説明

木質材料の表面加工方法

【課題】簡易な方法で木質材料の表層部を圧密化し得る木質材料の表面加工方法を提供する。
【解決手段】矩形板状に形成された木質材料Wは、送材ベルト18上に載置され、一定速度で送られる。常温状態で回転する摩擦ローラ20は、木質材料Wの送材速度よりも大きな周速度に設定される。また、摩擦ローラ20の木質材料Wとの接触部における周速度が、送材方向に対向する向きに設定される。そして、この摩擦ローラ20により、木質材料Wの表面24が圧接状態で摩擦される。すると、木質材料Wの表面24は、瞬間的に高温・高圧状態となって、表層部26が圧密化される。更に、摩擦ローラ20によって摩擦された木質材料Wに対し、シリコーン含有水Aが塗布される。木質材料Wの軟質部14がシリコーン含有水Aを吸収して膨張し、木質材料Wの表面24に凹凸が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質材料の表面加工方法に関するものであって、更に詳細には、木質材料の表面を加工して、表層部を圧密化させる方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、国内での木材需要を喚起するべく、木質材料の表面を加工して木材機能を高めた高機能木材の加工方法が提案されている(特許文献1参照)。例えば、高機能木材である熱圧密木材は、木質材料を高温に加熱処理した後、高圧プレスにより1/5〜1/2程度の厚さまで圧縮することで製造される。そして、高圧プレスによって木質材料の表層部が圧密化し、この圧密化により木質材料の表面硬度が高まり、該木質材料の耐久性が向上する。
【0003】
また、木質材料を圧密化する他の方法として、熱ローラプレスによる方法が挙げられる。この方法は、高温に加熱したローラによって木質材料を高温状態でローラプレスすることで、木質材料の表面を圧密化する方法である。この場合、木質材料の送材方向に対し、ローラを順方向に回転させると共に、該ローラの周速度(ローラの周面の速度)は、木質材料の送材速度と等しくなっている。
【特許文献1】特開2006−15665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した高圧プレスによる加工方法では、プレス装置による加圧時に多大な電力を消費するため、運転コストが高騰する難点が指摘されていた。しかも、長年の使用により圧密化した表層部が吸湿・吸水を繰り返すことで、プレス加工により圧縮した部位が次第に復元し、表面が変形してしまう問題が生じていた。また、高圧プレスによる加工方法では、前述の如く、木質材料を半分以下の厚みまで圧縮するため、加工後の木質材料の比重が高くなって熱伝導率が大きくなり、木材が本来有する断熱性が失われてしまう欠点もあった。
【0005】
一方、前記熱ローラプレスによる方法では、ローラ自体を加熱する必要があり、装置自体のランニングコストが嵩む問題がある。しかも、木質材料はローラにより比較的ゆっくりと加圧されるため、該木質材料の表面は長時間高温高圧状態とされる。そのため、木質材料の表面に対する負荷が大きく、該表面にひび割れ等が生じて製品価値が低下する難点があった。更に、水分の多い木質材料については、ローラによるプレス開放後に表面が復元してしまい、乾燥後に、やはりひび割れが生じてしまう問題があった。
【0006】
そこで本発明は、従来の木質材料の表面加工方法に内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、簡易な方法で木質材料の表層部を圧密化でき、しかも圧密化後の表面にひび割れ等が生じ難い木質材料の表面加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1に係る木質材料の表面加工方法は、
木質材料の表層部を圧密化する木質材料の表面加工方法であって、
常温で回転する摩擦ローラで該摩擦ローラと相対的に直線移動する木質材料を圧接し、
