説明

木質系有機質資材

【課題】植物性ケイ酸を含む木質系有機質資材を用いて、他の植物系有機質資材及び動物系有機質資材の分解発酵をより短期間で分解発酵させ、さらにその間の悪臭の発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】植物性ケイ酸を含む難分解性木質系有機質資材、例えば水を弾くクチクラ層(ろう質)で覆われた堅牢な表面を持つもみ殻の表面を溶解することによって、難分解性といわれるリグニン、セルロースを糖に分解発酵させ、バクテリア、土壌菌等が繁殖し、活動しやすい環境を作り、さらにその発酵させたもみがらを堆肥として利用するだけではなく、他の有機質資材に混合撹拌することによって、他の植物系及び畜産系、食品残渣系等の有機物資材の分解発酵を促進させる。このことによって、例えば畜産糞等を分解発酵するときに問題になる長時間の分解発酵期間や分解発酵時の悪臭の発生を解決することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分解発酵させた植物性ケイ酸を含む有機質資材で、他の有機質資材を分解発酵させる製法およびその製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機質資材の利活用は、「ニッポンバイオマス総合戦略」にあるように、国を挙げての緊急課題であるが、有機質資材の分解発酵に時間がかかり、尚且つ、臭いの発生等が問題となっている。そして、もみ殻や稲わら等の木質系有機質資材においても、牛糞や鶏糞などの畜産系有機質資材においても分解発酵が困難を極めており、その処理に困っているのが現状である。例えば、もみ殻においては年間200万トン排出されるうちの130万トンは、暗渠に使ったり炭化させたりしながら工夫して処理しているが、それでも70万トンは焼却・破棄されている。しかし、もみ殻を田畑で焼くことは公害防止条例で禁止されており、その利活用が待ち望まれている。また、牛糞や鶏糞の処理においては、分解発酵するのに半年以上の期間とその間の悪臭で対処に苦慮している。
【特許文献1】 特許出願平10−205830有機肥料及びその製法
【非特許文献1】 「バイオマス・ニッポン総合戦略」http://www.maff.gojp/biomass/index.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、有機質資材を分解発酵するために、植物性ケイ酸を含む木質系有機質資材を分解発酵させたものを使うことによって他の有機質資材の分解発酵を促進するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
難分解性の植物性ケイ酸を含む有機質資材(例えば、もみ殻)の表面を覆うクチクラ層(ろう質)等を溶解する培養液に浸漬し、液切り後、米糠、酵素を混合撹拌することによって自然分解発酵した植物性ケイ酸を含む有機質資材を、植物系有機質資材及び動物系有機質資材に混合撹拌することによって植物系有機質資材及び動物系有機質資材の分解発酵を促進させることによる。
【発明の効果】
【0005】
この発明の、他の有機質資材を分解発酵することを、分解発酵させた有機質資材で行なう製法は、植物性ケイ酸を含むイネ科系統の有機質資材であるもみ殻を分解発酵する技術によるものであるが、その分解発酵された植物性ケイ酸を含む有機質資材を、従来のままの発酵物として土壌改良剤等の使い道以外に、生ゴミ、あるいは畜産糞に投入使用したところ、生ゴミは速やかに分解発酵し、畜産糞は、従来の分解発酵する期間の概ね5分の1程の短期間で分解発酵することが出来、さらにその分解発酵中に発生する悪臭が限りなく低減された。生ゴミは加工残渣と食品残渣等で分解発酵の要求される度合に違いがあるため、その求められる減溶率や、肥料としての使われ方に違いがあるが、畜産糞は、分解発酵された植物性ケイ酸質を含む有機質資材の混合撹拌によって、従来の畜産糞堆肥が植物性ケイ酸を含み、さらに植物繊維のリグニン・セルロース等を含有した木質系有機質資材入り畜産糞完熟堆肥となり、動物系と植物系が混合した従来にない完熟畜産糞堆肥となり、畑の土壌改良と野菜等の生育が順調になり、さらに病害虫などがよりつきにくくなり、無農薬栽培への可能性の道を大きく開くことになる。また、分解発酵された有機質資材を混合する有機質資材(牛糞・豚糞・鶏糞・馬糞)等によって肥料成分が異なるため、化学肥料と同じように分解発酵された植物性ケイ酸を含む有機質資材を混合撹拌した有機質資材を作柄に応じて選択して使用することが出来ることになり、無農薬・減化学肥料栽培が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
