説明

木質成形体、その製造方法、及び接着剤

【課題】強度が向上した木質成形体、木質成形体の強度を向上させることができる木質成形体の製造方法及び接着剤を提供する。
【解決手段】木質成形体は、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤で複数の木質材料を接着することにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂分解物を用いた接着剤で木質材料を接着した木質成形体、その製造方法、及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建築等において広く用いられている木質ボード等の木質成形体は、一般に木質片等の木質材料を、熱硬化性接着剤をバインダーとして熱圧成形して製造される(例えば特許文献1参照。)。このときバインダーとしては尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が一般に使用されている。
【0003】
しかしながら、2003年7月より建築基準法が改正となり、接着剤の原料として用いられる樹脂のホルムアルデヒド放出量が厳しく規制される事となった。そのため前記した尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などホルムアルデヒドを原料とする樹脂を用いたバインダーの使用が困難となる。したがって、原料中にホルムアルデヒドを使用しない接着剤が木質材料のバインダーとして求められている。
【0004】
一方、冷蔵庫の断熱材やクッション材に使用されているウレタン樹脂のリサイクル要求が高まってきており、ウレタン樹脂を化学的に分解して低分子化合物を得たり(例えば特許文献2参照)、得られたウレタン分解物を成型材料のバインダーとして使用したりする方法が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
現在、このようなことから、ウレタン樹脂分解物を木質材料のバインダーとして使用することが提案されている。しかしながら、ウレタン樹脂分解物を主剤とし、かつイソシアネートを硬化剤とする接着剤により木質材料を接着する場合、イソシアネートは木質材料中に存在するリグノセルロースの水酸基や水分とよく反応するため、本来反応すべきウレタン樹脂分解物との反応が阻害され、十分な強度が得にくいという問題があった。
【特許文献1】特開平9−78049
【特許文献2】特開昭42−10634
【特許文献3】特開2004−115658
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、強度を向上させた木質成形体、木質成形体の強度を向上させることができる木質成形体の製造方法及び接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の木質成形体は、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤により複数の木質材料が接着されてなることを特徴とする木質成形体を特徴としている。
【0008】
本発明の木質成形体の製造方法は、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン分解物を含む主剤と非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤と、木質材料とを混合する工程と、前記接着剤と前記木質材料との混合物をプレス成型する工程とを具備することを特徴としている。
【0009】
本発明の接着剤は、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度を向上させた木質成形体を得ることができる。また、ウレタン樹脂のリサイクル方法の一つが確立でき、産業廃棄物を低減し、環境に対する負荷を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施の形態について説明する。本実施の形態に係る木質成形体は、ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤で複数の木質材料を接着することにより形成されている。
【0012】
(ウレタン樹脂分解物)
本実施の形態に係るウレタン樹脂分解物とは、ウレタン樹脂を化学的に分解、すなわち低分子化させたものである。
【0013】
被分解物であるウレタン樹脂は、ウレタン結合またはウレア結合を構造中に有する高分子である。例えば、硬質ウレタン、軟質ウレタン、半硬質ウレタン、ウレタンエラストマーなどが挙げられる。ヌレート結合を持つイソシアヌレート材も含まれる。
【0014】
この中でも、硬質ウレタン樹脂を分解した分解物を用いた場合が、分解物中に含まれる官能基の数が多くなるため木質成形体の強度が向上し、好ましい。ここで、本実施の形態において、「硬質ウレタン」とは、ウレタン原料であるポリオールの水酸基価が250mgKOH/g以上のもの使用したウレタン樹脂と定義する。ウレタン原料としてのポリオールの水酸基価上限は1024mgKOH/gである。木質成形体がより高い強度を得るためには、ポリオールが350mgKOH/g以上のものを用いることが望ましい。また、ウレタン樹脂分解物中にMDA(4,4’−ジアミノジフェニルメタン)やポリメリックMDAを含有しているものが好ましい。これらのアミンが存在すると高い強度を得ることができる。
【0015】