このときの前記摩擦ローラ表面の周速度を前記木質材料の送材速度より大きく設定すると共に、該摩擦ローラの回転方向を木質材料の送り方向と抗する方向に設定し、
前記木質材料の表面を摩擦ローラにより摩擦して、該表面を瞬時に高温・高圧状態とし前記表層部を圧密化することを特徴とする。
請求項1の発明によれば、木質材料の表面を摩擦すると云った簡易な方法で、木質材料の表層部の圧密化を行ない得る。従って、加工コストが極めて低廉となり、製品価格を抑制し得る。また、木質材料の表面は、摩擦ローラの摩擦により瞬時に高温・高圧状態とされるので、該表面に対する負荷は少なく、ひび割れ等のない良質な木材製品を提供し得る。更に、瞬間的な高温・高圧状態によって、木質材料の表層部に多くの空気層が形成され、木質材料の断熱性が向上されると共に、クッション性を増大し得る。しかも、大きな空気層が数多く形成されることで、木質材料に対し液剤を瞬時に注入でき、これまで注入不能であった粒径の大きな薬剤を注入することも可能となる。従って、注入し得る薬剤の幅が拡がって、従来にない優れた機能を具備した高機能木材を提供し得る。
【0008】
請求項2に係る木質材料の表面加工方法では、前記木質材料の送材速度より大きな周速度であって、該木質材料を送る方向へ回転する仕上げローラを前記摩擦ローラの下流側に設け、該摩擦ローラによって摩擦された木質材料の表面を仕上げローラで更に摩擦するようにしたことを要旨とする。
請求項2の発明によれば、木質材料の送り方向に回転する仕上げローラによって該木質材料の表面を摩擦するので、該表面を仕上げ加工することができ、良質な木材製品を提供し得る。
【0009】
請求項3に係る木質材料の表面加工方法では、前記摩擦ローラによって摩擦された木質材料の表面に水を塗布することで、前記表層部の軟質部が水を吸収して硬質部に対して膨張し、該表面に凹凸を形成するようにしたことを要旨とする。
請求項3の発明によれば、木質材料の表面に水を塗布すると、主として軟質部が水を吸収して硬質部に対して膨張し、該表面に凹凸を形成することができる。これにより、木質材料の表面の質感が向上し、製品に高級感を付与し得る。
【0010】
請求項4に係る木質材料の表面加工方法では、前記摩擦ローラによって摩擦された木質材料の表面に、該木質材料の表層部を改質させる各種薬剤を塗布するようにしたことを要旨とする。
請求項4の発明によれば、摩擦ローラによって圧密化された木質材料に各種液剤を塗布することで、該液剤の種類に応じた機能を木質材料に付与することができ、各種の高機能木材を提供し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る木質材料の表面加工方法によれば、簡易な方法で木質材料の表層部を圧密化でき、加工コストを低廉にし得ると共に、高品質な高機能木材を提供し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係る木質材料の表面加工方法につき、好適な実施例を挙げて以下詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る加工方法で使用される木材加工装置10の全体を示す概略説明図であり、図2はその要部拡大図である。実施例1で加工される木質材料Wは、図3に示すように、杉や桧等の無垢材を素材とし、予め長尺な矩形板状に形成されている。また、この木質材料Wには、木目の色調が濃く硬度の高い硬質部12(秋材部)と、木目の色調が薄く硬度の低い軟質部14(春材部)とが存在する。木材加工装置10は、図示しない駆動源により回転されるプーリ16と、該プーリ16に巻装された送材ベルト18とからなる送り機構32を備え、該送材ベルト18上に木質材料Wを載置して一定の送材速度で送るようになっている。
【0014】
