説明

木質系バルク燃料用燃焼炉とその燃焼制御方法、その燃焼炉を用いた温風発生装置及び木質系バルク燃料用燃焼炉の排煙利用方法

【課題】大容量のバルク状木材や木質系燃料をバッチ式で大量に炉内に設置し、これを燃料として長期に渡り必要量のみを燃焼させ、かつ、排煙のクリーン化を図る。
【解決手段】燃焼炉室1に燃料となる薪M等を縦型に設置し上部から下方に向かって燃焼させ、燃焼空気を電磁弁11によって0%〜100%の間で気密構造を持つ燃焼炉室1内へ供給し、最大燃焼モード、休眠モード、再点火モード、消火モードに適した空気量を供給する。燃焼炉室1からの排煙濃度を光センサ45で検出し、その検出信号に基づいて補助バーナ12を制御するとともに、熱交換器31で加熱した温風路30内の温度を温度センサ38で検出し、温度センサ38からの検知温度に基づいて外気取り入れ用のダンパ35,36,37の開度を自動制御し、吹き出し口40から吹き出す温風の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系バルク状可燃物(木材、炭化物、あるいは、バイオ系バルク状可燃物)を燃焼することが出来、必要に応じて燃焼量を制御出来、クリーンな排気ガスを得ることが出来る木質系バルク燃料用燃焼炉とその燃焼制御方法、その燃焼炉を用いた温風発生装置及び木質系バルク燃料用燃焼炉の排煙利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明において「木質系バルク状可燃物」とは、木材、薪、竹、チップ、ペレットなど木質系燃料、炭化物、あるいは、バイオ系のバルク状可燃物をいう。また、「バルク状可燃物」とは、酸素と積極的に接触させて燃焼させる石油やガスに対比して用いるものである。フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると「バルク(Bulk)とは、ある物体、流体のうち界面に触れていない部分を指す。物体の、界面や境膜、物質表面などと対になる部分であり、ある物質の物性といえばバルク部分が持つ性質を指す。主に界面化学、移動現象論、物性物理などで用いられる用語である。」「地球上に存在する純物質と混合物のおよそ全ては、他のいかなる物体にも触れることなく、それのみで存在することはない。たとえば海水は海底や海岸、空気とふれあい、コップの水はコップの表面や空気とふれあわずには存在できない。しかしその一方で、海水の大部分、コップの水の大部分はそうした他者と触れ合わず自分自身とのみ触れ合っている。この、自分自身とのみ触れあい、他者からの影響が無視できる領域をバルクと呼ぶ。」このような意味合いでバルク状で燃焼される木質系燃料を「木質系バルク状可燃物」という。この木質系バルク状可燃物は、人類の歴史とともに有用な熱源として利用されてきており、地球温暖化に関して、炭酸ガス対策上ゼロエミッション型燃料として注目される。木質系バルク状材料として、製材端材、木工端材、間伐材、集成端材、建築廃材、農業廃材、土木廃材等が知られているが、これらを燃料として容易に利用することができれば、省エネルギー対策及び地球温暖化対策として大変有用である。本発明は、これらの木質系バルク状燃料を容易に熱源として利用できる燃焼技術とボイラおよび温風発生装置としての利用方法を提供するものである。
【0003】
木質系燃料の使用方法として、従来からいろり、かまど、薪ストーブ、ペレットボイラ、ペレット発電機等多くの利用方法が知られている。バルクの薪を使う方法では、燃焼状態にあわせて薪燃料を絶え間なく供給することと、薪の積み上げ方や燃え方に応じて燃焼を管理するために常に人手が必要であるという不都合がある。規模の大きい薪蒸気機関や薪ストーブでは、燃料は大きくても5〜20cm程度に切断し人的または機械的手段で連続的な供給がはかられる。また、排煙には不完全燃焼による煤や一酸化炭素等が排出されるので、環境汚染対策が難しいという欠点があった。また、オイルバーナによる二次燃焼装置を用いて不完全燃焼による煙の発生を抑制する方法が知られており焼却装置としての機能をもつものが知られているが、本来暖房装置として備えるべき長時間の制御機能を持つものは知られていない。
【0004】
チップやペレット燃料の利用では、燃料の定量供給が可能になるというメリットがあるが、連続供給装置を備える炉が必要であり、いわゆる、開放系の炉を使う必要がある。このため、厳しい環境対策を施した設備と管理が必要となる。また、チップやペレット燃料では、チップ化や成型に費やす生産エネルギーとコストが化石エネルギーと比較して無視することが出来ないという問題がある。また、燃焼に伴い、発煙と環境汚染の発生を伴うので、木質系燃料の使用を安易に広げることができないという問題がある。
【0005】
この改善策として、特許文献1では、暖炉型暖房機の燃焼筺体内の薪の支持板の下にガス又はオイル燃料の第1バーナを設置し、更に後方に一対のバーナを設置するなど複雑な燃焼系が提案されている。しかしながら、一般的には、多数のバーナを用いるのは効果的な方法ではないという問題があるうえに、クリーンな排ガスが得られないという問題がある。特許文献2と特許文献3では、薪燃料を埋薪法という非常に緩慢な方法で燃焼し発煙を抑制する方法が提案されているが、燃焼初期には長時間の発煙が発生するのでこれを処理する必要がある上に適切な発熱量を得るには大量の酸化触媒と巨大な炉が必要となり、工業的に有用な熱量を取り出すのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−183920号公報
【特許文献2】特開2004−245563号公報
【特許文献3】特開2003−343840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しょうとする課題は、大容量のバルク状木材等の木質系燃料を容易に利用できる燃焼技術とボイラを開発し、それにより暖房装置としての機能を持つ装置を提供することである。大容量のバルク状木材等の木質系燃料をバッチ式で大量に閉鎖型の炉内に設置して点火し、長期にわたり燃料の必要量のみを燃焼させて燃焼状態を継続するのは容易ではない。つまり、投入した燃料の一部のみを燃焼させながら最終的には全量を燃やすことができるならば、バルク状燃料の有効利用が可能になる。また、燃焼条件として実用上不可欠な、燃焼状態を自由に変えて必要な燃焼熱を取出したり、発熱を抑制したり、更には休眠状態(実質的に燃焼の進行をストップさせる状態)にしたり、休眠状態から再稼動のために再燃焼状態に復帰する必要があるので、これ等の燃焼技術の問題が解決される必要がある。
【0008】
このように炉の燃焼状態を自由に制御しようとすると、炉全体にわたり高度な不完全燃焼状態が起こるので、排煙は濃度の高い一酸化炭素や煤塵を多く含む上に、効率よく燃焼熱を取り出し、排ガスをクリーンに保てるというバッチ式の炉やボイラ、または、有用な小型暖房装置は知られてなく、燃焼状態を容易に制御するのは困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、木質系固体燃料(バルク状燃料)に必要以上の加工やコストを加えないで、バルク状のままで燃焼させることができ、かつ、その燃焼状態を自由に変えて必要な燃焼熱を有効利用することが可能で、かつ、発熱を抑制等の燃焼制御が可能な木質系バルク燃料用燃焼炉とその燃焼制御方法及びその燃焼炉を用いた温風発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、大量の木材等の木質系バルク燃料、または、炭化物をバッチ式で炉に投入し、点火後、長期間燃焼量や休眠状態を制御できる燃焼炉であり、炉体は高い内部温度と外壁の低い温度を適切に保つことが出来る保温構造からなり、炉体の形は縦型で奥行きの長い構造とし、燃焼時の燃料の木材を縦型に設置することを特徴とし、燃焼は積み上げた燃料の頂部から底部の方向に向かって燃焼させることを特徴とする。しかし、燃料が剪定枝のように細いものは燃焼しやすいので必ずしも縦置きにする必要はない。