ウレタン樹脂を化学的に分解すると、分解物中に主には原料に由来した、水酸基を構造中に有する化合物(ポリオール類)及びアミノ基を構造中に有する化合物(アミン類)が生成する。このアミノ基はウレタン原料であるイソシアネート成分のNCO基がNH基に置換されたものである。より強度の高い木質成形体を得るために、ウレタン樹脂分解物のアミン価が50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下になるよう分解した分解物である事が好ましい。また、分解物の水酸基価が250mgKOH/g以上700mgKOH/g以下、さらに好ましくは350mgKOH/g以上700mgKOH/g以下になるよう分解した分解物であることが望ましい。
【0016】
ウレタン樹脂分解物は室温で液体の状態のもの、室温で固体の状態のものがあるが、ウレタン樹脂分解物の軟化点または融点を35℃以上、さらに好ましくは50℃以上のものを用いた方が良い。このような材料を用いると、混合後に保管する際にウレタン樹脂分解物が固形として材料中に存在し、非乳化イソシアネートとの接触が少なくなるため材料の可使時間が長くなる。成型時には、軟化点または融点以上の成型温度で硬化させることでウレタン樹脂分解物が溶け出し、非乳化イソシアネートと反応するため問題無い。またこの場合は、ウレタン樹脂分解物の平均粒子径が1〜500μmになるように、さらに好ましくは10〜200μmになるように粉砕することが好ましい。これより粒子径が大きいと、ウレタン樹脂分解物が分散し難くなり、成型時にウレタン樹脂分解物と非乳化イソシアネートの反応が起こりにくくなるので物性が低下する。また、これより粒子径が小さいと、静電気の影響を受けやすくなり取り扱いが困難になるだけでなく、非乳化イソシアネートとの反応が早くなりすぎて成型時に破裂するなどの硬化障害が起こる可能性がある。
【0017】
次に、ウレタン樹脂分解物中に含有される成分の具体例を以下に挙げる。まず、ウレタン樹脂分解物中に含有されるアミン類としては、原料の4−4’メチレンジイソシアネート及びそのポリマー由来のジアミノジフェニルメタン(MDA)及びそのポリマー、トルイレンジイソシアネート(TDI)由来のトルイレンジアミン(TDA)などが主なアミン類として挙げられる。これ以外にも、NDI(1,5−ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、H6XDA(水添MDI)、LDI(リジンジイソシアネート)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、リジンエステルトリイソシアネート、等のイソシアネート基がアミノ基に変換したアミン類も挙げられる。
【0018】
ウレタン樹脂分解物中に含有されるポリオール類としては、ウレタン樹脂原料として一般的に使用されているポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールに大別される。エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトールエチレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、テトラメチロールシクロヘキサン、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スークロース、糖類などにプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加反応させたものが具体例として挙げられる。
【0019】
ウレタン樹脂を化学的に分解する方法は、分解物中に水酸基、アミノ基を生成するものであれば特に方法は問わない。具体的には熱及び分解剤の少なくとも一方を作用させて化学的に分解する方法が挙げられる。
【0020】
熱による分解を行う際には、例えば300℃〜500℃の温度で、常圧もしくは加圧状態下におくことにより行うことができる。このとき窒素置換か、無酸素雰囲気で行われることが望ましい。また、押出機などのスクリューフィーダや炉で行うことができる。
【0021】
また、分解剤を作用させて分解を行う方法について以下に述べる。分解剤の例としては、アミン類分解剤、ポリオール類分解剤、あるいは加水分解触媒などが挙げられる。その中でも、アミン類分解剤が、分解物中に多くのアミノ基を含有するようになるので、イソシアネートとの反応が良好になり、高い強度がでるので特に好ましい。
【0022】
前記アミン類分解剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロパンジアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロパノールアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、n−アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N−メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾールが挙げられる。これらの化合物を2種類以上混合して使用しても問題はない。
【0023】
また、必要に応じてアミン類分解剤に添加剤を加えても良い。添加剤の例としては、水、アルコール、ポリオールなどの希釈剤や、アルカリ金属、金属錯体などの反応補助剤、無機粒子や有機粒子などの充填材などアミン類分解剤の反応を極端に阻害しないものであれば添加することができる。