また、前記木材加工装置10は、図示しない駆動モータにより回転駆動される摩擦ローラ20を備えている。なお、実施例1で採用される摩擦ローラ20は、公知の回転かんな胴において、切削刃に換えて摩擦ブレード28を装着したものが使用されている。すなわち、この摩擦ローラ20は、前記摩擦ブレード28が周方向に等間隔で3つ設けられており、各摩擦ブレード28の端縁部28aが摩擦ローラ20の外周面から僅かに突出している。そして、この摩擦ブレード28の端縁部28aにより、後述する如く、木質材料Wの表面24を摩擦するようになっている。なお、摩擦ブレード28の端縁部28aには、摩擦時に木質材料Wから生ずるヤニから保護するため、シリコーンや油分等のヤニ除け剤が塗布されている。また、摩擦ブレード28の端縁部28aは、木質材料Wの表面24を切削しないよう鈍く成形されている。
【0015】
前記摩擦ローラ20は、送材ベルト18に載置された木質材料Wに接する周面が、該木質材料Wの表面24よりも約1mm〜約10mm下方に位置するよう設置される。そして、摩擦ローラ20の前記摩擦ブレード28により、木質材料Wに対し所要圧で接触しつつ摩擦するようになっている。この摩擦ローラ20は、加工時に、従来の加熱ローラのように加熱されて使用されるものでなく、常温で高速回転するようになっている。摩擦ローラ20の回転方向は、木質材料Wの送り方向と抗する方向(図1では、反時計回り)に設定されている。更に、摩擦ローラ20の周面(表面)の周速度は、木質材料Wの送材速度に比べ十分大きく設定される。ここで、周速度とは、摩擦ローラ20の周面の速度を意味しており、周速度をV[m/s]、摩擦ローラ20の半径をr[m]、回転数をN[rpm]とすると、V=2πrN/60で表される。
【0016】
前記摩擦ローラ20より送材方向の下流側には、図示しない貯留源に連通接続する散水手段22が設けられている。この散水手段22は、前記摩擦ローラ20によって摩擦された木質材料Wの表面24にシリコーン含有水Aを散布するものである。なお、シリコーン含有水Aは、シリコーンを水で約5〜10倍に希釈したものが用いられる。
【0017】
次に、木質材料Wの表面24を加工する場合について、以下詳細に説明する。先ず始めに、予め所要寸法に形成した板状の木質材料Wを送材ベルト18上に載置し、一定の送材速度で摩擦ローラ20へ向けて送る。木質材料Wが摩擦ローラ20に到来すると、該摩擦ローラ20の周面が木質材料Wの表面24に圧接する。すると、送材方向に対し逆方向に高速回転する摩擦ローラ20における摩擦ブレード28の端縁部28aによって、木質材料Wの表面24が高温・高圧状態で摩擦される。これにより、以下の現象が木質材料Wの表層部26内で発生する。すなわち、摩擦ローラ20が木質材料Wの表面24を摩擦すると、この摩擦による衝撃波が木質材料Wの表層部26内を連続的に伝播する。すると、表層部26の繊維質が均一の摩擦熱により軟化すると同時に、表層部26内に含まれる水分が蒸発気化して約1300倍の体積に膨張する。これにより、木質材料Wの表層部26に多くの空気層が形成され、該表層部26がシワ状に圧密化(綿状化)される。
【0018】
しかも、木質材料Wの表面24は、摩擦ローラ20を通過すると直ちに加熱・加圧状態から解放される。すなわち、摩擦ローラ20による木質材料Wへの摩擦は極めて短時間でかつ均一に行なわれ、該木質材料Wに対する負荷が少ないので、木質材料Wの表面24にひび割れ等が生じるのは抑制される。こうして、摩擦ローラ20によって木質材料Wの表面24が順次摩擦され、木質材料Wの表面24全体が圧密加工される。
【0019】
摩擦ローラ20による圧密化工程が終了すると(図4(a)参照)、次に、木質材料Wの表面24に凹凸を形成する工程へ移行する。すなわち、図4(b)に示すように、圧密化された木質材料Wの表面24に対し、散水手段22からシリコーン含有水Aが塗布される。前述のように、木質材料Wには硬質部12および軟質部14が存在し、前記圧密化工程において、軟質部14の表層部26には、硬質部12に比べより多くの空気層が形成される。すなわち、春材部である軟質部14は、元来、空気層が多く形成されているが、前記圧密化工程によって空気層が更に増加・増大化する。一方、秋材部である硬質部12は、元来、空気層が少なく、前記圧密化工程によっても形成される空気層は僅かとなる。
【0020】