【0011】
さらに本発明においては、温風を発生させるために、適切な温度にした炉室の外壁やダクトの外壁を熱源とする熱交換により熱風を発生させると共に、燃焼排ガスをチューブ型熱交換器の1次側に用いて熱風を発生させる構造である。得られた熱風は外気と混合して適切な温風を得ることが出来る構造であり、全体として熱効率が高く廃熱が少ないボイラとなることを特徴とする。また、炉の燃焼量を把握する手段として、得られる熱風の温度を燃焼パラメターとして用いることを特長とし、発熱量の最大許容量は反応ダクトの許容最高温度で制御することを特徴とする。
【0012】
さらに本発明においては、燃焼用空気は供給ファンの出口に接続した電磁弁にて最少空気量0%と最大空気量100%の間で正確な風量を供給できる構造とし、炉の燃焼を停止させる休眠状態では火種を維持することが出来る微量の空気の供給が保証され、消火するには空気を完全に遮断できることを特徴とする。また、光学式の透過型排煙センサにて排ガスの状態を正確に把握できる構造を持ち、光学窓は煙による汚染を防ぐために光を通す小窓を持つ遮蔽板を有し、光学窓側から常に空気をパージして当該小窓からクリーンな空気が煙の進入を防ぐ構造を有し、排ガス状態を正確に把握し、排煙浄化に使用できることを特徴とする。
【0013】
請求項1の木質系バルク燃料用燃焼炉は、木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御を可能とすることを特徴とする。
【0014】
請求項2の木質系バルク燃料用燃焼炉は、前記燃焼炉室内の燃焼制御は、燃焼モードとして、最大燃焼モード、通常燃焼モード、発熱を要しない休眠モード、再燃用の火種を維持する火種モード及び消火モードであることを特徴とする。
【0015】
請求項3の木質系バルク燃料用燃焼炉は、前記燃焼炉室内において、前記排煙口に至る炉内煙道通路を設けるとともに、前記ダクトの底部に炉内で予熱された空気が供給される二次燃焼バーナ用ノズルが設置され、その上部に補助バーナを設け、更に上部に酸化触媒とを設けることにより、前記二次燃焼バーナ用ノズルでの二次燃焼と、前記補助バーナによる三次燃焼と、前記酸化触媒による四次燃焼を経て浄化した高温の排煙を前記チューブ型熱交換機で急冷した後、前記煙突部から排煙させることを特徴とする。
【0016】
請求項4の木質系バルク燃料用燃焼炉は、前記煙道路に排煙濃度を検出する煙センサを設け、この煙センサで検知する排煙濃度に基づいて前記バーナによる三次燃焼を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項5の木質系バルク燃料用燃焼炉は、前記煙センサを光学センサで構成し、この光学センサから照射した光ビームが走査する光路を前記煙道路に対して横断するように設けるとともに、この光学センサを収納するハウジングを設け、該ハウジングと前記光路とを仕切る遮蔽板に前記光ビームが通過する子孔を形成するとともに、該子孔から前記ハウジング内に侵入する排煙を遮断するエア供給手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項6の木質系バルク燃料用燃焼炉の燃焼制御システムは、前記請求項1〜5の何れか1項に記載の木質系バルク燃料用燃焼炉において、前記給気手段として給気ファンを用いるとともに、その給気制御手段として電磁弁を用い、この電磁弁によって前記給気ファンから供給される燃焼空気量を0〜100%の間で制御し、前記各燃焼モードでの空気量を調整することを特徴とする。
【0019】
請求項7の木質系バルク燃料用燃焼炉の燃焼制御方法は、木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御する方法であって、前記燃焼炉室の内壁面を断熱材で覆って高い保温性をもたせ、炉室下部に前記排煙口を備えた気密構造とするとともに、燃料として薪燃料を縦置きとして隙間の少ない稠密形に積み上げた状態で燃焼炉室内に配置し、その薪燃料の頂部に点火できる開閉自在な焚口を前記開閉扉に設けて、前記薪燃料上部より下部に向かって燃焼させるとともに、燃焼によって発生する火炎や煙を前記煙道路中に設けられた誘引ファンにより煙突部から排出し、前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整することを特徴とする。
【0020】
請求項8の木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置は、前記請求項1〜7の何れか1項に記載の木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置であって、前記筺体と前記燃焼炉室との間に前記煙道路に至る温風路を設け、この温風路内に位置して熱交換器を設け効率よく熱風を発生するとともに、前記筺体の一部に前記温風路と連通する開口部を設けて取り入れた低い温度の外気と当該熱風を混合して温風とし、温風送風機によって室内へと送風するように構成したことを特徴とする。
【0021】
請求項9の木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置は、前記燃焼炉室外面と熱交換器で加熱された熱風の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの検知温度に基づいて室内に送風する温風温度が設定温度となるように、前記燃焼炉室の燃焼状態を制御するとともに、前記開口部から取り入れる外気の流入量を外気調整手段によって調整することを特徴とする。
【0022】
請求項10の木質系バルク燃料用燃焼炉の排煙利用方法は、木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御を可能とする木質系バルク燃料用燃焼炉を用いて、排煙を園芸施設内に供給して園芸施設内を薫淨し、又は排煙を木造建造物の床下に供給して床下を薫淨し、園芸施設内農業での減農薬、無農薬栽培を促進し、又は木造建造物のシロアリによる食害を低減することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、木材等の木質系バルク燃料や炭化物燃料をバッチ式で、燃焼量、休眠状態、または、再燃焼状態を制御することができ、長期間燃焼することができ、安価な主燃料とわずかな補助用のオイル燃料を用いてクリーンな排ガスの燃焼炉を得ることができるとともに、温風や温水を発生するのに適したボイラや暖房装置として利用できるという利点がある。また、あらゆる木質系バルク状燃料の有効利用が出来るため、環境の浄化とグリーンエネルギーとして地球温暖化の防止に貢献することが出来る。さらに、本発明においては、木材等の木質系バルク燃料や炭化物燃料を閉鎖式の燃焼炉にバッチ式に供給して燃焼を制御することにより燃焼状態、休眠状態、または、再燃焼状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す燃焼炉の側面図である。
【図2】同上、燃焼炉の正面面図である。
【図3】同上、燃焼炉の燃焼制御方法とその実施方法を示した説明図である。
