剤を一対の前記半円錐片の接合面である側面側の端面に塗布し、当該一対の半円錐片を相互に接着して円錐形状の円錐部を形成する円錐部形成工程と、
前記円錐部を前記ベース部上に同軸状となるよう配置すると共に、前記多糖類系接着剤を前記円錐部の底面側の端面または前記ベース部において当該円錐部の底面側の端面との接合面部分に塗布し、前記円錐部を前記ベース部上に同軸状となるよう接着して最終コーン形状となるコーン部を形成するコーン部形成工程とを備えることを特徴とする請求項4記載の木製コーンの製造方法。
【請求項6】
前記加熱プレス工程は、更に、前記円錐部の根元部に外嵌される直径のリング形状をなす成形空間を有する第3のプレス金型を使用し、前記第3のプレス金型の成形空間内に前記混合粉体を充填して加熱プレスし、前記バインダー粉を介して前記大径木粉及び前記小径木粉を前記リング形状に一体成形して、前記円錐部の根元部に上方から着脱自在に嵌合されるリング形状のウエイトを製造する第3の加熱プレス工程を含むことを特徴とする請求項5記載の木製コーンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−99937(P2010−99937A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273653(P2008−273653)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508318339)鮎川建設株式会社 (1)
【出願人】(508318063)
【Fターム(参考)】