【0024】
アミン類分解剤を被分解物であるウレタン樹脂100重量部に対し5重量部以上、より好ましくは10重量部以上用いることが望ましい。上限はウレタン樹脂100重量部に対し100重量部以下、より好ましくは40重量部以下であることが望ましい。
【0025】
これらのアミン類分解剤とウレタン樹脂を分解装置に投入してウレタン分解物を得る。分解装置には、従来知られているどのような分解装置を用いることもできるが、特に加熱・混合・圧縮の同時にできる押出機を用いることが望ましい。バッチ式で分解を行うと、ウレタン樹脂の熱伝導率が悪いため、ウレタン樹脂の分解開始時間に大きな差ができてしまう。このため、先に分解した部分はより低分子量に、後に分解したものが高分子量になるため、幅広い分子量を持つ分解物となってしまうのである。分解する際には温度は80℃〜300℃、分解時間はバッチ式で数十分〜数時間、連続式では1〜10分程度で行うことが望ましい。
【0026】
(非乳化イソシアネート)
非乳化イソシアネートは、成型時にリグノセルロースや水と反応するのを押さえるために用いるものである。「非乳化イソシアネート」とは、水と乳化状態にならない又はなりにくいイソシアネートであり、水と混合した後に相分離を引き起こしやすいイソシアネートである。ここで、イソシアネートが非乳化イソシアネートであるか否かは次のような方法で判別することが可能である。任意のイソシアネートと水を同重量部混合し、1000rpm以上の回転速度を持つ攪拌機(例えば、特殊機化工業株式会社製、高速攪拌機T.K.ホモディスパーf model型)で10秒以上攪拌して5分静置した後、1相で白濁しているもの又は2相に分離して両方が白濁しているものが乳化イソシアネートであり、全体的に白濁しないものまたは上層が白濁しているがイソシアネート層が白濁せず沈降して2相に分かれるものは非乳化イソシアネートである。また、非乳化イソシアネートは、界面活性剤の含有率が5%以下、または乳化するように変性されていないものが好ましい。
【0027】
非乳化イソシアネートとしては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものであれば良く、特に限定されるものではない。その具体的例としては、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ピリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;ジメチレントリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の多官能イソシアネート化合物;グリセリンやトリメチロールプロパン等のポリオール類と上記ジイソシアネート化合物との付加反応物等が挙げられる。これらのイソシアネートは、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、この中でもポリメリックMDIを含有するイソシアネートを用いるのが好ましい。ポリメリックMDIはウレタン樹脂の原料として幅広く使用されているものであり、ウレタン樹脂分解物と混合されやすく、高い強度が出やすい。
【0028】
(木質材料)
本実施の形態で使用する木質材料は、特に限定されるものではない。しかし、より強度の高い木質成形体を得るためには、その原料中にリグニンを多く含有するものを用いる方がよい。リグニンはウレタン樹脂分解物中のアミンと適度に反応し、接着剤と木質材料との結合を形成し、接着力が上がるのである。
【0029】
木質材料の例としては、おがくず、籾殻、麦わら、古紙、ケナフなどの植物由来繊維などが挙げられる。この中でも、木質系材料中に多くのリグニンとヘミセルロースを含んでいる籾殻に適用することが好ましい。
【0030】
木質材料は成型する成形体の種類に適切な大きさに粉砕されていれば良く、特に制限があるわけではない。パーティクルボードなどの場合は、1mm〜50mm程度に粉砕されているものを用いるのが一般的である。配向性を持たせるため、細長く粉砕しても構わない。
【0031】
このような木質成形体は、木質材料をあらかじめ適度な大きさに粉砕し、これにウレタン樹脂分解物と非乳化イソシアネートを別々に木質材料に分散させ、その後にそれを加圧加熱成形することにより得ることができる。
【0032】
以下に更に詳細に説明する。まず、適度な大きさに調整された木質材料に、ウレタン樹脂分解物と非乳化イソシアネートを別々に分散混合させる。
【0033】
ウレタン樹脂分解物を含む主剤と非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤と、木質材料との混合の割合は特に限定されるものではないが、接着剤と木質材料(乾燥状態)との合計を100重量部としたとき、接着剤が1重量部以上50重量部以下、木質材料(乾燥状態)が50重量部以上99重量部以下の範囲にあることが望ましい。より好ましくは接着剤は5重量部以上30重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上20重量部以下である。接着剤の量が少なすぎると、十分に木質材料が接着しないので物性が悪くなり、接着剤の量が多くなるとプレス時に接着剤が多く染み出して、接着剤/木質材料の比がばらついてしまう恐れがある。
【0034】
混合の方法は特に限定されるものではなく、混合機、ヘンシェルミキサー、コンクリートミキサー、ロール、ミルなどが挙げられる。樹脂を添加する方法も特に制限されないが、霧状に噴霧するか滴下するなどの方法で分散状態が良くなるように添加することが好ましい。