【図4】同上、燃焼炉の温風発生方法とその実施方法を示した説明図である。
【図5】同上、図1のA−A線断面図である。
【図6】同上、図1のB−B線断面図である。
【図7】同上、反応ダクトの接続構造を示す説明図である。
【図8】同上、光学センサの取り付け構造を示す説明図であり、図8(A)は平面図、図8(B)側面図、図8(C)は平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
木材及び木質系バルク燃料や炭化物を燃料とする燃焼炉を暖房装置として利用するには、いくつかの基本技術が確立されなければならない。第1に、燃料の燃焼量と発熱量を自由に制御することが必要であるが、バッチ式の多量の燃料に点火したとき、全体を一度に燃焼させるのは容易であるが、火力を必要量に抑えるため燃料の一部のみを燃やし続けるのは困難であり、高度の不完全燃焼を伴うのが普通である。また、最終的には燃料の全量を残さずに燃やす必要があるが、容易なことではない。また、火力を必要としない時は火種を残して休眠状態におく必要があり、反対に火力を必要とする時は、火種が元になって再燃焼ができる必要がある。第2に、燃焼で発生する煙による大気汚染を防ぎ、クリーンな排気ガスとして放出される必要がある。
【0026】
本発明は、薪等バルク状の木材、竹、炭化物、又は、バイオ系可燃物を燃料とするバッチ型燃焼炉において、炉体の内壁を断熱材で覆い炉内温度と燃料の温度を容易に高くすることが出来、且つ、炉体の外壁温度を100℃程度に低く出来る炉体であって、燃焼量の制御を容易に行うことができ、発熱を要しないときには休眠状態に置く事が出来、かつ、再燃用の火種を容易に維持することが出来ることを特徴とする、木質系バルク燃料ボイラの構造とその方法に関する。このような燃焼条件が必要とされる木質系バルク燃料用のバッチ式ボイラを鋭意研究し、必須となる燃焼技術と温風発生技術を発明するにいたったので、以下にその内容を詳しく説明する。
【0027】
炉に投入する燃料の薪はよく乾燥したものが望ましい。水分が多いと完全燃焼しにくい上に水分の多い大量の木酢を発生することになり燃焼制御上好ましくない。薪は、冬期、樹木の活動が低いときに伐採し、サイズによって1〜2年程自然乾燥したものが望ましい。木質のバルク状薪燃料は大きく重たいうえに大量に使用するので、乾燥して軽量になった薪を楽な姿勢で炉室に運び込める必要がある。そのため、炉室には大きな開閉扉を設け搬入者の出入りが楽な構造にすることが望ましい。また、燃料をパレット単位で機械的に炉内へ搬入してもよい。
【0028】
炉体内で薪等の燃料を燃焼させるに当たり、燃料の一部を燃焼させるだけでは炉内や燃焼炉自体の温度上昇には限界がある。燃焼炉の一部分の燃料が燃焼しているとき炉体から出てダクトに排出される煙の平均温度は150℃〜300℃となることが多く、炉内全体の温度は決して高くならない。
【0029】
燃焼炉の燃料に点火と消火を容易に繰り返すには、炉内の平均温度が高く150℃以上にあることが望ましい。更に望ましくは、200℃〜300℃と高めの温度になることが望ましい。この目的のためには、燃焼炉の内部全体に断熱材を施し、炉内の平均温度を上げることが肝要であることがわかった。また、燃焼炉の外壁は約100℃として、60℃以上の熱風が容易にえられる構造とすることが望ましい。
【0030】
また、本発明の炉室は縦型で奥行きの長い構造を持つことを特徴とし、炉底に接続されたダクトへの排煙の出口を除いて、気密構造であることを特徴とする。また、炉室に置く薪燃料は縦置きを特徴とし、隙間の少ない稠密形に積み上げて、上部より下部に向かって徐々に燃焼させることを特徴とする燃焼制御方法である。
【0031】
このように、炉室は縦型で奥行きの長い構造を持つことを特徴としている。これは、焚き付け後、火や煙の流れが燃料の継続的な燃焼を容易にするために必要な構造である。炉内に薪燃料を積み上げる薪の並べ方は、縦型で最密充填構造をとることが望ましい。そうすることにより限られた空間により多くの燃料を投入することができる。薪を燃焼するには、縦置きと横置きでは燃焼の容易さに大きな差がある。木材の気孔は長さ方向に成長していて長さ方向に燃焼しやすく、直角方向には燃えにくい構造を持っており、木材の端面に着火すると長さ方向に燃焼状態が広がりやすい特徴があることを積極的に利用するのがよい。このように、燃料の上部より下部に向かって徐々に燃焼させることを特徴とする燃焼制御方法を用いるのが良く、燃焼状態を容易に維持することができ、薪の火が途中で消えるのを防ぐことが出来る。これに対して、炉底に火格子を設置したり、側面に空気供給口を設けるなどして、燃料の下部から燃焼させる従来の方法は適切な方法ではない。また、最密充填構造をとることで一本の薪の燃焼熱が隣接する薪に伝わり、隣接する薪の燃焼を容易にする効果がある。このようにすることにより、バッチ式に積み上げられた燃料により炉内全体が木質系バルク状燃料により充満された状態を作ることができる。しかし、燃料の置き方はここで述べた方法に限定されるものではなく、剪定枝など燃焼しやすいものは置く方向を自由にできる、また、ペレットやチップなどは袋に入れて積み上げたり、薪と共に投入したりしてもよい。
【0032】
焚き付けは燃えやすい消し炭、小枝、適度のサイズの薪等を使うのがよい。また、焚き付けを置く位置は、積み上げた燃料上部中央手前に置いて着火するのがよく、排煙は炉の後方壁面に沿って設けた垂直方向の煙道を経て炉室下部にあるダクト入り口へ流出させるのがよい。このように、当該燃焼制御方法に最も適した炉の構造は、縦型で奥方向に長めであり、横巾を広く取らないものが望ましい。しかし、燃焼炉の形状は、厳密な縦型でなくとも、類似した形状ならば利用することが出来る。焚き付けに有用な消し炭は、燃料の大部分が燃焼し火力が落ちた状態で炉の運転を止め、消火状態にすることで必要量が得られることになる。
【0033】
本発明の炉室は、手前から燃料の頂部に点火できる焚口をもち、発生する火炎や煙は、煙道に設けられた誘引ファンにより、炉室奥壁に設けた垂直方向の煙道から炉底に接続されたダクトを通して煙突部へ排出され、煙や火炎が少ない抵抗でダクト部へ流出できる機能を有する構造を特徴としている。
【0034】
燃料に点火するには、色んな方法があるが、炉室の手前から燃料の頂部に点火できる焚口としての小扉をもつのがよく、燃料の頂部に点火し、焚付け時の煙は煙道部に設けた誘引ファンにてダクトを経由して排出し、煙が焚口から室内に流れ出るのを防ぐ構造がよい。また、小扉からハウス内へ煙が逆流するのを防ぐために、焚口の位置は炉室天井から出来るだけ下方にき、点火する焚き付け燃料の位置よりも十分に低くすることが望ましい。点火方法には各種の手段があるが、消炭を用いると少量の紙とマッチで容易に点火できる。一般の焚き付けに点火する方法としては、トーチバーナが好んで用いられる。
【0035】
炉内に積み上げた燃料の燃やし方として、炉の奥底部に向かって垂直の炉内排煙通路5を設け、手前上部に着火するのがよい。燃料の手前上部に着火すると、排煙は積み上げた燃料上部を通過しながら炉奥面の炉内排煙通路5へ達するが、この間に燃料上部を乾燥加熱することができ、燃料の上部全体が着火し易くなる。炉室2奥壁にある上下方向の炉内排煙通路5が、火炎が炉内で広範囲に広がるのを防ぎ、煙や火炎が炉底後部にあるダクト入り口へ容易に排出されることを特徴とする構造がよい。他方、炉内から直接煙突へ抜ける煙道を設け、焚き付け時に煙道に設けたシャッタをあけて煙を直接煙突に排出する構造をとることもできる。しかし、この場合は煙をクリーンにする二次〜四次燃焼の機構を利用できないので環境維持のためには利用しない方がよい。
