説明

木質材料の製造方法

【課題】林地残材、小径木を有効活用するとともに、軽量で、高強度の木質材料の製造方法を提供する。
【解決手段】上記木質構造材の製造方法を、密度0.5g/cm以下の小径木および/又は林地残材を切削して、厚さが0.1〜1.0mm、繊維方向長さが20mm以上、平均長さ/厚さが100〜500、平均長さ/幅が5〜30であって、かつ繊維方向長さが平均長さ±20%の範囲内にあるストランドは全ストランドの70%以上を占める、長さのほぼ揃ったストランドを作製し、ストランドを含水率10%以下に乾燥し、ストランドに接着剤を付着させるとともに、ストランドを長手方向に対し平均24°以下の角度で配向させて積層してマットを形成させ、次いでマットを熱圧成形するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
森林資源には限りがあり、またその保守維持も大変であることから、廃棄木材の有効活用が有望視され、木造建築物の解体時に発生する解体廃材を、チップにするなどして原材料とし、これに接着剤等の結合剤を付着させ、長手方向に揃えて配向させ、熱圧成形してなる木質材料が種々検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このような木質材料は、構造材としての強度を担保するには、かなり高密度で重質のものとせざるを得ない上に、釘、金具等の異物が混入しているため、チップ化用刃物を損傷しやすいし、均質なチップを得にくく、長さや厚さ等でも揃えるのが困難であるなど、取り扱いにくい上に、最近では石油等化石資源の高騰等により、上記解体廃材も燃料用とされる傾向にある。
【0004】
一方、国策的にも、森林の荒廃に対し、二酸化炭素排出の抑制等地球規模の環境保護の機運の高まりにも沿い、森林資源を維持するべく、これまで放置されていた林地残材や小径木等森林資源の有効活用が前面に押し出されるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−107507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、このような事情の下、上記林地残材、および/又は構造材用には適していない小径木を有効活用し、軽量でも高強度の木質材料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定密度の小径木および/又は林地残材を所定ストランドに切削し、該ストランドを乾燥し、それに接着剤を付着させ、ストランドを所定状態に配向させ、積層し、熱圧成形するのが課題解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、密度0.5g/cm以下の小径木および/又は林地残材を切削して、厚さが0.1〜1.0mm、繊維方向長さが20mm以上、平均長さ/厚さが100〜500、平均長さ/幅が5〜30であって、かつ繊維方向長さが平均長さ±20%の範囲内にあるストランドは全ストランドの70%以上を占める、長さのほぼ揃ったストランドを作製し、ストランドを含水率10%以下に乾燥し、ストランドに接着剤を付着させるとともに、ストランドを長手方向に対し平均24°以下の角度で配向させて積層してマットを形成させ、次いでマットを熱圧成形することを特徴する木質材料の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、原材料の密度が0.4g/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の木質材料の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、木質材料は、密度が0.55g/cm以下であることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、原材料は、その樹種がスギ、マツおよびヒノキの中から選ばれた少なくとも一種の針葉樹であることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、原材料は、その樹種がポプラ、アスペンおよびファルカタの中から選ばれた少なくとも一種の広葉樹であることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、木質材料は、厚さが9mm以上であることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、熱圧成形は、伝熱および/又は水蒸気加熱とプレス機での加圧により行われることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、接着剤は、熱硬化性接着剤であるイソシアネート系接着剤および/又はフェノール樹脂系接着剤であることを特徴とする木質材料の製造方法が提供される。
本発明において、小径木材とは、構造材用には適していない、直径130mm以下の丸太を意味し、また、平均長さとは、ストランドの繊維方向長さの平均値を意味する。
【発明の効果】
【0016】
本発明方法によれば、未利用の森林資源を有効活用するとともに、軽量でも高強度の木質材料を製造しうるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の原材切削のストランドの厚さ−長さ分布図。
【図2】比較例1の原材切削のストランドの厚さ−長さ分布図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明方法においては、先ず、原材料を切削して、長さのほぼ揃ったストランドを作製し、乾燥する。
原材料としては、密度0.5g/cm以下の樹種の小径木、および/又は林地残材が用いられる。
上記樹種としては、例えば、スギ、マツ、ヒノキ等の針葉樹や、ポプラ、アスペン、ファルカタ等の広葉樹などが挙げられ、これらは一種(単独)であってもよいし、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
原材料は、好ましくは密度0.4g/cm以下のもの、例えばスギ、アスペン等が挙げられ、中でもスギが大量に産出され、軽量で取り扱いやすいのでよい。
【0019】
上記原材料をストランドにするには、フレーキングミル(ドラムフレーカー)によって原材料を切削するのが好ましい。ナイフリングフレーカーでも切削しうるが、それにより得られるストランドは、長さのバラツキが大きく強度が劣り、それを改善すべく、長さを揃えようとすると歩留りが落ちるのを免れない。
切削されたストランドは、厚さが0.1〜1.0mm、好ましくは0.1〜0.8mm、繊維方向長さが20mm以上、好ましくは40〜70mm、平均長さ/厚さが通常100〜500、好ましくは100〜300、平均長さ/幅が通常5〜30、好ましくは10〜20であって、かつ、繊維方向長さが平均長さ±20%の範囲内にあるストランドは全ストランドの70%以上、好ましくは80%以上を占めるというものである。
【0020】
乾燥処理は、ストランドの含水率が通常10%以下、好ましくは5%以下になるように行われ、例えば、温調したオーブン中に一定時間放置することで、含水率を一定にすることが可能であり、105℃のオーブンに24時間放置すると、含水率はほぼ5%以下になる。
【0021】
本発明方法においては、次いで、乾燥ストランドを長手方向に向きを揃えて配向させ、積層し、マットを形成させる。構造材料とするには十分な厚さとなるように嵩高に積層するのがよい。
この配向積層に当り、適当な段階で乾燥ストランドに接着剤を付着させる。
接着剤としては、熱硬化性接着剤であるフェノール樹脂系、メラミン樹脂系、尿素樹脂系、イソシアネート系等のもの、中でもイソシアネート系やフェノール樹脂系のものが好ましい。
接着剤付着処理は、配向積層処理の前に予め行う(例えばドラムブレンダー内でストランドに接着剤を噴霧するなどして両者を混和させる)か、あるいは配向時に直接行う(例えば配向積層させているコンベア上のストランドに接着剤を噴霧する)など適宜行えばよい。
接着剤の用量は、ストランドの密度、形状等にもよるが、ストランドに対し、通常1〜20wt%、好ましくは4〜10wt%の範囲で選ばれる。
【0022】
配向については、ストランドの長手方向の水平角度ブレが平均24°以下、好ましくは平均10°以下の許容範囲内となるように行われる。配向装置としては、一定間隔に分割されたフォーミング型やディスクオリエンター等が用いられる。
積層は、コンベヤやそれに載置したコール板上に直接行うか、若しくは上記フォーミング型或いはそれとは別に一定間隔に分割された型をコンベヤに直接載置して行うことができる。積層を嵩高くすると積層状態が崩れる場合には、それを防ぐべく、崩れ防止シートやサイドガード等を配設するのが好ましい。
【0023】
上記のようにして積層されたマットは、加熱可能なプレス装置へ搬送あるいは投入して加圧加熱する熱圧成形に付すことで賦形される。加熱と加圧とは、同時に行ってもよいし、加圧をした後に加熱をしてもよい。上記プレス装置としては、熱板のようにマット表面から伝熱により内部に熱を伝えるものや、蒸気噴射や高周波加熱等のように内部を直接加熱するもの等が挙げられ、熱圧成形は、好ましくは伝熱加熱とプレス機での加圧により行われる。
プレス機の温度条件は、通常100〜250℃の範囲が好ましい。圧力条件は、1〜10MPaの範囲が好ましい。1MPa未満であると、充分に圧縮できず、10MPa以上であると、プレスのための設備が高価になる。プレス時間は、接着剤が硬化する時間であればよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0025】
実施例1
原材料に、末口130mm、長さ300mmのスギ丸太を用い、これをフレーキングミルにて切削して、図1に示される厚さ−長さ分布を有するストランドを作製した。
次いで、上記ストランドを加熱オーブン中に105℃で24時間放置して含水率5%以下に調整した後、接着剤としてPMDI(イソシアネート系接着剤)をストランドに対して7重量%、ドラムブレンダーに投入して混合した。次に、接着剤の付着されたストランドを、コール板上に配設したフォーミング型に投入し、長手方向の水平角度ブレを平均24°以下の範囲内にあって下記表示結果をもたらすように設定して配向積層し、3通りのマットを形成させた。
この際用いられるフォーミング型は多数の薄肉の仕切り板が互いに平行に前記角度ブレを達成しうるように狭い間隔(例えば24mm)で等分に設けたものである。
次に、3通りのマットをフォーミング型から脱型し、伝熱プレス機(ジンペルカンプ社製)に投入した。伝熱プレス機の熱板は直径700mmの円盤状である。加熱温度220℃、圧力3MPaで、8.5分間プレスして500mm×500mm×20mmの木質材料を得た。この木質材料をJISA5908パーティクルボードに準拠し密度および曲げ強さを測定したところ、下記の表1の通りであった。
【0026】
【表1】