【0035】
こうして得られた混合物を、ボードをはじめ所定の形に整え、プレス成型する。成型方法は特に限定されないが、単段プレス、多段プレス、連続プレス、などが挙げられる。また成型条件は特に限定されるものではないが、木質材料の塑性変形を促進するために、温度120℃以上220℃以下、成型圧力10kg/cm以上500kg/cm以下で行うことが好ましい。また、室温で固体のウレタン樹脂分解物を用いている場合には、その融点または軟化点以上で成型することが好ましい。成形時間は成型条件により異なるが、概して樹脂のゲルタイム以上1時間以下であることが望ましい。
【0036】
(その他の添加剤)
その他必要に応じて、離型剤、難燃剤、防虫剤、防カビ剤等の添加剤を加えることができる。ただし、離型剤は高級脂肪酸の金属塩などでできていることが多く、非乳化イソシアネートと水との相溶性を高めるので、あらかじめ非乳化イソシアネートに混合して木質材料に塗布する際は非乳化イソシアネート100重量部に対し5重量部以下にしなければならず、これ以上添加するには別々に木質材料に添加するか、ウレタン樹脂分解物中に分散させるのが良い。
【0037】
本実施の形態では、ウレタン樹脂分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤を用いて、木質材料を接着するので、強度が向上した木質成形体を得ることができる。即ち、非乳化イソシアネートは水分と反応しにくく、水分と混合した場合に相分離する。このため、木質材料中に含まれる水分やリグノセルロース等と反応するイソシアネートを低減させることができる。これにより、ウレタン樹脂分解物中に含まれるポリオール類やアミン類と反応するイソシアネートの量が多くなり、木質成形体中の有効樹脂成分が増加する。それゆえ、強度が向上した木質成形体を得ることができる。また、冷蔵庫、建材、クッション材などの産業資材として使用済みのウレタン樹脂を再利用することができ、廃棄物を減少させ環境に対する負荷を軽減することができる。
【実施例1】
【0038】
以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0039】
(ウレタン樹脂分解物Aの作成)
ポリオール(三井武田ケミカル社製、ND450、水酸機価450mgKOH/g)とイソシアネート(三井武田ケミカル社製、コスモネートTP)から合成されたウレタン樹脂:ジエタノールアミン=15:1の混合比で270℃の1軸押出し機に投入してウレタン樹脂分解物Aを得た。室温で完全な固体であった。
【0040】
(実施例1)
ウレタン樹脂分解物Aを5重量部(180μm以下に粉砕したもの)に、水と相溶しないポリメリックMDIを含有する非乳化イソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、M−50)5重量部、粉砕した籾殻(5mm以下、含水率約10%)90重量部(絶乾状態基準)を万能混合機で混合した。ボード全体に対する樹脂量(ウレタン分解物+非乳化イソシアネート)は10%であった。その後金型に入れ、成型温度150℃、成型圧力30kg/cmで5分間プレスし、ウレタン樹脂分解物Aを用いたボードを作成した。そして、このボードを用いて、JIS K 6911準拠した試験片を作成して、曲げ強度を測定したところ、16.7MPaであった。
【0041】
(実施例2)
ウレタン分解物Aを7.5重量部、非乳化イソシアネート7.5を重量部、籾殻を85重量部にしたこと以外は実施例1と同様にボードを作成した。ボード全体に対する樹脂量は15%であった。実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、28.0MPaであった。
【0042】
(実施例3)
ウレタン分解物Aを10重量部、非乳化イソシアネートを10重量部、籾殻を80重量部にしたこと以外は実施例1と同様にボードを作成した。ボード全体に対する樹脂量は20%であった。実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、30.0MPaであった。
【0043】
(実施例4)
非乳化イソシアネートとして、実施例1で用いた非乳化イソシアネートよりイソシアネート等量が少ないもの(三井武田ケミカル(株)製、M−200)を用いたこと以外は実施例1と同様にボードを作成した。実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、20.2MPaであった。
【0044】
(実施例5)
非乳化イソシアネートとして、実施例2で用いた非乳化イソシアネートよりイソシアネート等量が少ないもの(三井武田ケミカル(株)製、M−200)を用いたこと以外は実施例2と同様にボードを作成した。実施例2と同様に曲げ強度を測定したところ、25.3MPaであった。
【0045】
(実施例6)
非乳化イソシアネートとして、実施例3で用いた非乳化イソシアネートよりイソシアネート等量が少ないもの(三井武田ケミカル(株)製、M−200)を用いたこと以外は実施例3と同様にボードを作成した。実施例3と同様に曲げ強度を測定したところ、32.3MPaであった。
【0046】
(比較例1)
非乳化イソシアネートの代わりに、水と乳化するイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、M−50w)を用いたこと以外は実施例1と同様にボードを作成した。実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、13.2MPaであった。この結果から、実施例1及び実施例4のボードは、比較例1のボードよりも強度が高いことが確認された。