【0036】
薪燃料への点火手順は次のようにするのが良い。点火時は多くの空気が必要なので、制御盤は手動運転とし、給気ファン10を始動し給気用電磁バルブ11の開度を最大にし、かつ、小扉25を開けて空気を自由に取り入れる。また、三次燃焼用のバーナ12に点火し、約10分間程度煙道の予備加熱をした後、誘引ファン29を始動する。次に焚き付けに点火後、15〜30分の間しっかりと燃やすことにより火が薪燃料に着火するのを確かめてから小扉25を閉める。このようにすることで、小扉25から炉外へ煙の漏出をなくすことが出来る。また、ハウス内へ必要以上の煙の漏出は、作物の汚染や蜂の健康被害の原因になることがある。
【0037】
燃料への着火後、自動運転に切り替えることができる。燃焼状態は、煙の多い「初期燃焼」から煙が殆ど出なくなる「おき火燃焼」状態を経ることになるが、残った燃料が約10%以下になり十分な火力が得られない場合、消火して、開閉扉を開き灰を掻き出して、再度燃料を投入し、次のバッチ運転に移ることになる。小扉25は、炉の運転中、燃焼状態を点検したり、追加の燃料を投入することができる構造になっている。暖房が必要な時間帯に燃料が全焼し暖房が出来なくなると困るので、必要な時間帯まで燃焼を継続させるために燃料を追加することがある。小扉25から、追加の薪や炭化物を投入することにより、燃焼終了時を先送りすることが出来る。
【0038】
本発明の燃焼制御システムにおいては、燃焼空気量は、燃焼用給気ファン10に直結した電磁弁11の開口度により燃焼空気量を0〜100%の間で制御し、気密構造を持つ炉内2へ供給できることを特徴とし、最大燃焼時、休眠時、再点火時、消火時等に適した空気量を供給する燃焼制御システムである。
【0039】
燃料の燃焼状態として、最大燃焼、通常燃焼、休眠燃焼、再燃焼、および、消火等、必要に応じてこれらの燃焼状態を実現するには、供給する空気量を厳密に制御する必要があり、それには炉体が気密な構造でなければならない。特に、三次燃焼部の補助バーナ部12の空気取り入れファンによるダクト接続部を経た空気の逆流があるのも良くない。上記燃焼制御システムによると、燃焼空気量は、給気ファン10と接続した電磁弁11の開口度を0〜100%の間で調整して制御される構造であり、気密構造を持つ炉内へ供給できることを特徴としている。
【0040】
排煙濃度が高くなると煙道に設けたセンサの信号でバーナ12を点火させ排煙をクリーン化することが出来る構造であるが、初期燃焼時に排煙濃度が異常に高くなると排煙のクリーン化が困難になることがある。これは、燃焼空気が過剰に供給され燃料が過剰に燃焼することにより起こる現象であり、給気量を低くして排煙量を低減することによりクリーンな排煙を維持できる。このように、バーナ12点火後も、排煙がクリーンにならない状態を検出すると、給気量を抑制して正常な燃焼状態を取り戻すことが出来る。
【0041】
炉室2の大きな開閉扉21は、炉体1や開閉扉21の熱歪やパッキンの弾力の低下などが原因でリークが起こり易い。アスベストパッキンを使えない現在ではこの傾向が強い。本装置では、開閉扉21の両サイドの締め付け圧を調節可能な構造にし、パッキンの締め代を広範囲に調節できるようにすることで、この問題を解決した。
【0042】
本発明の排煙の燃焼処理をおこなうダクトは、ダクト底部の二次燃焼、補助バーナ12による三次燃焼、および、酸化触媒13による四次燃焼を備える高温反応ダクト6であり、熱膨張の大きい耐熱鋼材(SUS)からなるので、熱膨張の低い鋼材(SS)からなる炉体と直接接続することができないので、接続部は柔軟な構造を取り入れて熱伸縮の差を容易に吸収できるようにしたことを特徴とするダクト構造を有している。
【0043】
これによれば、炉につながる反応ダクト6は二次燃焼、三次燃焼、及び、四次燃焼を経て800℃以上の高温になる部分であり、ダクト内面、バーナボックス、及び、触媒室は、耐熱鋼板(SUS)で構成される。耐熱鋼板は大きな熱膨張をもち、低い温度の炉体と小さい熱膨張を持つ炉体との間に、熱緩衝構造が必要であり、構造的に直接接続することはできない。ダクトの耐熱鋼板と炉体との接続部7は、図7に示したベローズによる柔軟な構造をしており、耐熱鋼板と鋼材とは互いに熱による大きな伸縮差を自由に吸収できることを特徴とする構造になっている。
【0044】
本発明において、炉の頭頂部より取り入れた外気は、炉室の外壁と排煙を1次側とする熱交換器31を経て加熱され熱風となり、当該熱風温度にて炉の燃焼状態や発熱状態を判断することを特徴とする炉の燃焼制御方法を特徴とし、当該熱風は必要量の外気と混合され目的の温風温度を得る。また、炉の最大燃焼量と発熱容量はダクトの許容最高温度で抑制することを特徴とする。
【0045】
温風を発生するために、外気を加熱して適切な温度の熱風を発生する必要がある。本発明によれば、外気を炉体の頂部より導入し、炉室外壁と反応ダクト外壁、および、燃焼空気を熱源とするエロフィンチューブ熱交換器31にて加熱することにより、効率よく熱風を作り出すことができる。この時、エロフィンチューブ熱交換器31内では高い温度の燃焼空気が急冷却され、反応ダクト内で熱分解されたダイオキシン類の再結合を抑制できる構造になっている。炉室の外壁温度は炉の内壁に施された断熱材により適切な温度が保たれており、また、ダクトの表面には断熱材が施工され、炉体表面やダクト表面の温度が適切な値に保たれる構造になっている。得られる熱風の温度は、用途により異なるが、園芸用ハウスの暖房用には、熱風の温度は約100℃以下とするのが望ましい。
【0046】
炉の燃焼量を容易に判断することのできるパラメターを見つけるのは容易ではない。1〜2トンの大量の薪燃料の一部を燃焼させるとき、燃焼部は燃料の上部を中心にした炉内のごく一部であり場所が不特定である。従って排煙の熱量は炉内を通過してくる経路により、未燃焼部の乾燥や加熱に利用され排煙の温度は異なっている。いろいろの研究の結果、炉体を熱源として熱交換後にえられる熱風の温度が最も良く燃焼量を反映していることが判明した。得られた熱風は、外気取り入れ用のダンパ35,36,37を設け、低い温度の外気と混合させて温風ファンから排出する温風の温度を20℃〜60℃にして供給することが出来る。温風温度は外気取り入れ用のダンパ36の開度を自動制御することで容易に達成された。
【0047】
温風発生装置では、炉頂から吸入される外気は、炉の天井と炉頂外壁の間に設けたダンパにより二分され、一部は炉室の外周部とエロフィンチューブ型熱交換器31を経て加温されて熱風になり、他の一部は反応ダクトの外周部と熱交換して加温され熱風になる。当該熱風は、炉体の下部で外気給気用ダンパから取りいれた低い温度の外気と混合されて適切な温度の温風となり、温風ファンにより送り出される。温風の温度は外気取り入れダンパの開度によって容易に制御することができる。
【0048】
本発明においては、煙道を横断する光ビームの透過率を検出して排煙濃度を評価し、バーナ12による三次燃焼部の駆動を制御することを特徴とし、当該煙道に接続する光学窓には光ビームを通す小さな孔を設け、光学素子側から当該孔を通して清浄な外気を吹き出し、煙の拡散による光路の汚染を防ぐことができる構造とされる。
【0049】
これによると、煙道部を通過する光ビームの透過率を検出し、煙濃度から燃焼状態を判定することができる。光センサ部は、発光ダイオード又はレーザ発光器と受光器、および、パージ用エアー送風機で構成する。光部品を内蔵する部屋の煙道側に光ビームを通す小孔を設けた窓付き遮蔽板62を設け、浄化したエアーが光学部品室側から遮蔽板の小さな窓孔を通過して煙道内に流れるようになっている。小さな窓孔を用いて煙道からの煙の逆拡散を防ぎ且つ光学窓の汚染が生じなく、簡単な構造で煙の光学的検出に必要な信号の安定性を実現した。