分解発酵させた植物性ケイ酸を含む木質系有機資材を植物系有機質資材及び動物系有機質資材に混合撹拌することによって植物系有機質資材及び動物系有機質資材の分解発酵を促進させることを特徴とする有機質資材の分解発酵製法によって、分解発酵した植物性ケイ酸入り畜産完熟堆肥として製品化し、その製法のシンボルマークを明記し、有機栽培に最適な有機肥料として他の畜産完熟堆肥と差別化して販売するシステム形態。
【実施例1】
【0007】
この発明の植物性ケイ酸を含む難分解性有機質資材のひとつとしてもみ殻がある。もみ殻は、殻の表面を覆うクチクラ層(ろう質)によって水を弾くため、畑に入れても分解発酵するのに3年〜5年の歳月が掛かっている。そのもみ殻のクチクラ層(ろう質)を溶解する培養液(参考例特許出願平10−205830有機肥料及びその製法)にて表面を溶かし、液切り後、米糠と酵素を混合撹拌し、発酵させた発酵もみがらを使い、牛糞に混合撹拌する。混合する比率や撹拌の時間は対象となる有機質資材によって異なるが、出来上がった完熟牛糞堆肥は従来の完熟牛糞堆肥とは異なり、植物性ケイ酸と分解したリグニン・セルロース等の植物繊維を含んだ発酵もみがら入り完熟牛糞となり、堆肥プラス肥料成分をより多く含んだ完熟堆肥となる。これこそが、ニッポンバイオマス戦略に於けるあらゆる有機質資材の有効活用とそれによる有機物循環社会への第一歩となるものである。
【産業上の利用可能性】
【0008】
この発明の植物性ケイ酸を含んだ完熟発酵有機質資材は、牛糞・豚糞・鶏糞・馬糞等の動物系有機質資材や落ち葉・野菜残渣・間伐材等の植物系有機質資材に混合撹拌することによって有機質資材の分解発酵を短期間で促進し、その分解発酵された有機質資材は植物性ケイ酸を含んだ完熟堆肥となり、その植物性ケイ酸入り完熟堆肥を畑に戻すことによって野菜の栽培が行なわれる循環型社会が可能となり、産業として構築される。
【特許文献1】(特許出願2004−332441 家庭菜園(契約耕作地)のインターネット通信販売システム)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】発酵もみがら製造製法図
【図2】もみ殻発酵技術
【図3】土壌改良剤としての実験
【図4】もみ殻の組成
【図5】土壌改良剤の母材として植物性ケイ酸を含む植物系有機質資材の働き
【図6】発酵もみがらによる分解・発酵堆肥化の例
【図7】発酵もみがらを核にしたバイオマス循環型図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分解発酵させた植物性ケイ酸を含む木質系有機資材を植物系有機質資材及び動物系有機質資材に混合撹拌することによって植物系有機質資材及び動物系有機質資材の分解発酵を促進させることを特徴とする有機質資材の分解発酵製法。
【請求項2】
分解発酵させた植物性ケイ酸を含む木質系有機資材を植物系有機質資材及び動物系有機質資材に混合撹拌することによって植物系有機質資材及び動物系有機質資材の分解発酵を促進させることを特徴とした請求項1記載の製法で製造された植物性ケイ酸入り堆肥。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−50241(P2008−50241A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253442(P2006−253442)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(502361049)
【Fターム(参考)】