従って、木質材料Wの表面24に塗布されたシリコーン含有水Aは、主に軟質部14によって吸収される。すると、軟質部14が膨張して、木質材料Wの表面24から上方に突出する。一方、硬質部12は、殆どシリコーン含有水Aを吸収せず、該硬質部12の膨張は僅かとなる。これにより、木質材料Wの表面24において、軟質部14が上方に盛り上がった凹凸形状が形成される。しかも、前記シリコーン含有水Aには、シリコーンが含まれているので、一旦膨張した軟質部14が復元することはなく、凹凸形状は維持される。このように、圧密加工を施した木質材料Wの表面24にシリコーン含有水Aを塗布することで、該表面24に凹凸を形成することができ、木質材料Wの表面24の質感が向上されて製品に高級感を付与し得る。
【0021】
以上に説明したように、実施例1に係る木質材料の表面加工方法は、木質材料Wの表層部26に対し、摩擦ローラ20の摩擦による衝撃を加えることで、該表層部26をシワ状化させることに特徴を有する。このシワ状化により、木質材料Wの表層部26の強度が増し、空気層が増加・大型化して断熱性およびクッション性が極めて良好となる利点がある。しかも、空気層が増加・大型化することから、薬剤注入を円滑に行ない得ると共に、従来では不能であった粒径の大きな薬剤の注入が可能となる。また、上記の如く、木質材料Wの表面24を摩擦すると云った簡易な方法で、木質材料Wの表層部26の圧密化を行ない得るので、加工コストが極めて低廉となり、廉価な高機能木材を提供し得る。
【0022】
なお、実施例1では、圧密加工した木質材料Wに対し、シリコーン含有水Aを塗布して凹凸形状を付すようにした。しかしながら、必ずしも、圧密化工程の後に、シリコーン含有水Aを塗布する必要はなく、本発明に係る方法によって圧密化された木質材料Wは、そのまま高機能木材として使用し得るものである。また、圧密加工した木質材料Wに塗布する薬剤の種類に応じ、通電木材、表層硬化木材、表層不燃木材、木材センサー、発熱木材、防腐木材等、各種の高機能木材を製造し得る。
【実施例2】
【0023】
次に、実施例2に係る木質材料の表面加工方法について説明する。なお、実施例2では、実施例1と相違する部分のみ説明することとし、実施例1と同一の部材については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0024】
図5は、実施例2に係る表面加工方法で使用される木材加工装置31の全体を示す概略説明図である。この木材加工装置31は、3基の送り機構32,32,32が木質材料Wの送材方向に沿って直列に配設されている。上流および中央の送り機構32,32の間には、前記摩擦ローラ20が配設されると共に、該摩擦ローラ20の下流であって中央および下流側の送り機構32,32の間に仕上げローラ30が設けられている。前記摩擦ローラ20は、実施例1と同様に、木質材料Wの表面24を高温・高圧状態で摩擦するものであって、該木質材料Wの送材方向に抗する方向で回転している。また、摩擦ローラ20は、木質材料Wに対して下方から圧接するようになっており、該木質材料Wの下側の表面24(送り機構32に載置される面)を摩擦するようになっている。具体的には、摩擦ローラ20は、その周面が送材ベルト18の載置面より僅かに上方(1mm〜10mm程度上方)に臨むよう配設され、木質材料Wに対し所要圧で接触するよう構成される。
【0025】
前記仕上げローラ30は、摩擦ローラ20によって圧密加工された木質材料Wの表面24に対し、更に摩擦を施すことで、該表面24を仕上げ加工するものである。この仕上げローラ30は、摩擦ローラ20と同様に、その表面の周速度が木質材料Wの送材速度より大きくなるよう設定される。また、仕上げローラ30の回転方向は、摩擦ローラ20の反対方向(図5では、時計方向)へ回転するようになっている。すなわち、仕上げローラ30は、木質材料Wを送る方向に回転するよう設定され、木質材料Wの表面24に対する加熱・加圧効果は、摩擦ローラ20よりも小さくなっている。なお、この仕上げローラ30の配設位置は、摩擦ローラ20と同様に、木質材料Wの下方に位置している。また、この仕上げローラ30は、摩擦ローラ20と同じく、切削刃の換わりに摩擦ブレード28が装着された回転かんな胴が使用される。