【0050】
炉の不完全燃焼により煙が発生すると、煙センサの信号により三次燃焼用の補助オイルバーナ12が点火し、煙は高温で燃焼し、排煙の浄化が促進される。補助バーナ12の点火時のオイルの消費量は1.5リットル/時である。当該、光センサは、煤塵等の検出以外にも排煙ガスの種類に応じたセンサを用いることにより、多用途の利用が出来る。
【0051】
点火後12時間〜24時間は煙の発生が多く、これを初期燃焼と呼ぶ。この間、燃料からの煙は可燃性の軽量なガスを多く含んでおり、二次燃焼部が活発になる。二次燃焼によりダクト全体の温度が高くなり、煙の浄化が促進される特徴がある。点火後12時間から24時間後には煙の発生の少ないおきび燃焼に移行する。初期燃焼時にバーナが作動するのは間歇的であり、平均の点火時間は、炉の燃焼時間の約50%であった。おき火燃焼時では、火力を増加するために炉への給気量を急に大きくしたとき発煙があるので、このとき補助バーナが一時的に点火するが、通常は不要であった。結果として、バーナの点火時間は炉の全動作時間の約30%以下であった。
【0052】
熱エネルギーの代替効果について、薪燃料1トンは、約400万kcal/batchの熱量をもつので、これはオイル燃料に換算すると440リットルの熱量に相当する。1日に100万kcal消費すると4日間燃焼することができるが、この間に必要な補助燃料用のオイルは10%以下である。つまり、本願発明に基づく温風発生機により、石油熱エネルギーの90%以上を木質バルク燃料で代替することができる。
【0053】
木質バイオマス燃料として使用する建築端材、製材所端材、間伐材、農業廃材、建築廃材、炭、炭化物等のコストはその供給状態により大きな巾が見込まれるが、平均¥5/kgである。オイル燃料として軽油、A重油、廃油、バイオ系オイル等コストの巾は広いが、今後¥50〜100/kg/リットルと見込まれるので、その経済効果は画期的であることが理解される。
【0054】
二酸化炭素ガスの排出について、当該木質バイオマスボイラは、循環型の炭酸ガスゼロエミッションシステムであり、化石燃料とその装置を代替すると、化石燃料の排出する温暖化ガスの90%以上を削減することが出来る。この、温暖化ガスの排出権は、更に燃料経費の削減に利用することが出来るので、本発明になる木質系バルク燃料ボイラの燃費は、今後、大部分が相殺されると予想される。
【0055】
本発明は、また、ダクト内の排煙の一部を、農業施設内や乾燥室に拡散・薫浄することにより、害虫の忌避効果や抗カビ効果を利用して、減農薬や無農薬栽培の効果をあげることを特徴とし、また、木造の建造物では、床下に拡散・薫浄し、シロアリなどの害虫の防除に利用することを特徴とする。
【0056】
煙による害虫駆除効果について、本願発明の温風発生装置の燃焼炉から排煙の一部を温風に混合しハウス内に拡散・排出したところ、ハウス内にいたバッタ類、カメムシ類、クモ類、および、アリ類の姿が1日以内に見えなくなることが判明した。スギ、ヒノキ、ホワイトオーク、レッドオーク等の薪燃料を燃焼させ、初期燃焼時に出る煙の薫蒸による害虫忌避効果がつよいので、害虫の駆除に利用できることが見出された。これらの害虫の忌避効果は煙の濃度として目や臭覚にようやく刺激を感ずる程度、または、それ以下の濃度の煙で良く、ハウス栽培の植物育成に利用できる。この薫淨効果の利用は多くの可能性を示しており、薫煙と同様に害虫を駆除することにより抗カビや抗菌効果が得られることになる。
【0057】
本願発明においては、栽培する植物にたいする減農薬効果や、育成する植物の種類と煙の濃度を適切に調整することにより無農薬栽培を行える可能性が得られた。ダクト内の排煙の一部を、農業施設内や乾燥室に拡散・薫浄することにより、害虫の忌避効果や抗カビ効果を利用して、減農薬や無農薬栽培の効果をあげることを特徴とし、また、木造の建造物では、床下に拡散・薫浄し、害虫の防除に利用できる。この結果、農薬や殺虫剤を使用する作業者への薬害を軽減できることが期待されている。
【0058】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例を図1から図8を参照して説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反さない範囲で、実施例において説明した以外のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。なお、実施例の説明において前後、上下、前面・背面等の位置関係を示す用語は図1又は図3に示された前後・上下関係において用いている。
【実施例1】
【0059】
本実施例の燃焼炉を用いた温風発生装置は、燃料となる木材等の木質系バルク燃料、または、炭化物をバッチ式で供給して燃焼する燃焼炉室1と、燃焼炉室1の背面下部に形成する排煙口3から煙突部14に至る煙道路15と、前記燃焼炉室1を覆う箱型の筺体20と、この筺体20と前記煙道路15を含む燃焼炉室1との間に形成される温風路30と、この温風路30内の温風を室外に吹き出す温風ファン39(温風送風機)などで構成される。
【0060】
前記燃焼炉室1は、全体的には閉鎖型で前面を開口した箱型であり、燃焼炉室1の内壁面全体を断熱材4で覆うとともに、前記筺体20の前面に設けた前記燃焼炉室1の開閉扉21の内面を断熱材22で覆っている。また、開閉扉21は内面にパッキン(図示しない)が装着され、そのパッキンを筺体20の前面に密着させて前記燃焼炉室1を密閉する構造となっている。ところで、燃焼炉室1の開閉扉21の熱歪やパッキンの弾力の低下などが原因でリークが起こり易い。特に、アスベストパッキンを使えない近年ではこの傾向が強い。このため、本実施例では、図2などに示すように、開閉扉21の両サイドに開閉扉21の締め付け圧を調節する複数のハンドル23が備えられており、そのハンドル23によって開閉扉21を締め付けてパッキンの締め代を広範囲に渡って調節できるようになっている。また、開閉扉21の上部に焚口24が形成され、この焚口24を開閉する小扉25も前記開閉扉21と同様、ハンドル23Aによって小扉25に設けたパッキン(図示しない)の締め代を調節できるようになっている。
【0061】
前記燃焼炉室1の炉内2には前記排煙口3と連通するように仕切られた炉内排煙通路5が形成されるとともに、前記排煙口3の外側には前記炉内排煙通路5と連通する耐熱鋼板(SUS)から成る筒形の反応ダクト6が接続されている。この反応ダクト6は、耐熱鋼板の周囲を熱負荷の低い断熱材で囲われている。また、反応ダクト6は排煙口3から垂直に立ち上がり、その反応ダクト6と煙突部14とを水平方向に延びる排煙ダクト6Aで連結し、これら反応ダクト6、排煙ダクト6A及び煙突部14によって前記煙道路15を構成している。また、耐熱鋼板からなる反応ダクト6と一般的な鋼板から成る燃焼炉室1とは、熱膨張を異なるため、図7に示すように、反応ダクト6の燃焼炉室1との接続部7は互いに柔軟な構造で接続され、熱による大きな伸縮を自由に吸収できるようになっている。また、前記炉内排煙通路5の上部に位置して燃焼炉室1内に燃焼用空気を取り入れる給気用ダクト9を設け、この給気用ダクト9に、炉室の下部に向けて空気を噴き出すノズルの穴を設け給気手段である給気ファン10を接続する。また、前記空気供給用ダクト9には給気制御手段として電磁弁11が設けられ、この電磁弁11によって、空気供給用ダクト9の開口度を調整して燃焼炉室1内に供給する燃焼用空気量を調整して燃焼炉室1内の燃焼制御を行う。