【0027】
比較例1
実施例1と同様の小径木材をナイフリングフレーカーにて切削したところ、図2に示される厚さ−長さ分布を有するストランドが作製されたが、このストランドは長さが9〜73mmと広範な分布を示した。
このストランドを用い、実施例1と同様にして木質材料を得た。この木質材料をJISA5908パーティクルボードに準拠し密度および曲げ強さを測定したところ、下記の表2の通りであった。
【0028】
【表2】

【0029】
以上より、比較例の木質材料は、密度と曲げ強さの関係が、ストランドの長さのほぼ揃った、歩留りの良好である実施例1の木質材料に比べ、明らかに劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、林地残材および/又は小径木を有効活用し、軽量でも高強度の木質材料を提供しうるので、産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度0.5g/cm以下の小径木および/又は林地残材を切削して、厚さが0.1〜1.0mm、繊維方向長さが20mm以上、平均長さ/厚さが100〜500、平均長さ/幅が5〜30であって、かつ繊維方向長さが平均長さ±20%の範囲内にあるストランドは全ストランドの70%以上を占める、長さのほぼ揃ったストランドを作製し、ストランドを含水率10%以下に乾燥し、ストランドに接着剤を付着させるとともに、ストランドを長手方向に対し平均24°以下の角度で配向させて積層してマットを形成させ、次いでマットを熱圧成形することを特徴する木質材料の製造方法。
【請求項2】
原材料の密度が0.4g/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
木質材料は、密度/比重が0.55g/cm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
原材料は、その樹種がスギ、マツおよびヒノキの中から選ばれた少なくとも一種の針葉樹であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
原材料は、その樹種がポプラ、アスペンおよびファルカタの中から選ばれた少なくとも一種の広葉樹であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
木質材料は、厚さが9mm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
熱圧成形は、伝熱および/又は水蒸気加熱とプレス機での加圧により行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
接着剤は、熱硬化性接着剤であるイソシアネート系接着剤及び/又はフェノール樹脂系接着剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86472(P2013−86472A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231985(P2011−231985)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(306024148)公立大学法人秋田県立大学 (74)
【Fターム(参考)】