【0026】
仕上げローラ30の下流には、該ローラ30によって仕上げ加工された木質材料Wの表面24に対し、各種の薬剤を塗布する塗布手段34が配設されている。この塗布手段34としては、例えば、薬剤を染みこませたハケ等が採用される。塗布手段34によって塗布する薬剤としては、実施例1で述べたシリコーンや不燃剤等、木質材料Wの表層部26を改質して高機能木材とし得る各種薬剤が適宜採用される。
【0027】
実施例2の木材加工装置31は、前記摩擦ローラ20および仕上げローラ30による摩擦時に木質材料Wを上方から押圧するプレス装置36が設けられている。これにより、木質材料Wを摩擦ローラ20および仕上げローラ30に確実に圧接させて摩擦することが可能となる。
【0028】
次に、実施例2に係る方法により、木質材料Wの表面24を加工する場合について、以下詳細に説明する。先ず始めに、木質材料Wを上流の送り機構32に載置し、一定の送材速度で摩擦ローラ20へ送られる。木質材料Wが摩擦ローラ20に到達すると、プレス装置36により木質材料Wが下方へ押圧され、該木質材料Wの下面(表面24)が摩擦ローラ20によって摩擦される。すなわち、実施例1と同様に、木質材料Wの表面24が瞬時に高温・高圧状態となって、該木質材料Wの表層部26がシワ状に圧密化される。
【0029】
摩擦ローラ20による圧密加工が終了すると、木質材料Wは、中央の送り機構32へ移載され、該送り機構32により仕上げローラ30へ向けて送られる。そして、木質材料Wが仕上げローラ30に到達すると、前記プレス装置36により再び木質材料Wが下方へ押圧される。すると、前述したように摩擦ローラ20によって圧密加工された木質材料Wの表面24が、仕上げローラ30によって更に摩擦される。ここで、仕上げローラ30は、木質材料Wを送る方向に回転しているので、該仕上げローラ30による木質材料Wへの摩擦は、摩擦ローラ20に比べ負荷の小さなものとなる。従って、木質材料Wの表面24は、仕上げローラ30によって適度に仕上げ加工され、良質な表面品質を確保し得る。
【0030】
仕上げローラ30による仕上げ加工が終了すると、木質材料Wの表面24に対し塗布手段34による薬剤の塗布が実行される。これより、木質材料Wの表層部26に薬剤が染み込んで、該表層部26が薬剤の種類に応じて改質される。すなわち、木質材料Wを優れた高機能木材として提供し得る。
【0031】
このように実施例2に係る木質材料の表面加工方法によれば、摩擦ローラ20による圧密加工の後に、仕上げローラ30による仕上げ加工が行なわれるので、木質材料Wに対し良質な表面仕上げを行ない得る。また、木質材料Wに対し塗布手段34により薬剤を塗布することで、該薬剤の種類に応じた各種の機能を木質材料Wに付与し得る。しかも、木質材料Wは摩擦ローラ20によって圧密化(シワ状化)されているので、塗布された薬剤が表層部26にスムーズに浸透して優れた機能を発揮し得る。また、実施例2では、摩擦ローラ20、仕上げローラ30を木質材料Wの下方に配置したので、木質材料Wの上方に配置した場合のように、該木質材料Wの厚みに応じて両ローラ20,30の高さ位置を調整する必要がなく、加工効率の向上を図り得る。
【0032】
なお、実施例1および2では、摩擦ローラ20および仕上げローラ30として切削刃に換えて摩擦ブレード28を装着した回転かんな胴を利用した場合を説明した。しかしながら、木質材料Wの表面24を高温・高圧下で摩擦し得るものであれば、他のローラを使用することも可能である。例えば、ベルトサンダーのサンダーを外したローラを、摩擦ローラまたは仕上げローラとして使用することが考えられる。また、実施例1および2では、木質材料Wを摩擦ローラ20(仕上げローラ30)に対し一定の速度で送る構成としたが、固定した木質材料Wに対し摩擦ローラ20(仕上げローラ30)を一定速度で送るようにしてもよい。更に、実施例1および2では、木質材料Wの一方の面(表面24)のみを摩擦する場合を示したが、上下の面を同時または交互に加工するようにしてもよい。