【0062】
前記反応ダクト6のほぼ中間部には、前記燃焼炉室1からの排気ガスを燃焼させる補助バーナ12を設けるとともに、その上部に酸化触媒13を配置し、前記炉内排煙通路5での二次燃焼、前記補助バーナ12による三次燃焼および、酸化触媒13による四次燃焼を経て浄化させた排煙は、煙突部14に設けた誘引ファン29によって前記排煙ダクト6Aを経由して排煙部14から外部に排気される。
【0063】
次に主に図4を参照して本実施例における温風発生装置について説明する。前記筺体20と燃焼炉室1との間には温風路30が形成され、この温風路30内に位置して前記排煙ダクト6Aの外側にエロフィンチューブからなる熱交換器31が配置され、温風路30に取り入れた外気を前記熱交換器31及び燃焼炉室1の外壁で加熱し、温風ファン39によって吹き出し口40から温風として室内へと送風するように構成している。また、前記筺体20の天板と背面板及び前面板には、前記温風路30内に外気aを取り入れるために、該温風路30と連通する開口部として外気導入口32,33,34がそれぞれ形成されており、筺体20の背面板及び前面板に形成する外気導入口33,34には外気の流入量を調整する外気調整手段としてダンパ35,36が設けられており、さらに、燃焼炉室1の天井と筺体20との間の温風路30は筺体20内に設けたダンパ37により二分され、一部は燃焼炉室1の外周部と熱交換器31によって加熱されて熱風hになり、他の一部は反応ダクト6の外周部と熱交換して加温され熱風h1となる。また、前記熱交換器31が配置された燃焼炉室1の外周部に形成された温風路30には熱風hの温度を検出する温度センサ38が設けられ、この温度センサ38の検知温度によって前記筺体20の前面下部に形成する前記外気導入口33を開閉するダンパ35の開閉度を制御し、筺体20の前面下部に形成する外気導入口34から取りいれた低い温度の外気と熱風h,h1とを混合させて適切な温度h2、例えば、用途により異なるが、園芸用ハウスの暖房用としては、最高温度は約50℃前後となるよう制御して、温風ファン39によって吹き出し口40から吹き出す。
【0064】
また、図8に示すように、前記煙突部14の基部には煙センサとして光学センサ45が設けられており、この光学センサ45の検知信号により三次燃焼用の補助バーナ12を制御する。光学センサ45の光路となる筒状の管路15Aが煙突部14を横断するように固定され、その管路15Aの両端に光学センサ45のセンサハウジング46を取り付けている。このセンサハウジング46の光学窓側は煙による汚染を防ぐために光を通す小窓(図示しない)を有する遮蔽板47を備えるとともに、センサハウジング46には常に新鮮なエアをパージするエア供給手段たるパージ用エア導入口48が設けられており、このエア導入口48から導入したエアを遮蔽板47の小窓から管路15A側に送風することによって、センサハウジング46内への煙の進入を防ぐ構造を有している。なお、図3において符号26は二次燃焼ノズル、27は排煙拡散用バルブであり、燃焼炉室1内の煙を温風に添加し混合することが出来る。
【0065】
以上のように構成される本実施例において、前記燃焼炉室1を軽量鉄骨ガラス製ハウス(200m)内に設置し、植栽試験を前提とする性能評価を行った。燃焼炉室1の大きさは1.5mあり、乾燥した集成端材を1バッチ約700kg投入した。燃料は上下方向に稠密型に立てて並べ、上部中央部に燃え易い消炭と新聞紙の焚き付けを置き、燃焼炉室1の開閉扉21を閉じた。制御盤をマニュアルモードにし、補助バーナ12を点火して約10分後、熱交換器31と煙突部14が加温された後、給気ファン10と誘引ファン29をフル稼働して空気を燃焼炉室1内に入れ、小扉25からガストーチにて焚き付けに点火した。約、20分燃焼することにより集成材の火力が強くなったのをみて、小扉25を閉じて制御盤を自動運転に切り替えた。煙突からの煙は、点火直後の一時期は目視できるほどの白煙であったが、小扉25を閉じて約5分後に煙は透明になり目視できなくなった。
【0066】
反応ダクト6内の温度は補助バーナ12の点火直後から上昇し始め、20分経過すると反応ダクト6は700℃〜800℃に達し、煙は透明でクリーンな排ガスが得られた。特に、初期燃焼では反応ダクト6の最下部と連通する炉内排煙通路5での二次燃焼部で燃焼容易性ガス類が燃焼し、反応ダクト6上部全体の加熱に大きく寄与するとともに、この状態で補助バーナ12を休止した。初期燃焼時には給気ファン10により最大3.0m/minの空気を送り燃焼させることで60〜80℃の熱風を得ることが出来た。反応ダクト6の温度が高いとき煙は浄化されており、二次燃焼がなく、反応ダクト6の温度が下がると煙の浄化が不十分となり補助バーナ12が自動で点火するが、補助バーナ12の点火サイクルは略64分であり、約50%の時間は休止状態であった。
【0067】
燃料点火後、1時間で炉温は高くなり、60℃の熱風と50℃の温風が連続的に得られた。このとき、燃焼炉室1の外壁温度は約100℃であり、適切な温度の熱風が得られた。煙の多い「初期燃焼モード」は、約12時間後、煙の発生しない「おき火燃焼モード」に移行した。ハウス内に燃焼炉室1を用いた温風発生装置を設置し、代表的な燃焼試験として、50℃の温風を毎時4,000mをポリダクトに送風し、ハウス温度の制御を行った結果、略満足すべき加熱性能の結果が得られた。
【0068】
また、燃焼炉室1から発生する煙の一部をハウス内に拡散させると、ハウス内に見られた昆虫類の、バッタ、アリ、カメムシ、クモ等がハウスから姿を消すことを見出した。観察を進めた結果、本装置で発生する煙成分に対して、これらの昆虫が明瞭な忌避効果を表すことが判明した。つまり、ヒノキやスギの煙による薫浄効果が見られる上に、アブラムシやカビの発生も抑制されることがわかった。この効果は、1月以上ハウスを開放して放置すると、昆虫類の忌避効果は低下し、再び昆虫類がハウス内に出現した。
【0069】
このように、本発明装置から得られる煙の一部を農業施設内や乾燥室に拡散・薫浄することにより、害虫の忌避効果を利用して減農薬や無農薬栽培の効果をあげることや、乾燥室に拡散・薫浄し、防カビ対策に利用できると結論された。また、木造の建造物にあっては、温風による暖房と共に煙の一部を床下に拡散・薫浄することにより、アリ等の害虫による被害を軽減する効果がある。当該薫淨効果を利用することにより、園芸施設内で作業者が受ける薬害被害を軽減できるとして期待されている。
【0070】
また、燃焼炉室1の内壁は保温性の断熱材で被覆しない鋼鉄のままの構造で、他の部分は上に述べた構造と同じにした装置を作成して運転試験した結果、燃焼炉室1の外壁温度が高く、得られる熱風温度が高くなり、60℃近辺の適切な温度の熱風を得ることが困難であった。また、燃料の燃焼促進や、休眠、および、再燃焼サイクルにおける立ち上がり時間が長くなること、休眠時の火種の維持が不安定であり、燃焼状態を制御しにくいことがわかった。このため、本実施例では燃焼炉室1の内壁面全体及びその開閉扉21の内面、反応ダクト6と排煙ダクト6Aを断熱材4,22,28で覆う構造とし、燃焼炉室1内の平均温度を上げる構造とするとともに、燃焼炉室1の外壁は約100℃として、60℃以上の熱風が容易に耐えられる構造とした。また、炉室内の断熱材のうち、天井部分のみを取り除くと、炉室内の煙の温度が低下し、初期燃焼時の燃料の燃焼と炉室の温度の上昇に長い時間が必要になり、結果として燃焼量の制御に2倍以上の時間が必要になった。一方、耐熱鋼板からなる反応ダクト6と一般的な鋼板から成る燃焼炉室1とは、熱膨張を異なるため、高温における局所熱ひずみによる破壊力が発生するが、本実施例において、反応ダクト6の燃焼炉室1と及び反応ダクト6と排煙ダクト6Aとの接続部7は伸縮性のあるベローズの柔軟な構造とすることにより、熱による大きな伸縮を自由に吸収でき、接続部7の破損を防止することができ、小形で安定な高温反応ダクト6となる。