【0047】
(比較例2)
非乳化イソシアネートの代わりに、水と乳化するイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、M−50w)を用いたこと以外は実施例2と同様にボードを作成した。実施例2と同様に曲げ強度を測定したところ、23.1MPaであった。この結果から、実施例2及び実施例5のボードは、比較例2のボードよりも強度が高いことが確認された。
【0048】
(比較例3)
非乳化イソシアネートの代わりに、水と乳化するイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製、M−50w)を用いたこと以外は実施例3と同様にボードを作成した。実施例3と同様に曲げ強度を測定したところ、26.4MPaであった。この結果から、実施例3及び実施例6のボードは、比較例3のボードよりも強度が高いことが確認された。
【0049】
以上、実施例1〜6及び比較例1〜3の結果をまとめたものを表1と図1に示す。図1は、実施例1〜6及び比較例1〜3に係るボード中の樹脂含有量と曲げ強度との関係を示したグラフである。
【表1】

【0050】
これらの結果を見てみると、非乳化イソシアネートであるM−50(実施例1〜3)とM−200(実施例4〜6)を原料にしたボードは、水と乳化するイソシアネートM−50w(比較例1〜3)を原料にしたボードと比べても、10〜50%程度強度が上昇しているのがわかる。これは、熱圧成型時に非乳化イソシアネートが木質材料中のリグノセルロースや水分と反応しにくいので、殆ど全てのイソシアネートがウレタン分解物Aと反応し、ボード中の有効樹脂量が多くなり、強度が向上したと考えられる。
【0051】
(実施例7)
実施例1と同一の材料を混合した後、袋に入れて密閉し、18℃に保たれた恒温室で1時間、3時間、5時間、7時間、24時間、48時間それぞれ保存した。その後、実施例1と同様にプレスし、ボードを成型した。実施例1と同様に曲げ強度を測定したところ、28.8MPa、26.6MPa、23.5MPa、30.9MPa、25.9MPa、24.1MPaであった。これらの結果から、保存時間が長くなっても大きな強度の低下が見られないことが確認された。
【0052】
(比較例4)
非乳化イソシアネートの代わりに、水と乳化作用のあるイソシアネート(三井武田ケミカル社製、M−50w)を用いたこと以外は実施例7とボードを作成した。ここで、48時間保存した材料に付いては籾殻が十分に接着せず成型できなかった。成型できたボードについて実施例7と同様に曲げ強度を測定したところ、それぞれ27.5MPa、24.9MPa、20.8MPa、15.0MPa、8.0MPaであった。
【0053】
以上、実施例7及び比較例4の結果をまとめたものを表2と図2に示す。図2は、実施例7及び比較例4に係る保存時間と曲げ強度との関係を示したグラフである。
【表2】

【0054】
これらの結果を見てみると、非乳化イソシアネートを用いた場合には、水と乳化作用のあるイソシアネートを用いた場合よりも材料の保存性が優れていて、時間を置いた場合でも高強度のボードが得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1〜6及び比較例1〜3に係るボード中の樹脂含有量と曲げ強度との関係を示したグラフである。
【図2】実施例7及び比較例4に係る保存時間と曲げ強度との関係を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン樹脂分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤により複数の木質材料が接着されてなることを特徴とする木質成形体。
【請求項2】
前記木質材料は、籾殻であることを特徴とする請求項1記載の木質成形体。
【請求項3】
前記接着剤と前記木質材料の重量の合計を100重量部としたとき、前記接着剤が1重量部以上50重量部以下の範囲にあり、かつ前記木質材料が50重量部以上99重量部以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2記載の木質成形体。
【請求項4】
ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン分解物を含む主剤と非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなる接着剤と、木質材料とを混合する工程と、
前記接着剤と前記木質材料との混合物をプレス成型する工程と
を具備することを特徴とする木質成形体の製造方法。
【請求項5】
ウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン分解物を含む主剤と、非乳化イソシアネートを含む硬化剤とからなることを特徴とする接着剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−95987(P2006−95987A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287536(P2004−287536)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】