【0033】
本発明に係る方法で圧密化された木質材料の機能・応用例として、以下が挙げられる。
木質材料としての集成材を圧密加工することで集成接着部位に弾力性が付与され、木質材料の収縮調整がなされる。これにより、集成材の剥離防止機能が付与される。
クッション性が増大することにより、コルク材の代わりとなる木質材料を提供し得る。
木質材料に塗布した塗料の剥離・劣化の抑制を図り得る。
クッション性が増すことにより、圧密加工した薄い木質材料を集成し、曲げ木として使用することができる。
木質材料の表層部の耐久性が高まることから、狂いの少ない形状安定木材を提供し得る。
一次加工した不燃材などの木質材料の表層部だけに別の物質を少量注入することで、付加価値の高い木質材料を提供し得る。
木質材料に注入加工した後、再度摩擦ローラにより摩擦することで新たな木質材料(半透明な木材)を提供し得る。
木質材料の表層に無機質の物質を注入し、酸化チタンなど光触媒の塗料を塗装し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施例1で使用される木材加工装置を示す概略全体図である。
【図2】摩擦ローラで木質材料を摩擦する様子を拡大して示す概略説明図である。
【図3】実施例1で加工される木質材料を示す平面図である。
【図4】木質材料を加工する様子を下流側から見た概略説明図であって、(a)は圧密化された木質材料を示し、(b)はシリコーン含有水を木質材料に塗布する状態を示し、(c)は木質材料の軟質部が膨張して凹凸が形成された状態を示す。
【図5】実施例2で使用される木材加工装置を示す概略全体図である。
【符号の説明】
【0035】
12 硬質部,14 軟質部,20 摩擦ローラ,24 表面,26 表層部
30 仕上げローラ,W 木質材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質材料(W)の表層部(26)を圧密化する木質材料の表面加工方法であって、
常温で回転する摩擦ローラ(20)で該摩擦ローラ(20)と相対的に直線移動する木質材料(W)を圧接し、
このときの前記摩擦ローラ(20)表面の周速度を前記木質材料(W)の送材速度より大きく設定すると共に、該摩擦ローラ(20)の回転方向を木質材料(W)の送り方向と抗する方向に設定し、
前記木質材料(W)の表面(24)を摩擦ローラ(20)により摩擦して、該表面(24)を瞬時に高温・高圧状態とし前記表層部(26)を圧密化する
ことを特徴とする木質材料の表面加工方法。
【請求項2】
前記木質材料(W)の送材速度より大きな周速度であって、該木質材料(W)を送る方向へ回転する仕上げローラ(30)を前記摩擦ローラ(20)の下流側に設け、該摩擦ローラ(20)によって摩擦された木質材料(W)の表面(24)を仕上げローラ(30)で更に摩擦するようにした請求項1記載の木質材料の表面加工方法。
【請求項3】
前記摩擦ローラ(20)によって摩擦された木質材料(W)の表面(24)に水を塗布することで、前記表層部(26)の軟質部(14)が水を吸収して硬質部(12)に対して膨張し、該表面(24)に凹凸を形成するようにした請求項1記載の木質材料の表面加工方法。
【請求項4】
前記摩擦ローラ(20)によって摩擦された木質材料(W)の表面(24)に、該木質材料(W)の表層部(26)を改質させる各種薬剤を塗布するようにした請求項1記載の木質材料の表面加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73117(P2009−73117A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245948(P2007−245948)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(390008475)飯田工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】