【0071】
また、燃料として薪Mを用いる場合、薪Mを水平方向に積み上げると、積み重ねた部分では空隙が出来にくいが、横方向には空隙が出やすい欠点がある。また、燃焼させると、着火し難く、炉全体の燃料が下方に向かって平均に燃焼しにくい上に、炉底に近づくにつれて炉のコーナ部では燃え残りの燃料が出やすいことが判った。この結果、薪Mを燃料とする場合、薪Mを縦型で最密充填構造をとることが望ましい。そうすることにより限られた空間により多くの燃料を投入することができるとともに、木材(薪M)の気孔は長さ方向に成長していて長さ方向に燃焼しやすく、直角方向には燃えにくい構造を持っており、木材の端面に着火すると長さ方向に燃焼状態が広がりやすい特徴があり、薪Mを縦型で気密に並べて充填することで、燃料となる薪Mの上部より下部に向かって徐々に燃焼させ、その燃焼状態を容易に維持することができるとともに、薪Mの火が途中で消えるのを防ぐことが出来る。また、最密充填構造をとることで一本の薪Mの燃焼熱が隣接する薪Mに伝わり、隣接する薪Mの燃焼を容易にする効果がある。
【0072】
また、空気供給用ダクト9を開閉する電磁弁11を閉じて、二次燃焼部(炉内排煙通路5)への予熱空気の供給を停止して二次燃焼を止めると、三次燃焼部の補助バーナ12の燃焼が不安定になった。これは、発生量が比較的多い可燃性ガスを、補助バーナ12だけで燃焼するには必要な空気量が不足するからであり、二次燃焼部の安定した燃焼機能が必要である。このため、本実施例では、排煙濃度を光センサ45で検知し、この光センサ45の検知信号に基づいて三次燃焼用の補助バーナ12を制御するとともに、燃焼空気量は、空気供給用ダクト9を開閉する電磁弁11によって燃焼空気量を制御し、気密構造を持つ燃焼炉室1内と二次燃焼バーナ部へ供給される。また、電磁弁11によって燃焼空気量を0〜100%の間で制御し、気密構造を持つ燃焼炉室1内へ供給することによって、最大燃焼モード、休眠モード、再点火モード、消火モードに適した空気量を供給することが可能である。
【0073】
また、初期燃焼とおき火燃焼を通して煤塵濃度の測定を行った結果、本装置では媒塵量が0.1μg/m3より遥かに少なくなることがわかった、しかし、二次燃焼、三次燃焼、または、四次燃焼のいずれの機能を取り除いても、煤塵量は0.1μg/m3、または、それ以上になることが分かった。すなわち、炉内排煙通路5での二次燃焼、補助バーナ12での三次燃焼、酸化触媒13による四次燃焼によって浄化したクリーンな排煙を維持できる。このように、バーナ点火後も、排煙がクリーンにならない状態を光センサ45で検出すると、電磁弁11による給気量を抑制して正常な燃焼状態を取り戻すことが出来る。このように、排煙濃度が高くなると光センサ45からの信号で補助バーナ12を点火させ排煙をクリーン化することが出来る構造である。
【0074】
また、光センサ45からの検知信号は燃焼炉室1の燃焼量を判断する上で重要であり、排煙による煤が光センサ45に付着した場合、検知精度に悪影響を与える虞れがある、しかし、本実施例では、パージ用エア導入口48から新鮮なエアを導入し、遮蔽板47の小窓から光路となる管路15A側に送風することによって、センサハウジング46内への煙の進入を防ぐことができる。これにより、排煙による煤が光センサ45に付着することなく、光センサ45を常に清浄な状態で保つことができ、光センサ45による排煙濃度の検出を安定した状態に保つことができる。
【0075】
また、本実施例は、筺体20の天板に形成する外気導入口32から取り入れた外気を燃焼炉室1の外周部と熱交換器31によって加熱し、暖房用の温風h2として吹き出しているが、温風を制御する上で燃焼炉室1の燃焼量を容易に判断することのできるパラメターを見つけるのは容易ではない。すなわち、1〜2トンの大量の薪燃料の一部を燃焼させるとき、燃焼部は燃料上部のごく一部であり場所が不特定である。従って排煙の熱量は炉内を通過してくる経路により、未燃焼部の乾燥や加熱に利用され排煙の温度は異なっている。各種研究の結果、燃焼炉室1を熱源として熱交換後に得られる熱風の温度が最も良く燃焼量を反映していることが判明した。このため、本実施例では、熱交換器31が配置された燃焼炉室1の外周部に形成された温風路30に熱風h1の温度を検出する温度センサ38を設け、この温度センサ38からの検知温度に基づいて外気取り入れ用のダンパ35と36の開度を自動制御して温風路30内で加熱された熱風と外気と混合させて吹き出し口40から吹き出す温風の温度を20℃〜50℃にして温風ファン39によって吹き出すようにしている。
【0076】
以上にように、本実施例では、燃焼炉室1の不完全燃焼により煙が発生すると、光センサ45の信号により三次燃焼用の補助バーナ12が点火し、煙は高温で燃焼し、排煙の浄化が促進される。この補助バーナ12の点火時のオイルの消費量は1.5リットル/時であり、また、点火後12時間〜24時間の初期燃焼時には煙の発生が多く、この間、燃料からの煙は可燃性の軽量なガスを多く含んでおり、炉内排煙通路5での二次燃焼が活発になる。この二次燃焼により反応ダクト6全体の温度が高くなり、煙の浄化が促進される。点火後12時間から24時間後には煙の発生の少ないおきび燃焼モードに移行する。初期燃焼時に補助バーナ12が作動するのは間歇的であり、平均の点火時間は、燃焼炉室1の燃焼時間の約50%であった。一方、おき火燃焼モードでは、火力を増加するために燃焼炉室1への給気量を急に大きくしたとき発煙があるので、このとき補助バーナ12を一時的に点火するが、通常は不要であり、結果として、補助バーナ12の点火時間は燃焼炉室1の全動作時間の約30%以下であった。
【0077】
また、薪燃料1トンは、約400万kcal/batchの熱量をもつので、これはオイル燃料に換算すると440リットルの熱量に相当する。1日に100万kcal消費すると4日間燃焼することができるが、この間に必要な補助燃料用のオイルは10%以下である。つまり、本発明に基づく温風発生機により、石油熱エネルギーの90%以上を木質バルク燃料で代替することができる。
【0078】
さらに、木質バイオマス燃料として使用する建築端材、製材所端材、間伐材、農業廃材、建築廃材、炭、炭化物等のコストはその供給状態により大きな巾が見込まれるが、平均¥5/kgである。オイル燃料として軽油、A重油、廃油、バイオ系オイル等コストの巾は広いが、今後¥50〜100/kg/リットルと見込まれるので、その経済効果は高いものである。
【0079】
また、木質バイオマスボイラは、循環型の炭酸ガスゼロエミッションシステムであり、化石燃料とその装置を代替すると、化石燃料の排出する温暖化ガスの90%以上を削減することが出来る。この、温暖化ガスの排出権は、更に燃料経費の削減に利用することが出来、本発明になる木質系バルク燃料ボイラの燃費は、今後、限りなく低く抑えられることになる。
【0080】
当該温風発生装置のダクトから排煙の一部をハウス内に拡散・排出することにより、ハウス内にいたバッタ類、カメムシ類、クモ類、および、アリ類などの駆除にも効果があることが判明した。すなわち、スギ、ヒノキ、ホワイトオーク、レッドオーク等の薪燃料を燃焼させ、初期燃焼時に出る煙の薫蒸による害虫忌避効果がつよいので、害虫の駆除に利用できる。これらの害虫の忌避効果は煙の濃度として目に刺激を感ずる程度、または、それ以下の煙で良く、ハウス栽培の植物育成に利用できる。この薫淨効果の利用は多くの可能性を示しており、薫煙と同様に抗カビや抗菌効果が得られることになる。したがって、栽培する植物にたいする減農薬効果や、育成する植物の種類と煙の濃度を適切に調整することにより無農薬栽培を行える可能性が得られるとともに、排煙の一部を、農業施設内や乾燥室に拡散・薫浄することにより、害虫の忌避効果や抗カビ効果を利用して、減農薬や無農薬栽培の効果も得られ、また、木造の建造物では、床下に拡散・薫浄し、害虫の防除としての利用も可能となる。また、薫淨効果を利用して園芸施設内の農薬散布や建造物内消毒作業で働く作業者の薬害被害が低減されるとして期待される。
【0081】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、燃焼炉室の形状や主燃料あるは煙道路や温風路の配置あるいは開閉扉のパッキン構造といった燃焼炉としての基本的構造などは適宜選定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のバッチ型燃焼炉は、入手が容易で安価な薪等の木質系燃料、炭化物、又は、多様なバイオ系バルク状可燃物を燃料として利用することができるので、画期的な低燃費暖房装置として多様な用途に適しており、炭酸ガスのゼロエミッション型熱源として温暖化対策にも適している。
【符号の説明】
【0083】
1 燃焼炉室
3 排煙口
4 断熱材
5 炉内排煙通路
6 反応ダクト
6A 排煙ダクト
7 接続部
9 給気用ダクト
10 給気ファン(給気手段)
11 電磁弁(給気制御手段)
12 補助バーナ
13 酸化触媒
14 煙突部
15 煙道路
20 筺体
21 開閉扉
22 断熱材
25 小扉
28 断熱材
29 誘引ファン
30 温風路
31 熱交換器
32,33,34 外気導入口(開口部)
35,36,37 ダンパ(外気調整手段)
38 温度センサ
39 温風ファン(温風送風機)
40 吹き出し口
45 光学センサ(煙センサ)
46 センサハウジング
47 遮蔽板
48 パージ用エア導入口(エア供給手段)
15A 管路
h,h1 熱風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御を可能とすることを特徴とする木質系バルク燃料用燃焼炉。
【請求項2】
前記燃焼炉室内の燃焼制御は、燃焼モードとして、最大燃焼モード、通常燃焼モード、発熱を要しない休眠モード、再燃用の火種を維持する火種モード及び消火モードであることを特徴とする請求項1記載の木質系バルク燃料用燃焼炉。
【請求項3】
前記燃焼炉室内において、前記排煙口に至る炉内煙道通路を設けるとともに前記ダクトの底部に予熱空気で燃焼させる二次燃焼用ノズルを設置し、その上部に補助バーナを、更に上部に酸化触媒とを設け、前記二次燃焼用ノズルでの二次燃焼と、前記補助バーナによる三次燃焼と、前記酸化触媒による四次燃焼を経て浄化した排煙を前記煙突部から排煙させたことを特徴とする請求項1又は2記載の木質系バルク燃料用燃焼炉。
【請求項4】
前記煙道路に排煙濃度を検出する煙センサを設け、この煙センサで検知する排煙濃度に基づいて前記バーナによる三次燃焼を制御することを特徴とする請求項3記載の木質系バルク燃料用燃焼炉。
【請求項5】
前記煙センサを光学センサで構成し、この光学センサから照射した光ビームが走査する光路を前記煙道路に対して横断するように設けるとともに、この光学センサを収納するハウジングを設け、該ハウジングと前記光路とを仕切る遮蔽板に前記光ビームが通過する子孔を形成するとともに、該子孔から前記ハウジング内に侵入する排煙を遮断するエア供給手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の木質系バルク燃料用燃焼炉。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか1項に記載の木質系バルク燃料用燃焼炉において、前記給気手段として給気ファンを用いるとともに、その給気制御手段として電磁弁を用い、この電磁弁によって前記給気ファンから供給される燃焼空気量を0〜100%の間で制御し、前記各燃焼モードでの空気量を調整することを特徴とする木質系バルク燃料用燃焼炉の燃焼制御システム。
【請求項7】
木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御する方法であって、前記燃焼炉室の内壁面を断熱材で覆って高い保温性をもたせ、炉室下部に前記排煙口を備えた気密構造とするとともに、燃料として薪燃料を縦置きとして隙間の少ない稠密形に積み上げた状態で燃焼炉室内に配置し、その薪燃料の頂部に点火できる開閉自在な焚口を前記開閉扉に設けて、前記薪燃料上部より下部に向かって燃焼させるとともに、燃焼によって発生する火炎や煙を前記煙道路中に設けられた誘引ファンにより煙突部から排出し、前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整することを特徴とする木質系バルク燃料用燃焼炉の燃焼制御方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7の何れか1項に記載の木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置であって、前記筺体と前記燃焼炉室との間に前記煙道路に至る温風路を設け、この温風路内に位置して熱交換器を設け効率よく熱風を発生するとともに、前記筺体の一部に前記温風路と連通する開口部を設けて取り入れた低い温度の外気と当該熱風を混合して温風とし、温風送風機によって温風として室内へと送風するように構成したことを特徴とする木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置。
【請求項9】
前記燃焼炉室外面と熱交換器で加熱された熱風の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの検知温度に基づいて室内に送風する温風温度が設定温度となるように、前記燃焼炉室の燃焼状態を制御するとともに、前記開口部から取り入れる外気の流入量を外気調整手段によって調整することを特徴とする請求項8記載の木質系バルク燃料用燃焼炉を用いた温風発生装置。
【請求項10】
木質系バルク状可燃物を燃焼させる燃焼炉室と、この燃焼炉室の背面と側面と上面とを所定の空間部を配して覆う筺体と、この筺体の前面側に設けた前記燃焼炉室の開閉扉と、前記燃焼炉室内に上面側より燃焼用空気を供給する給気手段と、前記燃焼炉室の背面下方に設けた排煙口とを備え、該排煙口は前記空間部に形成されたダクト及び煙道路を経て煙突部に至り、さらに前記給気制御手段により前記燃焼炉室内に上面側より供給する空気量を調整する給気制御手段を設け、この給気制御手段によって、前記燃焼炉室内の燃焼制御を可能とする木質系バルク燃料用燃焼炉を用いて、排煙を園芸施設内に供給して園芸施設内を薫淨し、又は排煙を木造建造物の床下に供給して床下を薫淨し、園芸施設内農業での減農薬、無農薬栽培を促進し、又は木造建造物のシロアリによる食害を低減することを特徴とする木質系バルク燃料用燃焼炉の排煙利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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